バトル01

都野辺 弘樹 (トノベ コウキ) ♂ 二十代
加江氏 三池 (カエシ ミチ) ♀ 二十代

神楽 東吾 (カラキ トウゴ) ♂ 想定は高校生ぐらい
隈部 神住 (ソノベ カスミ) ♀ 想定は高校生ぐらい。
神楽 栄吾 (カラキ エイゴ) ♂(♀) 中性的な声。



1  トノベ「良い場所だな。草と風と空と雲と……私はね、最近の街に嫌気が射していたところなんだ」

2  カエシ「確かに、この草原は地平線が見えるしねー。しかし街が嫌とか、ゴミゴミした場所だから、とでも言うつもり?」

3  トノベ「違うね。都市部には特に顕著だが、角が多すぎるんだ」

4  カエシ「カド? カドってなんだ」

5  トノベ「直角が多い、とでも言えばいいかな」

6  カエシ「んー……あっ、あぁ、そういうこと? ビルやらなんやらは、カクカクしたデザインしてるもんねー」

7  トノベ「そうだな。私は、あの空気を切り裂いていきそうな角が嫌いでね。優しさがないし、自然界には存在しない物だ」

8  カエシ「でもさー……ほら、こういう石とかはゴツゴツと尖ってるけど、それは良いわけ?」

9  トノベ「逆だ。石の直角を許せるのは、まず自然があってこそ。これだけの柔らかさに囲まれていれば、その石すら愛せるようになるのだ」

10  カエシ「総量の比率問題なのかな?」

11  トノベ「そういうことだ。街はなんでも角張っていて、しかも量が多い。私はね、そういう意味では車のデザインは人間の疲れた心を癒すため、無意識に作ったのだと思っているよ」

12  カエシ「いや、空気抵抗っていう自然界の力を有効に使うため、まるっこいんじゃない? 同じ方が、摩擦は少ないでしょ。まぁ、癒し効果もあるかもしれないけれど。共存が先でしょ、共存」

13  トノベ「むっ…………なんということだ、考えつかなんだ」

14  カエシ「エッ?」



15  トウゴ「いやしかし、こう自然ばっかってのも、どうかなー」

16  カスミ「そう? 私は気持ちが良いけれど」

17  エイゴ「見飽きる風景じゃ、無いと思うけれど」

18  トウゴ「いやいやいや! お前さっ、どう考えても飽きるだろう、これ!」

19  カスミ「雲を見てると、色んな形に似てて楽しいけれど。ほら、あれなんか牛の顔みたいじゃない」

20  トウゴ「雲が牛面に見えるからってなんだってんだよー!」

21  エイゴ「なら、耳を澄ませるだけでも楽しいですよ。風の音も、草や木の葉のすれる音も、どれだけ聞いていても同じ様には聞こえてこない。これだけ多種多様な音楽、なかなか無いですって」

22  トウゴ「流行りの歌でも聴いてた方がいいやーい。正直、覚えきれない位いるし、どいつもこいつも同じ様な歌だけどさ-、まだマシだぜ」

23  エイゴ「なんというか……にいちゃんって、野生児みたいな性格してるくせに、自然が嫌いだよね」

24  トウゴ「おまっ、よりにもよって兄を野生児とかいうのかよ!」

25  カスミ「はいはい、そんな当たり前な事に過剰反応しないの。ほら、そろそろ丘を登り切るし――見えてくると思うよ、相手が」

26  トウゴ「お前まで、ひでぇや……」

27  エイゴ「どんな人が居るのかな。今月は始めてだから、楽しみかも」

28  カスミ「君はかわいい容姿してるけれど、やっぱり男の子だねぇ。あっちの馬鹿は、もう、分かり易すぎて楽しくないよー」

29  トウゴ「馬鹿とか楽しくないとか、ひでぇやいやいやい……」



30  カエシ「たまにあんた抜けてるよねー。気づかないなんて」

31  トノベ「私にも理由は分からん……ふむ、これは研究しなくては」

32  カエシ「熱心だよねぇ、また五百枚もレポート書いて学会をびっくりさせないように」

33  トノベ「あの程度で驚く奴らに私の方が驚愕したよ。もう少しやる気を見せて頂きたいものだ。彼らも好きで自然科学を研究しているわけであって――」

34  カエシ「まっ、後でやんな。ほら、来たよ」

35  トノベ「時間には……遅れず。なかなかに見事」

36  カエシ「丘の上、取られてるけれど、どうするよ? なんか一人、馬鹿でかい銃もってるしね。狙撃できるんじゃない、あれなら」

37  トノベ「だが、風は私たちの背から向こうへと吹いている。飛び道具とは、高低差だけで決まるわけでない事を、教えてやろう。簡素に、音もなく忍び寄る刃で、まずは先の先を取ろう」



38  エイゴ「見た感じ、男性と女性のペアですね。数的に有利です」

39  カスミ「でも、こっちからの先制攻撃は、無理そうだけど」

40  エイゴ「向こうから風、吹いてますからね。丘を駆け上ってくる風も強いですし、トウゴ兄のラッチェを使ったところでどうなるものでも」

41  トウゴ「いやいや、やってみなきゃ判らないことはある」

42  カスミ「試しで玉を無駄にするのは間違い?」

43  エイゴ「一度ぐらいなら平気かと。どれだけ威力が軽減されるか。乱気流が発生しているかどうか。データはあればあるだけ良いと思いますよ」

44  トウゴ「よっしゃ、ならさっそく――伏せろぉお!!」



45  トノベ「気づいたか?」

46  カエシ「凄いね。手首のスナップだけで投げた四方手裏剣避けるのか。この遠さだとモーションに気づけたとは思えないし、太陽光を反射しないようにヤスリもかけたし、草に紛れるように色も変えたのにさ」

47  トノベ「素晴らしい。自然との調和だ」

48  カエシ「黙れ自然オタク。さて、一番やっかいなのは、一番最初に避けた子かな?」

49  トノベ「彼の狙撃銃が飾りでない事が判ったぐらいか。この距離で手裏剣を発見し避けたのだから、相当の観察眼をお持ちのようだ。だが、彼は実行部隊だろう。フォローに指揮は彼の仲間が担っているだろう。最小の軍隊、スリーマンセルというやつだ」

50  カエシ「んじゃ、まずは指揮役を見破ってしまいましょうか――っと!」



51  トウゴ「げぇ、消えやがった!」

52  カスミ「唐草模様の布が向こうの二人を覆ったと思ったら」

53  エイゴ「消えましたね。オーウ、ニンジャー!」

54  トウゴ「ばっか、んなこと言ってる場合かよ。こっちは避けるために地面に伏せる"演技"してから、狙撃噛ましたんだぜ? 欺いてやったと思ったら、なんつー冷静な処理だよ」

55  カスミ「消えた事実に目がくらみそうね。でも、着目するのは神秘より結果から」

56  エイゴ「彼ら彼女らは予測していた、と?」

57  トウゴ「スコープ覗いて、照準合わせた瞬間には、もう布で姿見失ってたぜ」

58  エイゴ「――行きましょう。ここは高くて見晴らしは良いです。遮蔽物もないから、隠れながら近づいてくるという選択肢もない――はずでしたが」

59  カスミ「神出鬼没な連中と、これだけ広い場所で戦うのは、こわいわねぇ」

60  トウゴ「遮蔽物ばっかりの所でも嫌だよ、俺は。とにかく、ファイアーラインにはお互いを入れないようにしながら、固まっていくぞ」

61  エイゴ「はい」

62  カスミ「判った」



63  トノベ「接敵までが肝要。さて、彼らはどう動くだろうか……こちらの影、見つけてくれるなよ?」



64  カエシ「あー、やっぱり穴空いてるし。これだけ大きい布だと、染め物ってだけで高いのになぁ。こうなったら、意地でも弁償させてやる。縛り上げてあんなことやこんなことをした挙げ句にお預けしてタップリ強請るぞ!」



65  エイゴ「……来ない、ですね」

66  カスミ「一撃必殺か、一撃離脱のどちらかでしょ」

67  トウゴ「お得意の、忍び寄るって戦法か? くそっ、ニンジャーめ、自然に溶け込みやがって!」



68  トノベ「なん、だとぉ? 私は今、自然に溶け込んでいるというのか……良いことを言う!」



69  トウゴ「この風景みたいに、あじけねぇ、つまらないマネしやがってー!」

70  カスミ「あんまり叫ばないでよ」

71  トウゴ「いや、煽ったら出てくるカナーって」

72  カスミ「あのね? 敵は隠れて隙を窺ってるのよ? そんなわけ(あるはずないでしょう?)」

73  トノベ「――……きーさーまー!! 自然への侮辱、許せん!」                ※カスミのカッコでくくった台詞に被せるようにして

74  トウゴ「釣れた!?」

75  エイゴ「まさか!?」

76  カスミ「どうして!?」

77  トウゴ「つか、上から降って来やがる!」

78  カエシ「どうしてよ、このっ、馬鹿ー!!!」

79  カスミ「うわっ、釣られてもう一人フィッシュ?!」

80  エイゴ「いえいえ、それよりも! エンゲージ!!」

81  トノベ「恨みはらさでおくべきかー!」

82  トウゴ「ぎゃー! なんとかに刃物ー!?」

83  カスミ「手裏剣? 打ち落とす間も、ないじゃないのっよ!」

84  トウゴ「みぎゃ!」

85  トノベ「ぬおっ、居なくなった?」

86  トウゴ「蹴ってくれんじゃねぇよ!」

87  カスミ「馬鹿っ、ほら、空から降るマト」

88  トウゴ「空気読めば良いんだろう、チクショウが。蹴られた痛みはしかたない、お前で晴らす!」

89  トノベ「私の恨みも晴らさせろ!」

90  カエシ「その前にやることがあるでしょうが」

91  エイゴ「うぁ、いつの間に、目の前に(現れたんだ)」

92  カエシ「飛んで、いけぇ!」       ※カッコでくくった台詞に被せるようにして

93  エイゴ「うーわわわわわわわぁ!」

94  カスミ「うっそ……、エイゴがあんなに軽々と」

95  トウゴ「馬鹿エイゴ、どーしてその男の前に飛んでくるんだよ!」

96  トノベ「私の恨みを晴らす機会をくれるのか。敵にありながら、その身を盾にするとは……素晴らしい男だな」

97  エイゴ「あばばば、どうやって着地したらいいんだよ、これ」

98  トノベ「背中に布きれで空も飛べよう。ほーれ、この通り」

99  エイゴ「うわっ、すごーい……なんだ、今回の展開、ギャグ? ギャグ?」

100  カスミ「無防備に落ちてくるなー! ――っと!」

101  エイゴ「ごめんなさい……」



102  トウゴ「いやはや、ようやく姿を晒してくれたな」

103  トノベ「くぅ、この男が大地を、草を踏んでいるのをどうにかして阻止せねば……」

104  カエシ「もう、本当に戻ってきてよ」

105  カスミ「会話が成立しないとは、先が思いやられる」

106  エイゴ「……」

107  トノベ「しかし、今ここで倒しても、きゃつは大地に倒れ伏せるのではないだろうか……それは設置面積が大きくなるということか!」

108  カエシ「えぇかげんに、帰ってきなさい!」

109  トウゴ「うぉう、煙幕かよ」

110  カスミ「今の演技だった?」

111  トウゴ「いや、見えなかった。ちっくしょー、あの女の方が機転利かせて、また隠れやがった!」

112  エイゴ「でも、少し対策練ってみました」

113  トウゴ「まじで?」

114  カスミ「あー、あんたは相手の姿が至近距離にあると、まぁ、色々するもんねぇ」

115  エイゴ「はははっ、そんなに褒めなくても」

116  カスミ「イカスミ吐くほど真っ黒にならなくていいからね?」

117  エイゴ「そんなに腹黒くないやい……」

118  トウゴ「あー……泣くなよ、弟よ」



119  カエシ「もう、空からの奇襲は無理かな」

120  トノベ「風と一体になることは、不可能という訳か、なんとも許せん」

121  カエシ「一度、大陸風に乗ってお隣に飛んでった奴には、地上に這いつくばっていて欲しい」

122  トノベ「いやぁ、あの時はどうしようかと思ったぞ。ちょっと遊覧飛行のつもりが、気づいたら見慣れぬ砂漠の大陸が見えてきてだなぁ――」

123  カエシ「さっ、次の手いくわよー」

124  トノベ「砂にまみれるという体験も、喜ばしい物だった。あれほど小さな砂が、大地に海を形成していたあの光景は、今でも忘れることができない!」

125  カエシ「自分の世界に入って、私を無視ですか……戻って、こい!」

126  トノベ「ハゥホッ!? ミゾーオチが、イタイデーす?」

127  カエシ「戻ってきたか? 今の状況をよーく考えて、正しい言葉で返してね?」

128  トノベ「今の状況――そうか、そういうことか!」

129  カエシ「えっ? そこまで驚くこと? さっき一度あったばっかりなのに」

130  トノベ「別大陸の砂漠も良いが、やはり今住んでいる大陸の大地を忘れてはならないということだな! あぁ、今まさに私を囲っている母なる大地よ、私は忘れた訳ではないのだ、許して欲しい」

131  カエシ「うわー、どこまで行けば良いんだろう」



132  トウゴ「やっぱ、でてこねぇ」

133  カスミ「案外、持久戦になりそうかな」

134  エイゴ「向こうはサバイバルのスペシャリストですから。怖いですよ、平気で「二、三日は水なしでもいけるでごわす」とか言いそうですから」

135  トウゴ「うわぁ、それは、ないわぁ……」

136  エイゴ「えぇ、付き合っていられません、ですから――」

137  トウゴ「ごわすって語尾、お前にはにあわないわぁ」

138  カスミ「確かにね。しかも、スモウレスラーの語尾じゃなかったかしら、ごわすって」

139  エイゴ「えっ!?」

140  トウゴ「奴らはニンジャー、だぜ? 語尾は全部、ニンニン! に決まってるだろうが!」

141  カスミ「そうよそうよ!」

142  エイゴ「あっ、そ、そうですね、済みません……えっ? そっち?」

143  トウゴ「基本方針は、やっぱこのまま待つしかないのか?」

144  カスミ「さっき、何かに反応して男の方が和を乱した……ように感じた。あれは奇襲というよりは、不本意だけれどトウゴの挑発が効いたのかも?」

145  エイゴ「話戻った? えとー・・・・・・コホンッ。そうです、確かに挑発が効いたのかも」

146  トウゴ「そうか? あれは随分と安っぽい言葉だったから、俺としては正直驚いたんだが」

147  エイゴ「お兄ちゃん、しっかり国語の勉強をしないから」

148  カスミ「だから、なにかいけ好かない単語が混ざってたとか」

149  エイゴ「そうですね、それは考えられるかと」

150  トウゴ「なんだったかなぁ、薄っぺらいとか言ったんだっけか?」

151  エイゴ「会話してるように見せて、結構無視してませんか」

152  トウゴ「ハハハハ、ソンナワケダイデゴザルヨー」

153  カスミ「ソウデゴワスソウデゴワス」

154  エイゴ「むぅ……いけません、集中力が足りません真剣味が失せてます。良いですか、私たちが崇拝する神、セルテントールはこう言っています」



155  トノベ「説教が、始まったのか?」

156  カエシ「説教……なんだって?」



157  エイゴ「汝の愛する兄弟が西にて迷えば、これを行って二本の枝にて助けてやり」



158  トノベ「神なんぞ存在せんわ、この母なる大地が全てだろうに」

159  カエシ「そんなところにまで突っ込みいれんな」



160  エイゴ「その伴侶が北にて悩めるとき、これを行って四つの宝石にて助けてやり。両親は、まぁ、省きます。居ませんから」



161  トノベ「西方の宗教観か、まぁ、退屈はしないな」

162  カエシ「その前に、これって奇襲チャンス?」



163  エイゴ「四人の賢者に頭を垂れ」



164  トノベ「それもしたり。いつまでもゆりかごに抱かれていては、飽きてしまう」



165  エイゴ「三頭のカラスに導かれ」



166  カエシ「失敗しないように。さっきのは最悪だったから」



167  エイゴ「二羽の不死鳥を見ず」



168  トノベ「失態は繰り返さぬ。直ぐに実演してみせようぞ」



169  エイゴ「神が一言、つぶやく」



170  カエシ「それは頼もしい事で」



171  エイゴ「汝らの大地に、穴をうがて、ってね?」



172  (間を少し置いて)



173  エイゴ「手応え、ありました?」

174  トウゴ「いんや、全く。なんだよー、せっかく絡め手の第二弾だったのに。即興にしちゃ持って行き方が上手くなってるぜ、弟よ」

175  カスミ「うんうん、良い感じに黒成長してるよー」

176  エイゴ「エイゴ兄のお嫁さんが、若干キツイですよ?」

177  カスミ「あははっっはは、あははっっはっははははは?」

178  エイゴ「おっ、おーう・・・・・・降参、降参するので速やかに銃を下ろして頂きたい・・・・・・!」

179  トウゴ「今更だよなー、実際の所は。ところで、さっきのは俺が西に二歩分の所で」

180  カスミ「私が北に四歩の所に打ち込んだわけだけど・・・・・・私には逃げられた感触が」

181  エイゴ「タブン、ギリギリばれたんでしょう。途中まで反応のあったこいつも、今じゃ真っ暗画面です」

182  カスミ「こっそり発信器とか、ニンジャー相手に良くやるわ」

183  エイゴ「直接攻撃されなかったので、都合良いなーと思いまして」

184  トウゴ「でも、それも壊されたわけか。んー、なんかニンジャー相手にこういうのは効かない気がするぜ。物量か火力か?」



185  トノベ「面倒だったが、これで敵の方向性が決まるか?」

186  カエシ「おそらく。まぁ、向こうさんは"こちらの誘導"で考え方を絞らされてるとは思わないでしょうけれど」

187  トノベ「相も変わらず、この手の絡め手は効くな。物量と火力、相手はどちらを選択すると思う?」

188  カエシ「火力を生かすための物量。そういう流れを作るんじゃない?」

189  トノベ「流れ、か。川の流れに流される石のように、彼らの角を削っていく作戦・・・・・・素晴らしい」

190  カエシ「それで? 確かにあちらさんの方が人数は多い、武器だって絶対的な銃を所持。どうするの?」

191  トノベ「ふむっ、折角なので物量という角も削ってしまおう」



192  トウゴ「どうしたもん――かなー?」

193  トノベ「ノーモーションで撃つんじゃない! それは自然に反する!」

194  エイゴ「なんでこの人、自然自然なんだろう・・・・・・でっ、なんで一人で出てきたんですか」

195  トノベ「敬意表明だよ。いやはや、こちらは影から影への人間でね。君たちのように常時姿をさらすという事がなくてな」

196  カスミ「今も、音もなく現れたように見えたしね。ほんと、同じ人間とは思えない」

197  トノベ「同じでないのは、確かだがな。そんなわけで、私自らが、とりあえずは姿を現そうと決めたのだ」

198  エイゴ「姿を見せなくても、降参の意志を見せてくれれば、それで良いのですが」

199  トウゴ「お互い、面倒じゃないか。町から何百キロ離れてると思ってんだよ。もう一度こんな所に来たくないだろう?」

200  トノベ「判っているさ・・・・・・だからだね、私としては早く終わらせたい・・・・・・もはや、猫の手でも借りたいぐらいだ」

201  トウゴ「猫の手? 孫の手じゃなく?」

202  トノベ「背中がかけないほど体が硬いわけじゃない! いいかね? ここには猫が居ない。猫の手すら借りれない」

203  カスミ「もう一人、女性が居たでしょう? その人に探してきて貰えば?」

204  トノベ「そうなると私一人になってしまうな」

205  エイゴ「圧倒的に人数不足。やっぱり、降参していただけたらなーと」

206  トノベ「それも魅力的だが、私にはまだ借り手が存在していてね? そいつにもお伺いたてようかなと思っているのだ」

207  トウゴ「新手―ッ!?」

208  トノベ「それは間違いだ。新顔は現れない」

209  エイゴ「? なんですか、時間稼ぎでもしようってはらじゃ」

210  トノベ「分からないのか? 居るだろうが、ここに。俺自身という、借り手。実に自然な流れじゃーないか・・・・・・!」



211  エイゴ「そんな、なんだこれは!」

212  カスミ「信じられない・・・・・・双子とか三つ子とか、そんなレベルじゃないじゃない」

213  トウゴ「こいつ、増えやがった!?」



214  トノベ「では、これより八東裏(ハットウリ)の七十二代目が党首、トノベコウキが圧して参る! 見事にこの物量、乗り越えて見せよ!」


最終更新:2010年02月17日 01:45