その少女、ゼロのリスタート ◆DNdG5hiFT6
二人の元から走り去ってから数分後、奈緒の姿は高速道路の上にあった。
少女は路上に座り込み、渡されたディパックを探っている
食料は没収されたものの、それ以外の名簿や地図などはディパックの中にちゃんと入っている。
更にはご丁寧に地図には禁止エリアがメモされ、名簿には死亡者の名前欄に横線が引かれている。
――無論、【ギルガメッシュ】という名前欄にも。
少女は路上に座り込み、渡されたディパックを探っている
食料は没収されたものの、それ以外の名簿や地図などはディパックの中にちゃんと入っている。
更にはご丁寧に地図には禁止エリアがメモされ、名簿には死亡者の名前欄に横線が引かれている。
――無論、【ギルガメッシュ】という名前欄にも。
何ともいえない気持ちで名簿の上を滑っていた視線は、自然と左手の異物へと向けられる。
左手に括り付けられた黒いリボン。
【不死身の柊かがみ】曰く、そこには“呪い”の力が込められているという
普通に考えれば嘘に決まっている。
そんな都合のいい力があってたまるか。
だからこのリボンをはずしても何も起こらない。そのはずだ。
左手に括り付けられた黒いリボン。
【不死身の柊かがみ】曰く、そこには“呪い”の力が込められているという
普通に考えれば嘘に決まっている。
そんな都合のいい力があってたまるか。
だからこのリボンをはずしても何も起こらない。そのはずだ。
『もう、治っちゃったけど。どうする? 次はどこに傷をつける?』
「――ッ!!」
「――ッ!!」
だが、リボンに触れた途端に奈緒の脳裏にフラッシュバックする。
千切れかけの腕、青白い神経、半分に割れた目玉……
思い出すだけでも喉から胃液がせりあがってくる凄絶な光景。
更にそれが巻き戻る様は生理的嫌悪感を抱かせた。
千切れかけの腕、青白い神経、半分に割れた目玉……
思い出すだけでも喉から胃液がせりあがってくる凄絶な光景。
更にそれが巻き戻る様は生理的嫌悪感を抱かせた。
そう、万が一呪いが本物だった場合、あれがすべて倍になって自分の身に返ってくるのだ。
そして肉体的には普通の女子中学生である奈緒ではまず間違いなく死んでしまうだろう。
いや、一瞬で死ぬならまだいい。
だがもし自分がやったように徐々に傷が刻まれれば……
そう考えた瞬間、まるで凍りついたようにリボンに触れた手は止まってしまった。
そして肉体的には普通の女子中学生である奈緒ではまず間違いなく死んでしまうだろう。
いや、一瞬で死ぬならまだいい。
だがもし自分がやったように徐々に傷が刻まれれば……
そう考えた瞬間、まるで凍りついたようにリボンに触れた手は止まってしまった。
「くそっ……ふざけんなっ! ふざけんなっ! ふざけんなっ!」
地団太を踏み、行き場のない苛立ちをアスファルトにぶつける。
足の先に投影するのはギルガメッシュを殺したアルベルトの顔。
こんな訳の分からない呪いをかけた柊かがみの顔。
そして何より、恐怖に飲まれ、動けなくなってしまった自分自身の顔。
足の先に投影するのはギルガメッシュを殺したアルベルトの顔。
こんな訳の分からない呪いをかけた柊かがみの顔。
そして何より、恐怖に飲まれ、動けなくなってしまった自分自身の顔。
「くそっ……くそっ……くそっ……!」
道路を蹴り続けてどれだけ経っただろうか
悔しくて顔を上げた先にあったのは水平線に殆ど沈んだ夕日の姿。
僅かに残った真紅が海の色を染めている。
その紅にふと、ギルガメッシュの双眸を思い出し、少し涙ぐむ。
だがその時、僅かな陽光を水面より手前で反射する“何か”を奈緒の瞳は捕えた。
悔しくて顔を上げた先にあったのは水平線に殆ど沈んだ夕日の姿。
僅かに残った真紅が海の色を染めている。
その紅にふと、ギルガメッシュの双眸を思い出し、少し涙ぐむ。
だがその時、僅かな陽光を水面より手前で反射する“何か”を奈緒の瞳は捕えた。
「あ……」
その光を見た瞬間、無意識のうちに身体が駆け出していた。
海沿いに散らばっている光を反射するもの。
見覚えのある黄金の輝き。
そこに辿り着いた奈緒はその正体を理解する。
即ち、英雄王の鎧の破片を――
海沿いに散らばっている光を反射するもの。
見覚えのある黄金の輝き。
そこに辿り着いた奈緒はその正体を理解する。
即ち、英雄王の鎧の破片を――
「ホントに……負けちゃったんだ、金ぴか」
あの無敵を絵に描いたような男が負けるなんて未だに信じられない。
だが金色の欠片は何よりも雄弁にそれが事実であると突きつけていた。
手のひらに収まるサイズのそれを拾って、スカートのポケットの中に突っ込む。
だが金色の欠片は何よりも雄弁にそれが事実であると突きつけていた。
手のひらに収まるサイズのそれを拾って、スカートのポケットの中に突っ込む。
「……油断ばっかしてるから、こうなんのよ、バカ」
『慢心せずして何が王か。それを補うのは臣下の役目よ』
『慢心せずして何が王か。それを補うのは臣下の役目よ』
いつもならそう返って来るはずの居丈高な言葉も今はもう無い。
ここに来てからずっとそばにいた、憎まれ口を叩く相手はもうこの世にいないのだ。
ここに来てからずっとそばにいた、憎まれ口を叩く相手はもうこの世にいないのだ。
あたし達はいったいどんな関係だったのだろう。
愛や友情じゃないことは確かだが、忠誠心だとかそういうものもこれっぽちも持っちゃいない。
まあ、あいつはただの臣下としか思ってなかっただろうけれど、あたし自身はあいつをどう思っていたのだろう。
愛や友情じゃないことは確かだが、忠誠心だとかそういうものもこれっぽちも持っちゃいない。
まあ、あいつはただの臣下としか思ってなかっただろうけれど、あたし自身はあいつをどう思っていたのだろう。
『あぁ、そうか。ならば、貴様の働きは我が友の代わりというわけか。
ふむ。友(エルキドゥ)の代わりというには少々心許ないが、悪くない働きであったぞ、ナオ』
ふむ。友(エルキドゥ)の代わりというには少々心許ないが、悪くない働きであったぞ、ナオ』
かつてゴミ処理場で言われた言葉を思い出した。
唯一と言ってもいい、ギルガメッシュが奈緒を認めた言葉。
その“エルキドゥ”が何処の誰で、どんな人物だったのか奈緒は知らない。
だが……その名を口にするとき、高慢な王にしては珍しい、どこか安らかな表情をしていたのだ。
そしてその代わりと言われたことが、少し嬉しかった自分がいた。
ああ、そっか、つまり――
唯一と言ってもいい、ギルガメッシュが奈緒を認めた言葉。
その“エルキドゥ”が何処の誰で、どんな人物だったのか奈緒は知らない。
だが……その名を口にするとき、高慢な王にしては珍しい、どこか安らかな表情をしていたのだ。
そしてその代わりと言われたことが、少し嬉しかった自分がいた。
ああ、そっか、つまり――
「あたしは――アイツの隣で歩きたかったんだ」
後ろに付いて回るでもなく、先導するでもなく。
平等な関係で、何も考えずに、ただ隣にいて歩いていたかったのだ。
あくまでも対等な、そう――言わば相棒として。
そのことを理解した瞬間、いきなり両目から涙が溢れ出した。
平等な関係で、何も考えずに、ただ隣にいて歩いていたかったのだ。
あくまでも対等な、そう――言わば相棒として。
そのことを理解した瞬間、いきなり両目から涙が溢れ出した。
「ぐぅ……っ、ひぐっ……」
せりあがってくる嗚咽を堪え、血が滲むほど破片を握り締める。
いつだって大事なことに気付くのは、すべてを失ってからなのだ。
いつだって大事なことに気付くのは、すべてを失ってからなのだ。
「金ぴかの……ばっかやろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
ありったけの想いを込めて、叫ぶ。
遥か遠くに行ってしまったパートナーに届けとばかりに。
遥か遠くに行ってしまったパートナーに届けとばかりに。
【D-3/高速道路上/1日目-夜】
【結城奈緒@舞-HiME】
[状態]:精神的疲労(大)、かがみにトラウマ
[装備]:左手にかがみのリボン
[道具]:ディパック、支給品一式(ただし食料は無い)、黄金の鎧のかけら
[思考]
基本思考:???
1:???
※本の中の「金色の王様」=ギルガメッシュだとまだ気付いていません。
※ドモンの発した"ガンダム"という単語と本で読んだガンダムの関連が頭の中で引っ掛かっています。
※博物館に隠されているものが『使い方次第で強者を倒せるもの』と推測しました。
※第三回放送を聞き逃しました。
※ギルガメッシュは殺されたものと思っています。
※柊かがみの『呪い』について
ま っ た く の 大 嘘 で す。
リボンを外したり、約束を守らなくても奈緒の体にはまったく変化はありません。
奈緒は真偽を疑っているものの、嘘という確信も得られないので外せずにいます。
【結城奈緒@舞-HiME】
[状態]:精神的疲労(大)、かがみにトラウマ
[装備]:左手にかがみのリボン
[道具]:ディパック、支給品一式(ただし食料は無い)、黄金の鎧のかけら
[思考]
基本思考:???
1:???
※本の中の「金色の王様」=ギルガメッシュだとまだ気付いていません。
※ドモンの発した"ガンダム"という単語と本で読んだガンダムの関連が頭の中で引っ掛かっています。
※博物館に隠されているものが『使い方次第で強者を倒せるもの』と推測しました。
※第三回放送を聞き逃しました。
※ギルガメッシュは殺されたものと思っています。
※柊かがみの『呪い』について
ま っ た く の 大 嘘 で す。
リボンを外したり、約束を守らなくても奈緒の体にはまったく変化はありません。
奈緒は真偽を疑っているものの、嘘という確信も得られないので外せずにいます。
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