幕 ◆tu4bghlMIw




【サブタイトル――幕】



――――幕が上がる。


真っ黒なステージをカッと照らすピンライト。
そこには一人、儚げな印象の少女が佇んでいた。

「ようこそ、いらっしゃいませ……なの」

にこり、と少女は形の整った口元を歪ませた。


「本日の総合司会とナレーターを務めさせてもらう光坂高校一年、一ノ瀬ことみ(仮)なの。
 ひらがなみっつでことみちゃん。後ろの(仮)はもう消えてしまうけれど……脳内補完して欲しいの」


そして馬鹿丁寧にぺこり、と緩慢な動作で客席に向けて仰々しいお辞儀をした。

ことみはクリーム色の厚手の制服に袖を通し、深い藍の髪を頭の上の方で小さく纏めていた。
世間一般でいう、ツーサイドアップという髪型だ。
顔立ちは極めて幼くまるで十三、四と名乗っても十分に通用するだろう。
だが、ブレザーを盛り上げる二つの膨らみの存在感は圧倒的だ。
少女の童顔と相まって、それは言葉に出来ないほどの破壊力を秘めていた。

しかし、一ノ瀬ことみ、と少女が名乗った瞬間観客から唸るようなどよめきが巻き起こったこともまた事実だ。
それは何も彼女が巨乳だったからではない。もっと別の理由がある。

『何故ことみ』『つーか誰?』『参戦作品じゃないのに』『能登可愛いよ能登』『最初からことみさんが出て来ると思っていました』
……反応は様々だ。

「"なの"といっても……どこかの白い悪魔ではないの……そこは間違えないで欲しいの」

少女は今、とても大切なことを言った。
本物の魔王は――いや、機動六課のエースオブエースは――今頃、別の場所で戦っているのだ。


「さて、アニメキャラバトルロワイアル2ndも……ついに最終回。開始から約一年半。八十二という参加者も残り十五人。
 総話数は約三百! 実はわたしも……こっそりと登場しているの。
 気になる人、忘れていた人は246話『回葬――言峰綺礼』を今すぐチェック!……なの」


こくん、と少女は満足げに小さく頷く。

「……某ドキュメンタリー番組のパロディ形式でこのお話は進行するの。
 ドキュメンタリーという言葉の意味は"虚構を用いず、事実をありのままに記録すること"
 ただ、このお話はきわめてメタ的な視点……バックステージ的な要素を多分に含むとは断っておくの。
 そして忘れてはならないのは〝死者スレの文脈から乖離させなければならない〟ということ。
 死人や1stキャラがパーソナリティをやっていたら……何もかも全部ゴッチャになってしまう。
 そんな訳で、これまたものすごくメタ的な理由でアニ2に登場したわたしが司会をするのが妥当だと判断した次第なの。
 でも……わたし一人では司会進行をするにはあまりに不向き……喋るのは……得意じゃないの。そこで、」


スッとことみが目配せをした。 
するとスポットライトがもう一台点灯し、舞台袖に向けられた。

「ったく何であたしが……」

若干不満げな表情を浮かべながらもう一人少女が歩み出て来た。
ことみと同じクリーム色の制服を着た少女だった。
紫色のロングヘアーに白のリボン。若干つり上がった眼は気の強そうな彼女の性格を伺わせる。

「光坂高校三年、藤林杏(仮)よ。今日はあたしも司会を、それとインタビュアーも務めさせてもらったわ」
「そんな訳で……様々な事情から……杏ちゃんにも……手伝ってもらうことにしたの」 
「ま、やるからには全力でやるからね。ともあれ『アニロワ2ndの すごい 総集編』をお楽しみに」

ことみが再度満足げな顔付きでこくこく、と。

「これで……百人力なの……」
「んーそれはいいんだけど……っていうか、何であたしだったの? 朋也とか風子の方が適当だったんじゃないの」

訝しげな眼で杏がことみに訊いた。
すると、ことみがさも当然といった様子で、

「実は……杏ちゃんもアニロワ2ndに無関係とは言えない存在なの」

と、断言した。

「……それは、初耳なんだけど」

杏としてはことみの言葉は意外なモノだった。
CLANNADからは名前ネタでことみがアニロワ2ndには登場しただけだ。
他に鍵作品のキャラクターが参戦しているということもない。では、何故?

「その、見た目が……」
「見た目?」
「参戦している某作品の姉とそっく――」

最後の一言を言い終えそうになった瞬間、杏の手がことみの口元に押し当てられた。

「……それはあまりにも危険過ぎる台詞だわ」

顔面を蒼白に染めた杏が力なく首を横に振った。
藤林杏、直情的なようで大人の事情を考慮出来る頭のいい子である。

「んぐっ……もがっ……!」

じたばたとことみが苦しそうに杏へと抵抗する。
大きな瞳に涙をいっぱいに溜めて、フルフルと身体を震わせる。

「ぷはっ! っ……はぁっ…………乱暴なの」
「言っちゃダメなことってあるのよ?」
「っ――」

満面の笑顔で杏がことみに言った。と、同時に両の指をワキワキと動かした。
その動作を見てことみはサァッと表情を変えた。
彼女は以前、不意を突かれ杏に『好きなようにされた』経験がある。その際の恥辱がフラッシュバックしたのである。

「……わたしは、何も知らないの」
「よろしい」

頬を赤く染めたことみが胸元を庇いながら、サッと顔を伏せた。

「さて、断っておく点としてこれは強烈なメタネタ、そして総集編な訳ね。
 最終回へと気持ちよく入っていけるように。難解なアニロワ2ndの流れを分かりやすく説明できるように。
 もしくは、初めてアニロワ2ndを見た人にも最終回を楽しんでもらえるように……そんな所かしらね。
 本編よりも、外伝や死者スレの方が立ち位置としては近いと思うわ」
「……詳しい注意書きはコレを見るの」

ことみの台詞と共に、二人の背後にあった巨大スクリーンに光が点った。


――CAUTION――

◆ご注意
※このSSには精神的嫌悪感を与える可能性のある濃厚なメタパロディが含まれています。
 以下に該当する方は閲覧をおススメできません。

  • 「メタフィクション」が許容出来ない方。
  • ロワネタ含む各種パロディ、ロワ参加作品外キャラの登場、死者が出て来ることなどに嫌悪感を覚える方。
  • 死者スレ的なノリが無理な方。
  • キャラ崩れは正直認めたくない方。
  • 今までのアニロワ2ndのイメージを崩したくない方。
  • アニロワ2ndのネタバレを回避したい方。
  • 現実と虚構の区別がつかない方。
  • 生きているのがつらい方。
  • 犯罪行為をする予定のある方。
  • 何かにすがりたい方。
  • 殺人癖のある方。

――CAUTION――

「社会的に影響があるとか残虐描写につき放送禁止とか、口すっぱく言われるのはあれとかあの作品くらいで止めておきたい所ね」
「……杏ちゃんも十分危険なこと言ってるの」
「別に作品名は言ってないからいいじゃない。『中には誰もいないんじゃないかな? かな?』よ。もっとも、首が飛ぶよりマシだけど」

ことみは首を振って耳を塞ぎ、杏の台詞が聞こえない振りをした。

「…………総集片を始めるの」
「あ、もう! ……文章を読む時は部屋を明るくしてディスプレイからしっかり離れて見るように」

ことみと杏は観客の方にまっすぐ向き直った。
ひとまずの流れは終わり。
この後、番組の上映が始まると杏が思った時、ことみが突如口を開いた。アドリブ、である。


「さぁ……始めるザマスよ……行くでガンス……フンガー……なの」


ちらり、と期待したような表情でことみが杏の顔を一瞥した。
対して杏は深々とため息。
まったく、彼女は結局何も反省していないではないか。
この最後の一言を杏に要求するということはつまりアレだ。〝彼女〟のパートを自分に担当しろ、と言っているのだ。

「フンガー…………なの」

あくまで、言わせる気である。
杏もこのままでは埒が明かないのでしぶしぶと伝統の一言で締め括ることを了承する。


「……まともに始めなさいよ」


 ▽


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