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瀨戸島倶 「セト トウグ」♂
辛島徒鳥 「カラシマ トトリ」♀
マスター 来嶋為価 「キジマ ナルカ」♂
筒木島藤花 「ツツキジマ トウカ」♀
美里島 「ミリジマ」♀
幸島敏益 「コウシマ トシエキ」♂



1  瀨戸「よおおまたせさん」

2  辛島「やっと、来たか。こんな場所に呼び出しておいて待たせるとか、衆人環視は嫌いだって知ってるくせに」

3  瀨戸「休日の町中でそれは無理な要求だぜそれと低い声無理に出してんじゃねーよきもちわるい」

4  辛島「別に無理なんか――それで、今回はどんな話をしに来たんだ」

5  瀨戸「ばっか野郎が話の前にまずイステーブルコーヒーだ近くの店までお預けだ」

6  辛島「そっちから呼び出しておいてそれか。救いが無い」

7  瀨戸「んなもんがあったらお前はそんなキャラになってねぇし俺も俺で違うだろうが」

8  辛島「身のない話をして、適当にごまかすんじゃない」

9  瀨戸「気にすんなよ今はペースに乗せられてろよそのうちお前の独壇場だ」

10  辛島「……了解、とりあえず、お前の言う店に行こうか」

11  瀨戸「あいよこっちこっち駅の西口商店街まで行くぜー」

12  辛島「いやちょっと待て。近くない、それは決して近くない。どうして西口の商店街まで歩かないといけないんだ。そっちが東口を集合場所に指定したじゃないか」

13  瀨戸「さらに言えばそこから更に歩くぞ西口商店街の外れだし」

14  辛島「挑戦状か、受けて立つぞ。こっちの手番からで良いなら、まず張り倒す。そして踏む」

15  瀨戸「挑戦状とか踏むとか物騒な事いってるんじゃねえってちけぇんだよ全くもってちけぇ俺がちけぇって言ってんだからちけぇんだよ分かったか?」

16  辛島「んなに連呼するな。分かった、おとなしくついて行くからさ、早く足を動かしてくれよ」

17  瀨戸「最初から殊勝な心がけが出てくると神様にも仏様にも閻魔様にも良いように取り計らって貰えるぜってなこっちだこっち」

18  辛島「クソッ、最初からその場所を指定してくれれば、無駄な時間を使わずに済んだってのに……」

19  瀨戸「無駄は無駄だが様式美みたいな物があるだろうが待ち合わせして目的地までたわいのない会話とかがよ」

20  辛島「寒空の下、あんまり活発に会話しようって気にもならない」

21  瀨戸「んじゃクリスマスも近いことだし年末の予定を立てている恋人風に歩くとか」

22  辛島「――そんな関係じゃないし、とてつもなく怖気が走る」

23  瀨戸「そいつは良かった俺もだぜ」



24  瀨戸「よっしゃ着いたここだここマスター元気してるか死んでないかー?」

25  来嶋「はい、いらっしゃいー……ましたか、この野郎め」

26  辛島「うっわー、すっごいレトロ。また随分と雰囲気を大事にしてるね。古代ヨーロッパ的というか……このレンガ、本物かー」

27  瀨戸「言ってることは興味ありげなのに棒読みってどういう事だよ瞳輝かせて心臓はち切れそうですってんなら判るけどさ」

28  辛島「んなわけないじゃん」

29  瀨戸「ですよねー流石スーパードライ」

30  辛島「どんな形容詞よ、それ。のどごしスッキリ過ぎて味わいないって? あっ、コーヒーください。ぬるめで」

31  来嶋「この流れで注文するのかよ!」

32  瀨戸「お前は脈絡ないなマスター呆れてんぞ俺はコーヒー砂糖漬け」

33  来嶋「てまえらは、なんだ? 雰囲気テロリストか? 分かっててやってんだろう、そのコント」

34  辛島「いえ、全くもって。あっ、初めましてマスター……と、呼べばいいかしら。私、このヘビーマシンガンの友達やってます。是非、縁切りの仕方を大人の視点から聞いてみたいんですけど」

35  瀨戸「さり気なく俺に酷いね」

36  来嶋「無理だ、諦めろ」

37  瀨戸「それはどういう意味でだ?」

38  辛島「うっわ、使えないねー、この人」

39  瀨戸「おいおいやめてやれよマスター泣いちゃうだろこの間も妻に出て行かれそうになって足にまとわりついて『嫌だ、やめてくれ! 君が出て行ったら僕のご飯は誰が作ってくれんだい!?』とかわめいちゃったばっかりでご近所さんに冷たい目で見られてるんだから俺の妄想の中での話だが多分現実」

40  辛島「あっ、マスター凄い。こいつが言葉区切るの、久しぶりだー。愛されてますねー」

41  来嶋「てまえらは、リアルに抹殺したい。迅速に、速やかに、最速で、最高速で!」

42  辛島「あれ、否定しないんですね」

43  来嶋「否定する必要がないほどにウソだからだよ、てまえも妄想って言ってたじゃないか!」

44  辛島「妄想だって事を意図的に記憶から消してしまえば、真実になりえますよ」

45  来嶋「なんで意図的に記憶改ざんしてんだよ! まじで近所付き合い駄目になるだろうが――あっ、コーヒー砂糖漬け出来たぞ」

46  瀨戸「さすがマスター客の注文にだけはしっかりしてるね金の亡者だな」

47  来嶋「それもやめろ、仕事してるだけだ――ぬるめお待ちどうさま。でも、この温度で作ってもろくに美味いの作れないぜ?」

48  瀨戸「下手だなーマスター」

49  来嶋「物理法則まげてやンよ。とか言えないからな、俺」

50  瀨戸「んなネタ要らないからってことで向こうで話そうそうしよう」

51  辛島「了解。お世話になります、マスター」

52  来嶋「えっ、何々、もしかして客として居座るつもりな訳?」

53  瀨戸「そりゃそうだコーヒーだって買ったんだものここのイステーブルでくつろぐよん?」

54  来嶋「いいぞ、その程度のグラス。持ち帰りを許すから外に出て行って――まったまった、他の客は別腹だ代金払え出て行くな!!」

55  瀨戸「マスター太っ腹ー」

56  辛島「いよっ、マスター男前」

57  来嶋「黙れよてまえら、アジってんじゃねーぞ!」



58  辛島「あぁ、ようやく座れた……落ち着くわね」

59  瀨戸「良い場所さこの店の中でも最高に雰囲気がマッチした所だ」

60  辛島「雰囲気? それはこのレトロな感じの内装が、全て調和して見える場所って事?」

61  瀨戸「あのマスターがそこまで考えてるかは微妙だがな」

62  辛島「そういうこと。だから窓際の席ではなく、奥の四人がけまでわざわざ来たのね」

63  瀨戸「他にも意図があるんだけどなっさてと落ち着いたしマスターも弄ったし本題に入ろうか」

64  辛島「やっぱりあのマスター弄るの、通過儀礼みたいなもんだったのね。私の空気読みっぷりってすごい」

65  瀨戸「大丈夫だあのマスターは特に分かりやすいからそれでお前をわざわざ休みの日に呼んだ理由なんだがな」

66  辛島「いや、その辺りは分かってる。二人して優雅な一日を過ごすフリをして、人がどのようにして死んだかを、考えようってんでしょ?」

67  瀨戸「いやまそうなんだけどさどうしてわかった?」

68  辛島「最初から、どんな話って聞いてるでしょうが。あれは、どんな話で呼ばれたのかを聞いたんじゃなくて、その内容がどんなのかを知りたかっただけ」

69  瀨戸「そいつは話が早いやりやすい」

70  辛島「でしょうね、私もそれぐらい出来る女って訳よ」

71  瀨戸「かっこつけても意味ねーけどなよし話そう」

72  辛島「お願いする。あっ、マスター。普通のコーヒー作って」

73  来嶋「はいはい、お呼びですかな……まて、てまえ、猫舌じゃないのか? わざわざぬるめ指定なんだし」

74  辛島「はぁ? ……ふざけてるの?」

75  来嶋「うぜぇ! なめんな! チクショー! ご注文承りましたってんだよこんにゃろがー!」

76  辛島「負け犬の遠吠えって、良いわよね」

77  瀨戸「黙れサドとりあえずあらましから行こうかワトソン君との会話からだな」


78  筒木島「えぇ、そうです、人死に。理由は分かりませんよ、例によって。あんなの自殺と同じような物ですから」


79  辛島「相変わらず冷たいわね、あの子。見た目とかからじゃ想像つかないぐらいに、毒々しい」

80  瀨戸「リアリストなのかリアリティズムなのか知らんがそういうのが若い奴の間に流行ってるんじゃないかね」

81  辛島「それで? わざわざその話を私に聞かせるぐらいだし、普通の死に方してないんでしょう?」


82  筒木島「はい、そうですそうです。また密室ってやつですよ。みなさん、二時間ドラマとか見過ぎですよねー。不思議が含まれないと満足出来ないのは、それだけファンタジーを渇望しているからであって、現実逃避したがりばっかってことです。昼からテレビ見まくってるオバサンとか、その典型ですよね。みんなメンヘラなんですよ――メンヘラ、ですか? ググってください」


83  辛島「嫌な現実突きつけるわね。でも、娯楽無しじゃ生きていけないわよ、人間」

84  瀨戸「それが人死にに関係してないなら別に良いんだと思うぜ良心が痛まなくて」

85  辛島「その程度の事で痛む良心があったら、全財産を発展途上国に寄付しちゃうわね、良心の呵責に耐えかねて」


86  筒木島「抜け道はいくらでもありそうです。中央に首吊り死体。出入り口になりそうなのは、カギがかかるドアが一つ、窓が一つ、換気扇が一つ。場所的な制約のせいで、首吊るのに苦心してるかもしれないです」


87  辛島「これ、密室なの? 攻略可能な密室は密室って言わないわよ?」

88  瀨戸「確かに出入り口がある時点で密室は人工って決まってるがなそれよりも死に方がすげぇぜ」

89  辛島「それが、首吊りに苦心するってやつ? まさか――」


90  筒木島「いいえ、そうじゃありません。天井に引っかかりが無い、ではありません。天井が、人を支えられないほど柔らかい物で出来ていた、が正しいのです」


91  瀨戸「だってさすげぇよなどんな天井だよ実物見てみてぇ」

92  辛島「――防音室?」


93  筒木島「いわゆる防音室、らしいです。パチ物みたいですけどね。天井は音波を吸収する様に、厚さ十センチにもなるスポンジが詰まっています。その先はコンクリートの天井で、一切傷つけられた感じではないみたいです」


94  瀨戸「正解だよくわかったな」

95  辛島「一般教養でしょ?」

96  瀨戸「普通の人には分からないと思うけどな」


97  筒木島「どうやって首を吊ったのかがよく分かっていません。ブランブランしてる所を見つけた人が、半ば発狂しながら死体を地面に降ろしたらしいですから。現場保存も、結局はミステリーの中だけですよねー。あっ、その人が第一発見者、です。もう一人いますけど、タッチの差ですよ」


98  辛島「なんというか、駄目な気がするのはなぜ?」

99  瀨戸「駄目っていうのはどういうことだよ」

100  辛島「別に。他に人は? 容疑者に該当しそう、という意味で」


101  筒木島「沢山、でもないですけど、いますよ? 全登場人物は三人。防音室の責任者に、唯一ドアを開けられるカギを持っていた用務員、偶々被害者を捜していた先生ですか。このうち、最初の二人が第一・第二発見者ですね」


102  辛島「分かってるじゃない。素晴らしい」

103  瀨戸「お前は人が増えると楽しそうに笑うのどうにかした方が良いぜ」

104  辛島「いやよ、これはゲームなんだから、ドロドロ人間展開とかが格別におもしろい」

105  瀨戸「良い趣味してるぜまったく」


106  筒木島「とりあえずはこの辺りで。また明日、場所はここで良いですか?」


107  辛島「でっ、その話をしたのはいつなの?」

108  瀨戸「昨日」

109  辛島「ってことは、もしかして、二人掛けのテーブルにしなかったのって……」

110  来嶋「いらっしゃいませー」

111  瀨戸「噂をすればって奴だなこっちだぞーい」

112  筒木島「あっ、センパーイ、このお店の事だったんですねー『陰気くさくて流行る時代は三千世界の果てにも巡ってこなさそうでマスターが最高にMな喫茶店』っていうのは」

113  辛島「あらっ、マスター、泣いて飛び出ていったわよ」

114  筒木島「メニュー……頼みたかったのに」

115  瀨戸「メニューじゃねぇよひでぇな俺はそこまで言ってねぇ『マスターはMだからなじると喜ぶそんな店』ってだけだ」

116  筒木島「だから、六割なじりを追加してみたんですけど」

117  辛島「みんなして最低ね、人をいじめてなにが楽しいの?」

118  瀨戸「お前が言うなよ」



119  辛島「マスターは放っておいて、話の続きをしましょう」

120  筒木島「了解でーす。私も色々調べて来たんですよー。じゃじゃーん、この手帳に全てが詰まっています!」

121  瀨戸「でったプライバシー侵害手帳書かれた相手は恥ずかしさで死ぬ」

122  筒木島「いえ、私の前にお金を積むんです。つまり、サイフが死ぬ」

123  辛島「大虐殺ね」

124  筒木島「経済はお金が回ってこそですよー。まっ、それより身近なゴシップ記事ですよ、私たちが今欲しいのは」

125  辛島「確かに。さっ、話て。どうせ三文小説、ここでぬるいコーヒーと一緒に消化してしまうのが一番よ」

126  瀨戸「同感だね甘い話は要らないよすでにコーヒーがビチャビチャに砂糖漬けだ」

127  筒木島「……うわっ。そのレベルの甘さは気持ち悪いです」

128  辛島「どうしてこう、私みたいに空気読めないのかしらね、あなたって。しっかりしてよ、話が進まないじゃない」

129  瀨戸「へーへー黙りますよーだ俺ばっかり悪者扱いでさーやんなっちゃうってんだよまったくもって困ったもんだぜ本当にやれやれ」

130  筒木島「話はどこまで聞いてますか?」

131  瀨戸「うおー無視かーい」

132  辛島「怪しい人物が三人ほど居たはずだけど、何か話は聞けたの?」

133  筒木島「もちろんです。私の情報源は容疑者本人ですから、精度もバツグンです」

134  瀨戸「ちくしょう無視が一番辛いんだよでもドSだから分かってるんだろうなぁこいつら」

135  辛島「もちろん」

136  筒木島「です」

137  辛島「でっ、話を始めて?」

138  筒木島「それでは第一発見者の人から――」

139  辛島「いえ、セオリー通り、まずは状況からお願い」

140  瀨戸「お前らしくもないなそっちは俺に任せっぱなしなのに」

141  辛島「いいじゃない。良いから、お願い」

142  筒木島「了解ですよ。集めてありますからね、そっちも。じゃあ、流れからいきましょう」



143  筒木島「えっと、まずは密室があって、その中にはお約束の死体があります」

144  辛島「出発点はそこでいいの?」

145  筒木島「それより前は人が絡んできますから。人を絡めた背後関係はまた後ほど、とういうことで」

146  瀨戸「了解とにかく密室がありました人が死んでいましたでそこからどうなるよ」

147  筒木島「死亡推定時刻なんて、警察関係者じゃないから知りません。噂では、早朝に近かったらしいですけど」

148  瀨戸「お前のように的中率百パーの噂屋が居るかよ裏付けだってしてあるくせに」

149  筒木島「なめたらあきまへん。ワテ、浪速のあきんどやさかい」

150  辛島「地元民が聞いたら一瞬にして消し炭なイントネーションだった。気をつけなさい」

151  筒木島「関西人が東京の商業学校へ? はっ、奴らの選民思想は飽き飽きでんがな!」

152  瀨戸「キャラが変わってるし敵を作りすぎだ」

153  辛島「情報屋がそれじゃ困る。しっかりしていってね?」

154  筒木島「別に差別してるんじゃなくてパクってんですけどね。まぁ、良いです。次、十一時まで話は飛びまして、ここで第一発見者と第二発見者が現れます」

155  瀨戸「おぉそれっぽくなってきたなどうなるどうなる」


156  筒木島「第一発見者の美里島さんですか?」

157  美里島「――えっ? そ、そうですけど」

158  筒木島「あぁ、良かったです、間違えてなくて」

159  美里島「あの、あなたは……」

160  筒木島「あっ、通りすがりのマスコミです、よろしく」

161  美里島「マスコミッ……!」

162  筒木島「駄目ですってそんなに勢いよく立ち上がったら。立ちくらみがして、気づかぬうちに床に倒れているかも、しれませんよ?」

163  美里島「そんな、あなたは何を言って――どうやってマスコミが此処に入ってきたというの!」

164  筒木島「ブン屋にはブン屋のルートが存在したりしなかったり、です。大丈夫、こっちは警察と協力してやってるんですよ、プライバシーの保護、完璧です!」


165  瀨戸「いやお前なにやってんだよ詐欺とかそういうことはしないのが俺との紳士協定だろうが」

166  筒木島「私、女ですよ?」

167  瀨戸「んじゃ俺との淑女協定だな」

168  筒木島「先輩は男」

169  瀨戸「しまったー!」

170  辛島「なにこのコント怖い――ではなく、なにやっているの。マスコミなんていうウソをつく必要が全くないじゃない」

171  筒木島「でも、学生新聞社ですって言ってあしらわれるよりは良いんですよ。前のもこうやって情報手に入れたんです」

172  辛島「この策はこの策で穴がありそうだけど……ところで服装は? あなたの体型からして、ぱっと見が高校どころか中学だもの」

173  筒木島「私服に、腕に夕日新聞社ってワッペンくっつけてます」

174  辛島「また、随分と判りやすい」


175  筒木島「ままままっ、落ち着いて下さい。さっ、座って下さい座って下さい」

176  美里島「…………」

177  筒木島「ちょーっと話が聞きたいだけなんですよ。そう、時系列に沿った形が一番良いです。なにか、知りませんか?」

178  美里島「マスコミに話すようなことは、一つもありません。早くどこかへ行って下さい」

179  筒木島「あー、判りますよ-。最近の人はマスメディアにアレルギーありますからねー。大丈夫です。私は警察に肩入れしてるマスコミでして、これも捜査の一貫と思って貰って構いません」

180  美里島「マスコミが警察の代わりに? ――いいえ、駄目です。あなたが信用できない。ここで話した事を歪めて記事にするとも考えられますから」


181  筒木島「――と、この人からは話が詳しく聞けていません」

182  瀨戸「事件の直後で混乱していておかしくないだろうに」

183  辛島「しっかり気持ちを切り分けられる大人の女性、ということね」

184  瀨戸「お前が目指す感じの人間か?」

185  辛島「さぁ? ……第二発見者からは、なにか話を聞けたの?」


186  筒木島「あなたが第二発見者の幸島敏益さんですか?」

187  幸島「第二発見者というのは……いや、嬢ちゃん、どっからここへ来たんだ? 警察が関係ない人を入れないようにしていると言っていたが」

188  筒木島「えぇ、ですから逆説的に私は関係者である、という事ですよ」

189  幸島「おぉ……まぁ、そうなんでしょうな。どこからどう見ても刑事さんには見えないが……」

190  筒木島「うっ……」

191  幸島「あっ、いや、すまんすまん! 事件があってこっちも頭が働いていないようだ。外見での判断がどれだけ愚かなことか、知っていたはずなんだがな」

192  筒木島「いえ、あの、フォローとか良いんです……」


193  瀨戸「ちびって言われてるぜ!いやまじにちびだから仕事してる人間には見えな――!」

194  筒木島「ちっ、かわしやがった」

195  瀨戸「ひでぇぞお前死角から伸びるフリッカーアッパーとか切れ味日本刀並すぎて近寄れねぇよ!」

196  辛島「鍛えに鍛えたたった一つの武器は、唯一、己を立たせるための礎!」

197  瀨戸「お前はお前でキャラ変えてんじゃねぇでもそっちのほうが好きかも」

198  辛島「なっ――! なに、言ってるのよ、私に元気はつらつキャラなんて似合うわけないじゃない。でも、こっちが好きならこのままでも――べっ、別にあんたのためじゃないんだからね! とかで、満足?」

199  瀨戸「満足したー萌えたー普段はツンツンしてるくせに褒められると顔真っ赤にして驚くとか典型すぎて飽きてきましたー」

200  筒木島「あれ、先輩、案外骨抜きにされてたんですね」

201  辛島「使い捨てるにはもってこいよ。さっ、続けて」

202  瀨戸「使い捨て……」


203  筒木島「事件当日の事、話してもらっても良いですか?」

204  幸島「警察にも随分話したんだがね……そう、あれは確か十一時前、だったか。美里島さんが用務員室に来てね――美里島さんって言って、判るかい?」

205  筒木島「えぇ、存じておりますです」

206  幸島「ならよかった。その美里島さんがね、防音室のカギを貸してくれないかと来たんだ。カギは二本あって、マスターキーは用務員室の金庫の中。美里島さんには普段使用するサブキーを一本渡しているんだ。そちらを無くしてしまったのかと聞いたら、なんでも防音室を使っている生徒がいるんだが、内線にかけても反応がないし、ドアにはカギがかかっているという。美里島さんは、その生徒にカギを渡してしまったから中を確認したくてもできない、と言っていたよ」

207  筒木島「その時点で、ドア以外から出入りできそうな場所って、ありますか?」

208  幸島「窓ガラスとか、換気扇なんかは外まで繋がっているけれど……どうかな、防音室は三階にあってね。飛び降りても、なかなか無事って訳にはいかないだろうさ」

209  筒木島「三階……えと、それじゃ、次はドアを開けて被害者を見つけるまでは、どんな感じでした?」

210  幸島「特別な事はないさ。美里島さんと話をしながら防音室へと向かい、ドアを開けて……見つけてしまったわけだ」


211  筒木島「とまぁ、こういう流れがあったみたいですね」

212  辛島「ふぅん……防音室に篭もって出てこない生徒、心配する責任者、マスターキーをさわれた用務員、ね」

213  瀨戸「なんだなんだ灰色脳細胞がスパーク!ってか?」

214  辛島「ダサイ」

215  筒木島「語彙が貧相ですねー」

216  瀨戸「うかつなチャチャ入れが死を招く!?」



217  来嶋「はぁ、無駄に商店街走り回っちまった……げっ、あいつらまだ居座ってやがる!」


最終更新:2012年08月27日 23:04