私がみんなを知っている ◆5VEHREaaO2



「あのタコハゲ! ぶっ飛ばしてやる!」


E-1にある水族館、大きく開いた入り口のある正面玄関を裏に周り、小さな裏口を潜ったところにある事務所内。
菫川ねねねは、そこで螺旋王ロージェノムと名乗る男に対して怒りを顕にしていた。
ねねねは異能を何も持たず、紙を操る力もなければ、銃を扱った経験もなく、みせしめとして殺害されたテッカマンランスに対応する
力すら持たない一般人である。だが、かつては作家界の『剛田武』と呼ばれていた女はこの程度のことでは怯まない。
自分はポール・シェルダンではないのだ、好きなようにやらせてもらう。
もっとも、菫川ねねねという作家は13歳の頃にデビューしてから24になる今日まで
おしかけファンや変態ストーカーにアンチファンなど多数の人物に襲われ、読仙社などの大規模な組織に連れ攫われるなど、
命の危機や誘拐という単なる一般人が遭遇する危機に陥る確立が非常に高いため、このような事態に慣れてしまい、平常心を保てているのかもしれないが。
ともかく、ねねねはロージェノムの所業に怒りを感じ反旗を翻そうと決めた。

(でも、これからどうする?)

ロージェノムとやらに反旗を翻すのはいいとして、ねねねの頭には何も具体策など浮かばない。
精々爆弾を誰かに外してもらって、ロージェノムを誰かに倒してもらうという他人任せな案しか、ただの作家でしかないねねねには思いつかなかった。
とはいえ、このまま黙って事態が解決するのを持つつもりもなければ、誰かが助けてくれることを待つつもりもない。
下手をすれば、ロージェノムの言うとおりに最後まで殺しあうはめになるのかもしれないのだから。

(そういえば、このデイバッグの中には何が入ってる?)

ねねねは自分に渡されたデイバッグに意識を移す。
たしか、殺し合いをするための道具が入っているとハゲが言っていたはずだ。
異能など使えないねねねにとっては、あるもので現状を乗り切るしかない。
とはいえ、密かにどのような道具が入っているかと、作家としての好奇心が刺激されてもいたが。
ねねねは順にデイバッグの中から取り出したものを、側にあるテーブルの上に並べる。
鞄の中に入っていたものは「地図」「コンパス」「筆記用具」「水」「食料」「名簿」「時計」「ランタン」「ぬいぐるみ」「冊子」「アクセサリー」であった。
ずらっとならんだ物から、役立ちそうなものを探そうとねねねは物色し始める。
そんなときだった彼女の耳に、英語で話しかけてくる女の声が聞えたのは。

『すいません』

ねねねは物色をやめる。いったい誰だ?
自分に声を掛けてきた人物に探すために辺りを見回す。だがいくら部屋の中や入り口などに目を向けても、誰も見当たらない。
空耳だろうか?



『前です、目の前です』

どうやら空耳ではないらしい。体の前方へと視線を向ける。
くりくりとしたつぶらな瞳と目が合った。
目の前にいるのは、オレンジ色の毛皮に緑色の帽子、赤い蝶ネクタイといった衣装。
犬なんだか何なんだか、よくわからない頭。ずんぐりとしたオバQ風の二頭身。
いちおう、愛くるしい感じなテディベアと思われる人形。
名はボン太君。はたして、これが喋ったのだろうか?

『違います、その人形ではありません。私はあなたの手元にいます』

そう言われたねねねは視線を下にずらす。そこには緑色の宝石がついているアクセサリーが転がっていた。
ねねねは頭上を仰ぎ見る。
拝啓。父さん、養母さん、今時のアクセサリーって喋るものなのでしょうか、教えてください。
特にコンピュータ開発をしている父さん、AIとかってこのサイズで実現可能なのですか?
ねねねは少々予想外の展開に微妙に現実逃避をした。だがそんな場合でもないと思い直し、意識を現実へと戻す。
この程度、紙使い四人と壁すり抜け能力者二人に出会うことに比べれば、喋るアクセサリーに出会うことなど珍しいわけがない。
右手でアクセサリーを掴み上げ、話しかけてみる。

「……で、あんた何?」
『始めまして、私はマッハキャリバーと申します。あなたは?』

どうやら、話が通じない相手ではないらしい。会話を続けることにする。

「私は菫川ねねね、あんたもくだらないゲームに巻き込まれた被害者?」
『……それは、どういうことですか?』

マッハキャリバーは不思議そうに疑問を投げかけてくる。どうやらなにも知らないらしい。
ねねねは自分がここに連れてこられた経緯。そして、螺旋王ロージェノムのことをマッハキャリバーに伝えることにした。
ねねねが現状を伝え終わるとマッハキャリバーは、

『ねねねさん、申し訳ありませんが名簿とやらを開いてくれませんか?』

そう言った。疑問に思いながらもねねねは聞き返す。

「どうして?」
『集められた八十二人の中に、私の相棒も含まれているかもしれません』

たしかに、マッハキャリバーの言うとおりである。むしろ知り合いが巻き込まれているかもしれないと最初に心配するべきだった。
ねねねは名簿を開き、マッハキャリバーと共に覗き込む。どこに目があるかは分からなかったが。



『私の相棒だけではなく、他の仲間達もいるようです』
「そう、私の方も二人ほど巻き込まれちゃってるみたいね」

ねねねは見た。二人もいないであろう珍しすぎる名を持つ女と、自分の家に住む居候の少女の名前を。

『そうですか、ならば一刻も早く探さないと』

もちろん、ねねねもそのつもりだ。ミニブックに絡まないようにマッハキャリバーを首にかけ、
デイバッグの中に入っていたものを急いで中に入れ戻す。
そして、最後に分厚い冊子を片付けようとした。

(ん?)

そして、気付く。その分厚い冊子の表紙に書かれた文字に。

『詳細名簿+』

その簡単な一文だけが冊子に書かれていた。完全詳細名簿とはいったいなんなのか?
名簿とは違うのか? これも個人に支給されるアイテムなのか? プラスがあるならマイナスもあるのか?
読んでいる時間もおしい急がなければいけない、とねねねは思うものの、

「マッハキャリバー、ちょっと待って。これ読んでから」

興味を多大に刺激され読んでみることにした。
ページを開くと陽気そうな典型的なアメリカ人の顔写真とその人物のプロフィールと思われる文章が載っていた。
ねねねはアイザック・ディアンという人物のプロフィールを読み進める。
そしてかの人物が泥棒であり、不死の酒を飲んだ不死者であることを知った。
ねねねは書かれていたことに驚きつつも、好奇心から次のページを開く。
詳細名簿には読子やアニタ達に比べても、遜色劣らぬ異能や経歴を持つ多数の人物や自分と同じような一般人たちのプロフィールが載っていた。
思わず、これらの人物を主人公にした話を複数頭の中に練り上げてしまうが我慢する。
自分のプロフィールやマッハキャリバーの知る六課メンバーの詳細が合っていたことから、ここに載ってある情報は事実であると検討できる。
詳細名簿からはマッハキャリバーは名前を知らなかったため始め気付けなかったが、クアットロというサイボーグが危険な人物だと写真から確認できたこと、
そして技術者と思しき面子がいたのがラッキーだった。爆弾首輪を外すということにも期待できそうだ。
そういえば、元エージェントであるあいつはどうだろうか?
彼女ならば爆弾を解体できそうなものなのだが。

         ※         ※         ※

「爆弾を~解体しましょ♪ 爆弾を~解体しましょ♪ とっとと~解体しましょ♪
 でも、マニュアル読んでから解体し~ましょ~♪」

ぺら               ぺら                ぺら
カチッコチッカチッコチッカチッコチッカチッコチッカチッコチッカチッコチッカチッコチッ


どっごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!!

         ※         ※         ※



駄目だ、普通に当てにできない。
まあ、普通に技術者をあたっていった方がいいだろう。どこにいるのかも、どうしているのかも分からないが。
他にも詳細名簿のメリットはある。
探さなくてはいけない人物達の容姿の写真が貼ってあることだ。これで幾ばくかは探しやすくなったはずだ。
だが同時にデメリットがある。行動に対する思いが書かれていないことだ。
それは一番重要なことだとねねねは思う。
例えば『君が僕を知ってる』でデビューした13歳の菫川ねねねがなぜ本を書き始めたのかで、
金儲けをしたいから書いたと解釈するのと、読ませたい誰かのために本を書いたと解釈するのでは、大きく違うのだ。
故に、真に危険人物と断定できる人間と、実は危険人物ではない人間との差が分かりづらい。
もっとも、目下のところは危険と思われる面子に近づかなければいいだけなのだが。
ねねねがこの詳細名簿の欠点に気付けたのは、作家という心理描写や読み手を騙すトリックを熟知する職業についているからであり、
実は自分の知り合いの善良な人間が、とてつもないことを犯していたということを知っていたからでもある。

 ねねねは名簿をマッハキャリバーに見えない位置にずらし、読子・リードマンの欄を開ける。
そこにはいかに彼女が本好きか、いかに彼女が紙を操れるのか、アニタや自分といかなる関係かが書かれてあった。
そんな読子・リードマンのプロフィールの中にこんな一文が書かれてある。


『読子・リードマンは先代である十五代ザ・ペーパーことドニー・ナカジマを殺害、一年後に十六代ザ・ペーパーに就任。
 なお、ドニー・ナカジマと読子・リードマンは非公認ながら恋愛関係にあった』


ねねねはその一文を読んでも驚きを表情にだすことはなかった。なぜなら、書かれているであろうことを予想していたからだ。
ねねねは思い出す、あの時の夜を。読子・リードマンをザ・ペーパーという紙使いだと知った事件のことを。
自分に語ってくれた真実を。泣きながらも、自分を助け出してくれた女の言葉を。
だから信じられる、彼女のことを。

 だが、他の参加者は読子のことなど知らないのだ。もし、そんな状態でこの詳細名簿のことを見せればどうなるのか?
そして、読子・リードマンのプロフィールを知られてしまったら? あまりいい結果になるとはとても思えない。

(……たく、しょうがない)

 ねねねは思考の海から這い出し、読子・リードマンとアニタ・キングのページを破り取る。二人の秘密やアキレス腱は誰にも見せたくない。



『いったい何を?』
「人間誰しも知られたくないことがあるってだけ。女には特にね」

ライターをポケットから取り出し、二枚の紙を火で炙る。
火はたちまち紙に燃え移り、ねねねは側にあった灰皿に燃える紙を捨てる。
詳細名簿が複数存在しないのならば、これで読子とアニタの情報は自分しか知らないことになる。
もっとも、テレパシーを使える能力者等もいるこの状況では、どれだけ秘密が漏れないかは不明であるが。

(さてと、随分時間が立っちゃったわね)

ねねねが時計を見ると、二時を回っていた。名簿を読むのに時間が取られたらしい。
遅れた分は急がなければ。とりあえずの目的地は本が一番あるところ、つまり図書館。


 本ある所に、紙使いあり。


「わるい、時間が掛かった」
『いえ、仕方ありません』

ねねねの謝罪に名簿はそう返し、

『ですが、相棒達は本当に見つけられるのでしょうか?』

続けてそう言った。
この舞台には、多数の実力者達がおりその大半は道具を用いず、もしくは代用しやすい者達がほとんどなのである。
スバルも戦闘機人モードになれば単独で戦えるが、はたして他の六課メンバーはデバイスなしでこの状況を乗り切れるのだろうか?
ゆえに非難とも取れる言葉がでる。
 ねねねにはデバイスの考えなど分からないし、表情をうかがい知ることもできない。
それでも、非難されているかもしれないと思っていても言葉を紡ぐ。マッハキャリバーを安堵させるために、自身を鼓舞するために。
右手の親指で自分の胸を指し、息を吸い込み、口を開く。

「安心すれ、俺がついてるんだ。ハッピーエンド間違いなし!」




【E-1 /水族館事務所内/1日目/黎明】

【菫川ねねね@R.O.D(シリーズ)】
 [状態]:健康。
 [装備]:マッハキャリバー(待機状態)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、
 [道具]:支給品一式、詳細名簿+@アニロワオリジナル、ボン太君のぬいぐるみ@らき☆すた
 [思考]
 第一行動方針:誰か人を探す。
 第二行動方針:図書館に行く、誰も見つけられなければ本がある場所へ。
 第三行動方針:アニタ、読子、スバル、ティアナ、キャロ、エリオ、はやて、シャマルを探す。
 第四行動方針:とりあえず、クアットロや詳細名簿に載っていた危険人物と思しき面子には気をつける。
 最終行動方針:打倒タコハゲ、そしてハッピーエンド。
[備考]:詳細名簿+はアニタと読子のページだけ破り取られています。


 ※詳細名簿+について
『詳細名簿+は、男女別男先あいうえお順に各参加者のプロフィールと顔写真が乗っています。
 プロフィールの詳細はもう一つの詳細名簿と違い、各参加者との関係、これまで実行してきた行動、
 技能や異能等を中心に事実関係を重視した情報が載っています。
 ですが、なぜそういう関係となったのか。なぜその行動をしたのかなどの心理は書かれていません』


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菫川ねねね 046:響け!フォルゴレの歌!





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