番長GSS

最終更新:

member

- view
だれでも歓迎! 編集

番長グループSS



番長グループ



  • 春風みどり
現番長。そのミステリアスな雰囲気と華奢な外見は、
とても武闘派魔人揃いの番長グループの長とは思えない。
言葉だけでなく、そもそも自分の意見を表す事自体が少ない彼女であるが、
自身が何も言わなくとも、周囲の魔人は彼女の意を汲み取って行動する。
彼女の存在自体がまさに番長グループの意思そのものであると言ってよい。
これまでも番長グループに歯向かった勢力はいくつも存在したが、
彼女の抗い難い魅力と物言わぬカリスマに屈服する生徒は数知れず、
現番長グループは希望崎学園を統一しかねない勢いで拡大を続けている。
常に笛を持ち歩いており、笛の音色で配下の魔人に指示を下す事が可能である。

  • 浅宮ミズキ
見た目は可憐な美少女だが、春風みどりの右腕として最も恐れられている存在。
常に番長グループの一の手を担う切り込み隊長であり、
数多の強者達を、眉一つ動かさず次々と粛清してきた戦闘マシーン。
その雨傘は雨ではなく返り血を避けるためのものではないかとすら言われている。
しかし戦闘に関する事以外ではごく普通の少女であり、
常識的で人当たりの良い性格から、ほとんどのメンバーとは仲が良い。
その戦闘能力を勝手に恐れているのも、敵対勢力に属する人間のみである。
実際、番長配下の人間の中には彼女の隠れファンも多いという。
最近用水路で不思議なタコを拾い、その世話をするのを楽しみの一つにしている。

  • フジオクトパス
関西に捕らえられた仲間を救い出す協力者を求めて、希望崎学園の用水路に辿り着いた。
そこで番長グループの浅宮ミズキに拾われ、番長グループのアジトで飼われる事になる。
水棲動物と相性の良い水系統の能力を持つミズキとは特に仲が良く、
番長グループの魔人の中でも、彼女からは特に可愛がられている。
第一目的はあくまで仲間の救出であるが、ミズキに恩返しがしたいとも感じており、
タコらしからぬその板ばさみの複雑な心境に悩む、心優しいタコである。
その気になれば、腕を犠牲にして超戦略級の攻撃を放てるほど戦闘力は高い。
だがその事に気付いているのは現時点ではミズキのみであり、
他の魔人からは敵味方共に、ただの無害なタコとしてしか見られていない。

  • タルジュ
現番長グループの頭脳。春風みどりを協力にサポートする有能な軍師であり、
明晰な頭脳から繰り出される策略と、国家レベルの経済力で幾多の勢力を打破してきた。
完璧主義者故に、部下に対して甘すぎるみどりには苦言を呈する事も多々ある。
しかし彼がそれでもみどりに従う理由は、自国の力を魔人達に知らしめるため以上に、
彼の心が、みどりの本質にある優しさに知らず惹かれているためかもしれない。
同じ番長グループの頭脳派、百目鬼リカと並べ“左脳”と称される。
ただし彼自身は、その気紛れな研究姿勢や奔放な態度から、リカの事を嫌っている。
今回も様々な不確定要素すら戦力に組み込んだ驚異的な作戦を直ちに立案したが、
今度の敵がこれまでよりさらに危険な後ろ盾を持っている事にも、薄々気付いている。

  • 百目鬼リカ
番長グループ内で兵器開発、強化研究等を行うもう一つの頭脳。
研究のためならば人にどんな迷惑をかけることも厭わない破天荒な性格で、
自分以外の全ての構成員を当然のように顎でこき使っている(番長の春風みどりさえも)。
番長グループに所属する目的は、無論自分の研究のため。
好物のお菓子やジャンクフードがいくらでも食べられるという理由でもあるかもしれない。
“左脳”タルジュに対し、感情とアイデアの赴くまま研究を行う姿を“右脳”と称される。
もちろん、彼女の方でも理屈屋で規則にうるさいタルジュの事は嫌っている。
今回の戦いでも、とにかく自作の秘密兵器を披露したくてたまらない。
しかし今回の敵に限ってはそうふざけてばかりはいられない事にも、直感で気付いている。

  • ヒッタヴァイネン
番長グループの主力構成員。他の誰よりもいかつい風貌ではあるが
その実性格は温厚であり、浅宮ミズキとは対称的に敵対する者に対しても寛大である。
子供には大人気であり、深山によくイタズラされているが、まるで気にしていない。
口数もリアクションも少ないが、自分の考えている事は行動で示すタイプ。
しかしそれに伴って、彼の思考や出自等には謎が多い。
特にどう考えても高校生の外見ではない事について、周囲の生徒からは不審がられている。
帰宅する彼の後を尾けていたら森に入っていくのを見た等の証言もあり、
もしかしたら本当に森の妖精なのかもしれないという噂が流れているほどである。
彼の弾くフィドルの音色は、春風みどりのお気に入りでもある。

  • 深山武雄
学園でも有名なイタズラ小僧だが、実は番長グループの構成員である事を知る者は少ない。
しかしそれを知らずに彼のイタズラに本気で報復してしまった者や、
彼に現体制への反乱計画を知られてしまった者は、悉く行方不明になっている。
本人は番長グループの後ろ盾のおかげで、ますます調子付いているようである。
番長グループの抗争においては、霍乱やトラップ設置等を主な任務とする。
子供らしい性格同士、百目鬼リカとは気が合うし、ヒッタヴァイネンの事も気に入っている。
基本的には能天気で、まるで何も考えていないかのようにすら見える事もあるが、
穴を掘ることだけには不可解なほどに異常な執着を見せており、
その時の目付きには普段見せる表情とはまるで違う鬼気迫るものがあったと目撃者は語る。

  • 安井結
主に敵対勢力の離反工作を担当する、番長グループの特殊工作員。
番長グループに事前に存在を察知された敵対勢力が悉く自然消滅していったのも、
邪法を用いた離反呪術が裏で働いていたからである。
これにより、番長グループはこれまで無用な全面衝突を行わず勢力を伸ばす事に成功した。
明確な意図を持って自分の能力を間違った方向へと使っており、
とにかく人の縁を切りたいからという理由で番長グループに協力する完全な愉快犯。
隙あらばみどりの縁すら切ろうとしているらしく、ミズキやヒッタからは危険視されている。
あらゆる縁を切り続けてきた事による神の祟りは彼の体を確実に蝕んでいるが、
自分の生まれに対する彼の肥大した悪意は、その能力を使う事を躊躇させない。

  • 翼姫
第三次ダンゲロス・ハルマゲドンの後に卵から発見された突然変異体。
彼女は第一次ダンゲロス・ハルマゲドンの際に初代番長に救出されており、
番長グループの命令に素直に従うのも、その記憶が残っているためと考えられる。
春風みどりにはよく懐いており、まるで母親を追う娘のように後をついてまわっている。
神秘的な力を用いる結にも興味を示しているのか、よく話しかけているが大抵無視される。
外見も知能も幼く、とても通常の作戦に投入できる状態ではないが、
彼女に秘められた強大な力の存在だけは番長グループの誰もが認識しており、
今回の第四次ダンゲロス・ハルマゲドンで出現した強力な敵、生徒会に対しては、
不本意ながらもその力に頼らざるを得ないだろうと判断されている。
彼女の存在は生徒会にとっても完全な不確定要素であり、
生徒会のジョーカーがアキカンならば、彼女は番長グループのジョーカーといえる。

  • 魔山アリス狂終絶哀・闇
花園に所属する、学園最強の魔人。これまでその圧倒的な力の片鱗すら見せた事はない。
今回の第四次ダンゲロス・ハルマゲドンにおいてついに動きを見せたが、
彼女を用心棒として味方につけたのは、なんと体制側の番長グループであった。
ここに、よりにもよって学園最強の魔人が番長グループに加わり自分達に牙を剥くという、
生徒会にとっては最悪の構図が完成したといえる。
彼女の存在はまさに恐怖そのものであり、その力は転校生にすら匹敵するとされる。
本人は大した能力を持っているわけではない上に実は小心者なので、
もう本格的にどうしたらいいのか分からない。もちろん今更そんな事は言い出せず、
相談相手といえばアジトに何故か飼われているタコくらいである。
番長グループに与したのもとりあえず勢力が安定している体制側と手を組んだだけで、
とにかく転校生に出会わないよう適当にやり過ごせる事を願うのみである。

  • 希望崎十八鋼人
十八つ子の新入生であり、全員がそれぞれの意図を持って番長グループに参入した。
十八人という数の利点を活かし、学園全体の監視や多数の暴徒の制圧など、
様々な局面で番長グループの活動を裏からサポートしている。
特に広範囲の様々な情報を収集可能である点はタルジュの作戦立案に一役買っており、
十八鋼人も事実上、春風みどりではなく彼の直属として働いている。
その不気味な外見や出自から一般生徒からは悪魔のように恐れられているが、
地下倉庫から封印を解かれて現れた学園の守護神というのは、
実は番長グループが体制を磐石なものとするために流したプロパガンダ。
情報は十八人で共有しており、よって完璧に統率の取れた情報収集が可能。
アリスが実は大した能力者ではない事を見破った、数少ない人物でもある。
誰にも知られていないはずの希望崎太郎の能力が流出したのも、あるいは彼らが……

  • 歩峰糸子
いつの間にかふらりと番長グループのアジトに現れ、当然のように居座っているお姉さん。
さすがに何かがおかしいと誰もが思ったが、その圧倒的暴力に逆らえる者は皆無であった。
しかし怒らなければ単なる気のいいお姉さんであり、
春風みどりや浅宮ミズキ、翼姫などの温厚な女性魔人とは普通に仲が良いので、
現在は番長グループの客分として他のメンバーからも認められつつある。
たまたま立ち寄った希望崎学園での扱いが思いのほか良かったので長居しているが、
その幸せを乱す敵対勢力の魔人達には全く情け容赦しない。むしろ笑いながら殲滅する。
指示には全く従わないものの、番長グループの中でもその戦闘能力はトップクラスであり、
タルジュの立案した作戦においてももはや暴力だけで戦略の中核を担っている。
しかし希望崎学園に立ち寄る時、同時に厄介な少女も引き連れてきた。

  • 出鯉舞
精神に異常をきたした姉・真名を追って放浪の旅を続けていたところ、
姉の面影によく似た女性を見かけ、そのままふらふらとついて行った。
その女性、歩峰糸子が立ち寄ったのは希望崎学園。暴力と狂気が支配する世界であった。
何を差し置いても、とにかく糸子と自爆心中がしたくて仕方がなく、
糸子を見かけると直ちに自爆し、一般生徒の中にも多数の死傷者を出している。
だが、当の糸子本人はいつも上手い事被害を回避しているようである。
番長グループも彼女の対処には困り果てているのだが、
逆に考えれば自爆する生物兵器としても使えるんじゃないと百目鬼リカが提案したため、
グループの魔人に始末される事もなく、今日も元気に糸子姉さんを追いかけている。
糸子はどうして自分がこんな気違いに追いかけられているのか分からないので、本気で嫌がっている。

  • 木蔭サツキ
前生徒会長を心から愛する少女。折れたコンパスは旧生徒会室で拾ったものである。
彼女にとっては彼を殺した番長グループも憎き相手であるが、
それよりも許せないのは勝手な理想で彼の意思を騙る、新生徒会である。
自分の命すら駒としてしか認識しない冷静な判断で、新生徒会長の命を狙う。
組織ではなく、個人のレベルで新生徒会を倒すための計画をあくまで孤独に、
淡々と進めてきた人物など、希望崎学園には彼女の他に存在しないであろう。
敢えて番長の配下についたのも、極めて当然の思考と理性的な判断に基づく行為である。
彼女にとっては、彼の存在しない世界そのものが全て価値のないものといえる。
生徒会を殲滅した後には、旧生徒会室にて前生徒会長の後を追う予定である。


木蔭サツキ



旧生徒会室に足を踏み入れた私は、懐かしくも切ない気持ちに襲われた。

「あの人の匂いがする……」

二年もの月日が流れた今でも、まだこの気持ちに揺らぎがないことに、自分でも少し驚く。
胸が締め付けられる。
軽い眩暈すら覚える。
息苦しさを感じたのは、きっと彼のことを思い出したから。

「あ……」

目の前に、ぼんやりとあの人の姿が浮かんだ。
それは私の思い込みだったかもしれない。
でも構わなかった。
たとえ錯覚でも、あの人を感じられるのなら、それでよかった。

深呼吸をして心を落ち着け、全ての感情を声に乗せる。
返事なんていらない、ただ伝えたい。
打ち明けることのできなかったこの思いを、今ここで貴方へ。


「小竹様、サツキは今でも、貴方を愛してます」


オモイ爆発、天まで届け――。


タルジュ1



オープニングSS『アラビアンナイト』

「兄さん、これは何ですか!」

扉を開けるやいなや、タルジュはそう怒鳴った。
王宮の一室。だだっぴろい部屋の奥には男が一人と、彼をかいがいしく世話する女たちが数人。
男は絨毯に寝転がったままそちらに顔を向けた。
「兄さんといわれても、お前の兄さんは12人もいるからな~…どの兄さんだ?」
「ここには貴方しかいないでしょう!ザファル兄さん!」
ザファルと呼ばれた男は心底面白そうに笑う。

「これは兄さんの仕業ですね」
つき付けた一枚の用紙。そこにはアラビア語で『希望崎学園編入届け』と書かれていた。
もっとよく見れば、編入対象者が自分、アルファルド王国第13王子タルジュ・ヴィン・ムフタール・アル=ディヤーヴであることも読み取れるはずだ。
「正解~。凄いな、何で分かった?」
「こんなことするのは貴方しかいないでしょう…」
大げさなため息とともにタルジュは言葉を続けた。
「私たち王族は幼少の頃に帝王学を学び終えています。今更学校に通って何を学べというのですか」
それも下賎の者たちと一緒になど…。
「だいたい、2年前の貴方の気まぐれな留学がどれだけ国政に影響したと思うのですか!それだけのことをして貴方はそこで何を得たというのですか!」

まくしたてるタルジュが一息ついたとき、ザファルはのんびりとした口調で言った。
「お前は~」水タバコを吸い、そして煙とともに言葉を吐く「自分に足りてないものが何か分かるか?」
まったく思い当たらない。こと貿易・税制に関することなら知識も技術もこの国で右に出るものはいないと自負している。だとすると努力ではどうしようもない「時間」だろうか。
「・・・経験ですか?」
「は~ずれ~」
用意した答えはあっさり否定された。
いぶかしむタルジュにザファルは言う。
「それが手に入るかは分からんが・・・あそこならそれが何かくらいは分かるだろう」
よいしょっと言いながらゆっくり立ち上がると、ザファルは弟タルジュを見下ろし、言う
「なにより、面白い」
ザファルが指を鳴らすと、傍らの女性たちが部屋の外に向かって花びらを撒き始める。
あっけに取られているタルジュを残したまま、ザファルは笑いながら花の道を歩いて部屋を出て行ったのだった・・・。

後日、王より留学の勅命が下った。
無論命令は拒否できない。
だが、その時彼の心には、僅かだが希望崎学園に対する興味が湧いていたのだった。


タルジュ2



我々は中々学習しない生物だ。

タルジュはため息をつきながら希望崎学園に平和を与えようとした先代番長グループを思う。
番長グループの勝利によって第三次ハルマゲドン後、希望崎は平和に満たされたか?
残念ながら答えはノーである。
生徒会残党や番長グループ下っ端と名乗るゴロツキどもの小競り合いは相変わらず絶えない。
第三次を境にここ一年の希望崎学園内の事件発生件数は過去最多であり、数字は無情にもタルジュに現実を認識させる。

「小竹様の願いはこの学園を安息の地にすること。派閥争いなんて愚の骨頂よね。」

いつの間に。
タルジュの後ろには書類を両手いっぱいに抱えた木陰サツキがいた。
木陰サツキが音もなく番長グループ専用書斎に忍び込んだ驚きよりも、無断で入室を許してしまった自分への苛立ちと侵入者への嫌悪が先立つ。
「木陰くん・・・この書斎は私が18時0分0秒きっかりまで貸しきっているはずだが?用があるにしてもノックぐらいのマナーは覚えていただきたい。」
タルジュはいかにも神経質そうにメガネのツルを中指で持ち上げてサツキを睨み付けた。
サツキはタルジュの不信感に気づかないのか、あえてそう演じているのか、なにくわぬ顔で書類を机にそっとおいた。
「それはそれは無神経でごめんなさいね。でもお生憎様。繊細な番長グループ書記さんに細かい気遣いをする余裕はないわ。番長から出動命令よ。」
「! ・・・ついに潰れかけの生徒会が攻めてきたのか。あいつらも懲りない奴らだな。」
「戦場は混乱してるわ。早く行って貴方の能力で防いできて頂戴。さっきのあたしのようにくれぐれも侵入を許さないでね。」

タルジュはメガネを外し、シルクのハンカチでメガネを磨き、再びかける。
我々は必ず野望を達成する。
そのためにはまず反乱分子の排除が必要だ。
「わかっているさ。私の能力オープンセサミ、これこそが私たちが築くべき理想国家だ。」

我々は番長グループ。希望崎学園を平和に導くために日夜戦う戦士達が所属する組織である。


タルジュ3



通常発動(トリカゴ以外)での発動率UPSS『法の壁』

とどろく轟音。広がる爆煙。
「ヒャッハー!これで番長グループも終わりだぜぇ!」
右腕を突き出した姿勢のまま、男は感極まって叫んだ。
「俺の能力は核爆発並みの破壊力を持ってんだ!全員ッ木っ端微塵ッ!会長にはわりーが首は持って帰れねぇなこりゃあ!!」
辺りに響く男の嘲笑。揺ぎ無き勝利。戦いの終結。
そして、煙が晴れる。

「・・・な・・・なン・・・ッ!?」
驚愕のあまり言葉を失う。
かくして、男の視線の先には傷ひとつ無い番長グループの面々が立っていた。
傷どころか、髪の毛一本焦がせていない。埃すら付いていない。

「大した破壊力だ」
最前列に立つ褐色の肌の男が言う。日本人では無いようだが、とても流暢な日本語だ。
「大型原子力炉1基の3時間相当の発電量といったところか。エネルギーに対する関税は10%だ・・・」
タルジュ・ヴィン・ムフタール・アル=ディヤーヴは超然と言い放つ。

「ここは我がアルファルド王国の領土。通りたいのなら法に基づき税を支払え」


タルジュ4



『トリカゴ』

「クソッタレ!何だってんだ、こっから先に進めねぇぞ!」
「見えない壁があるみたい…」
「何とかしやがれこの役立たずどもが!」
「テメーがやってみろこの腰抜け!」

慌てふためく生徒会一同の背後から、凛とした男の声が響く。

「この地は既に我が王国の領土である」

男たちが一斉に振り向くと、その先には番長グループの参謀にしてアルファルド王国代13王子タルジュ・ヴィン・ムフタール・アル=ディヤーヴが一人立っているのだった。



私は多分、ここで死ぬだろう。

ここに来るまでは、まさか自分が命を賭して誰かの為に動くなど夢にも思わなかった。

王国で貿易に携わっていたときは、脱税、密輸、賄賂、そして暗殺。

人間の本質は悪であり、その性は卑しく、欺き騙し、そして殺しあう愚かなものだと思っていた。

だから、誰も信じられぬと・・・。

兄さん、貴方の言っていた足りないものが、分かった気がする。



「その壁はオープンセサミ(開けゴマ)の言葉などで開くと思うな!!」


出鯉舞



「舞、お前はどうして魔人になった?」
「アタシには、殺したいヤツがいる……」
「行くのか、どうしても……」
「ああ……」

 アタシが生徒会の方へ歩き出すと、不意に後ろから叫ぶ声が聞こえてくる。

「舞、待つんだってばよ! 番長グループに帰ってくるんだってばよ!」

 深山だ。番長グループの落ちこぼれ魔人……。そのくせ、いつも「五代目番長にオレはなる」と身の程もわきまえず言っている。コイツは何故か知らないが、いつもアタシにつきまとってくる、いわゆるストーカーだ。姉のストーカーをしているアタシが言えることではないが、実に、ウザイ。

「行くぞ……」

 そんな深山を無視し、アタシは新たに加えた三人の仲間に声をかける。水を操る浅宮ミズキ。キチガイツンデレ女、糸子。殺人衝動の抑えられない二重人格者、ヒッタヴァイネン。アタシの周りには、なんでこんなやつらしかいないのか……。まあいい。腕は立つ。

 仲間を引き連れ、生徒会室に向かうアタシに百目鬼リカが声をかける。

「本当の魔人の才能を持つ立派な魔人であなたほどの魔人はいませんね」

 フッ、当然だ……。

 そして、アタシはついに姉さんを見つける。

「姉さん、アンタを殺しに来た……」
「舞。お前はアタシのスペアだ」

 やっぱり訳の分からないことを言っている。姉さんは、もう、ダメだ……。アタシは姉さんに飛び掛る。

 ビシッ、ドシュ、やった、姉さんを倒した!
 しかし、それは幻術だった。

 ドシュ、ウギャ、しまった、姉さんにやられた!
 だが、これも幻術だ。

「フッ、幻術勝負では埒が明かないようだな!」

 アタシは胸のダイナマイトに火を近づける。命を賭して姉との決着を着けようとするアタシに、後ろの方で突っ立ったままボーッと戦いを眺めていた仲間たちが次々に賞賛を送ってくる。

浅宮「たいしたヤツね」
タルジュ「たいしたヤツだ」
安井「たいしたヤツだ」
翼姫「たいしたヤツだ」
アリス「たいしたヤツよ」
ヒッタ「たいしたヤツだ」
18鋼人「たいしたヤツだ」
糸子「たいしたヤツね」
木蔭「たいしたヤツだ」
深山「たいしたヤツだってばよ!」
春風「ピーヒョ(たいしたヤツだ)」
フジ「たいした奴タコ」

 ドカーン。アタシは爆発した。「ハッ、違う。これは姉さんじゃない」
スカラカーンだった。生徒会のやつらが踊りかかる。
「ガッシ! ポカッ!」アタシは死んだ。ゲンジュツ(笑)


フジオクトパス



オープニング『フジの冒険』


○月○日。晴れ。
仲間を助けるため関西に向かって旅を続ける。街を歩いていると近所のガキどもに追い回された。ムカついたので光輝八叉槍(セイリオス・オクタデント)で撃退する。ガキどもが半泣きで逃げ出すのを見て、若干大人気無かったと思う。

○月×日。曇り。
日中はマズいと思い早朝に道を行くことにした。するとゴミを漁っていたカラスに囲まれる。盛大に体をついばまれたが、光輝八叉槍(セイリオス・オクタデント)でなんとか撃退する。鳥風情が調子に乗りやがって。その後焼き鳥はおいしくいただいた。

○月凹日。晴れ時々雨。
徒歩で行く必要も無いと考え、関西方面へ行くトラックの荷台に乗り込む。しかし運悪くクール宅急便の車であったため、あやうく凍死しそうになる。凍えながらも光輝八叉槍(セイリオス・オクタデント)でトラックを爆破する。運転手のオヤジが呆然と立ち尽くすのを見て、ドンマイ、と思う。


関西は遠い・・・。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

記事メニュー
人気記事ランキング
目安箱バナー