その他 > 皇帝暗殺パートA

一通りの白亜宮でのイベントがつつがなく終了し、皇帝は帰る事になった。
無論自家用ジェットであるが、空港に行く事に変わりは無い。



数名の護衛を引きつれ、空港のV.I.P席で珈琲を飲んでいた所だった。



『ソレ』が現れたのは。



白いサマーセーターに短剣を持っている。
無造作に振るった、短剣が、ヒュンと、風斬り音を立てた瞬間。



ぼとり、と何かが落ちる音がした。
ついで、噴出す生暖かい紅い液体。
飛んだのは首、噴出したのは血と悟る僅か0.2Sec。



空港は狂乱の渦へと巻き込まれた。






ギィィィンキィィンギィン!!!!

響く剣戟。
皇帝の剣と白いサマーセーターの男の短剣が交差する。
実力は恐らく白いサマーセーターの方が上か。
しかし、短剣と通常の剣。そのリーチの差と皇帝としてのプライドだろうか、が状況を膠着させていた。

そして

「っち、GT!!弾丸が底を尽きそうだ、お前の方は幾つ残ってる!?」

「こっちも余裕は無いですって!!御鷹さんは!?」

「すいません、もうこれが最後です」

職務で離れられないフシミに変わって、皇帝を見送りに来た、LC、GT、御鷹の三人もそれぞれ奮闘を続けていた。

白いサマーセーターの男が現れると同時、無数のゾンビが現れた。
空港の警備隊も当初こそ応戦していたものの、ゆっくりとその数を減らしていた。
そしてこの三人は何とか皇帝にゾンビを近づけまいと、壁を作っていたのである。

「くっそ、阿鼻叫喚の地獄絵図だな……!!」

ドズン、とゾンビの頭を撃ち抜いたLCが吐き捨てる。

「そろそろヤバイですね……これが最後です」

最後のマガジンを銃に詰めながらGTが告げる。

「今、ポレポレさんに支援を求めています、あと少し、何とか持ちこたえてください」

兼ねてより、デリンジャーしか持ち合わせていなかった御鷹は何とか外部との連絡を取ろうと躍起になっていた。
ちらり、と皇帝の方を見やる。
流石は皇帝、といった所か、あの白いサマーセーターの男、クーリンガンを前にして一歩も引いては居ない。
しかし――……勝つ事は無いだろう、とも思う。いや略それは確信だった。
恐らく皇帝は勝てまい。このままでは、恐らく皇帝は死ぬ。
御鷹の脳に最悪の絶望が写った瞬間……

 ガション

GTとLCの銃が仲良く弾切れした。
此処まで銃弾で何とか皇帝の所へゾンビを足止めするのと共に、自分達の命を保ってきたのだが……
その命綱が断たれた。

「………くッ」

終わり、だと思った――次の瞬間。

スパン――…… ドズム………!!

斬撃の音と、打撃音が響いた。
LCが手に持った二本のククリで、GTが警棒で、それぞれゾンビを纏めて数体見事に蹴散らしたのである。

「え?」

御鷹が感嘆を漏らす程に、見事な手際であった。

「いやいや、こんな所で使う事になるとは……」

「密かに特訓していた甲斐がありました」

トン、トンとリズムを取る二人。
未だ希望はある。ほっと安堵を取ると同時、再び御鷹は外部との接触を試みた。



数分後。

「無理が、あったな……」

「ありましたねぇ……流石にこの数相手にククリと警棒じゃ……」

三人は見事に追い詰められた居た。
これ以上下がれば皇帝とクーリンガンとの戦闘圏内だ。
それは即ち、自分達の死と、皇帝の死さえ意味していた。
散発的な銃声や悲鳴、怒声を聞く限り、未だ生存者は居るのだろうが、救援に駆けつけてくれるとも思えない。
ぎり、と御鷹は唇を噛む。外部との連絡は未だ取れない。

「……アレがあれば……もう少しは保つんだが……」

「確かに……此処はアレ、しかありませんね……」

LCとGTが同時にうなずきあう。

「な、何ですか!?それはッッ!!」

御鷹が食いつく。後少しで外部との連絡は着く。それまで持たせられればあるいは――……

「うむ、ツンデレだ」

「へ………?」

「ツンデレです」

「は………?」

大事な事なので二回言いましたッ面のGTとLC。

「いや、ええっと………」

言葉に詰まった御鷹だったが……

「べ、別に好きで言ってる訳じゃないんだから……勘違いしないでよね!!………頑張って……」


ヒュィン―――、ドズムドズムドズム。

周りを既に包囲していたゾンビが倒れ伏す。
此処に来て、神業じみた動きで、LCとGTは立ち上がる。

「っふ、作戦通り………ッッ!!」

「一国の摂政のツンデレ……俺はもう死んでも良いです、LCさんッ!!」

おお、と何かに感動しながら高速で敵を薙ぎ倒す二人。

「あ、貴方達はッッ!!」

御鷹が流石にぶちキレた瞬間、

『此方ポレポレ、どうした?』

外部との連絡が通じた。
嘘のような、本当の逆転劇は、今、此処より始まる。

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最終更新:2009年10月24日 19:05
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