そして―――――― ◆9L.gxDzakI
ルルーシュ・ランペルージは逝った。
これにて螺旋の王が筆を執った物語の、全ての要素が完結したように見える。
月の箱庭に囚われ、それでも屈することなく立ち向かった者達のその後は、これで一通り語られた。
これにて螺旋の王が筆を執った物語の、全ての要素が完結したように見える。
月の箱庭に囚われ、それでも屈することなく立ち向かった者達のその後は、これで一通り語られた。
スパイク・スピーゲルは戦いで失った手のひらを取り戻し、愛する者との穏やかな暮らしを掴み取った。
菫川ねねねは元の世界で作家稼業に戻りながらも、またもや面倒事に巻き込まれてしまったようだ。
小早川ゆたかと鴇羽舞衣は、ゆたかの世界に近しくも異なる世界で、新たな日常を歩み始めた。
唯一ルルーシュ・ランペルージのみが絶望に直面し、自ら己の未来を閉じた。
ギルガメッシュの物語に至っては、未だ完結してすらいない。王ドロボウとのいたちごっこの繰り返しだ。
そしてヴィラルはアンチ=スパイラルが滅びた後も、悠久の夢の中に漂っている。
菫川ねねねは元の世界で作家稼業に戻りながらも、またもや面倒事に巻き込まれてしまったようだ。
小早川ゆたかと鴇羽舞衣は、ゆたかの世界に近しくも異なる世界で、新たな日常を歩み始めた。
唯一ルルーシュ・ランペルージのみが絶望に直面し、自ら己の未来を閉じた。
ギルガメッシュの物語に至っては、未だ完結してすらいない。王ドロボウとのいたちごっこの繰り返しだ。
そしてヴィラルはアンチ=スパイラルが滅びた後も、悠久の夢の中に漂っている。
ロージェノムは死んだ。
チミルフも死んだ。グアームも死んだ。シトマンドラも死んだ。アディーネも死んだ。
ウルフウッドも死んだ。東方不敗も死んだ。
スカーも死んだ。ガッシュも死んだ。 ドモンも死んだ。シャマルも死んだ。フリードも死んだ。
カミナも死んだ。クロミラも死んだ。
ルルーシュも生き残った後に死んだ。
スパイクが、ゆたかが、舞衣が、ねねねが、ギルガメッシュが、そしてヴィラルが生き延びた。
物語の結末は、これで全て描かれたように見える。
残された全ての要素に決着がつき、堂々の完結を迎えたように見える。
チミルフも死んだ。グアームも死んだ。シトマンドラも死んだ。アディーネも死んだ。
ウルフウッドも死んだ。東方不敗も死んだ。
スカーも死んだ。ガッシュも死んだ。 ドモンも死んだ。シャマルも死んだ。フリードも死んだ。
カミナも死んだ。クロミラも死んだ。
ルルーシュも生き残った後に死んだ。
スパイクが、ゆたかが、舞衣が、ねねねが、ギルガメッシュが、そしてヴィラルが生き延びた。
物語の結末は、これで全て描かれたように見える。
残された全ての要素に決着がつき、堂々の完結を迎えたように見える。
だが。
まだ、足りない。
足りないのだ。
この物語に残されたファクターの、全てを語り終えたと断じるには、まだある要素が明らかに足りない。
そもそも、もう一度あらすじを振り返ってみよう。
幾多の犠牲を払った参加者達は、遂にカミナとクロミラの駆るグレンラガンによって、見事実験の舞台を脱出。
最後に残された刺客・ウルフウッドを倒し、アンチ=スパイラルとの交渉にも一応成功。
アンチ=スパイラルに与えられた技術により、ようやく元の世界へと戻ることができた。
そこから先は前述の通りだ。
一見すると、全てのエピローグは語られたように見える。
だが、足りない。
よくよく読み返してみれば、この構図からは、ある者の結末が決定的に抜け落ちている。
そう。
この物語に残されたファクターの、全てを語り終えたと断じるには、まだある要素が明らかに足りない。
そもそも、もう一度あらすじを振り返ってみよう。
幾多の犠牲を払った参加者達は、遂にカミナとクロミラの駆るグレンラガンによって、見事実験の舞台を脱出。
最後に残された刺客・ウルフウッドを倒し、アンチ=スパイラルとの交渉にも一応成功。
アンチ=スパイラルに与えられた技術により、ようやく元の世界へと戻ることができた。
そこから先は前述の通りだ。
一見すると、全てのエピローグは語られたように見える。
だが、足りない。
よくよく読み返してみれば、この構図からは、ある者の結末が決定的に抜け落ちている。
そう。
――参加者達をそれぞれの世界に帰した後、アンチ=スパイラルはどうなったのか?
ヴィラルのエピソードを読み返してみよう。
天元突破者を手に入れた、この物語のアンチ=スパイラルは、その後螺旋族に滅ぼされたと記されている。
賽を転がしても零や七は出ないが、一から六のうちのいずれかの数字が、延々と連続する可能性は存在する。
どれほどの敗北の世界を重ねても、どこかで螺旋族の勝利する可能性はあるはずだ。
そして彼らの世界では、その可能性が実践された、と。
だが、彼ないし彼女がいかにして倒されたかは、そこには詳細には記されていない。
断片的な文面からは、その要素がごっそりそぎ落とされているのだ。
残されたこのたった1つの要素を語らずして、物語が完結を迎えられるはずなどないではないか。
誰がどのような形で天元突破に目覚め、どのような戦いの果てに勝利したか。
誰がいつどこで何度賽を振り、どの目が連続して出続けたのか。
――否。
それだけではない。
厳密に言えば、この賽のたとえ話からも、ある可能性が抜け落ちている。
この仮定においては、振るべき賽がどんなものかは定められていないのだ。
事前に賽の情報は与えられていない。
であれば、それがどんな材質だろうと、どんな色であろうと自由。
要するに、こういうことだ。
天元突破者を手に入れた、この物語のアンチ=スパイラルは、その後螺旋族に滅ぼされたと記されている。
賽を転がしても零や七は出ないが、一から六のうちのいずれかの数字が、延々と連続する可能性は存在する。
どれほどの敗北の世界を重ねても、どこかで螺旋族の勝利する可能性はあるはずだ。
そして彼らの世界では、その可能性が実践された、と。
だが、彼ないし彼女がいかにして倒されたかは、そこには詳細には記されていない。
断片的な文面からは、その要素がごっそりそぎ落とされているのだ。
残されたこのたった1つの要素を語らずして、物語が完結を迎えられるはずなどないではないか。
誰がどのような形で天元突破に目覚め、どのような戦いの果てに勝利したか。
誰がいつどこで何度賽を振り、どの目が連続して出続けたのか。
――否。
それだけではない。
厳密に言えば、この賽のたとえ話からも、ある可能性が抜け落ちている。
この仮定においては、振るべき賽がどんなものかは定められていないのだ。
事前に賽の情報は与えられていない。
であれば、それがどんな材質だろうと、どんな色であろうと自由。
要するに、こういうことだ。
そもそもアンチ=スパイラルを倒したのは、本当に螺旋力だったのか?
問題外の仮定かもしれない。
文面には確かに、アンチ=スパイラルは螺旋の力の前に敗れた、と明記されている。
だが、所詮それは書き手の主観だ。
物語とは、その筆を執った者が思い描いた通りにしか書かれない。
つまりこの螺旋力が、実は作家の思い違いであり、本当は全くの別物であった可能性もありうるのだ。
仮によく似たものが存在すれば。
螺旋力と同じく緑色の輝きを放ち、生命の進化を促す力が存在したとすれば。
そのくせその性質は、実は全くの別物であったとすれば。
文面には確かに、アンチ=スパイラルは螺旋の力の前に敗れた、と明記されている。
だが、所詮それは書き手の主観だ。
物語とは、その筆を執った者が思い描いた通りにしか書かれない。
つまりこの螺旋力が、実は作家の思い違いであり、本当は全くの別物であった可能性もありうるのだ。
仮によく似たものが存在すれば。
螺旋力と同じく緑色の輝きを放ち、生命の進化を促す力が存在したとすれば。
そのくせその性質は、実は全くの別物であったとすれば。
まどろっこしい物言いは好みではないだろう。
ではそろそろ、単刀直入に言うとしよう。
ではそろそろ、単刀直入に言うとしよう。
――この世界のアンチ=スパイラルを滅ぼしたのは、実は螺旋力ではなかった。
◆
『……何ということだ……』
無明の宇宙の暗黒の中、ぼんやりと浮かぶ漆黒の影。
2つの目と口だけが白く染まったヒトガタが、目の前の光景に頭を抱えている。
信じられない。
頭の悪い感想だが、今のアンチ=スパイラルには、この一言が限界だ。
数多の多元宇宙全てを制する力も、数多の多元宇宙全てより得た叡智も、まるで役に立ちはしない。
いいや、たとえここにいるのがアンチ=スパイラルでなかったとしても、この状況を理解できる者がいるかどうか。
無限に広がる超螺旋宇宙。そこに展開されているのは戦場。
反螺旋種族の大軍勢が、同等の敵性戦力と戦争を繰り広げている。
ただ文章に書き起こすだけならば、さほど気になることでもないだろう。
しかし、それでもありえないのだ。
たった今防衛線を展開しているのは、そんじょそこらの軍隊ではない。
無限に広がる世界の分岐、その全てを支配することすら可能とする、アンチ=スパイラルの大軍団なのだ。
幾千、幾万では語れない。
その数は那由多の彼方すら突破し、無量大数の領域にさえ。
そして今攻め入ってきた敵勢が、それとほとんど互角の物量を誇っているのだ。
それだけではない。
膠着状態にあった戦況は徐々に押され、今や逆にこちらが不利に陥っている。
ムガンが。アシュタンガ級が。ハスタグライ級が。パダ級が。
迫りくる怒涛の大軍団を前に、それらがみるみるうちに蹂躙されていく。
こんなことがありえるものか。
多元宇宙の彼方にも、このような苦境は存在した。
大いなる道程の果て、螺旋に目覚めた青年・シモンの操る螺旋力の魔神――超銀河グレンラガンの活躍だ。
だが、それもあくまで孤高の将。
支える者達がいたとしても、実際に動いていた機動兵器はグレンラガンのみ。
互角の物量戦に持ち込まれ、その上敗北に近づいているなど、まさに前代未聞の事象。
いいやそもそも、こいつらは一体何者なのだ。
それは船だ。
先端に顔が付いているものの、紛れもなくそれは宇宙の船だ。
それならまだいい。かの螺旋族の巨大戦艦――カテドラル・テラと同様の特徴。
だが、似ているのはその一点だけ。
赤、白、黄色、その他諸々。それぞれ多種多様な色に塗り分けられた艦隊は、奴らのそれとはまるで違う。
細かな部分の造形は、螺旋族のそれを大きく逸脱している。
中には複数の機体で合体し、ヒトガタをなす物もある。その形状にもまるで見覚えがない。
今まさに襲い来る侵略者達は、多元宇宙のどの世界にも存在しないのだ。
何より、あれは本当に螺旋族なのか。
確かに緑の光を動力としているが、あの艦隊が操る武器の性質は、螺旋力とは微妙に異なる気がする。
スパイラルの象徴――ドリルを操る機体もいるにはいる。だが、それだけではないのだ。
トマホークを振るう物。拳で殴りかかる物。剣で相手を両断する物。ミサイルの嵐を巻き起こす物。
幾千幾万もの姿形の、あらゆる力が存在している。
果たして螺旋の力とは、これほどまでの柔軟なものであったか。
ひょっとするとここにいるのは、もはや螺旋族ですらない、全く別の存在ではないのか。
『――否』
だが、しかし。
『否否否否否否否否否否否否ぁぁぁっ!』
そんな結論は認められない。
断じて認めてなるものか。
螺旋力と戦うため。そのためだけに身につけた、天下無双のこの力。
それが螺旋力ですらない、どこの馬の骨とも分からぬ力に、そうそう屈してなるものか。
あれは螺旋力だ。
誰が何と言おうと螺旋力だ。螺旋力でないはずがない。
そして。
無明の宇宙の暗黒の中、ぼんやりと浮かぶ漆黒の影。
2つの目と口だけが白く染まったヒトガタが、目の前の光景に頭を抱えている。
信じられない。
頭の悪い感想だが、今のアンチ=スパイラルには、この一言が限界だ。
数多の多元宇宙全てを制する力も、数多の多元宇宙全てより得た叡智も、まるで役に立ちはしない。
いいや、たとえここにいるのがアンチ=スパイラルでなかったとしても、この状況を理解できる者がいるかどうか。
無限に広がる超螺旋宇宙。そこに展開されているのは戦場。
反螺旋種族の大軍勢が、同等の敵性戦力と戦争を繰り広げている。
ただ文章に書き起こすだけならば、さほど気になることでもないだろう。
しかし、それでもありえないのだ。
たった今防衛線を展開しているのは、そんじょそこらの軍隊ではない。
無限に広がる世界の分岐、その全てを支配することすら可能とする、アンチ=スパイラルの大軍団なのだ。
幾千、幾万では語れない。
その数は那由多の彼方すら突破し、無量大数の領域にさえ。
そして今攻め入ってきた敵勢が、それとほとんど互角の物量を誇っているのだ。
それだけではない。
膠着状態にあった戦況は徐々に押され、今や逆にこちらが不利に陥っている。
ムガンが。アシュタンガ級が。ハスタグライ級が。パダ級が。
迫りくる怒涛の大軍団を前に、それらがみるみるうちに蹂躙されていく。
こんなことがありえるものか。
多元宇宙の彼方にも、このような苦境は存在した。
大いなる道程の果て、螺旋に目覚めた青年・シモンの操る螺旋力の魔神――超銀河グレンラガンの活躍だ。
だが、それもあくまで孤高の将。
支える者達がいたとしても、実際に動いていた機動兵器はグレンラガンのみ。
互角の物量戦に持ち込まれ、その上敗北に近づいているなど、まさに前代未聞の事象。
いいやそもそも、こいつらは一体何者なのだ。
それは船だ。
先端に顔が付いているものの、紛れもなくそれは宇宙の船だ。
それならまだいい。かの螺旋族の巨大戦艦――カテドラル・テラと同様の特徴。
だが、似ているのはその一点だけ。
赤、白、黄色、その他諸々。それぞれ多種多様な色に塗り分けられた艦隊は、奴らのそれとはまるで違う。
細かな部分の造形は、螺旋族のそれを大きく逸脱している。
中には複数の機体で合体し、ヒトガタをなす物もある。その形状にもまるで見覚えがない。
今まさに襲い来る侵略者達は、多元宇宙のどの世界にも存在しないのだ。
何より、あれは本当に螺旋族なのか。
確かに緑の光を動力としているが、あの艦隊が操る武器の性質は、螺旋力とは微妙に異なる気がする。
スパイラルの象徴――ドリルを操る機体もいるにはいる。だが、それだけではないのだ。
トマホークを振るう物。拳で殴りかかる物。剣で相手を両断する物。ミサイルの嵐を巻き起こす物。
幾千幾万もの姿形の、あらゆる力が存在している。
果たして螺旋の力とは、これほどまでの柔軟なものであったか。
ひょっとするとここにいるのは、もはや螺旋族ですらない、全く別の存在ではないのか。
『――否』
だが、しかし。
『否否否否否否否否否否否否ぁぁぁっ!』
そんな結論は認められない。
断じて認めてなるものか。
螺旋力と戦うため。そのためだけに身につけた、天下無双のこの力。
それが螺旋力ですらない、どこの馬の骨とも分からぬ力に、そうそう屈してなるものか。
あれは螺旋力だ。
誰が何と言おうと螺旋力だ。螺旋力でないはずがない。
そして。
『我らは負けるわけにはいかんのだ――螺旋の力を操る者共にィッ!』
その螺旋の力にすらも、屈するわけにはいかないのだ。
進化の成れの果て/袋小路の変異/破滅を生む暴力の権化――スパイラル・ネメシス。
起こさせるわけにはいかない。負けるわけにはいかない。
螺旋族は滅ぼしつくさねば。それこそが宇宙を守る道なのだ。
自分達が破滅することは、すなわち宇宙の破滅を意味するのだ。
故に、アンチ=スパイラルは迎え撃つ。
最大最強の戦力で――グランゼボーマで迎え撃つ。
いつからかそこに存在していた、無頼の来客のその頭を。
混沌の漆黒の中に浮かび上がった、巨大な赤きヒトガタを。
鬼神。
まさにその一言こそ、その威容を表すにふさわしい。
巨大。かの者のサイズを表現するのには、もはやその一言すら生ぬるい。
超螺旋宇宙の中心で、漆黒の魔神と向き合う姿は、その体躯とほぼ同等の大きさ。
銀河すらもその手に掴む、グランゼボーマと同等なのだ。
それがいかなる意味を持つのか、もはや言葉で語る必要はない。語ることのできる言葉すらない。
幾度血を浴び続けてきたのだろう。
幾度敵を退けてきたのだろう。
真紅に燃える身体の頂点、その頭部から突き出しているのは、まさしく鬼の五本角。
おぞましくも神々しい。
神のごとき荘厳さと、悪魔のごとき恐ろしさ。
すなわち、鬼神。
『受けよ螺旋族! インフィニティィィィビッグバン――ストオォォォォォームッ!!!』
瞬間、宇宙に激震奔る。
無音の真空空間が、あるはずもない音に鳴動する。
グランゼボーマが掴むのは銀河。2つの銀河を1つに合わせ、その反発が爆発を生む。
まさに天地開闢の力。
三千世界の暗闇を、眩い光輝で照らし出す創世の爆発。
アンチ=スパイラルの持つ最大火力――その威力、まさにビッグバン。
激烈な出力が激流をなし、赤き鬼神へと襲い掛かる。
人も、機械も、月も、惑星も、銀河も、世界の全てを一挙に飲み込み、蹂躙し焼き尽くす必殺の熱量。
耐えられるものなど皆無。避けられるものなど絶無。
人知など当に突き抜けた波濤が殺到し、侵略の鬼を飲み込んだ。
《――■■■■ビーム》
かに見えた。
刹那、激震は重ねられる。
天地創世の紫炎と真っ向からぶつかるのは、新緑に輝く生命の波動。
鬼神の放つ一筋の光条が、インフィニティ・ビッグバン・ストームをも受け止める。
その出力、まさにビッグバン。
そちらがそう来るというのなら、こちらも合わせてやろうと言わんばかりに。
折り重ねられた超新星爆発。超螺旋宇宙を揺るがす猛烈な衝撃。
ビッグバン同士がぶつかったのだ。その余波はもはや言うに語らず。
銀河が消える。銀河が消える。銀河が、銀河が、銀河が。
新たな世界を生み出す光は、その矛先を破滅へと転じる。
『馬鹿な……』
ありえない。
こんなことがあるはずがない。
宇宙に並びうるはずもない一撃が、こうもあっさりと凌がれた。
あらゆる戦闘の過程を省略し、一撃必殺の覚悟で放った攻撃が、ただの一発で無力化される。
その螺旋の力にすらも、屈するわけにはいかないのだ。
進化の成れの果て/袋小路の変異/破滅を生む暴力の権化――スパイラル・ネメシス。
起こさせるわけにはいかない。負けるわけにはいかない。
螺旋族は滅ぼしつくさねば。それこそが宇宙を守る道なのだ。
自分達が破滅することは、すなわち宇宙の破滅を意味するのだ。
故に、アンチ=スパイラルは迎え撃つ。
最大最強の戦力で――グランゼボーマで迎え撃つ。
いつからかそこに存在していた、無頼の来客のその頭を。
混沌の漆黒の中に浮かび上がった、巨大な赤きヒトガタを。
鬼神。
まさにその一言こそ、その威容を表すにふさわしい。
巨大。かの者のサイズを表現するのには、もはやその一言すら生ぬるい。
超螺旋宇宙の中心で、漆黒の魔神と向き合う姿は、その体躯とほぼ同等の大きさ。
銀河すらもその手に掴む、グランゼボーマと同等なのだ。
それがいかなる意味を持つのか、もはや言葉で語る必要はない。語ることのできる言葉すらない。
幾度血を浴び続けてきたのだろう。
幾度敵を退けてきたのだろう。
真紅に燃える身体の頂点、その頭部から突き出しているのは、まさしく鬼の五本角。
おぞましくも神々しい。
神のごとき荘厳さと、悪魔のごとき恐ろしさ。
すなわち、鬼神。
『受けよ螺旋族! インフィニティィィィビッグバン――ストオォォォォォームッ!!!』
瞬間、宇宙に激震奔る。
無音の真空空間が、あるはずもない音に鳴動する。
グランゼボーマが掴むのは銀河。2つの銀河を1つに合わせ、その反発が爆発を生む。
まさに天地開闢の力。
三千世界の暗闇を、眩い光輝で照らし出す創世の爆発。
アンチ=スパイラルの持つ最大火力――その威力、まさにビッグバン。
激烈な出力が激流をなし、赤き鬼神へと襲い掛かる。
人も、機械も、月も、惑星も、銀河も、世界の全てを一挙に飲み込み、蹂躙し焼き尽くす必殺の熱量。
耐えられるものなど皆無。避けられるものなど絶無。
人知など当に突き抜けた波濤が殺到し、侵略の鬼を飲み込んだ。
《――■■■■ビーム》
かに見えた。
刹那、激震は重ねられる。
天地創世の紫炎と真っ向からぶつかるのは、新緑に輝く生命の波動。
鬼神の放つ一筋の光条が、インフィニティ・ビッグバン・ストームをも受け止める。
その出力、まさにビッグバン。
そちらがそう来るというのなら、こちらも合わせてやろうと言わんばかりに。
折り重ねられた超新星爆発。超螺旋宇宙を揺るがす猛烈な衝撃。
ビッグバン同士がぶつかったのだ。その余波はもはや言うに語らず。
銀河が消える。銀河が消える。銀河が、銀河が、銀河が。
新たな世界を生み出す光は、その矛先を破滅へと転じる。
『馬鹿な……』
ありえない。
こんなことがあるはずがない。
宇宙に並びうるはずもない一撃が、こうもあっさりと凌がれた。
あらゆる戦闘の過程を省略し、一撃必殺の覚悟で放った攻撃が、ただの一発で無力化される。
『……ああ、そうか……』
ずしん、ずしん、と。
足音が聞こえてくるようだった。
大地なきはずの宇宙を闊歩する、真紅の鬼神の足音が。
『はははは……そうか、そういうことだったのか!』
遂にアンチ=スパイラルは理解する。
半ば強引に解釈する。己自身を納得させる。
これが、これこそが。
我々が最も恐れてきた、スパイラル・ネメシスの発現なのだと。
このおぞましき鬼神の姿こそが、螺旋の進化の成れの果てなのだ、と。
赤き拳が振り上がる。
気付けば、両者の距離には差などなかった。
ひとたびその鉄拳を振り下ろせば、この身は粉々に砕かれるだろう。
ああ、そうだ。
我々は失敗してしまったのだ。
避けねばならなかった破滅の時を、この世界では迎えてしまったのだ。
『見るがいい! これが貴様ら螺旋族の――いや! 螺旋力の行き着く、おぞましき姿だァッ!!』
叫ぶ。
絶叫する。
自らの監視するモルモット達へと。
かの倣岸にして臆病な螺旋の王のもと、箱庭に集められた人間達へと。
気まぐれの果てにそれぞれの世界へと送り、監視を続けていた実験動物達へと。
認めよう。
ここが我らの死に場所だ。
我らは螺旋を倒せなかった。
最悪の瞬間を回避することもできず、無様な結果を晒してしまった。
だが、この結末は他人事ではない。
お前達にも起こりうる未来なのだと。
螺旋の本能の赴くままに、愚かにも進化を続けるお前達とて、最後にはこの道を辿るのだと。
これは警告だ。
その警告のためにこそ我らは果てよう。
どの道抵抗したとて、到底かなうはずもないのだ。
相手はスパイラル・ネメシスなのだから。
この無限の多元宇宙の中、唯一アンチ=スパイラルが恐れる存在なのだから。
自力で倒せる存在など、一体誰が恐れるものか。
最後の瞬間、くわとその姿を睨みつける。
グランゼボーマの頭部へと。
アンチ=スパイラルの本星へと。
吸い込まれるようにして振り下ろされる、その拳をじっと睨みつける。
右の拳を振り上げる、忌まわしき進化の鬼神の姿を。
その名を叫んだ。
それが最期の矜持であるかのように。
宇宙の果てまでも轟かすように、その名をはっきりと絶叫した。
ずしん、ずしん、と。
足音が聞こえてくるようだった。
大地なきはずの宇宙を闊歩する、真紅の鬼神の足音が。
『はははは……そうか、そういうことだったのか!』
遂にアンチ=スパイラルは理解する。
半ば強引に解釈する。己自身を納得させる。
これが、これこそが。
我々が最も恐れてきた、スパイラル・ネメシスの発現なのだと。
このおぞましき鬼神の姿こそが、螺旋の進化の成れの果てなのだ、と。
赤き拳が振り上がる。
気付けば、両者の距離には差などなかった。
ひとたびその鉄拳を振り下ろせば、この身は粉々に砕かれるだろう。
ああ、そうだ。
我々は失敗してしまったのだ。
避けねばならなかった破滅の時を、この世界では迎えてしまったのだ。
『見るがいい! これが貴様ら螺旋族の――いや! 螺旋力の行き着く、おぞましき姿だァッ!!』
叫ぶ。
絶叫する。
自らの監視するモルモット達へと。
かの倣岸にして臆病な螺旋の王のもと、箱庭に集められた人間達へと。
気まぐれの果てにそれぞれの世界へと送り、監視を続けていた実験動物達へと。
認めよう。
ここが我らの死に場所だ。
我らは螺旋を倒せなかった。
最悪の瞬間を回避することもできず、無様な結果を晒してしまった。
だが、この結末は他人事ではない。
お前達にも起こりうる未来なのだと。
螺旋の本能の赴くままに、愚かにも進化を続けるお前達とて、最後にはこの道を辿るのだと。
これは警告だ。
その警告のためにこそ我らは果てよう。
どの道抵抗したとて、到底かなうはずもないのだ。
相手はスパイラル・ネメシスなのだから。
この無限の多元宇宙の中、唯一アンチ=スパイラルが恐れる存在なのだから。
自力で倒せる存在など、一体誰が恐れるものか。
最後の瞬間、くわとその姿を睨みつける。
グランゼボーマの頭部へと。
アンチ=スパイラルの本星へと。
吸い込まれるようにして振り下ろされる、その拳をじっと睨みつける。
右の拳を振り上げる、忌まわしき進化の鬼神の姿を。
その名を叫んだ。
それが最期の矜持であるかのように。
宇宙の果てまでも轟かすように、その名をはっきりと絶叫した。
―― ゲ ッ タ ー エ ン ペ ラ ー ! ! !
◆
戦いは終わる。
この世界での敗北。
あまねく次元世界のその1つで、アンチ=スパイラルを滅ぼしたのは、螺旋族の力ではなかった。
ゲッター線。
反螺旋族の知りうる世界のどこにも、存在すら観測されていなかった力。
宇宙の崩壊を止めるために、進化を留めようとする彼らとは対照的に。
宇宙の崩壊を止めるために、それを倒しうる進化を加速させる力。
彼らがこの世界に現れた理由は定かではない。
あるいは、かのロージェノムが多元宇宙の扉を開いたことで、異界の門が開いたのか。
彼らの知りえなかった宇宙のファクターが、認識の壁を越えて現れたのか。
いずれにせよ、大いなる敵と戦うために、更なる進化を求めるゲッター艦隊にとって、彼らは敵に他ならなかった。
破綻を恐れ停滞を望む連中など、この宇宙には必要なき種族。
ましてそれが、進化を望む種族を食い潰そうとするならなおさらだ。
故に、制裁を下した。
艦隊の一部を、渦中の螺旋族とやらの星へ応援によこしたが、その戦線も終結しただろう。
であれば、後は立ち去るだけだ。
それなりの力は持っているらしいが、あの星の螺旋族という連中は、未だ彼らの求める水準には達していない。
更なる進化を待つ必要がある。
この宇宙を飲み込まんとする、大いなるうねりに抗いうる進化を。
故に、今は立ち去ろう。
そしてその進化を見届けよう。
来たるべき瞬間を迎えた時にこそ、彼らの戦場へと駆り立てるために。
そしてその艦隊が今、偶然見つけたものがある。
それは人に似た姿でありながら、人にあらざる者だった。
螺旋の星の獣人とかいう存在が、いくつかの機材と共に発見された。
驚いたことに、生きている。
五感の機能全てを停止させながら、未だ生きて宇宙を漂っている。
計測される高エネルギーは、すなわちこれこそがアンチ=スパイラルの言う、天元突破というものか。
あのグランゼボーマの崩壊から生き延びた、その設備の堅牢さには感心する。
だが、中に収められていた獣人には、まるで価値が見出せなかった。
この存在もまた、奴らと同じ穴の狢なのだと。
優れた進化の力に目覚めながら、それを停滞のために使っている。
いかなる事情かは知らないが、己の意識へと引きこもった軟弱者に用はない。
故にその獣人には特に何の興味も見せず、漆黒の虚空へと放り出す。
しかし、獣人を閉じ込めていた機材を見たとき。
《ほぅ》
にやり、と。
かの者の声に滲むのは、笑み。
巨大な鋼鉄の鬼神の顔に、表情が浮かぶことはない。
しかし、その中に潜む何者かの顔は、確かに笑っていたのだろう。
とんだはずれだとばかり思っていたものに、僅かに興味を引くものが残されていたのだから。
機材に一緒に積まれていたのは、資料。あの螺旋王が計画した、進化のための殺し合いの顛末。
その表題を、読み上げる。
すなわち。
この世界での敗北。
あまねく次元世界のその1つで、アンチ=スパイラルを滅ぼしたのは、螺旋族の力ではなかった。
ゲッター線。
反螺旋族の知りうる世界のどこにも、存在すら観測されていなかった力。
宇宙の崩壊を止めるために、進化を留めようとする彼らとは対照的に。
宇宙の崩壊を止めるために、それを倒しうる進化を加速させる力。
彼らがこの世界に現れた理由は定かではない。
あるいは、かのロージェノムが多元宇宙の扉を開いたことで、異界の門が開いたのか。
彼らの知りえなかった宇宙のファクターが、認識の壁を越えて現れたのか。
いずれにせよ、大いなる敵と戦うために、更なる進化を求めるゲッター艦隊にとって、彼らは敵に他ならなかった。
破綻を恐れ停滞を望む連中など、この宇宙には必要なき種族。
ましてそれが、進化を望む種族を食い潰そうとするならなおさらだ。
故に、制裁を下した。
艦隊の一部を、渦中の螺旋族とやらの星へ応援によこしたが、その戦線も終結しただろう。
であれば、後は立ち去るだけだ。
それなりの力は持っているらしいが、あの星の螺旋族という連中は、未だ彼らの求める水準には達していない。
更なる進化を待つ必要がある。
この宇宙を飲み込まんとする、大いなるうねりに抗いうる進化を。
故に、今は立ち去ろう。
そしてその進化を見届けよう。
来たるべき瞬間を迎えた時にこそ、彼らの戦場へと駆り立てるために。
そしてその艦隊が今、偶然見つけたものがある。
それは人に似た姿でありながら、人にあらざる者だった。
螺旋の星の獣人とかいう存在が、いくつかの機材と共に発見された。
驚いたことに、生きている。
五感の機能全てを停止させながら、未だ生きて宇宙を漂っている。
計測される高エネルギーは、すなわちこれこそがアンチ=スパイラルの言う、天元突破というものか。
あのグランゼボーマの崩壊から生き延びた、その設備の堅牢さには感心する。
だが、中に収められていた獣人には、まるで価値が見出せなかった。
この存在もまた、奴らと同じ穴の狢なのだと。
優れた進化の力に目覚めながら、それを停滞のために使っている。
いかなる事情かは知らないが、己の意識へと引きこもった軟弱者に用はない。
故にその獣人には特に何の興味も見せず、漆黒の虚空へと放り出す。
しかし、獣人を閉じ込めていた機材を見たとき。
《ほぅ》
にやり、と。
かの者の声に滲むのは、笑み。
巨大な鋼鉄の鬼神の顔に、表情が浮かぶことはない。
しかし、その中に潜む何者かの顔は、確かに笑っていたのだろう。
とんだはずれだとばかり思っていたものに、僅かに興味を引くものが残されていたのだから。
機材に一緒に積まれていたのは、資料。あの螺旋王が計画した、進化のための殺し合いの顛末。
その表題を、読み上げる。
すなわち。
《……バトルロワイアル……》
【ゲッターエンペラー@■(■ェ■■!!)ゲッ■ー■■ ■界■■■日】
――To be continued Next "ANIME-CHARA BATTLE ROYALE"...?