宿命の対決!グレン V.S ラガン(後編) ◆RwRVJyFBpg
キュゥン、キュゥン、キュゥン。
土煙が辺り一面を覆っている。
ヴィラルの放った渾身の一撃は凄まじいまでの爆風を生み、それがこの塵を舞い上げたのだ。
空気を占める砂の濃度は高い。
入り込んだ人間がいれば、ここを砂嵐の中だと錯覚するだろう。
風はなく、塵はただゆらゆらとたゆたっている。
ヴィラルの放った渾身の一撃は凄まじいまでの爆風を生み、それがこの塵を舞い上げたのだ。
空気を占める砂の濃度は高い。
入り込んだ人間がいれば、ここを砂嵐の中だと錯覚するだろう。
風はなく、塵はただゆらゆらとたゆたっている。
キュゥン、キュゥン、キュゥン。
だが、視界を塞ぐそんな砂霧も時間が経てば少しづつ晴れてくる。
いかに風がなかろうと、空に舞った塵は重力に従って順々に落ちてくる。
カーキ色一色に沈んでいた風景が徐々に精彩を取り戻す。
いかに風がなかろうと、空に舞った塵は重力に従って順々に落ちてくる。
カーキ色一色に沈んでいた風景が徐々に精彩を取り戻す。
キュゥン、キュゥン、キュゥン。
色を取り戻してみれば、そこは川辺の住宅街。
低いマンションや一戸建ての住宅がごちゃごちゃと立ち並ぶごく普通の街。
戦う二人はいつの間にか崩落のステージを抜け出し、今では随分遠くまで来てしまったのだろう。
その街は破壊のあとが薄く、建物は比較的原型を留めていた。
低いマンションや一戸建ての住宅がごちゃごちゃと立ち並ぶごく普通の街。
戦う二人はいつの間にか崩落のステージを抜け出し、今では随分遠くまで来てしまったのだろう。
その街は破壊のあとが薄く、建物は比較的原型を留めていた。
キュゥン、キュゥン、キュゥン。
しかし、そんな一見平和に見える場所もこの凄惨な殺し合いの舞台である以上、その影を拭い去ることはできない。
空を覆っていた砂がほとんど晴れ、見通しがきくようになってみると、それがよく分かる。
この住宅街の東。グレンが降り立った場所からほんの200mほどの地点にその異常はあった。
街が唐突に途切れ、底の見えない断崖が左右に果てしなく続いている。
その端を目で追えば、この断崖がただの崖ではなく、ぽっかりと空いた巨大な穴だと気づく。
空を覆っていた砂がほとんど晴れ、見通しがきくようになってみると、それがよく分かる。
この住宅街の東。グレンが降り立った場所からほんの200mほどの地点にその異常はあった。
街が唐突に途切れ、底の見えない断崖が左右に果てしなく続いている。
その端を目で追えば、この断崖がただの崖ではなく、ぽっかりと空いた巨大な穴だと気づく。
キュゥン、キュゥン、キュゥン。
そう、ここはB-6。B-7とのエリア境界線付近。
かつて黒い太陽による災禍が巻き起こった刑務所、その隣のエリア。
大地に空いた巨大な穴は大怪球が齎した破壊の爪痕だ。
この街はそのおぞましき大崩壊からかろうじて難を逃れた幸運の地なのである。
かつて黒い太陽による災禍が巻き起こった刑務所、その隣のエリア。
大地に空いた巨大な穴は大怪球が齎した破壊の爪痕だ。
この街はそのおぞましき大崩壊からかろうじて難を逃れた幸運の地なのである。
キュゥン、キュゥン、キュゥン。
そしてその幸運の地が、男達の戦い、その第二ラウンドの舞台となる!
「おい、キュンキュンキュンキュンうるせえぞ!
それとも何かぁ?テメエのドリルは犬コロみてえにきゃんきゃん唸るしか能がねえのかぁ?」
それとも何かぁ?テメエのドリルは犬コロみてえにきゃんきゃん唸るしか能がねえのかぁ?」
カミナの悪態が聞こえる。
刑務所瓦解の難を避け、わずかに残った民家、その一つを足の下に敷きながらグレンに乗った男が喋る。
刑務所瓦解の難を避け、わずかに残った民家、その一つを足の下に敷きながらグレンに乗った男が喋る。
「グッ、貴ッ様ァァァァァァァァ~~~~~~」
グレンを貫き、真っ二つにするはずだったラガンは道半ばで止められたのだ。
確かにラガンのドリルはグレンの頭頂部を破壊し、グレンの機体にめり込んではいる。
さらにその破壊を進め、予定通り機体を引き裂こうとキュゥン、キュゥンとドリルを回し続けてもいる。
しかし、グレンの赤い腕と黒い掌にガッチリと押さえられ、そこから先にはどうしても進むことができない。
確かにラガンのドリルはグレンの頭頂部を破壊し、グレンの機体にめり込んではいる。
さらにその破壊を進め、予定通り機体を引き裂こうとキュゥン、キュゥンとドリルを回し続けてもいる。
しかし、グレンの赤い腕と黒い掌にガッチリと押さえられ、そこから先にはどうしても進むことができない。
「どぉでぇ!カミナ流、真ドリル白刃取りだぜ!
恐れ入ったか!」
「カミナ……流石にそのネーミングは無理矢理すぎませんか……」
「おぉのれええええええええええええ!!!!」
恐れ入ったか!」
「カミナ……流石にそのネーミングは無理矢理すぎませんか……」
「おぉのれええええええええええええ!!!!」
確信した勝利に傷をつけられ、ヴィラルの手に怒りが篭る。
バーニアを再び吹かし、押し通ろうと力を篭める。
しかしカミナも負けてはいない。暴れるラガンを押さえつけ、通られまいと押し戻す。
操縦桿に気合を篭めて、腕に力を送り込む。
バーニアを再び吹かし、押し通ろうと力を篭める。
しかしカミナも負けてはいない。暴れるラガンを押さえつけ、通られまいと押し戻す。
操縦桿に気合を篭めて、腕に力を送り込む。
「シャマル!もう一度あの魔法を……」
力ずくでダメならと、ヴィラルはパートナーの絡め手に頼る。
「……ダメよヴィラルさん。ここで鋼の軛を使えば、私たちも巻き込まれるわ」
しかし、その返事は期待には到底、そぐわないものだった。
鋼の軛、それは十メートル弱にも及ぶ光の刃を地上から発生させ、
それによって相手を撃破したり、動きを封じたりする魔法だ。
この密着した状態で無理に使えば、敵ごとこちらのラガンも貫きかねない。
鋼の軛、それは十メートル弱にも及ぶ光の刃を地上から発生させ、
それによって相手を撃破したり、動きを封じたりする魔法だ。
この密着した状態で無理に使えば、敵ごとこちらのラガンも貫きかねない。
「クッ……そうか……」
あてがはずれ、ヴィラルの表情が歪む。
あの魔法が使えないとすると、ここからは単純な力比べだ。
ヴィラルが押し、カミナが押し返す。
事態は膠着し、戦いは五分の状態に戻される。
あの魔法が使えないとすると、ここからは単純な力比べだ。
ヴィラルが押し、カミナが押し返す。
事態は膠着し、戦いは五分の状態に戻される。
(五分だと?いや、違うな。
今までこちらが押していたのを、受け止めて膠着に持ち込んだんだ。
戦いの流れは今、確実に向こうにある。
それに……)
今までこちらが押していたのを、受け止めて膠着に持ち込んだんだ。
戦いの流れは今、確実に向こうにある。
それに……)
ガリッ。
ヴィラルがその懸念を抱くのとほぼ同時、天井からひっかくような不穏な音が響いた。
ヴィラルがその懸念を抱くのとほぼ同時、天井からひっかくような不穏な音が響いた。
「……さぁてヴィラル、そろそろお遊びはおしまいだ。
シモンのラガンを返してもらうぜぇ?
テメエらが大人しく出てきて負けを認めんならそれでよし。
人を殺そうとしたおしおきはきっちり受けてもらうが、命まで取るたぁ言わねぇ。
だが、もし、テメエらがあくまでまだやるってんなら……腕ずくで行かせてもらうぜッ!」
シモンのラガンを返してもらうぜぇ?
テメエらが大人しく出てきて負けを認めんならそれでよし。
人を殺そうとしたおしおきはきっちり受けてもらうが、命まで取るたぁ言わねぇ。
だが、もし、テメエらがあくまでまだやるってんなら……腕ずくで行かせてもらうぜッ!」
ガリッガリッ。
その宣言と同調するように、天井からはまたも不気味なひっかき音。
ここに至ってヴィラルは自らの懸念が現実のものとなったことを知る。
その宣言と同調するように、天井からはまたも不気味なひっかき音。
ここに至ってヴィラルは自らの懸念が現実のものとなったことを知る。
(……やはり俺達をガンメンから降ろしにかかったか。
まずいな。瞬間的な爆発力ならこのガンメンは奴のガンメンに勝る。
しかし、持続的なパワーならあちらの方が明らかに上だ。
せめて離脱できれば戦局を仕切りなおすこともできるが、奴とてそれを許すほど馬鹿ではあるまい。
……クソッ!どうすればいい!?)
まずいな。瞬間的な爆発力ならこのガンメンは奴のガンメンに勝る。
しかし、持続的なパワーならあちらの方が明らかに上だ。
せめて離脱できれば戦局を仕切りなおすこともできるが、奴とてそれを許すほど馬鹿ではあるまい。
……クソッ!どうすればいい!?)
足掻くように機体をばたつかせ、暴れるようにバーニアを吹かす。
「おおっと!逃げようったってそうはいかねぇぜ!」
しかし、グレンの五指はラガンをしっかと掴み、揺るぐ様子はまるでない。
形勢逆転。
そんな言葉が頭の中にちらついた。
形勢逆転。
そんな言葉が頭の中にちらついた。
ガリッガリッガリッ。
先ほどよりも強い衝撃がラガンの機体を大きく揺する。
巨大な指の一本がコクピットの風防を激しく擦る。
シャマルがこっちを見ている。
口を真一文字に結び、しかし瞳には不安を湛えて。
その儚げな顔がヴィラルの焦りを加速する。
先ほどよりも強い衝撃がラガンの機体を大きく揺する。
巨大な指の一本がコクピットの風防を激しく擦る。
シャマルがこっちを見ている。
口を真一文字に結び、しかし瞳には不安を湛えて。
その儚げな顔がヴィラルの焦りを加速する。
(……どうする?ここは一旦、大人しく降参するか?
そうすれば少なくともシャマルの命は……
いや、ダメだ!奴が約束を守る保証などどこにある!?
……だが、それ以外にどんな選択が……
クソッ、考えろ、考えればきっと何か……
………………うっ、クソッ、こんなときにルルーシュがいてくれれば……)
そうすれば少なくともシャマルの命は……
いや、ダメだ!奴が約束を守る保証などどこにある!?
……だが、それ以外にどんな選択が……
クソッ、考えろ、考えればきっと何か……
………………うっ、クソッ、こんなときにルルーシュがいてくれれば……)
頭を絞る。
手持ちの支給品を再検討する。
今まで聞いたシャマルの魔法に使えそうなものはないか思い出す。
しかし、そのどれもが徒労に終わる。
現状を打開できそうなものはその中にはない。
希望の光を見出すことはできない。
ゆっくりと、ゆっくりと絶望の影がヴィラルの心に忍び寄る。
手持ちの支給品を再検討する。
今まで聞いたシャマルの魔法に使えそうなものはないか思い出す。
しかし、そのどれもが徒労に終わる。
現状を打開できそうなものはその中にはない。
希望の光を見出すことはできない。
ゆっくりと、ゆっくりと絶望の影がヴィラルの心に忍び寄る。
ガリッガリッガリッガツッ。
そうこうしている間にも、コクピットへのアタックは続く。
風防パーツのうち一つが、グレンの指によってわずかにこじ開けられ、隙間から太陽の光が覗く。
装甲を完全に剥がされるのも時間の問題だ。
そうこうしている間にも、コクピットへのアタックは続く。
風防パーツのうち一つが、グレンの指によってわずかにこじ開けられ、隙間から太陽の光が覗く。
装甲を完全に剥がされるのも時間の問題だ。
(……ちくしょう!
ちくしょう!ちくしょう!ちくしょう!ちくしょう!ちくしょう!ちくしょう!ちくしょう!ちくしょう!
ちくしょう!ちくしょう!ちくしょう!ちくしょう!ちくしょう!ちくしょう!ちくしょう!ちくしょう!
俺は!俺達はこんなところで終わるわけにはいかない!
……俺は誓ったんだ!俺があいつの道標になると!
俺があいつを守ってやると!
二人でこの殺し合いを生き抜くと!
それが、それがこんなところで終わってたまるかッ!)
ちくしょう!ちくしょう!ちくしょう!ちくしょう!ちくしょう!ちくしょう!ちくしょう!ちくしょう!
ちくしょう!ちくしょう!ちくしょう!ちくしょう!ちくしょう!ちくしょう!ちくしょう!ちくしょう!
俺は!俺達はこんなところで終わるわけにはいかない!
……俺は誓ったんだ!俺があいつの道標になると!
俺があいつを守ってやると!
二人でこの殺し合いを生き抜くと!
それが、それがこんなところで終わってたまるかッ!)
ガリッガリッガリッガツッガツッ。
次々に風防が破られる。
もうすぐ、グレンの指がここまで入り込んでくる。
しかし、決定的な状況が迫る中、ヴィラルの体に入り込んできたのは絶望ではなく、他の、もっと熱い何か。
次々に風防が破られる。
もうすぐ、グレンの指がここまで入り込んでくる。
しかし、決定的な状況が迫る中、ヴィラルの体に入り込んできたのは絶望ではなく、他の、もっと熱い何か。
(……そうだ。俺は忘れないぞ。
ビャコウが俺に見せてくれた姿の意味をッ!
胸の誇りに懸けて、立てた心の剣をッ!
そうだッ!俺は忘れないッ!
最後に勝つのは……勇気ある者だけだッッッッッ!)
ビャコウが俺に見せてくれた姿の意味をッ!
胸の誇りに懸けて、立てた心の剣をッ!
そうだッ!俺は忘れないッ!
最後に勝つのは……勇気ある者だけだッッッッッ!)
デイパックに手をいれ、しまってあった大鉈を引っ掴む。
尖った歯をもう一度かみ締め、迫り来るグレンの腕を睨みつける。
空いている方の手でシャマルを自分の後ろに抱き寄せると、心の中で戦う覚悟が燃え上がるのを感じた。
そうだとも。ガンメンを失おうとも、自分にはこの鍛え上げられた戦士としての体がある。
尖った歯をもう一度かみ締め、迫り来るグレンの腕を睨みつける。
空いている方の手でシャマルを自分の後ろに抱き寄せると、心の中で戦う覚悟が燃え上がるのを感じた。
そうだとも。ガンメンを失おうとも、自分にはこの鍛え上げられた戦士としての体がある。
「来るなら来いッ!!返り討ちだッッ!!」
奇跡が起きたのはヴィラルがそう吼えた、まさにその瞬間だった。
◆
「くっ!何だこりゃ!?どうなってんだ!!?」
突然の出来事にカミナは動揺を隠せない。
それもそのはず。
今までは何の変哲もなかった手の中のラガンが、突如、全身から目も眩まんばかりの激しい緑光を放ち始めたのだから。
緑の光はラガンから空へ、螺旋を描くように伸びている。
その様はさながら、ドリルが天に突き刺さり、穴を穿とうとしているかのよう。
それもそのはず。
今までは何の変哲もなかった手の中のラガンが、突如、全身から目も眩まんばかりの激しい緑光を放ち始めたのだから。
緑の光はラガンから空へ、螺旋を描くように伸びている。
その様はさながら、ドリルが天に突き刺さり、穴を穿とうとしているかのよう。
「ま、まさか、こいつぁ!?」
カミナはその光に見覚えがあった。
いや、見覚えがあるどころの話ではない。
その光は彼にとって忘れたくても忘れられないものだった。
それは屈することなく敵と戦ってきたグレン団の勇気の輝き。
それは彼と仲間の危機を幾度も救ってきた希望の輝き。
そしてそれは、カミナとシモンの間に交わされた絆の輝き。
それが、どうして。
カミナの顔色から血の気が引いていく。
いや、見覚えがあるどころの話ではない。
その光は彼にとって忘れたくても忘れられないものだった。
それは屈することなく敵と戦ってきたグレン団の勇気の輝き。
それは彼と仲間の危機を幾度も救ってきた希望の輝き。
そしてそれは、カミナとシモンの間に交わされた絆の輝き。
それが、どうして。
カミナの顔色から血の気が引いていく。
「カミナ!これはどういう……?この光は一体何なのですか!?」
「………………グレン、ラガンだ」
「は?」
「分かんねぇのか!?合体だよ!合体ッ!!
奴のラガンがこっちのグレンを乗っ取って、合体しようとしてやがるんだッ!!」
「の、乗っ取るですって!?そんな!どうしてそんなことが!」
「分かんねぇ!分かんねぇが!
とにかくラガンってのはそういう力を持ってやがるんだよッッ!!」
「………………グレン、ラガンだ」
「は?」
「分かんねぇのか!?合体だよ!合体ッ!!
奴のラガンがこっちのグレンを乗っ取って、合体しようとしてやがるんだッ!!」
「の、乗っ取るですって!?そんな!どうしてそんなことが!」
「分かんねぇ!分かんねぇが!
とにかくラガンってのはそういう力を持ってやがるんだよッッ!!」
接触した機体に接続し、そのコントロールを奪う。
これは悠久の昔、螺旋族が怨敵と戦いを繰り広げていたころからラガンに搭載されていた特徴的な機能である。
搭乗者の螺旋力を相手の機体に流し込み、そのボディを自らの血肉にしてしまう。
流し込む螺旋力が大きければ大きいほど、巨大な機体を乗っ取ることが可能になる。
乗っ取られた機体は完全にラガンの支配下に置かれ、その形状は螺旋力の作用により思うがまま。
大グレン団の旗印的ガンメン、グレンラガンの成立メカニズムであり、
カミナがこちらの世界に来る直前、決行しようとしていたダイガンザン奪取計画のキーとなる機能。
これは悠久の昔、螺旋族が怨敵と戦いを繰り広げていたころからラガンに搭載されていた特徴的な機能である。
搭乗者の螺旋力を相手の機体に流し込み、そのボディを自らの血肉にしてしまう。
流し込む螺旋力が大きければ大きいほど、巨大な機体を乗っ取ることが可能になる。
乗っ取られた機体は完全にラガンの支配下に置かれ、その形状は螺旋力の作用により思うがまま。
大グレン団の旗印的ガンメン、グレンラガンの成立メカニズムであり、
カミナがこちらの世界に来る直前、決行しようとしていたダイガンザン奪取計画のキーとなる機能。
「これは……何だ?何が起こった!?」
無論、発動させたヴィラルとて、こんな能力については知る由もない。
決死、いや、決生の戦いを心に決めた直後の突然のできごとは、搭乗者である彼をもまた混乱させていた。
決死、いや、決生の戦いを心に決めた直後の突然のできごとは、搭乗者である彼をもまた混乱させていた。
「ヴィラルさん!これ見て」
「何?」
「何?」
傍らのシャマルが前方のモニターを指差す。
そこにはグレンとラガンを模した人型と、ラガンから血管のように伸びる緑の曲線が映し出されていた。
そこにはグレンとラガンを模した人型と、ラガンから血管のように伸びる緑の曲線が映し出されていた。
「まさか、これって」
「………………!」
「………………!」
シャマルと目を見合わせたヴィラルにある種の直感が走る。
シートの外から内へと体を向けなおし、再び操縦桿を握る。
その瞬間、全ての事実が彼の中に流れ込んだ。
シートの外から内へと体を向けなおし、再び操縦桿を握る。
その瞬間、全ての事実が彼の中に流れ込んだ。
「これはッ……」
「ヴィラル……さん?」
「そんな心配そうな顔をするなシャマル!
勝てる!この戦い、勝てるぞッ!!
ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッ!!!」
「ヴィラル……さん?」
「そんな心配そうな顔をするなシャマル!
勝てる!この戦い、勝てるぞッ!!
ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッ!!!」
渾身の気合を篭め、ヴィラルは叫ぶ。
すると、それと呼応するように緑の螺旋が巻き起こる。
操縦桿を通り、ドリルを通り、ヴィラルの螺旋力がグレンに流れ込む。
モニターの血管がググッと、押し込むように伸びた。
すると、それと呼応するように緑の螺旋が巻き起こる。
操縦桿を通り、ドリルを通り、ヴィラルの螺旋力がグレンに流れ込む。
モニターの血管がググッと、押し込むように伸びた。
「こ、これは……」
「…………………………」
「…………………………」
グレンのコクピットでは早くもその影響が表れ始めていた。
側面のモニター一面に映し出された緑のカミナマーク。
グレンの主を示すそれが徐々に上からやってきた赤のマークに侵食されていく。
赤のマークの中心には片目を隠し、牙をむき出した男――ヴィラルの顔。
側面のモニター一面に映し出された緑のカミナマーク。
グレンの主を示すそれが徐々に上からやってきた赤のマークに侵食されていく。
赤のマークの中心には片目を隠し、牙をむき出した男――ヴィラルの顔。
「コントロールシステムを奪われているというのですか……こんなことが……」
ヴィラルのマークはあっという間にカミナのマークを食いつぶし、
早くも全体の半分を占めるまでに広がっていた。
その影響を受けたのだろうか、これまでラガンのコクピットを引っ掻いていたグレンの指が、止まった。
早くも全体の半分を占めるまでに広がっていた。
その影響を受けたのだろうか、これまでラガンのコクピットを引っ掻いていたグレンの指が、止まった。
「…………………………なめんじゃねえ」
そのとき、カミナが不意に口を開く。
グレンに起こる異常を静観し、沈黙を守っていた男がぽつりと呟く。
グレンに起こる異常を静観し、沈黙を守っていた男がぽつりと呟く。
「……テメエが俺のラガンを奪う?
……シモンの魂だけじゃ飽き足らず、俺の魂までも?
なめんじゃねえッッッ!!
俺の、大グレン団の魂は、そんなに安いモンじゃねえんだよおおおおおおおおおおおッッッッ!!」
……シモンの魂だけじゃ飽き足らず、俺の魂までも?
なめんじゃねえッッッ!!
俺の、大グレン団の魂は、そんなに安いモンじゃねえんだよおおおおおおおおおおおッッッッ!!」
静かに燻っていた怒りが臨界を超えて破裂する。
叫びの声に導かれ、カミナの体にも緑の螺旋が立ち昇る。
光の奔流が溢れ出し、そのままカミナの体を包む。
荒ぶる螺旋に沈むコクピットで、赤の氾濫がピタリと止んだ。
叫びの声に導かれ、カミナの体にも緑の螺旋が立ち昇る。
光の奔流が溢れ出し、そのままカミナの体を包む。
荒ぶる螺旋に沈むコクピットで、赤の氾濫がピタリと止んだ。
「おッれッをッ!だぁれだと!思ってェ……やがるゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッッッッ!!!!!」
全身に思い切り力を込め、まるで魂を吐き出すかのように、カミナは腕に気合を篭める。
螺旋の渦をその肉体から捻り出す。
そうして生まれたパワーは、グレンの体を通し、敵の元へと逆流する。
寄せた波が引くように、赤いマークが消えていく。
螺旋の渦をその肉体から捻り出す。
そうして生まれたパワーは、グレンの体を通し、敵の元へと逆流する。
寄せた波が引くように、赤いマークが消えていく。
「グ……何だと……」
一転して、焦るはヴィラル。
一度は奪いかけたはずのコントロールが再びその手を離れていく。
グレンの全身に伸びかけた緑の血管は、エネルギーの逆流に耐え切れず、元の短さに戻ってしまった。
一度は奪いかけたはずのコントロールが再びその手を離れていく。
グレンの全身に伸びかけた緑の血管は、エネルギーの逆流に耐え切れず、元の短さに戻ってしまった。
「おのれ……まだ足りないというのかッ!
俺の力が奴に劣っていると……」
俺の力が奴に劣っていると……」
操縦桿を握る手がわなわなと震える。
牙を剥き出し、目を血走らせ、ラガンに螺旋のエネルギーを注ぎ込む。
しかし、彼の奮闘も虚しく、彼の侵略はカミナの圧倒的パワーによってすぐに押し戻される。
牙を剥き出し、目を血走らせ、ラガンに螺旋のエネルギーを注ぎ込む。
しかし、彼の奮闘も虚しく、彼の侵略はカミナの圧倒的パワーによってすぐに押し戻される。
決してヴィラルの螺旋力が弱いわけではない。
だが、今回は相手が悪い。
カミナはシモンと共にその螺旋の力でガンメンを駆り、ずっと戦ってきた男。
ヴィラルよりもこの力の扱いにはずっと慣れている。
経験の差が結果に表れてしまうのはある意味で仕方のないことだ。
だが、今回は相手が悪い。
カミナはシモンと共にその螺旋の力でガンメンを駆り、ずっと戦ってきた男。
ヴィラルよりもこの力の扱いにはずっと慣れている。
経験の差が結果に表れてしまうのはある意味で仕方のないことだ。
だが、仕方ないで済ませてしまえるほど、ヴィラルが背負っているものは軽くない。
今の彼に必要なのは、埋めがたい経験の差を埋める力をひねり出すこと。
無理を通して道理を蹴っ飛ばす男に対し、無理を通して道理を蹴っ飛ばすこと。
そう、無理でもやらねばならないのだ。
ここを生き残り、勝利の栄光を掴むためには、何としても、何としても……
握りすぎた手から血が垂れる、全身に脂汗が浮かぶ。
ヴィラルが気合の咆哮をあげ、再び無謀な戦いへと身を投じようとしたそのとき。
今の彼に必要なのは、埋めがたい経験の差を埋める力をひねり出すこと。
無理を通して道理を蹴っ飛ばす男に対し、無理を通して道理を蹴っ飛ばすこと。
そう、無理でもやらねばならないのだ。
ここを生き残り、勝利の栄光を掴むためには、何としても、何としても……
握りすぎた手から血が垂れる、全身に脂汗が浮かぶ。
ヴィラルが気合の咆哮をあげ、再び無謀な戦いへと身を投じようとしたそのとき。
「ヴィラルさん」
反射的に顔をあげると、そこには決意の眼差しを宿した女の顔があった。
シャマルの手がヴィラルのそれに、重なる。
シャマルの手がヴィラルのそれに、重なる。
◆
「俺の……気合が……負ける?」
信じられない。
カミナの表情にはそんな感情がアリアリと浮かんでいた。
操縦桿を掴んだまま、ただ呆然と見開いた目には有り得ない光景ばかりが映されている。
赤いマークの侵略。
カミナが渾身の気合で打ち払ったはずのその脅威はほとんど間をおかず、再度グレンを侵していた。
カミナの表情にはそんな感情がアリアリと浮かんでいた。
操縦桿を掴んだまま、ただ呆然と見開いた目には有り得ない光景ばかりが映されている。
赤いマークの侵略。
カミナが渾身の気合で打ち払ったはずのその脅威はほとんど間をおかず、再度グレンを侵していた。
「クソッ……何でだ!何でだよ!」
しかも、今度の侵攻はさっきのものとは一味違う。
いくら気力を振り絞り、螺旋の力を注ぎ込んでも、今度は赤マークの侵攻を止めることができない。
力を篭めるたび、相手のスピードは確実に遅くなるものの、どうしてもそこから先へ進めない。
押し戻すことができないのだ。
いくら気力を振り絞り、螺旋の力を注ぎ込んでも、今度は赤マークの侵攻を止めることができない。
力を篭めるたび、相手のスピードは確実に遅くなるものの、どうしてもそこから先へ進めない。
押し戻すことができないのだ。
「……ちくしょう……いきなり圧力が強くなりやがった!
どうしてだ?ヴィラルは何をやりやがった……?」
「!!……カミナ、マークを見てください」
「あぁ!?マークが一体、どうしたって……!!」
どうしてだ?ヴィラルは何をやりやがった……?」
「!!……カミナ、マークを見てください」
「あぁ!?マークが一体、どうしたって……!!」
必死で打開策を考えるカミナへ横槍を入れるようにクロスミラージュの声が飛ぶ。
苛立ち紛れに振り向いた彼はそれを見た。
侵攻してくる赤のマーク。
そのデザインが先ほどとは微妙に異なっている。
さっきは赤い枠に簡単なヴィラルの顔が模られていただけだった。
しかし、今は赤い枠の中にもう一つ、ハートを模したような図形があり
その左右に、ヴィラルと……シャマルの顔があった。
苛立ち紛れに振り向いた彼はそれを見た。
侵攻してくる赤のマーク。
そのデザインが先ほどとは微妙に異なっている。
さっきは赤い枠に簡単なヴィラルの顔が模られていただけだった。
しかし、今は赤い枠の中にもう一つ、ハートを模したような図形があり
その左右に、ヴィラルと……シャマルの顔があった。
「……そういうことかよッ!!」
螺旋力の圧力が強くなった理由。
考えてみればその答えは実に簡単。
考えてみればその答えは実に簡単。
「野郎……二人で押してやがるなッ!」
ラガンのコクピットの中では二人の男女が折り重なるようにして座していた。
ヴィラルの背中にシャマルが優しく覆いかぶさるような姿勢。
まるで二人羽織りのような密着した姿勢で二人はグレンと戦っていた。
それぞれの手は同じ操縦桿へと伸び、強く、しっかりとそれを握っている。
二人の体からは輝く燐光を放つ緑の奔流が立ち上り、ゆらゆらと狭い空間を照らしている。
ヴィラルの背中にシャマルが優しく覆いかぶさるような姿勢。
まるで二人羽織りのような密着した姿勢で二人はグレンと戦っていた。
それぞれの手は同じ操縦桿へと伸び、強く、しっかりとそれを握っている。
二人の体からは輝く燐光を放つ緑の奔流が立ち上り、ゆらゆらと狭い空間を照らしている。
一人でダメなら二人でやってみる。
このときヴィラルとシャマルがとった戦法は実に単純明快なものだった。
だが、単純ゆえに穴がなく、カミナにとっては脅威以外の何者でもない。
このときヴィラルとシャマルがとった戦法は実に単純明快なものだった。
だが、単純ゆえに穴がなく、カミナにとっては脅威以外の何者でもない。
「こんぉんのぉおおおおおおおおおおお!!!!!!
負けてェたまるかぁああああああああああああああ!!!!!」
負けてェたまるかぁああああああああああああああ!!!!!」
カミナも気勢をあげて押し返すが、如何せんパワーが足りない。
一人で二人分の螺旋力に対抗するのは、いかなカミナといえども難しい。
じりじりと緑のマークが喰われていくのを、ただ指をくわえて見ているしかない。
数の差。
それは戦場においてはあまりに決定的なものだった。
特に、このような単純な力比べにおいてはなおさら。
一人で二人分の螺旋力に対抗するのは、いかなカミナといえども難しい。
じりじりと緑のマークが喰われていくのを、ただ指をくわえて見ているしかない。
数の差。
それは戦場においてはあまりに決定的なものだった。
特に、このような単純な力比べにおいてはなおさら。
「ハアッ……ハアッ……ハアッ……」
有効な手を打つことができぬまま、ただ、時間だけが過ぎていく。
はじめは声を振り絞って叫びをあげていたカミナももう随分と大人しくなってしまった。
もう、だめか。
そんならしからぬ弱気がカミナの心を濡らし始める。
はじめは声を振り絞って叫びをあげていたカミナももう随分と大人しくなってしまった。
もう、だめか。
そんならしからぬ弱気がカミナの心を濡らし始める。
「……カミナ、作戦があります」
クロスミラージュが唐突に声をあげたのはそんなときだった。
「……作戦ん?」
疲労に塗れた声でカミナが問い返す。
そのあと、彼は一瞬だけ虚空を見つめ、考えるそぶりを見せると、訊いた。
そのあと、彼は一瞬だけ虚空を見つめ、考えるそぶりを見せると、訊いた。
「勝てんのか?」
「……ええ、多分」
「……ええ、多分」
その答えにカミナは嬉しそうに笑みを浮かべた。
「多分もありゃあ十分。
……どうせこのままじゃジリ貧だ。
よぉ~し、この喧嘩、テメエに任せるぜ、クロミラァ」
……どうせこのままじゃジリ貧だ。
よぉ~し、この喧嘩、テメエに任せるぜ、クロミラァ」
そう言って目を輝かせるカミナの心から弱気の影は早くも消えていた。
◆
「いけるわ……確実にこっちが押してる……このまま行けば……」
「油断するなシャマル。奴は腕のいい戦士だ。何を仕掛けてくるか分からん」
「油断するなシャマル。奴は腕のいい戦士だ。何を仕掛けてくるか分からん」
ラガンのコクピット。
ヴィラルはこの戦い二度目となる勝利の予感に身を震わせながらも、
最後まで油断せぬよう、己の気を引き締めていた。
ヴィラルはこの戦い二度目となる勝利の予感に身を震わせながらも、
最後まで油断せぬよう、己の気を引き締めていた。
(ラガンインパクトのときはまんまと受け止められ、逆にピンチを招いてしまった。
もしかしたら、あのときの俺には僅かな慢心があったのかもしれん。
それが技に隙を生み、つけ込まれる元になってしまったということも十分にあり得る。
……だが、二度はないぞカミナ!
今度こそこのガンメン乗っ取りを成功させ、完成した合体ガンメンで仲間もろともあの世へおくってやる!)
もしかしたら、あのときの俺には僅かな慢心があったのかもしれん。
それが技に隙を生み、つけ込まれる元になってしまったということも十分にあり得る。
……だが、二度はないぞカミナ!
今度こそこのガンメン乗っ取りを成功させ、完成した合体ガンメンで仲間もろともあの世へおくってやる!)
螺旋力の注入に集中しながらも、ヴィラルはカミナの不穏な動きを警戒していた。
だから、それが始まったときもすぐ、異変に気がつくことができた。
だから、それが始まったときもすぐ、異変に気がつくことができた。
「何?」
きっかけはラガンに伝わってきた振動だった。
上下に何かを揺さぶるようなごくごく軽い振動。
不審に思ったヴィラルがその原因を探る。
出所を見つけるのは実に簡単だった。
ラガンを頭の上に戴いたグレンが少しずつ少しずつ、移動を始めていたのである。
上下に何かを揺さぶるようなごくごく軽い振動。
不審に思ったヴィラルがその原因を探る。
出所を見つけるのは実に簡単だった。
ラガンを頭の上に戴いたグレンが少しずつ少しずつ、移動を始めていたのである。
「何のマネだ?」
「………………」
「………………」
問いかけるが答えは返ってこない。
何かおかしい。
雰囲気に不気味なものを感じ、ヴィラルはグレンの歩みを止めようとする。
しかし、まだ支配率からすれば相手のほうが上なのか、思うように機動を操れない。
フラフラと歩くコースを乱れさせることはできたものの、歩みを止めるまでには至らない。
何かおかしい。
雰囲気に不気味なものを感じ、ヴィラルはグレンの歩みを止めようとする。
しかし、まだ支配率からすれば相手のほうが上なのか、思うように機動を操れない。
フラフラと歩くコースを乱れさせることはできたものの、歩みを止めるまでには至らない。
「くっ、こいつ、一体、何を狙って……」
「ヴィラルさん、見て!」
「ヴィラルさん、見て!」
カミナの目的が分からず、苛立ちを募らせていると、シャマルからほとんど悲鳴のような叫びが聞こえる。
そちらを見ると、思わず目を見開いた。
グレンの進行方向、これから歩いていこうとしている道路の先に、信じられないほど幅の広い断崖が広がっていたのだ。
地図にはなかった地形に頭を混乱させながらしかし、ヴィラルはある事実に思い当たる。
この場所にかつてあったものを想像してみれば簡単なことだ。
そちらを見ると、思わず目を見開いた。
グレンの進行方向、これから歩いていこうとしている道路の先に、信じられないほど幅の広い断崖が広がっていたのだ。
地図にはなかった地形に頭を混乱させながらしかし、ヴィラルはある事実に思い当たる。
この場所にかつてあったものを想像してみれば簡単なことだ。
「刑務所跡だと!?こんなことになっていたのか!?
……まさか、貴様ッ!?」
……まさか、貴様ッ!?」
広がる崖の雄大さに心を震わせるのも早々、ヴィラルの頭にある悪い予感が閃く。
カミナは答えず、グレンは歩みを止めない。
カミナは答えず、グレンは歩みを止めない。
「やはりそうかッ!貴様、俺達ごと、あの谷に身を投げるつもりだなッ!」
「何ですって!?」
「何ですって!?」
提示された恐怖の未来予想に、シャマルが思わず焦りの声を上げる。
確かに、冷静に考えてみればカミナにとって、身投げというのは十分にあり得る選択肢だ。
このまま、第三者の介入がなければ、カミナがグレンを乗っ取られるのはほぼ必然。
そうなれば、お互いの戦力比は合体ロボット対生身。
決闘はたちまち虐殺へと早変わりし、カミナが生き延びられる道は万に一つもない。
しかし、まだグレンを動かせるうちにその足を動かし、あの巨大な奈落に身を投げれば、おそらくは相打ち。
運がよければ、自分だけが生き延びるという未来もあり得る。
ここで身投げを選ぶというのは確かに合理的。利のある選択。
だが。
確かに、冷静に考えてみればカミナにとって、身投げというのは十分にあり得る選択肢だ。
このまま、第三者の介入がなければ、カミナがグレンを乗っ取られるのはほぼ必然。
そうなれば、お互いの戦力比は合体ロボット対生身。
決闘はたちまち虐殺へと早変わりし、カミナが生き延びられる道は万に一つもない。
しかし、まだグレンを動かせるうちにその足を動かし、あの巨大な奈落に身を投げれば、おそらくは相打ち。
運がよければ、自分だけが生き延びるという未来もあり得る。
ここで身投げを選ぶというのは確かに合理的。利のある選択。
だが。
「バカ野郎!何でこのカミナ様がそんな自殺みたいなことしなくちゃなんねえんだ!!
見損なうんじゃあねえ!」
「嘘をつけッ!では何故崖の方に向かうッ!他に考えられる理由などあるものかッ!」
「……ヘヘッ!そいつぁ、どうかな?」
見損なうんじゃあねえ!」
「嘘をつけッ!では何故崖の方に向かうッ!他に考えられる理由などあるものかッ!」
「……ヘヘッ!そいつぁ、どうかな?」
人を食ったようなカミナの答えにヴィラルは激昂する。
いきり立ち、更なる叫びをぶつけようとした、そのとき
いきり立ち、更なる叫びをぶつけようとした、そのとき
『この界隈は現在、進入禁止エリアと定められている。速やかに移動を開始し、当該エリア外へと退避せよ』
突如警告音が鳴り響き、螺旋王の声が耳朶を打った。
「何イッ!?」
そう、この奈落がある刑務所跡、即ちエリアB-7は現在、禁止エリアに指定されている。
当然、そこに入ったものには螺旋王から警告が与えられ、一分以内に従わぬ場合には……首輪が爆発する。
もちろん、それは現在、乗っ取り作業を続けている二人にとっても例外ではない。
当然、そこに入ったものには螺旋王から警告が与えられ、一分以内に従わぬ場合には……首輪が爆発する。
もちろん、それは現在、乗っ取り作業を続けている二人にとっても例外ではない。
「……随分、見通しの甘い作戦を立てたものね。
もうすぐ、あなた達の機体の機能のうち、50%がこちらのものになるわ。
そうすれば、主導権はこっち。
その後で、ゆっくり禁止エリアから外に出れば何の問題も……」
「本当にそうでしょうか。ミスシャマル」
もうすぐ、あなた達の機体の機能のうち、50%がこちらのものになるわ。
そうすれば、主導権はこっち。
その後で、ゆっくり禁止エリアから外に出れば何の問題も……」
「本当にそうでしょうか。ミスシャマル」
今度はクロスミラージュが口を開く。
「分からないならば、現在、私達のいる場所をよく確認してみることをお勧めします」
「場所……?
ッッ!!」
「場所……?
ッッ!!」
言葉の意味を量りかね、何の気なしに外を見たシャマルは思わず息を呑んだ。
気がつけば、そこは断崖の端も端。あと一歩でも踏み出せば一挙に落下してしまいそうな、ギリギリの場所だった。
気がつけば、そこは断崖の端も端。あと一歩でも踏み出せば一挙に落下してしまいそうな、ギリギリの場所だった。
「先ほどあなた方が私達の操作を妨害し、歩く軌道を変えたように
主導権がなくとも機動に介入することはできます。
こんな危なっかしい場所でさっきのような千鳥足をしたら……どうなるかはお分かりでしょう?」
「一分経てば貴様も死ぬんだぞ!?これも自殺のようなものじゃないのか!?」
「本当にそうかどうか、テメェのその汚い耳でよく聞いてみるんだなッ!」
主導権がなくとも機動に介入することはできます。
こんな危なっかしい場所でさっきのような千鳥足をしたら……どうなるかはお分かりでしょう?」
「一分経てば貴様も死ぬんだぞ!?これも自殺のようなものじゃないのか!?」
「本当にそうかどうか、テメェのその汚い耳でよく聞いてみるんだなッ!」
言われてヴィラルは耳をそばだてる。
次の瞬間、彼の顔は驚愕に塗りつぶされた。
次の瞬間、彼の顔は驚愕に塗りつぶされた。
「……警告音がしないだとッッ!! どういうことだッ!?」
「テメエの上司が作った首輪はとんだポンコツだったってことさッ!」
「テメエの上司が作った首輪はとんだポンコツだったってことさッ!」
カミナの首輪はもはや作動していない。
クロスミラージュの作戦の肝はここにあった。
彼はカミナがトリップしながらブリに引かれていたとき、
禁止エリアを通っても首輪が反応していなかったことを目ざとく確認していた。
もちろん、聴覚素子の不調である可能性もあったし、作動していないのは警告機能だけである可能性もあった。
しかし、その程度のリスクを恐れるカミナではない。
クロスミラージュの作戦の肝はここにあった。
彼はカミナがトリップしながらブリに引かれていたとき、
禁止エリアを通っても首輪が反応していなかったことを目ざとく確認していた。
もちろん、聴覚素子の不調である可能性もあったし、作動していないのは警告機能だけである可能性もあった。
しかし、その程度のリスクを恐れるカミナではない。
「さぁて、もう一度言うぜぇ?
テメエらが大人しく出てくるんならそれでよし。
だが、もし、テメエらがあくまでまだやるってんなら……」
テメエらが大人しく出てくるんならそれでよし。
だが、もし、テメエらがあくまでまだやるってんなら……」
先ほど述べた降伏勧告を、カミナはもう一度繰り返す。
彼の目的はあくまでもラガンを取り返すこと。
ヴィラルたちの命を奪うことは本意ではない。
彼の目的はあくまでもラガンを取り返すこと。
ヴィラルたちの命を奪うことは本意ではない。
「ふざけるな!ここまできて降伏だと!?
そんなものが受け入れられるわけがないッ!
主導権がなくとも機動に介入できると言ったな?
そのセリフ、機能の70%、80%を獲られても、まだ吐いていられるかな?」
そんなものが受け入れられるわけがないッ!
主導権がなくとも機動に介入できると言ったな?
そのセリフ、機能の70%、80%を獲られても、まだ吐いていられるかな?」
だが、ヴィラルにとて意地がある。
新たなガンメンを手に入れ、参加者の一人を殺害する絶好のチャンス。
しかも、これは自らの運命に立ちふさがった戦いだ。
最後の最後まで、退くわけにはいかない。
新たなガンメンを手に入れ、参加者の一人を殺害する絶好のチャンス。
しかも、これは自らの運命に立ちふさがった戦いだ。
最後の最後まで、退くわけにはいかない。
「テメェならそう来ると思ったぜヴィラルッ!
ならどうする!?降伏しないテメェはどうするんだッ!!」
「知れたことだッ!戦い、勝つッッッ!!!」
「来いッ!テメエの気合とクロミラの作戦とォッ!どっちが上か勝負だッ!!!」
「行くぞッ!!」
ならどうする!?降伏しないテメェはどうするんだッ!!」
「知れたことだッ!戦い、勝つッッッ!!!」
「来いッ!テメエの気合とクロミラの作戦とォッ!どっちが上か勝負だッ!!!」
「行くぞッ!!」
「「最後の決戦だッッッッッ!!!」」
二人の咆哮が空に響き渡ると同時、その決戦は幕を開けた。
グレンとラガンを中心に、今まで最大級の螺旋力が爆発する。
ラガンからグレンに向かう下向きの力、緑のドリルが猛回転する。
カミナから命とグレンを奪うべく、爆音を上げる。
対するはグレンからラガンに向かう上向きの力、こちらも掲げるは緑のドリル。
獣人の刃を砕き、友の魂を取り戻すため、火花を散らす。
その威力はほぼ互角。
押しては戻し、戻しては押す、魂と魂の鍔迫り合いが昼の世界をさらに明るく眩ます。
ドリルがぶつかり合う激しい閃光に街が沈みゆく。
しかし、時の神は無情にも、命に期限を課している。
グレンとラガンを中心に、今まで最大級の螺旋力が爆発する。
ラガンからグレンに向かう下向きの力、緑のドリルが猛回転する。
カミナから命とグレンを奪うべく、爆音を上げる。
対するはグレンからラガンに向かう上向きの力、こちらも掲げるは緑のドリル。
獣人の刃を砕き、友の魂を取り戻すため、火花を散らす。
その威力はほぼ互角。
押しては戻し、戻しては押す、魂と魂の鍔迫り合いが昼の世界をさらに明るく眩ます。
ドリルがぶつかり合う激しい閃光に街が沈みゆく。
しかし、時の神は無情にも、命に期限を課している。
『残り10秒だ』
決着まであと十秒。
長かった対決の結末を前にして、舞台の全てはついに緑の光へと消えた。
長かった対決の結末を前にして、舞台の全てはついに緑の光へと消えた。
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