三獅村祭 ◆jIHhwnBJfg



◇ ◇ ◇


――――時は、しばし遡る。



「……ふむ、成程。
 先程来た時には気付かなんだわ、よもやこんな場所にこれだけの代物が隠されていたとはな」


やけに体にフィットした、青をベースに過多な金の装飾を施された服――――、
知る人が見れば『ゼロ』の衣装と分かる服を着た壮年の男、東方不敗はデパートの地下に一つの巨大な物体を見出しニヤリと笑う。

かつて絶望の名を持つ男に支給されたのは仮面とマントだけであり、衣装はその場にはなかった。
余った衣装は偶々空港に配置されていたのだが、そんな事は東方不敗は知る由もない。

まあ今はそんな服の事などどうでもいい。
見上げる先に存在を誇示するは白馬。
彼の傍らに寄り添うも白馬。

……だが、両者には決定的に違う点が一つある。
言うまでもない、サイズだ。

要するに。
前者は機械仕掛けの巨馬であり、後者は生きた駿馬であるという話である。


風雲再起――――、至高にして究極の名馬。
その力を最大に生かしうる、同じ名を持つモビルホース。
その二つが今ここに揃ったのだ。


あの、空港のコンテナで得た情報によれば、デパート、刑務所、古墳、ショッピングモールなどに、似たようなシステムが存在するという。
ならば話は単純だ、会場の中央に向かい接敵しながらそれぞれの施設を虱潰しに向かえばいい。
その経路上最も近い位置に存在していたのがこのデパート跡であり、ここの地下には無数の見慣れない機械が鎮座していたという訳である。
メカジキを思い浮かばせるような明らかな戦闘機なども存在したが、今見るべきはそこではない。
その中から心強い愛馬の似姿を見つけ出し、どうすべきか思案に至るという次第だ。


勿論持ち出せるものなら持ち出したい。
だが、それには一つの問題が生じたのだ。

……これはモビルホース風雲再起に限った話ではないのだが。
どうやら、宇宙に出ることの出来る機体は全て禁止エリアであるD-5に発射口が設けられているらしい。

……どういうつもりなのだろうか、と考えれば答えは明白。
これが『実験』だというのならば、ありとあらゆる事態を想定するのは当然だ。

螺旋王は、参加者の脱出すらも可能性の一つとして考えている。
その為の手段として、首輪を外した後にこれらを用いて会場を抜け出すというのがあるのだろう。

「何処までも我らは彼の男の掌の上、か。くく……」

螺旋王の持つ力に実に興味が涌く。
それを得られれば人類掃討にどれほど貢献してくれるのだろうか、それが心の底より楽しみだ。

……まあ、脱出などという七面倒臭いことなどに手を貸すつもりも無い。
皆殺しにするという方針は一切合財揺るぎはしない。

とは言え、それはまた別の問題だと考えを切り替える。
今思うべきはこのモビルホースをいかに扱うか、だ。
持ち出せるものならすぐに持ち出したい。
……が、それをするには障害が具体的な形になって立ち塞がっている。

――――首輪。

参加者達と同じ類の首輪が風雲再起にもしっかと嵌め込まれていたのだ。
この状態でモビルトレースシステムに入ったとしても、出口に至る時にはいかなこの名馬といえど首を吹っ飛ばされている事だろう。

……ある意味、当然の措置だろう。
人にも迫る知性とそれ以上の身体能力。
何より強い強い意思の持ち主である之程の駿馬もまた一介の生命。
それは、螺旋王に反逆を企てるに充分足る。
自立行動可能な存在に易々自由を許すほど、あの男が見通しが甘いはずもない。

――――何より。
ヒトに生み出された存在ではない風雲再起も、螺旋の力を持ち得る存在なのだ。
この時の東方不敗はまだ知らず、しかしこのすぐ後の邂逅でそれを知ることになる。


何にせよ、正規の方法では現状これを使うのは難しいようだ。

ならばとデパート側の出口を破壊して拡張、そこから取り出せばいいという逆転の方法も思い浮かんだがそれもすぐに不可能と判明した。
妙な力が仕掛けられているようで、それ以上の物理的な破壊は一切受け付けなかったのだ。
東方不敗には知る由も無い。
それが、博物館の一室を包み込む力場と同一の性質を持つ事などは。

とりあえず東方不敗の知り得る目ぼしいものは他になく、他の参加者を警戒して施設ごと破壊してしまおうかと思ったが――――、

「……これを砕くは流石に惜しい。しばし捨て置くとしようか」


……東方不敗は、空港のコンテナやここに集められた機材の意味を薄々と理解し始めている。
カミナという男も持っていた板切れ――――、恐らくは何らかの通信装置の向こうにいた存在から聞いた情報がその答えに関与している。

多元世界。
要するに、この殺し合いの参加者のもと来た世界にある数々の物品を隠してあるのだ。
だからこそ、一見使い道が分からないものでももしかしたらあのデビルガンダム以上に人類掃討に適した何かが存在してもおかしくない。
故に、この場は見逃す。

彼は、彼自身の絶大なる実力を根拠として、リスクよりもリターンを得ることを選択したのだ。

……と、そこまで考えたとき。


『――――生き延びた者達よ、聞くといい』


……放送が始まる。
その、螺旋の王の一言一句を聞き逃さず、並べられる名を己が知識と一致させていく。

……特に印象的だったのは、三つの名だった。

藤乃静留。
衝撃のアルベルト。
ヴァッシュ・ザ・スタンピード。


――――真中に挙げられた存在は、この戦場にて初めて拳を交えた男。
およそこの東方不敗にも拮抗するとすら思われた実力者の脱落に、格闘の一を極めた男は一抹の物寂しさを感じざるを得ない。

……あれほどの力を持ってすら、この殺戮遊戯を生き残る事は出来はしない。
例えどれだけ鍛え練り高めようと、死はいとも簡単にその価値を空と化す。

ヴァッシュ・ザ・スタンピードも同じくだ。
尤も、あの性格ならば遠からず死んでいたことだろうが。
……それでも磨き抜かれた技術の持ち主が逝くというのは、実に勿体ないことだ。

藤乃静留は、本人はともかく従えた蛇は恐るべき巨体だった。
誰が斃したのかは分からないが、気を引き締める必要があるだろう。

――――だからこそ、この戦いの初めからを思い返す。
最初に合い見えたのは先に考えたとおり、衝撃のアルベルト。
……最早、決着をつけることも叶わない。

次いで交戦したのはジンと清麿、ラッド、ヨーコという一行だ。
……再戦を経た後ラッドはこの世を去り、ヨーコはその時に自ら仕留めた。
ジンと清麿という二人は、今もまだ脱出の算段でも企てているのだろう。

……あの時ジンという男に感じた危険な臭いは、間違っていなかったのかもしれない。
相当な切れ者だろう、今後は警戒する必要がありそうだ。

その直後に出会った相羽シンヤはとうに誰かに殺されたようだ。
最早どうでもいい存在でしかなく、即座にその記憶を忘れ去る。

――――ソルテッカマンを与えた鴇羽舞衣。
途中までは実に使い勝手のいい傀儡だったが、反旗を翻した以上あの少女はもう邪魔者でしかない。
その少女を庇うDボゥイも多少は厄介だが、所詮は身体能力だけに特化した相手だ。
しぶとく生き延びている根性は認めるが、あの死に体では自分の敵ではないだろう。

そして今この場所、デパート跡で遭遇したヴィラルとシャマルの二人。
あの獣人と拳を交わした時に再度出会ったが、やはり脅威とは成り得ない。
回復能力が使える以上は利用価値があるにはあるが、それも制限の為か大した効果は見られなかった以上、排除しても問題はないはずだ。

……馬鹿弟子にして愛弟子、ドモンと邂逅したのはその時だった。
あのドモンは、本当に自分の知るドモンなのだろうか。多元世界の別人でしかないのか。
それを確かめる為にも、再度拳を交わす必要があるだろう。

それから、色々と懸念事項となりうる、あの馬鹿騒ぎに巻き込まれた。
……発端となった衛宮士郎という向こう見ずな少年は死んだ。
だが、あの時に自分が危険であるという情報は知れ渡っただろう。
あの時あそこにいた人物の大半はもういないとは言え、それが厄介な事には変わりない。
……あの巨大な蛇を従えた静留はいないが、しかし今だ英雄王ギルガメッシュは健在だ。
その従者である結城奈緒とやらは放っておいても構わないだろうが、あの男はこの殺し合いの中でも別格だ。
最優先で警戒し、出会ったらすぐに仕留める必要がある。

静留の蛇を前に一時撤退して出会ったのが、螺旋王配下のあのチミルフという猿男。
叩きのめした後で情報を搾り取るつもりだったが、不意の事態で逃してしまったのは手痛い失敗だ。
……やはりあの男も、捜索する必要があるだろう。

その後に出会ったのが――――、カミナ。
実に優れた気概の持ち主だっただけに、恨みを買った事が惜しい。
ヨーコに加え、あのVの字、ビクトリームだか殺したから、ますますそれを決定付けた事だろう。
螺旋王の娘であるニアや、あの子供と思えぬ力の持ち主ガッシュなど、それ以外にも興味深い者達ばかりだった。
……実力そのものは自分に劣るが、確実に油断ならない存在だ。
ニアは確保し、カミナとガッシュは――――、排除せねばならないだろう。


……ふう、と一息つく。

然るに、警戒すべき生者は次の通り。
ジン、ギルガメッシュ、カミナ、ガッシュ。
一段落ちて、高嶺清麿、鴇羽舞衣、Dボゥイ、ヴィラル、シャマル、結城奈緒。

そして探すべき相手も多い。
ドモン・カッシュを初めとして、チミルフとニアを確保する。


その為にも、やはり必要なのは――――、

「……やはり、我がマスターガンダムを手中に収めるに越した事はないか」

あれさえあれば確実に戦力の増強になる。
自分の消耗や怪我を鑑みて、DG細胞による治療の可能性を得られるのも魅力的だ。

故に、向かうべきはあの時告げられた施設を順繰りに。


風雲再起は既に似姿を見つめる事を止め、明るい陽光の世界へと体を向けて主を待っている。
主の望むに先んじるが従が定め。
ならば、従が勤めに応えるこそが主が定め。
タン、と、軽い音と共に地面を跳べば、そこは即座に風雲再起の鞍の上。


「……では向かうとしよう、風雲再起ッ!
 お前に乗るに相応しい我が愛機を探しになぁッ!!」



◇ ◇ ◇


その、道中に見止めたのが――――、牧師と獣闘士の戦闘だった。

古墳に向かってみたものの、残っているのは崩れ去った廃墟と砕けた妙なオブジェだけ。
そんな期待外れを味わわされて、次なる目的地と見定めたショッピングモールに向かう最中でのことだった。
何かが存在すると目された刑務所は既に禁止エリアに指定されていた為、残ったのはショッピングモールのみ。
そこに向かうにはC-6を通る必要があり、通過の際に何気なく響いてきた爆発音こそが、東方不敗をその戦闘に呼び寄せた原因だ。
その音がロケットランチャーの弾丸が二つ、同時爆発した際に生じたものである事は神のみぞ知る。

そして東方不敗は観測する。

……見れば、実力は伯仲だ。
特に牧師は銃の扱いにおいて、あのヴァッシュ・ザ・スタンピードに並び立つことだろう。
チミルフもチミルフで健闘しており、この戦闘の後に確保は容易だと判断。

故に、決着がつかんとするまさにその瞬間に介入する。
放っておけばチミルフは死に、情報は得られなくなる。
牧師も牧師で殺し合いに乗っているようである為、使い道はあることだろう。

だから、使うは右手の鎖。
神をも縛る天の鎖にて、死を告げる牧師を拘束する――――!


「な……ッ!」


……そんな驚愕の声と共に黒衣の牧師を引き寄せ、とん、と首を手刀で打つ。
どさり、と。
消耗が故にあっさりと、怪我一つする事無く崩れる牧師。

それを暗がりに――――、映画館の暗がりに捨て置いて、東方不敗は進み出る。

そう、此処は映画館だ。
数刻前には戦禍の中心となり、その前には智に長けた者どもの棲家となった因縁深い場所。

あちこちに穴を開けられ、最早映画館としての体裁が整っていなくても。
……そこは確かに、未だに形を残していた。

「……貴様は……ッ!」

驚愕と共に目を見開くチミルフの前に、ゆらりと東方不敗はその姿を全て曝し出す。

「……また会ったな、螺旋王の僕よ。
 くく、では、貴様の先程告げた世界の創造とやらを……吐いてもらおうか」

ぎり、と歯の根を鳴らし、投げかけられた言葉を無視してチミルフは怒りをぶち撒けた。

「……何故! 何故、俺達の決着に水を差した……ッ!
 貴様、何が目的だ……!」

ニィ、と笑みを浮かべて余裕をアピール。
ヒトの頂点はただただ、自分の絶対性を誇示して止まない。

「これは奇妙なことを言うな。
 儂は貴様の命を救ってやったのだぞ? あのままでは貴様のその灯は確実に散らされていたのだ。
 感謝こそすれ、憤りを向けられる道理はないではないか」

――――戦えば、殺される。
疲弊した現状と、相手の力量。
加えて牧師を捉えたあの鎖の恐ろしさ。

それらから概算するに、勝率は間違いなく0%を叩き出す。
不利などというレベルではない絶望的なまでの確定した未来。
それが分かっていながらも、しかしチミルフは吼える。

――――何故なら彼は、武人なのだから。

「俺は、武人だ! ……誇りを何よりと信条とするものだッ!
 生命を賭けた闘争の果てに散るならば悔いはない!
 貴様とてそうではないのか!? 貴様には武人としての誇りはないのかッ!」

眼光は鋭く、何処までも力強く。
武人であるが故に、同じく武人であるはずの相手も分からぬはずが無いとの怒りを込めて。


「……ふむ」

そう。
……東方不敗もまた、武人であるが故にそれが分からぬはずが無い。
だからこそ、その言葉は確かに心を揺るがし現状を変えるのだ。

「……どうやら儂は貴様を見縊っていたようだな。
 その誇り高さ、確かに貴様も儂と同じく武に通ずるものらしい。
 ここは素直に割り込んだ事を謝っておくとしよう、だが……」

武人として。
東方不敗はチミルフの評価を改め、そして自らの行いを見直すことを躊躇わない。
だがしかし、冷徹な戦闘者としては譲れぬ理も確かにそこにあり、揺るがない。
淡々と、淡々と。
武人としては不条理な、されどこの世の理には実に適う事実を偉大なる格闘家は言葉に載せる。

「……遠目から様子を窺った限り、貴様だけでなくあそこの男も殺し合いに乗っているのだろう?
 貴様が真に忠義を重んじる男ならば、この実験を促進させるあの男を葬り去ることはむしろ主への反逆ではないのか?」

「……む、う……」

――――チミルフは言葉もない。
そう、確かに自分は獣人の誇りを示す為に、武人としての己を貫く為にこそこの戦場に馳せ参じた。
だが、それ以上にそれ以前に、自分は螺旋王の配下であり創造物である事を違えはしない。
……ならば。
彼の王の意に反することである以上、殺し合いを促進するものを殺す事は、望ましい事ではないだろう。

「……確かに、その通りだな。
 俺も、その男も……、生きて役割を果たさねば、王を満足させることは出来はしまい」

苦渋の表情を浮かべながらも、事実は事実として受け止める。
目を閉じてゆっくりゆっくりと息を吐くチミルフに、深い笑みを向け“交渉”を開始する。

「そうだろう、そうだろうとも!
 ……そして、儂も同じくだ。ここまで言えば言いたい事は分かるだろう?」

……求めるべきは、螺旋王の情報だ。
出来る限り情報を搾り出すには、相手の言質を取る必要がある。
だからこそ、相手の自尊心に抵触する発言を台詞を言の葉を。

「……自分の口から告げるがいい。
 俺は、その上で貴様を見極めるとしよう」

憮然とした表情のチミルフに、東方不敗は悠々と求める情報を突きつける。

「……クク、良いだろう。要するに、だ。
 ……儂も貴様らの実験に協力してやると言っているのだ。
 その為に情報を流してもらいたいのだがな、……螺旋王の目的と、その為の手段をッ!」

こう告げれば。
この言い方ならば。
チミルフが真の忠節を抱く武人である限り――――、

「……致し方あるまい。
 貴様の実力を既に俺は知っている。武人としての格もだ。
 ……故に、俺は武人としての貴様を信じよう。
 聞くがいい、我が主の……、本当の目的を……!」

……主の為に、溜め込んだ知識を吐かざるを得まい……!

そしてチミルフは語りだす。

――――王の語った全ての始まりの世界、その歴史を。
それに連なる多元世界の存在を。
全ての元凶、アンチ=スパイラルの強大さを。
ニンゲンの持つ力、螺旋力。それを用いた新世界の創造という偉大なる王の目的を。


「……ふむ、……成程、な」

――――東方不敗はそれきり黙り込み、しばし思考に身を委ねる。
眉間の皺と歪んだ口元の示すものは何なのか。
それを知るは彼本人を除き存在し得ない。


「……他に何か求めるものはあるか?」

――――考える。
聞いた話は一見眉唾物だが、その実語っているのが彼の王の腹心の部下ともなれば信頼性は実に高い。
多元世界の情報をカミナたちから事前に得ていたこともあって、恐らく真実であろうと推察できる。
螺旋王の目的が、実に自分の目的にも合致するのは嬉しい誤算だ。
……方向性を反転させれば、の話だが。
人間のいないその世界は、果たしてどれだけ芳醇になる事だろうか。

……だが、それ以上に。
アンチ=スパイラルとは何と何と、自分と近しい存在なのだろうか!

人間の発展を進化を否定し、宇宙の、世界の崩壊を食い止める。
その存在は、まさしく自分の求めている自然の守護者ではないだろうか。

……笑みが、湧き上がって止まらない。

どうにかして接触できないだろうか。
その力を得られないだろうか。
いや――――、一抹でもいい。
自分が、力を貸す事はできないだろうか。


……聞こえているか、アンチ=スパイラルよ。
もし貴公がこの箱庭に手を加えんとするのなら、是非この儂を使って欲しい……!


……心の中でだけ強く強く叫び、しかし東方不敗はおくびにも出さず一見冷静な返答をチミルフに返す。

「いやいや、充分よ。成程成程、新世界の創造すらし得る真なる螺旋力……か」

これだけの情報を齎してくれた返礼だ。
……自分の知り得る情報を全て吐き出しても、余りある。

「……ならば、返礼として儂もこの会場の人間どもの知識を貴様に授けておくとしよう」

そして、東方不敗の知り得るあらゆる生存者の知識を伝えていく。
――――そして、その後に自分の目的も教えておく。
アンチ=スパイラルの力を求めようとしている事だけは黙秘しながら、人間を絶滅させんとするその意思のみを。


「……何故、貴様はその様な事に思い至った?」

全てを聞き終えて、厳かなほどに低いチミルフの声が渡る。
……その問いへの答えは簡単だ。
あの、絶望に満ち満ちた光景を伝えればそれでいい。

「……そうか、貴様は知らんのだな。人間の醜さを、愚かさを。
 傲慢なほどの思い上がりと、自然への敬意を忘れ去ったその救い様の無さを……!」


……あのガンダムファイト第十二回大会で見届けた、星の朽ち逝くその姿を。


「……それが、貴様の見るニンゲンか」

聞くべき事は聞いた。
そして、自らもニンゲンと相対する、相対し続ける男はただ一つの疑問を告げる。

「――――だが、問うぞ。
 そこに思い至った貴様自身もまたニンゲンであるのだろう?」


「――――!」

……人は、過ちに気づく事が出来る。
気付き、より正しい方向へ進むことが出来る。
その証拠は他ならない、東方不敗本人だ。

それを分かっていてもなお絶滅への道を進むのか。

ニンゲンに疑問を抱くが故に。
ニンゲンを試さんとする男の、純粋な問いは確かに東方不敗に刻まれる。

――――それでも。
それでも、彼は後戻りは出来ないのだ。
何故なら。

「だが。……だがな。
 もはや、儂には時間が無いのだよ……」


……嗚呼、そうだ。
最早戻る所はない。此処に留まる必要もない。

何処までも、何処までも。
我が道を進んでいこう。

例え何かに躓き、心揺さぶられる事があるとしても。

いつかのセイギノミカタに断言された通り、自分が悪の具現だとしても。
……己の故郷の未来を憂えたその心だけは、決して。

――――決して、間違いなんかじゃないんだから……!


チミルフより肩を翻し、今はただ光の先へと向かう。
この穴倉を出て、向かうべきところに行こう。

「待て、何処へ向かうつもりだ……?」

……何処へ向かうか?
それは、己の力の在り処だ。
自分の求める、力の具現だ。

「――――貴様の乗っていたあの白い機体。
 あれは、如何にして手に入れた?」

……あの白虎を手に入れたと同様に。
自らにも相応しい蹂躙の象徴があるのだと。

「……貴様も、知ったのか? いや、それ以前にあれが何か貴様は分かっているのか!?」

チミルフの驚きが向けられる先は、『ガンメンを理解する人間』だ。
……獣人のみに許されたカラクリ仕掛けの巨人を操るニンゲンとは、即ち。

「くく、くくく……。さあてな、儂の知るガンダムにあのようなモノは存在せん。
 ……だが、儂はアレに類するものがまだまだこの会場に隠されていると確信していてな。
 恐らくはこの儂の愛機も何処かにあるはずだと推測しているのだよ」

――――例えそれが異なる世界のニンゲンだとしても。
獣人が全てを賭けて戦うに相応しい、倒すべき象徴だ――――!


「……愛機、か……」

チミルフは震え、一つの表情を知らしめる。
それはたった一つの、歓喜だ。

……そう。
それこそ、この戦場において東方不敗が自らを委ねるに足る覇者の象徴。

「その通りよ。我が愛機、マスターガンダム。
 その力を以ってすれば、此処の連中など一捻りで終わる。
 ……貴様があの機体を用いるのなら、最後に決着をつける際には相応の武力を以って対峙せねば失礼というものだろう?」

嗚呼。
戦いたい。闘いたい。
そして勝ち、自らの存在意義を試してみたい――――!

「……そう、か」

ならば止める道理はない。
……いずれの邂逅をこの胸に、今はあの覇者の生き様を見守るとしよう。

「……この映画館の奥にも巧妙に『あのような代物』が隠されていたのは意外だったがな。
 ……中を見るに、どうやらガンダムを隠せる程のスペースは無いようだ。
 儂の探し物が見つからない以上、長居をする必要はないのでな」


それだけ告げて、東方不敗は背を向ける。
……言葉は早不要。
ならば、自分に出来る事はこれ位だ。

「……持って行くといい」

一つの瓶が、放り投げられる。
空中で掴み取り、東方不敗が覗き見れば、そこには。

「これは……?」

ファウードの回復液、と。
それだけの書かれたラベルが張り付いていた。

……ワイルドカードとしての参戦ゆえに、チミルフに支給された最後の逸品は戦い抜くための癒しの薬。
二本に分けられた小瓶のうちの、その一つを投げ渡したという訳だ。


「……白黒をつけるならば万全の状態でだ。貴様が自らのガンメンを見つけ出したその後に、あらためて決着をつけるとしよう。
 その時までは……、」

……ニィ、と東方不敗は笑みを深める。
そう、この男と繋がりを持てたのは僥倖だ。
参加者としても、一介の武人としても。


「ああ、その時までは貴様らに力を貸してやるとも。そこの男にも伝えておけ。
 ……抜かるなよ、チミルフ。
 次に出会う時は、全てが終わった時でない限り儂は味方となるだろう。
 ……死して、この儂をがっかりさせてくれるなよ?」

……この殺戮遊戯の最期まで残る事があるのならば、その時こそ拳を交わそうと。


「……ああ、いずれまた会おう、東方不敗よ。
 貴様の道と俺の道が交差するその時に」

――――斯くして。

武人と武人の邂逅の一時は終わりを告げる。

この再訪が、殺戮を望む者たちの手と手の取り合いが、如何なる綻びを導くのか。
今はまだ誰もそれを知る事はない。


【C-5/映画館周辺/二日目/朝~午前】

【東方不敗@機動武闘伝Gガンダム】
[状態]:疲労(小)、全身にダメージと火傷(処置済み)、右肩に貫通傷、螺旋力覚醒
    腹部に無視できぬ大ダメージ(皮膚の傷は塞ってますが、内出血しています。簡単な処置しかされていません)
[装備]:ゼロの衣装(仮面とマントなし)@コードギアス 反逆のルルーシュ、
    風雲再起(健康)@機動武闘伝Gガンダム、
    天の鎖(エルキドゥ)@Fate/stay night
[道具]:ロージェノムのコアドリル×1@天元突破グレンラガン、
    ファウードの回復液(500ml×1)@金色のガッシュベル!!
[思考]:
基本方針:ゲームに乗り、優勝して現世へ帰り地球人類抹殺を果たす。アンチ=スパイラルと接触、力を貸す。
0:アンチ=スパイラルの力を得たい。
1:ショッピングモールへ向かい、隠された何かを調べる。
2:優勝の邪魔になるものは排除する
3:マスターガンダムを探し、可能ならDG細胞により治療を行なう。
4:シャマルを捜索し根本的な治療を行う
5:ロージェノムと接触し、その力を見極める(その足がかりとしてヴィラル、ニアの捜索) 。
6:チミルフとの協定を最大限に利用する。
7:ドモンと正真正銘の真剣勝負がしたい。
8:しかし、ここに居るドモンが本当に自分の知るドモンか疑問。
9:機会があれば、デパート地下のロボット群の詳細を知るものを探したい。
10:ジン、ギルガメッシュ、カミナ、ガッシュを特に危険視。

[備考]
※螺旋王は宇宙人で、このフィールドに集められているの異なる星々の人間という仮説を立てました。本人も半信半疑。
※クロスミラージュの多元宇宙説を知りました。ドモンが別世界の住人である可能性を懸念しています。
※ニアが螺旋王に通じていると思っています。
※クロスミラージュがトランシーバーのようなもので、遠隔地から声を飛ばしているものと思っています。
※会場のループを認識しました。
※螺旋遺伝子とは、『なんらかの要因』で覚醒する力だと思っています。 『なんらかの要因』は火事場の馬鹿力であると推測しました。
 Dボゥイのパワーアップを螺旋遺伝子によるものだと結論付けました。
※自分自身が螺旋力に覚醒したこと、及び、魔力の代用としての螺旋力の運用に気付きました。
※マスターガンダムがどこかに隠されているのではないかと考えています。
※カミナを非常に気に入ったようです。
※空港で調達したのはゼロの衣装でした。
※デパート地下のロボット群の存在を知りました。
※風雲再起には首輪がつけられています。。
※チミルフから螺旋王の目的やアンチスパイラルについての情報を入手しました。
※チミルフと一時休戦、次に出会った時は共闘することを決めました。
 実験の最後に全力で決闘することを誓いました。

【MH風雲再起@機動武闘伝Gガンダム】

モビルホース風雲再起。主に違わず、パイロットは馬なのに異常なほどの高スペックを誇る機体。
MFを乗せての飛行どころか大気圏突破も可能な機体だが、禁止エリアをどうにかしない限り運用は不可能なようだ。
戦闘能力もウォルターガンダムを蹴り沈めるくらいに優秀。


【C-5/映画館隠し部屋/二日目/午前】

【怒涛のチミルフ@天元突破グレンラガン】
[状態]:疲労(中)、全身にダメージ(小)、頭部に軽い裂傷、左頬が腫れあがっている、敗北感の克服による強い使命感
[装備]:愛用の巨大ハンマー@天元突破グレンラガン(支給品扱い)、
    ビャコウ(右脚部小破、コクピットハッチ全損、稼動には支障なし@天元突破グレンラガン)
[道具]:デイパック、支給品一式、ファウードの回復液(500ml×1)@金色のガッシュベル!!
[思考]
基本:獣人以外を最終的には皆殺しにする上で、ニンゲンの持つ強さの本質を理解する。
0:ウルフウッドに同行、ニンゲンとは何か見極める。
1:ヴィラルと接触したい。
2:螺旋王の第一王女、ニアに対する強い興味。
3:強者との戦いの渇望(東方不敗、ギルガメッシュ(未確認)は特に優先したい)。
4:ただし、殺し合いに乗っている者は螺旋王の目的促進の為、決着は後回し。
5:ヴィラルが首を一つも用意できなければ、シャマルの首を差し出させるかもしれない。
6:夜なのに行動が出来ることについては余り考えていない(夜行性の獣人もいるため)。
7:ニンゲンに創られたニンゲン以上の存在として、ヴァッシュに強い興味。彼の知人に話を聞きたい。

[備考]
※ヴィラルには違う世界の存在について話していません。同じ世界のチミルフのフリをしています。
※シャマルがヴィラルを手玉に取っていないか疑っています。
※チミルフがヴィラルと同じように螺旋王から改造(人間に近い状態や、識字能力)を受けているのかはわかりません。
※ダイグレンを螺旋王の手によって改修されたダイガンザンだと思っています。
※螺旋王から、会場にある施設の幾つかについて知識を得ているようです。
※『怒涛』の二つ名とニンゲンを侮る慢心を捨て、NEWチミルフ気分です。
※自分なりの解釈で、ニンゲンの持つ螺旋の力への関心を抱きました。ニンゲンへの積極的交戦より接触、力の本質を見定めたがっています。(ただし手段は問わない)
※ビャコウ及び愛用のハンマーはウルフウッドの気絶中に回収しました。
※ビャコウは起動には問題ありませんが、コクピット内部が剥き出しになっています。
※東方不敗と一時休戦、次に出会った時は共闘することを決めました。
 実験の最後に全力で決闘することを誓いました。
※東方不敗の知る参加者についての情報を入手しました。


時系列順に読む


投下順に読む



257:happily ever after 東方不敗 271:天のさだめを誰が知るⅠ
267:No Man's Land -唄い続けられる- チミルフ 269:最愛ナル魔王サマ(前編)





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