キャットフィーバー・ラビリンス

作者:凡用人型兵器
公開場所:
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1.概要
 「東方SRC合同企画」として製作された一連の作品群の中の一つ。学園シナリオコンペみたいなものか。
 その名の通り東方Projectを題材としたシナリオで、SRCシナリオと言うよりは東方のファン創作といった色彩が強い。
 ダンジョンRPG的なシステムをSRC上で構築しており、そういった意味でもSRCシナリオらしくないシナリオであると言える。
 なお、筆者は東方Projectについてはそれほど詳しいというわけではないため、ストーリーについての論評は差し控えさせてもらう。あしからず。ただ誰にでも判別できる評価をするならば、文体はまともと言ってよく、誤字や寒い身内向けギャグは無しと、読んでいて自然な文章ではあった。

2.特徴
 「親の仇のように(readmeより)」用いられた独自システムが最大の特徴。
 筆者は知らないが、「零式」という十年くらい前のエロゲーをリスペクトしているようだ。
 プレーヤーは主人公の「橙(ちぇん)」を操作し、たった一人でダンジョンを探索していくことになる。12日間という期限のうちに、迷宮の最深部まで到達することが目的だ。(エネルギー切れやピンチに陥った際に、任意のタイミングでダンジョンから脱出でき、次の日はその地点からのスタートとなる)
 ダンジョンは初期状態では真っ暗であり、キーボード操作により進んでいくことで、周囲の一マスが新たに明らかになっていく仕組みだ。ダンジョン内には鍵のかかった扉や罠が仕掛けられているかもしれない宝箱、会話の選択肢しだいで戦いになったり情報をくれたりするNPCなどがいる。

 この時点で既に十分個性的なシナリオなのだが、さらに個性的なのが戦闘システムだ。いわゆるRPG的な一対一の戦闘ということになるのだが、敵味方ともに、1ターンに「狙撃」「集中」といった行動を複数回選択でき、パラメーターや選択した行動によって変動する行動順に、それを順次行っていく。その際にランダム要素はまったく関わらないので、行動順、行動によるパラメータ補正、被・与ダメージなどは計算によって予測することが可能になるのだ。
 敵のパラメータは全て開示されているから、つまり行動順や補正値を読みきることで、まったくダメージを受けずに完封することもできる、というか、多分完封していくことを前提としたゲームバランスだ、これは。

 ダンジョン内ではほとんど全ての行動にEN消費があり(歩くのすら!)、前述の12日という期限もあるため、いかにして効率的に探索し、効率的に敵を倒すか、ということが求められる。全体として、プレーヤーの労力が求められるシステムだ。(断っておくが、これは「つまらない」ということではない。むしろ一昔前のRPGのようなマゾさというか、あえて残された不便さがツボにはまれば大変面白い)

3.感想
 なにこれ超おもしれえんですけど。
 もはやシステムがまったくSRCではないのだが、そんなことは問題にならない完成度だ。東方に興味がない人でも、普通のSRCにやや飽き気味のユーザーや、一風変わったシステムを構築してみたいライターは触ってみて損は無い。
 また、縛りの中での自由度というか、例えばダンジョン内のNPCには片っ端からケンカを仕掛けてもいいし、全スルーしてもいい。罠かどうか悩みながら宝箱を漢識別してもいいし、次の日になって鍵アイテムが補充されるのを待ってから開けてもいい。レベルを上げてから安全に進んでもいいし、計算力に自信があるならどんどん先の階に進んでもいい。そういった、「次はどうなるんだ」「これを選んだらどうなるんだ」という気持ちを感じることのできる、良作だ。
 ただ一点不満を上げるとするならば、レベルアップなどにより自由にステータスをカスタマイズできるのだが、必要なステータスとそうでないステータスの差が激しく、誰がやっても最終的には同じようなステータスになってしまうだろうという点だ。そこだけはもう少し作りこんでもらいたかったと思う。
 また、注意点としては、システムが独特すぎるため、ダンジョンに挑む前にチュートリアル(そこそこ長い)を受けることが実質的に必須。そういうのが面倒な人には辛いだろう。
 東方好きな人、ダンジョンRPGと聞いて胸が高鳴る人、物事が計算どおりに進むことにいいようのない喜びを覚える人などにオススメ。
 同じ作者の別の作品もプレイしてみたくなる出来だ。

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最終更新:2008年06月30日 20:33