仮タイトル「人形劇」

569 :名無しさん@ピンキー:2010/10/09(土) 18:54:56 ID:d3GE0t27
とりあえず導入部だけ出来たので上げときます。まだ作品とは言い難いので
タイトルはないです。お目汚し失礼します。

「ふっ・・・くっ・・ああぁ・・・」
人通りの少ない通りのさらにその裏路地で、暗がりの中一人の女性―外見から20代前半くらいだろうか―が倒れこむようにして悶えていた。そしてその横でもう一つのいやにニヤついた顔がその様子を伺う。
「ふふっ・・・これで欲しかったパーツは揃った・・・あなたにもう用はないからしばらくそこで楽しんでてね。」
その人影は冷たくそう言い残すと煙のように消え去った。
「ま・・待って!」
倒れていた女性が先ほどまでの気配が消えていたのに気付き、そのあとを追うまいと必死に立ち上がろうとする。
「・・・キャッ!!」
しかし体を起こした途端に崩れおちてしまう。何事かと自身の下半身を見てその顔を驚愕の色に染め上げる。
「イ・・イヤァァァァァッ!!」
彼女が悲鳴を上げた理由・・・それは人間のものとは思えないほど無機質な硬さを持ち、電灯の明かりを浴び光沢を帯びているマネキンのような脚―それが自分の下半身であることに気付いたせいであった。

「・・・というのが一般的に語られてる都市伝説ね。」
とある高校の昼休み。活発そうなショートカットの女子生徒が目の前に座る友人二人に得意げな顔で語る。
「・・・ふーん。マイもそういうオカルトチックな話が好きだったとはねぇ。」
正面に座る友人の一人がそれを胡散臭そうな目でみる。
「えーっ、ユキコだってこういうの好きだったんじゃないのぉ?」
とっておきのネタが思いの外不評だったためか、マイが不満の声を漏らす。
「さすがに高校生にもなると・・・ねぇ?サヤカ。」
ユキコが隣に座っている肩まである長髪の女子に同意の声を求める。
「えっ?う・・・うん・・そうだね」
まるで聞いてなかった、という風な表情を見せるサヤカにあきれる二人。
「・・・まぁサヤカは放っておいて、この話のどこが今までと違うの?化け物に襲われる
類の話だったらよくあるじゃない。」
ユキコがさもどうでもいい、といった感じでマイに疑問を投げかける。するとそれを待ってましたと言わんばかりのしたり顔でマイがそれに答える。
「ふっふーん。確かに今の話だけだとわからないかもね。でもさ、実はこの話・・・最近起きてるあの事件のことらしいんだよね。」

マイの言うあの事件とはひと月ほど前からこの街で起きている連続婦女暴行事件のことである。それほど大きくないこの町は治安も悪くなかったため、
こういった事件が起こるというのは初めてであった。そのため警察も躍起になって捜査を行ってはいるもの犯人はまだ特定できていない。
「あの事件って・・・被害にあった人がみんな錯乱状態になっていて会話もままならないって話じゃなかった?それなのにそんな詳しい状況がどうしてわかるのよ?」
ユキコが聞くとサヤカもそれに合わせるようにして疑問をつぶやく。
「確かにそうだよね。それにそのはなしをどうしてマイちゃんが知ってるの?」
矛盾点を二か所同時に突かれても動じる気配がなく、逆に堂々とした様子のマイを二人はいぶかしむ。そんな二人をよそにマイがその口を開く。
「その「スジ」の知り合いから聞いた話だと今の話はその事件の被害者が警察にその時の状況を語ったのがそのまま一人歩きして都市伝説になったんだって。
つまり・・・この町には人を襲って体を奪っていく正体不明の「何か」がいるってことなんだよ!」
なぜか少し嬉しそうな様子のマイに面食らった様子の二人が顔を見合わせる。そしてユキコがマイに向き直りマイに言う。
「・・・マイのオカルト好きが悪化したってことはわかったわ。」
まるでとりつくしまもない言われようにマイは肩を落とす。
「とりあえずそろそろお昼休みも終わっちゃうから早く食べよ?」
サヤカがそう言ったのをきっかけにマイが教室を見渡すと確かに教室にいる人数が減っている。おそらく次の授業の教室に移動しているのだろう。
事実、マイの次の授業は体育だ。早めに行かなければ着替える時間がない。
「そういえば次の時間体育だったからもう行かないとちょっとマズいかな。それじゃ、またねぇ。」
まだ少し残っている弁当を袋にしまいつつ教室をあとにするマイを見送ると、二人は自分の弁当の残りを口に運びその日の昼休みを終えた。

陽も沈み、あたりを暗闇がすっかり覆い尽くしてしまった頃、マイは部活の友人らと別れ一人家路についていた。
「今日は結構遅くなっちゃたかな。まぁ予選も近いし、みんな気合い入ってるからしょうがないか。私もタイムをもうちょっと縮めたいしね。」
そうつぶやくとマイは水着が入ったエナメルバックを背負い直し、歩を早めた。
マイが今着ているのは学生服ではなく動きやすさを重視した一般的なジャージ姿だ。半ズボンの先から見えるその脚には無駄な脂肪はほとんどついておらず、
競泳をやっている人間特有のなめらかな線を描いている。
自宅へと帰る途中、不意にある考えがマイの中に浮かんできた。
(そう言えば今日の昼休みのあの話、いまいちウケが悪かったなぁ。せっかくから帰りがてらちょっと現場検証とやらをやってみますか)
マイがしようとしていることは、この時間帯に加えて犯人が捕まっていないことを考えると明らかに危険なことではあるのだが、このときはその万が一を考慮することよりも、
なにかしらの収穫を得て、あの二人にそれを見せつけて少しでも自分の話に興味を持ってもらいたいという気持ちのほうが強かった。

「たしかこのあたりだったよね・・・」
あたりは先ほどよりも一層闇が濃くなり、足元も注意しなければつまずいてしまいそうな暗さだ。道端の街頭も点いていることには点いているが、
中には切れかかっているものもあり、明かりとしてはいささか心許ない。まいはポケットの中にしまっていた携帯電話を取り出し、現在の時刻を確認する。
液晶画面の右上の時計を確認すると八時半を少し過ぎたところであることをマイに示していた。
「・・・まぁお母さんには部活帰りに友達と寄り道してたって言えばいいか。どうせそんなに遅くなるわけでもないし。」
家に帰った時の言い訳を考えつつ、マイは目的の場所を目指し、その歩みを今よりも濃密な、さらなる暗闇の中へと向けた。

何度か迷いそうになりながらもあれからしばらく歩き、なんとか目的の場所にマイはたどりついた。
一歩足を踏み入れたそこは事件があった裏路地である。あたりに人の気配はなく、静寂がその場を支配していた。
そこは、一見すると特に何もないように感じられた。昼間とは違い夜特有のうまく言い表すことのできない不気味な雰囲気があたりに漂っていたが、ただそれだけだった。
化け物の存在を裏付ける証拠はおろか、この場で事件があったことすらも言われなければわからないほどにごく普通の場所であった。
(まぁ、事件に関するようなものは全部警察の人が持ってっちゃてるだろうってのはわかってたんだけどね)
ここに来るまでにそれは分かっていたはずだ、とマイは自分に言い聞かせるが、それでもせっかくここまで来たのだからもう少し何かないか探してみようと思いあたりの探索を始めた。
そして、それから時を置かずしてそれは見つかった。
(なにあれ?)
一見するとそれは何かの木材か何かに見えた。暗がりの中、ごみに埋もれたそれはマイの今いる位置からははっきりと見えなかったが、それでも興味を引くには十分だった。
そしてその正体を特定しようと少し近づいたところで彼女は自分のとった行動を後悔した。
(!?)
それはまさしく人の腕だった。黒いビニールの中から突き出しているそれは気味の悪い肉のオブジェとしてそこに存在していた。
(な・・なんで!?)
一瞬パニックに陥りかけたマイであったが一つおかしいことに気がついた。
(よく考えたら人の腕なんかがここに落ちてたら警察の人が必ず気づいてるはず。あれはマネキンか何かの腕に違いない!!。っていうかそうに決まってる!!)
一度冷静さを取り戻すと今度はじっくりとそれを観察した。よくみると肘や手首の部分につなぎ目のようなものが見てとれた。それだけでも自分が見たものは人形だったと容易に判断できた。
(なぁんだ、やっぱりただの人形じゃん。)
一度張りつめた緊張が解けるとマイは心の平静を取り戻した。
所詮はこの程度のものしか見つけられないのだということを改めて感じたマイは収穫もこれ以上は望めないと判断し、足早に立ち去ろうとした。その瞬間、

「ちょうだい・・・」

背後から女の声が聞こえた。

「えっ?」
予期せぬところから不意に声が聞こえたため慌てて周囲に目を向ける。しかし、あたりを見渡しても先ほどと変わらぬ景色があるばかりで人影すら見当たらない。
(空耳かな・・・?)
そう結論付けマイが前を向いたその時、
「ちょうだぁい・・・」
目の前に薄気味の悪い笑みを張り付けた女が薄暗い通路を塞ぐようにして立っていた。
「ひっ・・・!!うわっ!!」
マイが振り向きその姿を認めた途端にその女は覆いかぶさるようにしてマイを押し倒した。
「な・・な・・・」
安心した直後の降ってわいた災難にマイは戸惑った。
(だ・・誰?っていうか何なのこれ!?)
マイが状況を飲み込めていないのを尻目に謎の女は体をさらにマイに摺り寄せてくる。
そしてついに・・・
「んっ・・・」
女の唇がマイの口を塞いだ。さらにその舌をマイの口内へと侵入させる。女の唾液とマイの唾液がお互いの口の中で混ざりあい、ピチャピチャ、ネチャネチャとした卑猥なコーラスを奏でる。
その味が舌を通して感じられ、マイに不快感とともに恐怖を植え付けた。
「ンンンー!!!」
声は出せなくとも拒絶の意を女に伝えるべく叫んでみたが一向にやめる気配がない。それどころか己の肢体でしめつけるかのごとく絡みついてくる始末だ。
身をよじって逃げようとしても、その細腕からは考えられないほどの力で抑えつけられている。どうあっても逃げ出すことは不可能だ。もはや、この状況下でマイは完全に女のなすがままになっていた。
―――ズッ・・・ズブッ・・・グッ・・・
「んあっ!!・・・や・・・やめ・・・」
ついに女はマイの大事な部分――秘所にまでその手を伸ばし、舐めまわすようにして触ってくる。
(あ・・・あれ?)
そうしているうちに少しずつ意識が朦朧としてきた。ともすると自分がどんな体勢になっているかも分からなくなってくる。まるで夢の中を彷徨っているような、
「自分」という存在がだんだんと薄れていくような不思議な感覚に襲われ始めた。
(も・・・もういや・・・誰か助けて・・・)
このまま自分はどうなってしまうのか?ひょっとしてこの場で殺されてしまうのではないか?そういった最悪の未来を頭に描き始めていたが、その思考は唐突に中断させられた。
「うふふ・・・いいわねぇ・・・これなら使えそう・・・」

そうつぶやくと女はマイの体から離れ、そのまま起き上がった。このときをもってようやくマイの体は解放された。
(や・・・やっと終わった・・・の?)
ようやく体の自由を取り戻したマイはひたすら嬲られ霞がかった頭をなんとか働かせて周囲を確認する。
あの女は何やら自分の腕のあたりをしきりにいじくりまわしている。
(今のうちに早く逃げなきゃ!!)
そう思ったマイは急いで起き上がり逃げ出そうとした、が、なぜか両腕はピクリとも動かず、力の抜けたまま肩から垂れ下がったままだった。
試しにもう一度意識をその部分に集中させて動かそうとしてみるも結果はかわらなかった。
それどころか地面に触れているはずなのにその感触すら伝わってこない。
(あの女・・・よっぽど強く押さえつけてたのね・・・)
先ほどの尋常でない力で締め付けられていたことを思い出す。おそらく腕がおかしくなってしまったのは痺れているせいだと判断したマイは腕を使わずに起き上がろうとした。
しかし、
(!?)
もはやそれは異常とも呼べる事態だった。足の先から太もも、さらには腹筋にすら力を入れることが出来なくなってしまっていた。
これは血が通わなくなっていたために痺れたなどというレベルを超えてしまっている。
(い・・・一体あの女に何されたっていうの!?)
「心配しなくてもいいわ」
マイが体の不調と悪戦苦闘している間にいつの間にかあの女がマイの横たわっているそばまで歩み寄ってきていた。
「どうせ今から付けかえさせてもらうから。大丈夫、神経をマヒさせているから痛くもないしすぐに終わるから。」
(どういうこと?付けかえる!?)
相変わらずこの女の話すことは理解できないが、何か自分にしてくるということは確かなようだと理解したマイは這ってでもなんとか逃げ出そうとしたが
やはり体はマイの意思を拒絶しているかのように言うことを聞いてくれない。
「だからマヒさせてるって言ったのに・・・まぁいいわ。早く私にその「血と肉」をちょうだい・・・。」
そういうと女は相変わらず自由の戻っていないマイに近づくと先ほどとは打って変わって優しい手つきでマイをうつぶせにした。
「な・・・何のつもり・・・?まだいじり足りないっての・・・?」
「ふふ・・・それはもういいわ・・・。今は黙って見てなさい。」
先ほどと同じようにマイの体に重なってくる女。特に変わった様子は見られない。しかし、女の体が上半身に触れた瞬間―――――ゆっくりとマイの体に女が沈みこみ始めた。

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最終更新:2010年11月22日 16:36