疑う剣持 ◆DNdG5hiFT6
(な……なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁ!!)
剣持勇は呆然としていた。
本に書いてあった文字を何の気なしに読んだ瞬間、ガッシュの口から電撃が放たれ海面を爆発させたのだ。
柩木スザクとの接触によって、自分とは世界から集められたことを理解していたつもりの剣持だったが、
まさか口から電撃をぶっ放す子供がいるとは流石に想定の範囲外であった。
いきなり突きつけられた非現実に剣持は呆然と未だ泡立つ海面を眺めることしか出来ないでいた。
本に書いてあった文字を何の気なしに読んだ瞬間、ガッシュの口から電撃が放たれ海面を爆発させたのだ。
柩木スザクとの接触によって、自分とは世界から集められたことを理解していたつもりの剣持だったが、
まさか口から電撃をぶっ放す子供がいるとは流石に想定の範囲外であった。
いきなり突きつけられた非現実に剣持は呆然と未だ泡立つ海面を眺めることしか出来ないでいた。
(ウ、ウヌウ……どういうことなのだ、これは!?)
ガッシュ・ベルは困惑していた。
ガッシュの魔本は世界中でただ一人、パートナーである清麿にしか読めないはずのものだ。
だが事実、剣持は本を読み、ザケルは発動した。
本来ならありえない事態に、ガッシュもまた泡立つ海面を眺めるしか出来ないでいた。
ガッシュの魔本は世界中でただ一人、パートナーである清麿にしか読めないはずのものだ。
だが事実、剣持は本を読み、ザケルは発動した。
本来ならありえない事態に、ガッシュもまた泡立つ海面を眺めるしか出来ないでいた。
「「………………」」
無言のまま、二人の視線が絡み合う。
見知った隣人が一瞬にして正体不明の宇宙人へと変わってしまったような感覚。
互いに微妙な疑心暗鬼の渦の中、その均衡を互いに崩せないまま早10分が経とうとしていた。
見知った隣人が一瞬にして正体不明の宇宙人へと変わってしまったような感覚。
互いに微妙な疑心暗鬼の渦の中、その均衡を互いに崩せないまま早10分が経とうとしていた。
――ええい、このままでは埒が明かん!
状況を打破するべく、まず動いたのは剣持のほうであった。
混乱する頭を無理やり動かし、目の前の少年から事情を聞かねばならない
しかし――少なくとも剣持は――口から電撃を出す子供に対して事情聴取を行ったことはない。
『何故、雷を口から撃てるのか?』、『この赤い本は何なのか?』など聴きたいことは沢山有る。
だがその根底にあるのはたった一つの問題だ。
だからストレートにこう訊くしかないだろう。
状況を打破するべく、まず動いたのは剣持のほうであった。
混乱する頭を無理やり動かし、目の前の少年から事情を聞かねばならない
しかし――少なくとも剣持は――口から電撃を出す子供に対して事情聴取を行ったことはない。
『何故、雷を口から撃てるのか?』、『この赤い本は何なのか?』など聴きたいことは沢山有る。
だがその根底にあるのはたった一つの問題だ。
だからストレートにこう訊くしかないだろう。
「……ガッシュ、お前はいったい何者なんだ?」
* * *
そして数10分後、ガッシュの口から語られた物語に剣持は頭を抱えた。
魔界、術、王様を決める戦い……
枢木スザクとの接触によって異世界については認識していたものの、これはまたえらくファンタジーな話だ。
クルクル君のいた世界がSFなら、ガッシュのいた世界はファンタジー寄りらしい。
そしてガッシュが問題としているのは『世界で一人しかいないパートナーしか読めないはずの本が自分にも読めてしまった』ということらしい。
自慢ではないが剣持は現場からの叩き上げで、座学には強くなく簡単な英語でさえ正直なところ自信が無い。
だがこの本に書かれているものは、明らかに日本語で書かれていないのに読めるのだ。
それを何故読めるかと聞かれても答えようが無い。というかむしろ剣持のほうが理由を聞きたいぐらいだ。
枢木スザクとの接触によって異世界については認識していたものの、これはまたえらくファンタジーな話だ。
クルクル君のいた世界がSFなら、ガッシュのいた世界はファンタジー寄りらしい。
そしてガッシュが問題としているのは『世界で一人しかいないパートナーしか読めないはずの本が自分にも読めてしまった』ということらしい。
自慢ではないが剣持は現場からの叩き上げで、座学には強くなく簡単な英語でさえ正直なところ自信が無い。
だがこの本に書かれているものは、明らかに日本語で書かれていないのに読めるのだ。
それを何故読めるかと聞かれても答えようが無い。というかむしろ剣持のほうが理由を聞きたいぐらいだ。
これを解決するには文殊様の知恵が必要な気がしたが、人間の身でその域に到達するには一人ほど人数が足りない。
そんな益体のないことを考えていたからかもしれない。彼らの前に知恵を持った3人目が現れたのは。
――ただしそれは剣持が最も会いたくない人物で、文殊様のイメージからはかけ離れた人物だったが。
そんな益体のないことを考えていたからかもしれない。彼らの前に知恵を持った3人目が現れたのは。
――ただしそれは剣持が最も会いたくない人物で、文殊様のイメージからはかけ離れた人物だったが。
「まったく、あなた達は次から次へと問題を起こしてくれますね」
笑みを浮かべながらタラップを一歩一歩優雅に降りる男。
薄暗い船内と違い、今は天高く輝く太陽が彼を照らしているが、彼の持つ闇色の雰囲気は薄まる気がしない。
それは彼を犯罪者という色眼鏡で見ているせいかも知れない。
だが目の前の男――高遠遙一は今までにそれだけのことをやってのけているのだ。
自分には金田一や明智のような頭脳はない。
だからせめて騙されないように、一切友好的な雰囲気は出さずに剣持は口を開いた。
薄暗い船内と違い、今は天高く輝く太陽が彼を照らしているが、彼の持つ闇色の雰囲気は薄まる気がしない。
それは彼を犯罪者という色眼鏡で見ているせいかも知れない。
だが目の前の男――高遠遙一は今までにそれだけのことをやってのけているのだ。
自分には金田一や明智のような頭脳はない。
だからせめて騙されないように、一切友好的な雰囲気は出さずに剣持は口を開いた。
「……貴様、何しに出てきた?」
無駄とは知りつつも凄みを利かせる剣持。
日々凶悪犯罪者達を震え上がらせるそれも、高遠にとってはそよ風同然らしい。
眉一つ動かさずに剣持たちへと近づいてくる。
日々凶悪犯罪者達を震え上がらせるそれも、高遠にとってはそよ風同然らしい。
眉一つ動かさずに剣持たちへと近づいてくる。
「“何しに出てきた?”とは奇妙なことを仰いますね。決まっているでしょう?
謎の爆発が起こってから約30分……危険かどうか分かりかねて様子を見ていましたが、
二人とも微動だにしないのでこうして痺れを切らせてやってきた……という次第ですよ」
謎の爆発が起こってから約30分……危険かどうか分かりかねて様子を見ていましたが、
二人とも微動だにしないのでこうして痺れを切らせてやってきた……という次第ですよ」
“痺れを切らせた”と言う割りに落ち着いた仕草で二人の顔、
そして数十分前まで泡立っていた海面を見回した後、高遠はゆっくりと口を開く。
そして数十分前まで泡立っていた海面を見回した後、高遠はゆっくりと口を開く。
「さて……先程何があったのか聞かせていただきましょうか?
ここで起こったことです……私にも知る権利があると思いますけどね」
ここで起こったことです……私にも知る権利があると思いますけどね」
* * *
「……なるほど。本はパートナーである清麿君以外に読めない”はず。
しかし何故か剣持警部がそれを読めてしまった、と」
しかし何故か剣持警部がそれを読めてしまった、と」
そう言って高遠は笑みを崩さぬまま頷いた。
当初、高遠に情報を渡すことを剣持は渋っていたが、
事態の打開を最優先としたガッシュの説得により結局は押し切られる形となった。
そして先程彼らの身に起こった出来事、ガッシュの出自などについて高遠は的確な質疑を行い、
僅か5分足らずで剣持の20分間と同等の成果を得ることに成功していた。
そしてガッシュが最後に問うたのは彼が最初に抱いた疑問そのものだった。
当初、高遠に情報を渡すことを剣持は渋っていたが、
事態の打開を最優先としたガッシュの説得により結局は押し切られる形となった。
そして先程彼らの身に起こった出来事、ガッシュの出自などについて高遠は的確な質疑を行い、
僅か5分足らずで剣持の20分間と同等の成果を得ることに成功していた。
そしてガッシュが最後に問うたのは彼が最初に抱いた疑問そのものだった。
「とりあえずこの場合、二つほど可能性が考えられますね」
疑問に対し、瞬時に回答の存在を示した高遠とそれに驚きの表情を見せるガッシュ。
だが高遠とも長い付き合いである剣持はそれぐらいは想定の範囲内だったのか憮然とした表情を崩さない。
だが高遠とも長い付き合いである剣持はそれぐらいは想定の範囲内だったのか憮然とした表情を崩さない。
「そ、それはどんな可能性なのだ高遠!」
焦る気持ちを隠そうともせず、先を急かせるガッシュ。
それに対して高遠はあくまで笑みを崩さないままで、
それに対して高遠はあくまで笑みを崩さないままで、
「ええ、まず一つ目の可能性は……パートナーである高嶺清麿君がすでに死亡している可能性です」
冷酷な一言を平然と口にした。
“死”という単語にガッシュの表情が固まる。
それはガッシュも心のどこかで考えていたことだったからかもしれない。
この世界に来る前にも様々な戦いを潜り抜けてきたガッシュたちであったが、
だが幸運なことに“パートナーが死亡する”という事態に出くわしていない。
それ故に“パートナーが死亡した際のパートナーの変更”というルールも十分ありえることなのだ。
それはガッシュも心のどこかで考えていたことだったからかもしれない。
この世界に来る前にも様々な戦いを潜り抜けてきたガッシュたちであったが、
だが幸運なことに“パートナーが死亡する”という事態に出くわしていない。
それ故に“パートナーが死亡した際のパートナーの変更”というルールも十分ありえることなのだ。
「最後の生き残りを決めるというルール上パートナーは消耗品。
代替の利くものでなくてはならないでしょう。
そう考えればそんな機構がついていたとしても不思議ではありません」
代替の利くものでなくてはならないでしょう。
そう考えればそんな機構がついていたとしても不思議ではありません」
しかし高遠はそんなガッシュの心などお構い無しに話を続ける。
相手のことを考えない割り切った、冷酷とも言える視点で。
その様子を見て剣持はどうしようもないほどの怒りを覚える。
相手のことを考えない割り切った、冷酷とも言える視点で。
その様子を見て剣持はどうしようもないほどの怒りを覚える。
「高遠、貴様……!」
怒りを込めた剣持の視線。それに込められた怒気は先ほどの比ではない。
気の弱い人間であれば気絶してしまうほどの憤怒がその視線には込められている。
だが高遠はそれを涼しい顔で受け流し、話を続ける。
気の弱い人間であれば気絶してしまうほどの憤怒がその視線には込められている。
だが高遠はそれを涼しい顔で受け流し、話を続ける。
「ですがこの可能性は低いでしょうね」
先ほどまでの持論をあっさりと取り下げる高遠。
その言葉に歯を食いしばり下を向いていたガッシュの顔が上を向く。
その言葉に歯を食いしばり下を向いていたガッシュの顔が上を向く。
「考えてもみてください。これが本来のルールだった場合、
ガッシュ君とは明らかに違う世界の剣持警部がパートナーに選ばれるのはおかしい。
まさかここから脱出した後、ガッシュ君たちの世界に剣持警部が行くわけにもいかないでしょう。
ですからこの場合はもう一つの可能性――螺旋王とやらの小細工の可能性のほうが高いと思われます。
まずはこの名簿を見ていただけますか?
気付かれているかもしれませんが名簿の中にはフルネームが書かれた者とそうでないものがあるんですよ」
ガッシュ君とは明らかに違う世界の剣持警部がパートナーに選ばれるのはおかしい。
まさかここから脱出した後、ガッシュ君たちの世界に剣持警部が行くわけにもいかないでしょう。
ですからこの場合はもう一つの可能性――螺旋王とやらの小細工の可能性のほうが高いと思われます。
まずはこの名簿を見ていただけますか?
気付かれているかもしれませんが名簿の中にはフルネームが書かれた者とそうでないものがあるんですよ」
高遠の指差す先にあるのはその“ファミリーネームが無い名前”の数々であった。
“ヴィラル”から始まり“ランサー”まで、既に高遠が出会ったキールを除く24名。
“ヴィラル”から始まり“ランサー”まで、既に高遠が出会ったキールを除く24名。
「恐らくこの内の少なくとも一体はガッシュ君と同じ魔物でしょう
ガッシュ君の話の通りならば、もしパートナーが死亡した場合、魔界の子供達は呪文を使えず一気に弱者へと成り下がる……
それは恐らく螺旋王の本意ではない……
だから本のルールを捻じ曲げ、誰でもパートナーになれるようにした……というところでしょうか。
ガッシュ君、その本を貸していただけますか?」
ガッシュ君の話の通りならば、もしパートナーが死亡した場合、魔界の子供達は呪文を使えず一気に弱者へと成り下がる……
それは恐らく螺旋王の本意ではない……
だから本のルールを捻じ曲げ、誰でもパートナーになれるようにした……というところでしょうか。
ガッシュ君、その本を貸していただけますか?」
マジシャンである高遠は予想も付かない手段でこちらを欺く。
故に剣持は高遠に物を渡すことに危機感を覚えたが、止める暇も無くガッシュから本が手渡される。
――よっぽど結論を聞きたいのであろう。
そんなガッシュの心情を考えるとそれを止めるわけにもいかず、
高遠が本を受け取り、次々とページに目を通していくのを注意深く見ているしかなかった。
故に剣持は高遠に物を渡すことに危機感を覚えたが、止める暇も無くガッシュから本が手渡される。
――よっぽど結論を聞きたいのであろう。
そんなガッシュの心情を考えるとそれを止めるわけにもいかず、
高遠が本を受け取り、次々とページに目を通していくのを注意深く見ているしかなかった。
「……お前も読めるのか?」
「いえ、残念ながら。どうやら本を読むには何らかの条件があるようですね。
そして剣持警部はそのお眼鏡にかなった、ということのようです。
今のところ、推理できるのはその程度でしょうか」
「いえ、残念ながら。どうやら本を読むには何らかの条件があるようですね。
そして剣持警部はそのお眼鏡にかなった、ということのようです。
今のところ、推理できるのはその程度でしょうか」
推理はこれで終わり、とでも言いたげに本を閉じ、ガッシュに返す。
ガッシュはそんな高遠を子供特有のきらきらとしたまなざしで見上げる。
ガッシュはそんな高遠を子供特有のきらきらとしたまなざしで見上げる。
「オオ……すごいぞ高遠! オヌシ、清麿と同じぐらい頭がいいのだな!」
「おや、それは光栄ですね」
「おや、それは光栄ですね」
笑顔になり高遠を褒めるガッシュと先ほどまでと変わらぬ笑みでそれに答える高遠。
だがその一方で剣持は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべている。
それは推理するその様子が皮肉にも自分の味方であり、彼の敵であるはずの“名探偵”そのものだったからだ。
いつもとキャストが逆転してしまったかのような関係に苛立ちが強まる。
その場所には頼りになるあの少年か、それか口を開けば嫌味が出るあの男にいて欲しい場所なのだから。
そんな剣持の心理を知ってか知らずか、高遠は何処か芝居がかった仕草で視線を海面にずらすと大きくため息をついた。
だがその一方で剣持は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべている。
それは推理するその様子が皮肉にも自分の味方であり、彼の敵であるはずの“名探偵”そのものだったからだ。
いつもとキャストが逆転してしまったかのような関係に苛立ちが強まる。
その場所には頼りになるあの少年か、それか口を開けば嫌味が出るあの男にいて欲しい場所なのだから。
そんな剣持の心理を知ってか知らずか、高遠は何処か芝居がかった仕草で視線を海面にずらすと大きくため息をついた。
「しかし――これは少々まずいことになりましたね」
高遠の呟きにガッシュは首をかしげる。
「ウヌウ? 一体何がまずいのだ?」
「考えてもみてください。私は今までここを訪れた数名に“船を反主催の拠点とする”と言っているのですよ?
その近くで爆発が起これば……どう考えます?」
「「あ……」」
「考えてもみてください。私は今までここを訪れた数名に“船を反主催の拠点とする”と言っているのですよ?
その近くで爆発が起これば……どう考えます?」
「「あ……」」
高遠がアレンビーたちに託した情報を踏まえたうえで、豪華客船付近での爆発を見たものが考えることは2つ。
『船がゲームに乗ったものの襲撃を受けた』、もしくは『船に呼ばれたこと自体が罠だった』の二種類だ。
『船がゲームに乗ったものの襲撃を受けた』、もしくは『船に呼ばれたこと自体が罠だった』の二種類だ。
「襲撃と思われるならともかく、罠と思われるのは私としても不本意ですからね。
今からこの船を確実に目視できる範囲――そうですね、E-3ブロックを一回りしてみようかと思います」
今からこの船を確実に目視できる範囲――そうですね、E-3ブロックを一回りしてみようかと思います」
さも当然のように船から出て行くことを宣言した高遠の前に剣持は立ち塞がる。
「ちょっと待て! お前みたいな凶悪犯罪者をむざむざ一人にすると思ってるのか!」
「では同行しますか? ええ、剣持警部ほどの腕があればこちらとしても歓迎ですよ。
剣持警部が遭遇したような、殺人遊戯に乗った輩が襲って来る可能性がありますからね」
「では同行しますか? ええ、剣持警部ほどの腕があればこちらとしても歓迎ですよ。
剣持警部が遭遇したような、殺人遊戯に乗った輩が襲って来る可能性がありますからね」
あっさり同行を申し出る高遠。その態度に剣持は逆に戸惑ってしまう。
剣持は知っている。この高遠という男が人の心に付け込み、2重、3重に巧妙な罠を仕掛ける男だと。
だが巧妙な罠というのは罠だと分かっていてもかからざるを得ないものらしい。
そう、剣持に最初から選択肢などない。
この男から目を離すことが出来ない以上、この探索にも付いていかざるを得ないのだ。
剣持もそれを分かっているからこそ、せめて高遠の一挙手一投足を見逃さないように凝視する。
剣持は知っている。この高遠という男が人の心に付け込み、2重、3重に巧妙な罠を仕掛ける男だと。
だが巧妙な罠というのは罠だと分かっていてもかからざるを得ないものらしい。
そう、剣持に最初から選択肢などない。
この男から目を離すことが出来ない以上、この探索にも付いていかざるを得ないのだ。
剣持もそれを分かっているからこそ、せめて高遠の一挙手一投足を見逃さないように凝視する。
「……分かってるだろうが何か怪しい真似をしたら即効で取り押さえるからな」
「ええ、お好きにどうぞ。ではまずは西側から回ってみますか」
「ええ、お好きにどうぞ。ではまずは西側から回ってみますか」
* * *
そして1時間後、剣持たちは埠頭へと戻ってきていた。
結局彼らは誰とも会わなかった。いや、それどころか何も起こらなかった。
元々E-3ブロックは豪華客船が停泊するための湾岸部が大半を占めており、
あまり建物が存在しない開けた場所が多かったことも手伝い、大した手間もなく捜索は終了したのだった。
そして問題であった高遠の行動にも二人が見る限りでは不審な所はなく、
一挙手一投足に気を配っていた剣持とガッシュに疲労が溜まるだけという結果に終わってしまった。
そんな二人に対し高遠は、
『どうやら幸いなことに人はいなかったようですね。
これで私も安心して船内で人を待てるというものだ』
とだけ言い残し、客船へと戻っていった。
結局彼らは誰とも会わなかった。いや、それどころか何も起こらなかった。
元々E-3ブロックは豪華客船が停泊するための湾岸部が大半を占めており、
あまり建物が存在しない開けた場所が多かったことも手伝い、大した手間もなく捜索は終了したのだった。
そして問題であった高遠の行動にも二人が見る限りでは不審な所はなく、
一挙手一投足に気を配っていた剣持とガッシュに疲労が溜まるだけという結果に終わってしまった。
そんな二人に対し高遠は、
『どうやら幸いなことに人はいなかったようですね。
これで私も安心して船内で人を待てるというものだ』
とだけ言い残し、客船へと戻っていった。
そして今現在、高遠の姿が完全に船内に消えてから数分後――
剣持はガッシュに支給されたアンパンを分けてもらい、並んで食べていた。
剣持はガッシュに支給されたアンパンを分けてもらい、並んで食べていた。
「……ずっとここで見張り続けるのか、勇?」
アンパンを食べ終え、何ともなしに豪華客船のほうを眺めていたガッシュが口を開く。
剣持はその言葉の裏にあるガッシュが清麿を心配する感情を見て取った。
自分だってできるならば一緒に清麿という少年を探してやりたいと思う。
だがしかし――
剣持はその言葉の裏にあるガッシュが清麿を心配する感情を見て取った。
自分だってできるならば一緒に清麿という少年を探してやりたいと思う。
だがしかし――
「ああ……俺は高遠を見張り続ける」
これだけは譲れないのだ。
地獄の傀儡師、高遠遙一。
あの男の恐ろしさは複雑なトリックを考え付く頭脳だけではない。
長年刑事を務めてきた剣持は知っている。
平穏な暮らしをしていたものが殺人を犯すのはかなりの覚悟がいるものだということを。
だがあの男は唆すだけで、他人にいとも簡単にその一線を越えさせる。
人を操り破滅へと誘う――まさに地獄の傀儡師という二つ名が相応しい男であるのだ。
あの男の仕掛けた罠など自分に見破れるはずもない。それは皮肉にもさっきの出来事でそれを痛感してしまった。
地獄の傀儡師、高遠遙一。
あの男の恐ろしさは複雑なトリックを考え付く頭脳だけではない。
長年刑事を務めてきた剣持は知っている。
平穏な暮らしをしていたものが殺人を犯すのはかなりの覚悟がいるものだということを。
だがあの男は唆すだけで、他人にいとも簡単にその一線を越えさせる。
人を操り破滅へと誘う――まさに地獄の傀儡師という二つ名が相応しい男であるのだ。
あの男の仕掛けた罠など自分に見破れるはずもない。それは皮肉にもさっきの出来事でそれを痛感してしまった。
しかし――それは決して無駄ではないはずだ。
少なくとも自分がここにいることで高遠は行動を制限されるはずだし、
もし噂を聞いて誰かがここにやってきた場合同行を申し出て、
高遠の奴が妙なことを吹き込まないかを監視するぐらいはできるはずだ。
だからあの男がここを動かない限り、自分もここを動くことはないだろう。
少なくとも自分がここにいることで高遠は行動を制限されるはずだし、
もし噂を聞いて誰かがここにやってきた場合同行を申し出て、
高遠の奴が妙なことを吹き込まないかを監視するぐらいはできるはずだ。
だからあの男がここを動かない限り、自分もここを動くことはないだろう。
だがそれにガッシュが付き合う必要は無い。
本来のパートナーである清麿を一刻も早く探したいだろうし、
誰か信頼できそうな人物がこの船に来たならばその人に同行を頼むのが最善だろう。
そう考え、ガッシュにその旨を伝える。だが、
本来のパートナーである清麿を一刻も早く探したいだろうし、
誰か信頼できそうな人物がこの船に来たならばその人に同行を頼むのが最善だろう。
そう考え、ガッシュにその旨を伝える。だが、
「いや、私も勇に付き合おう。イザという時にこそ、私のザケルはきっと役に立つはずだ!」
返ってきた答えは、剣持と一緒にいるという意思表示であった。
「ガッシュ、無理することはないぞ。おまえは清麿君を探さにゃあいかんのだろう?
こう見えても俺は強いんだ。さっきの電撃がなくても何とかなるさ」
「大丈夫だ! 清麿は強い! だからきっと死なぬ! 私は……そう信じておる!
それよりも今は高遠のことが気になるのだ!
もしも……もしも高遠が剣持の心配するとおりの人物であるならば、私としてもほうっておくわけには行かぬ!」
こう見えても俺は強いんだ。さっきの電撃がなくても何とかなるさ」
「大丈夫だ! 清麿は強い! だからきっと死なぬ! 私は……そう信じておる!
それよりも今は高遠のことが気になるのだ!
もしも……もしも高遠が剣持の心配するとおりの人物であるならば、私としてもほうっておくわけには行かぬ!」
それはどこか自分に言い聞かせるような口調でもあった。
先程の高遠の不愉快な発言で、清麿という少年と離れている不安も一層増したはずなのに、
それを押し込め、自分の“高遠が怪しい”という言葉に賛同し、従っている。
自分のことよりも人のために動ける優しさ――それは何物にも変えがたい心だと剣持は思う。
だから確信する。この子はきっと優しい王様になれるはずだと。
先程の高遠の不愉快な発言で、清麿という少年と離れている不安も一層増したはずなのに、
それを押し込め、自分の“高遠が怪しい”という言葉に賛同し、従っている。
自分のことよりも人のために動ける優しさ――それは何物にも変えがたい心だと剣持は思う。
だから確信する。この子はきっと優しい王様になれるはずだと。
(まったく……子供に気を遣われてちゃ世話ないな)
目の前の少年を元の世界に返し、その王様にするためにも、このふざけたゲームを止めなければ。
その為にも今は刑事として、何より一人の人間として己の職務を全うしよう。
その為にも今は刑事として、何より一人の人間として己の職務を全うしよう。
「じゃあ、よろしく頼むぞガッシュ!」
「ウム! 私に任せておくのだ!」
「ウム! 私に任せておくのだ!」
【E-3/埠頭/1日目/昼】
【剣持勇@金田一少年の事件簿】
[状態]:打撲(背中・強)、精神疲労(中)
[装備]:ガッシュの魔本@金色のガッシュベル!!、巨大ハサミを分解した片方の刃@王ドロボウJING
スパイクの煙草(マルボロの赤)(18/20)@カウボーイビバップ
[道具]:ドミノのバック×2@カウボーイビバップ
[思考]
基本:殺し合いを止める
1:豪華客船付近に留まり、高遠が行動を起こさないか見張る。
2:高遠の言葉に乗って集まってきた人物の対処をどうするか考える。
3:殺し合いに乗っている者を無力化・確保する。
4:殺し合いに乗っていない弱者を保護する。
5:情報を収集する。
[備考]
※高遠遙一の存在を知っているどこかから参戦しています。
※スザクの知り合い、その関係について知りました。(一応真実だとして受け止めています)
※ヴィラルがどうなったのかを知りません。
※ガッシュ、アレンビー、キールと情報交換済み
※高遠を信用すべきか疑うべきか、計りかねています。
※ガッシュの持っていた名簿から、金田一、明智、高遠が参加していることを把握しました。
【剣持勇@金田一少年の事件簿】
[状態]:打撲(背中・強)、精神疲労(中)
[装備]:ガッシュの魔本@金色のガッシュベル!!、巨大ハサミを分解した片方の刃@王ドロボウJING
スパイクの煙草(マルボロの赤)(18/20)@カウボーイビバップ
[道具]:ドミノのバック×2@カウボーイビバップ
[思考]
基本:殺し合いを止める
1:豪華客船付近に留まり、高遠が行動を起こさないか見張る。
2:高遠の言葉に乗って集まってきた人物の対処をどうするか考える。
3:殺し合いに乗っている者を無力化・確保する。
4:殺し合いに乗っていない弱者を保護する。
5:情報を収集する。
[備考]
※高遠遙一の存在を知っているどこかから参戦しています。
※スザクの知り合い、その関係について知りました。(一応真実だとして受け止めています)
※ヴィラルがどうなったのかを知りません。
※ガッシュ、アレンビー、キールと情報交換済み
※高遠を信用すべきか疑うべきか、計りかねています。
※ガッシュの持っていた名簿から、金田一、明智、高遠が参加していることを把握しました。
【ガッシュ・ベル@金色のガッシュベル!!】
[状態]:おでこに少々擦り傷、精神疲労(中)
[装備]:なし
[道具]:支給品一式(食料:アンパン×8、ミネラルウォーター)
ウォンのチョコ詰め合わせ@機動武闘伝Gガンダム、ビシャスの日本刀@カウボーイビバップ、水上オートバイ
[思考]
基本:螺旋王を見つけ出してバオウ・ザケルガ!!
1:剣持と行動。剣持を守る。
2:なんとしてでも高嶺清麿と再会する。
3:ジンとドモンと金田一と明智を捜す。
[備考]
※高遠を信用すべきか疑うべきか、計りかねています。
※剣持、アレンビー、キールと情報交換済み
※聞き逃した第一放送の内容を剣持から聞きました。
[状態]:おでこに少々擦り傷、精神疲労(中)
[装備]:なし
[道具]:支給品一式(食料:アンパン×8、ミネラルウォーター)
ウォンのチョコ詰め合わせ@機動武闘伝Gガンダム、ビシャスの日本刀@カウボーイビバップ、水上オートバイ
[思考]
基本:螺旋王を見つけ出してバオウ・ザケルガ!!
1:剣持と行動。剣持を守る。
2:なんとしてでも高嶺清麿と再会する。
3:ジンとドモンと金田一と明智を捜す。
[備考]
※高遠を信用すべきか疑うべきか、計りかねています。
※剣持、アレンビー、キールと情報交換済み
※聞き逃した第一放送の内容を剣持から聞きました。
時系列順で読む
投下順で読む
123:カサブタだらけの情熱を忘れたくない | 剣持勇 | 178:君らしく 愛らしく 笑ってよ(後編) |
123:カサブタだらけの情熱を忘れたくない | ガッシュ・ベル | 178:君らしく 愛らしく 笑ってよ(後編) |
123:カサブタだらけの情熱を忘れたくない | 高遠遙一 | 157:嗤う高遠 |