【第四回SRC学園シナリオコンペ】
テーマは落書きとのこと。
タイトルなどから興味を惹かれた順にプレイして、何回かに分けて書いていこうと思う。
一応全作品をプレイし、レビューを書くつもりだけど、
基本的に「止めたくなったら止めて次へ進む」という方針で。
ちなみに俺、学園シナリオをプレイするのはこれが初めて。
コンペ参加者諸氏についても、HNは知っていても、作品に触れるのは初めての人ばかりということを付け加えておく。




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#或る落書き
作者は俳諧氏。
不気味さを前面に押し出した、ホラー仕立ての作品。
以下、かなりのネタバレになるので、未プレイの人は要注意。
特に、この作品は、最後の種明かしこそが、面白みの全てといっても過言ではないからだ。

恐怖の対象として描かれるのは、巷を騒がす通り魔U.N.O。
だが、真の恐怖は、彼女ではなく――というのが大体のあらすじ。

つまり、この作品は、

①U.N.Oの恐ろしさを描き、
②恐怖の対象・排除すべき障害としてプレイヤーの意識を彼女に集中させつつ、
③それに紛れて伏線を張り巡らせておいて、
④その伏線を、ラストで一気に回収。どんでん返しでプレイヤーを煙に巻きつつ幕

――と、このような構成になっている。
サスペンスドラマなどで良く見る構成だが、それぞれのパートに、きちんとした役割を与えているのは、
プレイヤーを意識して物語を組み立てている証拠だろう。

①にあたるのが、オープニングのテロップと、不良達が犠牲になるシーン。
テロップは、やや助長な感じもするが、不気味な雰囲気を良く表していると思う。
良くある「教室背景で汎用キャラ同士が会話」という手法では、この空気は出せなかっただろう。
作者のセンスを感じる。

問題に感じたのは、不良達が犠牲になるシーンの方。
絶対的な恐怖の対象としてのU.N.Oを描写するなら、このシーンの不良達は、
なすすべもなくただU.N.Oに虐殺される、哀れな子羊であるべきだ。
しかし、舞台はSRC学園。
不良達だって、発火能力やビームサーベルで、U.N.Oに戦いを挑めてしまうのだ。
結局はU.N.Oに殺されてしまうわけだが、ただ逃げ惑うだけの「子羊」と、
U.N.Oと同じ土俵で戦い、敗れた不良達――「かませ犬」とでは、果たす役割はまったく違う。
「子羊」は敵の「恐怖」を演出するが、「かませ犬」が演出するのは、敵の「強さ」なのだ。

ただの一般人とは違う、不良達。
その不良達を一蹴したU.N.Oは強い。
そのU.N.Oを、さらに強い力で打ち破れ!
……これでは、普通のバトル物になってしまう。

ゲームの駒以上の役割を持たない真理達を出し、U.N.Oを「頑張れば倒せる」存在にしてしまうくらいなら、
不良視点に固定して、(2回目の戦闘のような)「ただ逃げる」描写に徹したほうが、物語に合っていたのではなかろうか。

②は、①からの流れと1回目の戦闘シーン。
ここでも、生き残った不良達は、勇敢にもU.N.Oに立ち向かっていく。
中立ユニットを庇いながらの戦闘、一癖あるユニット達。そして勝利。
ゲームとしては楽しめたが、物語の空気は薄れてしまった。
SRCにおける戦闘シーンは、プレイヤーのアドレナリンが、おそらく、もっとも分泌されるであろう「見せ場」だ。
その見せ場に、核心に繋がる伏線が一切絡んでこないのは、実に勿体無い話だ。

③は、おもに①と④に仕掛けられている。
つまり、テーマであるところの「落書き」に関する話なわけだが、
ここの仕込みが少々雑――テロップと会話のみでの説明――なため、①の段階で印象に残りづらい。
U.N.Oの描写に容量を割くあまり、②でほとんど「落書き」に触れていないのも痛い。

④は、2回目の戦闘シーンから、余韻を残すラストまで。
見所は逃走シーン。緩急のつけ方が巧く、緊張感が伝わってくる。

そして最後のどんでん返し。演出にも力が入っている。
恐怖感の見せ方は巧いが、「落書き」のくだりが印象に残っていないため、
折角のどんでん返しが、唐突なものに感じられてしまうのが残念。

このように、伏線命な構成にも関わらず、伏線の張り方で損をした感の強い作品。
クライマックスの盛り上げ方が巧いだけに、なおさら惜しいと感じる。

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最終更新:2008年09月22日 22:42