「善と悪と神の使い」(2022/09/24 (土) 11:20:09) の最新版変更点
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**善と悪と神の使い ◆Wf0eUCE.vg
「ごはん、ごはん~。肉なしチンジャオロースじゃないよ。作るのは神父ソン~」
謎の歌詞を独自のテンポで刻みながら、少女、エドワードは陽気に先頭を歩いている。
その後方を行くのは大小二つの影。
エドのすぐ後を行くのは黒い神父服に身を包んだ大男、言峰綺礼である。
その更に後方、少し離れた位置にいるのはラピュタ王家の末裔、リュシータ・トエル・ウル・ラピュタであった。
「……あの、言峰神父」
自身の倍はあるのではないかという大男を見上げながら、意を決したように少女は口を開いた。
「なんだね、シータ。懺悔ならばいつでも聞くが?」
自身の腰程の身長しかない少女を見下ろしながら、言葉を受けた神父は答える。
「いえ、今後のコトです。
言峰神父が頼りになる方であるのはわかります。
あなたなら、襲ってきた方も撃退できるでしょう。
ですが、」
その先に続く言葉が予想できたのか、言峰は僅かに眉をひそめる。
「殺すな、と?」
「はい。無理を言っているのは承知しています。
ですが、どのような人であれ殺してしていいなんてことはありえません。
それに、殺人はやはり許される行為ではないと思います」
強い決意と意思を持って少女は告げる。
その言葉を受けた神父は、しばらく考え込んだ後、重々しく口を開いた。
「ふむ。この状況の厳しさをその身で知りながら、その言葉が言える君はやはり強い人間だ。
だがなシータ。残念だがそれは約束しかねる。
私とて聖職者だ、好き好んで殺し回ったりはしないが、殺すつもりでやらねば勝てぬ手合いは得てして存在する。
まして、ここでは私の力など微々たるものだ、手加減などしている余裕はない。そうでなくては殺されるのはこちらだ」
「……そう、ですか」
元より無茶をいっているのは承知していたのか、シータはそれ以上喰らいつくでもなく、ただ残念そうに引き下がった。
だが、次に神父が告げた言葉に、シータは目を見開く事になる。
「それにシータ。君は人殺しを絶対の悪のようにいうが、それは――――そんなに悪いことなのかね?」
「なっ!? 当たり前です!」
驚きながらも、シータは反射的にそう言い返した。
人は人を殺しては行けない。
そんな事は当たり前のことだ。
そんな事を、仮にも神の教えを説くべき男に問われるなどとは思っても見ないことだった。
だと言うのに、神父は反論が心外だと言わんばかりの顔でふむと頷く。
「当たり前ときたか。
では一つ問うが、人殺しが絶対の悪などというその当たり前は、いったいどこの誰が決めたのかね?
君か? 私か? それとも、まさか神などとはいうまいね?」
寒気のするような笑顔。
聖書を謡うような声で、神父はとても神の使いとは思えない言葉ばかりを並び立てる。
誰が決めたのか、なんて考えるまでも無い。
誰が決めたのか、それは、
それは…………誰が決めたのだろう?
「はい、は~い。それは昔の偉ぁい人が決めたのですょ」
先生に向かって手を上げる生徒のようにエドが元気よく発言する。
その発言を受けた神父は僅かに表情を崩し噴出した。
「ふ。それこそまさかだ。古の時代とは血で血を洗いながら権力を奪いとるものだ。
人殺しで権力を得たものが人殺しを肯定はすれど、否定はしまい。
第一、アレがそのような事を決めるとはとても思えん」
神父の口ぶりはまるで昔の偉い人を知っているかのようだ。
そんなことはどうでもいい、問題は、
「では、あなたは人殺しが許されることだと言うのですか」
そう、問題なのは、まるで殺人を肯定するような神父の発言だ。
問いかけるシータの声が思わず強張る。
そんなシータとは対象的に、神父の態度にまったくの緊張はない。
それは懺悔室の神父と懺悔人にも似ていた。
「そうは言っていない。
少なくとも、君にとって人殺しは絶対の悪なのだろう。それを否定するつもりはない。
だが、他の人間にとってはどうだ? 必ずしも、そうであると言いきれるのかね?」
「……それは」
殺し合いの舞台で次々と死んでいく人たち。
つまりそれは殺した人間がいるという事と同義だ。
殺し合いに乗った人にとって人殺しは悪ではないのだろうか?
「そう、答えは否だ。
善悪など人の価値観によるものだ。絶対の価値観など存在し得ない」
「…………………」
シータは答えられず口を噤む。
エドは既に話に興味を失ったのか一人ニョロニョロと尺取虫のような動きをしている。
幾ばくかの沈黙。
神父は仕切りなおすように、さてと言葉を切る。
「そう言えば、先ほどの人殺しの善悪を誰が決めたかという問いに対する君の答えを聞いていなかったね」
突然話をフラれたことに、シータが怯えるようにビクリと反応する。
そして、慌てたように考え込む。
「え、えっと。すいません言峰神父……私には、わかりません」
申し訳なさそうにシータはそう告げた。
それに対し、言峰は残念がるでもなく息を吐いた。
「ふむ。そうか。
なに、そう難しい話ではない、人殺しを悪と定義したのは―――君だ、シータ」
「え? わた、し?」
神父の言葉は全てが謎かけのようだ。
直接答えを聞いてもシータにはその意味が理解が出来ない。
「そう。答えを決めるのは君であり、私であり、皆である。
元よりどのような行為にも明確な答えなどない。
故に、その是非を決めるのは本人以外にありえない。
ならば、誰に褒め称えられようとも、本人がそれを否定するならば、それは悪だ。
逆に、誰に咎められようとも、本人がそれを肯定するならば、それは善であるのだ。
然り、殺人で救済でであれ、善悪を決めるのは本人だ。
例え十の内九を救ったとして、一を切り捨てたことを悪しと嘆くならばそれは悪であるし。
例え何人殺して回ろうとも、本人がそれを善しと笑うのならばそれは善なのだ」
「ありえません!
そんな、人を殺して平然としていられる人間なんているはずが……」
「―――ない、と言いきれるのかね?」
ピクリと、シータの動きが止まる。
神父の言葉にシータは頷くことができなかった。
なぜなら頷けば嘘になってしまう。
シータ自身、天上から放り出される沢山の人間をゴミのようだと笑っていた男を知っている。
「先ほど君が否定した過去のやり直しも同じだ。
君はそのための殺人を悪しとした。それだけの事だ。
だがシータ。君にとって未来はどうだ?
私の、エドの、そして何より君自身の未来を守る。
そのために手を汚すことは、君のとって善なのか、それとも悪なのか?」
「どういう、意味です…………?」
問いかける声は震えていた。
なににそんなに怯えているのか、それは彼女自身にもわからない。
目の前の神父が怖いのか? それとも、その言葉の先を聞くのが怖いのか?
「例えば、ここに殺人者が襲ってきたとしよう。
私は成す術も無く殲され、残るはエドと君だけだ。
その時、君の手には一丁の銃があったとして、さて、君はどうする?
引き金を引くか、それとも引かないのかね?」
「それは……っ」
シータはすぐさま答えを返そうとするが言葉が出ない。
どうすると言うのか?
引いたところで当たるとは思えない。
だが、神父が問うているのはそんな事ではないのだろう。
「言っただろう。殺人を絶対の悪とする必要はない。すべては君の心一つだ。
無差別な殺人ならともかく。君が守るための殺人を善しとするのならばそれは悪ではないのだ。
引き金を引いて自身を守るか、それとも引き金を引かず皆殺しにされるか。
シータ。君はどの選択を善しとするのかな?」
「それは……………」
引くのだろうか?
引かないのだろうか?
答えなどはありはしない。
神父の言葉が思い返される。
殺すのが善なのか、
殺すのが悪かなの、
殺されるのが善なのか。
殺されるのが悪なのか。
わからない。
自分自身の事だと言うのに、彼女にはその答えがわからない。
「まあいい。その答えは今は保留としておこう。
――――だがなシータ、君はいずれ選択を迫られる。
その時こそ、その答えを私に見せてくれ」
その言葉はこれまでの諭すような言葉ではなく、酷く真摯な言葉だった。
ひょっとしたら、この神父もその答えを知りたいのかもしれない。
そんな事を、焼け付いた頭でボンヤリとシータは考えた。
「エドはしな~い。自分がされて嫌なことは人にしはいけないのです」
えっへんとエドは小さな胸を張る
「ふむ。それもよかろう。またそれも一つの価値観だ。
己が価値観と相反する行為を侵したとき、人はそれ罪と呼び、赦されるために神に祈るだ。
赦しはここに、 Armen」
そういいながら神父は胸元で十字を切る。
シータは一人その場に立ち止まり先を行く二人の背を見送っていた。
エドのように単純な二元論で片付けられるほど彼女はシンプルではなかった。
神父の言葉は予言のようだ。
決断の時はいずれ来る。
そうなったら、自分はいったい、どうするのだろうか?
【B-5・道路分岐点辺り/一日目/午後】
【チーム:陰陽を為す者たち】
[共通思考]
1:三本のアンチ・シズマ管、及びその設置場所を探す。
2:1のために各施設を回る。
3:1のために参加者から情報を募り、できるなら仲間にする。
最終:ゲームから脱出する。
【言峰綺礼@Fate/stay night】
[状態]:左肋骨骨折(一本)、疲労(小)
[装備]:ストラーダ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
[道具]:荷物一式(コンパスが故障、食糧一食分消費。食料:激辛豆板醤、豚挽肉、長ネギ他)
[思考]
基本:観察者として苦しみを観察し、検分し、愉悦としながら、脱出を目指す。
1:二人と情報交換する。ただし、シズマドライブに関する推測は秘匿する。
2:卸売り市場で豆腐を手にいれ、麻婆豆腐を振る舞う。
3:エド、シータに同行。二人を観察、分析し、導く。
4:殺し合いに干渉しつつ、ギルガメッシュを探す。
[備考]
※制限に気付いています。
※衛宮士郎にアゾット剣で胸を貫かれ、泥の中に落ちた後からの参戦。
※会場がループしていることに気付きました。
※シズマドライブに関する考察は以下
・酸素欠乏はブラフ、または起きるとしても遠い先のこと。
・シズマドライブ正常化により、螺旋力、また会場に関わる何かが起きる。
【エドワード・ウォン・ハウ・ペペル・チブルスキー4世@カウボーイビバップ】
[状態]:疲労、強い使命感
[装備]:アンディの帽子とスカーフ
[道具]:なし
[思考]
1:二人と情報交換する
2:言峰について行き、食事をもらう
3:アンチ・シズマ管とその設置場所を探す
【シータ@天空の城ラピュタ】
[状態]:疲労、深い悲しみ、強い決意、右肩に痺れる様な痛み(動かす分には問題無し)
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本:殺し合いには乗らない。みんなと脱出を目指す。
1:エドを守る
2:二人と情報交換する
3:アンチ・シズマ管とその設置場所を探す
4:まずは卸売り市場へ
5:マオに激しい疑心
6:言峰については半信半疑
[備考]
マオの指摘によって、ドーラと再会するのを躊躇しています。
ただし、洗脳されてるわけではありません。強い説得があれば考え直すと思われます。
※マオがつかさを埋葬したものだと、多少疑いつつも信じています。
※マオをラピュタの王族かもしれないと思っています。
※エドのことを男の子だと勘違いしています。
一人、道を行くその足取りにも、男のイラつきは如実に現れていた。
受けた傷の治療を行っても、ウルフウッドのイラつきは収まらなかった。
放送で自分が殺した相手の名が呼ばれようとも感傷はない。
ただの事実だ、今さらイラつくこともない。
ただ、強いて言うなら、唯一この場で知っている男の名がなかった事に、落胆したような、安堵したようなそんな気持ちになっただけだ。
その男がこの場でどうしているかだなんて考えるまでも無い。
考えるまでも無いからイラついてくる。
あのアホは相も変わらず喜々として死地に飛び込んでいくのだろう。
それは今の自分と同じようであり、対極だ。
彼は死を消し去るために死地へと向かい、
己は死を創り上げるために死地へと向かう。
イラつきが収まらなくとも足は進む。
しばらく進んだころ、遠くに人影を見つけた。
デカいのが一つ。小さいのが二つ。
デカい男の胸元にはきらりと光る十字が見える。
自分と同じ牧師、いや格好からして神父だろうか?
傍らには無力な子供が二人。
弱きを守り、保護する。
なるほど、こちらは聖職者らしくこの場においても救済の道を歩んでいるのだろう。
「……まあええわ。どの道やること変わらんし」
デリンジャーに弾を詰めなおし前に進む。
相手が救いを説く神の使いであろうと関係ない。
己は既に死者だ、救いなどない。
死者が遣わせる救いは死以外にない。
今やこの身は死を遣わせる死神の使い。
十字を切るように刃を落とそう。
祈るように引き金を引こう。
迷わぬよう頭に二発、心臓に二発。
救いはここに――――さあ、死地を創ろう。
【B-6・道路/一日目/午後】
【ニコラス・D・ウルフウッド@トライガン】
[状態]:更に不機嫌。かなりイライラ 全身に浅い裂傷 (治療済み)
[装備]:デリンジャー(残弾2/2)@トライガン デリンジャーの予備銃弾17
[道具]:支給品一式 (食糧:食パン六枚切り三斤+四枚、ミネラルウォーター500ml 2本) 士郎となつきと千里の支給品一式
ヴァッシュ・ザ・スタンピードの銃(残弾0/6)@トライガン、ムラサーミャ&コチーテ、暗視スコープ、エドのコンピュータとゴーグル、びしょ濡れのかがみの制服
音楽CD(自殺交響曲「楽園」@R.O.Dシリーズ)
[思考]
基本思考:ゲームに乗る
1:見つけた三人を殺す
2:自分の手でゲームを終わらせる。
3:銃を持った人間を確認次第、最優先で殺してそれを奪う。
4:女子供にも容赦はしない。迷いもない。
5:ショッピングモールで武器を調達。
6:できればタバコも欲しい。
[備考]
※迷いは完全に断ち切りました。ゆえに、ヴァッシュ・ザ・スタンピードへの鬱屈した感情が強まっています。
*時系列順で読む
Back:[[戦闘機人は電気椅子の夢を見るか]] Next:[[ギルガメッシュ先生の黄金授業]]
*投下順で読む
Back:[[戦闘機人は電気椅子の夢を見るか]] Next:[[ギルガメッシュ先生の黄金授業]]
|177:[[言峰綺礼の愉悦]]|言峰綺礼|200:[[Trip of Death]]|
|177:[[言峰綺礼の愉悦]]|シータ|200:[[Trip of Death]]|
|177:[[言峰綺礼の愉悦]]|エドワード・ウォン・ハウ・ペペル・チブルスキー4世|200:[[Trip of Death]]|
|154:[[死ぬほど辛い]]|ニコラス・D・ウルフウッド|200:[[Trip of Death]]|
**善と悪と神の使い ◆Wf0eUCE.vg
「ごはん、ごはん~。肉なしチンジャオロースじゃないよ。作るのは神父ソン~」
謎の歌詞を独自のテンポで刻みながら、少女、エドワードは陽気に先頭を歩いている。
その後方を行くのは大小二つの影。
エドのすぐ後を行くのは黒い神父服に身を包んだ大男、言峰綺礼である。
その更に後方、少し離れた位置にいるのはラピュタ王家の末裔、リュシータ・トエル・ウル・ラピュタであった。
「……あの、言峰神父」
自身の倍はあるのではないかという大男を見上げながら、意を決したように少女は口を開いた。
「なんだね、シータ。懺悔ならばいつでも聞くが?」
自身の腰程の身長しかない少女を見下ろしながら、言葉を受けた神父は答える。
「いえ、今後のコトです。
言峰神父が頼りになる方であるのはわかります。
あなたなら、襲ってきた方も撃退できるでしょう。
ですが、」
その先に続く言葉が予想できたのか、言峰は僅かに眉をひそめる。
「殺すな、と?」
「はい。無理を言っているのは承知しています。
ですが、どのような人であれ殺していいなんてことはありえません。
それに、殺人はやはり許される行為ではないと思います」
強い決意と意思を持って少女は告げる。
その言葉を受けた神父は、しばらく考え込んだ後、重々しく口を開いた。
「ふむ。この状況の厳しさをその身で知りながら、その言葉が言える君はやはり強い人間だ。
だがなシータ。残念だがそれは約束しかねる。
私とて聖職者だ、好き好んで殺し回ったりはしないが、殺すつもりでやらねば勝てぬ手合いは得てして存在する。
まして、ここでは私の力など微々たるものだ、手加減などしている余裕はない。そうでなくては殺されるのはこちらだ」
「……そう、ですか」
元より無茶をいっているのは承知していたのか、シータはそれ以上喰らいつくでもなく、ただ残念そうに引き下がった。
だが、次に神父が告げた言葉に、シータは目を見開く事になる。
「それにシータ。君は人殺しを絶対の悪のようにいうが、それは――――そんなに悪いことなのかね?」
「なっ!? 当たり前です!」
驚きながらも、シータは反射的にそう言い返した。
人は人を殺しては行けない。
当たり前のことだ。
そんな事を、仮にも神の教えを説くべき男に問われるなどとは思ってもみないことだった。
だと言うのに、神父は反論が心外だと言わんばかりの顔でふむと頷く。
「当たり前ときたか。
では一つ問うが、人殺しが絶対の悪などというその当たり前は、いったいどこの誰が決めたのかね?
君か? 私か? それとも、まさか神などとはいうまいね?」
寒気のするような笑顔。
聖書を謡うような声で、神父はとても神の使いとは思えない言葉ばかりを並び立てる。
誰が決めたのか、なんて考えるまでも無い。
誰が決めたのか、それは、
それは…………誰が決めたのだろう?
「はい、は~い。それは昔の偉ぁい人が決めたのですょ」
先生に向かって手を上げる生徒のようにエドが元気よく発言する。
その発言を受けた神父は僅かに表情を崩し噴出した。
「ふ。それこそまさかだ。古の時代とは血で血を洗いながら権力を奪いとるものだ。
人殺しで権力を得たものが人殺しを肯定はすれど、否定はしまい。
第一、アレがそのような事を決めるとはとても思えん」
神父の口ぶりはまるで昔の偉い人を知っているかのようだ。
そんなことはどうでもいい、問題は、
「では、あなたは人殺しが許されることだと言うのですか」
そう、問題なのは、まるで殺人を肯定するような神父の発言だ。
問いかけるシータの声が思わず強張る。
そんなシータとは対象的に、神父の態度にまったくの緊張はない。
それは懺悔室の神父と懺悔人にも似ていた。
「そうは言っていない。
少なくとも、君にとって人殺しは絶対の悪なのだろう。それを否定するつもりはない。
だが、他の人間にとってはどうだ? 必ずしも、そうであると言いきれるのかね?」
「……それは」
殺し合いの舞台で次々と死んでいく人たち。
つまりそれは殺した人間がいるという事と同義だ。
殺し合いに乗った人にとって人殺しは悪ではないのだろうか?
「そう、答えは否だ。
善悪など人の価値観によるものだ。絶対の価値観など存在し得ない」
「…………………」
シータは答えられず口を噤む。
エドは既に話に興味を失ったのか一人ニョロニョロと尺取虫のような動きをしている。
幾ばくかの沈黙。
神父は仕切りなおすように、さてと言葉を切る。
「そう言えば、先ほどの人殺しの善悪を誰が決めたかという問いに対する君の答えを聞いていなかったね」
突然話をフラれたことに、シータが怯えるようにビクリと反応する。
そして、慌てたように考え込む。
「え、えっと。すいません言峰神父……私には、わかりません」
申し訳なさそうにシータはそう告げた。
それに対し、言峰は残念がるでもなく息を吐いた。
「ふむ。そうか。
なに、そう難しい話ではない、人殺しを悪と定義したのは―――君だ、シータ」
「え? わた、し?」
神父の言葉は全てが謎かけのようだ。
直接答えを聞いてもシータにはその意味が理解が出来ない。
「そう。答えを決めるのは君であり、私であり、皆である。
元よりどのような行為にも明確な答えなどない。
故に、その是非を決めるのは本人以外にありえない。
ならば、誰に褒め称えられようとも、本人がそれを否定するならば、それは悪だ。
逆に、誰に咎められようとも、本人がそれを肯定するならば、それは善であるのだ。
然り、殺人であれ救済であれ、善悪を決めるのは本人だ。
例え十の内九を救ったとして、一を切り捨てたことを悪しと嘆くならばそれは悪であるし。
例え何人殺して回ろうとも、本人がそれを善しと笑うのならばそれは善なのだ」
「ありえません!
そんな、人を殺して平然としていられる人間なんているはずが……」
「―――ない、と言いきれるのかね?」
ピクリと、シータの動きが止まる。
神父の言葉にシータは頷くことができなかった。
なぜなら頷けば嘘になってしまう。
シータ自身、天上から放り出される沢山の人間をゴミのようだと笑っていた男を知っている。
「先ほど君が否定した過去のやり直しも同じだ。
君はそのための殺人を悪しとした。それだけの事だ。
だがシータ。君にとって未来はどうだ?
私の、エドの、そして何より君自身の未来を守る。
そのために手を汚すことは、君のとって善なのか、それとも悪なのか?」
「どういう、意味です…………?」
問いかける声は震えていた。
なににそんなに怯えているのか、それは彼女自身にもわからない。
目の前の神父が怖いのか? それとも、その言葉の先を聞くのが怖いのか?
「例えば、ここに殺人者が襲ってきたとしよう。
私は成す術も無く殲され、残るはエドと君だけだ。
その時、君の手には一丁の銃があったとして、さて、君はどうする?
引き金を引くか、それとも引かないのかね?」
「それは……っ」
シータはすぐさま答えを返そうとするが言葉が出ない。
どうすると言うのか?
引いたところで当たるとは思えない。
だが、神父が問うているのはそんな事ではないのだろう。
「言っただろう。殺人を絶対の悪とする必要はない。すべては君の心一つだ。
無差別な殺人ならともかく。君が守るための殺人を善しとするのならばそれは悪ではないのだ。
引き金を引いて自身を守るか、それとも引き金を引かず皆殺しにされるか。
シータ。君はどの選択を善しとするのかな?」
「それは……………」
引くのだろうか?
引かないのだろうか?
答えなどはありはしない。
神父の言葉が思い返される。
殺すのが善なのか、
殺すのが悪かなの、
殺されるのが善なのか。
殺されるのが悪なのか。
わからない。
自分自身の事だと言うのに、彼女にはその答えがわからない。
「まあいい。その答えは今は保留としておこう。
――――だがなシータ、君はいずれ選択を迫られる。
その時こそ、その答えを私に見せてくれ」
その言葉はこれまでの諭すような言葉ではなく、酷く真摯な言葉だった。
ひょっとしたら、この神父もその答えを知りたいのかもしれない。
そんな事を、焼け付いた頭でボンヤリとシータは考えた。
「エドはしな~い。自分がされて嫌なことは人にしてはいけないのです」
えっへんとエドは小さな胸を張る
「ふむ。それもよかろう。またそれも一つの価値観だ。
己が価値観と相反する行為を侵したとき、人はそれを罪と呼び、赦されるために神に祈るのだ。
赦しはここに、 Armen」
そういいながら神父は胸元で十字を切る。
シータは一人その場に立ち止まり先を行く二人の背を見送っていた。
エドのように単純な二元論で片付けられるほど彼女はシンプルではなかった。
神父の言葉は予言のようだ。
決断の時はいずれ来る。
そうなったら、自分はいったい、どうするのだろうか?
【B-5・道路分岐点辺り/一日目/午後】
【チーム:陰陽を為す者たち】
[共通思考]
1:三本のアンチ・シズマ管、及びその設置場所を探す。
2:1のために各施設を回る。
3:1のために参加者から情報を募り、できるなら仲間にする。
最終:ゲームから脱出する。
【言峰綺礼@Fate/stay night】
[状態]:左肋骨骨折(一本)、疲労(小)
[装備]:ストラーダ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
[道具]:荷物一式(コンパスが故障、食糧一食分消費。食料:激辛豆板醤、豚挽肉、長ネギ他)
[思考]
基本:観察者として苦しみを観察し、検分し、愉悦としながら、脱出を目指す。
1:二人と情報交換する。ただし、シズマドライブに関する推測は秘匿する。
2:卸売り市場で豆腐を手にいれ、麻婆豆腐を振る舞う。
3:エド、シータに同行。二人を観察、分析し、導く。
4:殺し合いに干渉しつつ、ギルガメッシュを探す。
[備考]
※制限に気付いています。
※衛宮士郎にアゾット剣で胸を貫かれ、泥の中に落ちた後からの参戦。
※会場がループしていることに気付きました。
※シズマドライブに関する考察は以下
・酸素欠乏はブラフ、または起きるとしても遠い先のこと。
・シズマドライブ正常化により、螺旋力、また会場に関わる何かが起きる。
【エドワード・ウォン・ハウ・ペペル・チブルスキー4世@カウボーイビバップ】
[状態]:疲労、強い使命感
[装備]:アンディの帽子とスカーフ
[道具]:なし
[思考]
1:二人と情報交換する
2:言峰について行き、食事をもらう
3:アンチ・シズマ管とその設置場所を探す
【シータ@天空の城ラピュタ】
[状態]:疲労、深い悲しみ、強い決意、右肩に痺れる様な痛み(動かす分には問題無し)
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本:殺し合いには乗らない。みんなと脱出を目指す。
1:エドを守る
2:二人と情報交換する
3:アンチ・シズマ管とその設置場所を探す
4:まずは卸売り市場へ
5:マオに激しい疑心
6:言峰については半信半疑
[備考]
マオの指摘によって、ドーラと再会するのを躊躇しています。
ただし、洗脳されてるわけではありません。強い説得があれば考え直すと思われます。
※マオがつかさを埋葬したものだと、多少疑いつつも信じています。
※マオをラピュタの王族かもしれないと思っています。
※エドのことを男の子だと勘違いしています。
一人、道を行くその足取りにも、男のイラつきは如実に現れていた。
受けた傷の治療を行っても、ウルフウッドのイラつきは治まらなかった。
放送で自分が殺した相手の名が呼ばれようとも感傷はない。
ただの事実だ、今さらイラつくこともない。
ただ、強いて言うなら、唯一この場で知っている男の名がなかった事に、落胆したような、安堵したようなそんな気持ちになっただけだ。
その男がこの場でどうしているかだなんて考えるまでも無い。
考えるまでも無いからイラついてくる。
あのアホは相も変わらず喜々として死地に飛び込んでいくのだろう。
それは今の自分と同じようであり、対極だ。
彼は死を消し去るために死地へと向かい、
己は死を創り上げるために死地へと向かう。
イラつきが治まらなくとも足は進む。
しばらく進んだころ、遠くに人影を見つけた。
デカいのが一つ。小さいのが二つ。
デカい男の胸元にはきらりと光る十字が見える。
自分と同じ牧師、いや格好からして神父だろうか?
傍らには無力な子供が二人。
弱きを守り、保護する。
なるほど、こちらは聖職者らしくこの場においても救済の道を歩んでいるのだろう。
「……まあええわ。どの道やること変わらんし」
デリンジャーに弾を詰めなおし前に進む。
相手が救いを説く神の使いであろうと関係ない。
己は既に死者だ、救いなどない。
死者が遣わせる救いは死以外にない。
今やこの身は死を遣わせる死神の使い。
十字を切るように刃を落とそう。
祈るように引き金を引こう。
迷わぬよう頭に二発、心臓に二発。
救いはここに――――さあ、死地を創ろう。
【B-6・道路/一日目/午後】
【ニコラス・D・ウルフウッド@トライガン】
[状態]:更に不機嫌、かなりイライラ、全身に浅い裂傷 (治療済み)
[装備]:デリンジャー(残弾2/2)@トライガン デリンジャーの予備銃弾17
[道具]:支給品一式 (食糧:食パン六枚切り三斤+四枚、ミネラルウォーター500ml 2本)、士郎となつきと千里の支給品一式
ヴァッシュ・ザ・スタンピードの銃(残弾0/6)@トライガン、ムラサーミャ&コチーテ@BACCANO バッカーノ!、暗視スコープ
エドのコンピュータとゴーグル@カウボーイビバップ、びしょ濡れのかがみの制服、音楽CD(自殺交響曲「楽園」@R.O.Dシリーズ)
[思考]
基本思考:ゲームに乗る
1:見つけた三人を殺す
2:自分の手でゲームを終わらせる。
3:銃を持った人間を確認次第、最優先で殺してそれを奪う。
4:女子供にも容赦はしない。迷いもない。
5:ショッピングモールで武器を調達。
6:できればタバコも欲しい。
[備考]
※迷いは完全に断ち切りました。ゆえに、ヴァッシュ・ザ・スタンピードへの鬱屈した感情が強まっています。
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|177:[[言峰綺礼の愉悦]]|言峰綺礼|200:[[Trip of Death]]|
|177:[[言峰綺礼の愉悦]]|シータ|200:[[Trip of Death]]|
|177:[[言峰綺礼の愉悦]]|エドワード・ウォン・ハウ・ペペル・チブルスキー4世|200:[[Trip of Death]]|
|154:[[死ぬほど辛い]]|ニコラス・D・ウルフウッド|200:[[Trip of Death]]|
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