Star Blazers Comet Empire ◆5VEHREaaO2
東から日が昇る中、ビシャスは一人歩いていた。
その見るものに威圧感と恐怖を与える背中は、いささか落ち込んでいるようにも見えた。
それもそのはずで、彼は己が得意とする得物である刀を手に入れるチャンスを失ってしまったが故に、僅かに気分を害しているのだ。
刀剣という得物は彼にとって武器という意味を持つだけではなく、
抜き身の刃をイメージさせる風貌を持つ彼そのものを象徴する道具でもあった。
だが今彼の手元に刃は存在しない。
最初にその武器は支給はされてはいたものの戦闘により失われてしまい、
数刻前に二本の刀剣を持った少女を襲ったものの、まんまと逃げられてしまっていた。
故に彼は武器を求め、舞台の端であると確信しているA-1から東の方向へと向かっていた。
南に向かい傷の男と出くわすのは論外、北と西は禁止エリアと考える彼にとっては当然の判断だといえよう。
そうして彼が街の中を進んでいる時であった、天空から轟く男の声がビシャスの耳に聞こえてきたのは。
その見るものに威圧感と恐怖を与える背中は、いささか落ち込んでいるようにも見えた。
それもそのはずで、彼は己が得意とする得物である刀を手に入れるチャンスを失ってしまったが故に、僅かに気分を害しているのだ。
刀剣という得物は彼にとって武器という意味を持つだけではなく、
抜き身の刃をイメージさせる風貌を持つ彼そのものを象徴する道具でもあった。
だが今彼の手元に刃は存在しない。
最初にその武器は支給はされてはいたものの戦闘により失われてしまい、
数刻前に二本の刀剣を持った少女を襲ったものの、まんまと逃げられてしまっていた。
故に彼は武器を求め、舞台の端であると確信しているA-1から東の方向へと向かっていた。
南に向かい傷の男と出くわすのは論外、北と西は禁止エリアと考える彼にとっては当然の判断だといえよう。
そうして彼が街の中を進んでいる時であった、天空から轟く男の声がビシャスの耳に聞こえてきたのは。
『久しいな、諸君』
螺旋王と名乗る男の声が天から降り注ぐ。
まちがいない。これがあのフロアで言っていた放送とやらなのだ。
そう確信したビシャスは手近にあった建物を背に、周囲を見回し辺りの人の姿や気配を探した。
そして誰もいないことを確認すると、デイパッグの中から地図と名簿とペンを取り出し、放送の内容に耳を傾ける。
まちがいない。これがあのフロアで言っていた放送とやらなのだ。
そう確信したビシャスは手近にあった建物を背に、周囲を見回し辺りの人の姿や気配を探した。
そして誰もいないことを確認すると、デイパッグの中から地図と名簿とペンを取り出し、放送の内容に耳を傾ける。
『さて、禁止エリアについて説明しようではないか。
死亡者から話しては、自我を喪失し、放送を聞き取れなくなる者もいるやもしれんからな。
B-1、D-5、G-6、以上を禁止エリアと定める』
死亡者から話しては、自我を喪失し、放送を聞き取れなくなる者もいるやもしれんからな。
B-1、D-5、G-6、以上を禁止エリアと定める』
どうやら、すぐ側が禁止エリアとなるようだ。だが大きく関係するわけでもない。
とりあえず南西には近づかないでおけば問題ないだろう。ビシャスはそう結論付けた。
そして禁止エリアの次に死者の名が呼ばれる。
呼ばれた人数は九人であり、どれもビシャスの知らぬ名ばかりであった。
もしかすれば、傷の男の名も入っていたのかも知れないが、生きていれば殺すだけである以上は深くは考えない。
それよりも、もっと懸念すべきことがある。それは宿敵であるスパイクの殺し方、ではない。
スパイクを殺すことは初めから決まっている以上深く考える必要もない。
気になったのは僅か数秒流された言葉。
とりあえず南西には近づかないでおけば問題ないだろう。ビシャスはそう結論付けた。
そして禁止エリアの次に死者の名が呼ばれる。
呼ばれた人数は九人であり、どれもビシャスの知らぬ名ばかりであった。
もしかすれば、傷の男の名も入っていたのかも知れないが、生きていれば殺すだけである以上は深くは考えない。
それよりも、もっと懸念すべきことがある。それは宿敵であるスパイクの殺し方、ではない。
スパイクを殺すことは初めから決まっている以上深く考える必要もない。
気になったのは僅か数秒流された言葉。
『警告後一分以内に離れれば、首輪は爆発しない』
ビシャスはこの言葉が一番気になった。
なぜならば、剣を二本持っていた女はビシャスを禁止エリアに突入させるために
テレポートの装置を使用したと彼自身は判断していたからだ。
首輪の爆発まで一分の余裕があるならば、あの女の目論見は最初から無意味となる。
無論女も、放送で初めてこの事実を知ったのかもしれない。
が、自分を囮と使うギリギリの作戦を実行した人物としてはおそまつな状況といえるだろう。
なぜならば、剣を二本持っていた女はビシャスを禁止エリアに突入させるために
テレポートの装置を使用したと彼自身は判断していたからだ。
首輪の爆発まで一分の余裕があるならば、あの女の目論見は最初から無意味となる。
無論女も、放送で初めてこの事実を知ったのかもしれない。
が、自分を囮と使うギリギリの作戦を実行した人物としてはおそまつな状況といえるだろう。
「……いったい何故だ?」
ビシャスは女を見つけたときから今現在までのことを反芻する。
そう、たしかあの女を自分が見つけたのは偶然だった。
まるで、あの女が見つけてくださいとばかりに街の中を歩いていた。
後になって考えれば自分を餌にしていたように思えた、と女の姿が消えた後に考えれた。
だがよく考えれば、その後が妙だった。
なぜ自分の攻撃のタイミングを掴めたのか?
別に自身の一撃を避けられたのが不満ではない。
一般人だとあなどり、剣の技が鈍ったといわれるのが我慢ならないわけでもない。
鏡やらなにやらで相対位置を把握することぐらいは可能だろう。
疑問は、あの女はなぜ自分の攻撃する瞬間を地図の端に限定できたのかということだ。
もし自分が途中で攻撃を仕掛けたのならばあの女はテレポートするしかなく、
敵を禁止エリアに突入させるという策は失敗に終わるしかない。
そして、あの女のテレポートの装置になんらかの欠点があれば、あの女は窮地に陥る可能性がある。
もし、テレポートの装置に使用回数があれば貴重な一回を無駄にしたことになる。
もし、テレポートの装置に充填時間が存在するならばその間は無防備になる。
もし、テレポートの装置がランダムに位置を決定するならば砲弾の飛交う戦場に連れ去られる可能性もある。
もし、テレポートの装置の使用回数が一回ならばあの女は震えて膝を抱えていなければおかしいことになる。
どれかであった場合、あの女に自分を貶める余裕はなかったはずなのだ。
だというのにあの女は自分からまんまと逃げおおせた。運が良いにもほどがあるだろう。
そう、たしかあの女を自分が見つけたのは偶然だった。
まるで、あの女が見つけてくださいとばかりに街の中を歩いていた。
後になって考えれば自分を餌にしていたように思えた、と女の姿が消えた後に考えれた。
だがよく考えれば、その後が妙だった。
なぜ自分の攻撃のタイミングを掴めたのか?
別に自身の一撃を避けられたのが不満ではない。
一般人だとあなどり、剣の技が鈍ったといわれるのが我慢ならないわけでもない。
鏡やらなにやらで相対位置を把握することぐらいは可能だろう。
疑問は、あの女はなぜ自分の攻撃する瞬間を地図の端に限定できたのかということだ。
もし自分が途中で攻撃を仕掛けたのならばあの女はテレポートするしかなく、
敵を禁止エリアに突入させるという策は失敗に終わるしかない。
そして、あの女のテレポートの装置になんらかの欠点があれば、あの女は窮地に陥る可能性がある。
もし、テレポートの装置に使用回数があれば貴重な一回を無駄にしたことになる。
もし、テレポートの装置に充填時間が存在するならばその間は無防備になる。
もし、テレポートの装置がランダムに位置を決定するならば砲弾の飛交う戦場に連れ去られる可能性もある。
もし、テレポートの装置の使用回数が一回ならばあの女は震えて膝を抱えていなければおかしいことになる。
どれかであった場合、あの女に自分を貶める余裕はなかったはずなのだ。
だというのにあの女は自分からまんまと逃げおおせた。運が良いにもほどがあるだろう。
いや、同じ運が良いならば別の答えがある。
テレポートをしたのは支給された装置によるものではなく、エリア外に行ったからであるかもしれないということだ。
ビシャスは天空を見上げ、目を細めあるはずのものを見つめる。
おそらくはこの惑星上に、巨大なゲートがエリア外を囲むように建造されており、
エリア外にでれば惑星を一周して反対側のエリアにまわるような位相差空間ゲートが
参加者に見えないように設置されているはずなのだ。
位相差空間ゲート。それは位相差空間と呼ばれる別次元の空間に高速道路を組み立てたような代物だ。
このゲートを利用すれば位相差空間内を移動することができ、通常空間を移動する場合に比べ240倍早く目的地に到達することができるのだ。
自分が今立っている惑星がどれぐらいの規模かは不明だが、殺し合いに支障がでないように数秒でA-1からA-8にA-2からH-2へと
転移させることは不可能でもないだろう。もっとも生身で位相差空間に放り出され生存できるかという疑問もあるが、
参加者を閉じ込めるために禁止エリアで周囲を囲うのではなく、態々位相差空間ゲート作るという手段をとったのならば問題は解決済みなのだろう。
ビシャスは天空を見上げ、目を細めあるはずのものを見つめる。
おそらくはこの惑星上に、巨大なゲートがエリア外を囲むように建造されており、
エリア外にでれば惑星を一周して反対側のエリアにまわるような位相差空間ゲートが
参加者に見えないように設置されているはずなのだ。
位相差空間ゲート。それは位相差空間と呼ばれる別次元の空間に高速道路を組み立てたような代物だ。
このゲートを利用すれば位相差空間内を移動することができ、通常空間を移動する場合に比べ240倍早く目的地に到達することができるのだ。
自分が今立っている惑星がどれぐらいの規模かは不明だが、殺し合いに支障がでないように数秒でA-1からA-8にA-2からH-2へと
転移させることは不可能でもないだろう。もっとも生身で位相差空間に放り出され生存できるかという疑問もあるが、
参加者を閉じ込めるために禁止エリアで周囲を囲うのではなく、態々位相差空間ゲート作るという手段をとったのならば問題は解決済みなのだろう。
が、これらの推論は本当にエリア外が位相差空間ゲートでなければ成り立たない。
ビシャスは北方数百mにあるはずの禁止エリアを睨み、さらに思考の渦を深める。
禁止エリアの外に位相差空間ゲートがあるという推論は、
逃がした女が位相差空間ゲートの発生装置に使用制限がある場合の考えにしか過ぎない。
位相差空間ゲートの技術的な課題や問題が分からない以上、小型の装置と大型の装置のどちらにも無理があるようにも思える。
北に行き試せばすぐ分かるだろう。だがその場合の掛け金は自分の命。
螺旋王とやらが禁止エリアに入ったとしても一分の余裕があると言ったとはいえ、
自分ならば外に逃げ出すような輩はすぐに首輪を爆発させると思える以上は、あまり分がいい賭けともいえない。
他の参加者を脅して潜らせるという手段もあるが、鉄パイプ一本では限界がある。
とはいえ、今現在この事実に気づけたのはおそらく自分と女を含めたとしても数人。
態々爆死しに近づく者もいないことを考えれば、70人もの参加者の中でも2桁もいかない。
それを考えればエリア外が位相差空間ゲートという情報が真である場合、それを手に入れた際の恩恵は中盤までは活きてくるだろう。
後半になり知る者が増えれば、まったく意味のない情報となる。確認するのならば早い方が良い。
禁止エリアの外に位相差空間ゲートがあるという推論は、
逃がした女が位相差空間ゲートの発生装置に使用制限がある場合の考えにしか過ぎない。
位相差空間ゲートの技術的な課題や問題が分からない以上、小型の装置と大型の装置のどちらにも無理があるようにも思える。
北に行き試せばすぐ分かるだろう。だがその場合の掛け金は自分の命。
螺旋王とやらが禁止エリアに入ったとしても一分の余裕があると言ったとはいえ、
自分ならば外に逃げ出すような輩はすぐに首輪を爆発させると思える以上は、あまり分がいい賭けともいえない。
他の参加者を脅して潜らせるという手段もあるが、鉄パイプ一本では限界がある。
とはいえ、今現在この事実に気づけたのはおそらく自分と女を含めたとしても数人。
態々爆死しに近づく者もいないことを考えれば、70人もの参加者の中でも2桁もいかない。
それを考えればエリア外が位相差空間ゲートという情報が真である場合、それを手に入れた際の恩恵は中盤までは活きてくるだろう。
後半になり知る者が増えれば、まったく意味のない情報となる。確認するのならば早い方が良い。
「その場合は……どういったリスクを背負うかが問題……か?」
ビシャスは一人悩む。
位相差空間ゲートについて。地図の外がいったいどうなっているのかという事態に。
試すか試さないかも含め検討する。
位相差空間ゲートについて。地図の外がいったいどうなっているのかという事態に。
試すか試さないかも含め検討する。
【A-2/1日目/朝】
【ビシャス@カウボーイビバップ】
[状態]:健康
[装備]:鉄パイプ
[道具]:支給品一式
[思考]
基本:参加者全員の皆殺し。元の世界に戻ってレッドドラゴンの頂点を目指す。
1:地図の外に出ればワープするかもしれないことについて考える。
2:武器の補充
3:皆殺し。ただし、武器が手に入るまでは戦う相手を選ぶ
4:スパイクと決着をつける
5:強そうな相手とは勝負を楽しみたい
【ビシャス@カウボーイビバップ】
[状態]:健康
[装備]:鉄パイプ
[道具]:支給品一式
[思考]
基本:参加者全員の皆殺し。元の世界に戻ってレッドドラゴンの頂点を目指す。
1:地図の外に出ればワープするかもしれないことについて考える。
2:武器の補充
3:皆殺し。ただし、武器が手に入るまでは戦う相手を選ぶ
4:スパイクと決着をつける
5:強そうな相手とは勝負を楽しみたい
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