メビウスの輪から抜け出せなくて ◆EA1tgeYbP.



 ――サイコロを振った時、出る目は常に一から六。
 仮に何らかの偶然、イレギュラーで賽が斜めに止まろうと、賽の目を一つの面から読み取る以上、その原則は崩れない。
 そう、例え何百、何千、何万どれほど賽を振ろうとも零や七の目が出ることなどはありえない。

 だから――そう、彼はもっと『待つ』ということを知るべきだった。

 ――シモン。

 ――ニア。

 ――ヨーコ。

 ――カミナ。

 ――××××。

 ――そしてロージェノム。

 いずれのピースが欠けようとも、多元宇宙において一度でも「アンチ=スパイラルが敗れた」ということは、ありとあらゆる多元宇宙においてもまた、螺旋の民が滅び去るまで同様の出来事、アンチ=スパイラルの敗北は起こりうるということ。
 零や七の目が出ることはありえなくとも、六や一が延々と出続けるという奇跡はその可能性がどれほど少ない物であってもありえないものではないのだから。

 だからそう、全てピースが欠けてしまったこの宇宙においてもまた、その奇跡が起きないという保証はどこにもない。

 ――ただ、その奇跡を見届けるのは、きっと一から賽を振るのを見届けた者達だけの特権だ。
 故に今はただ、その奇跡を起こした者達ではなく、その奇跡から取り残された者達をこそ見守ろう。


 ◇ ◇ ◇


 ……数日?

 ……数年?

 ……数世紀?

 例えどれほどの月日が流れようとも、愛する妻や愛しい娘の姿が変わらぬように、二人が自分へと向けてくれる愛情も、逆に自分が二人へと向ける愛情も決して変わることはなく。

 日々の中、毎日の暮らしに少しずつの変化はあっても、振り返ってみれば、それは平和な日々というとても平凡な、けれどかけがえのない大事な思い出の一部となっていく。

 ――そんなある日のことだった。

 うううううぉぉぉぉおおおおおおぉぉおおおおお

 遠く空の果てから響いてきた叫ぶようなうめくような声とも聞こえる謎の音。

 怯える娘を抱きかかえ、不安がる妻の肩をそっと抱き寄せてヴィラルは遠い空の彼方をにらみつける。
 例え何が襲ってこようとも妻と娘は守って見せる、そんな決意を胸に秘めて。

「――パパ、怖い」

 そんな不安を漏らす娘に彼はそっと笑って見せる。

「大丈夫だ、パパがついているからな」
「そうよ、パパはとっても強いんだから」

 自分も感じているであろう不安はそっと押し殺し、ヴィラルの傍らに立つシャマルもそう言って微笑み娘を勇気付ける。

「――大丈夫だよね!? どんなことがあってもパパが守ってくれるよね?」
「――ああ、パパはずっとお前やママを守ってやるからな」

 不安がる娘の頭をなでてやりながらヴィラルはそう力強く断言した。


 ◇ ◇ ◇


 ……超螺旋宇宙。
 アンチ=スパイラルの母星があったその空間は、アンチ=スパイラルが生み出した空間であり、同時にアンチ=スパイラルそのものでもあった。
 故にアンチ=スパイラルが螺旋族との闘争に敗れた結果、当然の帰結としてその空間それ自体がアンチスパイラルの後を追って消滅する――筈だった。

 ……いや、本来の超螺旋宇宙全体の大きさ、実際の宇宙にも等しいまさに無限の広大さから比べると「そこ」はあまりにも狭く、小さく、その意味で言えば超螺旋宇宙は消滅したといっても何ら差し支えないほどの極小な空域。その中をヴィラルは一人漂っていた。

 そのあまりに特異な螺旋力のサンプルとして身の安全「だけ」は完全といってもいいレベルに保護された彼の肉体は、ただ一人きり宇宙を漂ってもその生態活動そのものには何ら危機さえ及ぼさず、あまりにも極小ゆえにもはや誰にも干渉することさえ不可能な一人きりの小宇宙の中、一人ヴィラルは夢を見る。 

 ……最後までルルーシュやアンチ=スパイラルといった者達が気が付かなかったただ一つの事実。

 ――例え本調子ではなかったとしても、天上天下にただ一人きり人類最古の英雄王ギルガメッシュが魔鏡の力を使ってまで放った「天地乖離す開闢の星」の一撃でさえ砕くことができなかったほどに強固だったロージェノムの結界。
 その庇護の元に誕生し、同時にただ、そこにいるというだけでその結界さえも揺るがした「天元突破覚醒者」はたしてこれは本当にアンチ=スパイラルにとっては危惧するにさえ値せぬ「ロージェノムの妄想」が生み出した産物であったのか。

『墓穴掘っても掘り抜いて、突き抜けたのなら俺の勝ち!』

 かつて最初にアンチ=スパイラルが打倒された宇宙において天元突破覚醒者シモンが言ったこの台詞。
 確かに螺旋王ロージェノムの願いは地に這いつくばり、自ら穴蔵に閉じ籠ろうとする、より高みへと昇ろうとする螺旋の基本、上昇の意思とは程遠い物だった。

 だが、幸か不幸かその意思は真に「突き抜けた」ものでもあったのだ。

 ロージェノムがもとめたのは「アンチ=スパイラルが干渉不可能な世界を創造可能な螺旋力」だった。
 確かにアンチ=スパイラルが言ったように、そしてルルーシュがそれを認めたようにそんな都合がいい代物など、多元宇宙をいくつ巡ろうとも見つけ出せるはずもない。
 しかし、その意思の助けの元で天元突破を果たしたヴィラルが求めたものは、いったいどのような物であったのか。
 あの時のヴィラルが求めたものはただ一つ、シャマルと共にあることただそれだけだ。

 アンチ=スパイラルが干渉せずにシャマルと一緒に居続けることが可能な世界。
 そんな都合のいい世界は――わざわざ創造するまでもなくヴィラルの目の前に用意されていた。

 ……そう、アンチ=スパイラルの術中に嵌り、彼らのサンプルとして生き続けるという最低最善の道が。

 螺旋の力は命の力。ましてやいかに「突き抜けた」物とはいえ、本質的に停滞を望んだ意思の下での螺旋力には安易な平穏こそが最善の道。
 戦士としてのヴィラル、シャマルの旦那としてのヴィラルであれば唾棄すべき最低最悪の道であっても一個の生命体のヴィラルにとっての最善であればそれは拒む理由にさえなりえず。

 アンチ=スパイラルの力によって心を囚われ、アンチ=スパイラルの技術力と天元突破の螺旋力、二つの力で体を守り、永遠にも等しい時間を楽園という名の牢獄でヴィラルは一人夢を見る。

 たった一人で幸せに。

 愛しい妻と娘と一緒にあり続ける。


 ◇ ◇ ◇



 ――不安な出来事も過ぎ去ってしまえば一つの思い出となる。
 空の向こうからわけのわからぬ化け物が襲いかかって来る事もなく、平凡な日々はいつもと変わらず平凡に過ぎ去っていく。
 きっと今日という日も後から振り返ってみれば、当たり前のようにすぎた一日として記憶されていくことだろう。

 横になった娘は眠気を感じる様子もなく、興奮した口調でシャマルへと今日の出来事を話している。

「――でね、でね、私思ったの! やっぱりパパはかっこいいって!」

 照れ隠しに笑ってから優しく娘の頭を撫でてやる。

「パパは、おまえ達を守るためならいくらでも強くなれるからな」
「ホント?」
「ああ、本当だ」
「約束してくれる?」
「ああ、約束だ。パパはずっとお前やママのそばでおまえ達を守りつづける」
「じゃあ、指きり」

 ゆーびきーりげーんまん。ヴィラルは娘と約束した。

「……私とは約束してくれないんですか?」

 からかうように微笑みかけるシャマルに対してヴィラルは笑って言う。

「もちろん、お前も守って見せるさ」
「じゃあ、ママとも指きりだね!」

 ……そんなふうにして今日という日は終わっていく。

 きっと明日も終わってみれば平凡な一日となることだろう。
 ……だが、もしも。
 そんな言い知れぬ不安が胸をよぎる。

「……どうしたんですか、ヴィラルさん」

 そんな不安が顔に出たのか心配そうにシャマルが声をかけてくる。
 いや、とヴィラルはかぶりを振った。

「いつまでもこんな日々が続けばいいなと思ってな」

 そう言うと、シャマルは笑いヴィラルに向けて言う。


 ―――続きますよ、永遠に。

【アニメキャラ・バトルロワイアル2nd ヴィラル――――FOREVER WITH……】




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285:HAPPY END(21) ヴィラル







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