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**罪歌 阿鼻叫喚の狂った舞台(後編) ◆wYjszMXgAo
――――轟音が鳴り響く。
かがみとラッド、二人分の螺旋力を乗せた上に、不死者の再生能力頼みに人間の筋力の限界すら天元突破させた上での狂拳だ。
もたらした結果は、破壊の一言。
コンクリートの壁は完全に陥没し、ひび割れた。
小さな地震とも思える程の振動が辺りに轟き、止んだ。
全身から血を噴き出しながら繰り出された一撃は鉄塊よりなお物騒なバリアジャケットを粉々に砕き、
中にあったかがみ本人の腕すらも原形を留めさせないほどにひしゃげさせていた。
が、即座にどちらも修復される。
「……へ、運が良かったなあナオちゃんよぉ」
……そして、結城奈緒は倒れ伏していた。
胸をわずかに上下させているのは生き延びている証。
……単純な話だ。
かがみの左腕が到達する前に気絶した奈緒は、くたりと体を曲げ地面に倒れこんだ。
全身を利用するパンチを放つかがみにそこから軌道修正することは叶わず、壁に拳をプレゼントすることになったという訳だ。
しかしそれだけではラッドの殺意は納得してくれるはずもない。
ゆっくりと、ゆらりと歩き始めるかがみの先にあるのは先刻すっぽ抜けたヴァルセーレの剣。
地面に突き刺さったそれを引っこ抜き、軽く振り回す。
「クク、ハハハハハ……! どうなのよおいこの状況はよ。
気絶している人間ってのは自分が死なねえと思ってんのかね、どうなのかねえ」
無表情で立ち止まり、考えるように俯いて――――、しかし0,5秒で笑みを取り戻す。
「まあどっちでもいいよな、殺すんだからよぉ、ヒャァハハハハハハハハハハハッ!!」
ケタケタという声を漏らしながら、倒れたままの奈緒の前に立つ。。
一瞬だけ金ぴかな男の顔を思い浮かべ、そいつを殺した時の喜びに期待しながら剣を振りかぶった。
―――――刀身に月が映り込む。
一息にかがみはそれを振り下ろし――――、
……奈緒に刃を届かせる前に、ガクリ、と膝をついた。
かたかた、かたかたと、かがみの震えは止まらない。
「うぁ、あ、あ……ああぁあぁあああああぁああああ……!」
――――まるで、自分が自分でなくなってしまうかのような感覚。
確かに自分が柊かがみであるという自覚さえ失っていく。
かがみ自身には殺戮の嗜好など全くないのに。理解することさえできないのに。
……自分自身のどこかが、信じられないほどの歓喜を催しているのだ。
己が信用できず、相容れないはずの狂気に取り込まれそうな浮遊感にも似た実感のなさ。
――――かがみの感じる全てが、視界に映るあらゆるものが、ボロボロになって崩れ落ちていくようだった。
それは、フィーロ・プロシェンツォがセラード・クェーツを食らった後に湧き上がった恐怖と全く同一のもの。
奪う事を。『食う』事を何よりも楽しむセラードを理解できず、彼は一人でそれを抱え込み続けた。
自身がセラードのようになることを恐れるがあまり、セラードの記憶を使おうとさえしなかった。
だが、記憶は徐々に混ざり合っていく。
かがみにも確からしい足場はなく、記憶に踏み込みそれを行使すれば、自我がラッド・ルッソに侵食されそうになっていく。
殺人の悦楽は、確かに自分のうちから生じているのだから。
フィーロはある時、こう言った。
『自分がどうにかなって、組の人間やエニスたちに手を出しさえしなければ別に自分が誰であろうとも構わない』と。
……逆に言えば。
たとえ自我がかがみのままであろうとも。
――――ラッドの嗜好が完全に自身に定着してしまう可能性は確実に存在するのだ。
それも、この先永遠に。
自分は不死者なのだから。
果たして――――、いつの日か、自分がラッド・ルッソに成り代わられてしまう可能性すらもあるのではないか。
分からない。分からない。
何よりの恐怖……未知。
自分が自分でなくなるのかどうかは、それこそその時が来ないと分からない。
それがただ純粋に、怖い。
確かなのは、ラッド・ルッソのあらゆる構成物が自分のうちにあるという、それだけだ。
怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。
自分は一体、誰なのだろう。
柊かがみ? そうかもしれない。
――――この場に残った唯一の知人、小早川ゆたかの姿を思い浮かべる。
彼女と知り合いなのは柊かがみ。だから、自分は柊かがみだ。
彼女はこれから向かう予定の刑務所にいるはずである。
だが、しかし。
……彼女は、今の自分を柊かがみと認めてくれるのだろうか?
不死者などという存在になり、殺人鬼を己の内に食らったこの自分を。
肯定の可能性は最悪の予想があっさりと覆い被せてしまう。
もし彼女が自分を柊かがみと認めなかったら、自分は一体誰なのだろう。
……それこそ。それこそ、自分は殺人鬼であるあの男なのでは――――、
地面に手をつき、赤ん坊よりも無防備にかがみはただただ震え続ける。
手に握ったままのヴァルセーレの剣が怖ろしくて、今すぐにでも手放したくなる。
だが指の一本すらまともに動いてくれない。
引き剥がしたくても、反対の手も全く動かないのだ。
「あああ、ぁあ、あ……私、私は、……一体、私は、ぁぁぁぁああぁぁぁあああぁああ……、」
――――うずくまり、泣きじゃくり、えずき続ける。
その背に、ぽん、と、暖かな手が当てられた。
「……ふん。今の貴様は『不死身の柊かがみ』だ。
それ以外の何かではあるかもしれん、それ以外に何もないかもしれん。
――――だが、それだけは確かであり、お前を証明するものだ。
そうだろう? 不死身のよ」
「……アル、ベルト」
アルベルトを見つめる。
彼は、何も言わない。
ただ自分が立ち上がるのを待っているだけだ。
「……あ、」
――――そうだ。
誓ったではないか、神にでもなってみせると。
『不死身の柊かがみ』は、そこまでたどり着いてみせると。
ならば、それこそ確かな自身の縁だ。
彼女のアイデンティティは、確かにここにある。
BF団の、不死身の柊かがみ。
今の彼女がそうである事に疑いはないのだから。
たとえラッドの記憶に翻弄されようとも。
小早川ゆたかに柊かがみであることを否定されたとしても。
――――アルベルトは、確かに自分が不死身の柊かがみであると認めてくれたのだから。
ぐしぐしと涙を擦り、無理にでも笑顔を作る。
自分たちの道程は、まだまだ遠くまで続いている。
その果てを見定めるためには立ち止まるのは早すぎるのだ。
「……うん。ごめん、心配かけた。
私は不死身の柊かがみ。……それは確かなことよね。
ありがとうアルベルト。……もう平気だから」
涙が止まったかどうかは分からない。
だがかがみは頷き、ふらふらとしながらも立ち上がる。
いまだに手はまともに動かないし、足下もおぼつかないがどうにか頭ははっきりしてきていた。
……無駄な時間を過ごす意義は少ない。
さっさと話題を切り替えて、少しでも有益な会話をするべきだろう。
ラッドの力を試すという目的も達成できた以上、奈緒などに構っている暇はないのだから。
と、一つ話しておくべき事に思い当たる。
自分たちの最終目的である螺旋王を『食う』ということに関する重大な弱点についてだ。
わざとらしくこほん、と咳をつき、かがみはゆっくりと話しはじめる。
「あ、そうだ。さっきテンション上がってた時にも言ってたと思うけどさ。
……あの男の記憶から推理したことについて、ちょっと言っておきたいことがね」
落ち着きを取り戻したかがみのその声に、心中で安堵をしながらもアルベルトは頷いてみせる。
……先ほどの奈緒に向けたかがみの言葉の中でも引っかかっていた部位だ。
「……ふむ。……不死者の能力の制限か」
「……うん」
鹿威しのようにこくりとかがみは頷き、ラッドの記憶にある『不死者を殺せる可能性』を言葉にして連ねていく。
「考えてみればおかしいしね、螺旋王が死なない人間をここに放り込むなんて。
……私たちと同じく、ラッド・ルッソもこう考えてたわ。
『禁止エリアに不死者を放り込めば、殺せるだろう』って。
多分それは間違ってないわ。
もしそうでないなら、私みたいな不死者は禁止エリアに突っ込んで首輪を爆破させればいい。
後はそこに待機していれば優勝するのは簡単よ。全エリアが禁止エリアになるのを待つだけなんだから」
ここまではアルベルトにとっても予測の範疇だ。
あらためて確認し、頷いてみせる。
かがみはそれを認めると続きを話し出した。
「……で、それはつまり、首が胴体から離れたら、きっと再生できないってこと。
この意味、アルベルトなら分かるでしょ?」
……つまりは、一定以上の深いダメージを食らった場合、不死者でもどうにもならないことがあるということだ。
主催者はどうにかして参加者の力を縛っているのはアルベルト自身が良く分かっている。
……ならば、不死者に対しても制限がかかると考えるのはむしろ当然の事だろう。
いくら不死とはいえ、これからはかがみの生死について警戒のレベルを引き上げるに越したことはない。
アルベルトはかがみの言わんとすることをそう捉え、真剣な表情で答えて見せた。
「道理だな。ワシの力も十全ではない。……むしろ当然の措置か」
その返答に対して、かがみは俯きながら、悪い可能性をさらにリストアップする。
「……もしかしたら頭に致命傷を受けたりしても同じかも」
告げるかがみの顔色は、先刻とは別の意味で浮かない。
考えるまでもなくアルベルトは一つの可能性に思い当たる。
「……不死身のよ。死に恐怖したのか? その可能性に」
「……うん」
当たり前だろう。不死だからとこれまでそれに頼ってきたものにとって、それが十全でないという可能性を突きつけられたのだから。
これまで多少は安心していた分、襲い掛かる不安は倍加してもおかしくはない。
だから、アルベルトは言い放つ。
それこそが当然なのだと言わんばかりに。
「いい心掛けよ。死を覚悟するに越したことはないのだ」
――――そう。
生命とは、そもそも死するもの。
それを意識することこそ自然であり、しないのはそれこそ慢心なのだ。
あの、ギルガメッシュのように。
されど、これは言っておく必要があるだろう。
『梯子は足りているのか?』
――――ずっと脳内に響き続ける神父の声。
それに対する返答でもある。
口に出し、伝えることで言霊を現実化させる。
これこそが、我々の道であると。
「……だが、案ずることはない。
不死身の柊かがみよ、貴様は安心してよいのだ。
――――ワシが貴様を守って見せるからな」
……柄にもない。分かっている。
目の前のかがみすら顔を紅くし、慌てているくらいなのだから。
「……え? ちょ、ちょっと、あの……」
だが必要な行為だ。
今はいない神父に対し、告げる。
我々の道に翳りなどないと。
たとえ翳りが見えようとも、そのことごとくを打破してみせると。
その想いを込め、言い放つ。
「ん? くく、生意気にもワシが信頼できぬとでも言いたいのか?」
「そ、そうじゃなくて、さっきからどうしてそんな事ばかり……」
――――そう、それを。
その覚悟を、目の前の少女にも伝えなくてはなるまい。
彼女が螺旋の王を食らうなら、それを導き、また護るのが自分の仕事だ。
再度、それをお互いの中に留め置く。その為の儀式なのだ。
「なに、あらためての確認だ。ワシらの進む先はか細い梯子ではなく、泰山の頂であるという、な」
にやりと笑い、断言する。
「……え?」
かがみの表情を見て、不安を口に出してしまったことに少しだけ焦燥感を覚えるも、大した問題ではない。
……そう、梯子などではない。
踏みしめるに値する、高く高く聳える峻峰なのだと、己に言い聞かせる。
……やけに饒舌なのは分かっている。
それもこれも全て神父の言葉のせい……いや、おかげなのだということも。
これは良い契機だ。
自身の不安を吐き出し、互いに支えあう為の。
言葉は戒めの楔となり、自身の果たすべき仕事を浮き彫りにするのだ。
なれば各々の領分を弁え、出来る事出来ない事を助け合い、いかなる困難にも立ち向かえるだろう。
――――そして。
それを乗り越え、成し遂げるための信頼を築いていこう。
「……いや、何でもない。そして、だ。もっとワシに背中を預けてみせるがいい。
何故なら――――」
ひと息を置き、告げる。かがみと自身の不安を振り払うかのように笑いながら。
「ワシは貴様より遥かに強い。こんな殺し合いで死にはせん程度にはな」
サク。
「……む?」
――――軽い音が、鳴り響いた。
「……言った、よなあ」
見れば、かがみは俯きながら、笑っている。
「言っちまったよなあ……」
どこまでも歪み、捻じ曲がりきった笑みを。
「テメエは……、よりによって……!」
――――殺人鬼の笑みを。
「その言葉を! この『俺』の前で!」
ゆっくりと、かがみの顔の更に下のほうを見る。そこには。
「……自分は死なねぇって、」
かがみがずっと握ったままの、ヴァルセーレの剣が自分の左胸を貫いていて。
「ほざいちまったよなぁぁぁああああああぁぁぁあああぁぁああああッ!!」
言葉と同時。
いや、その直前からかがみが振りかぶっていた鋼の左拳が、一直線に剣の柄尻を自分の左胸の、
奥の、奥の、奥の、奥の、奥の、奥の、奥の、奥まで押し込んでいく。
「……不死身の?」
――――呆然と。
ただ、呆然と。
滴る血雫は既に池を造っている。
それを確認してから、アルベルトはのろのろと面を上げ、かがみの顔を見る。
その表情には確かに殺人鬼の笑みが浮かんでいて――――、
しかし、それは口元だけだった。
眉も目も。それが語るのはかがみ本人すら状況を理解できていないという驚愕の二文字。
口だけをどこまでも歪ませながら、いつしかかがみの瞳からはぼろぼろと涙が零れ落ちてきていた。
「…………アル、ベルト?」
狂った喜色を表現する口元から、呆けた調子の少女の声が発されると同時。
――――十傑集が一人、衝撃のアルベルトは、あっさりと。
あまりにもあっさりと、膝をついた。
「あああああああああああぁぁぁぁあああぁぁあああああぁぁぁああぁぁあああああ
ぁぁぁぁぁぁぁあああああああぁああああぁぁぁああああぁああああああああぁあ
あああああぁああぁぁあぁぁあああぁああぁぁあああああああぁあああぁぁあぁっ!!」
少女の慟哭が、夜の闇に響き渡る。
――――思えば予兆はあったのだ。
アルベルトの自信に満ち溢れた言葉を聞いた時の、かがみの態度。
それは、アルベルトに向かって込み上げる殺意を押し込める為に必死だったというだけのことだ。
何が原因だったかは、追究しても仕方がない。
例えば、かがみがラッド・ルッソの記憶に踏み込みすぎたのが原因かもしれない。
あまりにその殺意に馴染みすぎて――――ある程度なら殺意を抑えられると油断していたのだろう。
あるいは、ラッド・ルッソがあまりに歪み、あまりに真摯に死なないと思っている人間を嫌悪していたからかもしれない。
どこまでもどこまでも捻じ切れきった彼のその信念は、たとえ食われようとも薄まることなくかがみの中にどす黒い輝きを放っていたのだ。
何より、言峰綺礼の埋め込んだ楔が強く強くアルベルトの心を抉ったからかもしれない。
――――彼は、どこまでを見通していたのか。
確実に言えるのは、彼の言葉がなければ、決してアルベルトが『自分は死なない』などと言わなかったに違いないという事である。
かがみと、自分自身を安心させる為に。
◇ ◇ ◇
――――今から少しだけ、殺し合いとは全く関係のない話をしよう。
話というよりもただのエピソード。
ただの余談。ただの蛇足。
興味がないなら立ち去っても構わない。
――――ふむ、それでも知っておきたいのか?
まあいい。
◇ ◇ ◇
……天を突くような摩天楼。
いくつものいくつものビルの中、その街は今日も相変わらずの様相を見せていた。
止まらない雑踏。
とめどない話し言葉。
ずうずう繋ぎの車の群。
アニメキャラのプリントされた痛車。
人の海を吐き出す電車。
いくつもの店の客を呼び止める声。
町の所々に姿を見せる黄色い布。
巨漢の黒人の目立つ寿司屋。
公園のベンチを引っこ抜くバーテン服。
夜の道路を駆け抜ける漆黒のライダー。
――――そんなものが織り成す日常の中、一人の少女が歩いていた。
地味な近場の学校の制服に、眼鏡。
文学少女というイメージが極めて近いだろう。
あたりをきょろきょろと見回しながら同級生の男子二人を探す彼女は、ふと違和感を覚えて振り返った。
そこにいたのは、目の鋭い外国人の男性だ。
彼はこちらを見ながらなにやら流暢な日本語で独り言を繰り返している。
……少女にとっては聞き捨てならない言葉を。
「……意識を持った妖刀、か。
それに乗っ取られない為に、己すらも客観視し世界全てを絵の中の様に認識する。
成程、それも一つの手段ではあるな。まあいい」
――――愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる
愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる
愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる――――
――――男性の言っている事は、あまりに的確に少女の存在を浮き彫りにしていた。
彼女がその身に宿すはまさしく妖刀。
所有者本人の意識を『怨嗟にも近い愛の言葉』を振りまきながら奪い取り、斬りつけた人間を更に己の支配下に置くという曰くつきの刀である。
一応、刀の意思に抵抗すれば逆に乗っ取り返すこともできるのだが、それができる人間は殆どいないのが現状だ。
しかし、少女は刀に意識を乗っ取られていない。
男性の言うとおりに自分自身すらも客観視し、この世のありとあらゆる事象と意思を隔離することで、自我を保っているのである。
――――意志の強さによるものではない、数少ない例外だ。
何となく不穏に思い、近づきながら少女は男性に話しかける。
「あの……」
と、不意に男性がこちらを見据え、訳の分からないことを言い出した。
「ん? ああ、気にしないことだ。
良く似ている事例を思い出していたんでな。まあいい。
……ホムンクルスの『水』に良く似ている特性だと思っただけだ」
「……水?」
言っていることは良く分からないが、とりあえず相槌を打つことにする。
すると男はにやりと笑い、こう続けた。
「……意思を持った水だ。単体では意味を成さないが、それを人間が飲むことでその水に意識を乗っ取られる。
……正確にはお前の刀の様に意識の奪い合いをするわけだが、やはり大体乗っ取られるな。
そして水を飲み、支配された人間は別個の肉体を持ちながらもあらゆる情報を同時に共有する。
……ひとつの、『水』そのものの意思の下にな。
だが、水の支配を受けず、奪い合いもせず、意識を共存させる方法が一つある」
一息。
「それは、水と人間双方が身体の支配権を放棄した場合だ。
逆に言えば、どちらか一方が支配権を放棄しただけなら、もう一方が相手の知識を得るだけになる」
「……ええと」
返答に窮する少女。だが、男はそれに全く関心を向けずにただ淡々と知識を紡いでいく。
「面白いだろう? お前の刀であれ、水の場合であれ――――、
身体の支配権というのは、常に強い意識を持ったものだけが表に出てくる。
お前みたいなのは本当に例外としか言いようがない。
――――そうだな。
あの少女の場合も、もし少女自身が意思を放棄したならば――――、」
そこまで口にしながらも男は言葉を区切り、言い直す。
「……まあいい」
強い風が吹いた。
少女は目を閉じ、風が収まった頃合にゆっくりと見開いていく。
……そこには、もう誰もいなかった。
「……何だったんだろう」
疑問に思い口に出すも、答えるものは誰もいない。
しばし考え、……出てきた答えは『考えるだけ無駄』というものだった。
何せ、異常な存在は彼女の内にもいるのだから。
と、どこからか彼女の名を呼ぶ声が聞こえてくる。
前を向いてみれば、朴訥そうな少年と垢抜けた少年の二人が手を上げて走り寄ってくる所だった。
少女はさっさと今の記憶を脳のどこかに仕舞い込み、二人の下まで歩いていくことにした。
少女自身の日常が、殺し合いとは縁のないところで行われていく。
◇ ◇ ◇
――――慟哭は、已まない。
「あああああぁぁあぁぁぁあああああああぁあああぁああああぁあああああぁあああああ
ぁぁぁぁあああああああぁぁぁああぁぁああああああああぁぁああぁあぁぁぁぁああぁ
ぁぁぁああぁぁぁぁぁぁあああああああああぁぁああああああああぁぁああああぁぁっ!!」
そして、それは次第に別物へと歪められていく。
狂々、狂々、狂々、狂々と。
狂った螺旋が紡がれ、少女の形相を変えていく。
――――柊かがみは考える。
こんなのは何かの間違いだと。
『柊かがみ』なら殺人などしないと。
『不死身の柊かがみ』なら、アルベルトを手にかけたりしないと。
それは当然なのだ。
柊かがみはごく一般的な女子高生。
そして、不死身の柊かがみはアルベルトを信頼する彼の協力者なのだから。
だが、現に彼は膝をついてこちらを見上げ、呆然としたまま動かない。
……いや、認めよう。既に死んでいる可能性すらある。
それは、事実だ。
では、何なのだろう。誰なのだろう。
――――自分は、何者なのだろう。
分からない。分からない。考えれば考えるほど――――何か大切なものを忘れていく気がする。
アルベルトを殺したという歓喜に胸のどこかが満たされていくことを自覚する。
それがとても気持ち悪い。
受け入れてしまえばいいのに、受け入れられない。
――――『柊かがみ』も、『不死身の柊かがみ』も、受け入れることを拒否しているからだ。
むかむかする。
むかむかする。
むかむかする。
――――とにかく、気持ち悪かった。
どうしても気持ち悪くなくなりたくて、
素直に喜んでしまいたくて。
だけど『柊かがみ』と『不死身の柊かがみ』がいる限り、それは叶わない。
……だったら、簡単な話だ。
ようやくそれに思い至る。
――――要するに。
要するに。
「ああぁああぁあああああああぁああああぁぁあぁああああぁああ……あぁ……あ……。
あ、あぁ……は、あ……ひゃ、は、」
『柊かがみ』も『不死身の柊かがみ』も、考える事をやめてしまえばいい。
考える事をやめて、殺戮の快楽に身を任せてしまえばいい。
「ひゃ、……ヒャハ、ヒャァハハハハハハハハハハハハハッ! ハハハハハハハハハハ!
ハァハハハハハハハハハッ! ヒャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!」
すぐに実行する。
すると、とても気分が良くなった。
口からどんどんどんどん、楽しげな言葉が紡ぎだされていく。
楽しいな。楽しいな。
自分が死なないと思っている人間を殺すのは、楽しいなあ。
「ヒャハッ! ヒャァハハハハハハハハハハ!! ヒャハハハハハハハッ!
おいおいおいおいマジかよありえねえ、ありえねぇってオイ!
なんつーか、どうよ!? アルベルトちゃんよぉオイオイオイオイ!
自分が信頼しきって! 油断しきって! 守ろうとしていたまさにその相手に!
殺られるなんて100%、絶対に、全く、究極に思わなかった相手にぶっ殺されるのはよぉ!!」
――――どこか他人事を見る目で、柊かがみの意思は自分の体がまるでラッドのように動くのを諦観していた。
目の前にはアルベルトの死体。
胸に剣が突き刺さったままのそれを見ても、ああ、そうかという程度の言葉しか浮かんでこない。
「楽しくて楽しくて楽しくて! 楽しくて仕方がねえなあオイオイオイオイ!
その表情、その眼、その台詞! いいねえ……。実にいい! 感動的にいい!
よく死なねぇって言ってくれた! すんげぇウマいディナーだったぜアルベルトちゃんよぉ!
ヒャハ! ヒャハハハハハハハハハハハハッ! ハハハハハハハハッ、ハハハ!!」
――――感情が麻痺したからなのかどうなのか。
傍観し、諦観する自分でさえもそこに存在することが煩わしくなってきた。
じゃあ、さっさと考えるのをやめてしまおう。
後はこの身体が勝手に動くのに任せてしまえば、それでいい。
そうして、かがみは意識の中の自分の瞼を静かに閉じた。
もう、何が起ころうとも起きたくないなあ、と、最後にそれだけを考えて。
「ようしテンションも上がってきたしこの小せぇ体にも慣れたことだし!
とりあえず会場内じゃ不死者でも死んでもおかしくねぇんだし!
宇宙人に改造されて思い上がったタカヤ君と舞衣ちゃんをぶっ殺しに行ってあげますかねえ!
クククハハハハ、ヒャァハハハハハハハハハハハハハハハッ!
まさかこんなガキに殺られるとは思わねえだろうなああいつらは!
ボコボコに殴り壊して! グチャグチャにすり潰して! 最ッ高のデザートに仕立ててやるからよぉ!
ヒャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!」
遥かな遠くまで届かんとする、殺人鬼の哄笑。
――――静かな夜は、それをただ一つのBGMとして更に闇を深めている。
まんまるく青白い空のカガミは遠く、遠く。
月の光が深々と、虚ろな顔をした男を照らし出していた。
誰に知られるでもなく、彼の首に嵌まった円環は役目を終える。
剣に貫かれた心臓の、最後の鼓動とともに一つの伝令を飛ばしたことで。
――――メッセージはシンプルなたったの一文。
&color(red){【衝撃のアルベルト@ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日- 死亡】}
【B-5南部/道端/2日目/深夜】
【柊かがみ@らき☆すた】
[状態]:不死者、囚人ルック(下に吐瀉物まみれの番長服)、髪留め無し、空腹、ラッドモード(暴走)
[装備]:つかさのスカーフ@らき☆すた、ローラーブーツ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
シルバーケープ@魔法少女リリカルなのはStrikerS、 クラールヴィント@リリカルなのはStrikerS、
バリアジャケット
[道具]:デイバッグ×12(支給品一式×12[うち一つ食料なし]、[食料×4消費/水入りペットボトル×1消費])、
フラップター@天空の城ラピュタ、 超電導ライフル@天元突破グレンラガン(超電導ライフル専用弾0/5)
雷泥のローラースケート@トライガン、巨大ハサミを分解した片方の刃@王ドロボウJING、包丁
テッカマンエビルのクリスタル@宇宙の騎士テッカマンブレード、オドラデクエンジン@王ドロボウJING
緑色の鉱石@天元突破グレンラガン、全てを見通す眼の書@R.O.D(シリーズ)、サングラス@カウボーイビバップ
アンチ・シズマ管@ジャイアントロボ THE ANIMATION、マオのヘッドホン@コードギアス 反逆のルルーシュ
大量の貴金属アクセサリ、ヴァッシュの手配書@トライガン、魔鏡の欠片@金色のガッシュベル
防水性の紙×10、暗視双眼鏡、首輪(つかさ)、首輪(シンヤ)、首輪(パズー)
奈緒が集めてきた本数冊 (『 原作版・バトルロワイアル』、『今日の献立一〇〇〇種』、『八つ墓村』、『君は僕を知っている』)
がらくた×3、柊かがみの靴、予備の服×1、破れたチャイナ服
[思考]
基本-A: ――――――――。(思考放棄)
基本-B:自分は死なないと思っている人間を殺して殺して殺しまくる(螺旋王含む)。
0-A:――――――――。(思考放棄)
0-B:さぁて、さてさてさてさて! タカヤ君と舞衣ちゃんを殺しましょうかね、しに行きましょうかねぇ!
1:舞衣とDボゥイをぶっ殺しに行く。その後刑務所の面子と合流。
2:映画館でラッドが殺し損ねた奴は必ず殺す。ギルガメッシュは特に殺す。
3:清麿の邪魔者=ゲームに乗った参加者を重点的に殺す。
4:足手まといがあまり増えるようなら適度に殺す。
5:基本方針に当てはまらない人間も状況によって殺す。
6:覚悟のある人間ばかりなので面白くないから螺旋王もぶっ殺す。
7:とりあえず、死ぬ可能性のある会場内では自身の不死について懸念することはやめる。その後については考えない。
[備考]:
※会場端のワープを認識。
※奈緒からギルガメッシュの持つ情報を手に入れました。
※繰り返しのフルボッコで心身ともに、大分慣れました。
※ラッド・ルッソを喰って、彼の知識、経験、その他全てを吸収しました。
フラップターの操縦も可能です。
※ラッドが螺旋力に覚醒していた為、螺旋力が増大しています。
※ラッドの知識により、不死者の再生力への制限に思い当たりました。
※ギルガメッシュ、Dボゥイ、舞衣に強い殺意を抱いています。
※『自分が死なない』に類する台詞を聞いたとき、非常に強い殺意が湧き上がります。
※かがみのバリアジャケットは『ラッドのアルカトラズスタイル(青い囚人服+義手状の鋼鉄製左篭手)』です。
※螺旋力覚醒
【結城奈緒@舞-HiME】
[状態]:気絶、疲労(特大)、右手打撲、左手に亀裂骨折、力が入らない、
全身に打撲、顔面が腫れ上がっている、左頬骨骨折、鼻骨骨折、更に更にかがみにトラウマ
[装備]:無し
[道具]:無し
[思考]
基本方針:とりあえず死なないように行動。
0:…………。
1:ギルガメッシュに言われたとおり、刑務所へ向かう。
2:柊かがみ(inラッド)に非常に恐怖。
3:静留の動きには警戒しておく。
4:何故、自分はチャイルドが使えないのか疑問。
[備考]:
※本の中の「金色の王様」=ギルガメッシュだとまだ気付いていません。
※ドモンの発した"ガンダム"という単語と本で読んだガンダムの関連が頭の中で引っ掛かっています。
※博物館に隠されているものが『使い方次第で強者を倒せるもの』と推測しました。
※第2、4回放送を聞き逃しました。
※奈緒のバリアジャケットは《破絃の尖晶石》ジュリエット・ナオ・チャン@舞-乙HiME。飛行可能。
※不死者についての知識を得ています。
※ヴァルセーレの剣で攻撃を受けたため、両手の利きが悪くなっています。回復時期は未定です。
※ヴァルセーレの剣@金色のガッシュベルが、アルベルトの死体の左胸に突き刺さったままになっています。
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|242:[[罪歌 阿鼻叫喚の狂った舞台(前編)]]|結城奈緒|253:[[王たちの狂宴(後編)]]|
|242:[[罪歌 阿鼻叫喚の狂った舞台(前編)]]|柊かがみ|242:[[ALBERT THE IMPACTR]]|
|242:[[罪歌 阿鼻叫喚の狂った舞台(前編)]]|衝撃のアルベルト|242:[[ALBERT THE IMPACTR]]|
|235:[[幻想のアヴァタール(後編)]]|ロニー・スキアート|外伝:[[SPIRAL ALIVE]]|
**罪歌 阿鼻叫喚の狂った舞台(後編) ◆wYjszMXgAo
――――轟音が鳴り響く。
かがみとラッド、二人分の螺旋力を乗せた上に、不死者の再生能力頼みに人間の筋力の限界すら天元突破させた上での狂拳だ。
もたらした結果は、破壊の一言。
コンクリートの壁は完全に陥没し、ひび割れた。
小さな地震とも思える程の振動が辺りに轟き、止んだ。
全身から血を噴き出しながら繰り出された一撃は鉄塊よりなお物騒なバリアジャケットを粉々に砕き、
中にあったかがみ本人の腕すらも原形を留めさせないほどにひしゃげさせていた。
が、即座にどちらも修復される。
「……へ、運が良かったなあナオちゃんよぉ」
……そして、結城奈緒は倒れ伏していた。
胸をわずかに上下させているのは生き延びている証。
……単純な話だ。
かがみの左腕が到達する前に気絶した奈緒は、くたりと体を曲げ地面に倒れこんだ。
全身を利用するパンチを放つかがみにそこから軌道修正することは叶わず、壁に拳をプレゼントすることになったという訳だ。
しかしそれだけではラッドの殺意は納得してくれるはずもない。
ゆっくりと、ゆらりと歩き始めるかがみの先にあるのは先刻すっぽ抜けたヴァルセーレの剣。
地面に突き刺さったそれを引っこ抜き、軽く振り回す。
「クク、ハハハハハ……! どうなのよおいこの状況はよ。
気絶している人間ってのは自分が死なねえと思ってんのかね、どうなのかねえ」
無表情で立ち止まり、考えるように俯いて――――しかし0,5秒で笑みを取り戻す。
「まあどっちでもいいよな、殺すんだからよぉ、ヒャァハハハハハハハハハハハッ!!」
ケタケタという声を漏らしながら、倒れたままの奈緒の前に立つ。
一瞬だけ金ぴかな男の顔を思い浮かべ、そいつを殺した時の喜びに期待しながら剣を振りかぶった。
―――――刀身に月が映り込む。
一息にかがみはそれを振り下ろし――――
……奈緒に刃を届かせる前に、ガクリ、と膝をついた。
かたかた、かたかたと、かがみの震えは止まらない。
「うぁ、あ、あ……ああぁあぁあああああぁああああ……!」
――――まるで、自分が自分でなくなってしまうかのような感覚。
確かに自分が柊かがみであるという自覚さえ失っていく。
かがみ自身には殺戮の嗜好など全くないのに。理解することさえできないのに。
……自分自身のどこかが、信じられないほどの歓喜を催しているのだ。
己が信用できず、相容れないはずの狂気に取り込まれそうな浮遊感にも似た実感のなさ。
――――かがみの感じる全てが、視界に映るあらゆるものが、ボロボロになって崩れ落ちていくようだった。
それは、フィーロ・プロシェンツォがセラード・クェーツを食らった後に湧き上がった恐怖と全く同一のもの。
奪う事を。『食う』事を何よりも楽しむセラードを理解できず、彼は一人でそれを抱え込み続けた。
自身がセラードのようになることを恐れるがあまり、セラードの記憶を使おうとさえしなかった。
だが、記憶は徐々に混ざり合っていく。
かがみにも確からしい足場はなく、記憶に踏み込みそれを行使すれば、自我がラッド・ルッソに侵食されそうになっていく。
殺人の悦楽は、確かに自分のうちから生じているのだから。
フィーロはある時、こう言った。
『自分がどうにかなって、組の人間やエニスたちに手を出しさえしなければ別に自分が誰であろうとも構わない』と。
……逆に言えば。
たとえ自我がかがみのままであろうとも。
――――ラッドの嗜好が完全に自身に定着してしまう可能性は確実に存在するのだ。
それも、この先永遠に。
自分は不死者なのだから。
果たして――――いつの日か、自分がラッド・ルッソに成り代わられてしまう可能性すらもあるのではないか。
分からない。分からない。
何よりの恐怖……未知。
自分が自分でなくなるのかどうかは、それこそその時が来ないと分からない。
それがただ純粋に、怖い。
確かなのは、ラッド・ルッソのあらゆる構成物が自分のうちにあるという、それだけだ。
怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。
自分は一体、誰なのだろう。
柊かがみ? そうかもしれない。
――――この場に残った唯一の知人、小早川ゆたかの姿を思い浮かべる。
彼女と知り合いなのは柊かがみ。だから、自分は柊かがみだ。
彼女はこれから向かう予定の刑務所にいるはずである。
だが、しかし。
……彼女は、今の自分を柊かがみと認めてくれるのだろうか?
不死者などという存在になり、殺人鬼を己の内に食らったこの自分を。
肯定の可能性は最悪の予想があっさりと覆い被せてしまう。
もし彼女が自分を柊かがみと認めなかったら、自分は一体誰なのだろう。
……それこそ。それこそ、自分は殺人鬼であるあの男なのでは――――
地面に手をつき、赤ん坊よりも無防備にかがみはただただ震え続ける。
手に握ったままのヴァルセーレの剣が怖ろしくて、今すぐにでも手放したくなる。
だが指の一本すらまともに動いてくれない。
引き剥がしたくても、反対の手も全く動かないのだ。
「あああ、ぁあ、あ……私、私は……一体、私は、ぁぁぁぁああぁぁぁあああぁああ……」
――――うずくまり、泣きじゃくり、えずき続ける。
その背に、ぽん、と、暖かな手が当てられた。
「……ふん。今の貴様は『不死身の柊かがみ』だ。
それ以外の何かではあるかもしれん、それ以外に何もないかもしれん。
――――だが、それだけは確かであり、お前を証明するものだ。
そうだろう? 不死身のよ」
「……アル、ベルト」
アルベルトを見つめる。
彼は、何も言わない。
ただ自分が立ち上がるのを待っているだけだ。
「……あ、」
――――そうだ。
誓ったではないか、神にでもなってみせると。
『不死身の柊かがみ』は、そこまでたどり着いてみせると。
ならば、それこそ確かな自身の縁だ。
彼女のアイデンティティは、確かにここにある。
BF団の、不死身の柊かがみ。
今の彼女がそうである事に疑いはないのだから。
たとえラッドの記憶に翻弄されようとも。
小早川ゆたかに柊かがみであることを否定されたとしても。
――――アルベルトは、確かに自分が不死身の柊かがみであると認めてくれたのだから。
ぐしぐしと涙を擦り、無理にでも笑顔を作る。
自分たちの道程は、まだまだ遠くまで続いている。
その果てを見定めるためには立ち止まるのは早すぎるのだ。
「……うん。ごめん、心配かけた。
私は不死身の柊かがみ……それは確かなことよね。
ありがとうアルベルト……もう平気だから」
涙が止まったかどうかは分からない。
だがかがみは頷き、ふらふらとしながらも立ち上がる。
いまだに手はまともに動かないし、足下もおぼつかないがどうにか頭ははっきりしてきていた。
……無駄な時間を過ごす意義は少ない。
さっさと話題を切り替えて、少しでも有益な会話をするべきだろう。
ラッドの力を試すという目的も達成できた以上、奈緒などに構っている暇はないのだから。
と、一つ話しておくべき事に思い当たる。
自分たちの最終目的である螺旋王を『食う』ということに関する重大な弱点についてだ。
わざとらしくこほん、と咳をつき、かがみはゆっくりと話しはじめる。
「あ、そうだ。さっきテンション上がってた時にも言ってたと思うけどさ。
……あの男の記憶から推理したことについて、ちょっと言っておきたいことがね」
落ち着きを取り戻したかがみのその声に、心中で安堵をしながらもアルベルトは頷いてみせる。
……先ほどの奈緒に向けたかがみの言葉の中でも引っかかっていた部位だ。
「……ふむ……不死者の能力の制限か」
「……うん」
鹿威しのようにこくりとかがみは頷き、ラッドの記憶にある『不死者を殺せる可能性』を言葉にして連ねていく。
「考えてみればおかしいしね、螺旋王が死なない人間をここに放り込むなんて。
……私たちと同じく、ラッド・ルッソもこう考えてたわ。
『禁止エリアに不死者を放り込めば、殺せるだろう』って。
多分それは間違ってないわ。
もしそうでないなら、私みたいな不死者は禁止エリアに突っ込んで首輪を爆破させればいい。
後はそこに待機していれば優勝するのは簡単よ。全エリアが禁止エリアになるのを待つだけなんだから」
ここまではアルベルトにとっても予測の範疇だ。
あらためて確認し、頷いてみせる。
かがみはそれを認めると続きを話し出した。
「……で、それはつまり、首が胴体から離れたら、きっと再生できないってこと。
この意味、アルベルトなら分かるでしょ?」
……つまりは、一定以上の深いダメージを食らった場合、不死者でもどうにもならないことがあるということだ。
主催者はどうにかして参加者の力を縛っているのはアルベルト自身が良く分かっている。
……ならば、不死者に対しても制限がかかると考えるのはむしろ当然の事だろう。
いくら不死とはいえ、これからはかがみの生死について警戒のレベルを引き上げるに越したことはない。
アルベルトはかがみの言わんとすることをそう捉え、真剣な表情で答えて見せた。
「道理だな。ワシの力も十全ではない……むしろ当然の措置か」
その返答に対して、かがみは俯きながら、悪い可能性をさらにリストアップする。
「……もしかしたら頭に致命傷を受けたりしても同じかも」
告げるかがみの顔色は、先刻とは別の意味で浮かない。
考えるまでもなくアルベルトは一つの可能性に思い当たる。
「……不死身のよ。死に恐怖したのか? その可能性に」
「……うん」
当たり前だろう。不死だからとこれまでそれに頼ってきたものにとって、それが十全でないという可能性を突きつけられたのだから。
これまで多少は安心していた分、襲い掛かる不安は倍加してもおかしくはない。
だから、アルベルトは言い放つ。
それこそが当然なのだと言わんばかりに。
「いい心掛けよ。死を覚悟するに越したことはないのだ」
――――そう。
生命とは、そもそも死するもの。
それを意識することこそ自然であり、しないのはそれこそ慢心なのだ。
あの、ギルガメッシュのように。
されど、これは言っておく必要があるだろう。
『梯子は足りているのか?』
――――ずっと脳内に響き続ける神父の声。
それに対する返答でもある。
口に出し、伝えることで言霊を現実化させる。
これこそが、我々の道であると。
「……だが、案ずることはない。
不死身の柊かがみよ、貴様は安心してよいのだ。
――――ワシが貴様を守ってみせるからな」
……柄にもない。分かっている。
目の前のかがみすら顔を紅くし、慌てているくらいなのだから。
「……え? ちょ、ちょっと、あの……」
だが必要な行為だ。
今はいない神父に対し、告げる。
我々の道に翳りなどないと。
たとえ翳りが見えようとも、そのことごとくを打破してみせると。
その想いを込め、言い放つ。
「ん? くく、生意気にもワシが信頼できぬとでも言いたいのか?」
「そ、そうじゃなくて、さっきからどうしてそんな事ばかり……」
――――そう、それを。
その覚悟を、目の前の少女にも伝えなくてはなるまい。
彼女が螺旋の王を食らうなら、それを導き、また護るのが自分の仕事だ。
再度、それをお互いの中に留め置く。その為の儀式なのだ。
「なに、改めての確認だ。ワシらの進む先はか細い梯子ではなく、泰山の頂であるという、な」
にやりと笑い、断言する。
「……え?」
かがみの表情を見て、不安を口に出してしまったことに少しだけ焦燥感を覚えるも、大した問題ではない。
……そう、梯子などではない。
踏みしめるに値する、高く高く聳える峻峰なのだと、己に言い聞かせる。
……やけに饒舌なのは分かっている。
それもこれも全て神父の言葉のせい……いや、おかげなのだということも。
これは良い契機だ。
自身の不安を吐き出し、互いに支えあう為の。
言葉は戒めの楔となり、自身の果たすべき仕事を浮き彫りにするのだ。
なれば各々の領分を弁え、出来る事出来ない事を助け合い、いかなる困難にも立ち向かえるだろう。
――――そして。
それを乗り越え、成し遂げるための信頼を築いていこう。
「……いや、何でもない。そして、だ。もっとワシに背中を預けてみせるがいい。
何故なら――――」
ひと息を置き、告げる。かがみと自身の不安を振り払うかのように笑いながら。
「ワシは貴様より遥かに強い。こんな殺し合いで死にはせん程度にはな」
サク。
「……む?」
――――軽い音が、鳴り響いた。
「……言った、よなあ」
見れば、かがみは俯きながら、笑っている。
「言っちまったよなあ……」
どこまでも歪み、捻じ曲がりきった笑みを。
「テメエは……よりによって……!」
――――殺人鬼の笑みを。
「その言葉を! この『俺』の前で!」
ゆっくりと、かがみの顔の更に下のほうを見る。そこには。
「……自分は死なねぇって、」
かがみがずっと握ったままの、ヴァルセーレの剣が自分の左胸を貫いていて。
「ほざいちまったよなぁぁぁああああああぁぁぁあああぁぁああああッ!!」
言葉と同時。
いや、その直前からかがみが振りかぶっていた鋼の左拳が、一直線に剣の柄尻を自分の左胸の、
奥の、奥の、奥の、奥の、奥の、奥の、奥の、奥まで押し込んでいく。
「……不死身の?」
――――呆然と。
ただ、呆然と。
滴る血雫は既に池を造っている。
それを確認してから、アルベルトはのろのろと面を上げ、かがみの顔を見る。
その表情には確かに殺人鬼の笑みが浮かんでいて――――
しかし、それは口元だけだった。
眉も目も。それが語るのはかがみ本人すら状況を理解できていないという驚愕の二文字。
口だけをどこまでも歪ませながら、いつしかかがみの瞳からはぼろぼろと涙が零れ落ちてきていた。
「…………アル、ベルト?」
狂った喜色を表現する口元から、呆けた調子の少女の声が発されると同時。
――――十傑集が一人、衝撃のアルベルトは、あっさりと。
あまりにもあっさりと、膝をついた。
「あああああああああああぁぁぁぁあああぁぁあああああぁぁぁああぁぁあああああ
ぁぁぁぁぁぁぁあああああああぁああああぁぁぁああああぁああああああああぁあ
あああああぁああぁぁあぁぁあああぁああぁぁあああああああぁあああぁぁあぁっ!!」
少女の慟哭が、夜の闇に響き渡る。
――――思えば予兆はあったのだ。
アルベルトの自信に満ち溢れた言葉を聞いた時の、かがみの態度。
それは、アルベルトに向かって込み上げる殺意を押し込める為に必死だったというだけのことだ。
何が原因だったかは、追究しても仕方がない。
例えば、かがみがラッド・ルッソの記憶に踏み込みすぎたのが原因かもしれない。
あまりにその殺意に馴染みすぎて――――ある程度なら殺意を抑えられると油断していたのだろう。
あるいは、ラッド・ルッソがあまりに歪み、あまりに真摯に死なないと思っている人間を嫌悪していたからかもしれない。
どこまでもどこまでも捻じ切れきった彼のその信念は、たとえ食われようとも薄まることなくかがみの中にどす黒い輝きを放っていたのだ。
何より、言峰綺礼の埋め込んだ楔が強く強くアルベルトの心を抉ったからかもしれない。
――――彼は、どこまでを見通していたのか。
確実に言えるのは、彼の言葉がなければ、決してアルベルトが『自分は死なない』などと言わなかったに違いないという事である。
かがみと、自分自身を安心させる為に。
◇ ◇ ◇
――――今から少しだけ、殺し合いとは全く関係のない話をしよう。
話というよりもただのエピソード。
ただの余談。ただの蛇足。
興味がないなら立ち去っても構わない。
――――ふむ、それでも知っておきたいのか?
まあいい。
◇ ◇ ◇
……天を突くような摩天楼。
いくつものいくつものビルの中、その街は今日も相変わらずの様相を見せていた。
止まらない雑踏。
とめどない話し言葉。
数珠繋ぎの車の群。
アニメキャラのプリントされた痛車。
人の海を吐き出す電車。
いくつもの店の客を呼び止める声。
町の所々に姿を見せる黄色い布。
巨漢の黒人の目立つ寿司屋。
公園のベンチを引っこ抜くバーテン服。
夜の道路を駆け抜ける漆黒のライダー。
――――そんなものが織り成す日常の中、一人の少女が歩いていた。
地味な近場の学校の制服に、眼鏡。
文学少女というイメージが極めて近いだろう。
あたりをきょろきょろと見回しながら同級生の男子二人を探す彼女は、ふと違和感を覚えて振り返った。
そこにいたのは、目の鋭い外国人の男性だ。
彼はこちらを見ながらなにやら流暢な日本語で独り言を繰り返している。
……少女にとっては聞き捨てならない言葉を。
「……意識を持った妖刀、か。
それに乗っ取られない為に、己すらも客観視し世界全てを絵の中の様に認識する。
成程、それも一つの手段ではあるな。まあいい」
――――愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる
愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる
愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる――――
――――男性の言っている事は、あまりに的確に少女の存在を浮き彫りにしていた。
彼女がその身に宿すはまさしく妖刀。
所有者本人の意識を『怨嗟にも近い愛の言葉』を振りまきながら奪い取り、斬りつけた人間を更に己の支配下に置くという曰くつきの刀である。
一応、刀の意思に抵抗すれば逆に乗っ取り返すこともできるのだが、それができる人間は殆どいないのが現状だ。
しかし、少女は刀に意識を乗っ取られていない。
男性の言うとおりに自分自身すらも客観視し、この世のありとあらゆる事象と意思を隔離することで、自我を保っているのである。
――――意志の強さによるものではない、数少ない例外だ。
何となく不穏に思い、近づきながら少女は男性に話しかける。
「あの……」
と、不意に男性がこちらを見据え、訳の分からないことを言い出した。
「ん? ああ、気にしないことだ。
良く似ている事例を思い出していたんでな。まあいい。
……ホムンクルスの『水』に良く似ている特性だと思っただけだ」
「……水?」
言っていることは良く分からないが、とりあえず相槌を打つことにする。
すると男はにやりと笑い、こう続けた。
「……意思を持った水だ。単体では意味を成さないが、それを人間が飲むことでその水に意識を乗っ取られる。
……正確にはお前の刀の様に意識の奪い合いをするわけだが、やはり大体乗っ取られるな。
そして水を飲み、支配された人間は別個の肉体を持ちながらもあらゆる情報を同時に共有する。
……ひとつの、『水』そのものの意思の下にな。
だが、水の支配を受けず、奪い合いもせず、意識を共存させる方法が一つある」
一息。
「それは、水と人間双方が身体の支配権を放棄した場合だ。
逆に言えば、どちらか一方が支配権を放棄しただけなら、もう一方が相手の知識を得るだけになる」
「……ええと」
返答に窮する少女。だが、男はそれに全く関心を向けずにただ淡々と知識を紡いでいく。
「面白いだろう? お前の刀であれ、水の場合であれ――――
身体の支配権というのは、常に強い意識を持ったものだけが表に出てくる。
お前みたいなのは本当に例外としか言いようがない。
――――そうだな。
あの少女の場合も、もし少女自身が意思を放棄したならば――――」
そこまで口にしながらも男は言葉を区切り、言い直す。
「……まあいい」
強い風が吹いた。
少女は目を閉じ、風が収まった頃合にゆっくりと見開いていく。
……そこには、もう誰もいなかった。
「……何だったんだろう」
疑問に思い口に出すも、答えるものは誰もいない。
しばし考え……出てきた答えは『考えるだけ無駄』というものだった。
何せ、異常な存在は彼女の内にもいるのだから。
と、どこからか彼女の名を呼ぶ声が聞こえてくる。
前を向いてみれば、朴訥そうな少年と垢抜けた少年の二人が手を上げて走り寄ってくる所だった。
少女はさっさと今の記憶を脳のどこかに仕舞い込み、二人の下まで歩いていくことにした。
少女自身の日常が、殺し合いとは縁のないところで行われていく。
◇ ◇ ◇
――――慟哭は、已まない。
「あああああぁぁあぁぁぁあああああああぁあああぁああああぁあああああぁあああああ
ぁぁぁぁあああああああぁぁぁああぁぁああああああああぁぁああぁあぁぁぁぁああぁ
ぁぁぁああぁぁぁぁぁぁあああああああああぁぁああああああああぁぁああああぁぁっ!!」
そして、それは次第に別物へと歪められていく。
狂々、狂々、狂々、狂々と。
狂った螺旋が紡がれ、少女の形相を変えていく。
――――柊かがみは考える。
こんなのは何かの間違いだと。
『柊かがみ』なら殺人などしないと。
『不死身の柊かがみ』なら、アルベルトを手にかけたりしないと。
それは当然なのだ。
柊かがみはごく一般的な女子高生。
そして、不死身の柊かがみはアルベルトを信頼する彼の協力者なのだから。
だが、現に彼は膝をついてこちらを見上げ、呆然としたまま動かない。
……いや、認めよう。既に死んでいる可能性すらある。
それは、事実だ。
では、何なのだろう。誰なのだろう。
――――自分は、何者なのだろう。
分からない。分からない。考えれば考えるほど――――何か大切なものを忘れていく気がする。
アルベルトを殺したという歓喜に胸のどこかが満たされていくことを自覚する。
それがとても気持ち悪い。
受け入れてしまえばいいのに、受け入れられない。
――――『柊かがみ』も、『不死身の柊かがみ』も、受け入れることを拒否しているからだ。
むかむかする。
むかむかする。
むかむかする。
――――とにかく、気持ち悪かった。
どうしても気持ち悪くなくなりたくて、
素直に喜んでしまいたくて。
だけど『柊かがみ』と『不死身の柊かがみ』がいる限り、それは叶わない。
……だったら、簡単な話だ。
ようやくそれに思い至る。
――――要するに。
要するに。
「ああぁああぁあああああああぁああああぁぁあぁああああぁああ……あぁ……あ……
あ、あぁ……は、あ……ひゃ、は、」
『柊かがみ』も『不死身の柊かがみ』も、考える事をやめてしまえばいい。
考える事をやめて、殺戮の快楽に身を任せてしまえばいい。
「ひゃ……ヒャハ、ヒャァハハハハハハハハハハハハハッ! ハハハハハハハハハハ!
ハァハハハハハハハハハッ! ヒャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!」
すぐに実行する。
すると、とても気分が良くなった。
口からどんどんどんどん、楽しげな言葉が紡ぎだされていく。
楽しいな。楽しいな。
自分が死なないと思っている人間を殺すのは、楽しいなあ。
「ヒャハッ! ヒャァハハハハハハハハハハ!! ヒャハハハハハハハッ!
おいおいおいおいマジかよありえねえ、ありえねぇってオイ!
なんつーか、どうよ!? アルベルトちゃんよぉオイオイオイオイ!
自分が信頼しきって! 油断しきって! 守ろうとしていたまさにその相手に!
殺られるなんて100%、絶対に、全く、究極に思わなかった相手にぶっ殺されるのはよぉ!!」
――――どこか他人事を見る目で、柊かがみの意思は自分の体がまるでラッドのように動くのを諦観していた。
目の前にはアルベルトの死体。
胸に剣が突き刺さったままのそれを見ても、ああ、そうかという程度の言葉しか浮かんでこない。
「楽しくて楽しくて楽しくて! 楽しくて仕方がねえなあオイオイオイオイ!
その表情、その眼、その台詞! いいねえ……実にいい! 感動的にいい!
よく死なねぇって言ってくれた! すんげぇウマいディナーだったぜアルベルトちゃんよぉ!
ヒャハ! ヒャハハハハハハハハハハハハッ! ハハハハハハハハッ、ハハハ!!」
――――感情が麻痺したからなのかどうなのか。
傍観し、諦観する自分でさえもそこに存在することが煩わしくなってきた。
じゃあ、さっさと考えるのをやめてしまおう。
後はこの身体が勝手に動くのに任せてしまえば、それでいい。
そうして、かがみは意識の中の自分の瞼を静かに閉じた。
もう、何が起ころうとも起きたくないなあ、と、最後にそれだけを考えて。
「ようしテンションも上がってきたしこの小せぇ体にも慣れたことだし!
とりあえず会場内じゃ不死者でも死んでもおかしくねぇんだし!
宇宙人に改造されて思い上がったタカヤ君と舞衣ちゃんをぶっ殺しに行ってあげますかねえ!
クククハハハハ、ヒャァハハハハハハハハハハハハハハハッ!
まさかこんなガキに殺られるとは思わねえだろうなああいつらは!
ボコボコに殴り壊して! グチャグチャにすり潰して! 最ッ高のデザートに仕立ててやるからよぉ!
ヒャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!」
遥かな遠くまで届かんとする、殺人鬼の哄笑。
――――静かな夜は、それをただ一つのBGMとして更に闇を深めている。
まんまるく青白い空のカガミは遠く、遠く。
月の光が深々と、虚ろな顔をした男を照らし出していた。
誰に知られるでもなく、彼の首に嵌まった円環は役目を終える。
剣に貫かれた心臓の、最後の鼓動とともに一つの伝令を飛ばしたことで。
――――メッセージはシンプルなたったの一文。
&color(red){【衝撃のアルベルト@ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日- 死亡】}
【B-5南部/道端/2日目/深夜】
【柊かがみ@らき☆すた】
[状態]:不死者、囚人ルック(下に吐瀉物まみれの番長服)、髪留め無し、空腹、ラッドモード(暴走)
[装備]:つかさのスカーフ@らき☆すた、ローラーブーツ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
シルバーケープ@魔法少女リリカルなのはStrikerS、 クラールヴィント@リリカルなのはStrikerS
バリアジャケット
[道具]:デイバッグ×12(支給品一式×12[うち一つ食料なし]、[食料×4消費/水入りペットボトル×1消費])
フラップター@天空の城ラピュタ、 超電導ライフル@天元突破グレンラガン(超電導ライフル専用弾0/5)
雷泥のローラースケート@トライガン、巨大ハサミを分解した片方の刃@王ドロボウJING、包丁
テッカマンエビルのクリスタル@宇宙の騎士テッカマンブレード、オドラデクエンジン@王ドロボウJING
緑色の鉱石@天元突破グレンラガン、全てを見通す眼の書@R.O.D(シリーズ)、サングラス@カウボーイビバップ
アンチ・シズマ管@ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日-、マオのヘッドホン@コードギアス 反逆のルルーシュ
大量の貴金属アクセサリ、ヴァッシュの手配書@トライガン、魔鏡の欠片@金色のガッシュベル!!
防水性の紙×10、暗視双眼鏡、首輪(つかさ)、首輪(シンヤ)、首輪(パズー)
奈緒が集めてきた本数冊 (『 原作版・バトルロワイアル』、『今日の献立一〇〇〇種』、『八つ墓村』、『君は僕を知っている』)
がらくた×3、柊かがみの靴、予備の服×1、破れたチャイナ服
[思考]
基本-A: ――――――――(思考放棄)
基本-B:自分は死なないと思っている人間を殺して殺して殺しまくる(螺旋王含む)。
0-A:――――――――(思考放棄)
0-B:さぁて、さてさてさてさて! タカヤ君と舞衣ちゃんを殺しましょうかね、しに行きましょうかねぇ!
1:舞衣とDボゥイをぶっ殺しに行く。その後刑務所の面子と合流。
2:映画館でラッドが殺し損ねた奴は必ず殺す。ギルガメッシュは特に殺す。
3:清麿の邪魔者=ゲームに乗った参加者を重点的に殺す。
4:足手まといがあまり増えるようなら適度に殺す。
5:基本方針に当てはまらない人間も状況によって殺す。
6:覚悟のある人間ばかりなので面白くないから螺旋王もぶっ殺す。
7:とりあえず、死ぬ可能性のある会場内では自身の不死について懸念することはやめる。その後については考えない。
[備考]:
※会場端のワープを認識。
※奈緒からギルガメッシュの持つ情報を手に入れました。
※繰り返しのフルボッコで心身ともに、大分慣れました。
※ラッド・ルッソを喰って、彼の知識、経験、その他全てを吸収しました。
フラップターの操縦も可能です。
※ラッドが螺旋力に覚醒していた為、螺旋力が増大しています。
※ラッドの知識により、不死者の再生力への制限に思い当たりました。
※ギルガメッシュ、Dボゥイ、舞衣に強い殺意を抱いています。
※『自分が死なない』に類する台詞を聞いたとき、非常に強い殺意が湧き上がります。
※かがみのバリアジャケットは『ラッドのアルカトラズスタイル(青い囚人服+義手状の鋼鉄製左篭手)』です。
※螺旋力覚醒
【結城奈緒@舞-HiME】
[状態]:気絶、疲労(特大)、右手打撲、左手に亀裂骨折、力が入らない
全身に打撲、顔面が腫れ上がっている、左頬骨骨折、鼻骨骨折、更に更にかがみにトラウマ
[装備]:無し
[道具]:無し
[思考]
基本方針:とりあえず死なないように行動。
0:…………
1:ギルガメッシュに言われたとおり、刑務所へ向かう。
2:柊かがみ(inラッド)に非常に恐怖。
3:静留の動きには警戒しておく。
4:何故、自分はチャイルドが使えないのか疑問。
[備考]:
※本の中の「金色の王様」=ギルガメッシュだとまだ気付いていません。
※ドモンの発した"ガンダム"という単語と本で読んだガンダムの関連が頭の中で引っ掛かっています。
※博物館に隠されているものが『使い方次第で強者を倒せるもの』と推測しました。
※第2、4回放送を聞き逃しました。
※奈緒のバリアジャケットは《破絃の尖晶石》ジュリエット・ナオ・チャン@舞-乙HiME。飛行可能。
※不死者についての知識を得ています。
※ヴァルセーレの剣で攻撃を受けたため、両手の利きが悪くなっています。回復時期は未定です。
※ヴァルセーレの剣@金色のガッシュベル!! が、アルベルトの死体の左胸に突き刺さったままになっています。
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