Ready Steady Go ◆hNG3vL8qjA



スカーは迷っていた。
地図に記入されている表だった施設に入り、螺旋に関するアイテムや人物を保護する。
ショッピングモールで聞いた謎のアナウンスから得た情報を元に、彼はそう行動するはずだったのだ。
だが、いざ施設に入ろうとしたときに彼は重大な事に気がついた。
それは"もし施設内にいる参加者との接触したら、果たして穏便に済むのか?"という問題である。
スカーはこれまで、この世界で仲間と呼べるような知り合いを作らず、ただひたすら暴虐をもって他人に襲い掛かっていった。
痛み分けした相手は数知れず、現に2人を屠っている。
彼から逃げ遂せた者が、スカーの知らぬところで仲間を作っていたとしたら。
"額に特徴的な傷を持つ人物にご注意"というレッテルが広まっていてもおかしくはない。
勿論、スカーは自身が殺されない自信を持っている。
だが、万が一鉢合わせた相手が、あの聖職者たちのような手だれだったとしたら?
手元に彼が持っている武器をもってしても通用しない相手がいたとしたら?
そして、その人物が既に螺旋に関する事象を先取りしていたとしたら?

("有り得ない"は、有り得ない……この世界では特にそうだろう)

スカーは今エリアCー8から刑務所内を展望している。
当然中に人がいる事にも気がついている。
実際問題、中にいるのはスカーよりも劣る参加者と有益な道具なのだが、彼が気がつくはずもない。


ビクトリームは焦っていた。
急な運動で足をツらせてしまった胴体が完全に海に沈んでしまったからだ。
頭部と胴体が着脱可能なビクトリームにとって命の危険はないのだが、彼にはトラウマがあった。
彼はこの世界で数時間、胴体と離れ離れにさせられた経験がある。
もしかして、また――という不安がよぎったのだ。

「……ええィ! 今回は特別にもやしっ子ルルーシュに任せる!! 」

しかしビクトリームは踏みとどまった。
前回とは状況が違うからだ。
先刻まで彼がいた森にはルルーシュ・ランルページがいる。
会場をループして森へとボディは移動するのだから、自ずとルルーシュがそれを発見する可能性は高い。
そして今は海上を先へ先へ進んでいる2人の少女を追うという奇妙な使命感がある。
ビクトリームは自分の頭部を東に進めた。


スカーは迷っていた。
彼の背後には、いつの間にやらもぞもぞと動く奇妙な物体が現れたからだ。
スカーは初めてそれを見たとき、敵襲だと考えすぐさま戦闘体制に入った。
この世界が地図の端と端を繋いでいることは身をもって体験していたからだ。
特に(スカーはこの世界で初めてその存在を視認したのだが)彼の背後の世界は海という巨大な湖に繋がっている。
音も立てずに近づくことは容易に違いなかった、とスカーは考えていた。
しかし、相手は何もしてこなかった。
ただその場に寝そべり両足の踵をピーンと伸ばしているばかり。
スカーは試しに、彼に接触を試みた。
話しかけてみたり、息を吹きかけたり、ツンツンつっついたり、脇腹こしょぐったり、鎖で縛ったり、蹴ってみたりした。
されど、相手はスカーに抵抗しつつも、へこへこと逃げるだけで、スカーと接触を図ろうともしない。
散々弄んだ結果、スカーはこの物体を"合成獣の成れの果て"と考えた。
首輪をつけていないので同じ立場の者ではないし、生体活動というにはあまりにも無様。
つまり"誰かのサポート役としてに与えられた物"か"国家錬金術師に遊ばれた生命"には違いない、と結論をくだしたのだ。

(神の教えに背きし者たちの、哀しき置き土産よ……今楽にしてやるぞ)

スカーは両手を合わせて軽く祈ると、右腕に力を込める。
そして彼の右腕から発せられる業の一撃を、足元で蠢く物体に見舞った。


「ビィィィィィィクトリィィィィィィィィム!!! 」

スカーの掌が謎の物体に突き刺さろうとしたとき、それは突然現れた。
スカーは耳を劈いた絶叫の方へと視線を変えるが、それは勢いを止めようとしない。
スカーの顔面は突如現れた謎の飛行物体に、ものの見事に衝突して体ごと吹っ飛ばされた。

「ベェェェェリィィィィィィィシィィィィィィィットォォォォォォォォォォォ!!
 誰が同じネタを2回やれといったァァァァァァ!! おいこら小娘Mrk……えーと1か2か! この際どっちでもかまわん!
貴様やっぱりわかってやってるなぁ!? いや貴様等2人最初からグルだったんだなぁコラァァァ!!
私の胴体はオモチャじゃねぇって言ってんだろうがぁぁぁくんずほずれつの好き放題にぃぃしやがってェェェェ!!
 またイきかけ……じゃない。お前のせいで私は縛りプレイに興味……じゃない。
 危うくマゾヒストに目覚める所だったんだぞォォォォォォ!? 
 これじゃ"ビクトリーム"改め"びくドエーム"か"びくびくトリーム"にせにゃならんだろうがァァァァ!!! 」

現れたのはスカーが今しがた始末しようとしていた物体の持ち主――華麗なるビクトリームだった。
合成獣の成れの果て、というのはスカーのとんだ勘違いである。
それにしても、一度は海を渡る決心をしたビクトリームが、なぜ森へ舞い戻ってきたのか。
それは彼のもう1つのトラウマのせいだった。
ビクトリームは胴体部と感動の再会をする直前に、螺旋族の王女ニアに縛られていた体を、色々と×××されてしまったのだ。
想像してほしい。自分の体が全く動かせない状況で、誰かに何をされるのかわからないという危険な状況を。
その時のビクトリームの言いようのない悶えは筆舌に語りがたい。
彼はニアがまた何かしたのではないかと勘違いしたのだ。
"東へ飛んだ彼女がなぜ森に戻ったのか?"なんて彼は考えない。なぜなら彼の思考はシンプルだから。
アクシデントといえば、ビクトリームが吹き飛ばしたのがニアやシータではなく、初対面の別人だということ。

「あれ? 誰だ貴様」
「……成る程、その浮遊体が本体なのか」
「ひ、額にⅩだとうゥ!? (華麗なるⅤの字を頭に2つもくっつけるとは……こいつ只者ではない!)」
「今度こそ安らかに眠れ、異形の者よ」
「だがそこは同じ向きでいくべきだったなァァァァァ! 」

しかしそのアクシデントは、スカーにも言える事だった。


スカーは焦っていた。
なぜなら彼は今、身をもって"有り得ないは、有り得ない"を体感しているのだから。
順を追って説明しよう。
まずスカーは捕縛の為に、天の鎖をビクトリームの頭部に巻きつけた。
だが、その時ビクトリームはその場で回転し始めたのだ。

――私が本当のVを見せてやろう。1秒間で11ビクトリーにも及ぶ超絶なるVの舞をなァァァァ!

そしてビクトリームは……遥か上空まで飛んだ。
それは己の雄姿を見せ付けるためか、はたまた唯の思いつきか。
いずれにせよ、ビクトリームは空を飛んだ。
そして彼に天の鎖を巻きつけていたスカーも空を飛んだ。いや、飛ばされた。
スカーは振り落とされないようにしっかりと鎖を握っていたが、それで精一杯だった。
この時スカーはかつて体験したことない遊覧飛行で町全体を見下ろし、未だ戦火が止んでいない事を偲ぶのだがそれは割愛しよう。
彼が本当に"有り得ない"と感じたのはこの後なのだ。
切欠は上昇していたはずのビクトリームからの一言だった。

――ブルァ!? これ以上先に進めん! 我が頭部のダメージが重力に逆らえないほど響いてきたのか!?
――いや違うか? まるで……これはまるで"何らかの巨大な力"で『上』から押さえつけられているかのようだァァァ!!

スカーはビクトリームのこの発言が気になり、何気なく上空を見上げたのだ。
そこにあったのは夜空。
だが、何かが違った。
空から異様なほどの存在感を感じたのだ。
"空という物は見れば見るほどその果てが遠くに感じられるものだ"とスカーは常日頃思っていた。
当てのない旅を続けている時でも、その思いは変わらなかった。
山脈の頂近くに登ろうとも、空との距離は変わらないと思っていた。
しかしどうだろうか。
人生初めての空中浮遊とはいえ、この程度(スカーの個人的印象)の高さに来ただけで、こうも変わってしまうのか。
それとも、"この世界の空は普通の空ではないのか"。
そしてもう1つ、スカーには疑問に思うところがあった。
月。
スカーは破戒僧の身ではあるが、生きていく上での処世術を知らぬほど俗世離れをしているわけではない。
真夜中――まもなく午前零時となろう現在時刻の見分け方ぐらいは知っている。
しかし、それにしては月の位置がおかしいのだ。
建物の影の方角は間違っていない。しかしいつもより"長い"。
つまりこの月はスカーの知っている世界の月よりも地上から低い位置にあるということだ。
これは一体どういう事なのか。月が近づいてきているということなのか。

(……そう言われてみれば気にはなっていた。
 "な ぜ 太 陽 と 月 が 一 緒 に 現 れ な い の か"。
 ループしない俺の世界ならば、太陽と月は入れ替わり立ち代りの関係だ。
 だが、この世界はこの世界は地図の端と端が繋がっている。太陽と月は24時間顔を出さなければおかしい。
 この世界の太陽と月は、俺の世界の太陽と月と全く同じなのだ。
 なぜだ!? 螺旋王が神の存在だからか!? ……いや、これはむしろ、太陽と月、そして見渡す限りの星全てが――)

スカーは考える。
螺旋王の実験という発言。
なぜかループする町。禁止エリアという存在。
予測不能の未知のアイテム。自分がここに招かれた時の経緯。
螺旋力。月と太陽。威圧感のある空――

「異形の者よ! 」
「なんじゃいィィィィィ私のスーパービクトリーに小便ちびったかァァァ!?」
「貴様は生きてきた中で、まるで……まるで太陽のような質量を持つ石を見たことが――」
「ああ!?」
「もしくは星のように大きな宝珠の話をどこかで――」
「高度何メートルだと思っとんじゃい!! 風が強くて聞こえんわァ!! 」

太い声をあげながら、スカーは何かを確信したかのようにビクトリームに訴える。
陽だまりに溢れる朝方なら、彼の言葉は届いたかもしれない。だが哀しいかな。
せっかくの言葉も完全には伝わらない。
きまぐれな風はスカーの希望を飲み込もうとする。

「ならばこれだけは言わせろ! 」
「しつこい!! 聞こえんと言って……」
「……!! 」
「……ぐぬぬ」

がなり立てるビクトリームをスカーの鋭い視線が射殺す。
ここまで真面目に見つめられる事は、きっと彼の人生で一度もなかったわけではないのだろうが……。
ただ、ビクトリームもスカーが冗談でやっているのではない事はわかっていた。
エルキドゥ――巻かれた天の鎖から感じる力が段々弱くなってきたからだ。
大分スカーの握力も疲れてきている証拠。つまり彼はそろそろ地面へと転落する。もう時間がなかったのだ。

「月と太陽をよく調べてみろ。この世界に"天"はあった。天は天でも陳腐で小賢しい天がな」

そして、スカーはあっけなく手を放した。
彼が自分の大切な武器にそれほど執着が見えなかったのは、何かを掴み機会を与えてくれた者への報酬か?
それとも、完全に手玉に取られてしまった自分への戒めか?
いずれにせよ、スカーは天の鎖をビクトリームに譲ったのだ。

(なんだったんだ? あいつ。それにこの鎖は何だ? これを渡す代わりに見逃してくれという事か?
 フッフッフッ……やはり私のⅤは完全体ってことだな。今、私のⅤはVictoryのⅤに進化したァァァァァ!)

この後、地上に帰還したビクトリームが自分の胴体と頭部を一緒に鎖で縛ることを思いつき、
晴れて上下合体状態で海を渡る手段を得て、海に向かったのだが、それはまた別のお話。


最後の猶予は費え、破戒僧は墜落した。
ただし着地する場所はエリアC-8の森ではなくエリアC-1の海。
スカーは落下の途中で体をC-8とC-1の境目にあずけた。
水の中に飛び込むのと、木々に突っ込むとでは、受けるダメージの差は大きい。
例え大怪我をしても支給品があるので、問題はない。
……落下による急な体への負担はあるので、どのみち体を休めざるえない状況になるのだが。
現在、スカーは海に溺れる前にもう一度ループして森に移動し、木陰で膝をついている。
もはやビクトリームを眼中に入れる余裕などなかった。
彼が地上に降り立った後も遭遇をあえて回避した。最初にあった悲哀の念もどこへやらだ。

(苦し紛れになんとか着地できたが……風景が吹き込んできそうなくらい、強い風勢を浴びてしまった)

スカーの感情は昂ぶる。
せっかく気づいたのだから、標的はもう見逃せない
手元の地図が当てにならないことはわかった。焼いて処分したい衝動はぐっと抑える。
埋もれた真実がこの世界にはある。この掌で掴み取るべきだろう。
早く夢中に駆け抜けたいと、五月蝿く張り裂けそうなくらい胸の鼓動が高鳴る。
これは教示だ。真実を暴けと誰かが呼んだのだ。
ここで立ち止まっているような時間は無い。

(だがもうすぐ放送だ……もう少しだけ、ここで息を潜めておくか)

スカーは知らない。
彼の住む世界とは別の世界に、大宇宙のエネルギーを封じ込めた宝石があることを。
その宝石は巨大な惑星から消えてしまいそうな小惑星まで、様々な種類があることを。
その星珠は星のように輝くのに、全く熱を感じさせないことを。
そしてその要となる物、通称システマ・ソラールを所有せんと企んでいた王泥棒がいたことを。

スカーは知らない。
彼の住む世界とは別の世界に、空を飛ぶことを諦めた文明があることを。
その都市は一面砂漠で覆われた土地に戦艦に乗って生活していたことを。
その都市の先人達が、子孫のためにあえて空を飛ぶことを諦めていたことを。
しかしその世界の空を突き破るが如く大暴れし、天元突破に尽力を出した黒猫とその仲間達がいたことを。


【B-8/一日目/真夜中(放送直前)】
【スカー(傷の男)@鋼の錬金術師】
[状態]:上空からの転落で多少の疲労と怪我、覚悟、螺旋力覚醒
[装備]:アヴァロン@Fate/stay night(回復に使用中)
[道具]:デイバック、支給品一式@読子(メモは無い)、
[思考]
基本:螺旋力保有者の保護、自身及び螺旋力保有者の敵の抹殺、元の世界に戻って国家錬金術師の殲滅
1:螺旋力保有者に接触し、保護する(ただし邪魔をしたり、危険と判断したりした場合は抹殺)。
2:螺旋に関係するアイテム(ショッピングモールのコンテナなど)を捜索、回収。
3:螺旋力保有者の敵がいなくなったら螺旋王を見極める。螺旋王の螺旋力の大きさ次第でそれまでの保護対象を抹殺し、優勝する。
4:腹が減ったが、ひとまず放送まで待機。 刑務所を調査するかどうかは人が中にいるようなので保留。
[備考]:
※言峰の言葉を受け入れた分、かえって覚悟が強まっています。
※スカーの右腕は地脈の力を取り入れているため、魔力があるものとして扱われます。
※会場端のワープを認識。螺旋力についての知識、この世界の『空、星、太陽、月』に対して何らかの確証を持っています。

【C-1/海上/一日目/真夜中(放送直前)】
【ビクトリーム@金色のガッシュベル!!】
[状態]:肉体的にも精神的にも色んな意味で大ダメージ、鼻を骨折、歯二本欠損、股間の紳士がボロボロ
[装備]:天の鎖(エルキドゥ)@Fate/stay nightで、頭と体を縛り付けている。
[道具]:支給品一式、CDラジカセ(『チチをもげ』のCD入り)、ランダム不明支給品x1、魔本
[思考・状況] 
1:こんどこそ小娘達を追うぞ! 小娘どもを追うのはメロンが欲しいからで、別に心配なぞしておらん!?
2:パートナーの気持ち? 相手を思いやる?
4:吠え面書いてるであろう藤乃くぅんを笑いにデパートに行くのもまぁアリか…心配な訳じゃ無いぞ!?
5:カミナに対し、無意識の罪悪感。
6:シータに対し、意味の分からないイライラ
7:F-1海岸線のメロン6個に未練。

[備考]
※参戦時期は、少なくとも石版から復活し、モヒカン・エースと出会った後。ガッシュ&清麿を知ってるようです。
※会場内での魔本の仕組み(耐火加工も)に気づいていません。
※モヒカン・エースは諦めかけており、カミナに希望を見出し始めています。ニアが魔本を読めた理由はかけらも気にしていません。
※静留と話し合ったせいか、さすがに名簿確認、支給品確認、地図確認は済ませた模様。お互いの世界の情報は少なくとも交換したようです。
※分離中の『頭』は、禁止エリアに入っても大丈夫のようです。 ただし、身体の扱い(禁止エリアでどうなるのか?など)は、次回以降の書き手さんにお任せします。
※変態トリオ(クレア、はやて、マタタビ)、六課の制服を着た人間を危険人物と認識しています。
※ニアとジンにはマタタビの危険性について話していません。


時系列順で読む


投下順で読む


215:マテリアル・パズル~神無~ スカー 245:【ZOC】 絶望の器 (後)
229:王女の宅急便(後編) ビクトリーム 244:俺にはさっぱりわからねえ!(前編)





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