※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

失楽園(後編) ◆RwRVJyFBpg



「あ゛~あ゛、まったくキヨマロも強情だよな」

赤い虫のように空を飛ぶフラップターに一人跨り、ラッドはやれやれと肩をすくめていた。
病院のロビーでさっきまで続いていた討論は泥沼の延長戦の末、清麿に軍配が上がった。
頑なに主張を曲げない清麿にラッドが降参した形だ。

「『オレがこの子を背負って映画館まで行くから、ラッドは先に帰って報せてくれ』か……
 はぁー、そうまでして連れて帰りたいかねぇーあんなガキ。
 シロウといいあいつといい、ここにいるヤツラはどっかおかしいぜまったくよォ!」

ラッドは自分のことを棚上げにして一人ごちる。
フラップターに三人は乗れないことを盾にしていたラッドに対し、清麿は自ら分散行動を申し出たのだ。
ラッドとしては、ゆたかの危険性を建前にもう少し粘ってもよかったが
よく考えれば、そうやってこれ以上時間を消費する方が余程無益であることに気がついた。
足手まといが増えるのは気に入らないが、まあ、仕方ない面もある。

「……しっかし、あいつらもしかしてこの後も、あのガキみたいなよわっちい連中を次々連れてくるつもりなのかねぇ?
 やだやだ。哀れな子羊ちゃんのお守りなんざ俺ァ、まっぴらごめんだぜ。モーゼってんじゃねえんだからよう」

シンヤを殺し、せっかく上がったテンションに水を差されたのが不快だったのか
ラッドはフラップターを縦横に繰り、無駄にアクロバティックな飛行を繰り返す。
常人なら酔って吐くこと間違いなしの機動を涼しい顔でやり過ごす。

「あ゛ーめんどくせえ、めんどくせえ。いっそのこと役に立たねえボンクラどもは皆、殺しちまおうか?
 この期に及んで緩いパンピーが生き残ってるとは思えねえからあんま気は進まねえが
 みんなのヒーローってのはもっと気に食わねえ。ってか吐き気がする」

目茶苦茶な飛行を続けながら、事も無げに彼は呟く。
その口調は明日の献立を考えているときのそれとまるで変わらない。
思えばそれもある意味当然のことだ。
ラッド・ルッソは殺人鬼なのだから。
彼は、自分が死ぬなどと微塵も考えていない緩い人間を殺すのを好むが、決してそれしか殺さないというわけではない。
抗争になればどんな敵でも速やかに始末するし、フライング・プッシーフットの事件の時も、乗客は残らず皆殺しにするつもりだった。
とどのつまり、ラッドにとっての『緩い人間』とは肉なのである。
彼は肉食だが、必要とあらばパンも芋も野菜だって食らう。

「あーあ、クソッ、せっかくいい気分だったってのに何かテンション下がってきちまったぜ。
 こーゆーときはどうすっかな?やっぱあれか?殺しか?人殺しか?
 そーか、そうだよなぁ!!こういう暗い気分の時は頭ゆるゆるのガキでもパァーッとブッ殺してスッキリするのが一番だ!
 キヨマロが映画館に着くまでにゃまだ時間もあんだろうし、パッと殺って、サッと帰りゃ問題ねえだろ。
 よぉーしっ!!そうと決まれば獲物探しだ!
 イキのいいのが見つかんなかったときは……足手まといになりそうな奴殺して我慢するってのもま、アリか」

機体に落ち着きを取り戻し、神をも恐れぬ殺人狂は空を翔る。
自らの飢えを満たすために。

【D-6・上空/一日目/夜中】
【ラッド・ルッソ@BACCANO バッカーノ!】
[状態]:疲労(小)、左肋骨2本骨折、両拳に裂傷(戦闘には問題なし)
[装備]:超電導ライフル@天元突破グレンラガン(超電導ライフル専用弾3/5)
[道具]:支給品一式×2(一食分消費)、ファイティングナイフ、フラップター@天空の城ラピュタ
    テッカマンエビルのクリスタル@宇宙の騎士テッカマンブレード
    ニードルガン(残弾10/10)@コードギアス 反逆のルルーシュ 、首輪(シンヤ)、首輪(パズー)
[思考]
基本方針:自分は死なないと思っている人間を殺して殺して殺しまくる(螺旋王含む)
0:下がったテンションを上げるため、誰かしらブチ殺す。できれば緩い奴がいい。
1:獲物の有無にかかわらず、あまり遅くなりすぎないよう映画館に帰る。
2:東方不敗と鴇羽舞衣の所に戻ってぶち殺す。
3:清麿の邪魔者=ゲームに乗った参加者を重点的に殺す。
4:足手まといがあまり増えるようなら適度に殺す。
5:基本方針に当てはまらない人間も状況によって殺す。
6:覚悟のある人間ばかりなので面白くないから螺旋王もぶっ殺す。
7:シンヤの兄であるDボゥイに興味。死なないと思っているようならブチ殺す。
※フラップターの操縦ができるようになりました。
※明智たちと友好関係を築きました。その際、ゲーム内で出会った人間の詳細をチェックしています。
※詳細名簿の情報をもとに、危険な能力を持つ人間の顔と名前をおおむね記憶しています。
※テンションが上がり続けると何かに目覚めそうな予感がしています。




「ない……ない……ない……」

夜の病院、薬品保管庫の中に蠢く影が一つ。
棚という棚に手をやり、何かを探すように手を突っ込んではまさぐり、かき回す。
取り出した薬品のラベルを見ては、顔を引き攣らせ、また新たな容器を探すために手を入れる。
影は何かにとりつかれたようにそんな動作を繰り返し続けていた。

「ない……ないわ……死ねるお薬……どこにも」

シャマルは動揺していた。
いくつかの部屋を探し回ったが、自殺を決行するために最適な毒薬が、どこへ行っても見つからないのだ。
もし、彼女がいつもの冷静さを保っていたならば、螺旋王が殺し合いに有利な道具となる毒薬をあらかじめ排除していた可能性
あるいは、先にここに来た誰かが、毒薬だけを持ち去ってしまっていた可能性に気づくことができただろう。
しかし、残念ながら、今のシャマルにその判断力は望むべくもない。
ゆえに、彼女は白痴のように棚を開け、かき回し、うわ言を呟きながら天国への片道切符を探していた。
その様子は、おもちゃを探す少年のようにひたむきで、犠牲者を探す死神のように不気味だった。

「どうしよう……ない……ないわ」

顔を青くし、頭を抱える。
このままでは死ぬことができない。
せっかくいい場所に巡り会って、いい方法も見つけたというのに、肝心の薬がないなんてあんまりだ。
彼女は思うように行かない状況に苛立ち、バリバリと頭を掻いた。
強く掻くあまり、綺麗な金髪が抜け落ち、はらはらと廊下に舞う。

「どうすれば……どうすれば……」

必死で次の手をシャマルは、手がかりを求めるように周りを見回す。
自分を殺してくれる、自分が死ぬことができる何かを求めて。
血走ったシャマルの目に、ライトアップされた中庭が映った。

「あれだわ」

魂の抜けたような声で呟き、とっさに思いついたプランを確認すると、彼女はすぐさまそれを実行するため走り出した。


この病院の中庭は半ば公園のように機能するよう整備されていた。
入院患者たちが座って閑談できるよう、あちこちにベンチが備え付けられ、灰皿も完備。
人工の小川が中庭を周回するように流れ、その周りには色とりどりの花が咲く花壇が腰を据える。
さらには夕涼みする患者に気を使ってか、かなり明るめの照明も据え付けられており
そこは完全に日が没し、夜になった今でも、十分に心地のよい空間だった。

その中央、庭の中でも一際大きな存在感を放つ巨木の前にシャマルは立っている。
手には病室から剥ぎ取ってきたシーツと大きなプラスチックの箱を持って。
彼女はしばらく無表情で木を見つめていたが、やがて決心がついたのか、プラスチックの箱を木の脇に置き、その上に立った。
手頃な高さの枝を見繕うと、シーツを輪の形に結び、括りつける。
輪の大きさを何度か調整し、それが手頃な大きさになったと見るや、シャマルはその輪の中に自分の頭をすっぽり通してしまった。

「あとは、この箱を蹴り出すだけ……それでもう、この世とはさようなら……」

シャマルが思いついた次善の策は、首吊り自殺だった。
首吊りはそのビジュアルの残酷さや、首を絞められて死ぬというイメージなどから
苦痛の伴う死に方のように思われがちだが実はそうではない。
首を吊った場合、吊るために使用している紐が首の動脈を圧迫し、十秒ほどで自殺者の意識を奪うため
実際に感じる苦しみはイメージと比べて相当に軽いものとされている。
柔道の達人の絞め技が一瞬で相手の意識を奪うのと基本的には同じメカニズムである。
医者であるシャマルは当然、そのことを知っていた。
だから、薬での死という最善策が不可能となった今、彼女は次善の策として首吊りを選んだのだ。

「もう、本当、疲れちゃったわ。だから、終わりにしましょう……」

シャマルは箱の上から中庭に生えた芝を見つめながら、これまでの人生を思い出してみる。

初めてはやてに召喚されたあの日。
石田先生の病院へ行った帰り、はやてと買い物に行ったあの日。
ヴィータのゲートボールを見に、みんなで出かけたあの日。
中々日常生活に慣れないシグナムをショッピングに連れ出し、服を着せて回ったあの日。
なのはやフェイトと和解したあの日。
管理局に入り、医務局に配属されたあの日。
怪我を治してあげた局員の人に、ありがとうを言われたあの日。
はやてに六課の話を聞いて、驚いたあの日。
六課に配属されて、自分の部屋をもらったあの日。
キャロとエリオが話す休日の話を笑顔で聞いたあの日。
スバルが訓練で怪我をして、治療にやってきたあの日。
ティアがそれに付き添って、文句を言いながらもずっと傍にいたあの日。

大切な、どれも大切な『あの日』たち。
辛いことも多くあったはずなのに、何故か頭に浮かぶのは楽しかった、嬉しかった思い出ばかりで。
でも、それはもう遠くて、儚くて、ぼんやりとぼやけてしか見えなくて。
マッチ売りの少女が熾した火の中に見える幻影のようで。

知らず知らずのうち、シャマルは泣いていた。
心の底から思う。何がいけなかったのかと。

(ねえ、神様、もしいるならば教えてください。
 私はそんなに悪いことをしたでしょうか。
 はやてちゃんやシグナムやヴィータ、ザフィーラ、六課のみんなと普通に暮らす。
 そのささやかな望みを永遠に絶たれなければいけないほど、私は重い罪を犯したのでしょうか。
 わけも分からずこんな恐ろしい殺し合いに参加させられて、わけも分からずみんな死んで。
 教えてください神様!一体、私達、何がいけなかったんでしょうか!)

しかし、問うても答えは返らない。
神は常に黙して語らず。
夜風に吹かれて、目の前の芝だけが静かに揺れていた。
シャマルは最後に一度、本当に疲れた、と小さな声で呟くと、滑らかに、しかし確実に、箱を、足場を、外した。
ガコンという音がして、華奢な体が宙に浮く。
風が、吹いた。





【シャマル@魔法少女リリカルなのはStrikerS 死亡】









「そんなもの、俺は断じて認めないッッッッッッ!!!!!!!!!!!!」












ガコンという音がして、華奢な体が宙に浮く。
疾風が吹いて、シャマルは一瞬後、地面に尻餅をついていた。

「きゃ!?」

予想外の事態に反射的に目線を上げる。
鉈を構えた獣人が息を切らせて立っていた。




「ヴィラルさん……」

追ってきて正解だった。
ヴィラルは今、心の底からそう思っていた。
一人実験を終わらせるべく街に出た彼は、偶然通りかかった四つ辻で真新しいシャマルの臭いを感じ取ったのだ。
今しがた民家に置いてきたはずの彼女の臭いに嫌な予感を覚えた彼はそれを追い、この病院に辿り着いたのである。
彼が中庭の入り口に辿り着いたのは、丁度シャマルが箱を蹴り出し、飛び降りんとしている刹那だった。
彼女が首を吊ろうとしているのだという事実を認識した瞬間、頭より先にまず体が動いていた。
小川を飛び越え、花壇を踏み潰して、ヴィラルは神速をもって木の袂まで辿り着き、鉈でシーツを切断したのだった。

「お前は馬鹿だッ!!大馬鹿だッッ!!」

戸惑うシャマルをヴィラルは一喝する。
その声はあまりにも鋭く響き、木を、花を、大気を揺るがす。

「何故こんな真似をした!?お前が死ねば死んだ仲間が喜ぶとでも思ったのか!!?」
「……どうして、放っておいてくれなかったんですか」
「なにぃ!?」

怒るヴィラルに対し、シャマルの反応はあまりにも冷ややかだった。
まるでまた一つ罪を重ねてしまったとでも言わんばかりに俯き、恨みがましい目で彼のほうを睨む。
その目の中の淀んだ光を見て、ヴィラルは思う。
これが、本当にあのシャマルの目なのかと。

「……私はもう生きていても意味のない生き物なんです。
 私に帰るところはもうないし、私の大切な人は死んでしまった。
 もう、私の人生に残ってるものなんて、これっぽっちもありはしないんです。
 だから、私はもう……」
「帰るところがないだと……?甘ったれたことを言うな!それでも貴様は螺旋王の戦士か!!」

ヴィラルは期待していた。
螺旋王の名を出して煽れば、シャマルが何度か見せたあの持ち前の気丈さを取り戻し
こんな馬鹿な真似は即刻中止してくれると信じていた。
しかし、彼女の反応は期待したものとは程遠いものだった。
シャマルは悲しそうな、それでいて皮肉そうな目を彼に向けると、唇を歪めて薄く笑ったのだ。

「何がおかしい!!?」
「螺旋王の戦士……そうですよね。私、今はそういうことになってるんですもんね。
 もうそんな嘘、何の意味もないっていうのに……」
「嘘だと……!?」

ヴィラルは絶句する。
全く予想外のところから殴られたような衝撃が走った。
確かに、はじめのうちは不審にも見えた。
しかし、その誤解は話をするうち、一緒にいるうちに段々と氷解していった筈だった。
だが、それが、まさか。

「……いいわ。どうせもうみんなおしまいなんですもの。
 教えてあげますよヴィラルさん。ホントのこと全部ね」

戸惑う彼にシャマルは気持ちの悪いほどに優しくそう前置きすると、真実を語りだした。

時空管理局のこと。
守護騎士のこと。
全てはヴィラルを利用するための嘘だったこと。

真実が語られるたび、ヴィラルの顔色は赤く、ときには青く変じた。

「馬鹿な……お前は、お前は俺を謀ったのかシャマル!?」
「そのとおりよ」

機動六課のこと。
八神はやてのこと。
そしてシャマル自身のこと。

残された謎が明かされるにつれ、興奮していたヴィラルは徐々に落ち着き、今度は逆に寡黙の影が濃くなっていく。
対するシャマルは話が進めば進むほど感情的になっていく。
涙を両目から止め処なく流し、まるで喉の奥につまった感情を投げつけるかのように。

「分かったでしょ!私はどうしようもない大嘘つきなのよ!!
 自分の利益のためだけに、ヴィラルさんに嘘をついて!利用して!!
 ……軽蔑した?軽蔑するわよねこんな最低女……
 いいわよ、軽蔑してくれても。どうせ私にはもう何もないんだから!!」
「……………………」

気がつけば、この場の構図は、喚き散らすシャマルの言葉を石のように動かぬヴィラルが受け止める形となっていた。

「……もう答えるのも嫌だって言うの!?
 ……ううん、そうよね、それが当然よ。当然。
 さあ!もう私の戯言を聞くのにもいいかげん飽き飽きしてきたでしょう!?
 ……そろそろ、殺したら?私のこと」
「……………………」

シャマルの息が切れ、声が枯れても、ヴィラルは動かない。
じっと、燃えるような双眸で彼女の眼を睨みつけ、話に耳を傾ける。
ただ、それだけ。

「……ねぇ、何か一言くらい言い返せないの?
 私はあなたを裏切ったのよ?利用して、利用して、その挙句に殺そうとしたのよ?
 憎んじゃないの私のこと?引き裂いてやりたいんじゃないの?
 だったら、殺して……殺してよ……」

少しずつ、少しずつ叫ぶ勢いが弱くなっていく。
されど、彼女の瞳から流れ出す涙の川だけは、いつまで経ってもその勢いが衰えない。
むしろその流れは時間とともに激しく、荒々しくなっていく気配すら見せている。

「……もう一度聞く」

そんなとき、男はついに沈黙を破った。

「何故、自殺なんて馬鹿な真似をした」

その声は静かだったが、有無を言わせぬ強さと、厳かさを持ち合わせていた。
彼女は眼光に射竦められ、しばらく何も喋れずにいたが、やがて先ほどまでの癇癪を取り戻し、強い調子で叫んだ。

「私なんて生きてる価値がない人間だからよ!
 仲間も主も守れずに、自分ひとりだけおめおめ生き残ってる、最悪の騎士だからよ!
 そんな私がこれ以上生きてたって、私があの幸せを取り戻せる場所なんて、もうどこにもないのよっ!!」

血走った目を大きく見開き、美しい髪をざんばらに振り乱し、喉を軋ませ訴える。
悲しみを訴える。絶望を訴える。虚無を訴える。

「歯ァ、食いしばれェェェェェェェェェェッッーーーーーーーー!!!!!!!!」

吼えたのはヴィラルだった。
大きく前に一歩を踏みしめ、大地を掴み、その余勢をかって腕を振るう。
それ自身が一つの生き物のように、見事にしなったその腕は円弧を描き――激しく左の頬を打った。

「きゃああっ!!」

強烈な平手打ちがクリーンヒットしたシャマルは吹き飛ばされ、後ろに一回転、木に体を激突させる。

「な……何を」

目を白黒させながら、やっとのことで目線を彼のほうへと向ける。
突然の一撃に理解の方が追いつかない。

「どうして『取り戻す』なんて考える!?何故『掴み取ろう』と考えない!?
 お前にあるのは過去だけか!?死んだ主だ、死んだ仲間だ、それが貴様の全てなのかッ!!?」
「ッッッッッ!」

強い言葉が降り注ぐ。しかし、女にも意地がある。

「そうよッ!私にははやてちゃんとの生活が!六課の皆との昨日が全てなのよッ!
 それをとったら、私には何にも残らないのよッ!」
「なら、何故お前は俺を助けたッ!!」
「!!?」
「空港で俺が傷に苦しんでいた時、お前は魔法を使って俺を助けた。
 だが、あの時、正体がバレるリスクを負ってまでそうする必要はなかったはずだ!
 もし、お前に八神はやてとの思い出と、六課の仲間との絆しかないのなら、あそこで殺人者の俺を助ける理由はどこにもないッ!
 俺は獣人。人間である八神はやての敵でしかありえないからな!
 お前がもし、守護騎士シャマルでしかないというのなら、お前はあそこで俺を殺すべきだった。
 主の敵を一人でも減らしておくべきだった。
 ……だが、お前は俺を助けたッッ!何故だッ!答えろ!シャマルゥッ!!」
「そ、それは……」

根元に屈みこむシャマルの元に、いつの間にかヴィラルが肉薄していた。
獣人特有の牙をむき出しにし、瞳を彼女の魂だけに注いで。
男の咆哮は止まらない。

「教えてやるシャマル!それがお前だ!!
 八神はやての騎士でもない、機動六課でもない、お前はお前だッ!癒し手シャマルだ!
 それが正真正銘、確かにここにいる『今』のお前だ!
 貴様はさっき自分には『昨日』しかないと言ったが、それがそもそもの間違いなんだよッ!!」
 だから過去に捕らわれるな!昔の容れ物に縛られるのはもう止めろ!
 思い出が全て消えただと!?もうあの日には帰れないだと!?それがどうした!
 帰れないのなら先に進めッ!!過去を見ずに『今』を見ろッ!!そして『明日』を掴み取れッ!!」

ヴィラルは瞳を、シャマルの魂だけを見つめて叫ぶ。
鼻と鼻が触れそうな距離で、彼は命を燃やして叫ぶ。

ヴィラルはただ嫌だった。
彼を助けてくれた優しい女性が悲しい顔をするのがただただ嫌だった。
彼女がもう一度生きるためなら何でもできると、心の底からそう思った。
強く強く、何よりも強く想い、そのための言葉を心の海から引きずり出した。

そしてそのことが、彼の体に奇跡を起す。
命の螺旋が彼の中で、いや、彼の外でも回り始めた。
緑の閃光がヴィラルの身体を包み込み、その光は天に向かって立ち昇る。
回る回る緑の螺旋。
螺旋王の改造か、螺旋遺伝子の気まぐれか、それとも、この世界の特殊さゆえか。
理由は誰にも分からない。
しかし、それでも螺旋は回る。

緑の光に包まれたヴィラルを、シャマルは呆然と見つめていた。
シャマルの頭の中で、ヴィラルの放った言葉が回る。
『今』、『明日』、そして『昨日』。
思い出の断片と、緑の光がぶつかり合って、彼女の頭はグルグル回る。

「……分かりません。そんなこといきなり言われても。私には……いきなり……」

シャマルは守護騎士としての生き方しか知らない。
プログラムとして何千年の経験を積んできたが、彼女の知っている生き方はそれしかない。
それをいきなり捕らわれるなと言われたところで、どうしてよいやら分からない。
飛び立ちたい、けれどどうやって飛べばよいかが分からない。

静かに、男は手を差し伸べた。

「……ヴィラルさん?」
「シャマル、俺と来い」
「……えええっ!!!???」
「『明日』が分からないなら、とりあえず、俺の明日がお前の『明日』だ。
 どこに行けば、何を目指せばいいのかもし分からないというのなら、まずは俺について来い。
 それからゆっくり探せばいい。お前の『明日』はいつもお前の前にあるんだからな」

シャマルは迷う。
ヴィラルと行くということは、一度投げ出した修羅の道にまた戻ること。
これからも人を殺し続け、もしかしたらティアの命をも奪って、それでも未来を目指す道。
ゆえに迷う。
いいのかと。自分にそんなことが許されるのかと。
他人を踏みつけてまで『明日』を目指していいものなのかと。

緑の光の中、ヴィラルはなお彼女の瞳を射抜き、強く言葉を投げかけ続ける。
彼女の迷いを見透かすように。

「戦え!シャマルッ!!
 道が分からぬのなら、『明日』を目指してよいか分からないなら、まず戦え!!
 戦いに敗れたのならお前の道は所詮そこまでだったということ!諦めるのは負けてからでいい!!
 だから戦わずに逃げるような真似はよせ!死ぬなッッ!!シャマルッッ!!」
「ヴィラルさん……」

ヴィラルはもう一度手を伸ばす。
その口元は、穏やかに、優しく笑っていた。

「私は獣人ではありません。もし仮に私達が運良く生き残れたとしても……」
「安心しろ。お前のことは三日三晩喰らいついてでも螺旋王に認めさせてやる」
「いつかは獣人であるあなたと戦う日が来るかもしれない……それでも……?」
「構わん。そうなったらいつでも正面から相手してやる」
「…………私、もしかしたら螺旋王の命を……」
「復讐もまた道だ。そうなったなら、まず俺を相手にすることになるだろうがな」
「でも……」
「心配するな!!」

「俺を誰だと思っている!!?
 都の戦士は……いや、戦士ヴィラルは、一度守ると誓った女は何があっても守り通す。
 信じろ……お前の仲間がいくら死のうと、俺だけは最後までお前の傍にいる。
 俺達の道が、ぶつからない限りな」

ヴィラルは親指を立てて自分を指し、不敵な笑みを浮かべて宣言する。
その様がどうにもおかしくて、シャマルの顔に、久方ぶりの花が咲いた。
切れた涙が照明の光を反射して、巨木の下に一瞬、小さな虹がかかる。
その虹のゲートをくぐって女は立ち上がり、優しく強く男の手を取った。

(……ごめんなさい、はやてちゃん。ごめんなさい、みんな。
 私、多分、あなた達を裏切ります。
 私、この人の言うことに賭けてみたいんです。
 守護騎士でもない、機動六課でもない。
 そんな私が、ただのシャマルがもし本当にいるのなら、その姿をこの目で見てみたいんです。
 許してくれとは言いません。むしろ、罰を与えに来てください。
 そしたら私は戦います。力の限り、私のできる精一杯で戦います。
 そうして戦って、戦って、戦い抜いて……
 もし、私が罰に打ち勝つことができたなら、そのときは、私の『明日』は許されるでしょうか、神様)

自らの意志で、自らの道を歩み始めた女の瞳には、男と同じ、螺旋の炎が灯っていた――――

【D-6/病院中庭/1日目/夜中】
【チーム:Joker&New Joker】
【ヴィラル@天元突破グレンラガン】
[状態]:全身に中ダメージ、脇腹・額に傷跡(ほぼ完治・微かな痛み)、左肩に裂傷、螺旋力覚醒
[装備]:大鉈@現実、短剣×2
[道具]:支給品一式、モネヴ・ザ・ゲイルのバルカン砲@トライガン(あと4秒連射可能、ロケット弾は一発)、
S&W M38(弾数1/5)、S&W M38の予備弾数20発、エンフィールドNO.2(弾数0/6)、短剣×9本、水鉄砲、銀玉鉄砲(銀玉×60発)、アンチ・シズマ管@ジャイアントロボ THE ANIMATION、タロットカード@金田一少年の事件簿、USBフラッシュメモリ@現実、鉄の手枷@現実
[思考]
基本:シャマルと共に最後の二人になり、螺旋王を説得して二人で優勝する。
0: シャマルと共に進む
1:道がぶつからない限りシャマルを守り抜く。その為にも、クラールヴィントと魔鏡のかけらをどうにかして手に入れたい。
2:蛇女(静留)に味わわされた屈辱を晴らしたい。
3:『クルクル』と『ケンモチ』との決着をつける。
※二アが参加している事に気づきました。
※機動六課メンバーについて正しく認識し直しました。
※なのは世界の魔法について簡単に理解しました。
※螺旋王の目的を『“一部の人間が持つ特殊な力”の研究』ではないかと考え始めました。
※本来は覚醒しないはずの螺旋力が覚醒しました。他参加者の覚醒とは様々な部分で異なる可能性があります。

【[備考]
螺旋王による改造を受けています。
①睡眠による細胞の蘇生システムは、場所と時間を問わない。
②身体能力はそのままだが、文字が読めるようにしてもらったので、名簿や地図の確認は可能。
 人間と同じように活動できるようになったのに、それが『人間に近づくこと』とは気づいていない。 単純に『実験のために、獣人の欠点を克服させてくれた』としか認識してない。


【シャマル@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
[状態]:健康、強い決意、螺旋力覚醒
[装備]:ワルサーWA2000(3/6)@現実 、ケリュケイオン@魔法少女リリカルなのはStrikerS
[道具]:支給品一式×3(地図一枚損失)、ワルサーWA2000用箱型弾倉x3、バルサミコ酢の大瓶(残り1/2)@らき☆すた、ゼオンのマント@金色のガッシュベル!!、魔鏡のかけら@金色のガッシュベル!!
暗視スコープ、首輪(クロ)、単眼鏡、マース・ヒューズの肉片サンプル
[思考]
基本1:守護騎士でもない、機動六課でもない、ただのシャマルとして生きる道を探す
基本2:1のための道が分かるまで、ヴィラルと共に最後の二人になり、螺旋王を説得して二人で優勝することを目指す。
0:ヴィラルと共に進む
1:クラールヴィントと魔鏡のかけらを手に入れたい。
2:優勝した後に螺旋王を殺す?
※ゲイボルク@Fate/stay nightをハズレ支給品だと認識しています。また、宝具という名称を知りません。
※魔力に何かしらの制限が掛けられている可能性に気付きました。
※魔鏡のかけらを何らかの魔力増幅アイテムと認識しましたが、
どうやって使用する物なのか、また全部で何枚存在しているのかはまだ理解していません。




(で、オレは一体どうしたらイインダ……?)

高嶺清麿は気まずかった。
それはもう、何と表現してよいやらさっぱりわからないくらいに気まずかった。
中庭に面した窓の一つから、一部始終を覗いていた清麿にとって、目の前の状況はあまりにも気まず過ぎた。

病院に潜伏していた謎の侵入者がいきなり中庭で首を吊り始めたときは、相当焦ったが
まさか、それが今の今まで延々と続く悪夢のプレリュードだとは、さすがの清麿も見抜けなかった。
男の乱入、痴話喧嘩、告白、仲直りという砂を吐きそうな最強コンボに、清麿の自制心は何度決壊しそうになったか分からない。

(フフフ……お前ら、今はワールド フォー アスな気分でさぞハッピーなんだろうが
 その幸せは毎日のオレのカルシウム満点生活に支えられてたことを忘れるなよ?
 正直、オレがもう少しストレスに弱い人間だったら、半狂乱で中庭に特攻して短機関銃を撃ちまくってるところだぜ……)

ヴィラルとシャマルにとって幸運なことに高嶺清麿は空気の読める男だった。


(とはいえどうしたもんか……
 話を聞いてる限り、あの二人はどうやら殺し合いに乗った人間らしい。
 そうと分かれば、こんなところからは一刻も早く脱出したいが……)

清麿は肩越しに振り向き、ロビーのソファに目を遣る。
柔らかいソファーの上で静かないびきを立てている眠り姫は、どうやらまだ全然、起きる気がないらしい。

(あの子を抱えて気づかれないように逃げる……できるか?)

彼の首筋を一筋の汗が撫でる。
正直言って、かなり危険な橋になることは間違いない。
だが、うまくやり過ごせれば、収穫は大きい。
シャマルという女が話した時空管理局の話、螺旋王の直接の手下であるヴィラルの存在、そしてあの緑に渦巻く光。
情報としてはどれも価値のあるものばかり。
持って帰ることができれば脱出に向けて、有益な糧になるに違いない。
ここは何としてでも切り抜けねばならない。

(くそっ、こんなときにラッドがいてくれれば……タイミングが悪過ぎだ!!)

清麿は一人心の中で悪態をつくと、肝心な時に空気が読めない神様を少しだけ呪った。


【D-6/総合病院エントランス/1日目/夜中】
【高嶺清麿@金色のガッシュベル!!】
[状態]:右耳欠損(ガーゼで処置済)、疲労(中)、精神疲労(中)、苦悩
[装備]:イングラムM10(9mmパラベラム弾22/32)
[道具]:支給品一式(水ボトルの1/2消費、おにぎり4つ消費)、殺し合いについての考察をまとめたメモ、
    イングラムの予備マガジン(9mmパラベラム弾32/32)×5、魔鏡の欠片@金色のガッシュベル!!、
    無限エネルギー装置@サイボーグクロちゃん、清麿の右耳
    首輪(エド)、首輪(エリオ/解体済み)、首輪(アニタ)、清麿のネームシール、
    各種治療薬、各種治療器具、各種毒物、各種毒ガス原料、各種爆発物原料、使い捨て手術用メス×14
[思考]
基本方針:螺旋王を打倒して、ゲームから脱出する
0:何とか目の前の二人をやり過ごし、ゆたかを背負って映画館に向かう
1:ゆたかが目覚めたら、シンヤのことについてきちんと話をする
2:脱出方法の研究をする(螺旋力、首輪、螺旋王、空間そのものについてなど包括的に)
3:周辺で起こっている殺し合いには、極力、関わらない(有用な情報が得られそうな場合は例外)
4:研究に必要な情報収集。とくに螺旋力について知りたい。
5:螺旋王に挑むための仲間(ガッシュ等)を集める。その過程で出る犠牲者は極力減らしたい。
[備考]
※首輪のネジを隠していたネームシールが剥がされ、またほんの少しだけネジが回っています。
※ラッドの言った『人間』というキーワードに何か引っかかるものがあるようです。

[清麿の考察]
※監視について
監視されていることは確実。方法は監視カメラのような原始的なものではなく、螺旋王の能力かオーバーテクノロジーによるもの。
参加者が監視に気づくかどうかは螺旋王にとって大事ではない。むしろそれを含め試されている可能性アリ。
※螺旋王の真の目的について
螺旋王の目的は、道楽ではない。趣旨は殺し合いではなく実験、もしくは別のなにか(各種仮説を参考)。
ゆえに、参加者の無為な死を望みはしない。首輪による爆破や、反抗分子への粛清も、よほどのことがない限りありえない。
【仮説①】【仮説②】【仮説③】をメモにまとめています。
※首輪について
螺旋状に編まれたケーブルは導火線。三つの謎の黒球は、どれか一つが爆弾。また、清麿の理解が追いつく機械ではなくオーバーテクノロジーによるもの。
ネジを回すと、螺旋王のメッセージ付きで電流が流れる。しかし、死に至るレベルではない。
上記のことから、螺旋王にとって首輪は単なる拘束器具ではなく、参加者を試す道具の一つであると推測。
螺旋王からの遠隔爆破の危険性は(たとえこちらが大々的に反逆を企てたとしても)限りなく低い。
※螺旋力について
………………………アルェー?



【小早川ゆたか@らき☆すた】
[状態]:気絶、疲労(中)、心労(大)
[装備]:COLT M16A1/M203@現実(20/20)(0/1)、コアドリル@天元突破グレンラガン
[道具]:デイバック、支給品一式、糸色望の旅立ちセット@さよなら絶望先生[遺書用の封筒が欠損]
    鴇羽舞衣のマフラー@舞-HiME、M16アサルトライフル用予備弾x20(5.56mm NATO弾)
    M203グレネードランチャー用予備弾(榴弾x6、WP発煙弾x2、照明弾x2、催涙弾x2)
[思考]
基本:元の日常へと戻れるようがんばってみる
0: ……Dボゥイさん……、……シンヤさん……。
1:Dボゥイと合流する
2:シンヤとの約束を守り、彼が自分から参加者を襲わないように気をつける
3:当面はシンヤと行動する
[備考]
※コアドリルがただのアクセサリーではないということに気がつきました
※今のところシンヤとの約束を破るつもりはありません(シンヤの事を他の参加者に必要以上は言わない、テッククリスタルを持つ参加者に譲ってくれるように交渉する)

※螺旋力覚醒


時系列順で読む



投下順で読む



222:失楽園(前編) ヴィラル 228:刻無―キズナ― 零
222:失楽園(前編) シャマル 228:刻無―キズナ― 零
222:失楽園(前編) 高嶺清麿 228:刻無―キズナ― 零
222:失楽園(前編) ラッド・ルッソ 226:root(前編)
222:失楽園(前編) 小早川ゆたか 228:刻無―キズナ― 零




| 新しいページ | 編集 | 差分 | 編集履歴 | ページ名変更 | アップロード | 検索 | ページ一覧 | タグ | RSS | ご利用ガイド | 管理者に問合せ |
@wiki - 無料レンタルウィキサービス | プライバシーポリシー