蒼い狗 ◆AZWNjKqIBQ



地図で言うところの「6」のライン。
そこを北から南へと流れ市内と市街を分断する河。
その河には市内と市街を繋ぐいくつかの橋が架かっており、E-6エリアに架かっている橋はその中でも最大であった。

「飯禄橋(イイロクバシ)」――そう名前のついた橋がそこにあり、その東端にリザ・ホークアイとパズーの二人は立っていた。

昇り始めた朝日に照らされた大きな橋を前に立ち、そして――そこから先へと進めないでいた。


「どうしたのさ? おば……いや、おねーさん。あそこに行くんだろ?」
パズーが指差す先――橋の向こう側には、こちらへと正面を向けた立派なデパートが建っている。
建物として大きいだけではなく、壁に施されたロココ調の装飾も華美かつ豪奢で、訪れる者の期待を煽る赴きがそこにある。
そして、その立派なデパートの入り口の前より一直線に河を跨ぎ対岸までへと伸びている橋は、
太い鉄鋼が幾重にも曲線を描いて支える美しいアーチ橋で、これもまた立派な作りの橋だった。
余裕を持って確保された幅広い歩道と、それに両脇を挟まれた四車線の道路。
アーチ橋であるがゆえに橋の上には無粋な柱は立っておらず、あるのは夜の闇を払うためのいくつかの街灯のみだ。
今は人も車も全く通ってはいないため、その広い橋の上の端から端までがよく見渡せた。
ゆえに――、

「(――通れない)」

それが、橋を前にしてリザ・ホークアイが出した結論だった。


類稀なる射撃の名手にして、狙撃にも通ずるリザ・ホークアイ中尉。
彼女のはこの場所に達しそのシチュエーションを確認した時、それを確信した――自分ならここで狙う、と。

デパートの屋上か高い位置からならば、見通しのよい橋の上へと狙撃するには絶好のポジションだ。
橋の真ん中まで誘い込んでから射撃を始めれば、まず間違いなく逃げられる前に仕留める事ができる。
陽が昇っているというのも好材料。
デパート側から見れば逆光だが撃ち下ろす分には問題はなく、むしろ巨大なデパートの影が橋に落ちない分有利。
逆に、橋側からだとデパートの窓に反射する光が目くらましになって、そこに潜む狙撃主を探す妨げとなる。
そして、さらにそれよりもこの橋には地理上において重要な要素がある。
地図を見れば、南から南東、さらに東の端からスタートした場合、市内へと進むには十中八九この橋を経由することになる。
実際に、南の山中からスタートしたパズーも、南東のトンネルからスタートした自分もここを進むことを選んだ。
名簿を見れば参加者は82人。
それが、均等に地図上に配置されたとすれば、この範囲内におおよそ20ぐらいが存在すると想定できる。
それらの内何人かが、知人や標的を探すなどの目的を持って市内へと進入すると考えれば……、

「(……最低でも3人。多ければ、その倍は仕留める事ができる)」

自分ならそれぐらいはできる――と、彼女は考える。
仮に狙撃に適した武器が手元にあり、躊躇なく殺すという方針を取っていたならばそうしていただろうと……。


螺旋王と名乗った人物が実験と称したコレは、簡単に言えば生き残りゲームである。
それを単純に捉えれば、どこかに引き篭もるなり逃げるなりして生き残り、漁夫の利を狙う方法が有利だ。
だが、逃げ隠れるよりも積極的に人を探し殺し回った方が有利だという部分もある。
それは、支給品――つまりは殺せば相手の武器を奪取できるという事。
ある程度有用な物が支給品というカタチで限られた数しか存在しないと言うならば、
それを早い段階から掻き集めておくことは終盤において圧倒的なアドバンテージを得ることになるだろう。

そういう考えに至り、またここで待ち伏せをするに必要な条件が揃った者。
そういった人物が見据える橋の向こう側にいる――という可能性をリザ・ホークアイは考える。
あくまでそれは現段階ではただの可能性にすぎない。ただ自分ならそういう戦略も思いつくというだけのことだ。
全てはただの杞憂で、そんな人物は存在しないという可能性も十分にある。

しかし、その可能性に賭けると言うには今賭けている生命という代価は重すぎる。ならば……、

「引き返すわよ、パズー君。先に北上して警察署を目指すわ」

言って、リザ・ホークアイは踵を返す。
ともすれば臆病と取られかねない選択。だがしかし、無為無策であることと勇気があるということもまた別の話。
殺し合いである以上、遵守すべきは己の命。抑えるべきは己の感情。機を計り、理で以って動かなければならない。
リスクは最低限に、取れるだけのものを取るべき場合においてのみ取る。それが戦場で長生きする方法論だ。

「ねぇ、どうしたってのさ? あの橋を渡るんじゃなかったの? ねぇってば、聞いてるのおばさん! ――アダッ!」
「……おばさんはやめなさい。理由は、後で話すわ。ともかくここを離れるわよ」

パズーはゲンコツの落ちた頭を、リザは落としたゲンコツをさすりながら橋より離れる。

この判断。全くの仮定の上でのものだったが、結果としては正解であった。
二人はこの場で死ぬという可能性を回避することに成功。

――そして、その命をしばらく永らえる。


 ◆ ◆ ◆


「……勘のいいヤツだ」

リザ・ホークアイとパズーの二人が踵を返した後、デパートの屋上。その物陰から一人の男が姿を現した。
全身を蒼で包んだ男――ランサー。彼の手には去った二人の命を狙っていた一本の鉄棒が握られている。

槍と言うには程遠いただの先端が尖っただけの鉄棒。
デパートの屋上に立っていた旗を揚げるためのポール。それを力任せに断ち切っただけのものである。
その先端に下がっていた旗は、今は後ろのベンチに寝かされたエリオを包むためのシーツとなっている。
これが傷の処置として正しい判断なのかは解らないが、ないよりはいいだろうとランサーはそう判断した。
そのエリオの容態は芳しくない。なにより腕一本を失っているのだ。すぐにでも適切な処置を施す必要があった。
そんな一刻を争う状態なのに一時でもランサーがこの場所に留まったのは、
旗を下ろした際に、そのエリオに傷を負わせたあの男と同じ軍服を着た女を目に捉えたからだ。

つい先刻、刃を交わしたばかりである。見間違えるはずもない。女はあの男を同じ格好をしていた。
考えてみれば、エリオもランサーも見知った者が同じようにこの殺し合いに参加させられているのだ。
ならば、あの軍服の男に同郷の仲間がいるというのも当たり前のことであった。
見つけたからには、敵である者をただで見過ごすわけにもいかない。ましてや合流されては事だ。
幸いなことに場の状況はこちらに有利。ならば、せめて一矢報いてからこの場を去ろうとランサーは考えた。

だが、結局あの二人は来た道を引き返しランサーは無為の時間を過ごす事になる。

それでよかったのかもと、ランサーは思う。
あの軍服の男とは遺恨を残したが、仲間といえどあの女とはまだやりあったという訳ではない。
それに功を得るためとは言え、女子供に不意打ちを仕掛けようとは……らしくないと思わざるを得ない。
恐らくは先刻の戦いで実感した、己が十全には程遠いという現状――それがこの焦りを呼んだのであろう。

「……いけねぇな」

首を振りながらランサーは寝かしていたエリオの元へと戻る。

僅かではあるが、無駄に時間を過ごした分だけ彼の容態もまた悪い方向へと進んでいた。
すでに意識を失っており、顔色も蒼く呼吸も浅いエリオに残された猶予はあまり多くない。
そして、無事に病院に辿り着いたとしても、そこに彼を救う手立てがあるとは限らない。
最悪――その場で彼が息を引き取るのを見取る事になるのかも知れない。だが――、

「――死なせねぇからな。もう少し辛抱してな」

結果とは言え、少年を囮にしてしまった事にランサーは責を感じている。
そしてなにより、彼が見込みがあると認めた少年なのだ。

「(――まだ槍の振り方の一つも教えちゃいないんだ。なのにこんな所で死んでもらっちゃあ困るぜ。坊主)」

ランサーはエリオを抱えあげると、デパートの屋上を蹴り、目的の病院へと向うため朝の市街へと飛び出した。




 【E-7/市街地/1日目-早朝】
 【リザ・ホークアイ@鋼の錬金術師】
 [状態]:健康
 [装備]:ダーツ23本
 [道具]:デイバッグ、支給品一式、
      泉そうじろうのデジタルカメラ・説明書付@らき☆すた(※マタタビの勇姿(後ろ姿)を撮ったデータが一枚入っています)
 [思考]
  基本:ここから脱出する。殺し合いをするつもりはない
  1.まずは北上し、警察署で銃器を調達する
  2.ロイ・マスタング大佐、マース・ヒューズ中佐、エルリック兄弟(エド、アル)を探し合流する
  3.パズーが仲間と合流するまでの間、彼を保護する
  4.2日目の0時頃に温泉へと戻り、マタタビに協力を要請する
  5.トンネルで見た化物を警戒する

 ※リザ・ホークアイの参加時期はアニメ15話辺り。彼女の時間軸では、マース・ヒューズはまだ存命しています
 ※トンネルで出会った人物より、『線路の影をなぞる者(レイルトレーサー)』の名前を聞きましたが、
   それが名簿に記載されていないことにまだ気づいていません
 ※ディバッグに穴が開いてしまったので、持ち運びが不便。歩行速度に影響が出ています
 ※マタタビと情報交換をしてません。また、マタタビを合成獣の一種だと考えています
 ※マタタビの温泉再建については、まだパズーに話していません


 【パズー@天空の城ラピュタ】
 [状態]:健康だが右頬と頭頂部に鈍い痛み
 [装備]:ルールブレイカー@Fate/stay night
 [道具]:デイバック、支給品一式、タロットカード@金田一少年の事件簿、USBフラッシュメモリ
 [思考]
  基本:螺旋王を倒し、みんなを救う
  1.シータを探し出し合流する
  2.リザ・ホークアイと同行する
  3.六課メンバー、クロ達、リザの仲間を見つけたら声をかける

 ※言峰により揺さぶりをかけられましたが、反発しています
 ※六課メンバー、クロ達、リザの仲間達の名前、容姿をある程度覚えました



 【E-6/市街地/1日目-早朝】
 【ランサー@Fate/stay night】
 [状態]:疲労(中)、全力疾走中
 [装備]:鉄棒(折ったポール)
 [道具]:デイバック、支給品一式(-地図、-名簿)、ヴァッシュの手配書、不明支給品0~2個(槍・デバイスは無い)
 [思考]
  基本:このゲームに乗ったもの、そして管理している者との戦いを愉しませてもらう
  1.エリオを病院へと連れて行く
  2.戦闘準備を整える(体力の回復、まともな槍の調達)
  3.言峰、ギルガメッシュ、ヴァッシュと出会えば、それぞれに借りを返す
    言峰とギルガメッシュは殺す。ヴァッシュに対してはまだ未定
  4.ゲームに乗っていなくとも、強者とは手合わせしたい

 ※まともな槍が博物館にあるかも知れないと考えています


 【エリオ・モンディアル@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
 [状態]:気絶、右腕欠損、右半身に火傷
 [装備]:偽・螺旋剣@Fate/stay night、大きな旗で全身を包まれています
 [道具]:デイバック、支給品一式、防水性の紙×10@現実 、暗視双眼鏡@現実
 [思考]
  基本:仲間と合流し、このゲームを破壊する。
  1.………………
  2.体調の回復
  3.ランサーと同行
  4.仲間を探し合流する

 ※敵ならば殺す――という覚悟を決めました 
 ※頭の先からつま先まで、右の半身がまんべんなく火傷を負っています
 ※今すぐに命に関わる状態ではないものの、そのままだと危険な状態へと悪化してしまいます
 ※焼き落とされた右腕の付け根は、完全に焼かれているため出血はしません


時系列順で読む


投下順で読む


081:痛くても辛くても戻らないから ランサー 104:不屈の心は、この胸に
081:痛くても辛くても戻らないから エリオ・モンディアル 104:不屈の心は、この胸に
069:この呼び方では迷惑ですか? リザ・ホークアイ 106:悲劇は目蓋を下ろした優しき鬱
069:この呼び方では迷惑ですか? パズー 106:悲劇は目蓋を下ろした優しき鬱





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