2009/10/05 0時作成

【第二次HBM-X計画 】

「西暦2016年――
 前年の4.23事件で大きく体制の変化した日本は、
 軍事先進国の人間型戦闘車両 『HBM』の研究開発の流れに乗り、
 防衛省技術研究本部にてHBMの開発に関する技術研究を開始した。」
「このシナリオはマイヤー、スパロゥ、浦瀬ヒガタ、成上権太郎(敬称略)とroswellの五名で製作しています。」

遂にここでも表れた共同作品。管理人に加えどこかで見た味わったことのある名前が
はじめてこの企画に現れているのも興味深い。
撃鉄関連に関しては本部があるのでそこで書くかな、と思ったが
折角指定されたので堂々踏んで感想に挑戦してみることに。

並びはプレイ順。例によってネタバレじみた箇所があったりするので注意。

  • 全体メニュー等
コクピット風味だが何気にBGMが流れる。これだけ書くと普通だが、
選択したメーカーによって紹介文と流れる音楽が同時に変化するという、
ちょいとテクを動員しないと作れぬであろう代物なので驚かされた。

また、本作付随の辞典機能は頁ごとの行数表示や見易さの点で光るところが
あると感じれる。もっと流行るといいなぁ…

  • 新銘工業編
ルート作者は浦瀬ヒガタ氏。
全ルート共通の題目「開発までの道のり」に、親からの自立を強く求めた
男と執事の静かな奮闘劇と、その後に炸裂した一見奇抜な試作兵器の開発劇が
加わった味わい。他の作品に比べてテンションは控えめだが、
他がそうでもないので浮いた印象ではなく、作風が違うという印象の方が強い。
見所は、画像的な意味でも、空気的な意味でも後半の戦闘パートに集中している感じ。
このパートは全作の中でも、兵器が主役だという印象が非常に強くなる設計なのだ。

あと進めていて思ったのけれど、同一人物が続けて発言するときには、
一度にメッセージウィンドウに表示される量を増やして詰めてもいいと思う。
例えば

Talk 水崎総一郎
水崎グループがまだ手を出していない部類の仕事だ
それに、私がいつ他の会社に入社すると言った? なあ東雲

これを

Talk 水崎総一郎
水崎グループがまだ手を出していない部類の仕事だ。;それに、私がいつ他の会社に入社すると言った? なあ東雲

こんな感じに。意図かどうかはわからないが、テンポアップ効果はあるものと思われる。

  • 中日本工業編
ルート作者は成上権太郎氏。
まさに「軽いノリ」で開発研究企画に乗り込んでしまったバカ社長
(明言はされていないがこれで間違いはないだろう)と、それを取巻く人達の
挑戦風景を描かれて…いるのだが、このパートだけ異質感が凄い。
他の作品に比べて肩の力の抜け具合が凄いのも確かなのだが、同時に読み進めるときのテンポの
こなれてなさや、人形劇でもやるのかと思いきやそんなことはなかったりする画面の使い方、
その時の「脇道進んでいるんじゃないのか自分?」感、果たしてやる意味が
あったのか疑問な妙な武器名、元企画タイトルロゴの扱い(些細だが見比べたらわかる)etc…
予想していた脱力感と同時に、クオリティでも下回る感じがしたのが残念だ。
もっとも単独で企画を動かしたのではなく、その後触れたパートのおかげで気分的には持ち直せたので
悪目立ちした感じはあまりしないのが救いか。
これ見て新規でやる人がいるなら、後回しにするより最初か二番目にやつたほうがいいかも。

  • 光菱重工編
ルート作者はマイヤー氏。
冒険は無くとも確実に…を進めたけれど、その奥に何かを秘めてる様子のあった
技術者と、命を預けることを超えた何かを求める現役の兵士とが、改めて
自分たちの浪漫を見つけ出し、形にしていく様子を場の空気や、やりとり中心で伝えていく
なかなかに「熱い」ストーリー。
拡大戦闘アニメ風な演出や、ターン制限とそれに挑戦させる意識の持ってき方などもあり、
駆け抜ける感じの描き方はピカ一。開発秘話モノとしても、
浪漫を見つけて閃いた後の精力的な様子がよく伝わってくる代物だ。

戦闘後にオチるタイミングは他の作品に比べて早いものだが、
それは逆に最終パートまでとっておいて、ということなのかもしれない。

  • 古松製作所編
ルート作者はスパロゥ氏。
HBM-X計画へ向けた動きが高まるその時と同時に、遺されたものたちが
一斉に動き出していくことから生まれる流れを体感できる一幕。
他のルート以上に、兵器と人間ドラマとの結びつきが強いのが特徴で、これが連動して
進んでいくことが、故人の情熱や新たなる決意の説得力に繋がっていると思う。
全体で見ると、これがいい感じの個性付けになっていると思うのだがどうだろうか?

氏の愛するミリタリテイストはパッと触れると今回控えめな印象はあるが、
ハイイロでも用いられた用語解説や、リアリティを空気に含ませて描こうとしている
努力からその辺は伺える。

  • 四ツ葉工業
ルート作者は登録者のroswell氏。
「一見無茶なものをどうにかするのが四ツ葉魂だ」をモットーに、
(特に思想的な意味での)トンデモ機体で乗り込む技術者の奮闘を垣間見る一幕。
登場兵器の奇抜さでは恐らく上位であり、浪漫性とそれっぽい理論の突き抜け加減では
最初に触れた新銘工業編の新HBMを上回るものとなっている…と思う。
いや、こう考えさせられるのは製作者がわかりやすくマッド・サイエンティストであることが
簡潔かつよぉ~く伝わってきたことも大きいのだが。
戦闘ではわざわざその奇抜技を試させる設計なのも面白い。

使用されている画像はクオリティの陰に「そこで使うか!」と思わず突っ込みそうになった
場面も存在している。でもこれは見た方が早いし、画像関係はそうそうバラせないw
あ、でも開発期間が流れると同時に表示されてた「様子」の絵の使い方はグッド。

  • 総評
おおむね質は高く、最終パートに寄せれる期待を高めるのには充分であったし、
変態兵器開発記、正当派開発ドラマ、人間ドラマ重視、決め所ある淡々路線、…お気楽? と、
ひとつの題材で5つの味わいがガラリと異なるショートドラマが堪能できる。
これでどの作者がどのパートを作ったかどうか、はじめのうちにtxtファイルで分かったら
良かったかな、と思うのだが断言は出来ない。

ミリタリー系の雰囲気が味わえる作品を好む人なら遊んで損は無いと思うが、
これを遊ぶ前に現代編の作品を1~2作ほど遊んでおいたほうが、感情移入の面でも
ガラッと印象が変わると思われるので、これから触れる方はその辺留意した方がいいかも。

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最終更新:2009年10月05日 00:12