※ネタバレに注意
【たとえばこんな狂騒曲】

「等身大シナリオ初挑戦。
 他にも、これまでやっていなかったようなことを色々と・・・。

 ライトなノリのドタバタオリジナルシナリオですので、
 お気軽にプレイしてみてください。
 ジャンルとしては、ギャグシナリオかも(笑)。」

数々の作品を完結させ、評価も高いみさき氏の手がけた等身大シナリオ。
作成時期はわからないが大体2~4年前の代物かなと予想してみる。
日記によれば、少し前にメンテナンスがなされて、
気になる点や戦闘バランスなどが手直しされているらしいので、
「古い作品だから…」という補正は抜きで、いざ挑戦。

  • グラフィック&演出
画像は全て汎用素材。むすすだ式氏と雪村叶氏のヤツが主体になっている。
ジャイアントのだけ激しく浮いたパイロットアイコンだったと思うが、ザコ相手なら
そこまで深刻なマイナス評価にはならないのでよしとする。
戦闘アニメーションとかは、効果音指定とか見る限りだとぼちぼち頑張っている模様。
ただ、会話パートの一部で「一面水色+上に題名」という殺風景な雰囲気の
場面でユニットアイコンが出てきて会話、というのは見てて大分微妙である。
次回作以降ではなくなっていると思うが(注:筆者はまだ翼の唄には触れてない)。

  • キャラクター
全体的に、キャラの方向性が一貫していない印象を受けた。ギャグだから、と
作者が肩の力とか頭のネジを緩めて作っていった結果なのだとは思いたいが、
ちょっとギャグシナリオ全体に対する視点に暗い影が落ちそうになった。
(続編を入れると更に酷くなってしまうが、分けることにする)

その象徴たるキャラが主人公、中ノ瀬郁也ではないかと思う。
振り回される常識人ポジと、頭がハッピーな少年ポジという二足の草鞋を
履いているというのはやんわりと理解できたんだが、見せ方が直球すぎる+
その間の素面がコロリと抜け落ちているような感じがして、最終話付近での
ちとシリアスとか、変態な敵役相手への突っ込みをかける場面とかに
説得力を感じさせなかったのが辛い。ここで、ギャグで思いっきり吹ければ
気にならなかったのだが、それがなかったせいで余計に気になってしまった。
若くてイタめ、それだけで終わってしまう系統のキャラだってことも一因かもしれない。

他のキャラクターについても、ボケ特化とか突っ込み特化とかそういう属性は
一応あるのだが、何故か一貫性が無いオーラを拭えていない。特にボケ特化(ヒロイン)は、
最後に無理にねじ込まれた気がするシリアスっぽい雰囲気の中心に立ってしまったせいで
残念である。あと、こういう砕けすぎたキャラばかりではなく、アクセントとしてであろう
真面目系なキャラもいるにはいた。一応対比的な雰囲気を出していることには
成功していたし、立場相応のキャラを演じていたが、実際のところは
「それだけ」だった気がする。もうちょい同情が得れる位、突っ込み役とかのポジは
その彼、アルベルトに集約しても良かったんじゃないだろうか。昔の作品でこんなことも
野暮かもしれないが、一応。

あと、本作ではギャグシナリオだけに、変態性を強調した悪役が中盤以降に登場している。
シリアスではできないはっちゃけ方をしているが、なんかこういうタイプの狂気は
既に自分が通過した道っぽくて微妙だった。…一応表情変化が異様に激しいとか、
戦闘における攻撃手段にまでギャグが浸食していたほうが良かったかもしれない。
もっとも、マゾヒストというキャラは物語において
どう取り扱えばいいか難しいのかもしれんが。

緩急の大事さを印象付けられたキャラ達であった。
(緩急といっても、ギャグ←→シリアスと静←→動と安らぎ←→激動の3つの次元)

  • シナリオ
この項目についてだが、かなり辛いモノがあった。物語の流れが薄かったり、
目新しいものがなくても笑いを提供できそうなギャグシナリオというジャンルにおいて、
どうも笑いどころが見つからなかったのは致命的だったと思う。

「寒い」という領域にまで…踏み込んでしまった「次回作」よりはマシなのだが、
ポンポンと「これは面白いんじゃないかな!」と思ったネタを、ただただ並べたり
(地味目な演出面という条件下で)急に複数流し込んだりしている印象は否めない。
それだけに、表現方法でごく稀に勿体無いものも見つかったりする。
例えば文の最後に(キッパリ)なんて言っちゃう場面があるんだが、なんでわざわざそこで
それまでの文章と「(キッパリ)」を、:で区切って表示してしまうのだろう、とか。
鋼響曲とかで改善されたかはわからないがこれに限らず「;」「:」の表現が多い
(しかも面白さを引き出す…にまで至っていないイメージがしてしまう)ので、
気になる人は確実に気になるものと思われる。特に合わないとなかなか進まなくて
ダメージが更に増してしまうかもしれない。

他にも主人公のクラスメイト二人はバカップル呼ばわりされているが、あんまり
そんな感じがしなかったりとか(主人公とヒロインの存在で更に加速する一方)、
昔からの人には懐かしのネタとか、イヤンな教員に絡むネタ各種とかまぁいろいろ
作者曰く「ドタバタ」したノリで転がされまくっているのだが、どうもその多くは
滑っているというか、作者はギャグものが…いや、「も」苦手というイメージを、
勢い良く加速させているイメージがあった。(不要にというイメージで)見てて痛々しい。
あと、登場人物が緊張感の無さを自覚していそうな雰囲気の場面はあったが、
そいつをそのまま扱っていくには器としてのキャラに強さというか注目したい要素が
見つけられなかったので、なんだか凄く微妙な雰囲気に見えてしまうことも。
まぁとにかく、かなり滑ってた感じ。
笑いのセンスや沸点の問題もあるため、どんなネタや流れが受けたかとか引いたとか
他の人の意見も沢山聞いてみたいところなのだが、なんか不安だ。
(恐らく感想前に撃墜された人と、最後までいけてはっぴーな人の二択しかいなさそうで)

なお、そんなノリだが最終話のあたりだけシリアスな雰囲気が強まったりする。
死んだはずの魔王の欠片が復活したりとか、現実から召喚されたヒロインは、なんか
独り身ということもあって現実世界に帰りたくないとか唐突に前の話あたりで出したりとか
まさかの主人公命の危機とか(まあお約束で助かる+帰れる。でもハッピーエンドムードに
移行したときとのギャップが強く感じて、素直には受け入れられない…)、会話にも
ちとシリアスモードが出てきたりするのだが、これがギャグに対して
なんか水と油みたいな感じだった。ギャグに対してグサリと挿入する形で、気持ちの
切り替えを促すというより、照れ隠しで不自然に入れてしまった感が強い。これならば
全編ギャグのノリで、シリアスシーン全開の場面をネタにした方が良かった気はするが
(ただこの期待は続編で粉砕された気がする。ぐふっ)

やっぱ緩急の大事さを考えさせられる代物だった。
…メンテしてこれかと思うと、危ういです。

  • 戦闘バランス
第二話からはまともになるが、第一話がイベント発生までの間大分退屈。
弱そうな武器でペチペチやるのも味、と仮に言われても、これについてはちょっと
納得はできない。せめてオークと3回交戦とかそのあたりからイベント発生に
したほうがスピーディーだと思う。

後の戦闘バランスは氏の巨大基準作品に比べれば、ギャグシナリオというのもあってか
やさしい仕上がりでサクサク進む。この作品で素直に受け止めれた箇所だと思う。
(ただ、ラスト前の面は敵の攻撃が高い+破壊対象の特殊能力が厄介めである)
地形が一部動きにくい箇所もあるが我慢できるレベルだったのでよしとする。
最後がヒロインとラスボスの一対一の実質イベントバトルになるのは予想できなかったが。

  • BGM選曲
よくある選曲。レアかどうかはともかく、
「フリー素材だけどこのシナリオにはこの曲しか考えられない!」に繋がるものはない。
まぁ場面や雰囲気に沿ってはいるんじゃないでしょーか(無責任)。

  • トータルバランス
シナリオと一部被るが…
素材の雰囲気とかそういうのから、ゆるいシナリオという感じだったが
ラスト付近の魔王云々とか命がかかってるんだよ的な事態は、ちょっと蛇足な気がする。
なんというか、ギャグが基本だけどシリアスなのも偶にあるよ!
という感じを見せたかったのだろうと思うのだが、物語全体に貢献しているという
感じがあんまりしなかったのが残念。締めに向かう原動力にはなっていたんだが、
面白さの面では、ってことね。

つうわけでラスト以外は、まとまりのある作品だったかもしれない。
ただ、面白いかどうかは別という…自分でも始めてのケースに直撃した気がする。

  • 総評
作者の等身大シナリオ処女作ということで甘めに見ることもできるのだが、
レスポンスや画像周りあたりはメンテナンスが入っているのなら、もうちょい
今より近い時期に手入れされたシナリオって感じが出せたかもしれない。

作者の言う「ライトなノリのドタバタオリジナルシナリオ」という体裁の形成には
成功しているのだと思われるが、それも何だか、勢いに任せて何かをくすぐるネタや
ギャグを配置していっただけで、勢いとか狂気とか狙い撃ちとかそういう要素が欠けてて
ギャグシナリオとしてはイマイチな印象を受けた。シナリオ薄めでもギャグに頼って
疾走できるギャグシナリオで、すべり気味なのは致命的かもしれない。

まぁ、深い総評やまとめは本来レビューする本命であったシナリオ、
こんどはそんな狂双曲」のほうと同時にやっていくことにする。
短編+割合なにか似てる系統なんで。