小娘オーバードライブ(前編)  ◆DNdG5hiFT6



「舞衣おねーさんは上手くやってるかな、ま、大丈夫だとは思うけど」

……その頃、ジンはついさっき来た道を走って戻っていた。
目の前にあるのは川にかかった少し大きな橋。
そのプレートには『シーゴ橋』と書かれている。

先程、ジンが当初の思惑通り卸売り市場に向かわず、総合病院に進路を向けた理由は二つある。
一つ目は前述どおり清麿のことが気になったから。
そしてもう一つは市場の方で起こった爆発を遠目に見たから、である。

かなり大きな爆発だったが、さっきまでどこか心ここにあらずといった舞衣は気付いていないようだった。
その様子を見て、ジンは決めた。
病院跡に危険がなさそうなら、舞衣をそこに置いて、1人でスパイクの元へ向かおう、と。
舞衣も螺旋の力に目覚めているとはいえ、身のこなしを見る限り戦闘能力はおそらく人並み。
火を出せるというエレメントも出せなくなったというし、忌憚無い意見を述べさせてもらえば、足手まといにしかならないだろう。

「……これ以上、誰にも死んで欲しくは無いからね」

それはジンの偽らざる本音だ。
舞衣もさっきまでは心配だったが、あの様子を見る限り大丈夫だろう。
やっぱ女性は強いね、と知り合いの少女達の顔を思い浮かべながら呟く。
消防車のマニュアルも残してきたし、いざとなったら舞衣とゆたかの2人でも逃げ出せるはずだ。
清麿のことも気になるが、まずはあの騒ぎに巻き込まれているであろうスパイクの元へ向かわないと。

そんなことを考えながら橋を渡りきる。
そして軽快な足取りでまた歩みを進め、視界に映画館が入ろうとしたその時、道の向こうから一人の少女が歩いてきた。

その姿はジンには馴染みの薄い……水兵が良く着ている様な服であった。
身長は普通ぐらい……ちょうど舞衣と同じぐらいか、僅かに高いぐらい。
どちらにしろ初見の少女のはずだ。少なくともジンには見覚えが無い。
だが、少女はまるで数年来の友人のように気さくに話しかけてきた。

「ねぇ、ジン。……ちょっと頼みがあるんだけどいい?」

少女はポニーテールを揺らして、そう問いかける。


   *    *    *


――十数分前、卸売り市場跡。


「……ったく、ほんと、どうしよう……」

端的に言って柊かがみは困っていた。
少女の目の前には瓦礫の山……というか首から下が瓦礫の中に埋まっている。
だが瓦礫は絶妙なバランスで支えあい、少女の体は潰されていない。
まぁ今の少女なら潰されても死ぬことは無いのだろうが。
暫くは足掻いていたが、どうしようもないと悟り、今は力を抜いている。

そして“不死身の柊かがみ”は考える。
これから自分がなすべきことを。

今のかがみにはやるべきことが2つある。
一つは“仲間”であり“師”でもあった、衝撃のアルベルトの遺志を継ぐということ。
一つは“友達”――今なら素直にそう思える――であった木津千里と“私自身”の敵討ちのため、ウルフウッドを倒すということ。
だがそれらは突き詰めれば一つの願望へと集約する。

――力が欲しい。誰にも負けない力が。
そして自分はそれを手に入れたはずだった。

……殺人鬼、ラッド・ルッソの記憶。
結城奈緒を完膚なきまでに叩きのめし……あの衝撃のアルベルトをも苦しめた力だ。
だが私は負けた。あっさりと。
視界の隅でレーザーから逃げ続けるスパイク・スピーゲルに。
それだけじゃない。
3度目の正直じゃないけれど、ウルフウッドも今度こそ倒せると思った。
でも結果はこの通り。
さらに喧嘩しながらでもこっちを狙うその殺意に私は恐怖を覚えた。

だが恐ろしさで言うならラッドも負けてはいない。
仮にラッドがこの場所にいたなら、いい勝負が出来ていたはずだ。
例えば『ラッド』を開放してしまうなどすれば、勝負に持ち込めたはずだ……少なくとも自分はそう思う。
じゃあ何で自分は敵わなかったのか。
ラッド・ルッソの記憶を手に入れた自分は何故勝てなかったのか。
そう、強くなるためには後一枚、パズルのピースが足りない。
でもそのピースが何なのか……かがみには良くわからない。

だがその思考を中断するかのように近くで爆発音が近くで起こる。
そして視界の隅に映る赤いレーザー。
SFには詳しくないが、アレだけの攻撃力……首から上に直撃すればマズ間違いなく即死。
体のどこかに当たっても回復に相当の時間がかかるのは間違いない。
これはまずい。
ダメモトでも足掻こう。そう、今より悪いことにはならないはず――

「……ってどわあっ!」

ジュウ、という音をたて、顔から数メートルしか離れていない場所に赤黒い穴が開く。
……正直今のは危なかった。少しでも角度がずれてたら即死だったに違いない。
でも災い転じて福となす……というのもおかしいがすぐそばに着弾したせいで瓦礫が少し崩れた。
今ならまた動くことが出来るかもしれない。
腕はかなり動くようになっているし、これなら何とかなるかも……
だがそう思い腕を動かした瞬間、

「―――――え?」

かがみの世界は閃光と衝撃に包まれた。

……彼女は知らなかった。
彼女の上に降り注いだ瓦礫はその多くが料理店のもので、それなりの数のガスボンベが彼女のいる瓦礫の下に集まっていたことに。
そして先ほどの一撃は、そのうちの一つに火をつけたということに。
連鎖反応によって、ガスボンベは連鎖爆発を起し、その結果―――――彼女は宙を舞った。
高く、高く、偶然にも同時刻、かの英雄王が宙を舞っていたのと同じように。
だが人が空を飛ぶようには出来ていない以上、重力に引かれ放物線を描きつつ地に落ちるのは必定の理。
それは四苦の理を外れた不死者といえど逃れることは出来ない。
とっさにラッドの知識を使って受身を取ろうとするが、体は上手く動いてくれず、不恰好な形でむき出しの大地に叩きつけられる。

「ぐえっ!?」

バリアジャケットを展開していても衝撃までは殺しきれない。
地面にしたたかに打ち付けられ、蛙が潰れたような声を出してしまう。
体中に満遍なく浸透する痛みに暫く悶絶するかがみ。
だが何がきっかけになるか分からない。
今のことでかがみはさっきのパズルのピースを手に入れていた。

「そっか……私には“経験”が足りないんだ」

柊かがみとラッド・ルッソは性別も、性格も、趣味も、嗜好も、その殆どが違う。
下手をすると共通項が『人間である』という一点に絞れてしまいそうなほどに。
そんな2つを無理にくっつけようとすれば、糊がはがれてしまうように“柊かがみ”と“力”が乖離してしまう。
――先ほど、受身の取り方を知っていても取れなかったように。
だから必要なのだ。
暴力の世界に生きてきたラッド・ルッソと普通の女子高生である柊かがみを繋ぎ合せるだけの“経験”という名の接着剤が。

そのために必要なのは復習――それも実践という名の、だ。
理想的なのはあの男たちほど強敵ではなく、だが確かな実力を持ったものとの戦い。
そしてかがみはその可能性に思い当たる。
さっき空を飛んでいたとき、視界の隅、ちらりと遠目に見えた消防車。
ラッドの記憶を検索し、運転しているであろう少年を“思い出す”。

その名はジン。
それなりの実力者でありながら、こちらを殺すことを良しとしないであろう人物。
正直、相手としては申し分ない。

だが18年間培ってきた倫理感がそれに歯止めをかける。
もともとかがみという少女は真面目で、強い正義感を持つ少女だ。
誰かが犯罪に手を染めればそれを糾弾するし、礼儀知らずには怒りをもって接する。
だがそれが正当防衛ならともかく、ただ経験を積むためという理由で戦いを仕掛ける?
そんなの八つ当たりで殺し合いに乗ったウルフウッドといい勝負だ。

だが螺旋王への道を進むためにはラッドの力は必要不可欠なものだ。
そしてそのための時間は名簿に引かれた線の数を見る限り、さほど残されているように思えない。
自身の目的と、論理感を秤にかけて少女は決断を迫られる。

「……大丈夫よアルベルト。私はもう迷わない」

そして少女は選択する。
目的のためなら、正義感など捨て去ろう。
新世界の神となり、全てをなかったことにするために。

力を抑えるため、バリアジャケットを解除する。
そこに現れたのは目に鮮やかなライトブルーと白を基調としたセーラー服。
そしてその左腕には大きく“団長”と書かれた腕章が光る。

そう、それはかがみの愛読するラノベに出てくる登場人物、“涼宮ハルヒ”の制服。
それ自身は何の変哲も無いコスプレ衣装だが、だがそれはかがみにとって別の意味も持ち合わせていた。
友達が――こなたがバイト先で着ていたコスプレ衣装なのだ。

今から自分が取る行動のことを思えば着たくはなかった。
“不死身の柊かがみ”がこれから取るのは、血にまみれた戦いの道だから。
その行為が友達を汚すような気がして、結局最後まで取っておくことになってしまった。

でも、背に腹は変えられない。
だから過去との決別の意味もこめて、この衣装に柊かがみは袖を通した。
すべてを取り戻すために、少女は過去すら食いつぶして、ただ前に進む。

そして追いつくまでには回復するだろうと踏んで、視界から遠ざかっていく赤い車を追いかけ始めた。


         *      *       *


――そして、今に至るのだった。

かがみの事情を知る由も無いジンは、困惑と緊張を隠せない様子で問いかける。

「……誰だい? 人の顔を覚えるのには自信があるんだけど」

職業柄、記憶力には自身のあるほうだ。
だから目の前の少女とは会ったことが無い、と断言できる。
だが、

「オイオイオイオイ、つれねえなジン!! たった半日会ってないだけで俺のことを忘れるなんざよぉ!」

一変する表情。
禍々しいその顔は紛れもなくテンションが高い時の――

「ラッド!?」

これは物真似とかそんな次元じゃない。
ラッドの表情が少女の顔に張り付いた。そうとしか表現しようが無い。
驚きを隠せないジン。
だが次の瞬間には狂ったような笑みは鳴りを潜め、普通の少女がそこにいた。

「……これで、わかってもらえた?
 私はラッド・ルッソを“喰った”、だからあなたのことも知っている。
 高嶺清麿のことも、ヨーコって娘のことも……あなたが昨日、ラッドに朝ごはんを作る約束をしていたことも知っている」

清麿やヨーコのことならともかく、朝食のことなんかをあのラッドが他人に話すとは思えない。
だったら少女の言うことはある程度真実なのだろう、とジンは受け入れた。
想像力が無いとドロボウは勤まらない。
彼の世界では不思議なことがいくらでもあるのだ。
だから――ここで重要なのは何故呼びかけたか、ということだ。

「……それで何の用だい?」

そう言いながらも何時でも行動に移れるように全身の緊張は解かない。
何故ならば少女の全身から、ビリビリとした殺気がジンの肌を突き刺しているからだ。

「――悪いけど戦ってくれない?」

だからその答えも想定の範囲内。

「それは……殺し合いってことかい?」
「違うわ。戦ってほしい、ただそれだけよ。
 その結果、互いに死ぬことはあるかもしれないけれどね」

柊かがみは殺し合いを肯定してはいない。
だが結果としての殺害ならば覚悟の上である。
……それは考えようによっては殺意よりも性質が悪い。
他人の命を道具として換算し、踏み台にする行為も許容するということだから。
そしてそれは当たり前のように、ジンに何のメリットも無い。
だが、吹き付けるような殺気は“お願い”を“脅迫”へと変える。

「……残念だけど御希望には添えないな」

だがそれでも王ドロボウは曲がらない。
だから断る。戦うことは何一つ生み出さないと知っているから。
しかしそれはかがみにとっても予想済みのこと。
何故ならば“不死身の柊かがみ”はラッドの知識を持っているのだから。

「へぇ、女の子からの誘いを断るって失礼とは思わないの?
 ……まぁ、答えは聞いて無いけどね!」

左手の指輪が輝き、全身が変質する。
ゴシックロリータのバリアジャケットがかがみの全身を包み、瞬時に戦闘準備が完了する。

「ヒュウ、見事な早着替えだね。コツを教えてもらいたいぐらいだ!」
「その軽口、直にきけないようにしてあげるわ!」

かがみは初撃から全力で行くために、強く足を踏みしめる。
だが踏み出したその足元が弾け飛ぶ。
地面に刻まれたのは――銃痕。

「そこまでだ。“不死身の柊かがみ”」

そして道の向こうからやってきたのは、ボサボサ髪の賞金稼ぎとその陰に隠れる少女。
ジンが助けに行こうと思っていたその男。

「スパイク!」

ボロボロになったカウボーイは右手に銃を構えたままで、消えた左手を掲げて笑う。

「よぉ、ジン。無事で何よりだ」


         *      *       *


――再び十数分前、卸売り市場跡。


「くすくす、足が止まってますよ?」

一瞬前までスパイクがいた場所を熱線が通り過ぎる。
それは戦闘とも呼べないような一方的な光景だった。
撒き散らされるレーザーの雨。
それは嬲るように、甚振る様にスパイクを追い詰めていく。

「くそっ! ソードフィッシュでもありゃあ……!」

無いものねだりだとは知りつつも、ついつい愚痴が口を突く。
目の前の存在は予想以上に厄介だった。
シータが素人だから、また自立行動である故にタイムラグが存在するから助かっているようなものの状況は最悪だ。

まず、目の前の存在には銃がろくに効かない。
反撃にジェリコの引き金を引いてみたものの、レトロな外見に反して装甲は厚く、微かに凹ませるだけという結果に終わった。
次にレーザーの威力が半端無い。
体か頭に当たれば一発でアウト。
足をやられたとしても、次の瞬間にバーベキューにもならない消し炭が一個出来上がるだけだろう。

だから勝つには少女を殺すしかないが……少女はロボットの背後に器用に隠れてしまっている。
体が小さい故に完全に隠れてしまっている。

このままではどうやっても倒すことは不可能だ。
だから僅かなチャンスに懸けて、今は逃げ続けるしかない。
どれだけその望みを懸けて、鬼ごっこを続けていただろうか。

「そろそろ終わりにしましょうか……兵隊さん!」

シータの呼びかけに応えるようにロボット兵の眉間がより赤く煌き、より高出力のレーザーがスパイクの隠れていた瓦礫を吹き飛ばした。

「なっ!」

スパイクは咄嗟に衝撃に構えた。
だがそれは失策だった。
次の瞬間スパイクが目にしたのは、宙を舞う瓦礫の中、確実にこちらに狙いを定めるロボット兵の“目”だったのだから。

(チッ……ここまでか)

賞金稼ぎである以上、死ぬ覚悟というものはしている。
そうでなくても自分は一度死んだ男なのだ。
数奇な運命の果てに宿敵との決着も付けた。
2度目の生の終わりが馴染みの無い場所というのも後腐れが無くてそれはそれでいいものかもしれない。
そうやってスパイクが人生を締めくくろうとした、その瞬間、

「さようならおじさ――きゃあっ!!」

空気を文字通り切り裂いて、横合いから飛んできた豪奢な剣がロボット兵の頭部に突き刺さった。
あれだけ強固だった装甲に剣は深々と突き刺さっている。
銃弾が効かない装甲を剣でこじ開けるようなバカができるのは――

「無事か、スパイク!」

そう、同じバカしかいない。
瓦礫を飛び越えてやってきたのは十字傷を負ったハチマキの男。
数時間前、デパートで遭遇したドモン・カッシュである。
何故か見知らぬ少女を背負っているが、それ以外は前と何も変わっていない。
一方でドモンはスパイクの体に起こった異常に目を見張る。

「! その左腕は……!」
「ああ、ちょっとドジっちまった。やっこさんの視線が強烈過ぎて、な」

その視線の先にいるのは先程、自分が剣を投げつけた物体。
茶色い、錆付いたロボとその背中から顔を出したあどけない少女。
ロボットは辛うじて人型をしているものの、どちらかといえば卵に手足をつけたというほうが近い。
そのロボットを見て、奈緒が眉を寄せる。

「ちょっと……こいつも『“ガンダム”だ!』 なんて言うんじゃないでしょうね」
「違うな。ガンダムではない」

そう、これはガンダムなどではない。
人よりも少し大きい――ざっと見てネオギリシャのファイター・マーキロットぐらいだろうか。
流石にこのサイズでは中に乗り込めないだろう。
それに、どちらかといえばこの禍々しい気配はデスアーミーに近い。
破壊のために生まれた悪魔の尖兵、デスアーミーと。
ドモンはこちらを見下ろす少女から視線をそらさないまま、2人を庇うように前に出る。

「……スパイク、奈緒を連れてジンの元へ向かえ。こいつらは俺が相手をする」

そして前を向いたまま先程、自分が来た方角――南を指差す。

「さっき遠目に南のほうへ向かう赤い消防車が見えた。恐らくはまだジンが乗っているのだろう」
「遠目にって……そんなもん走ってたっけ?」

首をかしげる奈緒。
彼女の記憶ではドモンは確かに一度振り返ったが、その先には何も見えなかったような……

「ああ、確かに橋のあたりを南下していた」
「橋って……アンタどれだけ目がいいのよ……」
「まぁそんなことはどうでもいい。
 それよりも……奈緒、だったな。お前に言っておくことがある」

唐突に名指しされ、動揺する奈緒。

「……な、何よ」
「貴様はあの柊かがみとか言う少女に恐怖しているな」
「!!」

図星を指された奈緒は罰が悪そうな顔になる。
だが生来の意地っ張りな性格が反発を示す。

「……あんたには関係ないでしょ」
「確かに関係は無いな。だが、一つ忠告しておいてやる。
 恐怖は己の中にある。一度でも逃げ出せば癖になり、二度と勝利できん
 だが乗り越えればそれは確かな自信となり、新たな力を呼ぶこともあるやもしれん」

そう、チボデーが過去のトラウマを乗り越えたときのように。

「思い出すがいい、今の貴様を支えているものを。誇りを。
 それこそが恐怖を乗り越える唯一つの術なのだからな」

この小娘は主人同様気に食わないが、みすみす死なせるのは忍びない。
先輩として、忠告をするぐらいはいいだろう。
それを聞いた奈緒は複雑そうな表情を浮かべている。

そして2人が会話している間にも、スパイクは決断を迫られていた。
目の前の男は馬鹿だが、戦闘に関してはプロフェッショナルだ。
それにあのロボットと銃の相性が悪いというのも事実だし、長い長いマラソンを続け自分の体力も限界が近い。
だからこの場をこの男に任せるのが最適な判断だと、冷静な頭は告げている。
だが……ちょっとやそっとで倒せる相手でもない。
例えどんなに強かろうと、目の前のロボット相手では死ぬ確立が跳ね上がるだろう。
それならばいっそ自分も残って少女を狙った方が勝率は上がるのではないか?

「……心配するなスパイク。キング・オブ・ハートに敗北は無い」

だが、スパイクの心を読んだかのようにドモンは応える。
それだけでその背中が広くなったように思える。
それは見るものを安心させる、王者のみが出せる風格であった。

――流石は、格闘技世界チャンプか。

武術を修めたもの同士が感じるという言葉ではない真実の言葉。
普段ならオカルトと一蹴するそれを、今のスパイクは確かに感じ取る。
だから……スパイクは決断を下した。

「……そのデカブツは空も飛べる……油断するなよ」
「その忠告、ありがたく受け取らせてもらおう。
 ……行け、スパイク!!」

その声に応える様にスパイクは走り出す。
また奈緒も少し迷って、スパイクの跡を追う。
そして卸売り市場には、拳の王と狂った王女とその兵隊だけが残された。
うめき声を上げるように鳴動する大地。
どうやら卸売り市場そのものの崩壊が始まったらしい。

「……遺言は済ませましたか?」
「残念だが俺は死ぬつもりは無い。この右腕が正義を告げる限りな!!」

さぁ、戦いだ。
とりあえずスパイクたちから引き離さねば話にならない。
飛行能力も考慮すれば少しの距離など無いも同然だ。

「こいっ!」

故に目指すは北。
ドモンは不安定な足場で攻撃をかわしながら、スパイクたちとは逆へと走り出した。


【B-5/卸売り市場/二日目/早朝】
【ドモン・カッシュ@機動武闘伝Gガンダム】
[状態]:全身に打撲、背中に中ダメージ、すり傷無数、疲労(中)、明鏡止水の境地
[装備]:なし
[道具]:支給品一式
[思考]
基本:己を鍛え上げつつ他の参加者と共にバトルロワイアルを阻止し、師匠を説得した後螺旋王をヒートエンド
0:スパイクからロボットと少女(シータ)を引き離すため北に向かう
1:カミナたちを探しながら、刑務所に向かう……だが何だあの物体は!
2:積極的に、他の参加者にファイトを申し込む(目的を忘れない程度に戦う)
3:ゲームに乗っている人間は(基本的に拳で)説き伏せ、弱者は保護し、場合によっては稽古をつける
4:傷の男(スカー)を止める。
5:一通り会場を回って双剣の男(士郎)と銃使いの女(なつき)と合流する。
6:言峰に武道家として親近感。しかし、人間としては警戒。
7:東方不敗を説得する。
[備考]:
※本編終了後からの参戦。
※ゲイボルクの効果にまるで気づいていません。
※ループについて認識しました。
※カミナ、クロスミラージュ、奈緒のこれまでの経緯を把握しました。
※第三放送は奈緒と情報交換したので知っています。
※清麿メモについて把握しました。
※螺旋力覚醒
※シータのロボットのレーザービーム機能と飛行機能についてスパイクから聞きました。



【シータ@天空の城ラピュタ】
[状態]:疲労(大)、倫理観及び道徳観念の崩壊(判断力は失わず)、右肩に痺れ(動かす分には問題無し)
    頬に切り傷、おさげ喪失、右頬にモミジ
[装備]:ラピュタのロボット兵@天空の城ラピュタ、ヴァルセーレの剣@金色のガッシュベル、ヴァッシュの生首
機体状況:無傷、多少の汚れ、※ヴァッシュとのコンタクトで影響があるのかは不明
[道具]:支給品一式 ×6(食糧:食パン六枚切り三斤、ミネラルウォーター500ml2本)、
    ストラーダ@魔法少女リリカルなのはStrikerS(待機状態)、びしょ濡れのかがみの制服、暗視スコープ、
    音楽CD(自殺交響曲「楽園」@R.O.Dシリーズ)、巨大ハサミを分解した片方の刃@王ドロボウJING、ミロク@舞-HiME、
    ワルサーP99(残弾4/16)@カウボーイビバップ、軍用ナイフ@現実、包丁@現実
[思考]
基本:自分の外見を利用して、邪魔者は手段を念入りに選んだ上で始末する。優勝して自分の大切な人たちを、自分の価値観に合わせて生き返らせる。
0:まずは目の前のドモンを始末する。
1:スパイク、ウルフウッド、かがみの始末。禁止エリア殺法も視野に入れる。
2:言峰を捜索。保護してもらうと同時に新たに令呪を貰う。
3:途中見かけた人間はロボット兵に殺させる。
4:気に入った人間はとりあえず生かす。ゲームの最後に殺した上で、生き返らせる。
5:恩人の言峰は一番最後に殺してあげる。
6:使えそうな人間は抱きこむ。その際には口でも体でも何でも用いて篭絡する。

[備考]
※マオがつかさを埋葬したものだと、多少疑いつつも信じています。
※マオをラピュタの王族かもしれないと思っています。
※バリアジャケットは現状解除されています。防御力皆無のバリアジャケットなら令呪が無くても展開できるかもしれません。
※バリアジャケットのモデルはカリオスト○の城のク○リスの白いドレスです。
 夜間迷彩モードを作成しました。モデルは魔○の宅○便のキ○の服です。
※言峰から言伝でストラーダの性能の説明を受けています。
 ストラーダ使用による体への負担は少しはあるようですが、今のところは大丈夫のようです。
※エドがパソコンで何をやっていたのかは正確には把握してません。
※かがみを一度殺してしまった事実を、スパイクとウルフウッドが知っていると誤解しています。
※会場のループを認識しました。
※シータがごみ屋敷から北上中に静留と舞衣の姿を確認したかどうかはわかりません。
※ヴァルセーレの剣にはガッシュ本編までの魔物の力、奈緒のエレメントの力、アルベルトの衝撃の力、
 ヴァッシュのAA(もしくはプラントとしての)エネルギーが蓄えられています。
※ヴァッシュ・ザ・スタンピードの銃(残弾0/6)@トライガンはヴァッシュの遺体(A-3とA-4の境目)の側に放置されています。
※大量の貴金属アクセサリ、コルトガバメント(残弾:0/7発)、真っ二つのシルバーケープが近くに放置されています。
※シルバーケープが使い物にならなくなったかどうかは不明です。
※卸売り市場が崩壊を始めました。
※ロボット兵の頭にはカリバーン@Fate/stay nightが突き刺さっています


    *    *    *


そして奈緒を連れ、スパイクは南下した。
ドモンと違って背負うまで面倒を見ないが、さり気無くペースをあわせるぐらいのことはしつつ。
そして予想よりも案外早く、目的の人物とは遭遇することが出来たのだ。
……余計な物までそこにいたのは流石に予想外だったが。

「へぇ……案外、早い再会だったわね。スパイク・スピーゲル」

だが、目の前の少女はさっきの少女と本当に同一人物なのだろうか。
その顔に、先程まであった少女としての面影は無い。
スパイクは知っている。それは覚悟を決めたものの顔だ、と。

……そう、スパイクの考えるとおり、かがみは覚悟を決めていた。
切り札はお守りじゃない。
イザという時使えなかったら、待っているのは確実な死だ。
そして新たに現れたのはスパイク・スピーゲル。
ただの“柊かがみ”では突破できなかった難敵だ……試すなら、これ以上のタイミングは無い。

唾を飲み込み、左目を覆う眼帯に手をかける。
だがそれだけでアルベルトを失った時の恐怖が手を止める。
いや、それだけではない。
全身から脂汗が吹き出て、胸の奥から吐き気が込み上げてくる。

『二度と己が力に飲み込まれるな。みごとあの力を制した姿をワシに見せつけてみせろ』
「わかってる……わかってる、アルベルト」

だが頼りにしていた男の姿を思い浮かべることで、込み上げる恐怖を嚥下する。
そうだ、こんな所で足踏みをしているヒマは無い。
少しでもスピードを緩めれば、きっと坂道を転げ落ちてしまう……自分の選んだ道はそういうものだ。
だからもう止まることはありえない。

(私は……やってみせる!!)

そして柊かがみは意を決し、アイパッチを――外した。


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260:たたかう十六歳(^^;) ジン 260:小娘オーバードライブ(後編)
255:ろくでなしとブルース 柊かがみ 260:小娘オーバードライブ(後編)
255:陸でなしと寄せ集めブルース スパイク・スピーゲル 260:小娘オーバードライブ(後編)
255:ろくでなしとブルース 結城奈緒 260:小娘オーバードライブ(後編)
255:ろくでなしとブルース ドモン・カッシュ 262:愛を取り戻せ!
255:陸でなしと寄せ集めブルース シータ 262:愛を取り戻せ!





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