天のさだめを誰が知るⅢ ◆LXe12sNRSs



 ……今度こそ、声高らかに作戦の提唱がなされ、しかしながら周囲の反応は薄い。
 驚嘆も感嘆もなく、集う者たちはルルーシュへと視線を傾けたまま、しばし無言を貫いた。
 誰が口火を切るか、と各々が思い始めたところで、

「……ふざけるのも、大概にしろッ!!」

 いの一番に口を開き、しかも肯定ではなく異を唱えたのは、シトマンドラだった。

「アンチ=スパイラルを、降臨だと……? つまりなんだ、奴らを呼ぶということか!?」
「そのとおりだシトマンドラ。実験の進捗を餌とし、アンチ=スパイラルとのコンタクトを図る」
「戯けたことを抜かすな! 螺旋王が長年の宿敵と定めてきた、我らにとっての外敵を、わざわざ呼び寄せるなど……」
「違うな、間違っているぞシトマンドラ。ロージェノムにとってはそうかもしれんが、アンチ=スパイラルは我々にとっては外敵とはなりえない」
「な、なに……っ?」

 シトマンドラの反論を、ゼロとしての冷厳な声でもって看破するルルーシュ。
 その瞳には、確かな自信が宿っていた。

「いいか、アンチ=スパイラルが恐れているのはスパイラル=ネメシスの発揮であり、螺旋王個人でも獣人でもない。
 そもそも奴らが本気になれば、多元宇宙に住まう全ての生物が滅ぼされたとしても不思議ではないのだからな。
 螺旋王の失踪をきっかけに、アンチ=スパイラルの手勢と思しき集団による警告がやんだのがその最もたる証拠だ。
 奴らは今頃、螺旋王を失った我々が実験をどうするのか窺っている段階なのだろう。
 もし続行するようなら目を離さず、もし破棄するようなら捨て置き、消えた螺旋王を捜すだろう。
 つまりアンチ=スパイラルは今、凍結中の実験場に釘付けとなっている。こちらが決断を下すまでは動かない、待ちの状態だ。
 だからこそ実験を推し進め、さらに奴らの注目を誘う! ここで奴らの興味を削ぐことこそ、詰みに他ならない!」
「やっぱり要領を得ないねぇ。ルルーシュ、結局あんたはどうしたいのさ。アンチ=スパイラルを呼び出して、それからどうする?」

 なかなか真意を語ろうとしないルルーシュに、アディーネは苛立ちながら催促する。

「焦るなアディーネ。物事には順序というものがある。
 アンチ=スパイラルが危険視しているのはスパイラル=ネメシス――なら、それを起こしてやるのさ。
 螺旋王が求めた真なる螺旋力の覚醒。アンチ=スパイラルの畏怖の対象たる力を発現させ、奴らを誘い込む」
「実験場にかの? 確かに警告にもあったように、これ以上実験を進めれば堕ちるとまで言っておったが……」

 敵の強大を危ぶみながら、グアームが懸念する。

「アンチ=スパイラルは直接実験場に介入できるだけの力を持ちながら、あえて座視している。
 その思惑は知れないが、さすがに実験の成果ともなる要素が現れれば、警告のとおりそれを落としにくるのは間違いない。
 真なる螺旋力が覚醒したとき……映像の多元宇宙で人口が百万人に到達したときと同様、奴らは動き出すッ!
 人類殲滅システムを発動させ、あるいは多元宇宙で揃えた手勢を送り込み、覚醒者たちを根絶やしにするだろう!」
「なんと、それではまるで意味がないではないか。せっかくの成果が殺されてしまっては、実験が気泡と化してしまうぞい」

 グアームの指摘に対し、ルルーシュは不敵に笑って返す。

「構いはしないさ。真なる螺旋力覚醒者など、我々にとっては保護する価値もない、ただの餌に過ぎん。
 狙いはあくまでも、真なる螺旋力覚醒者を出しアンチ=スパイラルを誘き寄せること!
 覚醒者を含め、現在実験場に残っている連中は、それだけで役目を終える。同時に、我々の目的も達成されるのだ」
「……で、目的が達成されアンチ=スパイラルが降臨なさった。そっからどうするのさ?」

 苛立ちを募らせるアディーネが、再度問い直した。
 ルルーシュも、満を持して回答を口にする。

「交渉するのさ。アンチ=スパイラルとな」

 本作戦の終着点とも言える発言に、しかし周囲の反応は薄かった。
 予想される反論を先んじて、ルルーシュが説明を続ける。

「現状、我々にロージェノムのような多元宇宙を渡す術は残されていない。当然、追うのも不可能だ。
 唯一奴を追うことができるとすれば、此度の実験を察知することができ、
 だからこそロージェノムと同等かそれ以上の技術を持つだろう、アンチ=スパイラルだけだ。
 我々は彼らの助力を受け、ロージェノムを捕獲する。同時に、俺が帰る術も手に入るという寸法だ。
 実験を進め成果を出すことは、アンチ=スパイラルとの直接交渉に持ち込むための段取りにすぎない。
 先ほども言ったとおり、アンチ=スパイラルは我々の外敵というわけではないからな。交渉は可能だ。
 互いにロージェノムという共通の標的を持てば、共同戦線を張ることだってできる。
 アンチ=スパイラルにとって目下の害意はこの実験だが、ロージェノムが今後も実験を続けるだろうことは予期しているはずだしな。
 我々の協定を受け入れるか、という心配についても無用だ。なにせ奴らは、既に異なる宇宙の人間を手勢に加えている。
 アンチ=スパイラルが自分たち反螺旋族のみで行動するお堅い種だというならともかく、つけいる隙は既に見えているのさ」

 間断を許さない壮絶な論述に、グアームが、アディーネが、チミルフが唸りを上げる。
 が、

「だが、それとて机上の空論だ」

 ただ一人、神速のシトマンドラだけは――ルルーシュを絶対に認めんと言わんばかりに食い下がる。

「我々も、そして貴様も、資料の中でしかアンチ=スパイラルを知らん。
 奴らが貴様の言うとおり動くと、交渉が成り立つと、絶対に上手くいくと言い切れるのか!?」

 激情を伴う、獣人のエリートとしての主張。
 ニンゲンを認められない、王の裏切りを未だ拒もうとする忠誠心が、孔雀の羽ではなく猛禽の爪となって襲い掛かる。
 しかし――ルルーシュとて後退するわけにはいかない。ここは徹底的に抗う場面だ。

「言い切れるわけがないさ。俺だって、全知全能の神を自称するつもりはない。だが、俺が導き出す答えはこれのみだ。
 あとは協定を結ぶ条件に含めたとおり、『俺を信じろ』としか言えないな。決めるのはおまえたちだ、螺旋四天王ッ!」

 ギアスを用いず、言霊に宿した説得力のみで、シトマンドラを屈服させんと挑みかかる。
 両者の視線が交差し、火花を打ち鳴らし、睨み合いが続き――

「……くっ」

 ――決着は、シトマンドラがルルーシュから視線を背けたことでついた。

「他に反論する者はいないか? ならば決まりだ。実験……いや、儀式の続行を――」
「いや、ちょいと待ってくれるかのぉ」

 シトマンドラを言い負かしたことにより決着したかと思われた、矢先。
 グアームの短い挙手が、ルルーシュの意向にさらなる待ったをかける。

「まあ、たぶんこれから語るつもりだったんじゃろうが……それを聞くまでは納得はできん。
 ルルーシュよ。おぬし、真なる螺旋力覚醒者を出しそれを餌にすると言ったが……いったいどうやってじゃ?
 ロージェノムが逃げた直接の原因はアンチ=スパイラルの警告じゃろうが、奴にとっても今回は布石のつもりだったんじゃろう?
 餌となりうるほどの覚醒者など、本当に現れるのか? 儂は、見込みすらないと考えるんじゃがの」

 グアームのもっともたる問いかけに、ルルーシュは、

「たしかに、現状のまま実験を推し進めたとしても、狙い通りの成果は得られないだろう。だが」

 狡猾に口元を緩め、悪の首領を思わせる歪んだ表情でもって、反論を告げる。

「それはこれまでのロージェノムのやり方が悪かっただけにすぎん。
 奴は殺し合いという下地だけ作り、後は自然の赴くままに状況の変化を待っていたが、俺から言わせれば生温い。
 資料を見てわかったが、螺旋力の覚醒というのは俺たち人間でいうところの火事場の馬鹿力に類似するものがある。
 土壇場で見せる人間の力の発揮、度を越えた気合と根性といったところか。まったく馬鹿馬鹿しいが。
 しかしもしそうなら、実に簡単だ。人為的に覚醒を促すことも、そのための鍵を用意することも、全て問題ない。
 ロージェノムが羨望の対象としていた世界……そこでアンチ=スパイラルを倒しうるほどの螺旋力を得た人類。
 彼らが経験したものと同等の逆境、つまりは『試練』を、こちらが事前に用意し、与える。手順はそれだけだ」

 グアームから提供された情報を、時間をかけて吸収した結果、ルルーシュは螺旋力に対する認識を大きく改めた。
 その結果導き出したのが、自作の試練を与え、作為的に螺旋力の覚醒を狙うという作戦だ。
 螺旋王は参加者たちが自ら歩み、進化を遂げる可能性に期待したのだろうが、ルルーシュに言わせれば実に生温い。
 クライマックスとは、演出家がいるからこそ映えるもの……螺旋王はそれを怠ったのだ。

「……そのやり方で餌ができあがる確率は?」
「なんとも言えないな。これについても、最終的には『俺を信じろ』としか言えん」
「ふうむ……では、具体的にどのような試練を与えるつもりじゃ?」
「現状生き残っているのは、皆それなりに螺旋力覚醒の可能性を持ち得る者たちだ。
 最終的に誰が生き残ってもいいが、決して絶望しない意志の強い者がいいな。
 一人ではなく、団体で残ったとしても問題はない。むしろ好都合だ。絆は力となるからな。
 タイミングとしては、殺し合いに乗った参加者が全滅し、希望を持つ者だけが残った段階。
 その時点でこちらが、実験場に試練と成り得るファクターを投入する。明確に言えば『敵』さ。
 その役割はそうだな、残った参加者たちの戦力にもよるが……チミルフとウルフウッドが最適だろう」
「はぁ~っ!?」

 ルルーシュが語る試練の全容に、今までろくに会議に参加していなかったウルフウッドが、声を荒げた。

「なんやもやしっ子、おんどれはこのワイに、企てのための駒なれっちゅーんか?」
「とんでもない。俺たちはあくまでも対等。従属の関係にはない。協力してほしい、と言っているだけですよ」

 ウルフウッドにだけは、礼儀を弁えた学生として振舞うルルーシュ。
 ウルフウッドとしてはそのカマトトぶった態度が気に入らなかっただろうが、それとて言葉で言い包める自信はある。
 それに――いざとなれば、ギアスも有効だ。

「あなたが為そうとしていることは、チミルフから聞いています。
 参加者たちを殺す……参加者たちに試練を与えるというのは、目的としても食い違ってはいないでしょう?」
「そやな。けどワイがそんなんで納得すると思うてんのか? ワイは、尾っぽ振るうんが気に食わん言うてるんや」
「尾を振る必要なんてありませんよ。むしろ振っているのはこっちだ。
 煙草も、首輪も、この先の身の安全まで――あなたを縛り付けるものはもうなにもない。
 それでも気に入らないというのであれば、あなたの望むままになるよう、譲歩もしますよ。
 ここでの平和な暮らしを約束しろでも、今すぐ実験場に戻せでも、なんなりと。
 あいにく俺と同様に元の世界に帰るという願いだけは、すぐには叶えることができませんがね」

 依然、穏やかな様相でウルフウッドと面向かうルルーシュ。
 ウルフウッドといえば、激昂とも憤激とも言えぬ、相手を怒らせることを目的にしたような珍妙な表情で、ルルーシュを睨む。
 ポーカーでも楽しみたいのか、笑顔という名の鉄面皮を崩さないルルーシュには、さほど効果もないようだったが。

「……ケッ」

 やがてウルフウッドの側が折れ、いけ好かないといった調子で不貞腐れた。
 一見して、ただのチンピラのようにも思えるこの男。
 その内情は未だに窺い知れないが、だんだんと理解が追いついてきた。
 使い潰すことも、それほど難しくはないだろう……とルルーシュは分析する。

「んで、結局のところどうするんじゃ? 当面の間は、実験の成り行きを見守るということでよいのか?」
「いや、その前にもう一手、打っておきたい手がある。頭を休めるのは、それからだな」

 会議も終わりが見え始めた頃、ルルーシュは新たな策を発案する。

(参加者に試練を与える……これを遂行する上で、ぜひ手に入れておきたい駒だ。
 現状入手可能な駒の中で、試練を与える側としては最も適任と判断できる人材の確保。
 ないとあるとでは大きく違う。だからこそ欲しいぞ。ああ、絶対に手に入れてやる――ッ!!)

 長い長い会議を経て、大きく唸りを上げるルルーシュ・ランペルージの顛末。
 舵は既に、ルルーシュの手の中にある。
 あとは、これをどちらに切るか。

「ああ、それから」
「うん? まだなにかあるのか」
「いやなに、大したことじゃないさ。ちょっとしたわがままなんだが……『ゼロ』のスーツの予備はないか?
 今後こういった活動を続けるにあたって、もやしっ子と言われてしまうような外見では締まりがないからな」


 ◇ ◇ ◇


「……なるほど。そして白羽の矢が立ったのがこの儂、というわけか」

 ――そして、現在に至る。
 東方不敗の召集を果たした場所は、ルルーシュたち同様、主不在の王の間だ。
 ルルーシュを筆頭とした面々はそこで東方不敗にこれまでの経緯を説明し、彼を勧誘した。

 東方不敗マスターアジア。人類殲滅を掲げ、実験場においても生き残りを目指し、元の世界への帰還を目指す者。
 その武力は詳細名簿やチミルフの情報からも窺い知れ、現生存者の中では間違いなく随一だと、ルルーシュは判定した。
 しかし、彼が東方不敗に着目した理由は、単純な戦闘力だけの留まらない。

 東方不敗。またの名をマスターアジア。本名は誰も知らない。そんな老人が持つ、もう一つの肩書き。
 それこそが、ドモン・カッシュが尊敬を意を込め日々唱えていた――『師匠』という称号だ。
 若者に試練を与え、道を解き、進化を促す。
 現在の本人の思想とは食い違えど、東方不敗は指導という分野にも秀でた正に好条件を揃える人物、キーパーソンとなり得る。
 彼が動かせるか動かせないかでは、実験終盤に想定している山場にも、大きく差が出るだろう。

 故の勧誘……ギアスという奥の手も抱えながら、ルルーシュは東方不敗に返答を求める。

「どうです? 悪い条件ではないと思いますが。貴方としても、元の世界に帰れないのは困りものでしょう」
「うむ、確かに。よかろう! ゼロ、いやルルーシュ・ランペルージよ。この東方不敗、貴様の策に一枚噛ませてもらうとしよう」

 返ってきたのは、思わぬ即答だった。
 期待していた答えではあるが、さすがのルルーシュも怪訝な表情を浮かべる。
 フルフェイスのマスクに覆われた顔は悟られることもなく、心中にて東方不敗の心理を探る。

(なんだ、この決断の速さは? いくらなんでも速すぎる……あたかも疑心を植えつけろ言わんばかりの即決だ。
 確かに東方不敗と俺たちの利害は一致するが、だからといってこうも容易く他者の提案を呑むなど、ありえるか?
 ……ない。十中八九、策謀をめぐらせているだろうことは間違いないな。この老人は、ただの筋肉馬鹿というわけでもない。
 聡明だからこそ、心してかからねばならんか。ああ、だがこの場はこれでいい。対処はまた後に、もっとこいつの見極めてからだ)

 疑問を抱くものの、それに対する即解が出てくるわけでもなく、ルルーシュは東方不敗への警戒心を強めるだけに留めた。
 この老人は魅力的な駒ではあるが、チミルフのような単細胞の武人ではない。
 それだけに、様々な危険を孕む。危険を孕んででも、次のフェイズへ進まなければならなかった。

「話が早くて助かりますよ。では、ひとまず場所を移しましょう。
 実験場の凍結を解除し、儀式としてのリスタートを切るためにやらなければならないこと。
 その具体案を、会議の場にて発表します。貴方の出番はまだ先でしょうが……ご尽力、期待していますよ」
「フフフ……任せておけい。東方不敗の名に恥じぬ仕事をしてやるわ」

 ルルーシュ、東方不敗、共に不敵な笑みを零し、反逆を為すための企ては次なる一歩を刻む。


 ◇ ◇ ◇


 場所を移し、再び会議室。
 東方不敗を加えた一室にて、三人の人間と四人の獣人が集い、今後の計画を確認する作業に入る。

 ――既に参加者の枠を外れつつあるルルーシュ・ランペルージ、ニコラス・D・ウルフウッド、東方不敗の首に、枷はない。
 螺旋王がそう仕込んだように、首輪後部のネジ穴にドライバーを穿ち、回した結果、解除が成功したのだ。
 ここが設備の整っている螺旋城である以上、解除方法はいろいろあったが、あえてネジを回すことで解除した。
 回したのはウルフウッド、東方不敗の二人の螺旋力覚醒者だ。
 首輪のセンサーはネジ穴に伝わるドライバーを経由し、それを握る者の螺旋力に反応し、外れる仕組みになっている。
 唯一、螺旋力に覚醒していなかったルルーシュはこれを自力で解除することができなかったが、本人は特に気にしていない。

(今となっては、螺旋力は考察の対象ではあるが、俺自身がどうのこうのするほどの価値はない。
 概念としてもやはり曖昧模糊だ。螺旋力を目指した螺旋王も、それを危険視したアンチ=スパイラルも、理解しがたい。
 まあいいさ……ここで進めるべきは、研究ではない。実験も既に、儀式と名を変えたことだしな……)

 他六名の視線を浴びる中、ゼロのスーツにマント、マスクだけは取った素顔の状態のルルーシュが口を開こうと構える。
 ちなみに、どういうわけかゼロのスーツを纏っていた東方不敗には……丁重な説得の後、元の衣装に着替えてもらった。

「まず、次の第六回放送で布石となる一手を打つ。そのために必要なのが、螺旋王の擬似声帯だ。
 実験場の奴らには、螺旋王が既に存在しないという事実を悟られてはいけない。殺し合いに集中させるためだ。
 加えて、次の放送では参加者たちに実験場に設けられたタイムリミットを告知する。
 第六回放送の時点では……ちょうど残り十二時間か。いい按排だ。
 危機感を植えつける意味としても大いに効果的であり、また告知のタイミングとしてもベストと言えるだろう。
 そして、発表する死亡者の中に俺、チミルフ、ウルフウッド、東方不敗の四名も加える。
 参加者たちには俺たちを故人として扱ってもらい、余計な詮索を与えないようにするんだ。
 ウルフウッドや東方不敗は、殺し合いに乗った者として危険視していた奴もいるからな。
 そういった心配の種がなくなったと知れば、より脱出のために動き出すことだろう。
 希望を信じ、脱出策を模索する。その衝動は螺旋力の発揮に繋がり、我々の思惑通りに進む。
 実験場には、シータやヴィラルといった障害がまだ残っているだろうが……彼らには尖兵を担ってもらおう。
 現時点で意欲的に殺し合いに乗っている者たち、それすら越えられないようであれば、初めからこの策に望みはない。
 彼らは現状の危難を全て乗り越えてもらい、己の螺旋力を研磨してもらう。
 そうやって生き残った者に対し、我々が最後の試練を与え、螺旋の境地を見い出し、儀式は完成される!
 では、要点を纏めよう」

 ルルーシュは自身の考案する作戦をまず論に移し、次にそれらを纏めていく。


 ◇ ◇ ◇


【Phase1 第六回放送】

 螺旋王の擬似声帯を用い、螺旋王として放送を行う。螺旋王消失を参加者に悟らせず、実験に集中させるため。
 ルルーシュ・ランペルージ、ニコラス・D・ウルフウッド、東方不敗、怒涛のチミルフは死者として告知する。
 同時に、実験場に設けられたタイムリミット(螺旋王が創り出した世界の存続限界)も告知する。
 参加者たちに危機感を植え付け、横道に逸れることのないよう意識を脱出に固定させるため。


【Phase2 第六回放送以降】

 基本的には傍観を貫く。この段階ではまだ、こちらからの干渉は行わない。
 ありえないと想定してはいるが、もし試練を与える前に真なる螺旋力覚醒者が出るようなら、逐一対応。
 プランとしては、現生存者たちに現存マーダー全員を撃破してもらい、まずは不安要素を除去。
 その後自分たちの手で脱出に勤しんでもらい、頃合を見計らったところでチミルフらを投入。
 試練……アンチ=スパイラルにも匹敵する最上級の窮地を与え、参加者たちの螺旋力覚醒を促す。


【Phase3 試練投入後】

 その段階で残っている参加者たちの状態にもよるが、試練のレベルは強すぎても弱すぎてもいけない。
 参加者たちが絶望を覚えてしまうようなら失敗であり、抗い続けたとしてもその先に螺旋力の覚醒がなければ無意味だ。
 想定している投入戦力はチミルフ、ウルフウッド、東方不敗だが、試練のレベルは状況により随時再考案。
 また、投入した戦力はこちらでいつでも回収できるようにしておく(ウルフウッドや東方不敗との協定のため)。


【Phase4 真なる螺旋力覚醒後】

 目論みどおり真なる螺旋力覚醒者が現れ、アンチ=スパイラルが干渉を為してきた場合、その干渉の仕方により対応。
 資料の中にあった人類殲滅システムが発動されたとしても、直属の手勢が乗り込んできたとしても、されるがままにはならない。
 即時こちらから交渉の意を伝え、アンチ=スパイラルが応じるの待つ。これが為せなければ、計画は失敗に終わる。
 餌となった螺旋力覚醒者、それ以外の生存者については、特に処置はしない。
 アンチ=スパイラルの矛を受けるようであれば捨て置き、邪魔となるなら全力で排除する。
 不測の事態はいくらでも想定できるが、アンチ=スパイラルの資料が少なく、これ以上の行動が予測できない以上、そこは容認する。


【Phase5 アンチ=スパイラルとの接触後】

 無事アンチ=スパイラルとの交渉までこじつけられれば、あとはルルーシュの手腕に託される。
 螺旋王失踪の旨、その心理、今後も実験を続けるだろう意を伝え、互いに利害を一致させる。
 その上で協定を結び、一時的にでもいいので多元宇宙を航行する術を得る。
 その後はこの同盟も解散。螺旋王を追い復讐を果たすも、元の世界に帰還するも、各々の判断だ。


 ◇ ◇ ◇


 アメと鞭を心がけ、合理的に実験の進捗を図る。
 ルルーシュが立てた道筋は、必ずしも成功を呼ぶとは限らず、不安となる要素もふんだんに含んでいる。
 だが、これが現状考え得る最善の手であり、唯一の策でもあることは、この場にいる誰もが認めた。
 だからこそ、乗るしかない。数値としての確率も不明瞭な、金箔を塗った泥製かもしれなぬ方舟に。

「他に質問等はあるか?
 ……ないようだな。では、これより作戦行動に入る。
 それぞれの任に戻り、連絡は怠らないよう心がけてくれ」

 ルルーシュ・ランペルージ、ニコラス・D・ウルフウッド、東方不敗、
 怒涛のチミルフ、流麗のアディーネ、神速のシトマンドラ、不動のグアーム。

 七人の同志たちによる試みは、基盤となる七つの意を固め、今ようやく始まる。


 ◇ ◇ ◇



時系列順に読む


投下順に読む



271:天のさだめを誰が知るⅡ 東方不敗 271:天のさだめを誰が知るⅣ
271:天のさだめを誰が知るⅡ ニコラス・D・ウルフウッド 271:天のさだめを誰が知るⅣ
271:天のさだめを誰が知るⅡ ルルーシュ・ランペルージ 271:天のさだめを誰が知るⅣ
271:天のさだめを誰が知るⅡ チミルフ 271:天のさだめを誰が知るⅣ
271:天のさだめを誰が知るⅡ 不動のグアーム 271:天のさだめを誰が知るⅣ
271:天のさだめを誰が知るⅡ 流麗のアディーネ 271:天のさだめを誰が知るⅣ
271:天のさだめを誰が知るⅡ 神速のシトマンドラ 271:天のさだめを誰が知るⅣ





| 新しいページ | 編集 | 差分 | 編集履歴 | ページ名変更 | アップロード | 検索 | ページ一覧 | タグ | RSS | ご利用ガイド | 管理者に問合せ |
@wiki - 無料レンタルウィキサービス | プライバシーポリシー