01-627 名前:ドレイン :09/01/31 21:53:07 ID:9RHWjZh0
1
「この私が、こんな家に住まなければならないとはね」
 私が自嘲気味に笑う。
 白い石で飾られた家は2階建て、部屋の数は8つほど。畑などではなく、庭のみで1
エーカー程度はあるだろう。この辺りの家としては破格である。
 しかし、この家は私、ミルネラ・バキンプルツには相応しくない。
 だが、これからはここが私の家なのだ。


 図々しい男だと思った。
 たしかに、私の家と同等の格を持つ男である。
 しかし、ここは私の城なのだ。あのような無礼な言動に腹立たしさを覚えた。
 「ビット、あいつに付きなさい。あいつのおかしな癖でも見つけたら報告にいらっ
しゃい」
 部屋の端にいるこげ茶色の髪の男に私は命じる。
 「は、はい。でも、お嬢様、僕の目では……」
 茶色にすこしの白濁した瞳をこちらへ向ける。
 「でも見えるのでしょう?見えないということにして仕えなさい。そのほうがボロを
出すでしょうから」
 「わかりました……。でもレクトール様に目を隠すようにいわれたら、どういたしま
しょう」
 私には慣れた目だが、たしかにビットの濁った目を嫌う者も多い。
 「そういわれたら、別の者を出します。早くお行きなさい」
 ビットは一礼をすると、部屋を出て行った。
 しかし、あの男は弱みを弱みとして受け入れてしまい、だからどうしたんだ?と言い
かねないとも思った。
 そういう男であれば、またそれはそれで面白いか、とも考えた。
 
   ◆
 
 私は、王国の名門バキンプルツ家の長女として生まれた。
 時代の慣わしどおり他国なり、同国のやや格上の家に嫁ぐという将来が迫っていた時
に父が亡くなった。
 兄が家を継ぐこととなり、しばらくの間、私の相手探しができないということで家に
残っていたら、今度は流行り病に兄と母がかかり亡くなった。
 普通ならば、養子を取って後をつぐはずだったがその時間もないまま、女帝の君臨す
ることが許されたこともある国だったことから、私が家を継ぐことになった。
 しかし、やはり女の当主ということで、与しやすいと思ったのだろう。同国の伯爵家、
子爵家などから子息が大量に私の元を訪れた。
 あわよくば、バキンプルツ家を乗っ取ろうという親の顔が、透けて見える男たちばか
りだった。

01-628 名前:ドレイン :09/01/31 21:54:30 ID:9RHWjZh0
 また自分の意思で来たと思われる男も、私の外見に大いに興味があることは明らか
だった。自分でいうのは愚かしいが、王宮に招かれた時に褒め称えるしか能がない詩人
が私に捧げた歌によれば、母譲りの金色の髪はすける様に明るく、肌も陽に照られされ
た春の白い薔薇のようだそうだ。
 その評価は過大だろうが、男たちの反応を見るに、男たちの興味を誘う程度の魅力は
兼ね備えているのだろう。
 小娘と侮って、顔がいいだけの次男坊、王立の研究機関で認められたという秀才、逆
に腕力を頼みに自分の力を誇示する男など、それは両手の指では足りない数の男が私の
元を訪れた。
 私は、バキンプルツ家を潰すつもりはなかったが、そのような政略のみで来る男もつ
まらないと思い、私の満足しない男を選ぶつもりは当主になった以上なかった。自らの
意思の許されない状態でなくなったのは、父や母、兄がくれた最後の贈り物と都合よく
理解することにしたからだ。
 そして、私は当主となって3年、領内は安定しており名君とはいわないまでも暗君で
はないと断言できるだけの運営はしてきた。
 しかし、やはり無理を重ねているという自覚、卑屈な態度もしくは居丈高な態度とい
う単調な男の反応に飽き、その疲労は私の中に歪みを生じさせた。
 やがて、私は訪れる男たちを弄ぶことを激務の対価とするようになった。
 男たちは、私の顔色を窺い、私が望むのならばその通りに行動した。
 戯れに身体を重ねてやると、篭絡できたものと思い込む様は滑稽で、翌日、荷物を贈
り物として受け取ると告げさせ、寝間着のみで城を追い出したこともあった。
 仮にも爵位のある家の男たちだ。いくらバキンプルツ家にやられたにせよ、そんな恥
晒しを吹聴することなどできるはずもなく、相変わらず数ヶ月に1回、私の城には各地
から青年がやってくる。
 
   ◆

 「いい……、いいわ!」
 私の股の間に跪いた男がいる。私の花陰に舌が這う。
 蒼い月明かりが、私の裸体を照らし出す。
 「そう、そこ……っ……んっ」
 私は右足の親指と人差し指を広げ、男の肉茎を掴む。
 「っ!」
 「やめていいなんて、言ってないでしょう……そう……あ」
 男の舌が再び動き始める。私の足が肉茎を動かすたびに、それは硬くなり先から透明
のつゆがあふれ出てくる。
 「ミル……ネラ……さまっ……もうっ」
 切なそうな男の声に、私は足で男の睾丸のあたりを踏むようにして、足の指を強く挟
む。うっと声をあげる男を見て、私は口元を歪める。
 「もう……なにかしら?」


01-629 名前:ドレイン :09/01/31 21:55:18 ID:9RHWjZh0
 「夫にしていただけるのですよね?ならば……こんな……くっ……」
 男の発言が終わらない段階で、私は再び足の指を広げ、男の肉茎を上下させる。
 「そうね……私の夫ならこれくらい耐えてみせてくださらないと」
 私の足を肉茎からのつゆが汚す。
 「あ、ミルネ……ラさま…」
 「我慢なさい、いったら追いだしますよ」
 男の視線が虚ろに上向きになり、吐息が限界を示している。
 「う、う……あ」
 猫がクッションの上で足踏みをするように柔らかく、しかし絶えることなく刺激を与
え続ける。
 「ふふふ……かわいそうだから、侍女にお願いしてあげる。ミリィ、入りなさい」
 男が混乱したように扉の方へ視線を向ける。
 扉の前に、きつね色の髪をしたメイドが立っている。流石にヘッドレストは外してい
るが。
 「さ、彼の相手をしてあげて」
 侍女の中でも一番男に好かれ、そして男が好きなこの少女は特別の手当てをする代わ
りに、私に協力している。
 男の前に来ると、ミリィがスカートをたくし上げ、自らの秘所をさらけ出す。男はそ
こから目が離せないまま、私に問いかける。
 「ミルネラさま……?」
 「あんまり辛そうだから、彼女としていいですわ」
 私が答えている間にも、ミリィは自らの秘所を指で弄び、喘ぎ声を漏らす。その声が
男の脳を熱で侵す。
 「ん、ん……ああっ……」
 ミリィが身体を男の肉茎に沈める。
 「ただし……いってはいけませんよ。仮にも私の夫になろうというのに別の女性に精
を出すなんて……」
 快感と興奮で半分も聞こえていないだろう。だが、それでいい。
 獣と変わらぬ状態になった上で、無理な注文をすること、わずかに残る理性が敗北感
を掻きたてるのが愉快なのだ。
 「大き……っ……ん…やっ……」
 ミリィがすこし腰をくねらせると、男の腰が動き始めた。
 「ミリィ……気持ちよさそうね」
 頬を上気させるミリィに微笑みかける。
 「はいっ……ミルネラさま……彼……す……ご…ああんっ!」
 ミリィのツーピースの中にある胸が上下に跳ねている。
 「出したら、許しませんから、ね……うふふ……」
  私は腕を男に回し、男の耳を舌でねぶった。
  すると、男の身体が痙攣した。
 「あらあら……ミリィの中でいっちゃったのね……」

01-630 名前:ドレイン :09/01/31 21:59:23 ID:9RHWjZh0
 ミリィは男の肉茎から精液が出尽くしたと感じたのか、腰を上げるとミルネラに頭を
下げた。
 恍惚となっている倒れている男を見下ろして、ニコリと微笑む。男の顔にわずかに恐
怖の色が入る。
 「グリテリッド伯によろしく伝えてくださいな。……自制の聞かない人は私の夫には
なれませんわ。明日には出て行ってくださいね」
 私はグリテリッド伯の長男の肉茎を左足で蹴飛ばし、部屋を出た。
 本当に、男というのは愚かだ。
 でも……私も否定はできない。ミリィの蠢く様を見ていて、身体が疼いてきたからだ。
 ルメニ家の次男坊エルフォンスのそれが大きかったとミリィが言っていたのを思い出
し、滞在しているその男の部屋に向かう。
 優男といった感じの男だが、ベッドの上部に腕を拘束し、ここ数日はミリィを主とす
る私が特別の手当てを出しているメイドたちの絡む様を見せ付けている。

 優男ゆえの馴れ馴れしさか。
 夕食の段階で、自信満々という口調で、身体に触れてきた。調子にのっている男には、
自身の容姿がなんら効果がないことを告げさせてやるのが楽しい。
 癇に障るまねをした相手を虚仮にすることは、私に暗い充実感を与える。
 別に生娘ではないから、身体に触れられたことのみで怒ることもないが、女を見くびって
いることを意識もせずに吐いた言葉で、私はこの男をどういたぶってやろうかと考えながら
優雅に微笑みかけ、彼に語りかけた。
 「私、夫とする方には条件がありますの」
 「条件?バキンプルツ家ならではのかい?」
 「いえ、私が考える条件ですが」
 「へぇ……君がね」
 侮蔑に近い馬鹿にした雰囲気が顕れていた。
 私は、あえてそれを無視し、彼に条件を話した。
 彼”だけ”の条件を。
 
 ルメニのいる部屋にはいると、メイド二人が彼の身体を舐めていた。股間の肉茎は膨
張しきっている。
 それはそうだろう、ここ3日食事、排泄、すべてメイドが行い、手を拘束したままな
のだから。
 「ひっ……ひっ……」
 「ずっとこの調子なの?」
 私の言葉にルメニの乳首を舐めていたメイドが答える。
 「そうですね……昨日の晩から」
 「じゃあ、大丈夫そうね……」
 メイドの一人が皮製の紐を出すと、肉茎の根元を結ぶ。
 「い……たい……」
 「ごめんなさいね、苦しいでしょ……でももう少し我慢してね…」

01-631 名前:ドレイン :09/01/31 22:00:48 ID:9RHWjZh0
 結び終えると、メイドたちはすこし下がった。万が一のために、部屋には残ってい
てもらう。
 私は先ほどまでの男の舌の刺激と、ミリィとの交わりでまだ蜜の残っている花陰を男
の肉茎にあてがう。
 「う……おっ……」
 「あ……太くて……いいわ……腰だけは動かせるのだから、もっと動きなさい」
 男が狂ったように腰を跳ね上げる。私の太股に男の骨盤が当たる。
 「んん……あ……そう……もっと……もっとよ……」
 肉と肉のぶつかりあう音が室内に響く。
 男の眼はもはや正気を完全に欠いて、血走っている。
 「ひっ……ひっ……」
 男の刻む拍が、私の中の快感を強く突く。
 「いい……いいわっ……」
 駆ける馬のような規則性が形作られ、身体を跳ね上げる。
 私の奥にある弾力のある果物のような快感の核が突かれるたびに、溶岩のように快感
が吹き出す。
 男の腰を深く身体に埋め込むように、私も身体を打ち付ける。
 私の腰が男の腰と同期し、上下へ跳ねる。
 男の肉茎が私を貫く。
 「ん……ん…あああああっ!」
 私の入り口が僅かに震える。私の頂点を構うことなく腰を動かす男を見下ろすと、私
はメイドたちに命じた。
 「はあはあ……もう…んっ…いいわっ……」
 「かしこまりました」
 メイド二人はベッドに駆け寄ると男の足を押さえつけた。
 腰の可動域が狭まり揺れが小さくなる。動きを読んで、私は肉茎を抜いた。
 「はっ……はっ……」
 男の肉茎は根元を結ばれたせいで、射精することができない。
 その苦痛は分からないが、私は満足した体の火照りから妖艶な笑みを向ける。
 「貴方、顔だけは好みだったわ。気持ちよくしてくれてありがとう……特別にどちら
がいいか希望を聞いてあげる」
 私は両脇に立つメイドの肩をそれぞれ手で掴み、尋ねた。
 「はっ……はっ」
 男は黒髪の長い方のメイドを見て、呼吸を荒くした。
 「そう、じゃあ、出させてあげてね」
 「はい」
 メイドはうやうやしく礼をすると男の肉茎の紐をほどいた。
 「口と手、どちらがよろしいですか?」
 「ひっ……ひっ……」

01-632 名前:ドレイン :09/01/31 22:05:28 ID:9RHWjZh0
 男の獣のような姿を哀れみの目で見て、私は尋ねる。
 「受けてあげないの?」
 「別に構いませんが……これだと腰がおかしくなってしまいそうで」
 男は拘束具を外さんばかりの勢いで身体をねじっている。たしかに私は1度きりだか
ら良かったが、これではこの男もメイドも腰を痛めそうだ。
 「そうね……ね、貴方、だしたいでしょう」
 男は血走った目でうなずく。
 「一晩いいわよね?」
 「はい。……いただけますよね?」
 メイドが私に聞く。私は即答する。
 「もちろん」
 私はネグリジェを羽織ると、扉の前に向かう。
 「じゃあ、エルフォンスくん、扉の前に衛兵を置きますから、私のかわいいメイドに
乱暴なことしないでくださいね?」
 男は荒い息で返すことしかできないようだ。
 「もし暴れるようなら、すぐに声をかけなさい。では、おやすみ」
 「はい」
 「貴方もありがとう」
 片方のメイドは恭しく腰を曲げた。
 城内の中を通る夜風が、火照りを収めていく。
 父がどうであったかはわからないが、パキンブルツ家の規模であれば特殊な性癖を持つ者もいたであろう。
名家の者といえど人間であり、領主として寛大であるために、人間としてどこか欠ける部分の闇を持つ可能性は
否定し得ないのではないか。そして、その闇を御せるだけの収入があるのならば、その権利を行使することは正
当化できると考えるようにした。
 異常ではある。そして、男を使ってはいるものの自慰であることも分かってはいる。
だが、私はそれらを自覚しているし、それによる安定でよしと考えることにしている。
 男は屈辱の色を示すが、その後一晩なり二晩なり男の思うままの交わりをメイドで与
えれば、一応の満足をして去っていく。
 中には、恨みを持ったままの男もいようが、そのための手はずは整えている。
 私は身体の疼きを収めた後の、この愚かしい行為に若干の自己嫌悪を感じながら、
眠った。

01-633 名前:ドレイン :09/01/31 22:11:34 ID:9RHWjZh0
 翌日の夜、そのメイドに話を聞いたら、私への恨みを吐きながらメイドに十回近く射精
したらしい。
 あまりにも愚かしく、私は思わず声を上げて笑った。
 狂気にとりつかれていないとは思わない。このような行為を重ねるごとに肉体的な快
楽と精神的な快楽が乖離していくことも認識している。しかし、精神的な快楽を得たら、
私は家を留めておけなくなるという強迫をいつしかもつようになっていた。それならば、
肉体的な快楽で埋めればいいと割り切った。
 精神がさらさらと砂の城のように静かに崩れていっている。しかし、私にとって他に
方法が思いつかない以上、崩れる速度が緩やかならば、私は狂ったという評価を受けずに
領主としての責務をまっとうできると決め付けた。。急激な家族の消失は、バキンプルツ家が
もはや無くなるさだめであることへの予兆かもしれない。
しかし、パキンブルツ家としての矜持は私の中に現に存在していて、それを棄てようと考えて
いるわけではない。
 だから、私は領主として、当主として、この家のために生きる。
 男を愛せなくなったのならば、養子を招けばよい。それならば、私がもっと歳を重ね
てからで良い、そう思った。
 
 その者が十分な役目を果たせるものであれば、
 この心が癒され、休める日々が来るのだろう。
 
 
 そんな矢先だ、レクトール・セイデンがこの城を訪れたのは。

最終更新:2009年07月17日 13:56