勝利の栄光 ◆/D6q5JErMM



戴宗はまずいと思った。
後ろには腹部に剣が刺さって息絶えているエリオ、
そして自分の両手は剣の柄を掴んでいる。
まさしく殺人の現場です、といった状況だ。

「俺じゃ、俺じゃねぇんだ…!」

男は部屋の中を見回している、今のうちに逃げようかと思ったがそれでは殺人を認めることになってしまう。
なんとか信じてもらわなければならない。

「俺は、俺はエリオのために氷を取りに行ってたんだ!それで戻って来たら、エリオが…」
「どこだ」

そんな戴宗の言葉は途中で切られた。

「坊主を殺した奴はどこに行った?」
「し、信じてくれるのか?」

目の前な青い男はこの状況を見て、殺した奴はどこだと言った。
つまり、彼は自分が犯人ではないと認めているのだ。

「…テメェもオレと同じ口だろ、坊主の治療のための氷を持ってくるために坊主を一人にして、死なせちまった」

男は心底悔しそうな顔をして自らへの怒りをあらわにし、ちくしょうがと呟いた。

「それに、あんだけでかい声で叫んでたらさすがに聞こえてくるさ」
ランサーは聞いていたのだ、先ほど自分がエリオの死体に直面した瞬間に上げた叫びを。
そしてランサーはその叫びから、激しい後悔と、自身対する怒りと、悲しみを感じた。
故に、戴宗を信じる気になったのだ。

「あんたは…」
「オレはランサーだ、坊主をここまで連れて来たのも、オレだ」

ランサーと名乗った男は足元にあった血痕を見ながら言った、ランサー曰く病室を出る前にはなかったそうだ。
自分のではない、ランサーのでもエリオのでもない。
おそらくはエリオと争った人物の物だろう。

「俺は戴宗だ、エリオにはさっきここで会った」

それから二人は軽く情報を交換した、自分達のこと、エリオのことを。
そしてエリオを殺した犯人の可能性がある人物、茶髪のあの男のことを。

「…なるほど、そいつがやった可能性が高いな」

そう言うとランサーは捻れたよう剣をエリオから引き抜き、エリオの物だったと思われる道具をデイバックにしまった。

最後にエリオを見て、非常に小さな声で。

――――仇は取るからなエリオ。槍の振り方一つ、教えてやれなかったな

一瞬寂しそうな表情をして、そう、呟いた。
その後、血痕を辿るように歩き出した。

「オレは坊主の仇を取りに行く、あばよ」

さっさっと歩いていくその姿を見て、戴宗は。

「待ってくれ!俺も行く!」

大声で呼び止めていた。
許せなかった、まだ幼く、右腕をも失っているエリオを無残に突き殺した犯人が。
そして、彼の死を招いたのは外ならぬ自分であるから。
ランサー振り向き、にやりと笑った。

「いいぜ、ただしついて来れたらな」

瞬間、すさまじい速さで走り始めたランサー。
その様子をポカンと見ていた戴宗だったが。

「は、はは、いいぜ、ついていってみせらぁ!!」

空になった虎柄の水筒を拾い上げ、追いかける。
神行太保、速さにおいて劣ってたまるかというようにして二人は走り始めた。


     ◆     ◆     ◆


「はぁ…はぁ…、くそぉ…!」

ムスカは腹部に刺さったまま抜けないガラス片から血を滴らせながら移動をしていた。
一刻も早く病院から離れようと走っていたため精神・肉体共に激しい疲労に蝕まれていた。

「私は、私はラピュタ神なのだぞ…!」

右腕に焼き付いた小さな拳の跡。
(忌ま忌ましい、雷はラピュタ神である自分のみが使うことを許された力なのだ。それをあの小僧…!!)

「……だがまあいい、あの小僧は葬ってやったのだからな…!」

そして地図を取り出して現在地を確認する。

「ここは…D-5か」

先程は一番手近な橋を渡ろうかとは思ったものの待ち伏せや狙撃の危険を考えて南西に進むことにしたのだ。
現在はD-5の中心より少し右側よりだった。
(少々休むのもいいかもしれん)

そう呟きその場に腰を降ろそうとした瞬間だった。


時間は刻々と進む。
そして今、午前9時へと達した。


―――警告します禁止区域内です、後60秒で爆発します』

「!?」
(首輪からの声?爆発?禁止区域?馬鹿な!!)
ムスカは有能な人間である、しかし少々詰めの甘いところもある。
今回の彼の詰めの甘さは。
放送をまるまる聞き逃していたことだった。
「う、うおおおお!!」
大声を上げながら全速力でD-6へ走り始めた。
『45…44…43…』
時間は後43秒
一番近い病院のあるD-6ならば大体350m程、運がよければギリギリ間に合うだろう。
「こんな、こんなことで死んでたまるものかぁぁぁぁぁぁ!!」
大声を張り上げながら走り続ける。


『10…9…8』

まだか、まだつかないのか。
もう僅かしかない時間に焦りながら走り続ける。

『7…6…5』

「うあああああ!!」
(もう時間がない、こんな、こんな所でこの私が…!!)
そう思った瞬間。

『4…3…2、禁止区域からの離脱を確認しました。カウントを停止します』

カウント2の時点で脱出に成功した。
その言葉を聞いたとたんムスカは足を止めその場に倒れこんだ。

「はぁ…はぁ…!ふ、ふははははは!やはり私はついている!これもラピュタ神故か!!」

汗を流しながら大声で高笑いし、叫ぶ。
起き上がり、念のためその場から離れる。

だが、しかし。
その姿を。
その大声を。
彼等が見つけない訳がなかった。


     ◆     ◆     ◆


見つけた―――
高笑いと叫ぶ声を聞き、声の方に向かって見れば大砲を腕につけた茶髪の男がいた。
ご丁寧に血痕を作りながら歩いている。
「ランサー、奴だ」
戴宗の声を後ろに聞きながら鉄棒を構える
「ああ、どうやらあの男が坊主を殺した奴みたいだ…!」
そして、二人は男の前に出た。


     ◆     ◆     ◆


目の前に現れたのは例の東洋人と青い男だった。
「誰かと思えばこの私を閉じ込めた東洋人じゃないか、どうだったかね?私の置き土産は?」
言いながら二人の手元を見る。

東洋人は武器を持っておらず、青い男は先に数時間前に自分も使っていたのと同じアサシンナイフを鉄棒にくくりつけた槍を持っていた。

――勝った

目の前の二人は明らかに遠距離攻撃の術を持っていない、対して自分はキャノン砲を持っている。
(まず青い男を撃ち殺してやろう、そして東洋人が怯んだところに撃ち込んでやれば終わる!)
これならばあの東洋人がこちらを攻撃する前に奴の仲間を殺して、隙を作って倒せる
頭の中で殺す順番を考えているところに声がかかった。

「貴様が坊主を殺したのか?」

そう、青い男が聞いてきた。
坊主とは、先程殺した赤髪で生意気にもラピュタ神である自分にのみ許された雷を操る子供のことだろう。

「ああ、そうとも。突き刺しても死なずに抵抗してきたので転がっていた剣を突き刺してやった!全く愚かな小僧だったよ!!」

男はそうか、と言って棒を持ちなおした。
(今だ!!)
すばやく構えて引き金を弾く。
弾は発射され、男へとすさまじい速さで飛んで行き。


いとも簡単に避けられた。


「は――?」

次の瞬間、接近してきた男にダブルキャノンを付けている右腕を肩ごと切り落とされた。

「い、ぎゃあああああああ!?」
途端に、激痛が走り血が噴出する。

ランサーには見えている範囲で放たれる飛び道具に対処できる『矢除けの加護』がある。
さらに彼は第五次聖杯戦争のサーヴァント中で瞬間的な速度では最高クラス。
故にダブルキャノンは避けられて当然だった。
彼の者は英雄にして半神、神と名乗っているだけのムスカとは違うのだ。

ムスカの敗因は三つだった。
一つ目は自身の精神的疲労と肉体的疲労が激しいところに、禁止区域内で1分以内に脱出しなければ爆発するという状況に陥り、脱出する際にさらなる精神的、肉体的な疲労を重ねたことによる判断力の低下。
二つ目は、ランサーの力量を確かめる前に攻撃を仕掛けたこと。
そして三つ目。
三つの中でこれが一番の原因だった。

ムスカの一番の敗因は、エリオ・モンディアルを殺したことだった。


さらにランサーは激痛に顔を歪めるムスカの左肩から先を切り落とした。

「テメェは坊主を殺した挙句侮辱した、楽に殺してやりはしねぇ…………苦しみ抜いて死ね」

再び上がる叫び、ランサーはそんなことは知らぬといったように戴宗の元まで戻るとタッチした。

「う、うぁぁ…手が、手がぁ…ぁぁぁ…」
ムスカは両腕を失い、芋虫のように這いながら顔を上げた。
そして。
そこに鬼を見る。

鬼――戴宗はムスカの頭を掴んだ。

「ひっ……た、助け……!」
「殺された奴の仲間のために仇は残してやろうとしたのが間違いだった、エリオと同じ雷で、死ねぇぇぇぇぇぇ!!」

必死の命ごいは聞き入れられず、その身に雷が襲い掛かった。

「ぎゃあああああああああああああああああああああああ!?!?」
ムスカの叫びが響く。
すでにエレキテルの電磁ガードは無い。
そのなんの護りも無い体に、手加減も、容赦すらもない雷が駆け巡る。
体は雷が巡った影響で発生した熱で体の至る所が焼け爛れ、焦げ始めた。
激痛と電撃により薄れ行く意識。
(わ、たし、は……ラピュ……タ、神………)
そこでムスカは事切れた。


     ◆     ◆     ◆


黒焦げになったムスカ『だった物』から手を離した戴宗は、その物体の傍にアサシンナイフでこう刻んだ。


『幼き戦士エリオ・モンディアルと義手義足の少年を殺した外道、ここに討つ』


「仇はとったぜ、エリオ」
戴宗はそう呟いて立ち上がり、ムスカのデイバックの中身とダブルキャノンを回収する。
切り落とされたムスカの右腕に刻印されているエリオの拳を見て、悲しさが溢れて来たがなんとか押し止めた。

ムスカだった物の傍に腕を刻印が見えるように置き、その傍にさらにこう刻んだ。


『最後の瞬間まで戦い続けた、幼き戦士エリオ・モンディアルに勝利の栄光を』


「これからどうする?」
ランサーが聞いてきた。

「エリオを埋葬してやりに戻って、霊安室の義手義足の少年のところにここの場所を書いてやろうと思う。後死んじまった嬢ちゃんの知り合いの菫川ねねねって奴を探す」
せめて彼の仲間に犯人が死んだことを伝えるために。
「その後は?」
「まだ決めちゃいねぇ、とりあえず殺し合いを止めて酒を探したいな」

ランサーはムスカの支給品から名簿と地図を取り出すとそれを見て。
「なら温泉にいかねぇか?殺し合いに乗ってない奴らもそこに集まるかもしれねぇ。酒だってあるだろ」

なるほどと思う、そこならば体を休めるのに適しているしゲームに乗っていない者が逃げ込むにはいい場所だろう。

「よし、決まりだ。行こうぜランサー」
「あいよ戴宗」

二人の男は歩き始める。
護り切れなかった幼い戦士の『戦いを止める』という遺志を継ぐために。
まずは病院に戻り、死の瞬間まで戦い抜いた彼を弔うために。



     ◆     ◆     ◆



【D-6/病院西側を病院に向かって移動中/1日目/昼】

【チーム:幼き戦士の遺志を継ぐ漢達】
[共通思考]
1.エリオの遺志を継ぎ、主催者の打倒。またはゲームからの脱出
2.病院に向かいエリオを弔う
3.その後温泉に向かう
4.エリオの身内や仲間を探して、エリオを殺した犯人を討ったことを伝える
5.1の達成のために仲間を集める


【神行太保・戴宗@ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日-】
[状態]:疲労(中)、強い決意
[装備]:なし
[道具]:デイバッグ、支給品一式(食料-[握り飯、3日分])
 エリオの治療用の氷 、空になった虎柄の水筒
アサシンナイフ@さよなら絶望先生×10本、乖離剣・エア@Fate/stay night
『涼宮ハルヒの憂鬱』全巻セット@らき☆すた(『分裂』まで。『憂鬱』が抜けています)
    不明支給品1~2個(確認済み)
ダブルキャノン@サイボーグクロちゃん (残弾28/30)
支給品一式(-地図、-名簿)(食料-[大量のチョコレート][紅茶][エドの食料(詳細不明)])
[思考]: 基本:不義は見逃さず。悪は成敗する
1.義手義足の少年(エド)の遺体の元に行き、犯人である外道(ムスカ)を討った場所と、経緯を残す
2.どこかで酒を調達したい。
3.菫川ねねねを捜し、少女(アニタ)との関連性を探ってみる。
4.義手義足の少年(エド)の身内や仲間を探してみる。
最終:螺旋王ロージェノムを打倒し、元の世界へと帰還する
※空になった虎柄の水筒が病室に転がっています


【ランサー@Fate/stay night】
[状態]:疲労(中)、強い決意
[装備]:鉄槍(折ったポール+アサシンナイフ@さよなら絶望先生×1本)
[道具]:デイバック、支給品一式、ヴァッシュの手配書、
不明支給品0~2個(槍・デバイスは無い) 、エリオの治療用の氷と包帯、
偽・螺旋剣@Fate/stay night、支給品一式、防水性の紙×10@現実 、暗視双眼鏡@現実
[思考] : 基本:このゲームに乗ったもの、そして管理している者との戦いを愉しませてもらう
1.戦闘準備を整える(体力の回復、まともな槍の調達)
2.言峰、ギルガメッシュ、ヴァッシュと出会えば、それぞれに借りを返す
  言峰とギルガメッシュは殺す。ヴァッシュに対してはまだ未定
3.ゲームに乗っていなくとも、強者とは手合わせしたい
※まともな槍が博物館にあるかも知れないと考えています


【ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ@天空の城ラピュタ 死亡】


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投下順で読む


104:不屈の心は、この胸に ランサー 148:捻 -twists and turns-
104:不屈の心は、この胸に 神行太保・戴宗 148:捻 -twists and turns-
104:不屈の心は、この胸に ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ(ムスカ大佐)





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