世界の中心で、叫ぶ ◆10fcvoEbko



鬱蒼とした木々に覆われた山。
その麓同士をつなぐために穿たれた長い長いトンネルの中を、小さな影が移動していた。
「う~ん、思ったよりおっかないとこだなぁ。
ていうか、結構長いこと歩いてるけど、まだ出口じゃないのか~」
技術面においては、天才的な才能を持つある科学者の手により生み出された、サイボーグ猫のミーである。
自らの生みの親であり親友でもあるその科学者の下に帰る方法を探すため、ミーは行動を開始しようと地図で現在地を確認したのだが。
「まさか地図に載ってるぎりぎりのところにいたなんてなぁ。『殺しあえ』って言われても、こんなとこに誰も来るわけないだろ、何考えてんだよまったく」
もしミーが『地図に描かれた先』に興味を持つことがあったとしたら、そのような場所に配置された意味に気づけたかも知れない。
しかし、市街地へと続くトンネルを早期に発見したことで、ミーがこの舞台の仕掛けに気付く機会は失われた。

「これってもしかして『お前なんかいらない』って意味なのかなぁ。
もしトンネルが見つからなかったら絶対道に迷ってたし。
オレ、もしかしたら盛大にイジメられてるのかも」
長く暗いトンネルの空気にあてられたのか、ミーの思考がネガティブな方向に傾き出した。
頭に被った妙な熱気を感じさせる帽子も、この状況ではただ暑苦しいだけである。
トンネルに入ったばかりのときはそれでも意気揚々とした歩みを見せていたのだが、現在は肩を落とし、意気消沈といった様子だ。

ミーが落ち込むのも無理はないと言える程に、トンネルの中は暗かった。
そして長かった。湿ってもいた。
一応山を通して道が明けられていはいる。
だが、あまり丁寧な工事とは言いがたく、全体的に妙にでこぼこしている。
何というか、無理やり形容するなら螺子に刻まれたギザギザ部分のような形だ。
おかげで歩き辛いことと言ったら無い。
おまけに工事が終了してから結構な時間が経っているらしく、山から浸食してきた水がどこかでぽたぽた落ちる音が聞こえる。
トンネル内が湿気を帯びているのはそのせいなのだろう。
一定間隔で滴り落ちる水音は、意識するようなレベルではないものの、気を落ち着かなくさせる。
「こんだけ歩いててもあんまり目が慣れてこないし。何かいたとしても分かんないぞ。
ここいかにも出そうな雰囲気だし。幽霊とか、『怪物』とか」
その言葉を待っていたかのように、何かがミーの足に絡みつき物凄い力で地面に引きずり倒した。

「痛ぇ!な、何だぁ!?」
顔面を強かに打ちつけた痛みに耐えつつ、大慌てでぶんぶん包丁を振り回す。
「誰だ!まさか本物じゃないよね!?」
蓄積された恐怖が爆発したのか、軽い錯乱状態と言った様子でめちやくちゃに暴れ回るが、何の手応えもない。
先の見えない不安がミーの恐慌をさらに深いものにした。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
っていうか何かしろよ!?」
しばらくそうして暴れ回っていたのだが、余りにもリアクションが無さすぎたためついにそう叫んで立ち止まった。
ぜいぜいと肩で息をしつつ、慎重に相手の出方を伺う。
しかし、ミーの叫び声がトンネル内にこだまし、そして完全に消え去るまでの時間が経ってもミーを転ばせた相手は何の反応も示さなかった。
「何なんだよ……ってあれ?」
そこで足元に何か異物の感触があることに気が付いた。

「木の根っこ……?」
長い長い年月を掛けて少しずつ成長してきたのだろう。
そこにはトンネルの地面に亀裂を生みださせる程に力強く成長する、木の根が張り出していた。
根は中程に、気付かずに歩いたら危ないだろうな~、と見たものが思ってしまうような半円を形づくっていた。
「なんだよォ……。まるっきりばかじゃん、オレ。しかも一人で。」
引きずり倒されたと思ったのは、ただ前のめりにぶっ倒れただけであった。
ミーは一人で騒いでいたことに何とも言えない気恥ずかしさを感じながら、再びとぼとぼと歩き出した。

「一人で勘違いした挙げ句大騒ぎしたりして、ほんと馬鹿だよ。
あ~オレっていらない子なのかなぁ。
人気投票とかしたら絶対クロなんかより票が集まると思うけどなぁ。
このメタルのボディがイカスんだよ。子供はこういうの好きだし。
それにほら、普段ちょっと荒っぽい口調が身内相手だと丸くなるってのもツボっていうかなんていうか」
いつの間にか思考がポジティブに切り替わっていたのは、トンネルの出口が近づいていたからかも知れない。
黒一色だった世界をそこだけ切り抜いたかのように、ミーの視界の先にトンネルの向こう側の景色がぽっかりと浮かびあがっていた。

「お、やっと出口だよ。あ~なんか色々と疲れた」
多少の脱力感はあるが、明確な終わりが見えたことでミーの足取りは軽くなった。
「よ~し、何か元気出てたきたぞ」
トンネルを出ることでやっと自分はこの場でのスタートラインに立てるのだ、とでも言うように半ば駆けるように歩を進める。
ここを出たら街に行こう、多分爆発音がするところに行けばクロがいるだろう。
そしたらさっさと帰る方法を見つけてゴー君達に料理を振舞ってあげよう。
急がないとせっかくの高級食材の鮮度が落ちてしまう。
自分の作ったフルコースで歓喜にむせび泣くゴー達の姿を幻視しながら、ミーは軽やかにトンネルの出口にたどり着いた。
これから自分の進む道を見下ろしながら、辛かった過去と決別するかのように、これまで来た道を振り返る。

「不気味なトンネルだと思ったけど、終わってみると全然そんなことなかったな。
やれやれ、なんで『怪物』な」
「呼んだか」
「ぎぃやぁぁぁあぁぁあああ!?」
突如として頭上から降り注いだ声に、ミーの全身が波立った。
「い、今喋ったの誰!?」
声がしたとおぼしき天井部分を見上げる。
しかし、そこには誰もいない。

「気のせいか…?でも確かに今『怪物』って」
「だから俺を呼んだか?」
「ああああああ!やっぱりぃ!!」
今度は後ろから声がした。
慌てて振り返るがやはり誰もいない。
「騒がしい奴だな。何だお前は?猫か?まあいいや、ちょっと話を聞いていけよ。
退屈していたんだ。実を言うと少し寝ていた」
さらに別の方向から声がした。
見ても誰もいない。
「寝ていたと言っても時間を無駄にしていた訳じゃないぞ。
身の振り方を考えるのに体を動かす必要が無かった、というだけだ。
頭はきちんと働かしていた」
視線を空振らせつつ、だんだん冷静さを取り戻してきたミーの思考の一部が聞いてねぇよ、と呟いた。

「俺はこの場でどうするべきか?
いきなりこんなところに連れてこられてさすがの俺も戸惑ったが何、
困ったときには基本に立ち戻ってみればいい。
おいお前、俺はいったい何だ?」
「何って……『怪物』って言ったらでてきたけどぉ~」
何となくキャラが掴めてきた。ミーは割と惰性で首を振りつつ答える。
「そう。俺はあの黒服や白服連中にとっての『怪物』レイルトレーサーだ。
では何のために俺はレイルトレーサーになった?車掌として乗客の安全を脅かし列車の正常な運行を妨げる者達を喰らい尽くすためだ。
個人的にガンドール達との約束に遅れる訳にはいかないというのもある」
どうやら姿は見えないものらしい。ミーは声の主の探索を諦めた。
ただ話をするだけのものみたいだし危険はないだろう。
ミーの日常は順応性が高くないとやっていられない。
「いや俺を探せよ」
後ろから蹴飛ばされた。
隠れていたのはわざとだったらしい。

「その俺が今ここにいる。列車に俺はいない。
ではトニーの仇は誰が討つ?乗客の安全は誰が守るんだ?
もちろん俺だ」
「矛盾してるだろ」
蹴られた頭をさすりつつ応える。
「矛盾していない。
たとえ矛盾していたとしても、その矛盾を俺自身の圧倒的な能力で無かったことにしてしまえるのが俺だ。
この場合はどうすればいいかと言うと『黒服や白服が乗客に危害を加えるよりも早く俺が列車に戻り事態を解決する』これだけだ。
簡単だろう?」
「……」
声の持つ自信とは裏腹の、言ってることの内容の無さにミーが言葉を失っていると。
「いや相槌打てよ」
また蹴飛ばされた。
どうやらわがままらしい。

「簡単だろう?」
しかもわざわざ聞きなおしてくる。ミーは仕方無しに口を開いた。
「そういうと簡単に聞こえるけどさァ。具体的にはど~すんの?」
「具体的には、か。そうだな。まず考えたのはこの会場にいる者を皆殺しにしてとっととこのゲームを終わらせることだ」
ミーは息を呑んだ。
もし声の主がそうするつもりなら、今自分は最も危険な場所にいることになる。
「だがこの案はすぐに却下した」
ミーは息を吐いた。
「こぇ~。びっくりさせんなよ、もう。変に間なんかとって」
「演出だ。で、何故だと思う?」
「なんで?」
蹴飛ばされたく無かったので即答した。後頭部が地味に痛い。

「殺すのは簡単だ。だが少し待て。本当にそれでいいのか?
車掌であると同時に俺は何だ?そう、殺し家だ。
殺し屋が殺す相手は依頼があって始めて生まれるんだ。
無差別に殺して回ってはそれはただの殺人狂だ。殺し屋ではない」
「あ~、つまり『仕事以外の殺しはしねぇ』とか何かそういう、殺しの哲学みたいなもの?」
「まさにその通りだ。分かってるじゃないか」
なんか嬉しそうだ。
「まぁ個人的に気に入らなかったりしたら殺すけどな」
「守る気ねぇじゃねぇか!」
ミーが叫ぶと、声はその反応が楽しいのかくっくと笑った。
「まぁそういうな。
おまけに名簿を見ると列車の乗客名簿にあったものと同じ名前もあった。
車掌である俺自身が彼らを殺してしまっては本末転倒だ。
そういう意味でもこの案は却下だ」
「まぁ、却下してくれてよかったよ。って言っても一人で80人も殺せる訳ないだろ~」
クロみたいな奴もいるのにさァ、と続ける。
「相手が誰でどれだけ数がいようと、俺が負けることはない」
「無理むり~。だってすごい武器もってるやついるかもしれないぜ?
ほら、最初に爆発させられた奴みたいにさ」
「それでも俺が勝つよ。
たとえば俺が絶体絶命の危機に陥ったとしようか。
『俺』が『絶体絶命』とは言葉として矛盾している訳だが、理解を助けるための言葉の綾として適当に流してくれ。
そうだな、今お前が言った最初に爆発した男いるだろ。
あの男の放ったボルテッカなる光線が俺に向けて放たれたとしようか。
あれほどの威力の技をくらえば俺でもただではすまない。
だが、俺ならばどんな状況であってもそれを避けることができるし、たとえ回避不可能な状況であっても死ぬことはない。
そのときはきっと『俺に秘められた真の力』とかなんかそういうものが覚醒して結局俺は生き残る。
何故なら世界は俺に都合が良いようにできているからだ」
この声そこそこの年に聞こえるんだけど実際は中2くらいなのかな、とミーは思った。
「う~ん、あんたが凄いってのはよく分かったけどさぁ。でも殺しはしないんだろ?
だったらどうやって脱出するんだよ」
「具体的にはまだ何も考えていないさ。
というか、これからそのための行動をしようとしていたところだ。
だが問題はない。俺が『脱出したい』と思いながら行動すれば何か色々上手くいってその通りになる。
何故なら世界は」
「『俺に都合が良いようにできているから』ね。はいはい、じゃあ頑張って。
オレ、そろそろ行くから」
多分決め台詞のつもりなんだろな横取りしたらまた蹴られるかな、と思いつつミーはその場を後にしようとした。
一応脱出を目指すと言っているがこいつと一緒にいても多分無理だ。
今度は蹴られなかった。
「待てよ」
代わりにまた声を掛けられた。
「何だよォ」
振り返る。相変わらず姿は見えない。
ただトンネルが真っ暗な入り口を広げているだけだ。
「お前はなかなか聞き上手だな。お陰で退屈が紛れた。礼だよ、持ってけ」
暗闇から何かが飛び出してきた。
ミーは反射的にそれを受け取る。
「礼って。それ程のことをした訳じゃないよ。ま、くれるってんなら貰っとくけどさ」
何だ結構いい奴じゃん、と思いつつ自分が受けとめたそれを見た。
保存液らしきもので瓶詰にされた目玉と目が合った。
「いるかああああああああ!!」
ミーは瓶を全力で投げ返すと、声の主から一歩でも多く距離を取るために走りだした。
走りながら、もう絶対にここには来ないと固く誓った。



【H-7/道沿いに北に爆走中/1日目-早朝】

【ミー@サイボーグクロちゃん】
[状態]:走っているため体力消費中 精神的疲労(小)
[装備]:セラミックス製包丁@現実、アニメ店長の帽子@らき☆すた
[道具]:支給品一式、世界の絶品食材詰め合わせ@現実
[思考]:あいつ馬鹿だ!絶対馬鹿だ!
基本:殺し合いには乗らず、ゴー君の元へと帰る。
1:現状を打破する為クロに会う。襲われた場合は容赦しない。
2:トンネルにはもう行かない。馬鹿がうつる。
3:帰って絶品食材を振舞う
[備考]:
※武器が没収されているのに気がつきました。
※悪魔のチップの性能の悪さをなんとなーく感じ取っているようです(気のせいレベル)
※食材詰め合わせの内約はご自由にどうぞ。



ミーが走り去ってしばらくして、トンネルから一人の男が姿を現した。
「怒って行っちまいやがった。まさか俺の好意が通じなかったのか?」
声の主、クレア・スタンフィールドである。
未だ血に塗れているが、ほとんど乾いているため禍々しい印象は大分薄れている。
手はミーに投げ返された瓶を弄んでいる。クレアの支給品である。
説明書には『マタタビの目玉』とだけ書かれていた。
「『マタタビ』って猫っぽい名前だからちょうどいいサプライズプレゼントになると思ったのになぁ。
あいつ白目だったし。」
心底不思議そうに首を傾げる。
「まぁ、次にプレゼントを送るときはもう少し慎重に吟味するとしよう。
にしても、やっぱり体が上手く動かんな」

クレアがミーの視界から声を掛け続けたのは何もからかうためではない。
いや、何か騒がしい奴が来たみたいだからからかってみたくなったのは事実だが。
いや、声はすれども姿は見えずってされる側にしたらすっげぇ怖くね、とか思ったのも事実だが。
主目的はここに来てから違和感を感じていた体の調子を確かめるためである。
最初に声をかけたとき、クレアは本当にミーの頭上にいた。
天井部分のでこぼこの激しいところをとっかかりに、指を掛け気配を消して身を潜めていた。
クレア以外の人間が見れば平らと変わりないと思っただろうが。
何故ミーが見たときには誰もいなかったかと言うと、それより早く音も気配もなく死角に移動したから、という単純な理由である。
後は同じように、振り返るタイミングを見切って移動していただけだ。
諦められると淋しいので蹴飛ばしたが。

「相手の視界に入らず気配も感じさせずで声だけ聞かせる。
ってこれもできるようになるまで結構苦労したんだよな」
周りの者達には天才の一言で方づけられてしまったが。
もう慣れたとはいえやはり気分の良いものではない。
「だが、余り上手く行かなかったな」
やはり体の調子はよくない。
恐らくあの猫がもう少し冷静だったら、あるいはもっと熟達した人物であったら、自分の存在に気付いていただろう。
そういや何であの猫喋れたんだ。
「まぁ、俺からすれば大した問題じゃないな」

全ては自分に都合の良いようになり、自分ができると信じてできないことはない。
このようにデイパックの中を漁れば当然脱出に役立つものがでてくる。
クレアはデイパックの中から、赤い球体を浮かべ緑色に輝く液体を収めた一本の管を取り出した。
それを空中に掲げ、吟味するかのように様々な角度から眺める。
そして、クレアは管を空けるとその中身を一気に飲み干した。
上手そうに喉を鳴らしながら飲み、空になった管は放って捨てた。
「カクテルか。ちょうど喋り疲れて喉が乾いていたところだ。
水じゃ味気ないし。やはり、俺は世界の中心だ」
クレアの二つ目の支給品『ワシの梅サワー……』であった。
「では行くか。とりあえず温泉で血を洗おう。
乾きはしたが何かうっとおしくなってきた。
それに」

レイルトレーサーは、朝日と共に退散する。

後に残ったクレア・スタンフィールドという男が、行動を開始した。


【H-7/真っ直ぐ温泉に向かって移動中/1日目-早朝】
【クレア・スタンフィールド@BACCANO バッカーノ!】
 [状態]:自分への絶対的な自信
 [装備]: なし
 [道具]:支給品一式  マタタビの目玉入り瓶@サイボーグクロちゃん
 [思考] 基本:脱出のために行動する 、という俺の行動が脱出に繋がる。
  1:自分に攻撃してくる者に対しては容赦なく反撃する。
2;名簿に載っているのが乗客なら保護したい
  3:リザ・ホ-クアイに興味(名前は知りません)。
 ※クレアの参戦時期は『フライング・プッシーフット』の『車掌二人』の死亡後です。


【梅サワー@3ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日-】
ある時ある場所で、ある十傑集がある少年に飲み干されてしまったもの。
ある特殊なシズマ管に見た目がそっくり。


【マタタビの目玉入り瓶】
クロが昔マタタビから抉り取った目玉を保存していた瓶。見た目は結構グロテスク。


時系列順で読む


投下順で読む


019:線路の影をなぞる者(レイルトレーサー) クレア・スタンフィールド 111:車掌と大工
020:番外バトルってレベルじゃねーぞ!! ミー 125:ミー君怒りの鉄拳





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