同級生と

投稿日:2009/04/11(土)


空が半分ほど曇っていた。
だがこの天気も晴れと呼ぶということを小学生のときに習って
不思議に思ったことを覚えている。
「ふう……」
瑞希が窓の外を見て何となくため息をつくと、
廊下からドタドタと走ってくる音が聞こえてきた。

「みっずきぃ~!」
ちょうど昼休みになったばかりで、購買や食堂は
飢えた生徒の群れで歩けないほどなのに、
走ってきた少女は両手にパンを持って
嬉しそうに瑞希のところにやってきた。
「へっへ~、やきそばパンとクリームパンゲット!」
テニスで鍛えた体は無駄な肉がなく引き締まっていて、
髪は茶色に染めた癖っ毛を動きやすいよう短く切り揃えていた。

瑞希はそんな真理奈を見て呆れた顔で言った。
「いつもいつも、よく欲しいのパッと買えるよね……」
あの混雑の中、よく目当ての品をひと目で把握し、
他の生徒たちを出し抜いて買ってこれるものだ。
以前瑞希も挑戦したことがあるが、あえなく敗退してしまい
今は自分で簡単な弁当を作って持ってきている。

真理奈は見せつけるように瑞希の机の上にパンを置き、
勝ち誇った表情をしてみせた。
「ふふん、これが実力ってやつよ」
「うん、そうだね」
「遠慮しないで、もっと誉め称えていいわよ?」

牛乳のパックにストローを突き刺した真理奈に、
瑞希は軽く首を振って答える。
少しつまらなそうな表情を浮かべた真理奈だったが、
ふと思い出したように瑞希に笑いかけた。
「そういえば、中川もパン買いに来てたわよ。かなり苦戦してたみたいだけど」
「佑ちゃんが?」
その言葉に瑞希が顔を上げた。

相手の表情の変化を面白そうに眺める真理奈。
「大好きな男の子が昼食にありつけないかも、って思うと
 瑞希としても心配よねえ。どうせお弁当作るんだったら
 中川の分も作ってやったらいいのに」
「べ、別に私と佑ちゃんはそんなんじゃ……」
瑞希は頬をかすかに朱に染めた。

「はいはい。あんたはいつもそう言いますけど、
 はた目には瑞希が中川のこと好きなのはバレバレよ。
 しかも、向こうも満更でもないみたいじゃない」
「え、えーと、どうなんだろ……?」
「あーあ、なんであんた達、まだくっついてないのかしらねぇ。
 小さい頃からずっと一緒だったんでしょ?」
軽く息を吐いて言う真理奈に、瑞希は無言でうなずいた。

「あたしから見ても、瑞希はそこそこ可愛いしいい子だし、
 運動以外は何やらしても万遍なくできる優良物件なんだけどなぁ。
 正直言って、中川なんかにゃもったいないくらいよ」
瑞希は黒の長い髪をツインテールにした、内気そうな女子高生だ。
細く小柄な体格と幼さの残る顔立ちが中学生によく間違えられるのが
ささやかで微笑ましい瑞希の悩みである。

「そんなこと……ないよ」
恥ずかしそうに顔をそむける瑞希だったが、いきなり
染まった頬に真理奈の両手がかけられ、強制的に彼女の方を向かされた。
「――ま、まりなちゃん !?」
「瑞希に何が足りないって、やっぱり気合よねぇ。
 あんた達、少年漫画の奥手なカップルじゃないんだから、
 お互いにもっと積極的にならないと駄目よ?
 毎日お弁当作ってやるとか! 学校まで一緒に来て帰るとか!
 そのくらいしないと二人の仲は進展しませんってば」
「だからー! 私と佑ちゃんはそんなんじゃないのー!」
(うーん、駄目だこりゃ……)
泣きそうな顔で言ってくる少女を見て、真理奈は心底そう思った。


放課後、真理奈は瑞希を連れて校門のそばで立っていた。
自他共に認める勝気な美少女と内気な美少女という異色の組み合わせに
二人を知らない者からは興味深げな視線がチラチラ送られたが、
そわそわと落ち着かない瑞希とは逆に真理奈は悠然とその場に仁王立ちだった。

数分ほど待った頃、真理奈が校舎の方を指差した。
「ほら、来たわよ」
「う、うん……」
「あまりにも不甲斐ないから、あたしがあんた達の仲を取り持ってあげる」
とりあえず登下校を一緒にすると真理奈に言われ、
瑞希はここで(半ば強制的に)佑介を待つことにしたのだった。

佑介は一人だった。
やや鋭い目つきを除けば、これといって特徴のない少年である。
彼は二人に気がつくと、まるで自分をにらみつけるようにしている
真理奈と瑞希に、不思議そうな顔を向けた。
「ん、二人ともどうしたんだ? こんなとこで」
「やっと来たわね中川。あんた、今日はあたし達と一緒に帰りなさい」
「……はあ?」

自信満々の真理奈に訳のわからないことを言われてしまい、佑介は困惑した。
俺、こいつに何かしたっけ。それとも何かの罠だろうか。
こいつが尻軽なのは知ってるが、俺に興味があるとはあまり思えない。
何だ。一体何なんだ。狙いはなんだ。

どう答えていいかわからず佑介がその場に立ち尽くしていると、
瑞希が顔を赤らめて小さな声で言った。
「佑ちゃん……一緒に帰ろ?」
「あ? あ、ああ……」
幼馴染の少女の言葉に、彼はついうなずいてしまった。
横で真理奈がニヤニヤ笑っているのが見えたが、それは無視する。

祐介と瑞希は家も近く、幼い頃からよく一緒にいた。
それなりの優等生だった祐介に追いつけるようにと、
中学生になったくらいから瑞希は勉強に精を出して
何とか祐介にそう劣らないほどの学力になった。
祐介と違ってスポーツはカラっきりだが、それはもう諦めている。

真理奈にはよくからかわれているが、今でも二人は
一緒に映画に行ったり買い物に行ったりと仲が良い。
気の弱い自分を、祐介は優しく自然にリードしてくれる。
しかしそれはあくまで友人としての付き合いであり、
瑞希と祐介はまだキス一つしたことがなかった。

好きなのか、と聞かれると多分そうだと思う。
でも祐介が自分のことをどう思っているかはわからず、
瑞希はなかなかその先に踏み出せずにいた。
もし祐介が瑞希をただの友達だと思っていたら。
女ではなく女の子にしか見えないとしたら。
そう思うと、この関係が壊れてしまうのではないかと
彼女は恐怖に駆られてしまうのだった。

成長期が終わりつつあるのにいっこうに背が伸びず
胸も膨らまないのも、瑞希にとっては大きなコンプレックスだった。
対して、真理奈の体は引き締まっている癖に出るところは出ていて、
体操着に着替えると揺れる胸が実にうらやましい。
身長も祐介とそう変わらないくらいで、自分より明らかに高い。
そんな友達と毎日顔を合わせていると、つい自分の体を見下ろして
ため息の一つも出てしまうというものだ。

この前も瑞希は祐介と一緒に遊びに行き、帰りに彼を自分の部屋に招いた。
少女は自分にできる精一杯のおめかしをして
祐介の前で無防備にゴロゴロ転がっていたのだが、
彼はずっと雑誌に目を落とし、瑞希に関心を払わなかった。
あの時は祐介が帰ったあと、ひとりベッドの上でしょぼくれたものだ。

かと言って、自分からアクションを起こす勇気もない。
なかなか自分に自信が持てない瑞希は、ついつい物事を悪い方向に
考える癖があり、マイナス思考が板についていた。
変なことをして、嫌われたらどうしよう。
祐介が義理で自分に付き合ってるだけだったら。
このままじゃいけないと思いながらも、瑞希には打開策がないのが現状だ。


帰り道、三人は話しながら歩いたが、もっぱら喋っているのは真理奈だった。
「あたしのこと裏であれこれ言ってるやつがいるみたいだけど、
 そんなの根も葉もない妬みだから誤解しないでね」
「お前この間、サッカー部のキャプテンとバスケ部員と
 ふたまたかけてたのがバレたって聞いたが……」
「違う違う。ちゃんと振ってから新しいのと付き合い出したわよ。
 これだからやっかみってのは困ったもんだわ」

「ホントかよ……?」
半目でこちらを見つめる佑介に、真理奈が笑って言った。
「でも、男あさりに積極的なのは否定しないわ。
 このあたしが男を従えずに一人でいるなんて我慢できないもの」
「…………」
さらりとすごいセリフを口にされ、佑介が絶句する。

「それにしても、あたしのやる気の十分の一でも瑞希にあればねぇ。
 素材はいいんだから頑張ったら結構モテるでしょうに、もったいない」
「え !? あ、ち、違うよ……」
瑞希は唐突に水を向けられ慌てふためいた。

「せめて、好きな相手にちゃんと告白できるようにならないと駄目よ?」
「ま、真理奈ちゃん!」
「なんだ、瑞希って好きなやついるのか?」
「え、あ、ああ、あわわわ……!」
真っ赤になってじたばた暴れる瑞希を、
佑介は顔に疑問符を浮かべて見つめるばかりだった。

瑞希と佑介は家が近いが、真理奈は少し方向が違う。
「じゃ、また明日ね」
「うん。真理奈ちゃんまたね」
「じゃあな加藤」
二人と別れ、茶髪の少女は颯爽と歩いていった。

(まあ、やっぱ今日だけじゃ進展も何もないわね……)
瑞希が大人しすぎるのも原因だが、佑介が鈍すぎるというのも問題だった。
恋は自分でつかみとるもの、と考えている真理奈にとって
横から見た二人の様子は非常に苛立たしいものに映るのだ。
何とかしてあの二人をくっつけなくては。


真理奈のマンションの一階はコンビニになっている。
そういえば、今日はよく読む雑誌の発売日だった。
とりあえず軽く立ち読みして買うかどうかを決めようと、
彼女はいつものように店の自動ドアをくぐった。

「いらっしゃいませ」
何気なく店員の方を向いた真理奈の目が見開かれた。
高校生くらいだろうか、彼女と同じ年頃のバイトの少年がレジに立っている。
彼女が驚愕したのはその端正な顔だった。
テレビや映画の俳優が三枚目にしか思えなくなる美貌は
まるで芸術の世界からこっそり現実に紛れ込んできたかのようだ。

「お客様、どうなさいましたか?」
ハッと気がつくと、真理奈は自動ドアのそばから動けず
ずっと扉を開けたままにしていた。
「……いえ、ご、ごめんなさい」
戸惑いを隠せず、彼女は頭を下げて店内に入った。

「…………」
気を紛らわせるように雑誌を手にとってパラパラとめくったが、
さっぱり内容が頭に入ってこない。
他に客はいないようで、店には彼と彼女が二人きり。
ひょっとしてこれはチャンスかもしれない。
真理奈は読んでいた雑誌をレジに持っていった。

「あの、これ……」
「いらっしゃいませ、480円になります」
軽やかにレジを叩いて少年が言う。
細く形のいい指も、透き通るような声音も何もかもが真理奈を魅了した。
ぼうっとした顔で少年を見やる彼女に、少年が笑って言った。

「ご一緒にサプリメントはいかがですか? 当店のおすすめ商品なんですよ」
「え……?」
真理奈が熱病患者のように彼の示した方を見ると、レジの隅に
白いパッケージに入ったサプリメントが置いてあった。
よくわからないが、おすすめ商品らしい。
安かったこともあり、少年に言われるまま彼女はそれを買ってしまった。

「ありがとうございましたー」
「……あ、あとあなたをお持ち帰りで!」
「お客様、セクハラはおやめ下さいー」
一刀両断にされ、真理奈はトボトボと家に帰った。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

翌日、瑞希が一人で登校していると、いつもの調子で真理奈が走ってきた。
「おはよー!」
「おはよう、真理奈ちゃん」
「何よ、あんた中川と一緒に来るんじゃなかったの?」
口を尖らせる彼女に、瑞希がおどおどとした様子で答える。

「だって、いつも佑ちゃん遅刻ギリギリに来るから……」
「何言ってるの。そこは朝から起こしに行ってやるのが女房ってもんでしょうが。
 言った通り、ちゃんとあいつの分のお弁当も作ってきたんでしょうね?」
「う、うん。一応……」
恥ずかしそうに頬を染め、瑞希がうなずいた。

真理奈はそんな瑞希を何か言いたげに見下ろしていたが、
「ならいいわ。じゃあ行きましょう」
とだけ言って、彼女を先導するように歩き出した。
後を追う瑞希には、真理奈の心の声は聞こえない。
(昨日のアレ……説明書読んだけど、本当かしら?
 ちょっと試してみたいけど、どうしたもんかしらね……)
198円のサプリにあんな効果があるはずがない、と思いながらも
あの少年の美しい目鼻立ちを思うとつい信じてみたくなった。

昼休み、真理奈がいつものようにパンを買って帰ってくると、
窓際では瑞希と祐介が仲良く弁当をつついていた。
(なんだ……うまくいってるじゃない)
微笑ましい光景につい彼女は笑みをこぼし、
近づかずに遠くから二人をそっと見守ることにした。

手作り弁当は祐介のお気に召したようで、
瑞希も幸せそうな顔で箸を進める幼馴染を見つめていた。
兎型に切られたリンゴまできっちり完食し、祐介は少女に笑いかけた。
「悪いな瑞希、美味かった。今度何かおごってやるよ」
「う、ううん別にいいよ……」
「遠慮すんなって。お前、桜月のパフェ好きだろ?」

ピンク色のオーラが撒き散らされ、クラスメートが顔をしかめる。
真理奈は二人を物陰から眺めながら、涙を流していた。
「み、瑞希もやればできるじゃない……! よし、この勢いのまま
 一気に押しちゃうわよ! うふふふふふふっ !!」
「……よくわからんがウゼー」
これはこれで、そばにいたクラスメートが露骨に顔をしかめたのだった。


授業が終わり、真理奈は瑞希をトイレに連れてきた。
「見てたわよ、瑞希! よくやったわね!
 これでもうすぐあいつもあんたにゾッコンよ!」
「う、うん……」
はにかんだ瑞希の顔は桜色に染まっており、
そんな友達に言い聞かせるように真理奈はまくしたてた。

「戦いは勢いと押しが肝心よ! 高杉晋作もそう言ってるわ!
 女は一旦行動を始めたら立ち止まっちゃ駄目なの !!」
「そ……そうなの?」
「という訳で今日、あんたの家空いてる? 中川の家でもいいけど」
ハイテンションな真理奈に押されつつも、
瑞希は今日両親の帰りが遅くなることを教えてくれた。

「――何て好都合なの !? 据え膳食わぬは男女の恥!
 せっかくだから今日は中川を連れ込んで襲わせるしかないわね!」
「あ、あのー……まりなちゃん……?」
「いくら幼児体型の瑞希でも、二人きりで無防備な姿を晒せば
 あいつも手を出さないはずがないわ!
 やったねパパ! 今夜はロストバージンよ!」
「えーと、それはこの間試したけど無視されちゃって……」
「え、マジ !? ホントに駄目な子ねあんたは!」
真理奈はうずくまって泣き出した瑞希を、慰めて立たせてやった。

「となると、やっぱりこっちから押し倒すしかないか……」
「ま、真理奈ちゃん? 何考えてるの……?」
「うるさいわね!
 何とか中川をモノにする方法を考えてやってるんじゃない!
 あいつ、普段は妙に澄ましてるけど、押しには弱そうだから……」
「まりなちゃーん……」

数瞬何かを考え込んでいた真理奈だったが、突然瑞希を振り返ると、
「あーん」
「え、あーん……!? かはっ! ごほごほっ!」
つい口を開けた彼女に錠剤のようなものを飲ませてしまった。
「……な、何入れたの !? 真理奈ちゃん!」
「心配要らないわ。説明書通りならこれでうまくいくはずよ」
そう言って自分も一錠口に入れ、ゴクッと飲み込んでしまう。
「――まりな、ちゃ……?」


次の瞬間、真理奈と瑞希の目の焦点がぼやけ、二人とも倒れそうになった。
「…………!」
だが瑞希は何とかバランスを崩す前に踏みとどまると、
トイレの床にひざまずいてぼーっとしている真理奈の頬をぺしぺし叩いた。
「瑞希、瑞希 !!」
瑞希は相手を自分の名で呼び、手を引いて立たせてやる。

「え? あ……私……」
真理奈はいつになく呆けた表情で瑞希を見下ろしていたが、
数秒もした頃、突然驚いた声をあげて自分の口を押さえた。
「――えぇっ !? わ、私が……いる?」
「どうやら成功みたいね。こんなに簡単だとは思わなかったわ」
いつもの内気な表情はどこへやら、
瑞希はニヤニヤと品のない笑みを浮かべ真理奈を見上げた。

「瑞希、今の薬であんたとあたしの体を入れ替えてやったの。
 信じらんないでしょうけど、今はあたしが森田瑞希ってわけ」
「え? な、何? どうなってるの?」
状況が理解できずにうろたえる真理奈を、瑞希は怒鳴りつけた。
「いいから、そこの鏡見てみなさい!」
「う、うん……あっ !? 真理奈ちゃん !?」
「ほら、あんたは加藤真理奈になってるでしょ !?
 これがさっきのサプリの効果よ、お互いの体を入れ替えちゃったの」

真理奈は信じられない、といった表情で鏡に見とれている。
「わ、私……真理奈ちゃんになってる……?」
普段よりも高い目線。しなやかで力強い手足。
制服の胸を押し上げる豊かな双丘。短く切られた茶髪。
全て瑞希のものではなく、親友の真理奈のパーツだった。

瑞希は腕組みをしながら、にやけ顔で真理奈を見ていた。
「どう? あたしの体になっちゃって、ステキでしょ?」
余裕のある態度で真理奈に話しかける瑞希の姿は、
いつもの彼女からは想像もできないものだった。
「ま、まりなちゃん……私、こんなの困るよ……」
うつむいておどおどと相手に答える真理奈も普段とは大違いで
気弱な様子である。これはこれで男たちが見れば欲情するかもしれないが。

瑞希はぴんっと人差し指を立てて力説した。
「何言ってるの! せっかく交代してやったんだから、
 ちゃんと二人の仲は取り持ってあげるわ!
 タイタニックにでも乗ったつもりで――」
「そ、それ隣のクラスの佐藤君の持ちネタじゃ……」
「細かいことはいいから! 全部あたしに任せなさい!」

茶髪のショートカットの少女が怯えた様子でつぶやく。
「それに……こんな薬、どこで手に入れたの?
 副作用とか効き目の時間とか、戻り方はどうなの?」
「ああ大丈夫。ちゃんと説明書を読んだから。
 この入れ替わりは個人差があるけど一週間くらい続くみたい。
 効果が切れる時間になったら勝手に元に戻っちゃうんだって」
「い……一週間も…… !?」
真理奈の顔が恐怖に青ざめた。

「……何よ、あたしの体が気に入らないっての?
 胸もあるしスタイルもいいし、あんたの体よりよっぽどいいわよ。
 まったく、もっと喜んでよね!」
腕組みをしたまま、目を吊り上げて瑞希が言う。
「な、なんでこんなこと……」
「だから、中川との仲を取り持ってやろうって言ってるでしょ !?
 あんた達見てたらイライラしてくるから、ちゃっちゃと
 くっつけちゃおうってこと! あいつもこの姿で迫れば嫌とは言えないわよ」
自分の体を見下ろし、不満そうに鼻を鳴らす瑞希。

「そ……そんな、私の体で勝手に……。
 祐ちゃんに嫌われちゃったらどうするの…… !?」
「何言ってるの。あいつが瑞希を嫌いなわけないじゃん。
 待ってなさい、来週までには結ばれとくから。
 第一、あんたのためにやってあげてるんだから、反対はナシよ」
「うう……」

真理奈は体を返してと懇願したが、瑞希は頑として聞き入れない。
「もし中川にバレちゃったら、この体返してあげないからね!」
「そんなあ……いやだよぅ……」
涙ぐむ真理奈に、瑞希は面白そうに笑いかけた。
「わかったらちゃんとあたしのフリしてよ!
 これから瑞希はあたしの家に帰るんだからね!」
瑞希は真理奈の手にノートの切れ端を握らせた。
それには彼女の自宅の住所と簡単な地図が描かれている。

「携帯はこのまま交換しなくていいわね。もし誰かから連絡あったら
 適当に相手しといてちょうだい。デートには行ってもいいけど
 変なことすると後がひどいから、そのつもりで」
「わ、私……デートなんて……」
「できないなら全部断っていいわよ。男たちに応える義務なんてないから」
あっさり言い放つ瑞希に、不安に覆われる真理奈。

瑞希も真理奈から最低限の情報を聞き出し、
結局二人は一週間入れ替わることになった。
「ま、何とかするわよ。安心しなさい」
耐え難い不安に苛まれつつ、真理奈は瑞希の後をついていった。

「……お、いたいた」
今日は昨日とは逆に、祐介の方が校門で二人を待っていた。
二人が校舎から出てくると、彼も待ちかねたように手を上げてくる。
「よう、今日は遅かったな」
「――うるさいわね。女の子には色々あんのよ」
瑞希の返事に祐介が目を見開いて固まった。

「……瑞希?」
「ま、まり――瑞希ちゃん!」
慌てて後ろから真理奈が肩をつかむと、
瑞希は気がついたように祐介を見上げて言った。
「な、なんてね……じゃあ帰ろうか、ゆ、祐ちゃん」
「あ、ああ……?」
なんか様子が変だな、と祐介が思うのも無理はなかった。

帰途もやたらテンションの高い瑞希に不思議がった祐介だったが、
その都度真理奈がフォローして何とかバレずに済んだ。
やがて自宅の方向が違う真理奈が打ち合わせ通り途中で別れる。
「じゃ、じゃあ私はここで……また明日ね、二人とも……」
「ああ……じゃあな、加藤」
なぜか真理奈は泣きそうな顔で名残惜しそうにこちらを見ていた。

「……加藤のやつどうしたんだ? あいつのあんな顔、見たことないぞ」
「さあ? 生理じゃないかしらね」
「瑞希、今日はどうした……」
真理奈が去って二人きり。
ここからが瑞希の腕の見せ所である。

中川と表札に書かれた平凡な一戸建ての家の前で、祐介が手を振った。
「んじゃ、またな」
「ちょおっと待ったぁ!」
背伸びしてその肩をガシリとつかみ、瑞希が叫ぶ。
そのあまりの剣幕に、彼は身を一歩引いていた。

「今日、うち両親が遅くなるの。暇だから遊びに来ない?
 つーか来なさい。拒否権ないから。わかった?」
「あ、ああ……わかった」
勢いを別にすれば、珍しい誘いという訳でもない。
宿題をやるか、ゲームするか、ゴロゴロ雑誌でも読むか。
祐介はうなずき、着替えと荷物置きのために一旦家に戻った。

隣ではないが、森田家は祐介の家の斜向かいである。
「お邪魔しまっす」
互いの家を行き来して十年以上になるが、祐介は挨拶を欠かさない。
そういった何気ないところも好意の原因になっているのだろう、と
瑞希は体の持ち主の心中をそう推測した。

(へえ、普通の家ね……当たり前だけど)
瑞希は声には出さずつぶやいた。
「とりあえずお茶でも入れようかしら。えーとお茶っ葉は……」
「冷蔵庫にプリンがあったから持ってきたけど、食うか?」
「お、ありがと。気が利くわね」
初めて来た家にも関わらず、瑞希は慣れた調子で紅茶を用意した。

「んっふふ、プ~リン~プ~リン~」
「……何かお前、芸風変わってないか?」
「断じて気のせい」
瑞希は満足げにプリンを食べ終わると、自室に入って
制服を脱いで適当な普段着に着替えてから、居間に戻ってきた。
既に祐介は棚からマンガを取り出して、自宅のようにくつろいでいる。

祐介の横で同じようにカーペットの上に転がりながら、
瑞希はこれからの作戦を考えていた。
(んー……聞いた通り、襲ってくる気配はないわねー。
 こんなに無防備なのに、瑞希の体じゃ魅力ないのかな?)
確かに体は発育不良の傾向が多少あるが、
瑞希の顔は友人の目から見ても可愛いはずだった。
もしかすると、祐介はこの顔を見慣れているから興奮しないのか。

(やっぱり、こっちから攻めるしかないか……)
瑞希は決心した顔で立ち上がると、壁にもたれて座り込んでいる祐介の
すぐ目の前にちょこんとひざまずいた。
「……ねえ、祐ちゃん」
「ん、何だよ? 瑞希」
わずか数十センチという近い距離で見つめ合ったが、
祐介は未だに澄ました顔で瑞希を見やるだけだった。

幼さが残る顔を朱に染め、少女は祐介に問いかけた。
「祐ちゃん……私のこと、どう思う?」
「どうって、瑞希は瑞希だろう。別人には見えないけどな」
「ギクッ !! ……ほ、ほら、好きとか大好きとかあるじゃない」
「好きか嫌いかで言えば、俺は瑞希が好きだけどな」
(――よっしゃあ !! 話が早い !!)
真剣な目でそう言ってくる祐介を見て、
瑞希は心の中でガッツポーズをとった。

中腰になったまま、ゆっくりと顔を近づけていく。
祐介は逃げない。真っ直ぐこちらを見据えている。
そして、互いの唇が触れ合った。
――ちゅ……。
抵抗もしない祐介の頬に手をやり、瑞希は彼の唇を吸った。
二人だけの穏やかな時が流れる。

「――ふぅ……」
少し息が苦しくなった頃、瑞希は顔を離した。
顔は先ほどと比べてさらに赤く、はっきりした情愛に満ちている。
「瑞希……いいのか? 俺なんかで」
祐介は相変わらずの澄まし顔で少女に聞いた。

(へえ……こうして見ると、こいつも意外と悪くないわね)
彼女が現在、過去に付き合った男よりもいいかもしれない。
瑞希はそっと祐介に寄りかかって体を預けた。
「うん……私、祐ちゃんが好き……。
 祐ちゃんでいいんじゃなくて、祐ちゃんじゃないと嫌なの……」
(――しっかし、我ながらよく言うなぁ……)
祐介は身を起こし、小柄な少女と抱き合った。
「……そうか。実は俺もだ」

少年の肩に顎を乗せ、伝わってくる祐介の鼓動と匂いを感じ取る。
年頃の汗臭い男臭さのはずなのに、今の瑞希にはそれがとても心地よく思えた。
普段の彼女なら嫌がったかもしれないが、
やはりこの体が祐介のことを求めているのかもしれない。
「ゆ……祐ちゃん」
そっと頬にキスをすると、祐介はくすぐったそうに目を細めた。
「こら……まったく瑞希は、昔っから甘えん坊だな」
「えへへ~」
にこにこと笑っていると、自分が本当に瑞希になった気がしてくる。

彼女は祐介から一旦身を離し、彼の下半身に覆いかぶさった。
「祐ちゃんのここ……お触りしたいの……」
「――そんなこと、どこで覚えたんだ?」
恥ずかしそうに瑞希は顔を伏せたが、
まさか普段からしょっちゅうやっていますとも言えない。
誤魔化すように少女は祐介のファスナーをいそいそと下ろし、
下着の中から少年のモノを取り出した。

幼馴染の少女に抱きつかれ、しかも直接彼女の小さな手で触られた
祐介の陰茎は既に硬くなりつつあった。
「うわぁ……こんなになってるんだ……」
瑞希らしさを装い、わざとらしく感嘆する。
両の手で優しく竿や袋を揉みしだくと、次第に肉棒は膨れ上がり
やがて上を向いてそそりたつほどになった。

舌を出し、ぺろりと亀頭をひと舐めする。
「う……!」
気持ち良かったのか、思わず祐介の声が漏れた。
「ん……祐ちゃんのチンポ、大きい……」
「だからそんなセリフ、どこで……うぅっ!」
ソフトクリームを舐めるように少しずつ、彼のを舐め回していく。
じらすようなたどたどしい舌使いに、祐介の陰茎がビクンビクンと跳ねた。

「んじゃ……あーん……」
もはやギンギンではちきれんばかりに膨張した肉棒を、
瑞希は小さな口をめいっぱい開けてくわえこんだ。
「ん……んん……」
少女の口では先の方を少しだけ含むのが精一杯で、
なかなか舌を動かすことができない。
(ん……こんなの、いつものあたしなら簡単なのに……)
軽い悔しさを覚えながら、瑞希は懸命に口内を動かして祐介を責めたてた。

「――う、うぅっ……くっ!」
祐介は快楽と軽い困惑の真っ只中にいた。
幼い頃から一番親しかった隣人が彼のモノを一途にしゃぶっているのだ。
これで興奮しない訳が無い。
(瑞希が、あの瑞希が……俺のをくわえて……)
だが同時に、なぜ大人しい瑞希が突然こんなことを始めたのか、
という疑問も彼の頭にはあった。
思えば、帰りの瑞希はどこかおかしかった気がする。原因はなんだ。
自分の陰茎に舌を這わせる瑞希にどこか違和感を覚えつつも、
祐介はまだ正解にたどり着けないでいた。

祐介が考える間にも、瑞希のフェラは続いていた。
「ん……じゅる、ちゅぱ……ずずーっ……」
「うあ、ぐぅっ !!」
力いっぱい先端をすすられ、とうとう祐介が限界に達した。
「瑞希……どけっ!」
(――うふふ、イッちゃうのね……?)

射精を前に少女をどかそうとした祐介だったが、
瑞希はそれに構わず少年のたくましい陰茎を口内に納めた。
――ドビュッ !! ビュルビュルビュルゥッ !!
「……んっ! ん゙ん゙んっ !!」
盛大に口の中に出されてしまったが、
「――けほっ! ふ、ふう……」
半ば咳き込みながらも何とかそれを飲み干した。
瑞希の可愛らしい唇の端から、一筋の粘液がトロリと垂れる。

祐介は上からそんな幼馴染の淫猥な様子を見下ろしていた。
「み、瑞希……すまん」
「……祐ちゃんの、すっごく濃いねぇ。たまってたの?」
「――ば、馬鹿言え」
「童貞でしょ。やっぱり普段、私でオナってるの?」
「……おい瑞希、何を言って――」

少し声が低くなった彼から離れ、瑞希は中腰のまま
可愛らしい花柄のスカートを思いっきりまくりあげた。
純白のショーツに、遠目からでもわかるほどの大きなシミができていた。
「ほら、見て……祐ちゃんのペロペロしてたら、
 私もうこんなになっちゃったの……すごいでしょ?」
「瑞希……お前……」
祐介は少女をまぶしそうに見つめている。

「もっと見て……私のココをじっくり……」
「…………」
瑞希がスカートとショーツを脱ぐと、
隠すもののない女陰が祐介の目にはっきりと映った。
毛は薄く、じっとり濡れた割れ目もまだ未成熟なのが見てとれる。
だが瑞希の陰部は、幼馴染の少年の前で確かに濡れていた。

初めて見る瑞希の痴態に、祐介は荒い息を吐いて目を離せずにいた。
「はあ……はあ……」
幼稚園児だった頃は、一緒に風呂に入ったこともある。
小学生の頃も、ふざけて互いに裸体を見せ合ったこともあった。
そして今、祐介も瑞希も成長した性器を隠さず見せ合っている。
その事実と興奮に、彼の理性は蝕まれつつあった。

そんな祐介をさらに責めたてるように瑞希が再び口を開く。
「ほら……祐ちゃんに見られてると私、
 いやらしい汁が溢れてきちゃうの……。
 見える? ここからトローって……ほら、垂れてるでしょ?
 祐ちゃんのチンポしゃぶって、祐ちゃんにおマンコ見られて……
 私、もうこんなになっちゃったんだよ……?」

中学生にしか見えない少女の口が、祐介を刺激する言葉を紡ぐ。
「私のおマンコ、こんなにヒクヒクしちゃって……
 祐ちゃんのチンポ、欲しがってるの……。
 ぶっとい祐ちゃんのチンポ突っ込んで……かき回して欲しいの」
また一筋の女汁が床にこぼれ、カーペットに染みを作った。

「瑞希……瑞希ぃ……」
誘惑に耐えかねたのか、祐介は夢遊病のようにフラフラと起き上がり
小柄な少女の体をカーペットの上に押し倒した。
「祐ちゃん……そう、我慢しなくていいんだよ……。
 私、祐ちゃんに入れてほしいから……」
「――わかった……ありがとう」
祐介はうなずいて、いきりたった肉棒を瑞希の中に突き立てた。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

その頃、真理奈はマンションの自室でじっとしていた。
親と顔を合わせるのも厄介に思えたし、それに今の自分よりも
彼女に使われている自分の体のことが心配でならなかったのだ。

「真理奈ちゃん……返信してこないなぁ……」
自分のものではない携帯をいじって、瑞希にメールを送った。
今どうしてるか知りたかっただけなのだが、返信を待っても
真理奈の携帯に送られてくるのは男友達や彼氏からのメールばかりだった。
「はぁ……私、これからどうなっちゃうんだろ……祐ちゃぁん……」
大きなため息を一つつき、真理奈は机に力なく突っ伏した。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

――ブチィッ! ブチブチッ !! ブチュゥッ !!
「が、はぁ…… !!」
瑞希の処女が引き裂かれ、必死に抑えようとした口からうめき声があがる。
苦しげな少女の様子に祐介は動きを止めて、
「瑞希……大丈夫か……?」
と心配してくれた。

生涯で二回目となる破瓜だったが、やはり痛くて辛い。
瑞希はぽろぽろ涙をこぼしつつも強がってみせた。
「だ、大丈夫に……決まってるでしょ、祐ちゃん……」
「でも……血出てるし、泣いてるし……」
「そんなの……初めて、だから当たり前……よ……。
 いい……から、あ、あたしのぐちゅぐちゅ……おマンコ、
 祐ちゃんの……で、かき回してよ……!」

相変わらず不安そうな祐介だったが、その言葉で瑞希が精一杯
自分を受け入れてくれているという喜びを実感し、ふと顔がほころんだ。
「わかった……それじゃ、動くぞ……」
彼はそっと、優しく、じらすように腰を動かし始めた。
瑞希の中は極めて狭く、思いっきり祐介のモノを締めつけてくる。
ずっと想っていた相手と一つになっている興奮と膣の感触に、
祐介は今にも絶頂に達してしまいそうだった。
だが、苦しむ瑞希の様子を見ているとそれはためらわれてしまう。

――ズッ、ズリッ……ズズッ……。
少し進みまた戻し、それの繰り返しで膣壁を摩擦する。
初めての未熟な膣ではあったが、充分に濡れていたために
出し入れ自体は実にスムーズに行うことができた。
「ん……お?」
奥まで進み、先端に当たるコリコリした感じに祐介は目を細めた。
「はあ――祐ちゃんのが……当たって、るぅ……」
「瑞希……いい、すごくいいよ……」

天を仰ぐように上を向いた瑞希の唇にしゃぶりついた。
歯をかき分けて舌を差し込むと、少女は意表を突かれたようだが
すぐに自分のを伸ばして口内で必死に絡まり合おうとする。
「ちゅ、ちゅぱっ……じゅる、じゅるるっ……!」
お互いの唾液腺から唾が止まらず、
合わさった隙間からだらしなく垂れて二人の胸や腹を汚した。

――ヌチャ、ヌチッ……ブチュブチュ……!
祐介の硬くなった肉棒が、瑞希の子宮の入り口を叩いていた。
根元まで突き込んではいないが、やはり少女の小さな膣では
この辺りが限界といったところだろう。
焦る必要はない。もう自分と瑞希は結ばれたのだから。
祐介は子宮のところで止まったまま、安らぎを感じていた。

「……祐、ちゃん……?」
またも自分を気遣って止めてくれたのだろうか。
瑞希は怪訝な顔で祐介を見上げたが、彼の穏やかな顔が
そうではないことを如実に物語っていた。
「――瑞希……ありがとな……」
――ズプッ……。
「あぁあんっ…… !?」
奥から一気に肉棒を引き抜かれ、瑞希は耐え切れずに声をあげた。

自分を見上げてくる瑞希を優しく見つめ、祐介が言う。
「瑞希、初めてで痛いだろうから、また今度……続きしよう」
「え……そ、そんなぁ……」
明らかに失望の色を顔に浮かべる瑞希。
「代わりに、いっぱいかけてやるから……な?」

もう陰茎は痛いほど張っていて、今にも出してしまいそうだった。
しかしさすがに中で出す訳にもいかず、祐介は仰向けになった瑞希に
狙いを定め、幼馴染の少女の白い肌めがけて自分の欲望を解き放った。
――ビュルッ !! ドプドプドプドプゥッ !!
白い奔流が、瑞希の顔にも服にも、汁を垂らす股にもぶち撒けられた。
「――ゆ、祐ちゃん……あ、熱い、よぉ……!」
泣きそうな顔で悲鳴をあげる瑞希。
「――ごめんな。ありがとう」
祐介はそんな瑞希の泣き顔を見て、つい笑みを浮かべてしまった。

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

あれから一週間がたった。
その間、真理奈はヒヤヒヤもので瑞希と祐介を見守っていたのだが
彼女の不安を打ち消すように、二人は急速に愛し合うようになった。
最近は登下校も三人一緒だが、自分が邪魔者ではないかとさえ
思えてくるぐらい、瑞希と祐介は親密な仲になっていた。

「……加藤にも言っておくけど、実は俺と瑞希、付き合ってるんだ」
そう言われたときは、思わず泣いてしまいそうになったものである。
(祐ちゃん……私を好きになってくれたんだ……)
そう思うと、つい隠れて涙をこぼしてしまう真理奈だった。

そろそろ元の体に戻る時期だった。
昼休み、三人で昼食をとっていると前触れもなく突然真理奈の視界がぼやけ、
戻ったときには今までと位置関係が変わっていることを自覚した。
「も、戻ってる……私の体……!」
「あーあ、戻っちゃったか。ちょっと残念……」
再び変わった二人の様子に祐介は驚いたが、何とか誤魔化すことに成功した。

「……本当にありがとね、真理奈ちゃん」
二人だけになって礼を述べる瑞希に、真理奈は笑いかけた。
「いいって事よ! あんたの体が無事にあいつと結ばれて、
 あたしも嬉しくなっちゃったからねぇ……うーんしみじみ」
こうして、瑞希は祐介とそれまでの友達という関係から
もっと深い方向に一歩も二歩も踏み出したのであった。

帰宅途中、真理奈と別れた瑞希に祐介が言った。
「今日はうちの親いないんだ。来いよ瑞希」
「え……? う、うん……いいよ」
もう結ばれてしまったのだから、何を遠慮することもない。
初めての体験はできなかったが、祐介にあげたのなら本望だ。
瑞希は頬をほんのり染め、少年にうなずき返した。


――パァンッ !!
「あひィッ !?」
静かな部屋に、激しく肉を打つ音と悲鳴が響いた。
パンッ !! パンッ! パァンッ !!
「い、痛いィッ !? 祐ちゃん――やめてェッ !!」
裸に剥かれた上、腰をがっちりと後ろから押さえられているために
瑞希は逃げることもできず、肉の薄い尻を思いっきり叩かれていた。

馬乗りになった祐介がそっと彼女の耳元で囁く。
「……瑞希ぃ、祐ちゃんじゃなくてご主人様だろ? オイ」
――パァァンッ !!
「ひィィィッ !!」
ひときわ高い音がして、赤く腫れた臀部が悲鳴をあげた。
涙を流し歯を食いしばり、瑞希は痛みに耐えていた。

「ったく、あれだけしつけてやったのに……もう忘れちまったのか?」
いつも優しい祐介の声は低く、彼女に言いしれない恐怖を感じさせた。
(な、何――なんなの !? 私、何されてるの…… !?)
恐怖と困惑が入り混じった面持ちで瑞希は泣いていた。

愛しげに少女の腫れあがった尻を撫で回し、祐介が言う。
「まぁ仕方ないか……まだ仕込み始めてから一週間だもんな。
 いいさいいさ、じっくり瑞希を俺のモノにしてやるから」
「わ……私、はぁっ…… !?」
「それにお前が言い出したんだぞ、瑞希。
 『私は淫乱な雌奴隷なんです。お願いだから飼って下さい』って。
 まさかお前がそんなやつだったなんて思わなかったよ」
(……えええぇぇえっ !?)

祐介が指を少女の入り口に這わせると、
そこから熱っぽい液体がトロリと一筋垂れた。
まだ調教し始めて日は浅いが、既にスパンキングで感じる程度には
瑞希の体は開発されつつあった。
(真理奈ちゃん……私の体で、何してたのぉっ !?)
心の中で必死に叫ぶが、もちろん真理奈には届かない。

「瑞希……好きだ。これからも、ずっと一緒にいような……」
「ゆ、祐ちゃん……はああぁっ !!!」
乱暴にのしかかられ、力任せに肉棒をねじ込まれる感触に、
瑞希は悲鳴とも喘ぎ声ともつかぬ叫びを発した。

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最終更新:2009年04月11日 20:23