蒼き槍兵と青い軍服の狙撃士 ◆o4xOfDTwjY



蒼き槍兵ランサーは、先ほど発見した気絶した青い軍服の女を乱雑にベンチへと寝かせる。
本来なら近くの病院に連れて行くべきなのかもしれない。
しかし、相手は自分を襲った炎使いの男と同じ制服を着ている。
とくにいたわる必要もないと考えたランサーは、少し移動して見つけたベンチに女を寝かせることにした。

ランサーはこの女から得るべき情報を整理する。
この女の着たものと同じ青い軍服の炎使いの男、デパート前の橋で目撃した時に彼女と一緒にいた少年、この2つの情報は確実に得るべきだ。
この女自体に恨みはないが、青い軍服を着ている以上、自分を襲った炎使いとは何かしら関係があるだろう。
だからとくに労るでもなく、乱雑に扱っている。
いっそ殺してしまおうか、そう考えなくもないほどに青い軍服に対してランサーは怒りを募らせていた。
それ以外にも、自分の見込んだ少年のエリオの死や、病院で見た子供2人の死体、この理不尽な殺し合いに対しての怒りも募っていたこともある。
その怒りの矛先が青い軍服に向けられたがゆえに、自分には直接恨みのない目の前の女にまで殺意を感じてしまったのかもしれない。

「ったく、落ち着けってんだ。とりあえずこの女の話を聞いてからだ」

青い軍服の女はまだ目覚める様子ではない。
ランサーは周囲を見渡す。
さきほどまでいた北方面は倒壊した建築物の瓦礫や、砲撃により起こった煙が上がり、先ほどの戦闘の酷さを物語っていた。
対して南は、自分が何時間か前にいたデパート建物が燃え上がり、黒い煙が上空へと伸びている。
明らかに誰かが放火したとしか思えないような豪快な燃え方だ。
もしかしたら、あの炎使いの男がやったのかもしれない。
どっちにしろ、状況確認のために一刻も早く行動したいところだ。
そう思いながらも、目の前の女が目覚めるまではランサーは動くことはできなかった。

◇◇◇◇◇◇◇◇

狙撃銃をおろしたホークアイは溜め息をつく。
また罪のない命を奪ってしまった。
見晴らしの良い建築物の中に隠れ、イシュヴァール人を見つけ次第に狙撃する。
もはや作業化してしまうほどに、この行動を繰り返した。
躊躇いはあれど、軍に所属する限り命令には従わなければならない。
そして彼女は、自分自身に対しても嫌気がさしていた。
それは、銃を使うがゆえに人を殺す実感が薄れてしまっていたこと、狙撃が成功した瞬間に僅かながら安心を覚えてしまう自分にであった。

――さん、おばさん

狙撃銃に弾薬を補給し、新たな獲物を見つけようとした矢先、自分の背後から声がする。
自分はまだおばさんと呼ばれる歳ではないと、少々腹立たしく思いながらも、声の聞こえた方に銃を構える。
彼女の後ろにいたのは、全身血まみれの少年だった。体には剣が突き刺さっており、右手にはナイフと思しきものを持っている。
突然の出来事にホークアイは動揺し、とっさに狙撃銃から銃弾を放った。
銃弾は少年の頭部にあたるが、少年は倒れることなく、ホークアイへと向かってゆっくりと歩いていく。

――おばさんのせいで僕死んじゃったよ。

ホークアイは銃で撃っても死なない少年に怯えて、尻餅をつく。
何発か銃弾を撃つものの、少年は表情ひとつ変えずに自分へと近づいてくる。

――だからおばさんも一緒に死のうよ。

そして、少年は右手のナイフを振りかざした。

◇◇◇◇◇◇◇◇

「イヤァアアアッ!」

ホークアイは悲鳴と共に目覚める。
夢か、と多少安心するもののそれはすぐに消え去る。

「たいそう騒がしいお目覚めじゃねえか?ああ、青い軍服の姉ちゃんよぅ」

彼女の目の前には、槍と思しきものを自分へと向ける男が立っていた。
彼女はとっさに銃を取り出そうとしたものの、銃どころかデイパックまで目の前の男に没収されていた。

「お目覚めのところ悪りぃが、あんたには聞きたいことがいくつかあるんでな。それまでは殺しはしねえ」
「…つまり、返答次第では殺すと?」

逆に解せばそういう意味になる。そう思い、返した言葉だった。
男は鋭い目つきで彼女を睨みつける。
そして、槍の先端の刃物が目前にまで迫り止まる。

「そうだ。余計なことはするな」

ホークアイは冷や汗をかく。一瞬、死を覚悟した一撃だった。
目の前の男から漂う異様なまでの殺気。
捕らえられてなお、今こうして生きていられるのは、目の前の男が自らの殺気に飲み込まれない自我を持っているからなのかもしれない。
下手なことを言えば即座に殺されかねない。
彼女はそう悟り、目の前の男の次の言葉を待つ。

「俺はあんたと同じその青い軍服を着た男に襲われた。炎を使う奴だ。そいつはあんたの知り合いか?」

淡々と告げながらも、しかし確実に怒気と殺意が込められた男の質問。
その質問にホークアイは戸惑いを覚えながらも自分の知る事実を告げる。

「その人はおそらく私の上司、ロイ・マスタングです。しかし、彼はむやみに人を襲ったりするような人ではありません」

彼女は知っている。
ロイ・マスタングは軍を内部から変えて、平和を築き上げるという野心を持っていた。
そしてその信念は確固たるものであった。
だからこそ、ホークアイは無能大佐と言われるような彼にもついていった。
そんな彼がこの殺し合いに乗るはずなどない。
彼女はそう信じていた。だから目の前の男の問いにも答えた。
もっとも、マース・ヒューズが死んだ後に彼女がこの殺し合いの舞台に呼ばれていたなら、それは違っていたのかもしれないのだが。

「だが俺たちはそいつに襲われた。奴は俺らを間違いなく殺す気でな」
「彼がそんなことを…」
「そしてエリオっていう小僧の片腕を燃やした」

ホークアイは困惑する。
ただでさえ最悪な状況だというのに、自分の上司が殺し合いに乗った事実を告げられる。
彼女が考える前に、またしても男の質問は続く。

「もうひとつ聞く。俺はあんたをデパート前の橋で一度見た。その時は小僧を一人連れてたはずだ。そいつはどうした?」

その質問でホークアイは、パズーの最期を思い出す。
自分が彼の無謀を許したせいで彼は死んでしまったのだ。

「彼、パズーは殺されたわ。その後に私は気絶してここで目覚めた」
「そうか…。チッ、また小僧っ子が死んだのかよ」

目の前の男は舌打ちを漏らした。
そしてホークアイの顔をしばらく見つめると、槍と思しきものを下ろした。
それと同時に忌々しい放送は始まる。

――さて、二度目の放送を行う。

静寂を飲み込み、無情な声が響き渡る。
男はデイパックから名簿と地図を取り出し、放送の内容をメモしている。
放送は更なる追い討ちのごとく、ホークアイに無情な現実を突きつける。
死亡者として呼ばれるアルフォンス、ヒューズ、パズーの名前。
パズーの死を目の当たりにしている彼女は、この放送が嘘でないことを改めて実感する。

――それまでの間、思う存分に闘争を続けるが良い。

放送が終わると同時に、男はデイパックを彼女に向かって投げた。
ホークアイは呆気にとられながらも、デイパックをキャッチする。

「俺の名前はランサーだ。あんたは?」
「…リザ・ホークアイです」

ホークアイは、先ほどかのような殺気がランサーと名乗る男から薄れているのに気づいた。
ランサーは南の方を顔を向ける。ホークアイもつられて南を見ると、何かが燃えあがっていることに気づく。

「俺はデパートに向かう。あんたが起きる少し前から、炎が立ち上がっててな。もしかしたら、ロイ・マスタングの仕業かもしれないしな」

ランサーはホークアイから得た情報をほとんど真実と判断した。
彼女の疲弊しきった表情と姿は、最早自分を騙す気力すらないと感じたからだ。

「私を殺さないのですか?」
「最初はその気だったし、その青い軍服に憎しみも感じた。だがそりゃあただの逆恨みだ。それにあんたも仲間を奪われた身なんだろ?」

ランサーは、彼女もまたこの殺し合いで大切なものを奪われ、苦しい状況に立たされていることを感じとっていた。
彼女がロイ・マスタングのように、殺し合いに乗った人間なら殺すつもりだった。
しかし、彼女には殺し合いに乗っている様子はなかった。だから殺さなかった。
ランサーは槍を担ぎ、南に向かって走りだそうとする。
だが、それをホークアイの一声が止めた。

「待ってください。私も行きます。ロイ・マスタングが殺し合いに乗っているのなら、私が止めなければなりません」

ランサーはそれを意外に思い、驚きの表情を見せる。
自分は、彼女の上司のロイ・マスタングを殺そうとしている。
彼女がそれに加担しようとは思えない。
ならば、仲間になるふりをして不意打ちでもするつもりなのか。

「あいにくだが、俺はあんたを信用したわけじゃあない。まあ、着いてくるってんのなら勝手にしろ。追いつけるのならな」

そう吐き捨て、ランサーは南へと目にも止まらない速さで駆け出す。
ホークアイは、ランサーの速さに圧倒されたものの、すぐに彼を追って走り出す。

「マスタング大佐、あなたが間違った道を進んだならば、それを正すのが私の役目です」

ホークアイは誰に言うでもなく自分にこう言い聞かせる。
彼女は仲間の死を悲しむ間もなく、自分の使命を果たすべく進む。

こうして蒼き槍兵と青い軍服の狙撃士もまた、この殺し合いの螺旋に巻き込まれていくのであった。

【D-6北西部/道路/1日目-日中】
【ランサー@Fate/stay night】
[状態]:疲労(中)、強い決意
[装備]:鉄槍(折ったポール+アサシンナイフ@さよなら絶望先生×1本)
[道具]:支給品一式×2(食料二食分消費)、ヴァッシュの手配書、防水性の紙×10、
不明支給品0~2個(槍・デバイスは無い)、偽・螺旋剣@Fate/stay night、暗視双眼鏡
[思考]
基本:このゲームに乗った者、そして管理している者との戦いを愉しませてもらう
1:デパートに向かう
2:どこかにあるかもしれないゲイ・ボルグを探す
3:↑のために他の参加者を探して接触する
4:ロイ・マスタング、言峰、ギルガメッシュ、ヴァッシュと出会えれば、それぞれに借りを返す
5:衝撃のアルベルトと出会えれば戴宗からの言伝(一時的な休戦の申し込み)を伝える
6:エリオの知り合いと出会えたら事の経緯を伝える
7:日が暮れたら、戴宗と合流するため一旦温泉へと向う
最終:エリオの遺志を尊重し、螺旋王を討ち倒して彼の仲間を元の世界へと帰す
[備考]
※エリオ、戴宗と情報交換をして、それぞれの世界についての知識を得ました

【リザ・ホークアイ@鋼の錬金術師】
[状態]:疲労(中)、精神的ショック、全身各所に擦り傷
[装備]:なし
[道具]:支給品一式×2、M500ハンター(0/5)@現実、ダーツ@現実(残り23本)、タロットカード@金田一少年の事件簿、
USBフラッシュメモリ@現実、泉そうじろうのデジタルカメラ・説明書付@らき☆すた(※マタタビの勇姿(後ろ姿)を撮ったデータが一枚入っています)
[思考]
基本:ここから脱出する。殺し合いをするつもりはない
1:ランサーを追ってデパートへと向かう
2:ロイ・マスタング大佐を探し、ゲームに乗っていたならば止める
3:できれば銃器を調達したい
4:パズーの知り合いとの接触および、彼を守れなかったことを謝罪したい
5:2日目の0時頃に温泉へと戻り、マタタビに協力を要請する
6:トンネルで見た化物を警戒する
7:ゆたかを心配
※リザ・ホークアイの参加時期はアニメ15話辺り。彼女の時間軸では、マース・ヒューズはまだ存命しています
※トンネルで出会った人物より、『線路の影をなぞる者(レイルトレーサー)』の名前を聞きましたが、それが名簿に記載されていないことにまだ気づいていません
※マタタビと情報交換をしてません。また、マタタビを合成獣の一種だと考えています
※Dボゥイとゆたかの知り合いについての情報を得ました。



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150:崩落 の ステージ(後編) ランサー 189:炎の日
150:崩落 の ステージ(後編) リザ・ホークアイ 189:炎の日





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