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THE OPENING ◆P2vcbk2T1w



 闇が広がっている。
 漆黒の闇だ。

 俺は闇が好きだ。
 闇は、自分を、自分の過去を、自分の宿命を、全て飲み込んでくれる。
 闇の中に生きる俺に、闇だけが俺に安息を提供してくれた。

 俺は、まどろみの中、夢と現の境を漂っているのだと思っていた。
 その声を聞くまでは。

「そこに居るのかい、兄さん」
「……シンヤか」
 朦朧としていた意識が、急激に覚醒する。


 徐々に目が慣れてくると、周囲の様子がおぼろげに浮かび上がってくる。
 どうやら、此処は広い部屋の中のようだ。
 そして、この場には俺とシンヤ――テッカマンブレードとテッカマンエビルの他にも、多数の人間が居る様だった。
 最初は衣擦れの音と呼吸音が、そして段々と人の声――不安げな会話音が場を満たす。
 遠くでなにやら怒鳴り散らす声も聞こえるようだ。どうやらここは相当に広い空間のようだ。
 だが、それ以上は分からない。
 それらのことに気を裂く余裕は、俺には無かった。
 最も危険で最も重大な存在は、既に俺の目の前に立っているのだから。
「コレは何だ? いつの間に俺を連れてきた? これもお前達ラダムの仕業か?」
「フフ、僕達にこんな真似が出来るのならば、とっくの昔に実行に移しているさ。兄さんを殺すためにね……」
 その言葉には妙な説得力があった。
 だが、ラダムの仕業で無いならば、一体これは……!?

 そう思った、次の瞬間だった。

 突然、目も眩むほどの光がその場を満たした。
 地面が、円柱状のその部屋の壁が眩い光を放っている。渦巻きのような模様で……
「こ……これは!?」
「兄さん、あそこだ!」
 シンヤが示すその先には……一つの椅子が、それも玉座と呼ぶべき大層な代物が聳え立っていた。
 そこに鎮座する一人の男を誇示するかのように。


「ようこそ諸君。初対面のものもそうでないものも居るようだが、一応名乗っておこう。
我が名は、螺旋王ロージェノム。覚えたければ覚えておくが良い」
 男は低い、威圧感の溢れる声でそう名乗った。

「螺旋王? ロージェノム……?」
「何者だ……?」
 ざわざわと、場が乱れる。それと同時に、殺気が周囲から溢れ出した。
 どうやらこの場に居る人間の中には、血の気の多い者が多いようだ。
 しかし、当の螺旋王は、全く動じる素振りも無く、言葉を紡いでゆく。

「だが、名前などどうでも良い事だ。大切なことは別にある。
よく聞くがいい。
重要な事は、お前たちは今から全員で、最後の一人になるまで殺し合うこと。
そして、その一人以外は、全員死ぬ、ということだけだ」

「!?」
 意味不明で不穏な、だが有無を言わせぬその宣言が部屋中に木霊する。
 周囲の混乱がピークに達してゆく。
 そしてその混乱をさらに助長するかのように、螺旋王の言葉は続く。
「私は優秀な個体、優秀な螺旋遺伝子を求めている。
これは言わばそのための実験。お前達は、それを見定める上でのモルモットだ。
手段は問わん。貴様らの中から、最も優秀な一人を選び出せ。
生き残りゲームだとでも考えて貰って結構だ。
そう、ゲームだ。命を懸けたな……」

「そこまでにしておくんだな、思い上がった虫ケラめ!」
 突如、何物かの声が響いた。
 いや、俺はこの声を知っている。この声は――
「お前は――モロトフ!!」
 そう、ラダムのテッカマンにして指揮官。
 憎むべき俺の宿敵の一人、テッカマンランス・モロトフだ。
「ほう、貴様も居たのか、出来損ないのブレード。
好都合だ。貴様もあの世に送ってやろう……この虫ケラの次にな……!」
 そう言うと共に、モロトフはロージェノムの元へと向かう。
 他の人間達も、モロトフに続かんとばかりにいきり立っている者が多数居るようだ。
 早くもロージェノムとやらの計画は破綻しかかっているかに見えた。
 だが……

「ふむ、異星生命体に改造されし螺旋生命体か。
しかしサンプルは既に2体居る。
このまま一参加者の目に余る行動を見過ごすのも実験の妨げになるな……」
 当の螺旋王は、さも当然とばかりに落ち着き払っている。
 さながら。これも計算の内と言わんばかりに。
「まあよかろう。特別に貴様はこの螺旋王ロージェノムが相手をしてやろう。かかってくるが良い。
ああ、そういえば貴様達はコレが無ければ話にならんのだったな? そら、くれてやる」
 そう言うと、ロージェノムはモロトフにあるものを投げよこした。

 この光煌く結晶は……テッククリスタル!
 そう、この螺旋王とやらは、わざわざ没収していたテッカマンにとっての核とも言える存在を、敢えてその持ち主へと返したのだ。
 そして、ゆっくりと立ち上がるロージェノムの仕草は、面倒な仕事に望むかのようにすら見える。
 絶対的な優位を確信した者の見せる、余裕だった。
 そして、それがモロトフの苛立ちを臨界点に押し上げる。

「……言いたいことはそれだけか? 
良いだろう! 宇宙の塵となって自らの過ちを悔い改めるが良い!! テーック、セッターーー!!」
 次の瞬間、完全に臨戦態勢となったテッカマンランスが、ロージェノムへ向かって突進する。
「死ねぇ――――ッ!!」
 そして、激しい衝撃音が室内を轟く。

 しかし――
「ちぃッ! バリアかッ!!」
 ランスの攻撃は、ロージェノムの目前で、淡い緑の壁によって遮られ、届かない。
「螺旋力を利用したバリアーだ。その程度の攻撃では私には指一本触れられんぞ?」
「ほざけッ、ならばコレでどうだッ!!!」
 そういうや否や、ランスのプロテクターが開き……不味いッ!!
「危ないッ!! 全員伏せろ―――ッ!!」

「ボルテッカァァァ―――――ッ!!!」

 ランスの絶叫と共に、凄まじいまでの爆音と衝撃が室内に充満する。
 砕けた床や壁の破片が、もうもうと立ち込める。
「クッ、これでは他の人間に被害が……!」
「いや、そうでもないみたいだよ兄さん」
「何!?」
 シンヤに言われて改めて周りを窺う。
 確かに、凄まじい衝撃の割には、周囲の人間は皆無事……それも、無傷に近いようだ。
「馬鹿な……あの爆発に巻き込まれていながら……!?」
「それだけ、あのバリアが高性能ということなんじゃないかな?」
「……では、まさか……!」

 土煙が晴れてゆく。それと共に、ランスの姿が浮かび上がる。
「フッ……如何に強固なバリアと言えども、この至近距離からボルテッカを食らえば……」
 ランスの周囲は、ボルテッカの軌跡が綺麗に抉り取られているようだった。
 そして、その地面を抉る傷跡の先には……
「……何ッ!?」
 螺旋王ロージェノムが、そこに居た。
 先ほどと寸分たがわぬ、傷一つ無い姿で。
「この程度とはな。片腹痛いわッ!!」
「バカな――ぐはァッ!」
 嗚咽と同時に、鈍い炸裂音が弾ける。
 そして次の瞬間には、ランスの体は遥か後方の壁中へとめり込んでいた。
 ロージェノムの一撃……そう、唯一撃の正拳が、ランスを弾き飛ばしたのだ。

「見ての通りだ。お前たちが足掻いたところで我が螺旋力の前では無力そのもの。
そして――もう一つ、首輪についても説明しておいてやろう。貴様たちの首についているそれだ」
「――!」
 言われて始めて気付くほどに、その首輪は違和感なく、まるでそれが当然かのように、シンヤの首にも、俺自身の首にも嵌っていた。
 一体、いつの間に嵌められたというのか?
「その首輪には、特殊な反物質――爆薬が詰まっている。
先ほどの男のように私に歯向かったり、実験に支障を来たす様な行動を取れば――」
 その刹那。

 壁にめり込むランスの体――その首が、閃光と共に爆発した。

「こうなる。
まあ、爆発自体は内向的なものだから他への影響は少ないが、本人は確実に生命活動を停止するだろうな。
それと、実験の円滑な進行の為に、禁止区域に侵入してもこの首輪は爆発する。肝に銘じておくことだ。
そして――」

 淡々と、その『実験』についての説明を続けるロージェノムの言葉を遮るものは、最早存在しなかった。
 その時には、もう既にロージェノムの声だけが、その場を支配していた。
 爆煙の中に残ったランス――モロトフの変わり果てた姿が、そうさせていたのだ。
「貴様らの中には、先ほどの男のように私に挑みたいものも居るだろうが……生憎と、貴様ら全員を相手にしていては実験にならん。
まあ、最後の一人に残ったならば、また私が直々に相手をしてやろう。爆弾だのバリアだのの小道具を抜きにな。
それだけではない。栄誉ある最後の一人は、私にとっても貴重な個体だ。
その者が望むことを何でも叶えてやることにする。億万長者にでも不老不死にでも、なんにでもしてやろう。
その栄冠を得るために、殺し合え。死力を尽くしてな……!」

 その場の人々は、怒りとも、悲しみとも、諦めともつかない混沌とした感情で沸きあがっていた。
 だが、目の前の男――シンヤの感情は、その中でも一際異質で、その向けられる先も異なっていた。

「望みを叶える……? フフ、あの男は何を言っているのやら。僕の望みは、もう殆ど適ったも同然なのにね。
兄さんと命を賭けて戦える、このステージを用意してくれただけで僕はもう満足さ。
さあ、兄さん。始めようか?
僕が必ず兄さんを殺してあげるよ……」

 目も眩むような闇が、その空間を侵食してゆく。
 ドス黒い、憎しみという忌むべき闇が……









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外伝:螺旋のはじまり ロージェノム 097:第一回放送
Dボゥイ 002:この血塗られた指先で救えるのなら
相羽シンヤ 040:紙は舞い降りた
モロトフ






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