03-194 :綺麗な恋じゃなくても:2010/07/07(水) 11:15:18 ID:V6nl/JXR
Part.1

「駅員さん!この人痴漢です。」
電車を降りた私は見知らぬおっさんの手をつかんでそう叫ぶ。
「な、何を言ってるんだ、私はそんなことは…」
「しらばっくれないでよおっさん!私見たんだから、あんたが亜澄のお尻触ったとこ。」
「バカな…ずっと携帯を見ながら…」
「いい加減にしてよね!知らないおっさんにお尻触られるなんて最悪だよ!」
「まあ詳しい話は事務所で伺いましょう。」
やった!美由紀と目を合わせる。
私と美由紀はこうやってときどき痴漢にあったふりをしてオヤジから金を巻き上げたりしている。
今日のおっさんは何もしてないけど、最初は実際にされて突き出したら示談でお金を渡されたことがきっかけになった。
「ちょっと待ってください。その人は何もしてませんよ。」
は?何か言ってる奴が居るし、振り返るとそこには違う高校の制服を着た男が居た。
「どういうことだい?彼女達は痴漢にあったと言っていたんだが。」
「その二人がその人を見ながら笑って何か話してるのを見て違和感を感じたんです。」
そういって男は携帯を取り出す。
「それで携帯でとっさに撮っちゃいました。」
どうやら携帯のムービーを撮っていたようで、駅員さんに見せている。
「うん、なるほど。確かに何もしていないね。」
まずい…美由紀が肘うちしてくる、逃げなきゃ。
「だから私は何もしていないと言ったんだ。」
「大変失礼しました。」
「君には礼を言うよ、助かった。あんな小娘に人生を狂わされるとこだったからね。」
「いいえ、当然のことをしただけですから。」
「君たち二人には話を聞きたい、どういうこ…!?いない?」
「逃げられたみたいですね、多分彼女達はこういうことに慣れてるんじゃ?」
「全く何という小娘どもだ。」


「マジ最悪!」
「なんなの?あの男。邪魔するなんてガチでうざいし。」
私と美由紀はとりあえず逃げてファストフードの店にいる。学校はさっきの奴のせいで行く気をなくした。
「ねえ亜澄、今日どうする?弘也と隆司に迎えにこさせて奢らせよっか?」
「でもあの二人はっきり言って下手だし、自己満だから気持ちよくないんだよね。」
「確かに。こないだ私なんかお尻に指入れられたし、痛いだけだっつーの。」
「じゃあ新しく男でも見つけにいこっか?」
「そうしよっか。見た目がよくて金があってエッチがうまければ贅沢言わないわ。」

03-195 :綺麗な恋じゃなくても:2010/07/07(水) 11:16:12 ID:V6nl/JXR
「もっと、もっと激しく突いてぇ!」
「あっ亜澄がイッちゃいそうになってる。私ももっと!」
「ミユキちゃん。お願い通り奥まであげるよ。」
「あんっ、奥…感じるよぉ!」
「なあケンジ、久しぶりの上玉だな。」
「ああ、可愛くてスケベでたまんねぇ。」
結局大学生二人にナンパされて4Pをしてる。
「アスミちゃん、ほらミユキちゃんのそばに行こうか。」
ロン毛のヒロトが立ちバックで私とつながりながら、ケンジに正常位でハメられてる美由紀のそばまで行く。
美由紀の大きなおっぱいがケンジに突かれる度に激しく揺れる。
「ほらアスミちゃん、ミユキちゃんのおっぱいを舐めてよ。」
ヒロトが私を突きながら言ってくる。男って何で変な趣味を持ってる奴ばっかりなんだろ?
実際今までに美由紀とレズプレイさせられたこともあったし、これくらいは何でもないけど。
「あんっ…亜澄ぃ、そんな噛まないで…ヤバいよぉ!」
美由紀の乳首を軽く噛んだら面白いくらいに美由紀は感じまくる。
そんな私と美由紀を見て興奮したのか、ヒロトの腰振りのペースが早くなる。
「アスミちゃん、出るよ!膣にたくさん出してあげるからね。」
「ちょっと待って!中出しはダメだって言ったじゃん!」
抵抗しようとヒロトの方を向いたらニヤニヤ笑った顔を向けて言ってきた。
「別に中出しくらい普段からしてんだろ?抵抗すんなよ。
アスミちゃんの淫乱マ○コは俺の精子を受け止めたくてたまんないみたいだよ?」
「そ、そんなわけ…あっ…」
「ちょっと強く突いたら声も出ないほど感じてんのに強がるなよな。」
そんな私たちを横目にケンジも美由紀への責めを激しくしてる。
「俺もミユキちゃんの膣に注いであげるよ。」
「あん…だめぇ…」
「よく言うよ、俺達についてきた時点でされたかったんだろ?」
「そうそう。同意の上のセックスなんだから抵抗したって無駄だよ。」
「あっ!膣に熱いのがっ!」
「あぁっ!ミユキちゃんのオマ○コ最高だよ。」
「ほらアスミちゃん。俺達も中出しでフィニッシュしようね。」
「あっ…あんっ!やっ…や…」
「うぁっ!」
抵抗も利かずにヒロトに膣に出された。中で熱いのがうごめいているのがわかる。
「じゃあ交代しよっか。」
ヒロトが私の中から抜きながらそう言った。
今日は安全日だけど、念のために病院行かなきゃ。
もう慣れたけどこういうとき女って損だと思う。

03-196 :綺麗な恋じゃなくても:2010/07/07(水) 11:17:00 ID:V6nl/JXR
「うん、私は終わったよ。美由紀も?そうだね、男選びはほんと考えなきゃね。」
美由紀も今日は行きつけの産婦人科に行ったみたい。
ナンパしてくる男がみんな中出しをしたりとかするわけじゃない。
でもセフレ以上の関係になるのはやっぱり安心できる男じゃないとね、うん。
そんなことを考えながら電車に乗ったら、
「うわっ、最悪!」
昨日私達の邪魔をした男に会った。
「最悪とは随分な挨拶だな。言いがかり女。」
「うるさいわね!あんたのせいで金は儲けそこねたし、学校に行く気もなくなったし、最悪な一日になったのに。」
「全く俺は関係ないだろ。もう少しましな因縁のつけ方くらい考えたらどうだ。」
「あー!もうなんなのよあんた!ムカつくわねえ!」
「なんだ?今度は俺を痴漢にでっち上げでもするのか?」
「それもいいわね。私をバカにした罰よ!」
男はため息をつきながらポケットから何かを出した。
『それもいいわね。私をバカにした罰よ!』
録音してた…の?
「こういう性格で敵も多いからね、身を守るための手段は常に準備してないとな。」
「…あんた、友達いないでしょ。」
「その言葉、熨斗つけて返してやるよ。」
「失礼ね、あんたと違って友達くらいいるわよ。」
「こないだ一緒にいた子か?」
「そうよ。何するのも一緒の親友よ。」
「親友、ねえ。」
「なんか文句あんの?」
「一緒にろくでもないことしてて親友かってね。」
「さっきからいちいちつっかかってウザいわね、私になんか恨みでもあるわけ?」
「別に。お前みたいな女とはできる限り関わり自体持ちたくないくらいだ。」
「あんたみたいな陰気な男なんてこっちだって関わりたくないわ!」
「だったら俺の視界からさっさと消えろ。
お前たちみたいな人を陥れても平気なDQNビッチは社会の癌だし目障りだ。」
「うるさい!このバカ!陰険ヤロー!
昨日だって当たり前みたいな感じで正義ぶって、今日は今日で表情も変えずに話して、あんた感情とかないわけ?」
「少なくともお前みたいな奴に嫌悪感を抱く感情くらいは持ち合わせているつもりだ。
いいからさっさと消えろ。他の乗客の迷惑になってるのにも気付かないのか。」
そういえば私が大きな声を出している間もこいつは淡々と話していた。私だけがムキになっているようにしか見えない。
「覚えてなさいよ!」
ベタな捨て台詞をはいて私はこの場を去った。

03-197 :綺麗な恋じゃなくても:2010/07/07(水) 11:18:02 ID:V6nl/JXR
「ただいま。」
「亜澄、学校から電話があったわよ、昨日も今日も学校に行かずにどこに行ってたの?」
「どこでもいいでしょ。ダブったりはしないよう考えてるから。」
「ならいいけど。昨日も帰ってこなかったけど、警察にお世話になることだけは気をつけなきゃだめよ。」
「わかってる。ママに迷惑はかけないようにするから。」
家は母子家庭でママと二人暮らしをしている。
「そうそう亜澄。今日お店出れるかしら?」
たまに人が足りないときにはこうやって頼まれてママの経営するクラブでバイトしたりしている。
「別にいいけど。随分急じゃない?」
「ミキちゃんが風邪をひいたのよ。じゃあ頼むわね。」
「はいはい。時間はいつも通りでいいよね?」
とりあえず私は部屋に入った。


「亜澄ちゃんが店にいるのも久しぶりじゃないかね?いい日に来たもんだ。
一段と綺麗になったね。」
「まあ芦川さんたら。そんなお世辞を言っても何も出ませんよ。」
「いやいや、私は愛華さんが銀座にいた頃から知ってるけど、その頃の愛華さんに似てきたよ。」
ちなみに愛華はママが銀座でホステスをしていた頃からの源氏名だ。
「若い頃のママにですか?」
「おや、不満そうだね?若い頃の愛華さんはそれは美人だったよ。」
「あら、芦川さん。『若い頃』とはどういうことかしら?」
「おやおや失礼、今も愛華さんは美人ですよ。」
娘の私が言うのもなんだけど、確かにママは美人だ。
仕事が仕事だからいろいろ言われたこともあったけど、授業参観なんかで見たら間違いなくママが一番美人だった。
『遅れてすいません、坂口酒店です。』
「はーい。亜澄、伝票にサインしてきて。」
「いいけど、どこに書けばいいの?」
「酒屋さんが教えてくれるわ。お願いね。」
小さい頃はよく業者さんと話をしたりしていたけど、応対をするのは初めてな気がする。
「どうもすいません、ちょっと店でトラブルがありまして…
あっ!またお前か…高校生が働く店じゃないだろ?」
どうして嫌な奴とこうも顔を合わせるんだろう。
「母親がやってる店の手伝いよ。あんたこそ酒の配達のバイトなんて。」
「俺も家業の手伝いだ。」
そういって男は伝票を渡してきた。
「どこに書けばいいのよ?」
「ああ、そっか。この四角のとこによろしく。」
言われたとこにサインして伝票を渡す。
「じゃあ一応検品をするから。」

03-198 :綺麗な恋じゃなくても:2010/07/07(水) 11:18:54 ID:V6nl/JXR
伝票とお酒の瓶を照合して説明してくる、電車で会ったときとは全然違う態度に違和感を感じる。
「じゃあ、しまうから。」
「え?」
「あ、いつもここまでやってるんだ。」
「そうなんだ。」
そう言って瓶を抱えて私の前を通る。
「あら、今日は翔太君なのね。」
「遅れてしまってすいませんでした。
親父が腰をやって急遽代わったんです。」
「あら大変ね。大丈夫なの?」
「入院するほどではないので大丈夫です。ただ来週くらいまでは自分が来ることになると思います。」
「あらほんと。坂口君より翔太君のほうが丁寧に仕事してくれるし助かるわ。」
「いえ、そんな。親父みたいに手際よくできないだけですから。」
「そんなことないわよ。翔太君ならいつお店を任せても大丈夫ね。」
「ありがとうございます。あと空き瓶の回収もしますので、開けてもらっていいですか?」
「ああ今日は回収日ね。じゃあ亜澄、裏の倉庫を開けてあげて。」

「ねえ、原付にそんなに積んで大丈夫なわけ?」
「これくらいは持ってったことあるから大丈夫だと思う。」
ママに翔太君と呼ばれていた男は何か言いたそうに私を見ていた。
「何?」
「いや、あのママさんの娘なんだなって。」
「どうゆうこと?」
「いつも笑顔で、だけど凛としててさ、女の人だけど格好いいよな。」
「似てないって言いたいの?さっきお客さんには若い頃のママに似てきたって言われたんだけど。」
「それは見た目だけの話だろ。それに俺が言いたいのはママさんを悲しませることはするなってことだよ。」
「そんなの他人のあんたには関係ないでしょ?」
「確かに関係ない。でもママさんがどういう思いでお前を育てたとか考えたことあるのか?」
「意味が分かんないんだけど、あんたに何がわかるわけ?」
「うちの親父はさ、ママさんが銀座にいた頃に納品してた酒屋で働いてたんだ。」
翔太は荷物を積みながら話し始めた。
「ナンバーワンなのに謙虚で、親父みたいな業者にも親切にしてくれて、でも言うべきことには筋をしっかり通す人だったって。」
確かにママはお客さん相手でも正しくないことはしっかりと言う人だ。
「そんなママさんがお前のしてることを知ったらどう思う?少なくとも筋は通して恥ずかしくない生き方しろよ。」
「ママはママ、私は私よ。あんたには関係ないでしょ。」

03-199 :綺麗な恋じゃなくても:2010/07/07(水) 11:19:48 ID:V6nl/JXR
「確かにお前が捕まろうが、悪い男に引っかかってひどい目にあおうが俺には関係ない。
でもあのママさんが悲しんでる姿は見たくないんだ。」
「何それ?ママのこと好きなの?年増好みねぇ。」
「そんなんじゃねえよ。憧れっていうか…俺にはお袋がいないから…」
それっきり言葉を詰まらせてヘルメットをかぶろうとする姿が面白かった。
「じゃあ、空き瓶は引き取るから。」
「ねえ。」
「なんだよ?」
「あんたはお父さんのこと好きなの?」
「好きって言うか尊敬してる。親父みたいに自分の店を持って、多くの人に必要とされる存在になりたいんだ。」
初めて見る穏やかな笑顔を残してからバイクは走り去った。
「尊敬…ねぇ。」
私はママのこと好きだけど、そんな風に見たことはない。

03-209 :綺麗な恋じゃなくても:2010/07/22(木) 02:49:34 ID:Cm9yDLxI
Part.2

「ねえ、亜澄。あのおっさんなんてどう?」
「…美由紀、しばらくやめにしない?」
「どうして?」
「こないだので駅員に面も割れてるし、信用されるか微妙じゃない?」
「あー、あるかも。じゃあしばらくはやめとこっか。」
実際に私のことを覚えている駅員が今までにもいたし、今は少し控えた方がいいと判断しただけだ。
翔太に言われたからなんかじゃない。
「そういえばさぁ。」
「どうしたの?」
「金曜の合コンなんで行けないの?」
「ママに店の手伝い頼まれたの。一人風邪ひいて来れない人がいて、今大変なんだ。」
「そっか。亜澄も亜澄のママも大変だね。じゃあいい男いたらあとで機会作るね。」
「ありがと。」
でも誘ってきた由佳は当たりを連れてきたことが少ないし、期待はしていない。



「あ。」
家についたら見たことのあるバイクが停まっていた。
「今帰りか?」
「まあね。」
「今日はずいぶん多いけど昨日は忙しかったのか?」
「そんないつも手伝ってるわけじゃないからわかんない。」
「そっか。」
「ねえ。」
「なんだ?」
「あんた、手伝いして楽しいと思う?」
「楽しいよ。いろんな店に納品して店を違う角度で見るのは将来の参考になるし。」
「参考?」
「俺は酒をメインにした飲食店をやりたいんだ、だから配達は俺にとっては勉強みたいなもんだ。」
「ポジティブだね。」
「ちょっと違うな。お前も店の手伝いをしてるならわかると思うけど、何で自分だけって思ったことないか?」
やっぱり多少は思ってるんだ。
「まあね。今日も合コンに行く予定がつぶれたし。」
「家が商売をしてるってだけで友達に比べて割を食ってるって思うわけだろ?」
小さい頃から何度もそう思ってきた。
「商売をしてる親を恨んだりとか。」
私もママに文句を言ったり泣きついたこともあった。
「でも中学の頃かな、考え方が変わった。
こんな頃から商売の体験ができるなんて恵まれてる、将来役に立つって。」
「将来…ね。」
「そう考えたら配達が楽しくなった。そして酒の種類を勉強するうちに俺がやりたいことが見えてきたんだ。」
「すごいね。」
「え?」
「私と同じ高校生なのにそんな考えてるなんて。」
「別に。それに進路指導では甘い考えだって言われたばっかだしな。」
そう言いながら頬をかく仕草がこの間の配達帰りの笑顔に重なる。

03-210 :綺麗な恋じゃなくても:2010/07/22(木) 02:50:27 ID:Cm9yDLxI
「まあ、お前もあんま道に外れたことはするなよな。
じゃあまた。」
「ねえ。」
「どうした?」
「私の名前はお前じゃないわ。成田亜澄って名前があるの。」
「あ、うん。俺もあんたじゃなくて坂口翔太って名前がある。」
翔太はそう言うとバイクを走らせた。
「あら、亜澄おかえり。翔太君見なかった?」
「ママどうしたの?翔太なら今バイクで出てったけど。」
「あら。一つ伝え忘れたことがあったのに。
後で店に電話しとかなきゃ。」
ママは店に戻るときに一度振り返って笑顔を見せながら話しかけてきた。
「それにしても、いつのまに呼び捨てで呼ぶようになったのかしら。
でも翔太君となら賛成よ。」
「ママ?ママの期待してるようにはならないわよ。そんな関係じゃないんだから。」
「うんうん。最初はそんなものよ。ママがパパに出会ったときも最初はそうだったんだから。」
ママは早とちりな上に全くの勘違いをしている。
話はするようになったけどそれだけ。



「あれ、おはよう。」
珍しく朝のホームで翔太に会って、つい声をかけてしまった。
「ああ、おはよう。
今日は一人なのか?」
「うん、昨日も休んでるから帰りに顔出しに行こうかなって思ってるけど。」
「そうか…
金曜に合コンに行けなかったって話してただろ?」
「うん。突然どうしたの?」
「相手ってうちの高校の奴だったのか?」
えっと、どこだって言ってたかな?珍しく大学生じゃなくてタメだったのは覚えてるけど。
「どうだったかな?何かあったの?」
「クラスの奴らが昨日話してたのが聞こえたんだ。」
翔太が周囲に聞こえないように気をつけながら話し始める。
翔太のクラスのチャラ男達が金曜に合コンをした女の子達とラブホで乱交をしたこと、
その中で一番かわいかった子を、一人暮らしをしている奴の家に拉致して全員で輪姦したこと。
そしてその合コン相手が私が通っている高校の子たちということ。
「まさか…美由紀が?」
「連絡はついてないのか?」
確かに金曜以降連絡がきてない。サボりはちょくちょくあったから気にしてなかったけど、四日も連絡がないのは確かに長い。
「そんな…美由紀…」
すぐに携帯をかける。
「もしもし美由紀?」
『この電話は電波の…』
つながらない!
「亜澄?」
「翔太…つながらないよ。美由紀が…まさか…」
「落ち着け、まだ決まった訳じゃない。」

03-211 :綺麗な恋じゃなくても:2010/07/22(木) 02:51:35 ID:Cm9yDLxI
翔太は私の肩に手をやり、落ち着かせようとしてくれている。
「そいつの家がどこかは知っている。今から行って確かめてくるから。」
「でも、翔太が危ないよ。それに私達の為にどうして?」
「こないだ言っただろ?道に外れたことをする奴が嫌いなんだ。」
「翔太。私も一緒に行く!」
「何言ってんだ!?危ないかもしれないんだぞ?」
「お願い、翔太。美由紀は私の大切な親友なの。」
「ただし、ヤバくなったらすぐに逃げろよ。無茶だけはするな。」
翔太は苦い顔をしながらも私の願いを聞き入れてくれた。



学校とは反対方向へ向かって二つ目の駅で降りた。このあたりはアパートやマンションが多いところだ。
「なんで翔太がその人の家を知ってるの?」
「この辺も配達範囲だからだよ。前、配達中に見かけたことがあるんだ。」

『あん…お願い…もう、やめて…』
『何がやめてだよ?俺らのチ○ポどんだけくわえ込んでんだ?この淫乱女。』
『あん…そっそれは…』
『口が留守になるから余分なこと喋るんだよ。ほら乱交のときのフェラテク、もう一回味あわせてくれよ。』
『あっ…いや。もうやめっ…』
『口では嫌がってるのに体は正直だね。美由紀ちゃんのフェラ最高だよ。』
『うっ…んんっ…』
『あっ!俺出そう!お前どけよ、顔にかけるから。』
『マジかよ、せっかく舐めさせたばっかなのに。じゃあ下交代な。』
『おう、出来たりすると面倒だから中出しは気をつけろよ。』
『わかってるって。』
『もういや…やめて!お願い!やめ…あっ…』

…心配すると最悪な結果ばかりが思い浮かんでしまう。
「美由紀…無事だよね?」
「願うしかないな。支えるのも信じるのも亜澄にしかできないことだ、友達なんだろ?」
「うん、私がしっかりしなくちゃね。」
翔太が見当をつけたアパートの角までついたとき、
「あ…すみ?」
前からボロボロの服をまとってフラフラと歩く女の人が近づいてきた。
「美由紀!?」
「よかった、亜澄。助けに、来て、くれたんだ…わたし、にげて…」
美由紀は最後まで言葉にできずに私に倒れかかってきた。
「美由紀!しっかりして!」

03-212 :綺麗な恋じゃなくても:2010/07/22(木) 02:52:45 ID:Cm9yDLxI
「あれ?私…」
「美由紀!目を覚ました?」
「亜澄?そっか、私逃げ出して、亜澄に会ったら安心して…」
「ここは私の家だよ。もう大丈夫だからね。」
「亜澄…私、男たちに…地獄みたいな三日間だった…寝ることも許されないくらいに…」
「大丈夫。大丈夫だから。」
私は美由紀を抱きしめた。もう安心だからね。
ノックする音と同時にドアが開く。
「亜澄、奴らが美由紀ちゃんを探し回ってるみたいだ。」
翔太は美由紀を家に連れてくる手伝いをしてくれた後に、配達をしながら様子を見に行ってくれていた。
「そう…まずいわね…」
「しばらく二人は出歩かない方がいいと思う。」
「うん。」
「ちょっと待って!」
美由紀が口をはさんできた。
「どうしたの?美由紀?」
「こいつってこないだ私たちの邪魔をした奴だよね?なんでここにいるの?
まさか二人って…あぁ、そうなんだ。」
「違うよ美由紀!ただ、うちの店に納品してる酒屋の息子で、それで最近話すようになっただけで!」
「まあいいわ。またしっかりと話してもらうから。
でも、どうしたらいいの?外に出れないなんて…」
「あの芦川の奴はこの辺では割と大きな会社の息子だから、逆らえない奴も多いし、無茶やれるんだよな。」
芦川?会社?
「二人ともちょっと待って。」
もしかしたらもしかするかも。
「ママ!話があるの!ちょっと来て!」
「「亜澄?」」
「翔太、その芦川って人の家って何の会社やってるかわかる?」
「確か不動産とか、食品の卸とか、色々やってるはずだけど。」
多分そうだ。
「亜澄どうしたの?急に。」
「ママ、芦川さんて息子いる?」
「確か大学生と高校生の息子さんがいるはずだけど。」
「亜澄、まさか?」
翔太は察したようだ。
「ママ、芦川さんに今日来れるか聞いてみて。
翔太、もう少し家にいて、いい時間になったら美由紀を送ってもらえる?」
「それはかまわないけど、ママさんに迷惑はかからないのか?」
「翔太君、心配しなくてもいいわよ。娘の友達に危害を加える輩を許すことなんてできないわ。
それに私は元々銀座の女、修羅場だっていくつも経験してるわ。」
「この母にしてこの娘あり…か。よし!俺は俺にできる最善を尽くしましょう。」

03-213 :綺麗な恋じゃなくても:2010/07/22(木) 02:54:12 ID:Cm9yDLxI
「亜澄。この間はありがとう。」
私の推測通り美由紀を拉致してた主犯は芦川さんの息子だった。芦川さんにそれを伝えたらすぐに呼び出し、一喝してくれた。
それからはすっかり大人しくなった上に、近いうちに留学させられるらしい。
美由紀も精神的、肉体的なショックと疲れはあったけど、一週間静養して、今日から学校に復帰する。
「もう男はしばらく勘弁だわ。」
「そうだね、自粛しよっか」
「亜澄は相手もいることだしね。」
美由紀はニヤニヤしながら私の方を向く。
「な、何よ?それ。」
「翔太君がいるでしょ?素敵な彼氏が。」
「そんなんじゃないわよ!翔太とはただの…」
「ただの何?翔太君に送って貰ったときに聞いたの。彼は亜澄のことが…」
「なんで俺の話してるの?てゆうか俺なんも聞かれてないけど?」
「あら、そうだったかしら?まあ、話すことはあるでしょ?ほら!」
「えっ?ちょっ!」
「ここから先は若い二人に任せて、私は一人で学校に行くから。ほら、頑張って!」
美由紀は私たちの肩を叩いてこの場を離れる。
「ねえ、翔太。」
「何だよ?」
「ありがとう。翔太が感づいて私に言わなければ美由紀はもっとひどい目にあったと思う。」
「それはたまたま聞いただけだ。それに解決したのは亜澄の機転と度胸のおかげだろ。」
「私のこと見直した?」
「まあ、見惚れたって表現の方が正確かな。格好良かったよママさんみたいに凛としててさ。」
「それは私のことが好きという意味でとっていいのかしら?」
「えっ…うん、そうだと思う。
美由紀ちゃんの話をクラスで聞いたときも真っ先に思い浮かんだのは亜澄のことで、亜澄が悲しむ姿を見たくないって思って。」
「うんうん、それで?」
「亜澄の力になれて嬉しくて、いつも俺は亜澄のことばかり考えてることに気付いて。」
「うん。」
「亜澄とずっと一緒にいたい。一緒に笑ったり泣いたり、同じ感情を持ちたい。」
「将来は料理屋の美人女将か、それも悪くないわね。」
「亜澄?」
「私も翔太と同じ時間を過ごしたい、同じ夢を見たい。」
「俺でいいのか?」
「良くも悪くも真っ直ぐな翔太が好き。今までに知り合ったどんな男よりも翔太はいい男だよ。
幸せにしてね。」
私は翔太の手を握った。翔太も握り返してくれる。
「はい、カット!いい絵が撮れたよ。」
美由紀が撮った写真の笑顔。ずっと守り続けていこうね、翔太。

最終更新:2010年07月07日 11:32