※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

DEVIL MAY CRY ◆Wf0eUCE.vg



焔に揺らめく陽炎の先。
見えたのは血のように赤い軍服に蛇のような銀の皮膚。
悪鬼のように逆立った髪、その顔にかつての面影は見出せない。
それは彼女の知る彼とは、余りにもかけ離れた姿だった。
だが、彼女が彼を見間違うはずもない。
それが、悲劇と言えば悲劇だった。

「――――大佐」

それは、リザ・ホークアイが知る、ロイ・マスタングに違いなかった。
出会うべきではない二人だった。
だって、出会ったところで、なにが変わるわけでも、誰が救われるわけでもないんだから。
変わり果てた彼はもう元には戻れないし、奪われた命は戻らない。
なにも好転しない。
むしろこの出会いは、火に油を注ぐだけ。

「見るナ」
「なんで……?」
聞きたい事は山のようにあった。
それの姿はなんなのか?
本当にランサー達を襲ったのか?
ここでいったいなにをしていたのか?

「見るナ」
「どうして…………?」
けれど、どれもこれも言葉にならず、出てくるのはそんな言葉ばかりだ。
だが、今にも泣き出しそうなホークアイの声に、マスタングは思わず後ずさる。
その声は鉄槌よりも強力に脳を掻き回し。
その視線は矢尻よりも正確に心臓を射抜く。
耐え切れない。
このままでは、壊れてしまいしそうだ。

「どうして、大佐――っ!?」
「私ヲ――――見ルなァあッ!!」

全てを拒むように焔が放たれる。
カートリッジに込められた魔力を錬成した焔。
空気を錬成する予備動作も、着火の火種を用意する必要すらない。
賢者の石と同価に近いまさに魔法の焔だ。

全てを飲み込むような炎の渦。
灼熱が口を開けてホークアイに迫る。
不意をつかれたホークアイは動くことができない。
いや、そもそも焔の壁には躱わす隙間がない。
だが、彼女を飲み込むと思われた焔は、流星の如く割り込んできた影に弾き飛ばされた。

二人の間に入り込むように飛び込んできたスバルは展開したプロテクションを解除する。
そして、そのまま目の前のマスタングに向けて涙ながらに叫んだ。

「マスタングさん。なんで、あなたが……!!」
先ほどから幾度と聞かされる同じ言葉。
だが、この少女の言葉には、マスタングの心はなにも感じない。
少女の声も涙は、固い殻に覆われた心には響かない。
だが、もし、僅かでも響くとしたならば、

「何で……何で、あなたがヒューズさん達を殺したんですか!?」
「――――え?」

その内容位のものだろう。

スバルの問いかけにマスタングの動きが止まる。
だが、それ以上に衝撃を受けたのはホークアイのほうだった。
その言葉は余りにも予想外の言葉だった。
正直理解できなかったと言ってもいい。
なんせそんな可能性は彼女の頭の片隅にもなかったんだから。
そんな事があるはずがない。
どんな姿になっても、どんな事があっても、そんな事があるはずがない。

「大、佐――?」
否定してくれと、そう願いを込めた声。
だが、無情にもマスタングはかぶりを振って、その声を拒絶する。

「聞いテノ通りダ、ヒューズもアルフォンスも私ガ殺シた」
「嘘」
「そレダけじゃナい、名モ知ラぬ少女も殺シタし、そコニ倒れてイる男モ、今シガた私ガ殺しタ」
「嘘です!」
「本当ダ。君の知ッテいるロイ・マスタングは死ンダ。
 私ハモうロイ・マスタングではナイ。こコニいルのハタだノ、悪魔ダ」

言葉にするたび、マスタングの胸が軋みを上げる。
胸が痛い。
胸が痛い。
胸が痛い。
痛いんでいるのは捨てたはずの”ロイ・マスタング”の心だ。
ギチギチと脳が歪んでゆく。
抗いようがない。
抗う気すら起きない。
悪魔に意識が侵食されロイ・マスタングが消えてゆく。
それでもいい。
それで、この痛みが消えるのならば”ロイ・マスタング”など消えてしまえばいい。

「サあ、お話ハ、オ終イ、ダ。
 地球ニとッテ悪害デアル、人類ハスベテ、殺ス!!」
告げるその目に正気はない。
もう、そこにロイ・マスタングはいなかった。
そこにいるのは地球浄化のために人類抹殺を使命とした、悪魔だけだ。

「…………クッ」
涙を流しながら、ホークアイは手にしたガトリングを構える。
彼は彼であり、もう彼ではなかった。
目の前にいるのは紛れもなく倒すべき”敵”だった。

彼女とて鷹の目と恐れられた狙撃手だ、この距離で外す道理がない。
いくら涙で標的の姿が霞もうとも、撃てば当たる。
だというのに、引き金がピクリとも動かない。
さっきから、撃とうとしているのに。
引き金が固定されてしまったんじゃないかと疑うほど、酷く重い。
銃は剣やナイフと違って 人の死にゆく感触が手に残らない。
引き金を引くだけで、人の命を奪いとれる。
なら引き金の重さはこれから奪う命の重さだ。
きっと、この重さは彼の命の重さなのだろう。
そう思ったところで、今さらなにをと自嘲する。
イシュバールでは散々、奪い続けたくせに。
今更になってそんな事を言い出すだなんて酷い矛盾だ。

そんなホークアイの躊躇いなど意に介さず悪魔が動いた。
近くにいたスバルを標的に跳躍する。
デビルガンダム細胞によって強化されたその脚力はスバルの反応を超えていた。
あっさりとスバルの間合いに入ったマスタングの右脚が消える。
蹴りが放たれたのだと、スバルが気付いたのは吹き飛ばされた後だった。
吹き飛ばされたスバルは勢いよくデパートの壁に叩き付けられた。
一つ。二つ。三つ。
そこに間髪いれず指鳴りと共に追撃の焔が叩きこまれる。
爆砕された石壁が崩れ落ち、爆音と共に瓦礫が倒れたスバルの上に降り注ぐ。
躱わしようもなく、スバルは瓦礫の下に沈んで行った。

速やかに一人を片付けた悪魔は次の標的へと向き直る。
あの悪魔がホークアイの元までにたどり着くまで刹那の時もかかるまい。
だが、既に銃の照準は合わせてあるし、安全装置もない。
後は、引き金を引くだけだ。
どう考えてもこちらのほうが一手早い。

そんな道理は知らぬと、悪魔が迫る。
懐に入られてしまえば狙撃手は死を覚悟すべきだ。
近づかれたら終わり。
その前に彼女は覚悟しなければならない。

彼が間違えたのならば、背中を撃つのが補佐官である自分の義務だ。
そして、今がその時なのだ。
彼女は彼を撃つ覚悟を決めた。
迫る悪魔が銃口を遮るように右腕を差し出すが遅い。

「――――さよなら、大佐」

別れを告げて、彼女は重い引き金を引いた。

――――だが、銃弾が放たれることはなかった。
引き金は動かなかった。
それは精神的なものではない。
確かに彼女は渾身の力を込めて引き金を引いた。
たが、本当に物理的な理由で引き金は固定されていた。

彼女が引き金を引くより一瞬早く、マスタングの指先がガトリングに触れていた。
ただそれだけの事で、ガトリングはマスタングの支配下に置かれてしまったのだ。
そのまま侵食が始まり、右腕と一体化してゆくガトリング。

右腕に近代兵器。
左腕に魔法兵器。
それを繰るは錬金術。
どうしようもないほど進化を続ける悪魔。
どうしようもないほど、人間からかけ離れてゆく。

使い物にならない回転式機関砲に早々に見切りをつけ、ホークアイは後方に引きながら懐から取り出したダーツを投擲する。
相手は躱わす気すらないのか、両目と喉の三点を狙ったその矢尻は正確に直撃する。
両目に受けた衝撃にマスタングは顔面を仰け反らす。
だが、その右腕だけが別の生き物のように、正確にホークアイを見つめていた。

バラララララ。


何の感情も無い音が響く。
右腕の回転式機関砲が火を吹いて女を肉片に変えてゆく。
自己修復に従い、悪魔の両目に突き刺さったダーツが落ちた。
その傷跡から零れ落ちる血の涙。
悪魔は血に濡れた眼で変わり果ててゆく女を見つめて。
そしてそのまま、その亡骸に喰らいついた。

リザ・ホークアイは軍人であれどただの人間だ。
喰らった所でたいした足しにもならないだろう。
力を求めて喰らうのならば、近くに転がっているはずの九大天王である戴宗の死体を喰らうべきだ。
それでも、真っ先に彼女を喰らったのは、彼女を求めるロイ・マスタングの残り香だったのか。


ああ、喰われてゆく。

消え行きそうな意識の中リザ・ホークアイはそう感じていた。
下半身はグチャグチャになってしまったが、それでもまだ彼女は生きている。
そして、生きたまま捕食されてゆく感覚を味わう。
不思議と、痛みはない。
きっともう麻痺してしまったのだろう。

霞む視界で見上げて見れば、そこで彼が泣いていた。
そう言えば、それなりに長い付きあいだが、彼の涙は初めて見るなと、ボンヤリとした頭でそんな事を思う。
辛い時こそ背中しか見せない、そんな人だから、それも仕方ないことなのかもしれない。

最後の力で腕を動かす。
震えるうでは動かすだけで大変だったけど何とか彼の頬に届いた。
そのまま泣く子をあやすような優しい手で涙を拭う。
そして、腕の力と共に、その意識を手放した。

「ウア―――アアアァァァ―――アァァァ――!!」

女を喰らいながら悪魔が叫ぶ。
それは辺りに響く慟哭の声だった。



瓦礫の下でスバルは泣き声を聞いていた。
悪魔の呻き声は、まるで助けを求めて泣き喚く童の声だ。
いや、事実そうなのだろう。
あの悪魔は助けを求めて泣いているのだ。

だけど、彼女では彼を救えない。
スバルは弱い。
いや、一般の観点から見れば十分に強いのだろうが、目の前の敵に比べれば話にならない程弱い。
弱さでは人は救えない。
誰かを救えるのは強さだけだ。
躓いた誰かを支えるには、その誰かを支える力が必要なように、誰かを救うには、誰か以上の力が必要だった。

彼は強い。
余りにも強い。
元よりロマ・スタングは人間兵器である国家錬金術師だ。
一人で戦況をひっくり返せるその力は憲兵数十人にも匹敵するだろう。
そして埋め込まれたDG細胞によって強化された身体能力を得て、生身での超人的な動きを可能とした。
更に、デビルガンダム三大理論の一つ『自己再生』により、いかなる傷も回復され。
同じく三大理論の一つ『自己進化』により魔法という新たな理を理解し、近代兵器まで取り込み進化した。
その力は、それこそ螺旋王をも上回るだろう。

それ故に、強すぎる彼は、きっと、誰にも救えない。

彼はこのまま殺すためだけに生き続けるのだろう。
自分のために人を殺すのならばそれは殺人鬼だ。
生きるために殺すならそれは獣だ。
だが、殺すために生きるのならば、それは人ではない、獣でもない。
それは化け物と呼ばれるモノだ。
彼は本物の化け物に成り果てた。
成ってしまった以上、果てるまで生きつづけるしかない。
だが、ここまで来ては、もう死ぬことも出来ない。
ならば、彼は救われぬまま、一人で泣き続けるのだろうか?
永遠に。

救われぬまま生き続ける化け物に。
望まれぬまま殺されてゆく人々。
そして、誰も救えない自分。
己の無力にスバルは涙した。
絶望に動けなくなりそうになる


だが、それでも、ここで挫けるわけには行かなかった。
だって、ここで挫けたら、すべて無駄になってしまう。
自分を助けてくれた人たちの残した想いが、
彼を助けようとして散っていた人たちの想いが、
何もかも無駄になってしまう。
そんな訳には行かない。
ヒューズが、アルが、こなたが、戴宗が、リザが。
これまでに積み重ねてきた想いを――――

「――――無駄にして、堪るかぁ!」

叫びながら、瓦礫を吹き飛ばして立ち上がる。
歯を食い縛って自分の弱さに唾を吐いた。
涙を堪えながら諦めを踏破する。
力が足りない?
誰も救えない?
知った事か。
そんな道理は蹴っ飛ばす。
やる事なんて決まってる。
既に覚悟は完了した。
なんとしても、この悪魔はここで祓う。
悲しみしか生まないこの悪魔はここで止める。

決意を込めスバルは構えを取って目の前の悪魔を睨み付けた。
動きに気付いた悪魔がその視線を睨み返す。
恐れはない、諦めもない。
あるのはただ、勝利するための強い意志。

ディバインバスターはこの相手には通用しない。
まして、リボルバーナックルが失われた今ならなおの事だろう。
同じくリボルバーナックルがない以上、リボルバーシュートも使用できない。
相棒であるマッハキャリバーもいない今、機動力で撹乱することも不可だ。
今の自分に残された武器は戦闘機人の固有能力IS『振動破砕』のみ。
振動波を叩きこみ、共振現象によりいかなる防御も無効化し対象を内部まで粉砕するこの攻撃はこの相手に最も有効だろう。
だが、迂闊に触れてしまえば、最悪取り込まれる可能性がある。
故に、接触兵器である『振動破砕』は使えない。

考えれば考えるほど状況は最悪だ。
格闘戦を中心とするスバルにとっては最悪の敵と言える。

せめてデバイスが必要だ。
いや、最悪、デバイスでなくてもいい。
この敵を殲すには何か、間接的でも『振動破砕』を叩き込める何かが必要となる。
地力が違う以上、長期戦は不利。
できるなら一撃で決めれる、強力なのがいい。

その時だった。
誰かのバックから零れ落ちたのか。
瓦礫の隙間に転がる、膨大な魔力を放ちながらゆっくりと回転する赤い剣が目に入ったのは――――。



――唐突だが、英雄王ギルガメッシュは最強の英霊である。
征服王イスカンダル、騎士王アルトリア、湖の騎士ランスロット、ギリシャ最大の英雄ヘラクレス、クランの番犬クーフーリン、輝く貌のディルムッド、神代の魔女メディア....ets
夜空に輝く綺羅星の如く、伝承の数だけ存在する英雄たち。
その数多の英霊の頂点に君臨する、世界最古の英雄王ギルガメッシュ。
人間性はともかくとして、権力、財力、武力、知力、精神力あらゆる点において比類ない最強の存在だ。
少なくとも、英霊というカテゴリーにおいて、この英雄王を超える者は一人とて存在しないだろう。
この世に存在するすべての財宝の原典を所有し、その無限の宝具を例外なく扱うその器の大きさは驚異だ。
まして『王の財宝:』を用いて宝具を弾丸として射出する最強の魔弾の射手である。並の英霊では近づくことすら適うまい。
だが、アーサー王の技量を持ってすれば、クーフーリンの俊敏性を持ってすれば、ヘラクレスの強靭な肉体を持ってすれば、イスカンダルの宝具を持ってすれば、対抗する事も十分に可能だろう。
では、何故数多の英霊の中で、英雄王として確固たる頂点に君臨しているのか?

――それは、乖離剣エアの存在を置いて他ならないだろう。


スバルの手にしたそれは、『剣』と呼ぶには余りにも異質な『剣』だった。
切っ先には螺旋に捻れた鈍い刃。
刀身に刃はなく、存在するのは連なった三つの円柱。
余りにも『剣』の常識を逸脱した『剣』。
それも当然である。
この剣が生まれたのは『剣』と言う概念が存在する遥か以前、この星の原始の時代。
世界があらゆる生命を許さぬ溶岩とガスに満ち溢れた地獄だった頃に、人在らざる者に生み出された神造兵器。
周知の形状であるはずがない。

それが何であるかはスバルは知らない。
だが、これが強力すぎる程の、魔術道具である事は疑う余地も無い。

「ぅうおおおおおおおお!!」
裂帛の気合と共に剣に魔力を通す。
とたん、手にした乖離剣が軋みをあげた。
劈くような風きり音と共に、生まれるのは余りにも暴力的な魔力の胎動。
一回転ごとに速く、より早く、なお疾く。
螺旋を描いて三つの円柱が互い違いの方向に回転する。
生まれる暴風に辺りのモノが次々と吹き飛ばされてゆく。
荒れ狂う暴風の前に悪魔もその動きを止められる。

全てを持っていかれるのではないか、と思うほど魔力が吸い取られてゆく。
全身を猛り狂う魔力と血液。
それでも足りない。
まだ足りない。
目の前の悪魔を祓うにはこの程度では、とても。
暴走寸前の乖離剣を無理矢理に押さえ込んで、なおも魔力を剣に込める。
そして、はちきれんばかりの声で、叫ぶ。

「一撃、必滅――――!」

スバルの生きる世界には、ミッド式、ベルカ式などと様々な魔術形体が存在するが、すべての魔術形体に共通する点が一つある。
それはデバイスの存在だ。
インテリジェントデバイス、ストレージデバイス、アームドデバイス。
種類はあれど扱いの基本は同じだ。

これでも彼女はその道のプロフェッショナル、時空管理局。機動六課の一員だ。
魔術道具(デバイス)の扱いならば、彼女に一日の長がある。
ならば、操りきれないはずがない。
思い返されるのは苦しくも輝かしい特訓の日々。
毎日クタクタになるまで続けたあの日々が、彼女を裏切るはずがない。

「天地乖離す(エヌマ)――――」

自然と脳裏に浮かぶ真名を叫ぶ。
暴走する魔力が赤い渦を巻いて流動する。
乖離剣に魔力を込めながらスバルはISを発動させた。
次の瞬間に生まれた振動波はスバルの右腕から乖離剣に伝わって行く。
剣を伝わり波紋のように振動が赤渦を奔る。
超振する魔力の回転は世界を巻き込みながら震撼する。

乖離剣と振動破砕。
極悪なまでのこの組み合わせに、更に緑の螺旋が加わる。
それは、諦めぬ心が生み出した螺旋の輝きだった。
振動しながら交じり合う赤と緑の螺旋の渦。
渦巻く力の螺旋は、瞬く銀河のようだ。
遥かな銀河に煌くは、全てを破壊し創造する、天地を開闢する星の輝き。

「――――開闢の星(エリシュ)!!」

剣の真名と共に放たれた――――それは、天地を切り裂く一撃だった。

超振動を帯びた暴風が全てを薙ぎ払う。
世界ごと吹き飛ばすのではないか危惧する程の衝撃だった。
全てを消し飛ばす爆音は世界を揺らしながら鳴り響く。
凄まじいまでの極光は世界を白一色に塗り替えた。
森羅万象あらゆる存在を許さぬ破壊の渦を前に、大気すらその原型を留めることは許されない。
けたたましく吹き荒れる暴風は、雄たけびを上げながら鬩ぎ合い、空間を断絶するような風圧の層を作り上げた。

かつて一撃で世界を切り裂き天地を創造した乖離剣。
その一撃を前に、それまでの世にあるすべての理は立ち消え、すべてはその剣が生み出す新たな理に塗り替えられる。
そう、すべて。
すべてだ。
燃え盛る炎も。崩れ落ちる瓦礫も。
人も、悪魔も。生者も、死者も。敵も、味方も。
彼女自身も。
すべて――――。



スバルは目の前の男を見つめていた。
白一色な世界の中で、形があるのは自分と男だけだった。
目を潰すほどの閃光により、その表情はよくわからない。
怒っているようにも見えるし、泣いているようにも見える。
かと思えば、酷く穏やかなようにも見える。
ただ、その口元が動いたのだけはわかった。
こちらに向かって何かを言っているようだが、声は爆音にかき消されなにを言っているかはわからない。
いや、そもそも鼓膜が無事かも怪しい。
意味のない呻き声だろうか?
別れの言葉だろうか?
それとも、何か別の言葉だろうか?
恨み言じゃなければいいのだが。

全てが光に融けるように消えてゆく。
自らを愛し、自らが愛する者ばかりを殺し続けた悲しい悪魔が消えてゆく。
それで、彼は救われたのだろうか?
不器用な自分にはこんな手の差し伸べ方しか出来なかったけど、そんなでも彼が少しでも救くわれたのならいいのだが。
こんな助けられてばかりの自分でも、誰かを救えたのならいいのだが。

切に、そう願う。


乖離剣の嘶きが止まり、破滅が締めくくられる。
同時に世界を染め上げた白い閃光が消滅し、変わりに焔のように赤い夕日が世界を包む。
そこに残ったのはこの破壊を創造した赤い剣のみ。
破壊の残骸すら無い。
音も無い。
聞こえるのはただ風の音。

悪魔の泣き声は、もう聞こえない。


【リザ・ホークアイ@鋼の錬金術師 死亡】
【ロイ・マスタング@鋼の錬金術師 死亡】
【スバル・ナカジマ@魔法少女リリカルなのはStrikerS 死亡】

※デパートは消滅しました。
※周囲にあった死体や支給品はほとんど消滅しましたが、発動前の突風に吹き飛ばされて残っているモノがあるかもしれません。
※振動螺旋エヌマエリシュの衝撃が辺りに広がりました。どの程度の規模の影響を与えたかは不明です。




時系列順で読む


投下順で読む



189:焔のさだめ スバル・ナカジマ
189:焔のさだめ ロイ・マスタング
189:焔のさだめ リザ・ホークアイ




| 新しいページ | 編集 | 差分 | 編集履歴 | ページ名変更 | アップロード | 検索 | ページ一覧 | タグ | RSS | ご利用ガイド | 管理者に問合せ |
@wiki - 無料レンタルウィキサービス | プライバシーポリシー