刻無―キズナ― 零 完全版 ◆wYjszMXgAo



◇ ◇ ◇

“彼”はそのやりとりを暗がりから観察していた。
雄雌の一組と、一匹の雄のやりとりだ。
病院の中庭とエントランス。
壁を挟み、言葉の応酬が交わされる最中。

――――“彼”の視界の一部には、一つの無防備な肢体が映し出されていた。
自分の元の宿主や、ラダムの裏切り者が執着していた個体だ。

エントランスにいる雄は、雌雄との駆け引きに気を取られてこちらに意識が向いている様子はない。
寄生するには好機と言えるだろう。

……だが、あの個体に寄生すべきか、否か。
元の宿主と共に行動していた時に、あの個体は人間の中でも特に脆弱な個体であることが判明している。
殺し合いという状況下で役に立つかどうかは疑問符をつけねばならないだろう。

“彼”は思考する。
手っ取り早くあの個体に寄生するか、更なる優秀な個体が現れるのを期待すべきかを。
あの個体よりも優秀な個体という点なら、中庭にいる二匹でも構わないのだ。

――――そして、“彼”は決断した。
自分が、これからどうすべきかを。


“彼”は動き出す。
それが身を隠すためか、誰彼に寄生するためかは――――依然、誰も知ることはない。




※ラダムが小早川ゆたかに寄生したか否かは不明です。
 ただし、寄生された場合でも今のところ本人に自覚や症状はありません。



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211:The Incarnation of Devil(後編) ラダム 232:愛と死の予感(後編)





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