02-506 :<セーフティ・フレンド>:2009/07/01(水) 00:23:01 ID:O5l1iaLj
《第1話》

その日、僕は掃除当番だった。
たまたま教室掃除、たまたま同じ当番のクラスメイトが欠席とサボリでいなかった。
僕はやれやれと思いながら、その日の夕暮れに一人掃除をしていた。
委員長という立場上、みんないないからと自分までサボるわけにもいかない。
真面目で成績優秀な委員長。それが僕のクラスでの立ち位置だ。

(人が嫌がることを進んでやりましょう、か……)

損な役回りだけど、まあいっか。
内心自嘲しながら一通り終えてしまう。
だが当然、本来三人でやることを一人でやったのだから、いつもより時間がかかった。
図書館で勉強して帰ろうと思っていたが、今日はもう止めておこう。
そう考えながら帰り支度をしていた時だった。

「あっれー? 君一人なの?」

もう自分以外誰もいない教室に、少女の声が響いた。
入り口を見ると、見覚えのない少女が立っている。
背は男にしては小柄な僕と同じくらいだから、少し高め。
ブレザーのワッペンの色を見るに、一個上の学年生だ。
ショートカットの髪はよく手入れされており、髪留めも色合いはカラフル、悪く言えばケバめな印象を受けるもの。
顔立ちはよく見ればかなり整っている。
しかし、校則ギリギリ、いや、おそらく違反しているであろう口紅やアイメイクの濃さが目についた。
着崩した制服の彼女は、無遠慮に教室内へ足を踏み入れると、僕を値踏みするようにつま先から頭のてっぺんまで見上げていく。
一瞬、息を飲んだ。
こんな風に女の子にじろじろと見つめられるのは初めてのことだった。
特に、彼女の猫を思わせる円らさの中にも一種の鋭さを持った瞳は、化粧のせいもあってか、どこか大人びて見える。
一個上とはいえ、とても十代の少女の色香ではないように思えた。
平静を装っていたが、慌てた僕は口早に答えた。

「あ、はい、僕一人ですけど……」
「ふうん、伊藤くんと小川くんは辞退しちゃったの?」

伊藤? 小川?
二人はうちのクラスのムードメーカーといっていいタイプの、サッカー部所属のスポーツマンだ。
成績はふるわないものの背が高くて明るい二人は、女子にも人気があった。
彼らに用事があるのだろうか。しかし今頃は部活にいそしんでいるはずだった。

02-507 :<セーフティ・フレンド>:2009/07/01(水) 00:23:35 ID:O5l1iaLj
「二人とも今は部活だと思いますけど」
「ふぅーん。もう他にはいないわけ? 全部で五人だって書いてたけど」

書いてたって、何の話だ?
僕は目の前の上級生が口にしていることがまるで分からなかった。

「あ、あのー……いったいさっきから何の話を」
「じゃあ君でいいや」

にっこりと彼女が笑う。
華が咲いたように綺麗な笑顔だった。

「背も高くないし、それほどイケメンってわけじゃなさそーだけど」

彼女が腰に手をあててまじまじと僕の周りを観察しながら歩く。
何が何だか分からない僕を意に介さず、彼女は突然背後から両手で肩を掴んだ。

「わっ!?」
「カワイイ眼鏡で合格点あげちゃう」

耳元に吹きかけられる彼女の吐息に、思わず僕は飛び上がっていた。

「んふふ……じゃあ、ついてきて」

彼女はクスクスと意味深な笑みをたたえながら、踵を返して教室の外へと歩いていく。
まったく筋の見えない状況に、本来の僕なら異を唱えていただろう。
しかし、その時僕はなぜかふらふらと彼女の背中を追いかけていたのだった。

彼女は階段へ向かい、四階まで上がる。
僕は鞄をもじもじと抱えたまま無言でその後を追った。
彼女は『視聴覚準備室』とプレートのあるドアを開けた。

「さ、入って」
「は、はい」

彼女は僕が室内へ入るのを確認すると、ドアを締めてカギをかけた。
その行為に一抹の不安を覚えたものの、僕は鞄を適当な場所に置くと、彼女の次の言葉を待った。
視聴覚準備室は包装機材が並んでいるものの、そこそこの広さがある。
彼女は自分のバッグを部屋の中で不釣り合いに目立つ大きなソファの横に置いた。
くるりと振り向くと、悪戯っぽく笑って僕に言った。

02-508 :<セーフティ・フレンド>:2009/07/01(水) 00:24:17 ID:O5l1iaLj
「じゃあ、今から試験開始ね」
「試験?」
「そ。ま、採点基準はアタシ基準だから気まぐれだけどね」

試験、とますます意味のわからない単語が出てきたが、それを疑問に思う余裕は次の瞬間吹き飛んでいた。
彼女が突然スカートを脱ぎ始めたのだ。

「わっ!? ちょ、ちょっと何してんですかっ!?」
「え? 何って、服脱がなきゃセックスできないじゃん」
「せ、セックスっ!?」

何がなんだか分からない。
とにかく、彼女は今からここでセックス……英語で『SEX』……日本語で『性交渉』を始めようとしているらしい。
誰と?
僕と!?

目を白黒させている僕を見て、彼女は不意に何かに気づいた様子でジト目をこちらに向けた。

「あ! ……もー、マニアックだなぁ、キミ、制服のままが良いってタイプ?」
「う、い、いえそういうわけでは……ないんですけど……」
「そう? じゃあ、君も脱いで」
「……は、はぁ」

不承不承、僕はワイシャツを脱ぎ、続いて下のシャツも脱いでしまう。
上半身裸になったところで、ちらりと横の彼女を見ると、ブラジャーに手をかけているところだった。
ふわぁ……おっぱいおっきいし、綺麗だなぁ……
彼女はいわゆる着やせするタイプと言うのだろうか。制服を着ていたときよりも身体は締まった印象を受けた。
その締まった身体の中で、綺麗に整った形を崩さない二つの膨らみが視線を奪ってしまう。

「よっと……」

ぷるん、と音が聞こえそうな動きで乳房がまろび出た。
本物の女性の裸を、それもこんな美乳を生で見るのなんて初めてのことだった。
いつの間にか、僕の股間は熱く膨らんでいる。

02-509 :<セーフティ・フレンド>:2009/07/01(水) 00:24:50 ID:O5l1iaLj
「バキバキになっちゃう前に脱がないと脱ぎにくいんじゃない?」

そんな僕の状態を見透かすように彼女がこちらに視線も向けずに言った。
慌てて僕はズボンのベルトを外してパンツまで下げる。

「うう……」

全裸になったものの、恥ずかしくて手で自分のものを隠してしまう。
異性の前で裸になるなんてこと自体初めてだし、しかもここは学校内だ。
しかし、彼女はそんなことまるで気にしていないのか、堂々と腰に手を当ててこちらを見ている。

「ほーら、ダメじゃない、前隠してちゃ」

僕はおずおずと前から手を放した。

「へえ、思ったよりも立派だね」

彼女は素直に感心したらしく僕の勃起しきったペニスをそう評した。
一方僕は恥ずかしさで耳まで真っ赤になっていた。
こういうのは、友達から借りたゲームとか漫画では女の子のほうがするリアクションじゃないんだろうか?
彼女はソファに腰を降ろすと、ちょいちょいとこちらへ来るようジャスチャーした。

「じゃあ手始めに……舐めてもらおっかな」

彼女は心なしか上気しか顔で、とろけるような口調で言った。
中指を自身の股間へ指さし、僕に無言の圧力をかけてくる。
僕は意を決してソファの前に跪き、彼女の股間に顔を近づけた。
女性器をこんな間近で見るのは初めてだ。
しかし、幸い幻滅はしなかった。
彼女の股間はよく手入れされているのか、アンダーヘアは逆三角に綺麗に揃えられており、臭いも特にない。
僕は自分がおかしいことをしているという自覚を抱きつつも、彼女のヒクつく花弁へと舌を伸ばした。

「ん……」

彼女がそっと目を閉じて押し殺した声を発した。
舌先が彼女の膣の温もりを感じている。
より深くまで差し込むと、ヒクヒクと律動する彼女の膣内の味と熱さを感じることができた。

02-510 :<セーフティ・フレンド>:2009/07/01(水) 00:25:23 ID:O5l1iaLj
「ん……あ……ああ……あん……」

僕は次第にその行為に没頭するようになった。
より深く、より激しく彼女の膣内を蹂躙していく。

「あっ……あっ……いい……もっと……」

彼女は内股をきゅっと閉じて僕の顔を包み込む。
すべすべの肌が頬を撫で、香水とは違った、女性特有の甘い香りが鼻孔をくすぐる。
同時に、膣奥からはしっとりと何かぬめった液体が分泌され始めていた。

「あん……クリも舐めて……」

僕は言われた通り、いったん膣内から舌を抜く。
そして、綺麗に揃えられたアンダーヘアの中を探すように這わせた。
探し当てた突起を、舌先で転がすように刺激すると、面白いように彼女の身体が反応した。

「あっ! そう、そこ! んぁあ! 感じちゃう!」

僕の唾液ではない粘液が彼女の股間を伝っていた。
それは愛液だということに気づくのにそう時間はかからない。
すると、彼女が自分の股間に顔をうずめている僕の頭をぐいと引き離した。

「あん、もういいよ……もう我慢できない」

彼女はとろんとした目で僕の股間の勃起したペニスを見つめる。

「……入れて」

ここまでくるとある程度予想できていたが、流石に心臓が高鳴った。
……僕、実はというか、童貞。

「い、いいんですか?」

生唾を飲み込んで尋ねる。

02-511 :<セーフティ・フレンド>:2009/07/01(水) 00:25:56 ID:O5l1iaLj
「ん、いーよ……ちょうだい」

彼女はそう呟いて頷く。
僕のペニスは今にも精液を吹き出しそうなほどに勃起し、先端からは先走りの汁が滲み出ている。

「あ……」

僕はそこでふと理性が咎めた。

「どうしたの? 早くぅ……」

彼女が不満の声を漏らすので焦るが、とにかく今のままでは彼女の中へと入れられない。

「あ、あの、コンドーム着けないと」

もしかしたら空気の読めない言葉なのかもしれなかった。
しかし、こういった先走り液の中にも精子は含まれているので、彼女がピルでも飲んでなければ妊娠の危険がある。
AVやエロゲーと現実は違うのだと博識ぶって色々ネットで調べたことがある。
日本の若者の間違った性事情がどうとか、そんなサイトで知識だけは豊富な自分……

「えー? 要らないよそんなの、生の方が気持ちいいじゃん」

案の定、彼女は表情を曇らせる。
でも、ここまできたらちゃんとしておいた方がいいような気がした。
彼女は気にしていなくとも、僕の最後の理性が許さない。

「だ、ダメだよ……せ、先輩のこと妊娠させちゃったら悪いし……」

ああ、僕はこういうところで真面目ぶってしまうから女の子にモテないのかも。
言ってしまってから後悔するが、仕方がない。

02-512 :<セーフティ・フレンド>:2009/07/01(水) 00:26:46 ID:O5l1iaLj
「ふ~ん……」

彼女は僕の言葉を聞いてしばし無表情になった。
お、怒らせちゃったかな……?

「じっとしてて」
「え?」

彼女は身を起こすとソファの隣に置いていた自分のバッグをまさぐった。
ごそごそと何かを漁る音。
一体どうしたんだろうと、言われるがままにじっとしていると、彼女が振り返り、さっと素早い動作で僕の股間に顔を寄せた。

「わっ!?」
「ひっとひへてって」

じっとしててって、と言おうとしたのだろうか。
彼女は僕のペニスを口にくわえてしまった。

「うああ!?」

生暖かい口内の感触に、僕はビクンと大きく背中を反らしてしまう。
彼女はもごもごと何度かフェラのピストンのような動作を行い、思ったよりもあっさりと口からペニスを開放した。

「な、何なんです……? あっ!」

いつの間にか、ペニスには薄水色のコンドームが被さっていた。
口で着けちゃったのか!
なんて器用な……、と思っていると、彼女が挑発的に笑った。

「ほら、お望み通り準備万端なんだから早く入れてよ」
「あ、は、はい!」

M字に股を開いた彼女の間に身体を収めると、すぐそこに彼女の顔があった。
間近で見ると、やはりカワイイ。この学校でもトップクラスまでいかずとも、上の中には確実にランクインできそうな印象だ。
思わずまじまじと見つめてしまう。

02-513 :<セーフティ・フレンド>:2009/07/01(水) 00:27:21 ID:O5l1iaLj
「ふふ、どーしたの?」
「い、いや……先輩、カワイイなって」
「あら、ありがと」

にっこりと笑うと、そっと彼女が口を差し出してくる。

「ん……」

あまりに唐突なファーストキスだった。
僕がカチコチに硬直していると、彼女の柔らかな舌がそっとこちらの唇を開いて侵入してくる。

「んちゅ……ん……ちゅ……」

まるで粘着性の食虫植物に絡め取られる哀れな虫のように、僕は次第に彼女の身体の方へと埋没していく。
彼女のむっちりと、それでいてすらりと長い脚が僕の腰に絡みついた。
長い口づけを終えると、僕は意識がぼうっとしてくるのが分かった。
まるで、彼女の唾液には催眠作用があるんじゃないのかと思えるような、巧みなキスだった。

「ね、キミってさ」
「はい……」
「初めてでしょ?」
「う……」
「アタシでいい?」

僕は大きく頷く。
既に彼女の手は僕のペニスに添えられていた。
その先端を、自身の入り口を向けている。

「じゃ、きて……」
「あ……」

彼女がきゅっと絡めた脚をせばめた。
互いの距離がより密着していく、そのまま、先端が彼女の膣内へ入っていく。
クチュチュ、と卑猥な音を立て、彼女の中へと全てが入りきる。

02-514 :<セーフティ・フレンド>:2009/07/01(水) 00:28:16 ID:O5l1iaLj
「うぁぁ……」

僕は思わず彼女の身体を抱きしめていた。
柔らかく、温かな女の子の身体。
たまらない密着感。
僕の薄い胸板には、彼女の豊かな乳房が押しつぶされ、互いの心臓の音まで聞こえそうなほどだ。

「どう……ドーテー喪失の感想は?」
「あったかくって、柔らかいです……」
「あは、じゃあ、動いていいよ」

彼女がここまでリードしてくれたのだから、今度は自分の番だ。
僕はぎこちないものの腰を上下に振り始めた。

「最初はゆっくり、んっ! そう、その調子で、あんっ! 突いて!」
「はぁっ! はぁっ! こうですか!?」
「ああんっ! そうよ、慣れたらもっと小刻みにしてみて」

ギシギシとソファのスプリングが軋む音が部屋に響く。
ここを彼女が選んだ理由が、視聴覚室は防音がしっかりしているからだと気づく。
彼女の中を突く度に、溢れ出た愛液と粘膜が僕のペニスを覆い、締め上げていく。
ゆさゆさと弾力を持って揺れる美乳を、僕は本能的に揉みし抱いていた。

「やぁん! 乳首もいじってぇ!」

薄桃色の乳首をつまむと、ツンと固くしこっていた。
それを指先で転がすと、キュッキュッと膣内が締まる。

「うぁあああ! 先輩、ぼ、僕もう射精しちゃいそうです!」

ここまで保ったのが奇跡なのだ。童貞の僕はあっという間に登り詰めてしまった。
もしかして僕の方を愛撫しなかったのは、
入れてからあっという間に果ててしまわないようにしたかったからなのかもしれない。

02-515 :<セーフティ・フレンド>:2009/07/01(水) 00:29:35 ID:O5l1iaLj
「んぁあっ! まだダメぇ、もうちょっとでイケそうなんだからがんばって!」
「は、はいぃ!」

僕はもう何も考えられずに壊れたように腰を振った。
彼女と僕の腰が打ち付け合わされる音がパンパンと耳を刺激する。
僕はもう我慢を通り越してこみ上げてくる精液を下半身に感じながら、腕の中の彼女を目に焼き付けた。
少し派手だけど、こんなにカワイイ女性が初めての相手であることに感動すら覚える。

「あ、あ、あ、あぁぁぁぁぁーっ!!」

彼女がビクンと上半身を仰け反らせ、痙攣のように身を震わせた。
ツンと立った乳首が、彼女の性的な高まりを教えてくれる。
僕は、同時に激しい律動を起こした彼女の膣内で、堰を切ったように射精を開始した。

ビュクッ! ビュクッ!

「うああぁっ!」

僕は悲鳴のような声を上げていた。
今までの人生で一番凄まじいフィニッシュだったのだ。
ストックしてある精子は全て吐き出そうとするかのような、濁流じみた精液が撃ち出されていく。
彼女をぎゅっと抱きしめ、膣奥に向かって本能のままに射精を続ける。
果たしてどれくらいの時間そうしていただろうか。
少量の精液をピュクピュクと出すようになるまで、一分近くかかったような気がする。

「はぁー……はぁー……」

二人とも脱力して動けない。
余韻を楽しむのも兼ねて、僕らはそのまま折り重なったまましばらくの時間を過ごした。

02-516 :<セーフティ・フレンド>:2009/07/01(水) 00:30:07 ID:O5l1iaLj
ややあって、先に僕が退かないことには彼女が動けないので、身を起こすことにする。

「抜きますね……」
「あっ! 待って」

萎えたペニスを抜こうとすると、彼女がはっとして僕を制した。

「ど、どうしたんですか?」
「抜く時は気をつけて」
「え?」
「萎えた後に腰引くとさ、ゴム、中で外れやすいんだから」

そこまで気が回らなかった。
でも、最初は生でいいとか言ってた割には細かいんだな……?

「だから、根本をしっかり固定して、ゆっくり引き抜いて……」
「は、はい」

僕は指示通りにゆっくりと彼女の中から男性器を引き抜いた。
確かに、先端に精液の溜まったゴムは膣内で抵抗を受けて、そのまま腰を引いたら外れる危険がありそうだった。

にゅろん

たっぷりと黄ばんだ精液が溜まったコンドームが彼女の膣内から出てくる。

「あんっ」

最後に微かに彼女が喘ぐ。
その声が可愛いと思い、できればキスの一つでもしてみたかったが、
今自分のものにぶら下がっているものを早く処理しなければ無様なことこの上ない。
慌てて彼女に背を向け、愛液にぬめったコンドームをはずしにかかる。
……うまく外れない。AV男優とかあっという間に外してるのに。

「うわぁ~マジそんな出したの?」

彼女は僕が恥ずかしくてこそこそと処理しようとしていたゴムを奪うとケラケラと笑った。

02-517 :<セーフティ・フレンド>:2009/07/01(水) 00:30:43 ID:O5l1iaLj
「どんだけ溜めてたのよぉ~?」
「め、面目ないです……」
「あはは、ま、いいけどさ」
「あ、あの!」
「ん、なあに?」
「さっきの試験って……」

彼女はキュッとゴムの口を慣れた手つきで縛ってティッシュでくるみながら、思い出したように言った。

「ああ、アレね。結果、知りたい?」

彼女は宙を睨んで『ん~どうしよっかなぁ~』と裸のまま思案顔になった。
いや、そうじゃなくて、いったい何の試験で、何でセックスなんてしたんだろうか、ということが聞きたかったのだけど。
でも、今更それを聞くのはどこか無粋な気がしてしまった。

「まあ、いいわ、じゃあ……合格!」
「合格、なんですか?」

えらいカンタンに合格してしまった。
どうして、という感情は表情に出ていたのだろう、彼女はふふーんと笑って説明した。

「キミさ、ゴムしようって言ってくれたじゃん」
「ええ、まあそうですけど……」
「あれ、結構ポイント高かったよ。だって、アタシが今回セフレ募集したのだってそれが原因なんだし」
「せ、ふれ?」

セフレってあれですか、セックスフレンドの略称ですか?
それを募集って……

「なんでかなぁ~イケメンって大抵アタシみたいな女相手だと生で入れたがるのよねぇ」

彼女はしみじみとそう言った。

「前の彼氏だって危ない日なのに生で入れたがるし……
だから今回はテクとか顔とかじゃなくてさ、とにかく〝安全〟なセフレが欲しかったんだー」

僕を見てにっこりと笑う。
安全な、セフレ、ね……
『セーフティ・フレンド』、か。

02-518 :<セーフティ・フレンド>:2009/07/01(水) 00:31:22 ID:O5l1iaLj
「じゃあ、最初に生でしようって言ったのって……」
「ふふーん、引っかけ問題!
あそこで大喜びで生入れする男なんて怖くってしょうがないから、キミがそうだったなら叩き出してたわね」
「あ、はは……」

引きつった笑いしか出てこない。
しかし、ここまできて大体の全容が見えてきた。
つまり、彼女はセフレの募集をして今日がその試験日だったのだ。そして、その待ち合わせ場所が人気のない放課後のうちの教室だった。
でも、結局何かの理由で伊藤や小川たちは現れず、たまたま僕がその教室に残っていたから、彼女は僕がセフレ希望者だと勘違いして……

童貞まで捨てさせてもらっといて何だけど、この人むちゃくちゃだ……

彼女は鼻歌交じりに下着を身につけ始めていた。
すると、ふと思い出したようにバッグの中から携帯を取り出す。

「ま、そんなこんなでお互い同意ってことで、メルアド交換しよっか」
「え、い、いいんですか?」
「キミだってわざわざ童貞なのにセフレ試験受けにきたんでしょ? そのチャレンジャー精神に乾杯!ってとこ?」
「なんですかそれ」
「あははっ! ホント、なんなんだろね。あ、キミのケータイ、赤外線通信できる?」
「は、はい」
「アタシから送るから、受け取って」

僕は慌てて自分の携帯を脱ぎ去った制服のポケットから取り出す。

02-519 :<セーフティ・フレンド>:2009/07/01(水) 00:31:57 ID:O5l1iaLj
「そーしん、っと」

小気味良い電子音が鳴り、彼女のメルアドや電話番号が僕の携帯にやってくる。

「あ……」
「どうしたの? 受信失敗しちゃった?」
「いえ、先輩の名前、知らなかったなって……」

童貞をもらってくれた彼女の名前が、今になってようやく知ることができた。

「そういえば、アタシも君の名前、知らないね」
「じゃあ、どうぞ」
「ん、ちょうだい……」

僕はにっこりと笑うと、自分のパーソナルデータを彼女の携帯に送ったのだった。

<続く>


02-521 :<セーフティ・フレンド>:2009/07/01(水) 00:33:04 ID:O5l1iaLj
《第2話》

僕、冬間 来人(とうま くると)はごく普通のクラス委員長。
成績は優秀な部類に入っていると思うし、素行も良好だろう。
飾り気のない眼鏡に、そう高くもない身長。顔も童顔なのをのぞけば至って特徴もない整い方をしている。
女の子からみれば至って魅力のない、クラスの置物のような存在なんじゃないだろうか。
でも、最近僕には一つの秘密ができていた。

放課後、僕は図書室で一時間ほど時間を潰すと、四階にある視聴覚準備室へと向かう。
ノックすると、中から小さく「どーぞー」と女の子の声が聞こえた。

「ど、どうも夏山先輩……」
「あ、来てくれたんだ」

準備室内は放送機材の奥に大きなソファが備えられている。
そこに、ショートカットの少女が座っていた。
彼女の名前は夏山 奈月(なつやま なつき)。
ブレザーのワッペンの色は僕の一個上の学年を表すので、上級生にあたる。
身長は小柄な男の僕と同じくらいだから、女の子としては少し高め。
顔立ちはよくみればはっとするほど整っているが、少し濃いめの化粧が人によっては気になる印象を受ける。
胸は大きいといって差し支えなく、適度な形を維持した美乳タイプだ。
スカートはかなりのミニで、校則には明らかにひっかかっているだろう。
服装検査の時だけ注意するしー、と、この間メールで話したっけ……

「ね、ね。お菓子あるよー、どれ食べるぅ?」

ソファの前の小さなテーブルには、近所のコンビニの袋と、結構な量のスナック菓子が散乱していた。
彼女はにっと歯をみせて手元のポテトチップスをつまむ。
僕は苦笑いして彼女の所で歩いていく。

「さっきまで誰かいたんですか?」
「え? なんで分かるの?」
「いや、一人で食べたにしては多いかなって」
「あーそだね。その通り、さっきまで友達とダベってたんだ」

彼女の隣に腰を降ろすと、ポッキーを一袋もらうことにした。

02-522 :<セーフティ・フレンド>:2009/07/01(水) 00:33:47 ID:O5l1iaLj
「同級生の人なんですか?」
「うん、部活があるからそんな長くいられないからね、さっき帰ったよ」

僕はふうん、と相づちをうつ。
と、準備室の防音仕様の壁にあるものを発見する。

「ここ、飲食禁止って書いてますけど?」
「そ、だから冬間君も共犯ね」
「なんですかそりゃ!?」
「にゃはは、固いこと言わない固いこと言わない」

ケラケラと笑う彼女の顔は、間近で見るとやっぱり可愛い。
こういう派手な、悪く言えばケバいタイプの人となんか、今まで話したことなかったのにな。
僕は彼女と知り合うきっかけとなった、ほんの数日前に起きた出来事を思い出した。
……い、いかん、要はひょんな成り行きで童貞を捨てさせてもらったわけなんだけど、
本人を隣にしてそれを思い出すと劣情を抱いてしまいそうだ。

「冬間君は委員長やってんだっけ?」
「そうですよ」
「偉いな~、アタシあんな堅苦しいこと絶体無理」

彼女はそうため息をつくと、わしゃわしゃと食べ終わったポテトチップスの袋を丸めてコンビニの袋へ入れてしまう。
そして、ペロペロと指についたポテトチップスのカスを舐め取る。
僕はその口紅の塗られた唇と、そこから伸びる赤い舌先にドキっとしてしまう。

「……なぁーに?」
「あ、いえ……」
「やらしー視線がビビっと来たわよ」

ペロリと、猫のように彼女は舌なめずりする。

02-523 :<セーフティ・フレンド>:2009/07/01(水) 00:34:19 ID:O5l1iaLj
「したくなっちゃった?」
「い、いやそういうわけでは……」
「なぁんだ、したくないんだ」

不機嫌そうな声でそう言うと、彼女がぷいっとそっぽを向く。
お、怒らせちゃったかな?

「あ、あの、すいません、やっぱしたいですっ!」

慌てて僕は訂正していた。

「したい、って、何を?」
「え?」
「何をしたいのかなー? 言ってくんないとわかんないよ」
「う、そ、その……」

僕は言葉に詰まった。
彼女はニヤニヤと笑いながら三白眼でこちらをうかがっている。

「……ックス」
「んー? 聞こえないなぁ」
「せ、セックスしたいです!」
「だーれと?」
「夏樹先輩とっ!」
「ふふーん、よく言えましたー」

そうなんです、僕と先輩はいわゆる『セックスフレンド』というやつなんです。
きっと、僕のことを知る人には想像できないだろう。
まあ、でもその真面目さゆえにこうした関係になれたのもまた事実だ。

「じゃーしょーがないなー、友達だもんねー、断るわけにはいかないかー」

彼女は胸を張ると、靴を脱いでソファの上に横になった。
そして、その美脚を曲げてこちらへ見せつける。
ミニのスカートはあっというまに彼女の絶体領域を守りきれなくなり、そのセクシーな紫の下着を露わにしてしまう。

02-524 :<セーフティ・フレンド>:2009/07/01(水) 00:34:52 ID:O5l1iaLj
「……じゃあ、して」

僕は誘蛾灯に誘われる虫のようにふらふらと彼女の上に覆い被さった。

「ん……ちゅ……んふ……」

彼女は僕のキスに応じてくれる。それだけでなく、舌を積極的に絡めて快楽を貪ってくる。
僕は先輩のぬめった舌の感触だけで既にズボンを押し上げるほどに勃起してしまっていた。
しかし、できるだけがっつかないように彼女を愛撫していくことを心がける。
彼女の胸に手を伸ばし、ゆっくりとこねるように優しく揉む。

「あん……」

彼女が軽い喘ぎ声を漏らす。
僕は片手で胸を愛撫しつつ、もう片方の手を彼女の大事な所へと這わせた。

「んぁっ! あぁ……あ……いい……」

まずは下着の上から彼女の秘部をまさぐる。

「あはぁっ! そうよ、うまいじゃない」
「先輩のレクチャーの賜物ですよ」
「んふ……ね、下着汚しちゃまずいから脱がせて」

シュル、と僕は先輩のセクシーランジェリーを取り去る。
先輩も腰を浮かせて脱がせるのを助けてくれた。
脱がせ終わると、しっとりと蜜を分泌し始めた先輩の花弁に、そっと口付けする。

「ひゃあんっ!」

先輩は僕の舌が自分の大事な部分に侵入してきた感覚に身体を仰け反らせた。

02-525 :<セーフティ・フレンド>:2009/07/01(水) 00:35:23 ID:O5l1iaLj
「ちゅる……ちゅるる……」

今までの傾向からして、先輩はクンニが好きだ。
僕は先輩の膣内を確かめるように舌先で刺激していく。

「あ……ああ……あぅん……ん……」

先輩はきゅっと内股になって僕の頭をもどかしげに撫でる。
十分に彼女の中が湿ったのを見計らって、僕は一度顔を上げた。

「……入れていいですか?」
「ん……」

先輩は上気した顔で頷く。
それを確認すると、僕はカチャカチャとズボンのベルトを外して下半身を露出する。
もう十分な固さを持った僕の男性器を横目に、彼女はソファの隣に置いてある自分のバッグに手を入れる。

「はい、着けて」
「わかりました」

彼女はバッグから取り出したコンドームを僕に手渡した。
そう、僕のような冴えない男が先輩のセックスフレンドになれたのは、実はこの避妊具のおかげなのだ。
『生はダメ。絶対にコンドームを着ける』
この約束の上に、僕は先輩とセックスする権利を得たのだ。
妊娠や性病の心配のない〝セーフティ・フレンド〟として。

「ねぇ……早くきて」

僕がコンドームを装着し終わると、先輩がこちらに尻を突き出して誘っていた。

「今日はバックからですか?」
「うん、いっぱい突いてね」

発情した雌犬のような格好。
僕は、ペニスの先端をその膣口にあてがった。

02-526 :<セーフティ・フレンド>:2009/07/01(水) 00:35:55 ID:O5l1iaLj
「了解です……!」

腰を入れ、濡れた膣内を、一気に貫く。

「ああぁっ!」

先輩が大きく身体を波打たせた。
先輩の膣内は、驚くほどすんなりと僕のペニスを受け入れてくれる。
それでいて、けして緩いというわけではなく、むしろ、深くまで受け入れたものを逃すまいと締め付けてくる。
僕は体力勝負とばかりに腰を振る。

「あっ! あっ! あぃっ! んぁあっ! あぅぅっ!」

まるで理性が消し飛んでいるかのように、先輩は快楽に対して遠慮なく声を上げている。
今の僕と先輩は、互いに下半身だけを露出して交わる、世間一般の常識から逸脱した存在だった。
そして、この後背位からのセックスは、僕に強烈に今の行為が〝交尾〟であることを意識させた。
妊娠の心配のない僕という存在は、交尾の快楽部分だけを彼女にもたらしているのかもしれない。
厳密には、きっとこれは〝疑似交尾〟に違いない。
食欲や睡眠欲同様に、性欲を純粋に満たすだけの行為だ。
実に理にかなっている。愛情や恋愛感情すらない、純粋な行為に違いないのだから。

「あひぃ! いい、いいよぉ! イっちゃいそぉ!」

彼女が絶頂を訴える頃、僕も限界を超えようとしていた。

「はぁっ! はぁっ! 僕もです!」

先輩は僕に突き上げられながら、快楽に歪んだ笑みを背後に向けた。
恥じらいや、常識を捨てた女性の笑みが、なぜかたまらなく美しいもののように感じられた。

「んぁあーーーっ! 来て、きてぇーーーーっ!」

僕は彼女の腰をがっしりと抱え込んで最後の一突きを打ち込んだ。

02-527 :<セーフティ・フレンド>:2009/07/01(水) 00:36:39 ID:O5l1iaLj
「うぐっ!!」
「あっ……」

二人の動きが一瞬で止まり、同時に彼女の奥深くで射精が開始された。

ドクッ! ドクッ!

僕は腰が抜けそうな感覚に歯をくしばって必死に耐え、最後の一滴まで彼女の中に注ぎ込もうとする。

「は、はぅぅ……」

先輩は絶頂後の弛緩した身体で、それを受け止め続けた。



「ふー、もう暗くなり始めちゃってるねー」
「そうですね」

先輩は身なりを整えると、先ほどまでの痴態が嘘のようにあっけらかんとした言葉を漏らした。
僕はまださっきの射精の脱力感が抜けきらず、後始末のティッシュの散乱するソファにいた。

「さ、て、と」

先輩は肩をオヤジ臭くコキコキと鳴らすと、放送機材の前に立った。

「ほ~た~るの~ひぃ~かぁ~りっと」

鼻歌混じりに機材を操作すると、レコードの音が鳴り始める。
誰もが馴染みのあるあの曲、蛍の光だ。
先輩は次いでマイクの前に立ち、すっと真面目な表情になる。

「下校の時刻になりました。まだ学校に残っている生徒は、戸締まり、忘れ物に注意して速やかに下校してください」

うちの学校では、放送設備が職員室と音楽室、そしてここ視聴覚室にある。
今まで聞いてたあの声、先輩の声だったのか……
僕は意外な事実に気づいた。

02-528 :<セーフティ・フレンド>:2009/07/01(水) 00:37:26 ID:O5l1iaLj
入学してから図書室で自習することが多かった僕には聞き慣れた何気ない日常の声。
……僕が自習で残っていたときも、こんな風に誰かとセックスしてから放送してたのかな?
僕はなぜか複雑な気持ちになる。

「さ、今日はもうおしまい。ここも閉めるから、早くズボンはきなよ」
「は、はい」

僕はのろのろと身支度をする。
先輩は戸締まりやゴミがないかを確認している。
ふと気づいたように僕を振り返る。

「あ、それから、今日は使用済みコンドームは君が持って帰って処分してね」
「わ、分かりました」
「掃除当番といっしょ、何事も分担作業ってことで」

先輩はにっと白い歯を見せた僕にティッシュにくるまれた使用済みコンドームを渡す。

「学校内に捨てたりしないでね。一回前のセフレが職員室近くのゴミ箱に捨てたもんで見つかったことあるんだから」
「そりゃ怖い」
「でしょー、あははは」

そんな会話をしながら、僕らは一緒に部屋を出た。

02-529 :<セーフティ・フレンド>:2009/07/01(水) 00:37:58 ID:O5l1iaLj
先輩がカギをかけ、階段を下る。

「じゃ、アタシはカギを職員室に返してから帰るから、ここでサヨナラ」
「はい」
「……ね」
「はい?」

ちゅっ、と唇に柔らかな感触。

「今日は気持ち良かったよ。また今度ね!」

そう言い残し、先輩はさっさと廊下を走っていってしまった。
ぽつんと薄暗い廊下に残れた僕は、しばしの間呆然としてしまう。

「……参ったな」

セックスにはだいぶ慣れたけど、先輩に対するこの説明のつかない複雑な感情には、まだ慣れなかった。

<続く>

02-539 :<セーフティ・フレンド>:2009/07/03(金) 01:18:12 ID:A6OSZB8p
《第3話 前編》

僕は今の学校に通うために一人暮らしをしている。
自炊で生活費を節約することで、それなりに不自由なく暮らしているのだ。
この立地条件でこのレベルの部屋だと、かなり安いだろう。
部屋探しの段階で、二人泊まっても狭く感じない程度の部屋を、と考えて探したのを覚えている。
田舎の中学を出て都会に暮らすことに、青少年らしい期待を抱いていたのだ。
実家の教育が厳しかったせいもあり、いつでも女の子を通しても良いほどに清潔に保たれてもいる。
いつか、恥ずかしがる可愛い女の子をこの部屋へ上げることが、そこはかとない夢だった。
しかし……

「うっわぁーっ! 冬間くん家めっちゃ綺麗じゃーんっ!?」

念願が叶ったが、現実はうまくいかないもので、
神様はどうやら〝恥ずかしがる〟可愛い女の子の〝〟部分を読み飛ばしていたようだ。
そう、今僕の部屋には先輩がいる。

「あはは……家が厳しかったもんで整理整頓が癖なんですよ」
「すっご、こんな片付いた男の子の部屋初めてみるし」

褒められてるのか珍獣扱いされてるのか判断に苦しむ。
今日は土曜日。学校は休みだ。
なのに、なぜか夏山先輩が僕の部屋にいる。
まだ朝八時というのに、予想外に早起きなんだな。
昨日の夜にメールで〝明日遊びに行っていい?〟と尋ねられて度肝を抜かれたもんだ。
しかも、何が入っているのか分からない大きなバッグを抱えてやってきたのだからまた驚いた。
何もかもが僕の理解を超えた行動を取る先輩に、朝から若干げっそりとした気分になる。

「どこに腰降ろせばいい?」
「ベッドでもどこでも適当にどうぞ」
「あー、駅前の満喫から直行してきたからつっかれたー」

彼女は旅行用バッグを肩から降ろし、文字通り肩の荷が下りたといった様子でベッドに腰掛けた。
無防備に片足を上げてくつろぐ先輩。
今の先輩は当然ながら私服だ。
身体のラインを浮き立たせ、それでいて露出も多めなミニスカートとホルターネックキャミソール姿だ。
僕の好みの対極にあるはずの服装なのだが、現実にこうして部屋に二人きりになるとどうしても意識してしまう。
とてもではないが自分の一個上程度には見えないプロポーションの成せる技だろうか、匂い立つような色香を自然と振りまいている。
この部屋に〝可愛い女の子〟を上げる、という少しばかり妥協した夢ならば、十二分に達成できたと言えるだろう。
ただし、この先輩は彼女ではなくセックスフレンドで、しかも恥じらい感覚はゼロを振り切ってそうな性格をしているが。

「昨日満喫に泊まったんですか?」

僕は片足を上げたせいで丸見えのパンティから気分を紛らわすために、なんとなしの会話を始める。

「んーそうだよ」
「なんでまた?」
「え? ……あ、えーと、あ、ほら、読みたい漫画結構あったんだ」
「そうなんですか?」
「う、うん、そーなんだ」

そんな話をしていると、彼女のお腹が『ぐう』と鳴った。

02-540 :<セーフティ・フレンド>:2009/07/03(金) 01:18:50 ID:A6OSZB8p
「あ、あはは、朝ご飯食べてないもんだから」
「何か用意しましょうか?」
「い、いいの?」
「ええ、僕も朝飯はこれからですし」
「ごめんねー、マジ助かる」
「テレビでも見ててください」

僕は台所へ行って朝食の準備をすることにした。
味噌汁を作っていると、彼女はどうやらテレビを見ているようだった。
朝のニュースが耳に入る。ラジオ代わりに朝聞いている番組だ。

『……今日の特集は、増加傾向にある悪質なストーカー被害についての……』

よし、ウインナーも焼けた。
僕は二人分のご飯をよそい、お盆にのせて運ぶ。

「できましたよ」
「えっ!? あ、うん」

彼女はなぜか神妙な表情でテレビを見ていた。
へえ、ニュース番組とか興味あるんだな。
朝の占いとかトレンド情報やってる時間帯でもないのに。

「わっ! 何これ凄いじゃん!? 全部冬間君が作ったの?」
「これくらい自炊してりゃできるようになりますよ」

僕は苦笑いして箸を渡した。
メニューは味噌汁と白米、大根の漬け物とベーコンエッグとウインナー、そしてサラダ。
いつもならベーコンやウインナーをケチるところだが、見栄をはって少し豪華なのは内緒だ。

「いっただっきまーす!」
「どうぞどうぞ」

僕らは小さいテーブルを挟んで朝食を食べ始める。

「んーおいしー!」
「そりゃ良かったです」

先輩は満面の笑みで飯をほおばっている。
ここまで素直に褒めてもらえると作った甲斐もあるというものだ。

02-541 :<セーフティ・フレンド>:2009/07/03(金) 01:19:25 ID:A6OSZB8p
「ぼりぼり……」

本当に空腹だったのか、先輩はしばらく無言になって飯をかき込んでいた。
漬け物は実家から送ってきたものなのだが、それもおいしそうに食べてくれている。
それにしても、だ……

「あ、ごめんお茶おかわりある?」
「はいどうぞ」
「センキュー」

先輩とは出会ってまだ一週間というのに、平然と部屋へやってくるとは急展開だ。
こういうことに関して、女の子はもっと慎重なんじゃないかと思っていた。
いや、先輩本人はそんな感覚でいないということなのだろう。
僕は彼氏ではない。セックスフレンドだ。きっと僕なんかに対して特別な感情は先輩にはない。
男の部屋へ上がるのも一度や二度目ではないのだろう。
漫画やアニメに登場するような、清楚で恥じらいのある女の子ではないのだ。
しかも、セックスでさえ遊び感覚。
僕のことなど、良くて体の良い男友達、悪ければただのオナニーの道具くらいにしか思っていないのではないか。
彼女の破天荒な行動の数々は、僕にそんな不安感を募らせる。

でも……

「ぷはー、食べた食べた、ごちそーさま」

笑顔は本当にカワイイんだから反則だよな。

「冬間君? どしたの? アタシの顔じっと見ちゃって、どっかごはんつぶついてる?」
「あ、いえ、ただちょっと朝だから眠くって……」

慌てて目をそらす。
ちょっと頬が赤くなったような気がする。

「隠さなくてもいいんだよー?」
「え?」
「だーじょぶだって、学校いるときと違って時間はあるんだし、がっつかないがっつかない」

苦笑いしながらそう言うと、彼女はお盆に食器を片付け、台所へ向かった。

「ねぇこれ、シンクに入れとけばいいのかな?」
「……あ、はい」

そうだよ、な。
僕と彼女との間にはセックス以外に接点はないんだ。
そう思うのも仕方ないか。
でも、どこか納得できなかった。それがなぜなのか、よく分からない。
僕は分別はついているつもりでいる。
だから、セックスフレンド以上の関係を彼女に強要したり期待するのは筋違いなのも分かっている。
分かっている、つもりなのに……


02-542 :<セーフティ・フレンド>:2009/07/03(金) 01:19:57 ID:A6OSZB8p
「ねぇ……」
「わっ!?」

考え込んでいると突然背後から抱きつかれた。
先輩の柔らかな感触、特に胸の膨らみが、僕の背中に密着してくる。

「ど、どうしたんですか?」
「頼みがあるの……」
「な、何でしょう?」
「土日、ここに泊まっていっていい?」
「え? 二泊ですか?」
「うん……」

耳元で甘えるように囁かれたが、意外な問いに僕は一瞬素に戻った。

「別にいいですけど、どうして僕の家なんです?」

僕は思案するまでもなく答えていた。
むしろ、彼女のことだから一泊くらいはしていくだろうと漠然と予想していたくらいだ。
僕自身、下心から一晩かけて先輩と過ごすことに期待もしている。
しかし、土日ともとは意外だった。
そこまでしてセックスしたいかと短絡的に考える以外の理由がありそうな気が直感的にした。

「んー……今週、女の友達は全部予定入っちゃっててさぁ、暇なのよぉ」

とってつけたような理由に聞こえた。
しかし、先輩の声には、微かだが不安げな感情が潜んでいるような気がした。
気のせいにしてもいいくらいの微妙な違いだが、
先輩のような快活で喜怒哀楽の表現のはっきりした人には珍しい感情の起伏なので、特に気になった。
相手の心を読むことで勝負が決する、とは実家で道場をやっているじいちゃんの教えの一つだったっけ。
……そんなじいちゃんのシゴキが嫌で都会の学校に進学したんだけどね。
それはさておき、先輩にも何かしらの事情があるように察せられるということだ。
どうしよう、トラブルはごめんだ。
しかし、先輩の頼みだ。僕は、たった一週間の関係とはいえ、先輩が悪い人ではないだろうと思っている。
ええいもう、あとは先輩が実は悪人だったなんてことがないことを祈るのみだ。
ここまでコンマ数秒で考えをまとめると、僕は口を開いた。

「そういうことなら、どうぞ、ここは別に誰か来る予定もありませんし」
「本当!? ありがとー!」

先輩の明るい声が耳元で聞こえる。
首筋にあたる吐息がくすぐったかった。
先輩は僕から離れると、意気揚々といった感じで僕の前に立った。

02-543 :<セーフティ・フレンド>:2009/07/03(金) 01:20:38 ID:A6OSZB8p
「よーし! そうと決まったら買い出しにいかなきゃね」
「買い出し?」

何か足りないでもあっただろうか。
食料品なら近所のスーパーが24時間営業だからそれほど困らない。
僕が腑に落ちない顔でいると、先輩が説明した。

「こないだのでゴム全部使い切っちゃったの」
「ああ、なるほど……」
「今週はゴム強化週間ってことで。それと、今後のためにも余分に買っとこう!」

先輩が白い歯を見せる。

「なんですかゴム強化週間って」

僕が苦笑いすると、先輩がふと真面目な顔になった。

「ああ、そうそう、アタシ昨日からデンジャラスゾーン入っちゃったから」
「デンジャラス・ゾーン?」
「もー鈍いなぁ。危険日よ、き・け・ん・び」
「あ……」

僕はやっと先輩が言う所の意味を理解した。
そ、そうだよな、先輩だった健康な女の子で、当然そういう日もあるわけで……。
思いがけず、僕は目の前の先輩が一人の〝異性〟であることを意識してしまう。

「冬間くんのオタマジャクシとアタシの卵ちゃんが出会うとシャレになんないことなっちゃうの、ドゥユーアンダスターン?」
「……い、イエス、アイドゥ」
「よろしー、じゃ、支度して」
「はい」

僕は慌ててを腰を上げたのだった。

<続く>

02-549 :<セーフティ・フレンド>:2009/07/05(日) 00:10:07 ID:AFASXfd0
《第3話 後編》

「アレって薬局とかで売ってるんじゃないですか?」
「んー、でもさあ、せっかく休みの日に外出したんだし、遊んでいこーよ」

僕は先輩と並んで歩きながらそんな会話をしていた。
このあたりはほとんど住宅街なので、生活に必要な店はあっても確かに遊ぶ場所はない。
先輩の言うことも一理ある。こんな良い天気の日にわざわざゴムを買うためだけに外出というのも不健康だ。

「じゃあ電車で市街に?」
「そーしよそーしよ」

でもこれって……

「いいんですか?」
「へ、何が?」
「そ、その、僕と一緒に歩いてるの、誰かに見られたりしたら」
「大丈夫よぉ、アタシ今フリーだから、彼氏と修羅場とかはないから。安心して」
「は、はぁ……」

恋人同士にみられたりしないかな、とは恥ずかしくてどうにも切り出せなかった。
今時の女の子はそういうのを気にせずに男友達と遊ぶのかもしれない、と自分を無理矢理納得させておく。
と同時に、やはり自分は先輩にとって、そういった恋愛感情などとは切り離された存在なのだと実感してしまう。
先輩にどうこう言えた筋合いではない。でも、なぜか悔しかった。
チラチラと先輩の横顔を気にしながら駅までの道を歩く。
先輩はそれこそ飄々としたもので、良い天気だぁ、となんとなしなことを言いながら楽しんでいる。
駅に着いて改札を通った辺りで、人気が随分と増えてきた。
今日は土曜日ということもあって周辺の住宅街からは多くの人がこの時間帯に市街へ向かう電車を利用する。
もう少し時間をずらした方が良かったかな、と思いながら、僕らは満員状態の電車に乗った。

「わっぷ……混んでるねえ」

先輩は人混みに流されまいと必死に踏ん張っている。
僕は離れないように咄嗟に先輩の手を握っていた。

「先輩、こっち」
「え?」

僕は壁際に先輩を移動させ、壁に手をついて人壁になった。
こうすれば、先輩は走行中の揺れや人の乗降の波に揉まれたりしないだろう。
ちょっとした気配りだ。
先輩はしばらくその意味が理解できなかったのか、きょとんと僕の顔を見つめている。
電車が走り出し、カーブの多い区間になると、僕は何度も踏ん張って先輩が押しつぶされないように注意する。
途中、更に乗車率の上がった車内で、先輩のスペースを確保するのは思いの他大変だった。

02-550 :<セーフティ・フレンド>:2009/07/05(日) 00:10:40 ID:AFASXfd0
「……あ、ありがとう」

ややあって、僕のしていることに気づいたのか、先輩は申し訳なさげにそう呟いてくれた。

「いえいえ」

僕は女の子相手ならこれくらい純粋な好意の内だと思っている。
感謝されるほどのことではない。
それに、満員電車の辛さは僕が都会へ出てきて最も苦労したことの一つなので、
先輩にそんな思いをさせるのは男としてどうかとも思っていた。
それに、だ。
僕はすし詰め状態の車内を見渡して思う。
こうしていれば先輩のフェロモンを嗅ぎつけた痴漢に遭う心配もないしね……。

「大変でしょ、もうちょっとこっちに寄ろうよ」
「う、うん」

市街に近づいて、混雑がピークになった頃、先輩が心配そうにそう言った。
僕は最低限先輩に負担がかからない程度に身を寄せた。
互いに向かい合う形。端から見れば抱き合っているようにも見える。

あ……

先輩の顔がすぐそこにある。
セックスの時などと違い、電車内で見る先輩の顔は、走行中不規則に差し込んでくる日差しの明暗に揺れて新鮮な印象を受ける。
目が合うと、先輩がくすっと微笑む。
思いがけずドキリとしてしまった。
密着し合った胸同士で、彼女にそれが聞こえていないかと一瞬心配してしまう。
恥ずかしくなって視線を降ろすと、先輩の胸の谷間が視界に飛び込んでくる。
先輩はそれに気づき、暑がるフリをしてただでさえ露出の激しい服の胸元を大胆に開いた。
僕は生唾を飲み込むが、慌てて先輩に耳打ちした。

「だ、ダメですって……!」
「だってぇ~暑いんだも~ん」

この人はもう!
と思うが、先輩の無邪気な笑みを見るとなぜか笑みがこみ上げてきてしまう。
とにかく、電車を降りる時に前屈みになっていないように気をつけないと。
市街に到着する車内アナウンスを聞きながら、僕は内心冷や汗をかいたのだった。

02-551 :<セーフティ・フレンド>:2009/07/05(日) 00:11:26 ID:AFASXfd0
「すっけべー」
「仕方ないじゃないですか……」

駅前を歩きながら、先輩は悪戯っぽくそう言った。
僕は手をひらひらと振って降参するよりない。
先輩は楽しげに笑うと、僕に尋ねた。

「んふふー、まあいいや、で、これからどうしよっか?」
「そうですね、先輩は映画とか興味あります?」
「今なんか面白そうなのやってんの?」
「ファンタジーもので、よさげなのが。ほら、あの最近CMやってる」
「ああ、あれね。じゃあまずそれ観よっか」

先輩は特に異を唱えるでもなく提案を受け入れてくれた。
僕は結構映画好きで、週末は映画館を利用していたので、おおよその時間割なども把握している。
今ならゆっくり歩いて行ってちょうど良い頃合いのはずだ。
映画館に着くと、チケットを買ってポップコーンと飲み物を持って劇場内に座る。
公開二週目だから、休日とはいえ席指定できないほどではない。
先輩と僕は中ほどの席に座った。

「先輩ってこの主演ってどうなんです?」
「ん? どうって?」
「いや、好みなのかなって」
「そりゃあ好みよー、だってハリウッド俳優なんだし」

パンフレットを見ながらそんな他愛もない話をする。
ふと周囲を見渡すと、やはりデートコースの定番として、カップルがかなりの数いた。

セックスフレンドで来てる人って、他にいるのかな……

僕はそんなことを考える。
映画の上映開始のベルが、僕の沈みそうな気持ちをかき消すように鳴り響いた。

02-552 :<セーフティ・フレンド>:2009/07/05(日) 00:11:58 ID:AFASXfd0
上映終了後、外へ出ると、暗闇に慣れた目に日光が眩しかった。
映画の非現実の世界から、現実の世界に戻ってくる感覚だ。

「んーアタシ映画館で映画観たの久しぶりだったよ」

先輩は座席に二時間座っていた身体を伸ばすように大きく伸びをする。

「で、どうでした?」
「ぶっちゃけまぁまぁだった」
「ですよね」

面白くなくはない内容の映画だった。
シナリオや演出はいまいちだが、金をかけてそうなCGや派手なアクションは見物という、最近のハリウッドにありがちな代物である。
時間が正午を回った頃だったので、僕らは場所をイタリア料理店に移してその話をした。
料理店に関しては先輩の方が詳しく、普段一人ではなかなか入れない雰囲気の店を選んでくれた。
店内は白く明るい色合いが清潔感のある、いかにもデートの人気スポットになっていそうな内装だ。
僕は慣れないせいか少し緊張したが、目の前の先輩は店の空気と合わさって一段と綺麗に見える。
例え先輩がただのセックスフレンドだったとしても、女の子とこういった店に入ることができた、
それだけでもここへ来た価値があったような気がした。

「でもさ」
「なんです?」

先輩は出てきたスパゲティをフォークでいじりながら呟いた。

「ああいうさ、何百年前からの運命で出会った、ってネタ、結構好きだな」
「そうなんですか?」
「だってさ、やっぱあそこまで必死になって守ってもらったり愛してるって言われるのって現実じゃありえないじゃん」
「まあ、そうなんでしょうかね……」
「いいなぁ、運命の人かぁ」

先輩は窓の外の雑踏を見つめた。
大勢の人が行き来している。
そんな光景を見ていると、これだけ大勢の人の中にたった一人だけ運命の人がいることなど、どうにも胡散臭く感じてしまう。
先輩もそれは同じだったのか、苦笑いしてスパゲティを口に運んだ。

「あはは、ま、いるワケないか、アタシみたいなんじゃ……」

ふと漏らした先輩の言葉が、なぜか僕には寂しげに聞こえた。
その後デザートまで僕らは食べるとようやく店を出た。

02-553 :<セーフティ・フレンド>:2009/07/05(日) 00:12:32 ID:AFASXfd0
「んじゃあ、そろそろアレ買いにいこっか」
「そ、そうですね」

先輩は先に立って歩き出した。
しかし、途中、かなり大きなドラッグストアなどがあるが、全て素通りしてしまう。

「せ、先輩?」

やっぱりコンドームを堂々と買うのには抵抗があるのだろうか。
僕は何なら自分が一人で買ってきてもいいと思って声をかけていた。
先輩が突然立ち止まる。

「あ、ここか」
「え?」

不意を突かれて僕も立ち止まる。
先輩の視線の先には、少し淫靡なネオンで彩られたショップがあった。
僕はその店がなんなのか一瞬分からず、先輩に尋ねる。

「なんですか? ここ」
「コンドーム専門店」

ぎょっとして再び店を凝視する。
よく見ると、店の棚に並んでいる品物は全てコンドームやローションなどの性交に関係する商品だった。

「アタシも入るのは初めてなんだけどね」

先輩は店の中に躊躇いもなく入っていった。
僕はさっきまでの勇気はどこへやら、恥ずかしさが先に立って挙動不審になりながら後を追うしかない。
どうやら先輩は最初からここへ来るつもりだったらしい。

02-554 :<セーフティ・フレンド>:2009/07/05(日) 00:13:06 ID:AFASXfd0
「うっへぇ~なんか凄い世界だねぇ」
「そ、そうっすね」

僕らは店内見渡す限りコンドームという普段お目にかかることはまずない光景に圧倒された。
……わ、店員さん女性じゃないか。
買いにくいんじゃないかな、と思ったが、店内にいる客はほとんど女性か、彼氏連れだった。
メインの客層は実は女性らしい。なるほど、むしろ女性にとっては薬局よりも買いやすいのかもしれない。

「うわ、冬間君、これ見てよ、キャンディーかと思ったらちゃんとゴムなんだって」
「……冗談みたいなデザインの結構ありますね」
「何個か買っとく?」
「あ、いや実用にそぐわないのは遠慮しときます」
「あらら、現実的だネ」

先輩は持ち前のオープンさでそれなりにここを楽しんでいるようだ。
しかし僕はどうにも恥ずかしさが抜けきれず、とにかく早めに必要なものを見つけようと思った。
ただ、先輩とわざわざ二人でやってきたのだし、相談して決めようとも考える。
何事も経験だ。それに、二人に直接関わることでもある。
僕は目を皿にして注意深くゴムを吟味していく。
ふと、あるものが目にとまった。
注意書きを読んでみる。

「先輩、これとかいいんじゃないですか?」
「ほえ? 普通のゴムっぽいけど」
「その…精子殺す薬入りの奴だから……」

僕は周囲を軽く見渡し、近くに人がいないのを確認し、小さな声で言った。

「な、中で外れたり破れたりしても大丈夫らしいです」
「あっ! そっか」

先輩ははっとした様子だった。
今が危険日である以上、うっかりでは済まされない。確実に避妊できることが重要だと思い至ったのだろう。

02-555 :<セーフティ・フレンド>:2009/07/05(日) 00:13:38 ID:AFASXfd0
「じゃあ、それ、多めで……」
「了解……」

僕はカゴの中にひょいひょいと箱を放り込んだ。
他にも、先輩は必要そうだからとローションなど諸々の商品をカゴに入れていく。
大方必要そうなものを揃えると、レジに向かう。

「あとでレシートみせてね、割り勘するから」
「いえ、いいですよ、これくらい」

僕らは店を出た。

「ホントにいいの? 結構かかったんじゃない?」
「今まで先輩にばっかり用意させてましたし、これくらいでちょうどですよ」
「そぉ? ありがとうね」

時刻はもう三時を過ぎようとしていた。
そろそろ帰路につくことにする。
幸い、帰りの下り電車はかなり空いていた。
席に座り、どこか心地よい疲労感に包まれる。
先輩と過ごした時間は、少なくとも僕にとってはとても楽しいものだった。
先輩がうつらうつらとまどろみながら、僕の肩に頭を預けてきた。
しばらくの間、僕らは無言で電車に揺られたのだった。

僕のアパートへ帰る途中、スーパーで夕飯の食材も買うことにした。
先輩の希望も聞き入れて、今日は肉じゃがを作ることにする。
夕日に照らされ、先輩の肌が褐色に染められる中、僕らは家に帰り着いた。

02-556 :<セーフティ・フレンド>:2009/07/05(日) 00:14:19 ID:AFASXfd0
「冬間くんマジ凄いよね~ 肉じゃがとかお袋の味作れちゃうんだもん」
「自炊してればこれくらい……」
「無理無理! 絶対無理だから」

夕飯が完成した頃、ちょうど六時半を回っていた。
先輩は相変わらず僕の料理をベタ褒めしてくれる。
純粋にそれは嬉しかったし、おいしそうに食べてくれるのは満足感が満たされる。
二人で向かい合うテーブルが、こんなにも楽しいのは久しぶりだ。
食後、ちょうどゴールデンタイムということもあって、テレビではバラエティ番組をやっていた。
僕は朝と夜の分の食器洗いを終え、先輩と一緒になんとなしにテレビを見ながらティーンらしい芸能の話をする。
それが終わると、先輩がおもむろに立ち上がった。

「ね、シャワー先に入っていいかな?」
「ど、どうぞ」
「サンキュ」

先輩は特にそれ以上思わせぶりなことも言わず、風呂場に入っていった。
そろそろ、夜が更けようとしていた。

<続く>

02-573 :<セーフティ・フレンド>:2009/07/15(水) 20:50:17 ID:9kgYFqF0
《第4話》

=前編=

しばらくすると、先輩はバスタオル一枚を身体に巻いただけの姿で僕の前に現れた。
僕が目を丸くしてしまうのに悪戯ぽく小さく笑い、ベッドに腰掛ける。
ふわりと清潔な風呂上がりの香りに混じって、先輩のフェロモンが僕の煩悩を刺激した。

「ふー、さっぱりしたぁ。今日あっちこっち歩いたもんねー」
「そ、そうですね」
「次、冬間くん入ってきなよ」
「は、はい」

僕は風呂場へ逃げるようにその場を去った。
これから何が起こるのか……おそらく予想通りなことに違いない。
当然といえば当然だ。先輩と僕の関係はそのためだけにある。
膨らむ期待感。
でも、心のどこかで僕は少し落胆のようなものを感じてもいた。
それが何なのか、熱いシャワーを身体に浴びせながら考えてみる。
ああ、そうだ。
僕らには恋人同士にあるような、甘い語らいや、裸を見ることへの恥じらいなどのプロセスが完全に欠落している。
最初から身体を求め、そうすることが当然となっている不自然さに、僕は不満を抱いているのだ。

(そうなんだよな……)

僕はその不満の意味を自分に対してもう隠せないと痛感した。
僕は先輩にセックスフレンド以上の感情を抱いているのだ。
セックスフレンドでは手に入らない、身体の快楽以外の特別な感情を求めている。
いつそうなったのかはハッキリとはしない。

初めて先輩とセックスしたとき?
校内放送の後についばむようにキスされたとき?
今日映画の話をごく普通の女の子のような表情でするのを見たとき?
帰りの電車の中、無防備に僕の肩に頭を預けてきたとき?

分からない。
漫画やドラマのように劇的なイベントがあって、ということではない。
いわゆる岡惚れというやつだ。
それに、セックスさせてくれるから好き、という感情もないわけではない。
むしろ、出発点はそこだったくらいだ。

……常識的に考えてかなり最低な恋の仕方だよな。

02-574 :<セーフティ・フレンド>:2009/07/15(水) 20:51:24 ID:9kgYFqF0
「はぁ……」

でも、だからといって僕にはどうしようもない。
先輩にとって僕はセックスフレンド以上の存在ではないからだ。
しかも、その関係でさえ先輩は僕に対して〝安全〟であることを条件にしている。
八方塞がりなのだ。
それが、もどかしくてたまらない。
でも、今は考えていても始まらない、か……。
シャワーを止めると、なんとか下着の盛り上がりが気にならない程度まで自分の昂ぶりを抑えてから彼女の待つ部屋へと向かう。


「あれ……?」

僕は部屋が薄暗いことに気づいた。
一瞬先輩はもう疲れて寝てしまったのかと思ったが、そうではない。
ほのかなベッドランプの明かりに照らされた人影があった。

「んふ……」

すっと静かに組んでいた足を解き、立ち上がる人影。
それが先輩であることを僕はしばし理解できなかった。

「どーう? こういうオトナっぽいの」

僕が風呂にいる間に身につけたのだろう、先輩は高級そうな黒いセクシーランジェリーとガーターベルト姿になっていた。
紅いルージュが引いてあることから、化粧もやり直したらしい。
抜群のプロポーションを引き立てるその姿は、十代の持てる色気ではない。
照明を抑えめにしているのも、彼女なりの一種の演出なのだろう。
色気の出し方を知り尽くした、先輩ならではの余裕に圧倒される。
フェロモンが漂ってきそうな光景に、僕は目のやり場に困る。

「んー……キライ? こういうの」
「あっ!? いえ、その、びっくりしちゃって……」

僕は慌ててそう言い、ややあって少し躊躇いがちに答えることにした。

「凄く、綺麗です。先輩」
「んふふ……ありがと」

妖艶に紅い唇に笑みを宿す先輩。
昼に見た日差しに映える先輩がヒマワリなら、今の先輩は花瓶に妖しく咲く薔薇のようだ。
女の子はこうしたいくつもの表情を使い分けることができることに、僕はまず驚く。

「せっかく二人きりなんだし、学校じゃできない趣向を……ってね」

先輩が棒立ちになっている僕にそっと身を寄せてくる。
甘い香りと、先輩の温もりが身体を包むように伝わってくる。
特に、密着した先輩の豊かな胸の感触は感動的でさえある。

02-575 :<セーフティ・フレンド>:2009/07/15(水) 20:52:07 ID:9kgYFqF0
「ん……」

どちらからでもなく、唇を重ねた。
先輩の舌が僕の口内へ侵入してくるのを、僕は必死で自分の舌で絡め取るように受け入れる。

「ちゅ……ちゅく……くちゃ……」

貪るような、快楽を高めるためのキスだ。
男なんて勝手なもので、さっきまでの陰鬱な気分など消し飛んでしまう。
今はただ、先輩が求めてくれているのが嬉しい。
僕は力強く先輩を抱きしめ、今度はこちらの舌を先輩の口へと滑り込ませる。

「んはぁ……」

先輩はキスに集中しながら僕の股間に両手を這わせていた。
その白魚のような指先が、僕の硬くなった男根を下着の上からそっと包み込む。
そのままゆっくりとしごかれると、まるで快楽が蓄積していくかのように僕のものは硬度を増していく。

「ぷは……」

キスに疲れ、唇を放すと、銀色の唾液の橋が二人の間にかかった。
先輩は挑戦的に微笑むと、僕をベッドに誘った。
僕はもう恥ずかしさなど気にならず、シャツとパンツを脱ぎ去って先輩との一戦に備える。
そして、ベッドに横になると、先輩は突然僕の上に跨り、そっと耳打ちしてきた。

「ね……シックスナインって知ってる?」
「知識程度には……」
「じゃあだいじょぶだね」

先輩は身体の方向を変え、僕の股間に顔をうずめる。

「ちゅっ」
「あうっ!?」

先輩が僕の先端にキスした瞬間、電流が流れるように身体が脈打った。

「あれれー、ダメだよ、フェラだけでイっちゃうなんて」
「だ、だいじょうぶです!」

僕は精一杯虚勢を張った。

「ね、私にも、して……」

先輩は腰を落として自分への愛撫を求めた。
僕はランジェリーの上から先輩の秘裂をなぞるように愛撫を始める。

「んっ……んっ……んっ……」

先輩は口にペニスを含み、本格的にフェラチオを始める。

02-576 :<セーフティ・フレンド>:2009/07/15(水) 20:52:42 ID:9kgYFqF0
「あ……くぅ……」

僕は初めての生フェラの感触に、思わず達してしまいそうになる。
しかし、なんとか歯を食いしばってそれに耐え、こちらからも反撃とばかりに先輩の割れ目に鼻先を埋めた。
ランジェリーが唾液と愛液でぐっしょりとなるまで、僕は息もつかさずにクンニを続けた。

「ああんっ!」

先輩も感じてきたのか、フェラのストロークが弱まった。
僕は先輩のランジェリーが紐パンであることに気づき、素早くほどいてしまうことにする。

「先輩、こんな濡れてる」
「やぁ……」
「それに、形もカワイイし」

間近で見る先輩の秘所は、薄すぎず濃すぎず丁寧に手入れされたアンダーヘアと、綺麗な桃色の粘膜をしている。
確かアソコの色は経験人数との因果関係はないらしいので、けして不自然というわけではない。
それでもこの綺麗さには思わず処女のようだと思ってしまう。
……処女のアソコなんて見たことないのはこの際置いておく。

「ちょ、ちょっともう、おだてても何も出ないよー?」

アソコのことを綺麗と表現するものなのかは分からないが、褒められるのに先輩はどうやらまんざらでもないようだ。
純粋な感想を述べたまでだったけど、考えてみればこうしてアンダーヘアとか整えてるのは見られた時に備えているわけだから、
日頃の努力を評価されて嬉しいのかもしれない。
そんな先輩のことが、ちょっぴりいじらしく感じる。

「……ちゅっ」
「んぁあ!」

僕は先輩のアソコにそっと口を付ける。
先輩は僕の舌先が自分の大事な場所に侵入してくるのを感じたのか、身体を敏感に反応させる。
先輩はクンニというか、舌先で愛撫されるのが基本的に好きなようだ。
前にそのことについて〝だからセックスフレンドに重要なのは顔とかテクより清潔感!〟とか言ってたっけ。
先輩が僕の愛撫を受け入れてくれているということは、どうやら最低限その要項を満たしてはいるらしい。


02-577 :<セーフティ・フレンド>:2009/07/15(水) 20:53:16 ID:9kgYFqF0
「んぅ……あぁ……い、いい……」

先輩の甘い声を聞いていると、僕はより入念に、より奥まで舌を侵入させていく。
ヒクヒクと律動する先輩の膣壁と、溢れてくる愛液。

「ねえ……アタシもう……」

先輩が腰を浮かせシックスナインの姿勢から普通に向き合う形に戻る。
潤んだ瞳が僕を捉えた。

「ねえ……ちょうだい……」

童貞の頃の僕なら、それだけで射精していたかもしれない妖艶な表情だった。
これが昼間に無邪気に笑っていた先輩と同一人物なのかと疑いたくなるような光景。
先輩はうっとりとした顔でクスっと笑った。
僕はどんな顔をしていたのだろう。
きっと、目を丸くして先輩を凝視していたに違いない。
先輩はそっと目を伏せ、乳房を覆っていたランジェリーのホックを外す。
重力だけでなく、二つの膨らみが持っていた弾力も加わってブラがベッドに落ちていく。
先輩はガーターベルトのみの姿になっていた。
薄暗い照明の中、先輩の白い肌が艶めかしく汗に光っている。

「……綺麗だ」

僕は自分に跨る一人の女性に、率直にそう口にしていた。

「え?」

先輩は一瞬素に戻り、きょとんとした表情を浮かべる。
その顔だけは、昼間に見せていた無垢な少女の顔そのものだ。

「先輩の裸、芸術品みたいだよ」
「ちょ、ちょっと、もー……」

先輩は顔をぽっと赤くした。
そして、照れ隠しのように僕に抱きついてくる。
目と鼻の先ほどの距離に先輩の顔がくる。

「冬間君っていきなりそういうこと言うんだもん、ズルいよー」
「そ、そうかな?」

ちゅ、と柔らかな感触が頬に触れる。

「……でも、ありがと、嬉しいよ」
「先輩……」

今度は僕の方が頬が赤くなってしまう。
これでおあいこだね、とでも言いたげに先輩は笑うと、僕の股間に手を添えた。

02-578 :<セーフティ・フレンド>:2009/07/15(水) 20:54:26 ID:9kgYFqF0
「あ、あの……」
「ん?」
「ご、ゴム着けなきゃ」
「あはは」

先輩は自分の膣口にあてがったペニスを数度しごいてみせた。

「あっ」

僕はそこにきてようやく、ペニスにコンドームが被さっていることに気づいた。
い、いつの間に……
ちょっと考えると、すぐに答えは分かった。
僕がクンニに必死になっている時だろう。
まだまだ、先輩にはその辺りかなわないな……
先輩は〝してやったり〟といった顔で僕を見下ろしている。
やっぱり、先輩は先輩なのだと、その顔を見てどこか安心してしまう。

「あ……ん……」

先輩は騎乗位の状態で腰を降ろしていく。
熱い膣の感触が、ゴム越しにも伝わってくる。
やがて、先輩の中に僕の男根は全て包まれてしまった。
しばらく先輩も僕も、交わりの余韻に浸る。
十分に愛撫しあった甲斐あって、インサートの快感は痺れるように身体全体に伝わっていく。

「動くね……」
「は、はい」

先輩が上になるのはそういえば初めてだ。
セクシーランジェリーといい、今日の先輩は妙にサービス精神旺盛だと思った。

02-579 :<セーフティ・フレンド>:2009/07/15(水) 20:55:08 ID:9kgYFqF0
「んふふ……今日はいっぱい世話になっちゃったから、アタシがサービスしちゃう」

なるほどね……と僕は納得する。
先輩なりに泊めてもらっているのに気を遣っているのか。
しかし、それはつまり貸し借りなしの関係であると宣言されているように感じてしまうのは僕のひねくれた所なのだろうか。

「あっ あっ あっ はっ あっ……」

先輩が腰を振り始めた。
ベッドが小刻みに軋む音を立て、先輩の美巨乳がゆさゆさと上下に揺れる。
僕はその押し寄せてくる快楽の波に流されまいと必死になって踏ん張り、同時に先輩の胸元へ手を伸ばす。

「あぁんっ!?」

その乳首を指先でいじりながら、一緒になって快楽を与え合う。

「んんっ! あはっ!」

先輩の腰遣いが激しさを増し、結合部からは愛液の粘着質な音が断続的に聞こえてくる。
生々しい男女の交わり。
でも、珠のような汗をかきながら僕の上で弾む先輩の姿は、どこか優美でさえある。

「あ……せ、先輩」
「あんっ! イクの? イクんだ?」

膣内で僕のものが限界まで膨張しているのに気づいたのか、先輩が自分の乳房を揉みながら叫ぶ。

「あ、あぅ……も、もうダメです」
「いいよ……アタシももういけそうだから……」

先輩はそう言って僕に軽く唇を重ねた。
そして、それを合図に最後のスパートをかけ始める。

「はっ! はっ! ああっ! いいっ! んぁっ!」

女性上位のこの体位だと、まるでこちらが犯されているかのような激しい行為だ。
ベッドが悲鳴を上げるようにけたたましい軋み音を立てている。
僕は搾り取られるような先輩の膣内の締め付けと、繰り返されるシゴキに、
溜まりに溜まった一日の欲望の発射態勢に入ってしまう。
先輩が達するまではと歯を食いしばり、シーツを握りしめて最後の時まで耐える。
刹那、先輩が大きく身体を仰け反らせ、膣が僕のものをくわえ込むように収縮した。

02-580 :<セーフティ・フレンド>:2009/07/15(水) 20:55:49 ID:9kgYFqF0
「いっくぅーーーーっ!!」
「うあぁあっ!!」

暴発するように僕は先輩の膣内に精を放っていた。
まな板の上の魚のようにビクビクと身体を波打たせ、子宮口めがけて精液を叩きつける。
先輩は精液が膣奥で爆ぜる度に身体を震わせる。
僕は無意識にそのツンと堅くなった淡い色合いの乳首を指先で転がしていた。
先輩も絶頂の中で与えられる刺激に、歓喜の声を上げる。
思考は鈍り、頭の中が真っ白になる。
そして、ただただ、満足感だけが支配する。
こんな純粋な快楽は、きっと他にないのではないかとさえ思える一瞬だった。

「あ……あぁ……」

先輩はしばらくそのまま硬直したかのようにそれを受け入れ、やがて脱力して僕の上に倒れこんできた。

「はぁ……はぁ……」
「先輩」
「ん?」

先輩の頬に軽く唇を触れる。
先輩は〝あはは〟とくすぐったそうに笑って僕の胸元に頭を預ける。
しばらく荒い息をつきながら、僕らは余韻を楽しんだのだった。




02-581 :<セーフティ・フレンド>:2009/07/15(水) 20:56:22 ID:9kgYFqF0
スズメのさえずる音がベランダから聞こえてくる。
朝が来たようだ。
僕は普段の生活習慣からか、きっちりと朝六時に目が覚めていた。
今日も良い天気だ。
カーテンを開けることにしよう、と思ったが、ふと手を止める。
ああそうだ、と僕はベッドを振り返った。

「すぅ……すぅ……」

先輩が無防備な寝顔で寝息を立てている。
いきなり日光を入れて起こしてはいけないな。
僕はそっと毛布を先輩にかけ直してやる。
毛布の下には、一糸纏わぬ先輩の裸身があるのを思うと、またムクムクと欲望が渦巻いてきてしまいそうだ。
僕は邪念を振り払い、とりあえず朝することを一通り済ませておこうかと準備を始めることにした。

「ふっ! ふっ!」

僕は近所のトリムコースもある公園へ1キロほどの距離を走り、背負っていた竹刀入れから木刀を取り出して素振りをする。
こういう自主トレは朝靄の中にするのが一番良い。
空気が澄んでいるし、人気もないから集中しやすい。
僕は祖父の道場で中学まで剣道・柔道・空手エトセトラとシゴキ倒されていた。
それが嫌で都会の学校に進学したわけだけど、不思議なものでライフワークとしては優れているので今でも続けている。
ちなみに今の学校では普通に帰宅部だ。
僕が専門にしているのは結局、居合いと合気道なのだが、それを扱う部活はさすがになかった。
まあ、僕は進学希望なので、あったところで入部していたかは微妙だけれど。

「やあ、今日も精が出るね」
「あ、おはようございます」

顔見知りになってしまった非番の警察の人がジョギングがてらに挨拶してくれる。
じいちゃんは元日本陸軍の将校だったし、父さんは自衛官という軍人の家系に育ったせいか、
好んでいるわけでもないのに警察・軍関係の人に好かれてしまうのが悩みの種だ。
ただまあ、父さんに関しては自衛隊に入っても仕事は会計事務をやっている上に、
性格も温厚そのものなので、どちらかといえば僕に近い人だけど。
はぁ、父さん元気にしてるかな……
僕が都会に出たいと相談したとき、真っ先に応援してくれたのは父さんだった。

「はっ! ふっ! くっ……いかん、昨日の疲れが」

ノルマを越えたあたりで切り上げることにする。
情けないことだけど、腰が痛かった……

693 :<セーフティ・フレンド>:2009/08/21(金) 12:09:44 ID:hGQB/8oG
第4話
=後編=

その日は先輩と一日部屋にいて過ごした。

「やりぃ! みてみてーっ! 新記録!」

先輩は意外とゲームとかやるほうらしく、女の子でも楽しめそうなのを中心に僕と競争したり、
自分ルールでやってみたりとそれなりにエンジョイしているようだった。
時折近所のコンビニへお菓子やジュースを買いに行ったり、ゲームショップで先輩とやれそうなゲームを探しに行ったりする。
インドアな休日だが、前の日同様にやはり先輩と一緒にいると楽しい。

「うわぁ!? キングボンビーがっ」
「きゃはははっ! 物件売られまくりじゃん」

なんというか、ゲームって男女でやれるものなんだな……
いつも一人でやってるんじゃ分からない感覚だ。
楽しい時間は過ぎていくのが早く感じるというけど、まさにその通りで、気がつけば夕食後だった。

「ふー、なんか冬間くんの所にいると健康的な食生活が送れそうだよねー」

ざる蕎麦に冷や奴くらいでそんな評価をもらえるのは個人的には意外だが、先輩は大真面目なようだった。

「先輩相手だと作り甲斐がありますよ」
「あはは、普段どんだけ悪いもん食ってるんだって感じで?」
「そこまで言ってませんよ」

先輩と話していると時間を忘れてしまう。
でも、先輩もあと少しすれば自分の家に帰ってしまうだろう。
純粋に、寂しかった。また明日、学校で会うことができるはずなのにだ。

「そういえばさー」
「はい?」
「今日昼間一回もエッチしなかったね」
「ま、まあ、そうでしたね」
「……ごめんね」
「え? どうして謝るんです?」
「アタシが危険日だからって口煩く言ったから遠慮させちゃったかな、って」
「そんなことないですよ」
「そう?」
「ただちょっとゲーム盛り上がり過ぎちゃいましたね」
「あはは、だって人生ゲームの期間長くしすぎだもん」
「先輩だって惑星クラスの塊作るとか言って聞かなかったじゃないですか」
「まーまー、細かいことは言いっこなしで……」

先輩も残り少ない時間を気にしだしたのか、部屋の掛け時計をチラ見した。
僕は今にも席を立ってしまいそうな雰囲気を引き留めたい一心で、平静を装いながら先輩に麦茶をついで出した。
先輩は〝ありがと〟とそのコップを手にする。
先輩のネイルの手入れされた指先が微かに触れる。
わけもなくそのまま握ってしまいたい欲求を振り払い、僕は手を引っ込めた。


694 :<セーフティ・フレンド>:2009/08/21(金) 12:10:26 ID:hGQB/8oG
「冬間くん、優しいよね」
「どうしたんですか麦茶くらいで」

先輩は頬杖をついて僕をじっと見つめる。

「ううん、そうじゃなくて、アタシにエッチばっかり求めないなー、って」
「ま、まあ、エッチだけが楽しくて先輩といるわけじゃないですしね」
「普通はさ……エッチだけが楽しいからアタシといるって感じなんだけどな」

最後の言葉は自分のコップに麦茶をついでいて聞こえなかったフリをした。
過去の男の話を聞きたくないのと同時に、先輩の過去を知りたい心が相反していたからだった。
僕は強引に話を変えた。

「でも先輩」
「んー?」
「ああいう店が初めてって、今までゴムはどこで買ってたんです?」

苦し紛れで、しかも少し下世話な内容を尋ねてしまったことに軽く後悔するが、もう遅い。
だが、先輩はオープンな性格からか、不快な表情を浮かべることもなく応じてくれる。

「えーと、薬局とか人気のないとこにある自販機とかだよ。ああいう店って一人じゃ入る意味もないしね」
「でも彼氏とか僕みたいな友達いたんじゃ?」

ああ、でも結局聞いてしまった。
僕は嫉妬しているのかもしれない。先輩の身体を自分以外の男が堪能していた事実に。

「彼氏は〝生でするのが愛だ!〟って奴だったし、セフレはビッチ相手にゴム着ける必要なんてないって奴ばっかだったから……」
「ひ、ひどいですねそれ……」

そう絞り出したものの、僕は内心煮えくりかえる思いだった。
そして、自分に許されることのない行為をそんな連中が当たり前のようにしていたことに、たまらない不公平感を抱いてしまう。
だが、そんなことを考える時点で自分もその下劣な連中の仲間なのだと気づき、先輩から思わず目を反らしてしまった。

「あはは、まー仕方ないかー、ビッチなのは当たってるしねぇ」

先輩は自嘲の笑みを浮かべて麦茶を飲み干した。
どこか先輩自身触れられたくない様子だった。
僕はそれ以上何も言えず、先輩の次の言葉を待った。

695 :<セーフティ・フレンド>:2009/08/21(金) 12:11:10 ID:hGQB/8oG
「……週末はありがと、じゃあ、アタシこの辺で帰るね」
「あ、はい」

先輩はあらかじめまとめられていたあの大荷物を〝よっこらしょ〟と重そうに手にした。
僕は反射的にその荷物を抱えていた。

「わ、どうしたの?」

先輩が目を丸くする。
僕は先輩の荷物をひったくるような形になったが、大荷物を抱えて慌てて答える。

「これ、重いですよね? 家、遠いんなら送りますよ」
「え、でも……」

言ってから気づいたが、いくら相手が先輩とはいえ、女の子を家まで送るということはその住所を知られるということだ。
人によっては嫌がるかもしれない。
先輩は僕と同じで一人暮らしだと言っていたから、男と一緒に帰ってきたと家族にバレる心配はないだろうけど……
先輩は案の定、少し困った様子でしばし考えている。

「あ、その……すいません、ちょっと差し出がましいことだったかも……」

僕は拒絶されるのが怖くなり、荷物をそっと先輩に返そうとした。
しかし、先輩はその荷物を受け取らず、苦笑いを浮かべた。

「あはは、じゃあ……ご厚意に甘えて頼もうかな?」
「え?」

先輩は遠慮がちにだが、そう答えてくれた。



「先輩の家ってここから遠いんですか?」

僕と先輩は時間的にはそろそろ最後になりそうなバスを、近所のバス停で待っていた。

「そうだなぁ、バスで二十分ってトコかな。そこからまた十分くらい歩くから」
「そうですか」

となればそこまで荷物持ちをする意味はないような気がしてきた。
僕はちらりとベンチに座って誰かとメールしている先輩を見る。
少なからず、僕と一緒にいたいと思ってくれているのだろうか。
そんな楽観的な感情を抱いてしまう。

「ん? どしたの?」
「あ、いえ……」
「メールの相手は女の子の友達だよ。嫉妬しない嫉妬しない」
「そ、そういうわけじゃあ……」

そんな会話をしていると、バスが滑り込んでくる音がした。
僕と先輩はバスに乗ると、一番後ろの席に腰を降ろす。
この時間となるとバスも人影はまばらだ。
先輩は降りる場所を僕に教えてくれた。
地元出身ではないから、そこまでこの周辺の地理に詳しいわけではないが、
先輩が住んでいるのは典型的な住宅街の一角のようだった。
流れていく街灯を眺めていると、二十分ほどで確かにその場所に到着した。

696 :<セーフティ・フレンド>:2009/08/21(金) 12:11:59 ID:hGQB/8oG
「どっちの方角なんです?」
「こっちこっち」

先輩は僕の先に立って歩き出した。
周囲は街灯が整備されているのでそこまで暗いわけではないが、人気がない公園やコンビニ以外に照明のない通りといった感じで、
住宅街特有の不安さのある道のりだった。
先輩はこれが怖かったから僕を連れてきたのかもしれない。
それでも、必要とされているのは悪い気はしなかった。

「ここなんだけど」

しばらく歩いていると、先輩は古くもなく新しくもない六階建てのビルの前で立ち止まった。

「ここの六階……なんだけどさ」

先輩はキョロキョロと所在なさげに周囲を見渡しながらそう告げる。
この辺りは近くに24時間営業の店もないようで、見通しはかなり悪い。
先輩、暗い場所って苦手なのかな?
僕はそんなことを考えながら先輩を見つめた。

「荷物持って上がりましょうか?」

僕は意地悪い表情で言った。
先輩は一瞬きょとんとした顔をしたが、すぐにいつもの調子で返してきた。

「あはは……送り狼?」
「バレました?」
「ウッソばっか! 冬間くんそこまでがっついてないよ」

それくらいさすがにお見通しらしい。
しかし、先輩はその時微かに不安げな表情をよぎらせた。

「ごめんね、夜じゃなかったらよかったんだけど……」

その言葉の意味を聞き返す間もなく、先輩はビルの中へと入っていく。
荷物を持った僕が後を追うと、先輩はエレベーターの中で待っていた。
先輩はほっと一息をつく。
二日を僕の家で過ごした疲労からくるため息というより、
それはどこか不安から解放されたような、どこか負の感情からきた安堵のように聞こえたのが気にかかる。

「冬間くん、週末はありがとね」
「いえいえ、こんくらいどうってことないですよ」
「えへへ、ま、明日からはいつもの準備室にいるから、暇だったら寄っていいよ」

先輩がそんなことを話していると、エレベーターが六階に着いた。
エレベーターからは最低限の蛍光灯の灯りに照らされた廊下の奥が見える。
僕らはエレベーターを降り、突き当たりにある先輩の部屋へ向かう。
その時、僕は背後に何か気配を感じた。
何気なくひょいと後ろを見やる。
他の住人だろうか。エレベーターの昇降口のすぐ隣の階段から黒い影がぬっと現れたような感覚。
階段を上がってきた気配はない。つまり、その影の人物は最初からそこにいたのだ。
この夜中に、非常灯くらいしか灯りのない階段の影で?
僕はその思考に薄ら寒い疑問を抱くと、今度ははっとしてその人物の方へ振り向いた。

697 :<セーフティ・フレンド>:2009/08/21(金) 12:12:36 ID:hGQB/8oG
「ハァー……ハァー……」

耳障りな荒い息の音。
そこにいたのは黒いコートを着た長身の男だった。
耳や唇には悪趣味なピアスを無数に着け、暗く落ちくぼんだ眼孔の奥には瞳の光が見えない。
ブーツの音がドコドコとコンクリの床を不気味に鳴らしながら、男はこちらへ歩んでくる。
そのただならぬ気配に、先輩も振り向く。
同時に、先輩が今まで聞いたことのない声にならない悲鳴を上げた。

「ひっ!?」

チャリンと取り出していたカギを落とす音が響く。
先輩はいつもの明るい顔を絶やさないその端正な顔が青ざめ、歯をカチカチと鳴らしている。
とりあえず先輩の友人という線はなさそうだ。

「あなた誰ですか? ちょっと止まってください」

僕は咄嗟にそう口にする。
男は三メートルほどの間合いで立ち止まるが、意味不明な呟きをしきりに繰り返して返事らしいものは返ってこない。

「……俺のオンナのくせにまた違う男に股開いてやがるのか……俺のオンナのくせに……」

僕は思わず眉を顰めた。相手が正気ではない存在なのだと直感する。
酔っている様子はない。それにしては顔が紅潮していないし足取りがおぼつかないというわけでもない。
こういう人間の話をどこかで聞いた、そう、朝の自主トレのときに一緒にすることもある警察の人の話だ……

「あっ、アタシがいつアンタの彼女になんかなったのよ! 昔無理矢理犯そうとしただけじゃないっ!?」

僕が思考を巡らせていると、先輩が虚勢を張るように叫んでいた。
その言葉の内容に衝撃を受けるが、今は僕が冷静でいなければならないと持ち直す。

698 :<セーフティ・フレンド>:2009/08/21(金) 12:13:58 ID:hGQB/8oG
「……俺の思い通りにならなかったオンナはいねえ……奈月を調教できれば俺は完璧な男になれる……」

男はそれを意に介した様子もなく、ひたすらに意味不明な言葉を呟いている。
とにかくこれはただ事じゃあないぞ。
僕は震える先輩にそっと耳打ちする。

「先輩、カギを拾って部屋に入って中から施錠してください。それから警察を呼んで」
「え、で、でもそれじゃ冬間くんが……」
「いいから早く」

目の前の男は推測だがおそらく麻薬中毒者だ。
さっきの警察の人の話を思い出す。
この男の言動から察するに、おそらくLSDやメタンフェタミン系の幻覚作用の強いタイプの常習者だ。
アメリカなんかだと凶悪犯罪の大半がこの手の中毒者なのだと警察の人は言っていた。
常人には予測できない行動に出るから恐ろしいとも。

「ゆっくり、あいつを刺激しないように下がってください」

僕は先輩にそう指示する。
正直、僕も怖い。そんな気が強い方じゃない。
でも、先輩に危害が及ぶのだけは避けなければならない。
先輩は……僕にとって今一番大切な女性だから。

「ごめん、ごめんね……」

先輩は目尻に涙を浮かべてカギを拾い、僕から離れた。

「……また逃げるのか……従順じゃねえ奴隷だ……」

男がポケットに突っ込んでいた手を無造作に出した。
そこには一見するとワインのコルク抜きのようなものが握られている。
僕はその瞬間に全身の毛が総毛立つ。
じいちゃんから世界の近接武器について長々と講釈をされたときに教わったものの中にそっくりなものがあったからだ。
プッシュダガーと呼ばれる刺突ナイフだ。暗いとはいえ刃が光りを反射していないから、おそらく軍用のものだろう。
こいつ何でこの日本でこんなもの持ってるんだ!?

699 :<セーフティ・フレンド>:2009/08/21(金) 12:14:35 ID:hGQB/8oG
「……少し躾る必要があるなぁ……」

ゆらり、と陽炎のように男が揺らめいた。
それが刺突姿勢に入ったのだと気づくのにそう時間はかからない。
しかし、それよりも重大なのはその切っ先が自分に向いていないことだ。

「先輩っ!」

僕は叫んぶと同時に先輩へ向かう道を即座に阻止した。
肩に提げていた先輩の大荷物を入れたバッグを男に押し当てる。
ブツリ、とナイフがバッグを深く突き刺す鈍い音が聞こえる。
男が妨害されたことに激昂し、正気ではない怒号を上げた。

「ウオオオォォォ!」

それほど筋肉質には見えないにも関わらず、男は凄まじい力で僕をはね飛ばした。
重度のジャンキーは銃で撃たれても痛みを感じないという。
それと同時に筋肉のリミッターが外れるので骨折するほどの力も出してくる。

「嫌ぁーっ!? 冬間くんっ!」

先輩が泣き叫んでいる。
僕は頭からぬめった液体が流れ出てくるのを感じていた。
それが血だと気づくが、頭の怪我は傷が小さくとも大量に出血するから怪我そのものはこの際問題ではない。
じいちゃんなんて戦時中に弾丸がかすめたことがあるくらいだ。
僕はまだ届く位置にあった男の足を思い切り掴んだ。
男は先輩に集中していたせいか、思ったよりも簡単に体勢を崩す。
しかし、すぐさま片足で僕の顔を思い切り蹴りこんでくる。
今度は鼻血が吹き出るが、絶対に足は放さない。


700 :<セーフティ・フレンド>:2009/08/21(金) 12:15:10 ID:hGQB/8oG
「先輩早くっ!」

先輩はしきりに僕に謝りながら、ドアのカギを開ける音が聞こえる。
やがてドアの閉まる音と、内カギとチェーンロックをかける音も確認できた。

「奈月ぃぃぃ!!」

僕の手に鈍痛が走った。
ナイフで払われたようだ。思わず手を放してしまう。

「開けろぉーっ!」

男は僕には構わずドアへと向かう。
これは僕にとっては幸いだった。
視界内には〝非常用〟と書かれた消火器が置いてある。ビルには必須の備品だ。
僕よろめきながらも立ち上がり、それを手にする。
プッシュダガーは刺すためのナイフだからか、払われた傷はそう深くはない。

「奈月、奈月ぃーーーーっ!!」
「やっかましい!」

僕は血だらけのまま男に向かって消火器を叩きつけていた。

757 :<セーフティ・フレンド>:2009/09/20(日) 16:58:24 ID:YPy/NSR5
第5話

「委員長、怪我大丈夫か?」
「ドジだなぁ、勉強ばっかしてるからだよ」

あれから三日ほどが過ぎていた。
僕はようやく学校に復帰できることになり、頭と手に包帯を巻いた状態で席についている。
周囲にはアパートで階段から転んで、しかも踊り場に運悪く割れたビンがあったんで手を切ってしまったと説明している。
当然、実際はあの警察沙汰だったので取り調べはあった。
先輩はできるだけ穏便に済ませたいようだったので、その旨を伝えると保護者の責任だと言われ、僕のおじいちゃんを出すと、
じいちゃんは〝おなごを守ったのなら武士の本分、語るに及ばん〟とか言って一切を取り仕切ってくれた。
常日頃から勝ったのなら問題なし、が口癖だっただけはある。
ただあの様子では過保護なところのあるお父さんへは連絡がいかないだろうなと思うと少し心苦しい。
何はともあれ、じいちゃんのお陰もあって久しぶりの学校は、事件のことなど何も感じさせないほどにすんなりと僕を受け入れてくれた。

(放課後先輩に会いに行こう……)

僕は休み時間にそんなことを考えながら友達のノートを写していた。
先輩とは取り調べの時に少し会ったきりだ。
しきりに僕に謝っていた。怪我をさせてしまったと思っているんだろう。
僕は好きでやったことだし、何より先輩が無事で良かったという思いだけど、結局ちゃんと二人で話す機会もなかった。
今日の放課後あたりちょうどいいだろう。
と、携帯の振動を感じて僕は画面を開いた。
先輩からのメールだった。

(弁当持ってきてるかだって?)

思わぬ内容に少し驚きながらも、僕は購買で何か買うつもりだと返信する。

(買わないで昼休みに屋上に来て?)

今までにないパターンの先輩の行動に面食らいながらも、僕は断る理由もなくそうすることにした。
昼休み、僕は屋上へと向かう。
ちなみに学園漫画のようにこの学校の屋上は生徒に開放なんてされていないため、少しだけ人目を忍ぶ必要があった。
カギそのものは内側から開くので、僕は音に気をつけて屋上へのドアを開けた。
初めて出る学校の屋上は、なかなかの見晴らしだった。
丘の上に立っているので、周囲にここより高い建物はない。

「冬間くん?」

不意に頭上から先輩の声が降ってきた。
見上げると、貯水槽のある屋根に先輩がいた。

「せ、先輩」

一瞬、快晴の天気に目が慣れなかったが、この位置からだと先輩の下着が丸見えだった。
……今日の下着は白、だけどセクシーな紐パンか。

758 :<セーフティ・フレンド>:2009/09/20(日) 16:59:00 ID:YPy/NSR5
「エッチ!」
「……面目ない」

ハシゴを登ると、先輩は別段怒った様子もなく僕を叱った。
同時に良かったと思った。
いつもの調子に戻っているようだ。
と、僕が近づくと不安そうに表情を曇らせた。

「怪我、だいじょぶ?」

僕の包帯姿はどうしても気になるのだろう。
僕は努めて平静を装う。

「大丈夫ですよ。周りだって転んだ怪我だって疑ってないくらいですし」
「ホント?」

実際は頭も手も数針縫うくらいの怪我だったけれど、これ以上先輩を不安にさせたくはなかった。
すかさず話題を切り替える。

「で、どうしたんですかわざわざ屋上まで」
「ん、それなんだけど……」

先輩はちらりと自分の鞄が置かれている方を見やった。
そこには鞄の隣になんだか大きな袋が置かれている。

「色々迷惑かけちゃったお礼っていうか……」

先輩は僕を座るように促すと、自分も僕の隣に座って袋を取り上げた。
中から取りだしたのは重箱。
学校には不釣り合いな代物だった。

「ほれ、この通り……」
「な、何ですかこりゃあ?」

僕は思わず素っ頓狂な声を上げていた。
学校に不釣り合いも不釣り合い、重箱の中身は鰻重だったのだ。
どっからこんなものを持ってきたんだろう?

759 :<セーフティ・フレンド>:2009/09/20(日) 16:59:32 ID:YPy/NSR5
「ああ、これ? 学校の裏口に配達して欲しいって注文したから」
「そ、そうなんすか……」

どこからツッこめばいいのだろう。
頭を抱える僕に、先輩は不安げに尋ねた。

「……ひょっとして、ウナギ嫌い?」
「そんなことはないですけど……」
「良かった!」

ぱっと先輩が手を合わせて笑う。
その指にはなぜかバンドエイドがいくつも巻かれていた。

(手料理、失敗したんだな……)

先輩の自炊能力の低さは知っている。
先輩は先輩なりに、僕へのお詫びを考えてくれたのだ。
きっと、出前は最終手段だったのだろう。
そう思うと、先輩が何ともいじらしく思えてくるのだから不思議だ。

「……学校の昼飯で鰻重なんて前代未聞ですね」
「まーねー」

何ともシュールな光景だったが、僕らはかなり豪勢な昼食をとることにした。

「あ、これって商店街の老舗のやつじゃないですか?」
「そーそー、さすがだね冬間くん」
「……割り箸に店の名前書いてますよ」

しばらく二人とも他愛もない会話を交わして過ごす。

「ごちそうさまでした」

僕は箸を置いて深々と頭を下げる。
先輩はそれに笑って重箱を片付けた。

「先輩」
「んー?」
「元気そうで良かったです」
「……そう、だね」

先輩が少し複雑そうな顔をした。

「聞かないの?」
「え? 何をです」
「あの男が誰だったのかとか……」
「昨日の今日でそんなこと聞きませんよ」

先輩が苦笑いする。

760 :<セーフティ・フレンド>:2009/09/20(日) 17:00:07 ID:YPy/NSR5
「冬間くん」
「はい?」
「ありがと」

柔らかな唇の感触。
唐突に頬に先輩がキスした。

「でもそんな優しすぎると、トラブルに巻き込まれまくるよー。アタシみたいな奴とかから……」
「好きでやってるんですから、迷惑だとは思ってませんよ」
「……意外と男らしいよね、キミ」
「そんなことないですよ……下心あってのことですし」
「へえ、正直だねー」

先輩がひょいと僕の顔をのぞき込んだ。

「でも嫌いじゃないよ、そういうの」

さわ、と先輩の手が僕の股間を撫でる。
それだけで、あの日から一度も使っていない僕のものは大きく反応していた。
先輩と僕に関しては、それ以上の言葉は必要なかった。
僕は先輩の制服の上からその大きな乳房をまさぐった。

「ひゃぁん!?」
「先輩のここだって、もう立っちゃってますよ?」

服の上からでも、微かに先輩の乳首が隆起しているのが分かる。
それを意地悪にコリコリとつまみ、先輩の反応を楽しむ。

「んぁぁ……んもう……そういうとこよく見てるんだから」

互いに上気した顔で、どちらからともなく唇を重ね、舌を絡め合う。
ここが学校の屋上であることなどお構いなしだった。
むしろ、青空の下での性行為に興奮してさえいた。
先輩とだったら、きっとどこで繋がっても気持ちいいのではないかとさえ思えてくる。

「ああ……先輩」

互いに絡み合うように愛撫し合うと、先輩が僕の怒張したものをズボンから取り出した。
先輩はぺろりと舌なめずりをして、その淫らな肉厚のある唇を湿らせる。

761 :<セーフティ・フレンド>:2009/09/20(日) 17:00:48 ID:YPy/NSR5
「あむ……」

そして躊躇いなくペニスをくわえると、僕の脳髄にとろけるような快楽の波が襲ってきた。
熱くぬめった先輩の舌が、亀頭から裏筋まで丹念に刺激していく。

「ねふぇ……ひもひいい?」
「う、うん、最高ですよ」
「んふふ……ちゅぱ……」

丁寧に僕の前に跪いて奉仕してくれる先輩の髪を、そっと撫でてやる。
射精感がこみ上げてくると、やんわりと先輩の口からペニスを開放してやった。

「ぷぁ……」

先輩がじゅるりと唾液をすする。
よく見ると先輩はフェラをしている時から自分で自分を愛撫していたようだ。
スカートの奥でクチュクチュと卑猥な音が微かに聞こえる。
僕はもう我慢ができず、ポケットからこの間先輩と買った避妊具を取り出した。

「ふふっ」

先輩はそれを見て心得た様子でスカートに両手を突っ込んだ。
そして、紐を解いた下着を取り出す。
下着は既にぐっしょりと愛液を滲ませていた。
僕はコンドームを被せながら、先輩が自分との行為を望んでくれているのを確信し、無性に嬉しくなった。
口で言葉を交わす不確かなものと違い、そこには少なくとも自分への性欲を抱いてくれているという確証があるからだ。
愛情は測れないが、今の僕にはそれで十分だった。

「先輩、いくよ……?」

互いに服も脱がす、生殖器だけを露出させて繋がろうとする。
僕は先輩に覆い被さるようにしてペニスを膣口にあてがった。

762 :<セーフティ・フレンド>:2009/09/20(日) 17:01:24 ID:YPy/NSR5
「うん……ねえ、冬間くん」
「はい?」

先輩はふっと笑う。

「〝奈月〟って呼んで」

ドキ、と心臓が高鳴った。
挿入前のこの体勢は、目と鼻の先ほどの距離に先輩の顔がある。
それで面と向かって言われたからだ。
そういえば、いままで僕は先輩の名前を呼んだことがない。
遠慮していたからだ。
しかし、先輩自身がそれを望んでいるというのなら、断る理由もない。
僕は意を決して先輩の耳元で囁いた。

「な、奈月先輩……」
「ふふっ、なんか余計なのも後ろについてるけど、まあ合格」

先輩が腕を僕の首に回してキスしてくる。

「じゃあ、入れて……」

許しが出た瞬間、僕は一気に濡れそぼった先輩の中へと侵入していった。

「あひぃっ!?」

その強い刺激に先輩がはしたなく声を上げる。
それは僕も同様で、理性が麻痺してしまいそうな先輩の膣内の感触に、壊れたように腰を振り始める。

「あっ あぁっ あひっ すっすごいっ 冬間くんのたくましいっ!」
「うあああ奈月先輩!」

脱ぎきっていないズボンのベルトがカチャカチャと音を立てている。
突き上げる度に、先輩の制服の中で、その巨乳が主張するかのようにゆさゆさと暴れる。
僕は先輩の制服をたくしあげ、その乳房を開放してやる。

「ひぁっ!?」

遠慮なく乳首を吸うと、先輩が仰け反って悲鳴を上げる。
両方の乳首をじっくりと舌先で転がし、指でいじって堪能していく。
心なしか、膣内で溢れるラブジュースの量も増えた気がする。

763 :<セーフティ・フレンド>:2009/09/20(日) 17:01:59 ID:YPy/NSR5
「先輩、声カワイイ」

僕は久々の先輩との行為に熱中するあまり、ついつい開放的に先輩の耳元で囁く。
先輩は恥ずかしげにそれを聞き、

「あんっもう! そんな意地悪するんだったら……」

と身をよじった。

「えいっ!」
「うわっ!?」

その瞬間、膣が一気に僕のペニスを締め上げた。
突然の反撃に、僕は射精感を堪えることができない。

ビュッ! ビュッ! ビュルッ!

「あんっ! 出てるぅっ!」
「うく……」

僕は先輩にぐっと身体を押し当て、腰を固定して先輩の膣内へと放つ。
不意打ちとはいえ、その快楽は気を失いそうな奔流となって僕を支配した。
水揚げされた魚のように、ビクビクと腰を小刻みに震わせながら、最後の一滴まで射精し終える。

「はぁ……はぁ……」
「ふふ……アタシの勝ちだね」
「参りました……」


・・
・・・

放課後がやってきた。
玄関を出て校門を出る、いつも通りの道を通り、帰路へとつく。
しかし、その日はいつも通りではないことが一つだけあった。

764 :<セーフティ・フレンド>:2009/09/20(日) 17:02:32 ID:YPy/NSR5
「や」
「先輩」
「こら、エッチ以外でも名前で呼ぶ!」
「……奈月先輩、どうしたんです? 家は反対じゃあ」
「バス停まではこっからしばらく一緒でしょ」
「それは、まあ……」

先輩は遠慮なく僕の隣に立った。
夕日に照らされている先輩の横顔がそこにある。

「だから、一緒に帰ろうよ……」

懇願するような表情で言われた。
その表情はひどく儚げで、思わず目をそらしてしまう。

「ま、まあ先輩がそう言うなら」
「ホント?」

先輩が今度は僕の腕に自分の腕を絡める。
それには僕も度肝を抜かれ、慌てて声を上げた。

「ちょ、ちょっと先輩!?」
「こらー! なんで一分前のこと忘れるー!?」
「そ、そうじゃなくて……」

変わらないようで、僕らの関係は、少しずつ変わっている。
先輩のことをまだ何も知らない僕でも、その変化は肌で理解できた。

793 :<セーフティ・フレンド>:2009/10/15(木) 03:08:21 ID:+EP9DHyh

第6話

ソファのスプリングが軋む音が断続的に響いていた。
脱ぎ散らかされた服が部屋に散乱する中、二人の男女が互いに快楽を貪りあっている。
押さえ込むかのように荒々しく男根を打ち込む男と、十代の若さの中にも成熟の大人の色香を伴った少女が、絡み合い、与え合っている。
妖しく跳ね、豊かな乳房が挑発的に揺れるのを揉みし抱き、その刺激に喘ぐ少女の唇を塞ぐ。
二人の行為にはもう初々しさはなく、互いの身体を理解していることが見て取れた。
少年の息遣いが早くなる。
少女が妖艶に微笑んだ。
言葉を交わすことさえなく、二人は絶頂を迎えた。

「くっ!?」
「んぁはっ!」

……僕はそうして奈月先輩の膣内で精を放っていた。
先輩が絶え間なく続く僕の射精を受け止めながら、首に腕を絡めて僕の唇を求めてくる。

「ふっ……ふっ……」

ビュッ、ビュッ、と密着した腰を波打たせて精を放ちながら、とろけるような先輩の舌を楽しむ。
ツンと足先まで硬直させ、先輩も達しているのだ。
うねる先輩の膣内が僕のペニスを締め上げ、射精の快楽を増幅してくれる。
そんな生々しい女性の本能さえ愛しく思え、僕はより深くまで腰を入れ、先輩の奥に残りの精を放った。



「中学の頃ね」
「はい?」

先輩は脱いでいたショーツを身に着けながら、ふと口を開いた。

「まあ、若かったから遊びまくってたわけ」
「あ」

僕が外した使用済みのコンドームをひょいとつまむ。

「……今も十分若いじゃないですか」
「女の子の一年二年って大きいよ?」

たっぷりと溜まった精液を見つめながらそんなことを言う。

「そんでまあ、当然アタシがビッチだって噂が立つわけ」

ブラを着けていないショーツだけの姿で、先輩は片方の胸をいやらしく揉んで見せた。
先輩が自分のことを話すのは考えてみれば珍しいことなので、行為後の気怠さの中でも、
僕は内心真剣に耳を傾ける。

794 :<セーフティ・フレンド>:2009/10/15(木) 03:10:36 ID:+EP9DHyh

「まあ、そんな噂が立って良いことなんて何もなくてさ。しまいにはあの男がアタシに目をつけるようになったんだ」

〝あの男〟が誰なのか、僕にはすぐに察しがついた。
もう包帯もとれて、過去の話になりつつあるあのジャンキー野郎のことだ。

「それである日ね……」

キュッとコンドームの口をしばり、ティッシュにくるみながら何と無しに先輩は話す。

「集団でこられちゃって、ひとたまりもなかったんだ」
「そ、それって……!?」

考えたくもないことが脳裏を過ぎった。
先輩は僕を見ると首を横に振った。

「……予兆はあったからさ、ほら、あの護身用のスプレーみたいなやつ? あれを喰らわせて隙を見て逃げたんだけど」

膝小僧を抱え、先輩は不安げな表情を浮かべる。

「その後しばらくしてあいつが警察に覚醒剤だかで捕まったって聞いて安心してたんだけど……」
「出所したんですね、僕の部屋に来る前あたりに」

先輩はこくりと頷いた。

「なるほどな……」

僕は先輩の過去に絶句するしかなかった。
先輩は先輩なりに、タイミングを見て話すつもりでいたんだろう。
でも、それでもやはり表情には躊躇いがあった。

「アタシ、酷いよね」
「え? 何がです?」

先輩がこちらを窺うように所在なさげな視線を向ける。

「女友達じゃ危ないからって、冬間くんのこと何も説明しないで頼ってさ」
「……気にしてませんよ」
「本当?」
「ええ、そんな話、簡単に口にできないことくらいは分かりますよ」

先輩の言うとおり、少々理不尽な話ではある。
でも惚れた弱み、先輩のことを苦しめるようなことは言いたくなかった。
先輩は珍しく納得できないような表情でいる。

「でも、それじゃなんか申し訳ないよ」
「悪いのはあの男じゃないですか、先輩は悪くないんですから、先輩を責めるのはお門違いですよ」

795 :<セーフティ・フレンド>:2009/10/15(木) 03:12:01 ID:+EP9DHyh

先輩がなぜセックスフレンドに安全性を求めるのか少し合点がいった。
誰彼構わず相手していたせいで面倒事に巻き込まれたのを反省しているのだろう。
そのお陰で、今の関係があるのだから、喜んで良いのかは複雑なところだ。

「んー……」

先輩はふと自分の身体を見下ろした。
ショーツしか身につけていない先輩の裸体ははっとするほど美しい。
と、先輩は何か妙案を思いついたかのようにぱっと明るい顔になった。

「じゃあさぁ」
「は、はい」
「ランクアップってことでどうかな?」
「ランクアップ、って?」

意味不明な言葉を聞かされ、僕は思わず聞き返す。
先輩は意気込んで答える。

「そ、だからさ、セックスフレンドをランクアップした関係になっちゃおうよ?」
「は、はぁ?」
「今日からアタシたち、セックス〝親友〟ってワケ!」

唖然、という他ないリアクションだった。

「むー、なんか腑に落ちない様子だね」
「あ、いや、光栄なんですけど」

僕は先輩独特のテンションに少し置いて行かれていた。

「それって今の関係と何が違うんですか?」
「そーだなー……」

先輩は少し思案した。

「冬間くんも男の子なら、ムラムラっときたらすぐしたくなっちゃうよね?」
「え? ま、まあ多少は」
「そんなとき、いつでも呼んでいいよ。休み時間でも、いつでも、どこでも」
「ど、どこでも?」
「よほどのことがなければ求められたら拒まない。いつでもさせてあげる。あと、アブノーマルなプレイも、できる限り協力する」

ごくり、と思わず僕は生唾を飲み込んだ。
いつもは先輩の都合に合わせてセックスしていたけど、それの自由度とプレイの幅ができる、ということらしい。

796 :<セーフティ・フレンド>:2009/10/15(木) 03:13:17 ID:+EP9DHyh

「どかな?イヤかな?」
「と、とんでもない!」

僕は慌てて首を横に振る。
先輩が満足げに笑った。

「じゃあ、決まりだね。これからもよろしく」

ぺろっと舌を出して拝むようなポーズをする。
その姿が予想外に可愛かったので、僕は思わずまた劣情がせり上がってくるのを感じた。
いつもなら自重するところだけど……

「奈月先輩、さっそくなんだけど……」
「うん?」

僕は少し遠慮がちに、特権を使用させてもらうことにした。

「フェラ、頼めます?」

僕の半立ちになっている男根に気づいた先輩が、妖艶に微笑んだ。

「ふふ、いいよ……」

猫のようにすっと身をかがめて僕の股間に身を寄せると、
その白魚のような指先で僕のものをそっと握った。

「気持ちよくしてあげる」

ぱくん、と先輩の熱い舌先が僕の亀頭を包み込んだ。

811 :<セーフティ・フレンド>:2009/11/01(日) 01:02:46 ID:INhWl5L8
第7話

=前編=

「んっ……んっ……」

人気のないトイレの一室に、くぐもった声が響いていた。
仁王立ちになった少年の前に腰をかがめ、一人の少女が頭を上下させている。
少女の校則ギリギリであろうグロスを引いた唇が、まるで別の生き物のように少年の肉棒をくわえ込み、
うっとりと潤んだ上目遣いに少年を見る瞳は年齢不相応なまでに淫らだった。

「あう……!?」

迫り来る快楽に、少年が腰を震わせた。

「んはっ……もうイキそ?」
「は、はい」

シュコシュコと手で勃起を維持させながら、少女は挑発的に笑った。

「本番いっとく?」
「あ、いや時間ないからこのまま……」
「オッケ! いっぱい出していーよ。えーと……フェラ用ゴム持ってきてたカナ」
「な、奈月先輩」
「ん? どしたの」
「で、できればでいいんですけど、生のまま出しちゃダメですか?」
「え、生で?」

少女がやや困った表情を浮かべる。
が、そう間をおかずに了承した。

「……いいよ、冬間くんがそれのが気持ちいいんなら」
「すいません……」
「いいっていいって! あむ……」

少女は躊躇いなく少年のものを再び口にくわえ込む。
フィニッシュのためのラストスパートで、激しく彼を責め立てていく。
彼女は口の中でビクビクと膨張する亀頭を感じ、最後の瞬間が近いことを知る。
口内に精を放たれるのは初めてではないから、いつがその時なのかは彼女にはおおよそ分かった。

「うあぁっ!」

少年が一際大きく腰を反らせ、同時に亀頭が最大の硬度になった。
彼女がねっとりと舌先を這わせると、それが限界を突破させたのか、濃厚な精が先端から迸る。

812 :<セーフティ・フレンド>:2009/11/01(日) 01:03:32 ID:INhWl5L8
「んぅっ!?」

ビュク、と舌に粘り着く液体が放たれる。
その感触にはさすがに慣れないのか、彼女は思わず眉を顰めた。

「あっ、ああ……」

少年はあまりの快楽に一時我を忘れているのか、どうすることもできずに彼女の口内へ大量の精を射精し続ける。
彼女はただそれを受け止めるだけでなく、必死になって舌で彼のものを愛撫し、少しでも快楽を感じてもらえるように努力していた。

「えふ……」

ペニスが口から離れた瞬間、彼女の口元から白濁した粘液が溢れ出る。
少量の精液が、彼女の折った膝元に垂れ、卑猥な音を立ててその白い肌に粘り着いた。




文化祭が迫りつつある時期だった。
その日、彼女・飯島佐貴子はゲンナリとしていた。
厳密にはその日だけというわけではない、ここのところずっとだ。
理由は簡単、今目の前で心底楽しそうに自分のセフレについて語っている親友が原因だった。

「でさ、彼ったら口の中に出せたのが気持ち良すぎたらしくってまた興奮しちゃってさ、結局休み時間過ぎてるのに本番までしちゃった」
「……ああ、そう」

ファストフード店らしい、けたたましい店内BGMの中、
佐貴子は適当に相槌を打ってトレーのコーヒーをすすり、ポテトを一筋口へ入れた。
佐貴子は目の前の奈月同様、今時の遊んでる少女といった風貌だった。
奈月と違うのは、佐貴子はいわゆる黒ギャル系の褐色肌に金髪という出で立ちであることだろう。
属性は同じだが、見た目は対照的な二人といえた。
ただ、奈月との付き合いは古く、けして表面上だけの友達というわけではない。
最近起きたゴタゴタでも、なぜ自分に相談しなかったのかとケンカになるほどの間柄である。
そして、その時に親友を身をていして守ったという奇妙なセックスフレンドについても聞き及んでいる。

813 :<セーフティ・フレンド>:2009/11/01(日) 01:04:47 ID:INhWl5L8
「んで、その愛しのセフレくんとは今日は遊ばないワケ?」
「だって彼今忙しいしー……」

途端に寂しそうな顔をした奈月に、佐貴子は苦笑いする。

「何でよ? 別に部活やってないんでしょ?」
「部活はやってないけどクラスの委員長だから放課後文化祭準備してんの」
「しっかしつくづく意外ねぇ。何でそんな真面目クンとアンタが付き合ってんのよ?」
「つ、付き合ってはないよ」
「ありえないし。アンタ彼氏相手でも口の中にザーメン出すなんてさせなかったじゃん」
「元彼は自分勝手だからさせなかったの! 冬間くんは違うし!」
「へーへー……」

基準のよく分からない友達の理論に振り回されながらも、彼女は根気強く話してやることにする。

「でもさ、アンタ自身はどうなのよ」
「何がー?」
「彼と付き合いたいとかないの?」
「そ、それは……」
「ほら、あんでしょ、やっぱ」

そもそも男女関係にここまで煮え切らない奈月など初めてだった。
今までなんて気が合うから付き合う、告られたから付き合う、身体の相性いいから付き合う、
と理由としては何でも良い感じだったはずだ。
セフレから彼氏に、となるのが不自然だとは佐貴子には思えなかった。
だからこそ、これが異常事態だとも思う。

「うーん、でも……」
「今更、気軽なセフレから深い付き合いになりたくない?」

そう尋ねると、今まで見せたことのない複雑そうな表情を奈月は浮かべる。

「彼は、アタシとのエッチが好きなんだし、今から付き合うとか考えてないんじゃないかなー、とか……」

佐貴子は開いた口が塞がらなかった。
奈月はいつからそんなことを気にかける可憐な少女になったというのか。

814 :<セーフティ・フレンド>:2009/11/01(日) 01:05:29 ID:INhWl5L8

「あのね、奈月」
「うん」
「エッチが好きなだけのヤリ捨て目的の女を普通ストーカーから守ったりしないよ?」
「だってだって! 冬間くん、正義感強いし、武道とかも実はやってるっぽいし、なんかアタシみたいな女でも助けるのが当然っぽいし」
「あーもう! そんな奴ならぜってー適当な感覚でアンタとセックスしてないわよ!」
「……そう思う?」
「そう思う!」

不味いコーヒーを飲み干し、佐貴子はそう断言した。

「でもこの間ね……」

奈月は先日の『セックス親友』に格上げ、と苦し紛れに言ってしまったことを説明した。
佐貴子は目眩を覚え、思わずトレーが浮くほどテーブルを叩いた。

「どーしてアンタはそう事態をややこしくすんのよっ!?」
「で、でもでも! 冬間くんにもっと気にしてほしかったし、それならやっぱエッチしやすくした方が……」
「頭弱いヤリマンビッチだと思われてるわよそれ」

辛辣な佐貴子の言葉に、奈月はこの世の終わりのような顔をした。
しかし佐貴子はこれぐらい言わなければ二人の関係が進展しないことも分かっていたので、あえてフォローはしないでおく。
が、どよん、と暗い影が見えそうな奈月の顔を見てさすがに罪悪感を覚える。

「アンタこのままじゃ、都合の良いセフレ扱いされてその内冬間くんとやらが彼女作ったら関係そこまでで終わる。間違いない」
「ど、どうしよう……」
「今からでも遅くないからアプローチかけな」
「でも彼最近忙しいし」
「何で忙しいの? 近々文化祭やっからでしょ。ちょうど良いじゃない。勇気だしな」

奈月は焦っているのか、佐貴子の言葉に何やら考えこんでいる様子だった。

815 :<セーフティ・フレンド>:2009/11/01(日) 01:06:14 ID:INhWl5L8
「あ、そういえば」
「今度は何?」
「あたしらのクラスって文化祭何やるの?」
「……クラス会議で寝てたアンタは知らないのは無理ないか」

佐貴子はやれやれと頭を抱え、親友に教えてやる。

「確か女子は『メイド喫茶』とか言ってたよ」

862 :<セーフティ・フレンド>:2009/11/21(土) 13:28:00 ID:gbfv2JyC
第7話

=中編=

放課後のクラスでは、ローテーションを組んだ人間が文化祭に向けて準備を進めていた。
部活などで都合がつかない人間や、各自の負担の他、教室で効率的に作業できる限界人数を考え、
おおよそクラスの三分の一ほどの人間が残っている。
文化祭までフルでいるのは僕を含めて数人のみだ。

「委員長、博物館から借りてきた模型はどこ置いとくんだ?」

僕は図書館で借りてきた資料から、展示しやすいように文章を要約する作業をしている。
と、制服をだらしなく着こなした一人の男子が僕のところへやってきた。
肩まで伸びた髪と、浅黒い日焼け、制服の上からでも分かる締まった体つきのスポーツ少年。
僕の友達の加藤一(かとう はじめ)だ。

「ああ、それなら入り口のパネル展示の先がいいから、そうだな、教室の中央にスペース広めにとろう」
「オッケー」

力仕事ならお手の物な上、体育会系の中では唯一フルで作業を手伝ってくれる存在でもあるので、
クラス委員長の僕にとっては頼りになる存在だ。
色々苦労はあったけど、思ったより順調に文化祭の準備は進んでいた。
来週にはきっと、素晴らしいクラス展示が可能になるだろう。

「じゃあ今日は終わりにしよう」

日が落ちてきて残る人もまばらになった頃、僕は今日の作業の終了を皆に伝えた。
皆、後片付けを済ませるとゾロゾロと帰り始める。
と、そんな中、よく見ると一が女子と話していた。

「ねえ、加藤君」
「あん?」

女子はこのクラスで一番の美少女と評判の子だった。

863 :<セーフティ・フレンド>:2009/11/21(土) 13:28:43 ID:gbfv2JyC
名前は白石 絵里名(しらいし えりな)
美少女も美少女、腰まであるさらさらの黒髪に白磁のように白い肌、
母親は茶道の先生だかの、まさに清楚系といった感じの女の子だ。
このクラスのみならず、他学年にまでファンがいるという漫画のヒロインみたいな高嶺の華。
話しかけられている一も、中学時代は陸上部短距離部の主将で、200メートル県大会記録保持者だ。
背も高く、顔立ちもいかにもスポーツマンといった感じで、白石さんに比べれば見劣りするかもしれないが、
けしてひけをとらないモテるタイプの男だった。

「きょ、今日この後さ……」
「あー……悪ぃ、今日ちょっと用事あんだわ」
「そ、そう、ごめんなさい」
「マジごめん。じゃあな」

白石さんが教室を去るのを見送ると、一は僕のところへやってきた。

「なあ、悪いんだけどよ……」
「分かってる分かってる、英語の勉強だろ?」
「スマン、今日も頼むわ!」

一月ほど前からだろうか、一が僕に勉強を教えて欲しいと度々やってくるようになったのは。
理由を尋ねても「家で成績が落ちたのを怒られた」の一点張りなのだが、
大抵そういう理由というのは申し訳が立つ程度に成績を出せばいいだけなので、ここまで真剣にはならないように思える。
しかし、一はいつもこうして時間を惜しんでやってくる。

「白石さんの誘い断るってのはかなりの覚悟だろうしね」
「う……それを言うなよ。まるで俺が悪者みてえじゃねえの」
「彼女のファンの前でそれ言ったら殺されるよ?」

僕はそう意地悪に笑う。
一は居心地悪そうに苦笑いした。
と、その時だった。


864 :<セーフティ・フレンド>:2009/11/21(土) 13:29:28 ID:gbfv2JyC
「あなた達、まだ残っていたの」

鋭い女性の声だった。
澄んでいるものの、怒っているわけでもないのに思わずすくみ上がりそうな、そんなトゲのある声だ。

「き、如月先生……」

一が呟く。
カツン、とヒールの音を響かせ、やってきたのは英語教師の如月南(きさらぎ みなみ)だった。
スラリとした長身に、アップにまとめた髪、引き込まれそうな深い瞳には怜悧さを強調するノンフレームのメガネがかけられている。
意図しているのか、単にそうなっているだけなのか、身体のラインが浮き出るようなぴったりとしたスーツを着こなしている。
男女問わず美人だと評判だが、その近寄りがたい雰囲気のせいであまり周囲に人がいるのを見たことがない人である。
そう、例えるなら、奈月先輩がヒマワリだとすれば、先生はバラといった印象だ。
同じ美人でもタイプが違う。

「すいません、もう帰りますんで」

僕は触らぬ神に祟りなしとばかりに先生にそう言った。

「そう、早くなさい。そろそろ施錠の時間よ」

先生は何を考えているのか分からないポーカーフェイスで僕に一瞥をくれると、そう言い残して踵を返す。

「せ、先生、あの……」

一が突然先生の後を追おうとするが、キッと先生が睨むように振り返ると、そのまま無言で見送った。

「どうしたんだ? 一」
「い、いや……」

一はどこか悔しそうな表情でいるが、曖昧な言葉を呟くだけだった。

865 :<セーフティ・フレンド>:2009/11/21(土) 13:30:19 ID:gbfv2JyC


文化祭の当日がやってきた。
今までの準備が報われ時だ。
僕のクラスは飛行機の歴史や模型の展示、そして教室の半分を使っての子供たちへの模型飛行機教室だ。
簡単だけどよく飛ぶグライダー式の模型飛行機を子供たちが作り、グラウンドへと笑いながら飛ばしに行っている。
盛況だ。
色々と苦労はあったけれど、子供たちの笑顔を見れば疲れも吹き飛びそうな気がした。

「委員長、今まで大変だったんだから後は任せろよ」

一が二回目の模型教室を終えた辺りで僕にそう言ってきた。

「そうよ、後は私たちでも大丈夫だから」
「出店でも回ってこいって」
「そーそー」

僕が断ろうとすると、次々とクラスメイトがそう口にする。
参ったな、文化祭を楽しもうとは全く考えていなかった。

「じゃあ、お言葉に甘えて」
「おう、行ってこい」

一に背中を叩かれ、僕は自分の教室を後にすることになった。

「でもどうしようかな……」

ガヤガヤと一般の人まで大勢いる人混みの廊下を、特にあてもなく歩く。
とりあえず、興味をそそられたものを見ていこう。

「ホットドックいかがですぁー 三階では喫茶店を開いてまぁーす!」

と、威勢のいい売り子の声が耳に入ってきた。
文化祭といえば、こういった売り歩きの食べ物だろう。
僕は小腹も空いていたので、おいしそうなら買ってみようかと声の方へと歩いていく。

「わ……」

売り子はちょうど階段を上るところだったようだ。
そして、その姿に僕は思わず息を飲む。


866 :<セーフティ・フレンド>:2009/11/21(土) 13:31:11 ID:gbfv2JyC
(メイドさんだ!)

悲しいかな、僕はそういった格好がかなり好きなタイプの男だった。
目を皿にして食い入るように凝視してしまう。
彼女の姿は、黒のフレンチメイドスタイル。ミニスカートが特徴的な少し露出の多いメイド服だ。
頭には純白のカチューシャ、腰にはサロンエプロンを身につけている。
更にその下、すらりと長い脚を黒のガーターストッキングでコーティングし、大人の色気を感じさせている。
その格好で肩からホットドックを入れた箱を提げている状態である。

(わ、わ、ここからだとパンツ見えちゃいそう……)

階段を上るその後ろ姿があまりにも扇情的で、僕は思わず生唾を飲んでしまいそうだった。
ガーターベルトを完璧に着こなし、ミニスカートとの絶対領域から見える白い肌は犯罪的にエロい。
と、突然そのメイドさんはカツンとハイヒールの踵を鳴らしてこちらを振り返った。

「お客さまァー、スマイルはゼロ円ですがそちらは有料となっておりまぁーす」
「うわっ!?」

その顔に僕は度肝を抜かれた。

「な、奈月先輩!?」
「ふふーん、冬間くんだろうと思った」

メイドにしてはエロ過ぎる化粧のその顔は、紛うことなく奈月先輩その人だった。

「な、何してるんですか!?」
「何って、アタシのクラスは喫茶店が出し物だしさ」

な、なるほど……
自分のクラスが忙しすぎて先輩のクラスの出し物なんてまるで確認していなかった。


867 :<セーフティ・フレンド>:2009/11/21(土) 13:31:56 ID:gbfv2JyC
「にしても、真面目な冬間くんにもムッツリスケベな面があったとはねぇー」
「な、何ですか人聞きの悪い!」
「えー、アタシのパンツ見ようとしなかったぁ?」
「……それは、ちょっとはまあ」

先輩はニッと笑うと僕の耳元へ顔を寄せ、囁いた。

「こういうコスチューム好き?」

とろけるような声に、僕は背筋が震えるような感覚を覚えた。
そういえば、この一週間、先輩とセックスしていない。
声だけでなく、ほのかな先輩の香りも手伝い、僕の股間に血液が集中してしまいそうだった。

「だ、ダメですよ……文化祭中ですし」
「なぁんだ、アタシの今日のパンティ見たくないんだ」

先輩は悪戯ぽく半目で僕を見つめ、片手でミニスカートの裾をつまみ、そっとすり上げた。
ガーターベルトの緻密な刺繍が目に入る。
先輩の本来のスタイルの良さが加わって、たまらなく美しく感じられた。

「ごくっ……そ、それは」
「ふふ、ホットドック買わないならもう行っちゃうよ?」

僕が逡巡していると、先輩はぱっと手をスカートから放してその場を立ち去ろうとする。

「ま、待った! ホットドック買います!」

思わず僕は間抜けな行動に出てしまっていた。
咄嗟に財布から小銭を出すと、先輩を引き留める。

「あらぁ、毎度あり」

ちゃりん、と先輩は小銭を受け取る。
引き留められたのが嬉しかったのか、先輩は心なしか楽しそうだった。

868 :<セーフティ・フレンド>:2009/11/21(土) 13:32:45 ID:gbfv2JyC
「……じゃあ、買ってくれたお礼に、ご主人様にご奉仕しなくちゃ」

先輩はおもむろに箱からホットドックを一本取り上げると、
ぺろりとその紅い舌で舐め上げた。
あまりの出来事に僕が呆然としていると、先輩はなおもそのホットドックへの疑似愛撫を続ける。

「んっ……ちゅぶ……」

まるで僕のものをしゃぶっているときのように淫らな表情で太いホットドックをくわえるその光景に、
僕の股間はすっかり硬さを持ってしまっていた。

「ちゅぽっ……はい、どうぞ」
「あ、う、うん」

僕は思わず差し出されたホットドックを受け取る。
すると、先輩が素早く僕の唇についばむようなキスをしてくれた。

「あと何本かでノルマ達成だから、昼頃メールするね。この続き、それまでおあずけね、ご主人様!」

先輩は人が来る気配を感じたのか、それだけ言うとその場を足早に立ち去っていく。

「ホットドックいかがですかぁー、三階では喫茶店もやってまぁーす!」

先輩の威勢の良い声が、徐々に遠ざかっていった。

908 :<セーフティ・フレンド>:2009/12/05(土) 17:49:16 ID:63DKavEW
第7話

=後編=

「先輩、どこだろう……?」

昼になり、僕が先輩から呼び出されたのは意外な場所だった。
僕の学校は丘の上に建っているけど、滅多に使われない学校の裏門を出ると、その先には展望台や神社へ続く道がある。
先輩の送ってきたメールは、単純に目印になる物が書かれているだけだった。
それを手がかりにほとんど森の中といった状態の小道を行く。
着いた場所は……

「郷土資料館?」

そこは一見すると古い洋館だった。
そういえば、学校の正門前には周辺地図の看板が立っていた。
確か、元々は今の位置に新設した際に取り壊すはずだった旧校舎を、
歴史的な価値があることと卒業生の要望などによって一部そのままの状態にしてあるというのを読んだ覚えがある。
大正時代だったか昭和初期だったかの建物なので、校舎というより洋館に見えるのも無理はない。
ただそのままにしておくわけにはいかないので、普段は無人の郷土資料館として、古いこの街の写真や資料などを展示している。
日に二度、町内会だか公民館だかの管理担当者が解錠と施錠に来る以外はほとんど人気はないのだろう、
その深閑とした雰囲気は拭いようがないものだった。

「せんぱーい……?」

僕は恐る恐る、扉を開いた。
ギイ、と年季を感じさせる重々しい音を立てて扉が開いた。

「お帰りなさいませ御主人様ー!」
「うわっ!?」

いきなりの元気な声に、僕は思わず驚きのあまり尻餅をついてしまった。

「キャハハ、何驚いてんですかぁ? 御主人様」
「せ、先輩」

そこには相変わらずのエロメイド姿の先輩がいた。


909 :<セーフティ・フレンド>:2009/12/05(土) 17:50:00 ID:63DKavEW
「おそーい、食後のコーヒー冷めちゃうよー?」
「ご、ごめんごめん」

どうやら昼飯後の一杯まで用意してくれていたようだ。
先輩が促すように資料館の中へと歩き出したので、僕もその後に続く。
資料館としての高級感を出すためか、本来はなかったのであろう赤い絨毯がしかれた廊下や階段は、
内装まで大正時代の館のようだった。
廊下には所々、聞いたこともない郷土出身の芸術家の絵や壺などが飾られている。
先輩は二階へと続く階段を上っていく。
その後ろを歩く僕には、学校の階段同様にそのミニスカートからセクシーな下着が丸見えだ。
先輩はそれを分かっているのか、軽く振り返ってチロリと紅い唇を舐めて微笑んだ。

「そういえば奈月先輩、この風景と先輩の格好、凄いマッチしますね」
「偶然なんだけどね、ここなら文化祭中でも人気ないから」

そんなことを話しながら、先輩は二階の奥にあるドアを開けた。
中を見ると、執務室とベッドルームを足して二で割ったような内装の部屋があった。
ベッドはダブルベッドほどもあり、しかも天蓋付きの本格的なものだ。

「あれ、なんでこんな場所にベッドが……」
「むかーしの商人さん家に置かれてた外国のベッドなんだって」

先輩は興味もなさげに部屋中央の瀟洒なテーブルに置かれたコーヒーを手に取ろうとする。
タイムスリップしたような洋風の内装に不釣り合いな安っぽい紙カップのコーヒーだった。
僕はふと背後のドアにちゃんと内カギがついているのに気付いた。
すかさずそれに手を伸ばし、カギをかける。

「え?」

カチャリという音に先輩も気付いたのが、カップを手に取る前に立ち止まる。
僕はきょとんとしている先輩におもむろに歩み寄ると、そのまま両手を拡げ、彼女を抱き寄せた。

910 :<セーフティ・フレンド>:2009/12/05(土) 17:50:43 ID:63DKavEW
「んっ……!?」

先輩の柔らかで淫らな唇を奪う。
舌を入れると、そこはさすがに先輩だけあってすんなりと受け入れて絡め取ってくれる。

「あむ……んふ……ちゅっ……くちゅっ……」

今日メイド姿の先輩を見たときから、一週間忙しさの中で忘れられ、押さえられていた欲望が渦を巻いていた。
それを増幅するかのような先輩の誘惑に、僕はもう我慢ができなくなっている。
あんなコーヒーなんかより、今は先輩が欲しくてたまらないのだ。

「ぁう……」

長いキスを終え、先輩が上気した顔で僕を見る。
その顔は一目見るだけで彼女が発情していることが理解できるほどに扇情的なものだった。
更に、心地よさとこそばゆい快感が股間からわき上がってくる。
先輩が痛いほどに勃起した僕のものを服の上からさすっているのだ。
シルク生地なのだろうか、繊細な刺繍の入った手袋越しに股間をさすられ、握られるのは焦らされるような快楽だった。

「ふふ……御主人様、ご奉仕するね」

彼女は僕の突然の行為に異を唱えることもなく、むしろそれを歓迎しているかのように笑って跪く。
僕の制服のベルトを外し、下半身を露出させる。
そして、屹立する男性器にうっとりとした視線を浴びせた。

「奈月先輩……」
「あん、メイド相手に先輩はないでしょ御主人様?」
「な、奈月……」
「はい、御主人様」

先輩は挑発的に媚びた表情を浮かべる。
僕は先輩が望んでいるであろうことを口走る。

「ご奉仕、して」
「はい……」

メイド服姿で男のペニスを前に跪き、その性的奉仕を行う先輩は、今までで一番非現実的で、そして淫らだった。
先輩も一週間という時間で性的欲求が溜まっているのだろうか。
そんなことを考えていると、彼女が紅い舌先を裏筋へと這わせた。

「くぉ……!?」
「ぇろん……ちゅっ……ちゅるる……」

彼女は念入りに裏筋から亀頭、そして再び根本、更には玉袋まで舌で愛撫していく。
その舌技は、人間の舌というより、まるで軟体生物に犯されているかのようでさえある。

「んっ……んっ……じゅる……御主人様、気持ちいいですか?」

いちもの先輩と違い、メイドという役を演じているのか、あるいはコスチュームとシチエーションで乗っているのか、
彼女の口調は性格と反対の丁寧なものだった。
そのギャップがよりそそる。男のツボの押さえ方を知り尽くしているのではないかと思うほどだった。

「ああ……気持ち良すぎて、もう出ちゃいそうだ」
「あはぁ……ありがとうございます……」
「こっちにおいで」

僕は彼女をベッドへと誘った。
隣の注意書きを書いた看板に『腰掛けるのは構いませんが横にならないでください』と書いてあるのを見つけたが、
そんなものは無視する。
自分が不道徳な行いをしているのは分かるが、ほとんど利用されないベッドなのだからそう気にはならない。

911 :<セーフティ・フレンド>:2009/12/05(土) 17:51:25 ID:63DKavEW
「ぁん……」

彼女がその火照った身体を横にする。
その姿に、むしろ、この淫らなメイドにはこの天蓋付きのベッドはお似合いだとさえ思う。

「奈月……綺麗だ」

僕は率直にそう彼女に覆い被さりながら耳元で囁く。
嘘でも世辞でもなかった。本当に綺麗だと思ったからだ。
このメイドを独占しているのは、今自分一人であることも興奮の原因だった。
メイド喫茶ではメイドを独占し、こうして行為に及ぶことなどできるはずもないのだから。

「冬間く……いえ、御主人様……嬉しいです」
「ちゅっ」

僕は再び先輩に口づけすると、彼女の秘部にそっと手を伸ばした。

「あっ……」

スカートの奥へ手を入れ、優しくパンティの上からなぞってやる。
ピクンと彼女の身体が跳ね、ベッドが軽く軋む。
自分の欲望も高まっていたが、今はとにかく彼女のことが愛しかった。

「あ……あん……ぁはぁ……」
「奈月……カワイイよ」
「御主人様ぁ……」

先輩は愛撫されている間、何度も僕にキスを求めてきた。
そのキスが性的な興奮だけではないものだと、今は思いたかった。
少しでも、僕は彼女にとって特別な存在でいたかった。
こんな姿を見せるのは自分一人だと。

「はぁっはぁっ、奈月……」
「やぁ……ダメぇ……」

十分に濡れてきたのを見計らい、下着を汚さないように一気に脱がしていく。
すると、股間から一筋の銀色の糸が伝った。
それが彼女の愛液が糸を引いたものであるのはすぐに理解できる。
彼女の身体はもう挿入準備を終え、僕のペニスを望んでいた。
そう自惚れても間違いではないように思える乱れ方だった。


912 :<セーフティ・フレンド>:2009/12/05(土) 17:52:09 ID:63DKavEW
「こんなエッチなメイドにはお仕置きが必要だね」
「は、はい……御主人様に、もっとお仕置きして欲しいですぅ……」

被虐的な快感を抱いているのか、彼女は潤んだ瞳で僕に哀願する。
その瞳さえ、僕には魅力的に見えた。
そっとキスをして、耳元で囁く。

「……じゃあ、いつものアレを」
「え?」

先輩が一瞬はっと息を飲んだ。
素に戻り、僕は先輩と顔を見合わせる。

「どうしたの?」
「……冬間くん、ひょっとしてゴム持ってきてない?」
「う、うん。文化祭でまさかするとは思ってなかったし……」
「あ、アタシもメイド服のまま抜けて来たから持ってないよ」
「え!?」

盛り上がるだけ盛り上がった所で、いきなり頭から冷や水を浴びせかけられた気分だった。
こんなギンギンにそそり立ち、先走りを滴らせている状態で、セックスに必須のものがないときた。
ぐるぐると頭の中で今この状況を打開し、先輩と本番まで漕ぎ着ける選択肢を必死になって考える。
男の悲しい性だった。

「……ここの最寄りコンビニってどこでしたっけ?」

僕は自分の不手際で先輩までも待たせてしまうことに焦り、そんなナンセンスな言葉をつい口にしてしまう。

「んー……あのさ」
「うん?」

先輩は僕の頬をそっと両手で撫でた。
口元には微笑が浮かんでいる。

913 :<セーフティ・フレンド>:2009/12/05(土) 17:52:52 ID:63DKavEW
「せっかく盛り上がってるんだし、ナマでしちゃおっか?」
「えぇっ!?」

僕は飛び上がりそうになった。
先輩が絶対に口にしないであろう言葉だったからだ。
初めて出会ってから今まで、かなりの回数を先輩と経験してきたが、
その最後の一線だけは越えないできていた。
先輩が最初に言った、セックスフレンドとしての節度だったからだ。
今日の先輩は一体どうしてしまったのだろう?

「だ、ダメですよそんなっ」
「どうして? アタシがいいって言ってるんだよ?」
「そ、そういう問題じゃ……」
「ビョーキが心配?」
「そんなことはないですけど、その……先輩の方が」
「一回くらい平気よぉ、それに……」

先輩はきゅっと僕のペニスを握り、その硬さを確かめるように軽く上下にしごいた。

「あぅっ!?」
「アタシも欲しいの、御主人様のを、ナ・マ・で!」
「や、やっぱりダメですよ……こ、恋人同士でもないのに」

僕が苦し紛れにそう言うと、先輩が目をはっと見開いた。
一瞬のことだったが、それが酷く悲しそうな顔に見えたのは気のせいだろうか。

「冬間くん、恋人同士ならナマでバンバンやっちゃうんだ?」
「そ、そういうわけじゃないですけど」
「じゃあさ、アタシが今だけ恋人になったげるから、ナマでちょうだい」
「は、はぁ!?」

先輩はどこかヤケになっているように頬を膨らませて僕に迫った。
まるで聞き分けのない子供のようだ。

「だってさ、セフレより彼女の方が安全度低いっておかしくなーい?」
「そ、それは言葉の綾というもので……ぼ、僕は奈月先輩のことを心配してるんですよ」

と、先輩が僕の腰にその美脚を絡め、首に腕を回して抱きついてきた。

914 :<セーフティ・フレンド>:2009/12/05(土) 17:55:08 ID:63DKavEW
「……普通、セフレにそこまで心配なんかしないよ」
「わ、ちょっと奈月先輩……」
「そんなアタシのこと心配してくれる人なんて今までいなかったもん」
「……先輩?」

今日の先輩は少し様子が変だ。その思いが確信へと変わる。

「一週間もほっといてこんなのないよ……アタシ、寂しかったんだから」
「奈月先輩……」
「街歩いててナンパされたりもしたんだよ?
でもアタシ、冬間くんとしかしたくなかったから全部断っちゃった。
ナマだって、元彼でも許したことなかったけど、冬間くんならいいやって思うし……」

先輩の耳元で聞こえる声は、心なしか震えていた。
僕はきゅっと控えめに抱きついてくる彼女をそっとこちらからも抱きしめる。

「アタシ、きっと冬間くんとだけ本気でエッチできるんだ。だから、対等で安全な友達ダメ……それじゃ気持ちよくない」

先輩が強引にキスしてくる。
僕は先輩の独白に頭がまともに機能せず、ただその行為を受け入れるしかない。

「冬間くん……好きだよ」

先輩は甘えるようにキスしてきた。

「……本当に、いいですか?」

僕は考えるのを諦め、それだけをなんとか口から絞り出す。
先輩はクスっと笑うと、目を伏せるように肯定した。

「うん……、ちょうだい」

今できること、今したいことだけを考えることにしよう。
僕はそう決め、先輩の膣口に自分のペニスをあてがった。
コンドームを着けるのが習慣化していたので、先輩のピンク色の膣肉に先端が触れるだけでも感触が違うのに気付く。

915 :<セーフティ・フレンド>:2009/12/05(土) 17:55:59 ID:63DKavEW
「ん……」

先輩は挿入の感覚に顔をそらし、恍惚とした表情で息を殺す。
僕はゆっくりと、そのまま熱く、そして無防備な彼女の膣内へとインサートしていく。
愛液と先走りの液が十分に円滑油の役割を果たし、なんの抵抗感もなく、彼女の中へと収まっていく。

「あ……あぁ……」
「緊張してる?」
「う、うん……だって、冬間くんとナマでするの、初めてだし」
「僕もだよ」

快楽だけでなく、自分を受け入れてくれている腕の中の一人の異性として、愛しさをもって唇を重ねる。
まるで童貞と処女の初体験のように、今の僕らの行為は初々しく思えた。

「凄い……奈月の中、ヌルヌルしてて、熱いよ」
「冬間くんのも、すごく固いよ」

僕はゆっくりと腰を動かし始めた。
互いに何も介さない、直に触れあう感覚を十分に味わうためだ。

「あ……あ……あ……」

先輩は淑女のように控えめな喘ぎ声を漏らす。
メイド服姿のままだから、その光景はとても可愛らしかった。
僕らはいつも裸で重なりあっていたが、今ははだけていながらも服を着た状態だ。
しかし、最も敏感な結合部には、何も身につけていない。
突き上げる度に、彼女の膣壁は男を逃がすまいと絡みついてくる。
その快楽を前に、一週間分の欲望が今か今かとその時を待ちかまえ始める。

「あ……あっ……ひぅ! あっ! あっ! アアッ!」

彼女の上着をたくし上げ、その豊かな乳房を揉みし抱き、乳首を舌先を転がす。
その間にも、徐々に腰の動きは早まっていく。
最初から暴発寸前の状態で耐えてきたのだから、ここまで保ったのが奇跡のようなものだ。
乱暴に腰を打ち付ける乾いた音が部屋に響く。

916 :<セーフティ・フレンド>:2009/12/05(土) 17:56:42 ID:63DKavEW
「おっ……おぉっ! もう出そうだ!」
「あひぃっ! 出ひてぇっ! どこでもいいからぁっ!」

彼女が乳房を自身で揉みながら、快感に素直に溺れてそう叫ぶ。
僕もそんな彼女の熱情に流されるように、最高潮へと達していく中で彼女に告げる。

「出すよ奈月、このまま中に出すからね!」
「んぁあ!? ナカ?! ナマで中に出すのぉ!? 御主人様ぁ!」
「そうだよ! エッチなメイドさんにはお仕置きが必要だからね!」
「んひぃぃ! お仕置きしてくださいぃぃ! エッチな奈月にお仕置き中出ししてくださいぃぃーっ!」
「くぉおっ! 奈月ぃー!」

最後の一突きを彼女の最奥へと打ち込み、僕はそのまま硬直した。

「あ……」

彼女が一瞬の静寂に舌を出しながら喘いだ次の瞬間

ドビュビュッ!!

「あはぁあああイックぅーーーーっ!?」

無防備な彼女の子宮口へ向けて、僕は一週間分の濃精が発射される。
目の前が真っ白になるような絶頂感と、今自分がしていることの背徳性に、
僕はまるで彼女を犯しているかのように覆い被さり、彼女の腰を固定して射精を続ける。

「あっああっ……出てるぅ……一週間分のせぇしぃ……」
「全部注ぎ込むからね」

ガクガクと腰を震わせながら、僕は今までの人生で一番長い射精を続けた。
今自分の遺伝子を異性が受け止めるという、僕にとって禁忌の行いをしているという感覚が、なぜかたまらなく興奮を誘う。
どれくらいの時間射精を続けていたか分からなくなるほど、僕は先輩の膣内へと注ぎ込んでいた。

146 :<セーフティ・フレンド>:2010/05/06(木) 14:49:21 ID:fZmYeluz
「はぁーはぁー……」

どれくらいそうしていただろう。
僕と先輩はベッドの上で息が整うまで抱き合ったままだった。
先輩の膣壁が僕の射精後の敏感になっているペニスをくわえ込んだままヒクつく。

「はぅっ!?」
「あんっ……」

僕のものは彼女の中で、刺激に反応して少しでも多くの精子を放出しようと脈動した。
余韻の残る快楽を感じながら、先輩の身体を強く抱きしめる。
ぎゅ、と衣擦れの音がする。
服越しでも伝わってくる、先輩の鼓動。

「あ、ああ……奈月先輩」
「冬間くぅん……」

先輩の切なげな声に、僕は無意識のままに唇を重ねた。

「ん……」

夢中になって舌を絡め合った。まだ意識が現実に戻ってこない。
さっき先輩は何と言っていただろう?

〝冬間くん……好きだよ〟

そうだ、確かにそう言った。
そして僕に今までの『安全な』セックスでなくともしたいと言ってきたんだ。

「ふぁ……」

先輩から唇を放すと、唾液の銀色の細い筋が木漏れ日の差し込む部屋で光った。
キス……こんなに甘いキスを何度もしてきたのに、僕と先輩は恋人ではなかった。
あの「好き」は異性として、そう、特別な男として僕を好きという意味なのだろうか?
先輩のことが分からなかった。
しかし、安全なセックスを心がけてきた先輩が、男の精を無防備に受け入れるという危険を許してくれたのなら……

147 :<セーフティ・フレンド>:2010/05/06(木) 14:50:08 ID:fZmYeluz
「先輩……」
「ん? どしたの?」

僕はそのまま先輩に覆い被さり、耳元で囁いた。

「さっきの、僕のこと『好き』って言ってくれたのって……その……」

先輩が少し僕を不安げに抱きしめる。

「あはは、どうだったかな? ああ言われたら中出しもハンパなく気持ち良かったでしょ?」

僕は冷や水をかけられたような感覚を覚えた。
やっぱり、あれは場を盛り上げるための単なる『プレイ』の一つだったのだ。

「あはは、わ、分かってるよ。と、冬間くん……アタシみたいな女に好きとか言われたら、リアルな話、困っちゃうよね」
「え?」
「好き、だけどさ、冬間くんが今まで通りセフレでいたいって言うなら、アタシはそれでもいいよ」
「奈月先輩……」

僕は先輩のうなじに鼻先を近づける。
甘さの中に混じる蠱惑的な先輩の女としての匂い。

「あん……冬間くん?」
「先輩、その『スキ』って、僕のこと、彼氏にしたいってことなんですよね?」
「……う……ん、まあ、そういうコトだけど……」

先輩は煮え切らない声で答え、僕の背中で服をきゅっと掴んだ。
それが先輩の不安感の表れだと、なんとなしに理解する。
同時に、身体を重ねた時の先輩の感情の機微は、直接的に理解できるようになっていることに気付く。

そうだもんな……僕と先輩の関係は、セックスから始まったんだから。

僕は先輩と初めて身体を交わられた時のことを思い出す。
僕は童貞で、先輩は経験豊富なお姉さんだった。
あの頃は、彼女がこんな風に僕の腕の中で不安に怯えるような姿はまるで想像できなかった。

「先輩、僕も先輩のこと、彼女にしたいって思ってますよ」
「え……!」

先輩がはっと僕の顔を見る。
エッチでリードしている時の彼女と、とても同一人物には見えない年相応の少女の顔がそこにあった。

148 :<セーフティ・フレンド>:2010/05/06(木) 14:50:51 ID:fZmYeluz
「っていうか、たぶん、そう思い始めたのは、僕の方が先ですよ」
「ホントに?」
「うん、ホントに……」

僕は先輩の……奈月の頬に手を添える。

「でも、〝岡惚れだ〟って、自分に言い聞かせてたんです。先輩は僕との間にそんな関係を望んでなんかいないって……」
「冬間くん……」
「だから、その……」

気恥ずかしさに顔が赤くなるのが分かる。
ああ、そうか、今自分は『告白』してるのか。
本来、性行為の後にするようなものではないはずのことを、互いにまだ繋がったままの状態で。
でも、それほど嫌悪感はなかった。
僕と先輩が惹かれ合うようになったのは他ならない身体の関係があったからなんだから。
終着点としてセックスの後というのも悪くないと思った。

「先輩が僕のこと好きなら、是非彼氏にしてほしいです」

僕は先輩の両頬に手を添え、そっと軽いキスをした。
今まで何度も性感を高めるためにしてきたキスではない、一つの儀式としてのキスだった。



「あーあ、日が暮れちゃったねー」

郷土資料館を出た頃には、夕焼けが当たりを朱に染めていた。
結局、あの後再び先輩の中で固さを取り戻してしまった僕のものは収まりがつかず、そのまま2ラウンド目を始めてしまった。
告白後に即エッチ、というのも何とも僕ららしい。

(そうなんだよな……)

前を気怠げに歩くメイド服姿の先輩を見つめる。
彼女は今、僕の彼女だ。

149 :<セーフティ・フレンド>:2010/05/06(木) 14:51:44 ID:fZmYeluz
「ねえ、先輩」
「ん?」
「僕ら、彼氏と彼女ですよね?」
「そうだよ、それがどうかした?」

あっけらかんに答える先輩。
そうなのだ、キスのときめきも、セックスの快楽も、およそ恋人同士が順を追って絆を深めていく行為を、
僕らは全て済ませてしまっている。それも、告白前にだ。

「実感沸かない?」

僕の思っていることを見透かしたのか、先輩はのぞき込んでくる。

「ん……そ、そんなことないですけど」
「嘘!」

先輩は僕をじろりと睨んだ。
ずい、と指さされる。

「〝彼女〟に嘘つかない!」
「う……」

僕は白旗を揚げるように頷いた。

「よろしー」

先輩は破顔すると、今度は僕の隣に寄り添うようにしてきた。
ニコニコとしながら歩いている。
歩き難くないのかな?

150 :<セーフティ・フレンド>:2010/05/06(木) 14:52:55 ID:fZmYeluz
「奈月先輩?」

僕が尋ねると、先輩がキッとこちらを向いた。

「もー、鈍いなぁ!」
「え?」
「腕組んでってわかんない?」

先輩はひったくるように僕の二の腕を掴み、自分の腕に絡めた。

「わっ!?」
「もう! だったらアタシもがんばるからさ」
「え?」
「彼女らしいこと、これからいっぱいしていこうよ」
「先輩……」

先輩の言葉に胸の奥に熱いものがこみ上げてくるのを感じた。

「そうですね……」

僕も寄り添うように先輩の肩を抱いた。

「僕も、彼氏としてがんばります」
「冬間くん堅いって」
「そ、そうですか?」
「あはははっ」

先輩が笑う。
屈託のないヒマワリのような笑顔。
この女性が自分の恋人であることを心底幸せに思った。

151 :<セーフティ・フレンド>:2010/05/06(木) 14:53:38 ID:fZmYeluz
と、

「あっ」
「どうしたんですか?」
「あのさ……早速なんだけど、彼氏として相談したいことあるんだけど」

先輩がどこか意地悪そうに僕を見つめた。



文化祭一日目が終わり、体調不良と嘘をついて片付けを早めに抜けて先輩と落ち合った。
彼女が案内してやってきたのは、とあるビルの前だった。
その建物を前にして、分かってはいたが緊張してしまう。
二人とも制服姿なのだ、誰かに見られはしないかと不安もあった。

「こういうとこ来るのは初めて……?」

先輩が飄々とした表情で聞いてくる。

「は、はい」
「ふふ、まあそうだよね、緊張しなくていいよ、アタシは何回か来たことあるから」

こういったところで、やはり彼女は自分などより性に関して経験豊かだと痛感する。

「大丈夫、アタシについてきて」

彼女がビルの入り口へと入っていくのを追いかける。
看板には大きく『産婦人科』と書かれていた。

152 :<セーフティ・フレンド>:2010/05/06(木) 14:54:40 ID:fZmYeluz


「ごめんごめん、やっぱり男の子には恥ずかしかったかな」

病院を出たところで先輩がそう苦笑いする。
僕は首を横に振った。

「い、いいんですよ。元はといえば僕が調子乗って中に出しちゃったのが原因ですし……」
「ありがと」

先輩は処方されたアフターピル……緊急避妊薬をカバンにしまった。
避妊のない性行為後、72時間以内なら高確率で妊娠を避けることができる薬だ。

「先輩……」

僕は先輩の家まで送るつもりで歩き始めた。
きゅっと手を握る。

「ん? なあに?」
「そ、その、僕明日も先輩の家にいていいですか?」

先輩がこちらをきょとんとした顔で見つめる。

「どうして? エッチしたい?」
「違うんです、その……」

僕はさっき産婦人科の先生に注意されたことを思い出した。
アフターピルはかなりの強い薬で、人によっては激しい頭痛や嘔吐感が発生する可能性があるという説明だ。
僕は……恋人にそんなリスクを背負わせたことになる。
そのことを伝えると、先輩が少し複雑な表情を浮かべた。

「そんな心配されたのって初めてだな……」
「すみません……先輩ずっと中出しNGって言ってたのに」
「ううん、違うんだ。実はさ、中にされちゃったこと結構あるんだ」

僕はぎょっとした表情を隠せなかった。
先輩は僕のその顔に不安そうに目をそらした。

153 :<セーフティ・フレンド>:2010/05/06(木) 14:56:00 ID:fZmYeluz
「アタシの身体心配してくれる彼氏なんていなかったから」
「……今まで何人くらい経験あるんです?」
「エッチ経験? それとも中にだされた人数?」
「両方です」
「どうしても……知りたい?」

先輩が握った手の力を強める。

「アタシ……冬間くんに嫌われたくない」
「知りたいよ。奈月のこと、彼氏なんだから……」

先輩は泣きそうな顔になっていた。
意地悪なことだとは思ったけど、でも、僕はやはり知りたかった。
嫉妬や嫌悪感とは別の、彼女を受け入れたいがための要求だった。
それは先輩にも何となくでも伝わったのか、ややあって苦笑を漏らした。

「……冬間くんに処女あげたかったな」
「あはは!」

僕は思わず笑ってしまった。
先輩が乾いた笑みを浮かべる。

「そ、そうだよね、アタシみたいなビッチが処女とか純愛とか……んっ!?」

僕は夜道の真ん中で彼女を抱きしめ、唇を強引に奪っていた。
突然のことに、先輩も目を丸くしている。
でも僕にはハッキリとしていることが一つだけあった。

「処女なんていらないんだ。僕は今の先輩の明るくてエッチで一緒にいて楽しいのが好きなんだから」
「……冬間くん」

先輩は潤んだ瞳で僕を見ている。
そして、彼女の方からもう一度キスをしてくる。
人気のない道だったけど、誰がきてもおかしくない中。
でも、そんなことは気にならなかった。

「アタシも冬間くんが好き……セフレが出会いでも誰よりも冬間くんのことが好きだよ」

僕らは互いの愛情を確かめ合うように、何度もそのままキスを交わしていた。
ロマンチックさの欠片もなかったけど、僕らには相手の存在があればもうどうでもよかった。

154 :<セーフティ・フレンド>:2010/05/06(木) 14:57:23 ID:fZmYeluz


<エピローグ>

いつもの視聴覚準備室で、僕らは放課後を楽しんでいた。

「アっ あぁん! あうっ! いいっ!」

僕と先輩はだらしなく制服を脱ぎ散らかし、熱情のままに交わっていた。
僕はソファに腰掛けた状態で、先輩が上になって腰を振っている。
対面座位はお互いが密着できる上、キスもしやすいので、最近はこの体位ですることが多い。
先輩の激しい上下運動に、その豊かな乳房が僕の目前で跳ねる。
僕はその蕾のような乳首の一つを口に含んで転がした。

「あひぃん! そんな吸っちゃだめぇ!」
「ちゅっ……ちゅば……」

甘い刺激に、先輩の膣肉が僕のペニスを切なげに締め上げてくれる。

「おぉ……も、もう出そうだ……」

僕は絶頂が近いことを彼女に伝える。
先輩もそれは同じらしく、挑発的な目で髪を掻き上げる。

「あはぁ……じゃあ、冬間くん、ヒニンしなきゃ」
「うん、分かってるよ」

僕はソファの側に用意してあった小さなケースを取り上げ、
そこから一錠の薬をつまみ出す。
それを自らの口に入れ、次に水を含む。
彼女が顔を近づけてくると、キスをするように唇を重ねる。

「んく……」

口移しで薬と水を彼女に受け渡す。
彼女は薬を嚥下し、そのまま舌を絡めてディープキスを続けた。

「んはぁ……これでよし……」

彼女は満足げに唇から垂れる水を拭うと、最後とばかりに腰を振り始めた。
ソファのスプリングはギシギシと悲鳴を上げ、同時に僕もあっという間に限界に追い込まれてしまう。

155 :<セーフティ・フレンド>:2010/05/06(木) 14:58:05 ID:fZmYeluz
「あっ んあっ うあっ あふっ!」
「うっ!?」
「あぁんっ!? 出るの? 出ちゃうんだ!? あはっ! 出して、いっぱい出してぇ!」

先輩はグチュグチュと愛液を絡ませる音を立てながら僕を抱き寄せる。
そして、最後の一突きで絶頂に達し、身体を弓なりに反らして叫んだ。

「ナマで中に出してぇっ!」
「うぁああ!?」

僕は彼女の最奥、子宮口の目前で大量の精液を放出していた。
彼女の生で感じる膣の粘膜に包まれ、最高の快楽の波が押し寄せてくる。

「あぁああ! 凄い……中、いっぱい……」

クチュクチュと先輩は腰を小刻みに動かし、快楽を貪るように余韻に浸っている。

「奈月……」
「冬間くん……」

温かい互いの鼓動を感じあいながら、僕らは笑みを浮かべてそっと口づけを交わした。



「ねえ、奈月先輩?」
「ん、どしたの?」

カサカサとティッシュで膣内から溢れてくる僕の精液を拭き取りながら先輩は応じる。
僕はさっきのケースをちらりと見やる。

「副作用とかないですよね?」
「えへへ、だいじょぶだよ。生理も軽くなったし」

副作用とは、他でもないさっき行為中に先輩に口移しした薬のことだ。
あれは僕らが、コンドームを着ける代わりの信頼の儀式として今は定着してしまっている。
そう、今の僕たちはコンドーム避妊ではなく、経口避妊薬……いわゆるピルで妊娠を防いでいた。
毎日欠かさない服用が必要だが、彼女は「忘れないから」という理由で放課後の僕とのエッチの時に飲むようにしている。
でも、彼女が服用を始めてしばらく経つが、男としては女性に負担をかけているという申し訳なさがあった。

156 :<セーフティ・フレンド>:2010/05/06(木) 14:59:02 ID:fZmYeluz
「何か異常があったらすぐに止めていいんですよ?」
「ヤだ。ゴム着けたらキモチ良くないもん」
「でも……」

先輩はティッシュを丸めて始末すると、裸のまま僕に甘えるように抱きついてきた。

「先輩?」
「……冬間くんとしかエッチしないんだから性病なんか気にしなくていいんだもん。だったら生の方がいいし」

先輩が猫のように僕の胸板に頬をすり寄せる。
僕はそっと彼女の頭を撫で、それ以上何も言わないことにした。
考えてみれば、彼女はある意味処女よりも大切なものを僕に許してくれたのだ。
僕一人に対する貞操と愛情。
今までの彼氏には誰一人許したことのなかった生でのセックスを許してくれたのがその証明だ。
僕は今、彼女にとってのセーフティフレンドから、セーフティラヴァーになったのかもしれない。

「先輩」
「うん」
「一緒に帰ろっか」
「うん!」

セックスに始まり、恋人同士になった今でもそれは変わらないように見える。
でも、僕らの関係は確実に進んでいるに違いなかった。
黄昏時の視聴覚準備室で、僕らは二人じゃれあうように服を身につけながら、
今この時を最愛の人と過ごせる幸せを噛みしめていた。

<終わり>

最終更新:2009年07月17日 14:47