オンライン=オンライン8

~ユートピア・オンライン~


とあるオンラインゲーム上でのお話。
設定
スキル


正宗♂             熟練タイプのアバター推定40歳、ジョブクラスはブレイブナイト。
(以下も正宗)        声は渋い武士道な侍な感じで。プレイ暦も長くて、頼れるキャラ。
                 中の人は、渋いキャラのロールを楽しんでいる劇団員。
                 しかも、女性だったりする。
                 『ゲームは、楽しくあるモノ』という信条がある。

ヘイト♂♀           大人タイプのアバター推定25歳、ジョブクラスはアサシン。
(以下もヘイト)       声は両性チックなのをイメージ。意識して情報屋をロールしている。
                 正宗とは長い付き合い、勝手に親分扱いしている。
                 ていうか、かなり正宗の事を好いている。学生をやっています。
                 ギルド「青色ウェーブ」メンバー

レティキュル♀        大人タイプのアバター推定25歳、ジョブクラスはハイプリースト。
(以下レティ)        落ち着きのある頼れる女性といったイメージの声。
                 主婦です、超主婦です。
                 ギルド「青色ウェーブ」メンバー

大塚さん♂          青年タイプのアバター推定17歳、ジョブクラスはアイスウィズ。
(以下も大塚さん)      声は青年をイメージしつつも、毒を持った感じを表現してほしい。
                 キャラネームから見て取れるように、ちょっと曲がってる奴。
                 ギルド「青色ウェーブ」メンバー

アンドレ♂           青年タイプのアバター推定17歳、ジョブクラスはローグ。
(以下もアンドレ)      口数が少ないのでクールな印象を受ける、声もクールに。
                 ただし、実はタイピングが遅いだけと言う。
                 とても強烈な萌えポイントを搭載している。
                 ギルド「青色ウェーブ」メンバー

配役表(奨励5人 3:1:1)
正宗:
ヘイト:
レティ:
大塚さん:
アンドレ:


注:オンライン=オンライン7からの続きになっています。


1大塚さん  「出たぞ、『ヤマタノサテュロス』」

2ヘイト   「20分の遅刻ですね」

3レティ   「時間にルーズだと、女の子にモテないわよー」

4ヘイト   「まったくですよ、少しはこっちの都合も考えて欲しいなぁ」

5大塚さん  「さて、この戦力でどれだけやれる事やら。 もう少し集められなかったのかい、情報屋さん」

6レティ   「まあまあ、とりあえずはこの戦力でやるしかないんだから、頑張りましょう?」

7大塚さん  「わかってますよ。遠くから魔法をぶつける簡単なお仕事に、従事することにしましょう」

8アンドレ  「行こう」

9レティ   「一歩踏み込んだら、相手のテリトリー。 あんた達、全滅なんてしたら許さないからね!」

10大塚さん  「了解」

11アンドレ  「うん」

12ヘイト   「アンドレさん、来ます!」

13アンドレ  「シフトステップ!」

14レティ   「前衛を援護するよ!」

15大塚さん  「フェンリルエッジ!」

16レティ   「ライトシャワー!」

17アンドレ  「トリックスラッシュ!」

18ヘイトM   『ヤマタノサテュロス』、六つの足が生えた獣の下半身から八体の半獣人の胴体が生えている。文字通りの化物モンスター。

19大塚さん  「レティ!アンドレがダメージ貰った、ヤバイ!」

20レティ   「ヒール! 非ダメージと回復量が同じぐらいになっている、攻撃には参加できないわね……」

21アンドレ  「あり」

22レティ   「アンドレ!礼とか後でいいから、ひたすら殴りなさい!」

23アンドレ  「チャージ!スラッシュ!シフトステップ!」

24大塚さん  「フロストローレ! …っく、やっぱりそう簡単に凍結はかからないか。 保護が高くて魔法ダメージがあまり通らない……」

25レティ   「相手の挙動も小刻みね、あのアンドレが大技を挟めてない。 かなりキツい戦いになりそうね……」

26ヘイトM   最大の特徴は、八体の胴体がそれぞれ別のモンスターとして独立していること。 強烈な強打を繰り返し繰り出す連携攻撃により、近接戦闘を困難にする。そして、もちろん魔法攻撃も―――

27アンドレ  「!!」

28大塚さん  「やられた!蘇生は後回しで、周りの回復を!」

29レティ   「ハンパ無いわね……。 アンドレ!ちゃんと前衛を支えときなさいよ! オーバーヒール!」

30アンドレ  「チャージ!アルカレイド・ラッシュ!!」

31レティ   「リバイブ・ハーブ」

32大塚さん  「感謝。しかし一度の魔法でこれだけの打撃。 ちょっと、自信なくなってきちゃいましたよ。それに、かなり緊迫した状況だって言うのに、町ののどかなBGMが激しくミスマッチなのがなんとも」

33レティ   「泣き言なんて言わないの、男の子でしょう? アンドレを見習いなさい」

34アンドレ  「トリックスラッシュ!……シフトステップ!スラッシュ!」

35大塚さん  「……努力はしてみますよ」

36ヘイトM   予想以上に攻撃か苛烈。 やはり、あと一手。あと一手押しが足りない……。 間に合わない……のか?

37正宗    「ようよう、俺抜きで面白そうな事してるじゃないか」

38ヘイトM   来た!

39正宗    「リアに連絡が入ってきたから、何事かと思って飛んできたがな。 とんでもない事になっているな」

40ヘイト   「待っていましたよ、とっても。」

41正宗    「この正宗、助太刀する!」

42ヘイト   「やはり、僕は正宗さんが来ないとしっくり来ないですからねぇ。さぁ、片付けましょう!」

43正宗    「合点、仕掛けるぞ!」

44ヘイト   「はい!」

45正宗    「カラミティ・ラッシュ!」

46ヘイト   「チェインスラッシュ!」

47レティ   「来たね、正宗」

48正宗    「ああ、来たさ」

49大塚さん  「前衛が二枚増えて、一気にムードが変わったか。 てか、ヘイト君は後ろでサボってたわけか」

50ヘイト   「総大将が前線でぶっ倒れてたら、かっこ悪いだろ? 戦略だよ、戦略。今回は俺の仕切りだ」

51大塚さん  「わかったよ。ただし負けたら力の限り罵ってやるからな」

52正宗    「そこの盾持ちローグ、ここの三体は受け持つ。左翼に回れ、タイミングを合わせねばならん」

53アンドレ  「……うん」

54レティ   「ゲージも減りを見せはじめてる。この勢いのままいければ、すんなり倒せるかもしれないわね」

55ヘイト   「『ヤマタノサテュロス』、その一番厄介なところは蘇生能力。 一つの胴体を潰したところで、一定時間すれば蘇生されてしまう。 一体目の撃破から20カウント以内に全ての胴を倒しきれなければアウト」

56大塚さん  「フェンリルエッジ! そろそろ、タイミングだ……一つのミスアタックで駄目になる」

57アンドレ  「あ!!」

58正宗    「っく、誰かがこらえきれずに頭を落としてしまったらしいな。 削りが不十分だが……このまま勢いで押し切るか!?」

59ヘイト   「落ち着いて!! これは想定内です、一体は蘇生させてかまいません! 削りに専念してください!!」

60レティ   「二体目の首が落ちた!不味いわね、勢いがありすぎたのが逆に響いてる」

61ヘイト   「全員離れろおおお!!」

62アンドレ  「とまれ!」

63正宗    「攻撃を中止するんだ!」

64レティ   「……ふぅ、止まったね」

65大塚さん  「ちょうど20カウント、あのまま殴ってても間違いなく倒しきれてなかった……か。 グロテスクな蘇生するんだなーオイ。あー二匹ほどHPバーがマックスだよ」

66正宗    「最悪を考えれば被害は三分の一以下だよ。さあ、体勢を整えよう」

67アンドレ  「戦闘に参加できないPCの支援、助かる」

68レティ   「一旦距離をとったから、魔法が届くようになったのね。これに応えてあげなきゃ男じゃないよ!」

69ヘイト   「さぁ、戦いも終わりが見えてきましたよ。あと一息です。新品の首もすぐにボロボロにしてあげましょう。全員……突撃!!」

70正宗    「この正宗に続けぇ!」

71アンドレ  「チャージ!スラッシュ!」

72大塚さん  「また、どっかの誰かがヘマやらかさないといいけど」

73レティ   「一度勝手がわかれば大丈夫よ、並以上のプレイヤーが揃ってるんだから!」

74ヘイト   「心配要りません、皆さん信用できる人たちですよ」

75正宗    「楽しいなぁ、オイ!」

76レティ   「正宗ちゃん!?」

77正宗    「こんだけ沢山のPCが協力して、一緒の事やろうってイベント。運営なんかじゃ用意できないだろう?せっかくのMMOなんだ、大人数で遊んだほうが楽しいに決まってる!」

78アンドレ  「一緒に頑張る、楽しい」

79大塚さん  「一理あるけどね。楽しければいいって括れないのは、ゲームもリアルも同じか」

80ヘイト   「仕掛け人も、面白がって別キャラで討伐に参加してる。そんな事ザラですよ。楽しみ方なんて十人十色、いくらあってもいいんじゃないかな?」

81レティ   「はあ、そういうのひっくるめて承知の上でまとめ役をやってるんだから、頭下がるわね、今回のヘイトちゃんには。」

82正宗    「よりリアルな駆け引きを求めて、PKを吹っかけるもよし。
         自らの正義にのっとって、治安を維持するのもまたよし。
         当たり障り無く、ゲームそのものを楽しむももちろんよし。
         他人に迷惑をかけるのなんて、当たり前。ここに生きているPCは皆人間!
         人間関係があるところに、迷惑の掛け合いなんて日常茶飯事だ。
         楽しさもあれば、怒りもある。
         喜びもあれば、悲しみもある。
         出会いがあって、別れもある。
         いがみ合いがあっても、仲直りがある。
         ここは仮想世界(ヴァーチャル)、現実世界(リアル)より少し自由な、匿名の理想郷!」

83アンドレ  「理想郷(ユートピア)オンライン」

84ヘイト   「そして、それを創るのは僕達PCの仕事なんですよ」

85大塚さん  「たかがゲームに、馬鹿みたいだな。でも―――」

86レティ   「悪く無い、でしょ?」

87大塚さん  「レティ……」

88レティ   「いいじゃない、思いっきり楽しみましょう?」

89正宗    「さぁ、仕上げだ!全力を叩き込め!!」

90大塚さん  「フェンリルエッジ!!!」

91レティ   「ライトシャワー!!!」

92ヘイト   「チェインスラッシュ!!!」

93アンドレ  「アルカレイド・ラッシュ!!!」

94正宗    「ミラージュ・ブレイド!!!!」

95大塚さん  「…………どうだ?」

96レティ   「……倒し、きれたのかな?」

97アンドレ  「直立で、動かない」

98ヘイト   「……HPゲージは、見るかぎり全て空」

99正宗    「俺達の……勝ちだ」

100大塚さんN  『ヤマタノサテュロス』の巨体は、ゆっくりと傾いた。

101レティN   巨体を支えていた足の内の三本が力なく曲がったのだ。

102ヘイトN   巨体は、重力にしたがってタウンの石畳の床に吸い込まれて―――

103アンドレN  倒れた。

104正宗N    地面とぶつかると共に、巨体は爆散し、跡形も無く消え去った。

105ヘイトM   そこには、何事も無かったかのように、何も無い空間が広がっていた。

106レティ   「おわったぁーー」

107大塚さん  「ホント、大仕事でしたね」

108アンドレ  「皆乙、支援アリ」

109レティ   「みてたみてた?私の獅子奮迅な支援技術!」

110大塚さん  「みてましたよ。でも、支援に獅子奮迅はちょっと違いますよね?」

111アンドレ  「攻撃に参加しすぎ」

112レティ   「いや、その、テンション上がっちゃって……」

113大塚さん  「そんなんじゃーまだまだ」

114アンドレ  「だね」







115ヘイト   「ふぅ……被害も少なく済んだみたい、よかったぁ」

116正宗    「ヘイト」

117ヘイト   「なんですかー?もう気とか色々抜けて、超脱力状態です」

118正宗    「いいイベントになったな、大満足だ」

119ヘイト   「人聞きがわるいなぁ。僕が全部仕立てたみたいじゃないですか」

120正宗    「ん、ちがうのか?」

121ヘイト   「…………さあ、どうでしょうね?」

122正宗    「……ふ、いいさ、楽しければな」

123ヘイト   「正宗さんのそういうところ、大好きですよ」

124正宗    「そいつはどーも」







ついに舞台となるゲームの名前が公開されました。
ゲームのスタッフロールに「and you」って書いてあるよね。


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用語集


リバイブハーブ アイテムの名前。戦闘不能のキャラクターを復活。

PC プレイヤーキャラクターの略 読みは「ピーシー」

MMO マッシブリー・マルチプレイヤー・オンラインの略 読みは「エムエムオー」





書いた人:柿崎      まあ、理想なんだけどね。
最終更新:2010年04月14日 21:36