アイが呼ぶほうへ side-A ◆2PGjCBHFlk



「こいつぁちっとばかし、やべぇことになったんじゃねぇか?」
『――はい、迂闊でした。まさかこれほど転移を簡単に行えるものだとまでは……』

 薄暗い空間に突如として投げ出されたカミナとクロスミラージュの二人は、
 互いに(片方はないが意識としては)深い息を吐いてから歯噛みする。

 螺旋界認識転移システムによって転移が行われ、カミナが運ばれたのはこの場所だった。
 最初は唐突に灯りが消えただけかと思ったカミナも、周囲から機械の作動音が消えたこと。
 加えて、先ほどまでと部屋の気温があまりに違うことから違和感に気づいた。
 そして自分より早く状況を察していたクロスミラージュの助言によって真相に辿り着いている。

 しかし現状を正しく認識できたところで、置かれた苦難が軽減されるわけもない。
 カミナ、ガッシュ、ニアとこれまで行動を共にしてきた大グレン団の面々。
 その固い団結も、全員が全員願うものやら思い人やらが違う所為でこの様だ。
 クロスミラージュはカミナの持ち物扱いだったのだろう、一緒に飛ぶことができた。
 だが、あの二人が揃って独りぼっちな状況に投げ出されたとすればあまりに心許ない。

「しかし、暗ぇとこだな」
『カミナ、私を照明代わりに使用してください。多少は光を放てますので、手元を見るぐらいの役には立てるかと』
「それで十分だ。なに、俺は実は穴倉育ちでな。地元じゃこんぐれぇ暗いのは当たり前なのよ」

 嘯くとカミナはクロスミラージュを取り出し、前に差し出して灯り代わりとする。
 と、踏み出そうとした正面はいきなり壁だ。助言がなければ一歩、二歩目で大激突だったろう。

「この感じからして、場所はそれなりに広いな。結構、地面の下にあるみてぇだが……」
『何故、そうわかるのですか?』
「穴倉育ちだって言ったろうが。声がどれぐらい響くかでどんだけでかい穴なのか。
 空気がどんだけ湿ってて冷たいかで、床下か地上かぐらいの判断はつくぜ」

 しばらくそのままカミナの独壇場が続く。
 時折口元に手を当てて声を出しては、前の壁との距離を測っているのだろう。
 歩き方にさえ整備されていない地面を進む慎重さが見え、
 なるほど本当にカミナが地下育ちなのだろうとクロスミラージュの納得を誘う。

「早く、見つけてやらねぇといけねぇよな」
『はい』
「時間的にあのクソ放送が入るのがもうすぐのはずだ。
 こんな凡ミスで全員ばらばらになって、その後すぐの放送で二人の名前が出てみやがれ……目も当てられねぇぜ」

 しばらくの間、彼が決して覗かせることのなかった弱音のようなものが僅かに滲み出た。
 それはクロスミラージュがカミナと遭遇したばかりの頃のことだ。
 ドモンによってその性根を拳で矯正されるまでの期間、その時の語り口にどこか似ている。

『私のミスです。どのような装置なのかはっきりとわかっていないにも関わらず、安易な起動を求めました』
「違ぇよ。大グレン団が固まってて、そんでリーダーの俺が動いたんだ。
 全部まとめてひっくるめた上で、その責任は全部俺のモンなんだよ」
『しかし……』
「しかしもカカシもギャラクシーもねぇ! リーダーってのぁそういうもんだ。
 そういう奴がリーダーやるから、後ろの奴はこいつについてかなきゃなんねぇ!
 そうやって気持ちを、生き方を預けられるんだろうが」

 そう言ってからまた黙々と、カミナの暗闇探索が始まる。
 ――今の彼はらしくもなく慎重だ。
 そしてそれは、今、ここで彼が何らかのアクシデントに見舞われることを恐れてのこと。
 もし身動きが取れなくなれば、ガッシュやニアを探しに行けなくなると理解しているからなのだろう。
 カミナという男はどこまでも、どこまでも不器用な男だった。

 普段は己の道を行く無頼のようなものを気取っている癖に、その実で彼の本質は守ることを自分に任じている。
 それがどのような人生経験によって培われたものなのか、守るものを失って一人になった時、彼は一度弱くなった。
 そして再び守るものを得て立ち上がった今だからこそ、守るために立ち止まらない。

 ――不撓不屈の精神が、彼の胸の内でメラメラと燃え上がっているのだ。

『カミナ――今、少し考えていたのですが』
「おぉ、なんだ」
『あの螺旋界認識転移システムという装置のことです』
「あんなくだらねぇクソ機械、二度と使ってたまるかよ」
『そういうわけにもいきません。あれはこのゲームを終わらせる鍵なのかもしれません』
「何ぃ……?」

 表情は驚き、しかし足は探索を緩めないカミナに対し、ゆっくりとクロスミラージュは語る。

『あの装置は願ったもの、願った人の場所へそのものを転移させるという装置です。
 その効果は……裏目に出ましたが私達が実証した通りのものです。
 あの力があればおそらく会場のどこへでも、理論上は移動できることになります』
「リロンって言われると俺の仲間のオカマしか出てこねぇんだが……続けてくれ」
『続けます。あの装置による会場の中の移動は試すことができました。
 ですが次に疑問となるのは別の部分――あの装置によって、外の世界へ移動することは可能なのか、です』
「外……っつーと」
『このゲームの外の世界。それぞれの生きてきた世界ということになります。
 ただ、これは想像にすぎませんがおそらくこの試みは成功しません。理由の一つとして会場のループがあります。
 会場の端と端を繋ぐ、空間操作の一種ですが、あれが外と内を完全に隔離しているものと考えられます。
 また、あの装置を設置した螺旋王が参加者の無条件脱出を許すとはとても考えられません。
 おそらくは参加者の脱出については相応の制限を用意しているものと考えられます』

 会場の端と端が繋がるループは、本来の外と内の空間を分断するための措置の副産物に過ぎない。
 あのバリアーによって螺旋王は己の居城とこの殺し合いの空間を隔絶している、クロスミラージュはそう考察している。
 そのバリアーの存在が残っている以上、状況は好転しないだろう。
 螺旋界認識転移システムはあくまで、会場内を便利に移動するだけの装置の域を超えることはない。

『ですがもし、このループを引き起こすバリアーが解除された後ならばどうでしょう?』
「外と中を塞ぐ壁がなくなんだから、丸見えになった敵の根城は……」
『螺旋界認識転移システムの移動範囲内なのではないかと』

 それがクロスミラージュが考察の末に導き出した一つの希望。
 希望的観測による部分があまりにも多い不確定な情報だが、頼りにする価値はある。

 クロスミラージュの再三の説明により理解力の高まっていたカミナは、今回は奇跡的に一度の説明で内容を理解したらしい。
 暗闇の中で大きく手を叩き、「そいつぁ凄ぇことじゃねぇか!」と喝采を上げる。

『そしてこの作戦において欠かせない存在がいます』
「……持ち上げて急に静かな声になんなよ。で?」
『我々が螺旋王の居城を白日の下に引き出せたとしても、その居城に確実に転移できる算段がありません。
 今回のように、一瞬の間に抱いた思いが別々であれば転移する先は違う場所になってしまう』
「途中が長ぇんだよ、おめぇは! それで、誰だ!」

 逸るカミナの言葉に一拍遅れて、クロスミラージュが答える。

『螺旋王の居城、その内部や螺旋王その人自身をよく知る人物――』
「――ニア、ってわけか」
『はい。彼女の協力なくして、この作戦はおそらく成功しません。
 彼女から螺旋王に関する全ての情報を語ってもらい、転移する全員がそれを刻み込む必要があります。
 また、螺旋王に反目することを目的としている対主催、このメンバーの意思の統合もまた必要でしょう』

 その役目の一端を担えるのは、この大グレン団のリーダーを除いて他にはいない。そうクロスミラージュは確信している。
 互いに一つの結論を共有したところで、「よっしゃ!」とカミナが唐突に叫び、自身の両の頬を平手で打って顔を振る。

『な、なんですか?』
「気合いだ、気合い! やんなきゃなんねぇことはめちゃくちゃある。
 そんな時に気合いがなけりゃ何もうまくいかねぇ。な、そうだろ?」
『そうかも、しれません』
「それからな、クロミラ。おめぇ、やっぱ大グレン団にゃ大事なメンバーだぜ」
『……は?』

 またもや唐突な発言に思考が止まる。
 カミナは照れ臭そうに鼻の頭を掻き、それから噛み砕くようにゆっくりと、

「俺は体には自信がある。生まれてこのかた病気の一つもしたことねぇし、怪我も痛みも何のそのだ。
 けどよ、正直なところ頭がいいぜ! と自信を持ったことはねぇ!」
『…………』
「しかもグレン団って奴ぁ、俺と同じで頭の悪い馬鹿野郎ばかり集まりやがる。いや、馬鹿野郎は嫌いじゃねぇんだぜ?
 むしろ大好きだけどよ、頭の悪い連中だけでうじゃうじゃとやってるとやっぱ困ったことになることも多かったわけよ。
 そぉこぉで、頭のいい奴の登場だ」

 カミナはすでに合図になってしまったように、この数時間の間に何度も何度もしたように、
 クロスミラージュに思いを伝えるようにその本体を軽く叩く。

「クロミラ、おめぇは体はねぇが頭はいい。俺は頭は悪いが体は丈夫だ。
 ならよ、俺とおめぇで弱点を塞ぎ合っちまえば、もう最強なんじゃねぇか?」

 言った後でカミナは顔を背け、青色の髪を掻き毟りながら、

「なんか妙なこと言っちまったなぁ。悪ぃ、やっぱ忘れてくれ」
『――いえ、記憶回路に保存されました。おそらく、半永久的に忘れません』
「……そうかよ。んじゃま、大事に大事に取っといてくんな」

 互いに穏やかな何かを交換し合い、どこかむず痒い空気が蔓延する。
 こんな雰囲気はご免だ、と勢いも新たにカミナは歩き出した。が、

「――痛ぇっ!」
『大丈夫ですか?』
「当然だ! 穴倉暮らしにゃ天井と頭突きなんざ朝飯前だ。って、天井じゃねぇが」

 そう言って手を伸ばすカミナの正面、そこにあるのはどうやら真っ直ぐに伸びた柱のようだ。
 注意不足が仇になり、目の前の障害を避けきれなかったらしい。
 その冷たい金属質の柱にぺたぺたと触れながら、

「お、よく見りゃこいつぁイカした情熱の赤色じゃねぇか。
 しかもこの太さ……この感じからしてこの掘っ立て小屋の大黒柱に違いねぇ!」
『大黒柱……ですか』
「おうよ! 大黒柱ってのはな、一家に一人のでけぇ親父!
 あとは家を支える一番どでかく太ぇ柱! それのことを意味すんのさ。ま、これは黒じゃなく赤いけどよ」

 上機嫌に赤い柱を殴り付け、しかしその後で辿ってきた道筋を振り返ると、

「しっかしよ……もうこの暗がりの中、多分ほとんど見ちまったぞ」
『確かにまずい状況です。まさか出口のない場所に閉じ込められたとは思いたくありませんが……』

 あるいは螺旋王の罠だったのだろうか。
 螺旋界認識転移システムといういかにもな罠で獲物を誘い、まんまと引っかかったものを鳥篭の中に閉じ込める。
 ――しかし、あの部屋に通じる扉は隠されていたし、開くのに複数名の螺旋力を必要とするような場所だ。
 そこまでの手の込んだ罠を作って、かからなければどうするのだろう。

「くそ、おちおち足止めも食ってらんねぇってのによ。いっそ、この柱をよじ登って天井をぶち破ってやろうか」
『崩落の可能性もあり危険です』
「へっ、ジーハ村の連中を思い出させること言うんじゃねぇよ。その時は俺はこう答えたぜ。
 ここで一生穴倉生活なんてくだらねぇ、地上にゃ天井はねぇんだぞってな」

 己を誇るように言い、それから止める暇もなくカミナは赤い柱をよじ登り始める。
 その動きはまるで小動物のように俊敏で、この手の行動に彼が慣れ親しんでいるのを感じさせた。

『するすると登れるものなのですね、流石はカミナです』
「……いや、違ぇ。おいおい、こりゃ俺はとんでもねぇ思い違いをしてたのかもしれねぇぞ」
『――?』

 疑問の声に応じることもなく、カミナはさらに手を伸ばす速度を速めながら上を目指す。
 そして十メートルほどの高さにまできただろうか。
 やや起伏の増えた場所にまで到達したカミナの動きが止まり、それから深い息を吐いた。

「本当に、ほんっっっのたまにだが! 俺は俺の馬鹿さ加減にうんざりすることがあるぜ」
『カミナ?』
「そもそも俺達はどうしてここに飛ばされてきたんだ?
 でかい落とし穴にはまったからか? 殴り飛ばされてお星様になっちまったからか?
 違ぇ、みょうちくりんな機械の力で、欲しいもんのところに吹っ飛ばされたからよ!
 ――なら、おめぇがここにいるのは当然の話ってわけだ」

「――なぁ、そうだろ、グレン!!」

 カミナがその名を高らかに叫んだ瞬間、その巨体の前面が光り輝く。
 それが取り付けられたサングラスの輝きであると、初見のクロスミラージュは遅れて認識。
 その常識違いの設計思想――巨大な顔に手足をつけた、ガンメンという名の機体の威容を!

 口を模している部分のシャッターが開き、到着した男を歓迎するように薄暗い空間が顔を覗かせる。
 まるで化け物の口に飛び込めといわれるような威圧感があったが、その口内に向かって躊躇うことなくカミナは突入した。

 身を回してシートに背中を預ければ、その感触は慣れたものなのにどこか懐かしい。

「たったの一日程度しか離れ離れになってねぇってのに、ずいぶんとおめぇにべた惚れだったみてぇだな、俺は」

 ――シモンでも、ヨーコでも、ヴィラルでも、ジジイですらない。
 ――俺があの瞬間に欲しかったのは、どうやらこの座り慣れた愛機の感触だったらしい。

「許せよ、てめぇら。代わりと言っちゃなんだが、今すぐにこいつで探しに出るからよ!」

 口上と共に両側に設置されたトリガーを握る。
 力と気合を込めて思い切り押し込めば、ただそれだけでグレンは主に答えた。
 コックピット内のモニターに搭乗者の生体データが認識される。
 螺旋王がこの地に呼び出すにあたって一度はリセットされたはず機体認証。
 しかしそれは、見慣れた男のマークを再びその無数のモニターに描き出した。

『カミナ、この機体の燃料などは?』
「気合いだ」
『……カミナ、この機体の操縦法などは?』
「気合いだ」
『――カミナ、この空間からの脱出方法は?』
「気ぃぃぃぃぃぃ合ぁぁぁぁぁぁいぃぃぃぃぃぃだーーーーーーーーっ!!!!」

 パイロットの気性を受け継いだようにグレンの四足が起動。
 立ち上がるのと同時に強大な両腕が振り上げられ、それが天井だったらしき岩盤を打ち砕く。
 崩落に瓦礫の粉塵が舞い落ちてくる中を、グレンの巨体がものともせずにその場で跳ねる。
 何度も何度も飛び上がりながら、その都度、砕かれる天井の位置が高くなっていく。
 そして――、

「見ろ。お久しぶりのおてんと様だぜ」
『望外の結果です。――お見事、というべきでしょうか』

 カミナの自慢げな、そしてクロスミラージュの賛辞が結果を示している。
 何度もの跳躍と万歳アタック(意味は違うが)によって打ち砕かれた結果、この封印していた空間の天井を完全に破壊。
 崩落によって地下全体が埋もれる結果も運よく避け、割れた天井に空いた丸い穴から青い空を見上げることができた。

『ですが、あそこまでは跳躍では無理なのでは?』
「ジャンプして淵掴んで、わたわたしながら上りゃぁいいだろ」
『そこまで人間的な稼動を実現しているのですか、このガンメンは』
「ああ、そうだ」

 当然のように首肯するカミナだが、その驚くべき性能を理解しきれていないのだろう。
 人間が乗り込んで操作する巨大ロボット。
 この鈍重そうな見た目を誇る機体が、おおよそ五指に至るまで人間の体の仕組みを模造し、
 その細部に至るまで同じよう動作するようにできている技術力の高さは目を見張る。
 何故、設計者はこれほどの技術を持ちながら、人型ではなくガンメン型にしたのかさっぱりわからないほどに。

(人型ではこの四肢を支えるには強度的に不足。
 ガンメンという丸く分厚い形態に手足をつけることで初めて可能となる機動――ということにしておきましょう)

 なんだかもう気合いで動くというならそれでいいんじゃないかと思い始めている。
 最近のクロスミラージュのカミナ感化率は危険度に達していた。
 このままでは遠からず、大グレン団はカミナコピーの集まりになってしまう。

「んじゃま、とりあえず飛び上がっとすっか……」
『待ってください、カミナ。静かに……放送が聞こえます』

 その重要性を悟り、カミナもまた勢いに乗っていた瞳の色を落とす。
 もしかしたらこの放送の内容如何では、このタイムラグが致命的になるかもしれないのだ。
 そう祈るような境地にあった二人の期待を、この放送は裏切ることはなかった。

 呼ばれた名前の中にガッシュもニアも含まれておらず、カミナは一安心だ。
 ただ、クロスミラージュには思うところがある。

(Mr.明智……あなたがここで消えてしまったのですか)

 思い浮かぶのは銀髪の聡明な男。
 この惨状で最初にクロスミラージュを手にした人物であり、警察官という立場と有能な頭脳から強く信頼してきた人物だ。
 直接戦闘力に自信がないと言っていた彼のこと。
 これまで期間、その明晰な頭脳と他者を理路整然と協力に導く弁術でもって、ずっと行動していたのだろう。
 彼が起こしてきた静かなる戦い――その芽は完全に潰えてしまったのだろうか。

 ――否、だろう。

 クロスミラージュの知る明智という男は抜け目のない男だ。
 彼はその正義を曇らせることなく仲間を集い、対主催としてのグループを構築していったはずだ。
 あるいは自分などに先駆けて、とっくに脱出の糸口を掴み取っている可能性もある。
 ならば彼の意思を継ぐ仲間達に、自分達の持つ情報を与えるために合流しなくては。

「――行くぜ、クロミラ。よくよく考えりゃ、まだここがどこの地面の下だったのかもわからねぇんだからよ」
『はい、カミナ。必ず、やり遂げましょう』
「――おうよ」

 深く聞き入ってはこないが、クロスミラージュの返答に何かを感じ取ったのだろう。
 静かな肯定であったからこそ、カミナという男の誠意がそこには隠されていた。

 何度かの腕振りの後で、グレンが高々と跳躍する。
 本当に人体と同じ動きで跳躍する機体は頭の先を地表に出し、その両手を穴の淵に引っ掛けることに成功した。

「あとは気合い、気合いだぁぁぁぁぁ!」

 哮りながらトリガーを押し引きするカミナ。
 ロボットの操縦としてはそれでは問題なのではとクロスミラージュは感じるが、ガンメンに関しては彼に一日の長がある。
 唸るカミナに呼応するようにグレンが上体を持ち上げ、コックピットから上までを地表に出すと後は勢いのままに転がり出た。
 大地の上に前回りして脱出したグレンは、その日の光を全身に浴びながら大の字だ。

「よっしゃ、脱出完了――さて、ここは」
『すぐ近くに見える施設……あれは学校でしょうか。
 だとすればここはおそらく校庭になります。学校の校庭の地下に、このグレンは封印されていたようですね』
「けっ、面倒な真似してくれやがるぜ、螺旋王。ラガンはショウボウショ。
 そんでもってグレンはガッコーかよ。何の意味があるってんだ」

 地図を参照すれば、現在位置は転移システムのあった図書館から二つ隣なだけのエリアだ。
 それを僥倖に思う一方で、ニアとガッシュの二人の移動先が遠ければ意味がないと考え直す。

「とにかくグレンがありゃぁ、走るスピードが百倍違うぜ。ニアとガッシュを探して、この辺りを走り回ってみるか?」
『効率的ではありません。できるだけ……そう、騒ぎになっている場所を探しましょう。
 そこには人がいる可能性があり、人がいるということは二人が転移する際に思い浮かべた人物がいる可能性が高いということですから』
「ほーほー、なるほどな。了解……って、なんじゃこりゃああああっ!?」

 操縦桿を握り、方針を決定した矢先の叫び。
 ちらと振り向いた眼前にあったのは、見上げるほどに巨大な黒い球体だった。
 単なる前衛的な芸術品であると言い切れないのは、その球体の放つ異様なまでの暴力的な意思。
 ――そして何より、地図の位置を反芻すればわかるのだが。

『カミナ……あの巨大な球体が、先の凄まじい魔力量の正体かもしれません』
「ずばっと会場を切り裂いてったやつか?」
『はい――どうしましょうか』

 漆黒の球体はその身を大地に置き、今は静謐の中に佇んでいる。
 だが再びそれが起動した時、もたらされる破壊はどれほどのものになるのか。
 また紅の螺旋が発射された時、蹂躙されるエリアにニアが、ガッシュが、明智がバトンを繋いだ者達がいないとも限らない。

「あれがさっきの凄ぇもんだってんなら、奪っちまうってのも一つの手だよな」
『はい。幸い、今は活動を休止しています。
 グレンのある状況なら、攻めるにせよ守るにせよ、一瞬で敗北に追い込まれることはないと思われます』
「けど、ニアとガッシュを先に探しに行きてぇって気持ちもあるわけだ」
『はい。――どちらにするかは、カミナにお任せします』

「ちっ、リーダーってのは辛いぜ」

 舌打ち、それからグレンの中から空を仰いで、カミナは述懐する。

 ――せっかくグレンを取り戻したってのに、やることなすこと増えていきやがる。
 ――あぁ、負けられねぇぜ、クソッタレ!


【B-6/学校校庭/二日目/朝】
【カミナ@天元突破グレンラガン】
[状態]:精神力消耗(小)、疲労(大)、全身に青痣、左右1本ずつ肋骨骨折、左肩に大きな裂傷と刺突痕(簡単な処置済み)、
    頭にタンコブ、強い決意、螺旋力増大中
[装備]:グレン@天元突破グレンラガン、クロスミラージュ@魔法少女リリカルなのはStrikerS(カートリッジ0/4)
    折れたなんでも切れる剣@サイボーグクロちゃん、
    バリアジャケット
    【カミナ式ファッション"グラサン・ジャックモデル"】   
    アイザックのカウボーイ風ハット@BACCANO! -バッカーノ!-、アンディの衣装(靴、中着、上下白のカウボーイ)@カウボーイビバップ
[道具]:支給品一式(食料なし)、ルールブレイカー@Fate/stay night
[思考]基本:殺し合いには意地でも乗らない。絶対に螺旋王を倒してみせる。
0:ニアとガッシュを探しに行くか、目の前の黒い太陽を奪っちまうか。
1:ニアとガッシュは大グレン団の兄弟だ。俺が必ず守ってみせらぁ!
2:チミルフだと? 丁度いい、螺旋王倒す前にけりつけたら!
3:ショウボウショの北にラガンがあるんだな……? シャクだが、行かねぇワケにはな……。
4:もう一回白目野郎(ヒィッツカラルド)と出会ったら今度こそぶっ倒す!
5:ドモンはどこに居やがるんだよ。
[備考]
※文字が読めないため、名簿や地図の確認は不可能だと思われます。
※ゴーカートの動かし方をだいたい覚えました。
※ゲイボルクの効果にまるで気づいていません。
※シモンの死に対しては半信半疑の状態ですが、覚悟はできました。
※ヨーコの死に対しては、死亡の可能性をうっすら信じています。
※拡声器の声の主(八神はやて)、および機動六課メンバーに関しては
 警戒しつつも自分の目で見てみるまで最終結論は出さない、というスタンスになりました。
※第二放送についてはヨーコの名が呼ばれたことしか記憶していません。
※溺れた際、一度心肺機能が完全に停止しています。首輪になんらかの変化が起こった可能性があります。
 禁止エリアに反応していませんが、本人は気付いていません。
※会場のループを認識しました。
※ドモン、クロスミラージュ、ガッシュの現時点までの経緯を把握しました。
 しかしドモンが積極的にファイトを挑むつもりだということは聞かされていません。
※クロスミラージュからティアナについて多数の情報を得ました。
※ガッシュの本を読むことが出来ました。
 しかし、ルールブレイカーの効果で契約が破棄されています。再契約できるかは不明です。
※ニアと詳細な情報交換をしました。夢のおかげか、何故だか全面的に信用しています。
※螺旋王に挑む決意が湧き上がっています。
※ロニー・スキアートとの会話は殆ど覚えていません。
※カミナのバリアジャケットは、グレンラガンにそっくりな鎧です。
※東方不敗の螺旋力に関する仮説を聴きましたが、理解できていません。
※グレンを入手しました。エネルギーなどが螺旋力なのはアニメ通り。機体の損傷はラガンとの合体以外では自己修復はしません。

【クロスミラージュの思考】
1:カミナの方針に従い、助言を行う。
2:明智が死亡するまでに集ったはずの仲間達と合流したい。
3:東方不敗を最優先で警戒する。

[備考]
※ルールブレイカーの効果に気付きました。
※『螺旋王は多元宇宙に干渉する力を持っている可能性がある』と考察しました。
※各放送内容を記録しています。
※シモンについて多数の情報を得ました。
※カミナの首輪が禁止エリアに反応していないことを記録しています。
※東方不敗から螺旋力に関する考察を聞きました。
※螺旋力が『生命に進化を促し、また、生命が進化を求める意思によって発生する力』であると考察しました。
※螺旋界認識転移システムの機能と、その有用性を考察しました。
 ○螺旋界認識転移システムは、螺旋力覚醒者のみを対象とし、その対象者が強く願うものや人の場所に移動させる装置です。ただし会場の外や、禁止エリアには転移できません。
 ○会場を囲っているバリアが失われた場合、転移システムによって螺旋王の下へ向かえるかもしれません。
※転移システムを利用した作戦のために、ニアの存在が必要不可欠と認識しています。


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

「ウヌゥ……見当たらぬ。カミナもニアもクロスミラージュも、三人ともどこへ行ってしまったのだ」

 一人きりになったと気づいてからの時間、ガッシュは仲間の三人の姿を求めて方々を走り回っていた。
 何故か部屋の中にいたはずなのに、いつの間にやら山の中に立っていたのだ。
 螺旋界認識転移システムというものの効果はわかっている。
 求めたものの場所に飛ぶことができる――そういう便利なものであると。しかし、

「私は山登りがしたいとは思っていなかったはず……。
 いや、山登りが嫌いなわけではないのだが、少なくともあまり今はしたいと思っていなかったのだ」

 飛ばされる理由はわかっても、ここに飛ばされてきた理由に見当がつかない。
 とりあえずカミナ達も同じ場所に飛ばされていないものかと周囲を駆け回ったのだが、収穫はまるで見つからなかった。
 あったのは大地が罅割れ、崩落した大きな建物の跡地などのみ。
 さしたる収穫も得られず、消沈しながら僅かな望みをかけて最初の場所に戻れば、

「ヌ、放送……もうそんな時間なのか……」

 会場全域に届く声で、厳かに螺旋王が前口上を始める。
 その余裕の態度に義憤を感じながら、ガッシュはそこで初めて恐い想像に至った。

「ひょっとしたら、カミナやニアの名前が呼ばれることもある……?」

 それはあまりにも恐ろしすぎる想像だった。
 二人と逸れたのはついさっきのことだ。
 それまではずっとクロスミラージュを交えた四人で頑張ろうと、自分達は大グレン団だと認め合ってやってきていた。

 船で一人生き残ったことがあってから、それはガッシュの心の底にずっと根付いていたかすかな不安の種だった。
 もしもまた一人になってしまうようなことがあれば、どうしようという。

 フォルゴレの死も、ヴィクトリームの死も悲しかった。
 悲しかったけれど、カミナ達が一緒にいてくれたから、乗り越えることができた。
 もしもそのカミナ達の名前が呼ばれてしまえば――自分はどうしてしまうだろう。

 不安がるガッシュを余所に、螺旋王は淡々と死者の名前を連ねていく。
 そして、その人数が七名――ガッシュの知らぬところで大グレン団の二人や清麿が命を落としたという不安は排除された。

「そうだ、当然なのだ。何を恐がる必要がある。
 私も、カミナも、ニアも、クロスミラージュも、清麿も、全員で死なないで再び会う。それは決まっているのだ!」

 自らを奮い立たせるように声を上げ、ガッシュは怖気づいた心を鼓舞する。
 不安は一掃されている。一人になってしまったことも、足を止める理由にはならない。

「ならば、私のやることは決まっているではないか」

 仲間との合流――逸れたのならば、また再会するために歩き出せばいい。

「さしあたって目指すのは……アレにするのだ」

 ガッシュの指示語の示す先、そこにあるのは山の上にあってなお見上げるほどに巨大な黒い球体。
 まるで、真っ黒い太陽のようなものだ。

「カミナとニアなら、きっと目立つあそこに向かうであろう。うむ、間違いないのだ!」

 流石に付き合いももう短くない。
 的を射ている結論を出すと、ガッシュは勢いよく短い足で走り出した。

 目指す先、走り抜けた先に、捜し求めている仲間がいると信じて――ただ、

「清麿の臭いがしたような気がするけど、見つからなかったのだ」


 ――転移した場所の背後にある、民家の存在には。
 ――脳裏に咄嗟に思い浮かんでいたはずの、相棒の存在に気づかずに。


【C-6/民家前/二日目/朝】
【ガッシュ・ベル@金色のガッシュベル!!】
[状態]:おでこに少々擦り傷、全身ぼろぼろ、全身打撲(中)、肉体疲労(大)、精神疲労(小)、頭にタンコブ、強い決意 深い後悔、螺旋力増加中
[装備]:バルカン300@金色のガッシュベル!! キャンチョメの魔本@金色のガッシュベル!!
    リボルバー・ナックル(右手)@魔法少女リリカルなのはStrikerS(カートリッジ4/6、予備カートリッジ数12発)
    【カミナ式ファッション"グラサン・ジャックモデル"】
    アンディの衣装(手袋)@カウボーイビバップ、アイザックのカウボーイ風の服@BACCANO! -バッカーノ!-、マオのバイザー@コードギアス 反逆のルルーシュ
[持ち物]:支給品一式×9
[全国駅弁食べ歩きセット][お茶][サンドイッチセット])をカミナと2人で半分消費。
【武器】
巨大ハサミを分解した片方の刃@王ドロボウJING、ジンの仕込みナイフ@王ドロボウJING、
東風のステッキ(残弾率40%)@カウボーイビバップ、ライダーダガー@Fate/stay night、
鉄扇子@ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日-、スペツナズナイフ×2
【特殊な道具】
テッカマンブレードのクリスタル@宇宙の騎士テッカマンブレード、ドミノのバック×2(量は半分)@カウボーイビバップ
アンチ・シズマ管@ジャイアントロボ THE ANIMATION、砕けた賢者の石×4@鋼の錬金術師、アイザックの首輪
ロージェノムのコアドリル×5@天元突破グレンラガン
【通常の道具】
剣持のライター、豪華客船に関する資料、安全メット、スコップ、注射器と各種薬剤、拡声器、CDラジカセ(『チチをもげ』のCD入り)
【その他】
アイザックのパンツ、アイザックの掘り当てたガラクタ(未識別)×1~6、血塗れの制服(可符香)
ブリ@金色のガッシュベル!!(鮮度:螺旋力覚醒) 、ランダム不明支給品x1(ガッシュ確認済み)
[思考]
基本:やさしい王様を目指す者として、螺旋王を王座から引きずり落とす。 絶対に螺旋王を倒してみせる。
1:黒い太陽を目指し、目立ちたがりのカミナ達と合流する。
2:清麿の臭いがしような気がするけど、見つからない。
3:ドモンを探しつつデパート跡を調べに行く。
4:なんとしてでも高嶺清麿と再会する。
5:ジンとドモンを捜す。銀髪の男(ビシャス)は警戒。
6:東方不敗を警戒。

[備考]
※剣持、アレンビー、キール、ミリア、カミナと情報交換済み
※ガッシュのバリアジャケットは漫画版最終話「ガッシュからの手紙」で登場した王位継承時の衣装です。
 いわゆる王様っぽい衣装です。
※螺旋王に挑む決意が湧き上がっています。
※ロニー・スキアートとの会話は殆ど覚えていません。
※第四回放送はブリを追いかけていたので聞き逃しました。
※東方不敗の螺旋力に関する仮説を聴きましたが、理解できていません。
※東方不敗からラガンの所在について聞きました。
※螺旋力覚醒
※螺旋界認識転移システムの存在を知りました。
※大グレン団の所持していた複数のアイテムは、ガッシュの手元にあります。

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262:アイが呼ぶほうへ(後編) カミナ 270:WILL
262:アイが呼ぶほうへ(後編) ガッシュ・ベル 272:フォーグラー決死圏、心打つ者





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