王たちの狂宴(前編) ◆DNdG5hiFT6



モノレールのD4駅から少し歩いたところにその建物はあった。
高さは2階建て程度。内部には各種螺旋に関する多彩な資料が詰め込まれている。
そして高所――丁度モノレールの駅から見下ろせば“渦巻き”としか形容しようの無い珍妙な建物。
そう、この舞台の中でも一際異彩を放つ建物、螺旋博物館の2階には“開かずの扉”がある。

さて、開かずの扉の先にあるのは何か? 
それに関しては遥か昔から現代のコンピュータ・ゲームに至るまで変わらぬ鉄則がある。
奴隷アリババが岩戸の先に見つけたもの……すなわちお宝である。
だがだれも肝心要の『開けゴマ』という呪文の存在を知らなかった。
最初に訪れた明智健悟も、2番目に訪れたジェット・ブラックとチェスワフ・メイエルもだ。
そして閉じられていた扉は、今まさに『呪文』を手にした者たちによって開かれようとしている。
この場に集った3人の王の手によって。

「さてさて……それじゃお宝と御対面と行きますか? ギルガメッシュ?」

そう言ったのは輝くものなら星さえ盗むドロボウの王、王ドロボウ・ジン。

「分かっている。我が財を一時的にとはいえ渡すのだぞ? 丁重に扱うがいい雑種」

ディパックから捻子くれた剣を取り出したのは人類最古の英雄。
かつてこの世全ての富を手に入れた黄金王ギルガメッシュ。

「……フン」

それを不機嫌な顔で受け取るのは未来世紀と呼ばれる世界で人類を救った英雄。
第13代目キング・オブ・ハートにしてコロニー格闘技の王者、ドモン・カッシュ。
三者三様の視線が集中する中、ドモンはゆっくりと鍵穴に螺旋剣を刺していく。

『――螺旋力を確認しました』

電子音声と共に重い音を立てて、ついに開かずの扉が開き始めた。
奥から漏れ出してくるどこか冷えた空気に、知らず息を呑むドモン。
ジンも、ギルガメッシュも一見いつもと変わらぬ様子で扉の向こうにあるであろうお宝へと意識を向ける。
そして扉の音が止み、ついに扉の向こう側が彼らの前に姿を現す。

――開かれたそこは2階の最奥であるにもかかわらず、何故か広大な空間が広がっていた。
そして部屋の中に足を踏み入れた彼らを待ち受けていたのは、耳が痛くなるほどの沈黙と部屋の中央部に鎮座するのは巨大な像。
かつて人間は神々を称えるために巨大な像を作ったという。
まるでその一種であるかのように、ある種の荘厳さをもって、機械仕掛けの神像はそこに鎮座していた。

“それ”を見た3人は三者三様の反応を示す。
ジンは口笛を吹く。あまりにも予想外なお宝である“それ”を見て。
ギルガメッシュは愉悦に笑みを浮かせる。自分の財に加わる資格のある“それ”を見て。
ドモンは驚愕に目を見開いている。あまりにも見覚えのある“それ”を見て。
そう、その神像の名は『ガンダム』。多くの多元世界で“戦うための力”とされた白き魔神の名前。
そしてここに存在する“ガンダム”とドモンは只ならぬ因縁があるのだ。

「ドモン、この神様とお知り合い?」
「ああ……だがコイツは神様なんかじゃない……悪魔だ!」

博物館に鎮座していたのは彼の運命を、いやあまりにも多くの人の運命を狂わせた“悪魔”のガンダム。
ドモン達のいた次元世界で大災害を巻き起こしたデビルガンダム――その姿をしていたのだから。

「何故ここにあるかは知らないが……破壊させてもらうぞ、デビルガンダム!!!」


       *       *        *


「……」
「ドモン、心配しなくてもこの眠り姫は中々強力な魔法がかかってるみたいだよ。
 少し手に触れたぐらいじゃ瞼一つ動かさないみたいだ」

それから数分後、そこにはガンダムを調べるジンの姿があった。
折角見つけたお宝を問答無用で破壊しようとするドモンを必死で説得した。
とにかく頭に血が上ったドモンの話を聞き、落ち着かせることに終始した。

その時、ドモンの口から語られたのは未来世紀のある御伽噺だった。
ドモンは語る。一年間に渡るデビルガンダムとの戦いの歴史を。
ある男の野望に利用され幼馴染と共に地球の覇権をめぐる闘いに巻き込まれたこと。
闘いを通じて築いた各国のガンダムファイター達との友情。
悲しい決意に翻弄された師との対決。そして掛け替えの無い友たち、そして愛する女と共に悪魔を倒した最後。

だがその話を聞いたジンはじっくりと、ゆっくりと、懇切丁寧に説得を開始した。
ドモン説得の決定打となったのはやはり現在のガンダムの様子であった。
沈黙を続けるその姿は自己増殖による変異を繰り返すあの悪魔とは似ても似つかない。
それに何よりドモンの右手が、シャッフルの紋章が何の反応も示さないのだ。

そして未だ今一納得できないドモンと完全に我関せずを決め込んでいたギルガメッシュを床上に残し、
軽業師もかくやという動きでコックピットに乗り込んだジンが見つけたのは一冊のマニュアルだった。
マニュアルに書かれていたのは“モビルトレースシステム”による操縦方法と“ガンダム”に課せられた制限について、だった。

まず、制限であるが、通常状態では2時間程度しか活動できないほどのエネルギーしか持ち合わせていないらしい。
自己再生によって永久装置とでも言うべき動力を有しているはずだが、一体どのような仕組みかエネルギーに制限を設けたらしい。
だが……

「最初に入っているエネルギーがそれだけであった……唯それだけの話だろう?
 膨大な螺旋力か……それとも別のエネルギー源を手に入れれば良い。
 ただ、それだけのことよ」

と、ギルガメッシュの言う通り、何処かからエネルギーを調達してくれれば再起動できるらしい。
その横でマニュアルをじっと眺めていたジンが顔を上げる。

「ねぇドモン。さっき言ってた名前とコレに書かれてる名前が違うんだけど」

デビルガンダム……マニュアルに書かれた名前は“アルティメットガンダム”。
それは暴走する前の、正しい悪魔の名前だった。
そして事実、マニュアルにも全身の構成組織がDG細胞ではなく、アルティメット細胞と表記されている。
つまりここにあるガンダムは本来あるべき……いわば完成品としてのデビルガンダムだというのだ。

「馬鹿な……父さんでも完成できなかった代物だぞ!」
「馬鹿は貴様だ雑種。今更何を騒ぐことがある。
 この我を浚う時点で貴様の父などよりよっぽどましな力を持っていることは明白だろう」
「なんだと……!」
「まぁまぁ落ち着きなよドモン。
 コレはドモンの父ちゃんが“完成させた世界”から持ってきたものかもしれないだろ?
 それにしても……コレだけを見ていると恐ろしい神様だとは思えないね」

見上げるその先には一切の感情を見せないデュアルアイ。
だがジンとてドモンの話を聞いた後ではその無機質な視線の先に空恐ろしいものを感じざるを得ない。
だがもう一人、話を聞いていたはずのギルガメッシュは不遜な表情を浮かべたまま、ガンダムを見据えている。
その表情には恐れも何もなく、ドモンには危険性を理解しているように思えない。

「おい、さっきから聞いているのか貴様!」
「わざわざ耳障りな声で確認するな雑種よ。つまりはこういうことであろう? 
 暴走した場合贄を差し出せば意のままに操れる、それが女ならばなお良い、と」

だがギルガメッシュとドモンの認識には大きなズレが存在した。
絶句するドモンを前にギルガメッシュの口は止まらない。

「しかし、増えすぎた人類の粛清か……ふむ、実に我好みの道具よ。
 螺旋王を断罪した後、我が財に加えるとしよう」

無神経な言葉は唯でさえ苛立っていたドモンの神経を容赦なく逆なでする。
悪魔を人類を間引くだけの道具としてしか見ないその言葉は
地球環境再生の願いを込めた父の、兄の、そして師の思いを辱めるものに他ならない。

「貴様……人の命を何だと思っている!」
「我のものをどう使おうが我の勝手だろう?
 雑種風情の指図を何故我が受けねばならんのだ?」

心底不思議そうな表情で尋ねるギルガメッシュの様子を見てジンは思う。

――あ、これはヤバいかもね。

そしてジンの危惧は現実のものとなりつつあった。
若き武闘家は誰が見ても分かるほどの怒気を滾らせ、ギルガメッシュを睨みつけている。

「あのさ……ドモン、一応聞いておくけどさ……穏便に済ませる気はあるかい?」
「断る。キング・オブ・ハートとして……いや、この男には人として灸を据えてやらねば気がすまん!」
「……ギルガメッシュ?」
「所詮は札遊びの王と見逃してきたが度重なる非礼……躾が必要なようだな」

ジンを押しのけて、2人は真正面から睨み合う。
ギルガメッシュは鍵穴に突き刺さりっぱなしだった螺旋の剣を引き抜き、ドモンに突きつける。

「剣を取るがいい雑種。雑種ごときにエアは使う価値も無い。戯れ代りに付き合ってやろう」
「いいだろう……ジン、さっき拾った剣をよこせ。剣においても我が流派が無敵なことを叩き込んでやる」
「……オーケイ。ただしお互い怪我しないようにね……無駄かもしれないけど」

2人の間には漂う濃密な殺気を見てジンは大きくため息をつく。
ジンはディパックから勝利すべき黄金の剣を取り出すと投げてよこすが、その剣を見たギルガメッシュの表情が変わる。
怒り、苛立ちといった表情に。

「その剣……雑種程度が触れていい剣ではないぞ。我が后となるべき女のものだ」
「この剣からは気高さが見て取れる。この剣の使い手が貴様を愛するとは思えんな」
「愛? ハッ、その必要など無い。女にとって我が奪い、犯し、我が寵愛を受ける――それ以上の幸せがあるとでも?」
「……やはり貴様と俺は相容れんな。俺のこの手でその腐った性根を叩き直してやる!」

闘気で世界が塗り変わる。
ドモンは怒りを灯した瞳で、ギルガメッシュは絶対的支配者の瞳で睨みあう。

「その傲慢さ、暴虐ぶり、他人を省みない身勝手さ……全てが俺の癇に障る」
「王に対する礼節の無さ、無恥さ、自身の身の丈を弁えぬ愚かさ……全てが許し難い」

互いに一歩踏み出し、

「それに――」
「何よりも――」

互いの剣が振りかざされ、

「「――貴様の声が、気に食わん!」」

そして2つの刃がぶつかり合う。
重なり合う声と刃同士がぶつかり合う音をゴングに、王の戦闘は開始された。


「はああああああっ!」

気合と共に先制するのはドモン。
ガンダムファイターの身体能力はサーヴァントと比べても決して劣るものではない。
ビルからビルへと飛び回る脚力が地面をしっかりと踏みしめ、爆発的な加速を生み出す。
更に弛まぬ修練がその加速を無駄なく攻撃力に変換し、剣が振るわれる。
対するギルガメッシュは螺旋の剣でそれを受け止める。
だが押される。サーヴァントに匹敵する身体能力と鍛えられた技能は英雄王の才を上回った。

「う……おおおおおおおおおおおっ!!」

気合一閃。
振りぬかれた黄金の剣はギルガメッシュの頬を浅くだが切り裂いた。
雑種の剣に傷つけられた、その事実がギルガメッシュの怒りを一気にリミットまで引き上げる。

「この……雑種風情がっ!」

ギルガメッシュは財によってその実力を発揮するサーヴァントだ。
だがそれは決して財の力だけに頼った雑魚ということを意味しない。
第5次聖杯戦争においては自ら剣を取り、最高位の剣の英霊の猛攻をしのいだことすらあるのだ。
螺旋剣をひねり、黄金の剣を溝に流すようにして突きをドモンへと突き出す。
その一手は攻防一体の妙技。狙われた側が脳髄を撒き散らすのは必定の未来。

だがドモンは雷光のごとき突きを蹴り飛ばし、その必定を書き換える。
常人ならば無理な体勢――だが流派東方不敗にとってその程度の道理は軽く反転する。
ここで激昂し、踏み込めば更なる猛攻がギルガメッシュを襲っただろう。

だがギルガメッシュは愚直な突撃を回避、一旦距離をとる。
彼の本来のクラスはアーチャー。
宝具による絨毯爆撃を得意とするとはいえ、距離をとってのアウトレンジバトルがその本質だ。
そして今のギルガメッシュは慢心しているとはいえ油断は無い。

油断なく互いの出方を伺う英雄王と武闘家。
対峙する2人は共に優れた眼力を持っているが故に、たった一合で互いの実力を見極めた。

「ほう……雑種にしてはやるではないか」
「当然だ。流派東方不敗は王者の風――貴様如きに負けるものか」
「フン、我を差し置いて二度も王を名乗るとは恥を知るがいい雑種。
 しかし東方不敗か……あの老人の同類ならば尚更生かしておくわけにはいかんな!」
「!? 師匠を知っているのか!?」
「フン、雑種同士で殺し合いをしておったわ。その後も姑息に潰し合わせるのを狙っていた小物よ」
「!! ……師匠……!!」

知ってはいた。分かってもいた。
だが何度告げられようと、敬愛する師匠が殺し合いを促していると言う事実にドモンの心は軋みを上げる。
しかし蛇の瞳がその隙を見逃すはずは無い。

「ほう雑種、我を目の前に遊ぶ余裕があるのか?」
「――!」

再び放たれる刺突。だがそれは一度で終わらない。
ギルガメッシュの右手から時雨のように放たれる乱れ突き。
攻め手に転じたギルガメッシュは水を得た魚のように攻撃を加える。
それも道理。ギルガメッシュは神話の時代、
キシュを初めとした幾多の都市国家を征服した征服王としての側面を持ち合わせるのだから。

「しかし奇妙な話よな、王者を名乗りながら成す事があのような事とは」

そう言いながら叩き込むのは首を狙う突きの一撃――横に軸をずらし回避。

「うるさいっ! 貴様に師匠の何がわかる!」

返す刃で放たれた斬撃は胴を狙う――スウェーバックで回避。

「いや、分かるとも。あの男、初めて会った時は贋作者や駄犬を甚振っておったな。
 弱者を力の限り陵辱する……なるほど、王を名乗る流派とはそういう意味であったのか?」

更に踏み込んで行われる短いスパンでの連続突き――ギリギリのところで剣で受け流し回避。

「貴様ぁあああああっ!」

脳天から振り下ろされる剣の一撃――余裕を持って回避。

「しかしこの程度で揺れるとは!」

額・喉・心臓を狙った三連続打突――軸をずらしカウンターに移――

「だから貴様は――」

だが三連撃の最後の一撃は英霊の腕力によって強引に止められる。
単純、だがサーヴァントのスペックを持って行われたそれは、ドモンに決定的な隙を作り出す。

「雑種だというのだ!」

そして唸りを上げて本命たる左のストレートが振るわれる。
その一撃は武術と呼ばれるほど洗練されてもいない。
だが英霊の膂力で放たれたそれはヘビー級ボクサーのそれに匹敵する。
まるでドモンの盟友、チボデー・クロケットのように鮮烈な一撃を受け、コロニーの格闘王は無残に壁に叩きつけられた。

「王とは即ちすべてにおいて完全なるもの――つまりは我はすべてにおいて頂点に立つ男だ。
 それは無手においても決して変わらぬ事実であると知るがいい」

その姿、威風堂々。珍妙な格好さえ除けばまさに人類最古の英雄という名に相応しい。
だがここで最古の英霊に対するは、未来世紀と呼ばれるいつかの未来で世界を救った人類最新の英雄であった。

「――礼を言うぞ。貴様の一撃で頭が冷えた」

ドモンは両の足でしっかりと立ち上がると不敵な笑みを浮かべる。

「師匠がそういう行動に出ていることは分かりきっていたことだ。
 もう迷うことは無い。ああ、例え違う世界の師匠だろうと、もう一度拳をあわせ、その目を覚まさせる!
 一度出来たことだ……二度できぬ道理など、どこにもないッ!」

その両目には――燦然と輝く螺旋の光。
ギルガメッシュはその光を苦々しい表情で睨みつける。

「我が一撃を受けて立ち上がるか。それもまた螺旋の力の恩恵か?」
「違うな……貴様の軽い拳など、いくら受けたところで俺を倒すことなど出来ん。
 ただ、それだけのことだ!」
「……何だと?」

それは以前、衝撃のアルベルトにも言われた言葉。

「貴様は何も背負っていない……そんな軽い拳など俺には効かんと言ったのだ!
 そう、共に生き続ける人々を見下しての理想郷など愚の骨頂!
 自分を中心に世界が回っていると考えるような、未熟な自分を見せられているようで腹が立つ!」

幾多の友と悪魔の名を冠するガンダムに立ち向かった彼にしてみれば、孤高の王道を行くギルガメッシュの言葉など井の中の蛙の戯言同然。
だがそんなドモンの怒号を軽く受け流し、ギルガメッシュは大げさに肩をすくめる。

「やれやれ……衝撃といい貴様といい、雑種どもの目はとんだ節穴よな」
「何だと? ならば貴様が何を背負っているというのだ!」
「当然のこと――この世のすべてに他ならん」

リンゴが上から下の落ちるより当然のこと、という風に話すギルガメッシュ。
呆気に取られるドモンを無視して、言葉を続ける。

「アレンビーという女のことにしても同様よ。あれは中々見所のある奴だった」
「!? アレンビーを知っているのか」
「道中、我に幾つかのものを献上していった。
 その後、船に向かうと言っていたが……“高遠”とやらの名が呼ばれたと言うことはそこで何者かに襲われたのだろう」
「……!」

ドモンの脳裏に甦るのは未だ黒煙を上げる豪華客船の姿。
あの場所でアレンビーは命を落としたのか……!

「さて、雑種の相手をするのも飽きたな。次の一撃で屠ってやることとしよう。
 我が手にかかる事を無上の喜びとするがいい」

あくまでも傲慢に振舞うギルガメッシュ。
だがドモンの内部で怒りが高まるほどにドモンの心は静かに落ち着いていく。

息を吸い、吐く。たったそれだけで心は平静を取り戻し、研ぎ澄まされていく。
極意、明鏡止水の心。
心を研ぎ澄まし、無我の境地へと辿り着く。
だが、誰もいないはずのその湖面に誰かが居る。それは見たこともない鎧姿の少女。
その姿は気高く、知らず知らずのうちに同調していた。

――剣は力を持っている。

そして今の自分ならばその力の解き放ち方がわかる。
ドモンは当然のことのようにそれを受け入れた。
湖面の底に渦巻くは静かな螺旋の姿。
知らず知らずのうちに剣を握る手に力が籠もる。
そして剣に宿るは黄金の輝き。その光にギルガメッシュは表情を驚きに変える。

湖面に波紋が広がるように、剣の声が自らの中に響き渡る。
剣が囁くのは唯一つ、我が名を呼べというその一言。
ドモンはその囁きに導かれるままに、唇を動かし、剣を振りかぶる

「勝利すべき(カリ)――」

彼の口から解き放たれるは剣の真名。
ドモンは導かれるままに大きく剣を振りかぶる。
だがその瞬間、赤の弾丸が横からドモンを襲う。
今の今まで事態を傍観していたジンがゲイボルグを投擲したのだ。
とっさになぎ払い事なきを得るが、一歩間違えば……

「ジン、何をする!」

だが目を向けた先のジンはいつも通り飄々とした笑みを浮かべたまま。

「いやいや、ちょっと頭を冷やした方がいいんじゃないかと思って、横槍を入れさせてもらったよ。
 ドモン、いくらなんでも灸をすえる――ってレベルを超えてるよ、それ」
「む……」

罰の悪そうな顔になるドモン。
先ほどの一撃をかませば灸を据えるどころか、建物ごと吹き飛ばしていた可能性も否めない。
ドモンは一流の武闘家として、ジンはドロボウとしての直感でそれ感じ取っていた。
さらに先ほどの放送ではジンと行動を共にしていたカレンの死をドモンも聞いている。
どれほどの付き合いかは知らないが、目の前の少年がカレンの死に何も思わないわけが無いのだ。
年下の少年に諌められた、という情けなさも手伝いその矛先を治める。
だが対する黄金の王にはそんな自重する心など欠片もありはしない。

「ほう……我にも指図するか、コソドロの王よ?」
「いえいえ、オウサマに指図だ何てとんでもない。ただ、流麗に振舞うのも王のあり方だと思ってね」
「盗賊風情が我に王のあり方を説くというのか? 身の程を知れ、俗物。
 そこの雑種といい……やはり王を偽る愚物には裁きが必要なようだな」

蛇のような粘性の赤い視線と風のような爽やかな黒い視線が交差する。

「――よかろう。なれば王らしく決着を付けるか」

そしてジンに視線を向けると、一言。

「さて盗賊王よ、杯と酒を探してこい。この場所ならばその程度あるだろう」
「おや、パーティーでも開く気かい?」
「馬鹿め。ここから始まるのは宴などではない――戦いよ。
 貴様らも王を名乗るのならば、己の格を我に精々示して見せるがいい」

ギルガメッシュは挑戦的な瞳で二人を睨みつけた。



      *    *    *


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247:THE KING OF FIGHTERS ギルガメッシュ 253:王たちの狂宴(後編)
247:THE KING OF FIGHTERS ジン 253:王たちの狂宴(後編)
247:THE KING OF FIGHTERS ドモン・カッシュ 253:王たちの狂宴(後編)





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