誓うカミナ ◆DNdG5hiFT6
「あー……つまり、お前は自分で考えられるガンメンみたいなモンだってワケか」
E-3、高速道路上に一人の男が胡坐をかいて座っている。
男の名はカミナ。獣人たちに対抗する組織“グレン団”のリーダーにしてガンメン“グレン”のパイロットでもある男。
さて、そのカミナが今現在何をしているかというと、これでもかというほどに眉間にしわを寄せている。
一見何をしているのか分かりづらいが彼は頭を使っていた。近年、稀に見るほどに。
男の名はカミナ。獣人たちに対抗する組織“グレン団”のリーダーにしてガンメン“グレン”のパイロットでもある男。
さて、そのカミナが今現在何をしているかというと、これでもかというほどに眉間にしわを寄せている。
一見何をしているのか分かりづらいが彼は頭を使っていた。近年、稀に見るほどに。
『はい。貴方にとってはその認識が一番近いものと推測します、Mr.カミナ』
人影が無いにもかかわらず、カミナとは違う声が響く。
その声の主はカミナの正面に落ちている手のひら大の銀色のプレート。
待機モードに入ったデバイス・クロスミラージュであった。
その声の主はカミナの正面に落ちている手のひら大の銀色のプレート。
待機モードに入ったデバイス・クロスミラージュであった。
約1時間前、ギリギリのところで“高町なのは”へと偽装したティアナを倒したカミナ。
だが倒したはずの女の姿は変わるわ、しかもその女の制服はやっぱり自分を襲ったのものと同じだわ、極めつけには板が喋るわで、
『俺にはさっぱりわからねえ!』と混乱の極みに陥った。
一方で事情を説明するクロスミラージュもどう説明したものかと迷っていた。
話しかけてはみたものの、ここまで驚かれるとは思っていなかった。
最初に出会ったMr.明智が非常に理知的な反応を返してくれたので忘れていたが、この世界に召喚された人間の中には文明レベルが低い者もいるのだ。
そんな相手に対して魔法やデバイス、平行世界や時空管理局など専門用語の飛び交うことを理解させるのは、
四則計算を覚え始めた相手に対し微分方程式を教えるより難しいことであろう。
だがしかしクロスミラージュは決意する。
主のため、機動六課のため、目の前の男と意思疎通を図ろう、と。
そして――その結果がこれである。
元々カミナのいた世界は人間の文明レベルがあまり高くない。
それに加えカミナ自身が物事を感覚と直感で理解するタイプであったため、
互いの認識の溝を埋めるため、相当な時間と労力を要したのだった。
(しかしまさか、ここまで苦労するとは……)
意外なところで異文化コミュニケーションの難しさを思い知ることとなったクロスミラージュ。
だがデバイスの地道な努力の甲斐あって、何とかある程度の相互理解を得ることに成功したのであった。
だが倒したはずの女の姿は変わるわ、しかもその女の制服はやっぱり自分を襲ったのものと同じだわ、極めつけには板が喋るわで、
『俺にはさっぱりわからねえ!』と混乱の極みに陥った。
一方で事情を説明するクロスミラージュもどう説明したものかと迷っていた。
話しかけてはみたものの、ここまで驚かれるとは思っていなかった。
最初に出会ったMr.明智が非常に理知的な反応を返してくれたので忘れていたが、この世界に召喚された人間の中には文明レベルが低い者もいるのだ。
そんな相手に対して魔法やデバイス、平行世界や時空管理局など専門用語の飛び交うことを理解させるのは、
四則計算を覚え始めた相手に対し微分方程式を教えるより難しいことであろう。
だがしかしクロスミラージュは決意する。
主のため、機動六課のため、目の前の男と意思疎通を図ろう、と。
そして――その結果がこれである。
元々カミナのいた世界は人間の文明レベルがあまり高くない。
それに加えカミナ自身が物事を感覚と直感で理解するタイプであったため、
互いの認識の溝を埋めるため、相当な時間と労力を要したのだった。
(しかしまさか、ここまで苦労するとは……)
意外なところで異文化コミュニケーションの難しさを思い知ることとなったクロスミラージュ。
だがデバイスの地道な努力の甲斐あって、何とかある程度の相互理解を得ることに成功したのであった。
『私のマスターであるティアナ・ランスターと共に時空管理局――人を守るための組織に属していたというわけなのです』
「オイオイ、だったら何でいきなり襲ってきやがった」
『先程までマスターは錯乱状態にありました。恐らくはその原因は……仲間の死なのです』
「オイオイ、だったら何でいきなり襲ってきやがった」
『先程までマスターは錯乱状態にありました。恐らくはその原因は……仲間の死なのです』
“仲間の死”――その言葉にカミナの表情が変わる。
『私も先程再会したばかりで詳しい事情は聞けていませんが、
マスターは眼前で妹のように思っていた少女を殺されたようです。
その際に恐らくは……ショックを受けて、錯乱してしまったのではないかと推測します』
マスターは眼前で妹のように思っていた少女を殺されたようです。
その際に恐らくは……ショックを受けて、錯乱してしまったのではないかと推測します』
放送でシモンが死んだと聴かされた時の感情が甦る。
あの時、自分は『シモンを殺したのが自分達を襲ってきた女かもしれない』と思ったときどうしようとした?
時間がある程度たった今なら冷静に思い返せる。
――ああ、俺は確かにあの女を殺そうとした。
結局思いとどまったが、首へと手を掛けるところまでいったのだ。
もしもあの時激情に身を任せていたら、自分も“ああ”なっていたかもしれない。
そう考え、未だに倒れている少女へと憐憫を含んだ視線を向ける。
あの時、自分は『シモンを殺したのが自分達を襲ってきた女かもしれない』と思ったときどうしようとした?
時間がある程度たった今なら冷静に思い返せる。
――ああ、俺は確かにあの女を殺そうとした。
結局思いとどまったが、首へと手を掛けるところまでいったのだ。
もしもあの時激情に身を任せていたら、自分も“ああ”なっていたかもしれない。
そう考え、未だに倒れている少女へと憐憫を含んだ視線を向ける。
(あん時いきなり襲ってきた女が目の前でシモンを殺してたとしたら、俺もお前みたいになってたのかもな……
……ってオイ、それだとおかしくねえか?)
……ってオイ、それだとおかしくねえか?)
そう、それだと筋が通らない。
だったら何故、“彼女”はこっちを襲ってきたのだ?
だったら何故、“彼女”はこっちを襲ってきたのだ?
「おい、俺は放送より前にもう一人茶色い服を着た女に襲われたんだが、それはどう説明するってんだ?」
『!?』
『!?』
見るからに動揺する銀の板。
カミナという男は馬鹿ではあるが、決して嘘をつく人間ではない。
それがクロスミラージュが一時間に及ぶ会話で分析したカミナのパーソナリティだ。
つまりもう一人、錯乱したマスター以外にこのゲームに乗ってしまった六課の女性がいる。
いや、良く似た服を着た他人という可能性もまだ捨てきれない。まずは冷静に情報を集めなければ。
そう判断し、クロスミラージュは会話を進める。
カミナという男は馬鹿ではあるが、決して嘘をつく人間ではない。
それがクロスミラージュが一時間に及ぶ会話で分析したカミナのパーソナリティだ。
つまりもう一人、錯乱したマスター以外にこのゲームに乗ってしまった六課の女性がいる。
いや、良く似た服を着た他人という可能性もまだ捨てきれない。まずは冷静に情報を集めなければ。
そう判断し、クロスミラージュは会話を進める。
『その女性の名前などは聞きましたか?』
「さあな。名前を聞く前にヴィラルって獣人野郎とどっか行っちまったよ。
外見は――確かこんぐらいの金髪で、耳にこんなわっか着けてやがったな」
『……!』
「さあな。名前を聞く前にヴィラルって獣人野郎とどっか行っちまったよ。
外見は――確かこんぐらいの金髪で、耳にこんなわっか着けてやがったな」
『……!』
クロスミラージュはその条件に該当する人間を一人知っている。
この場に唯一召喚されたヴォルケンリッター・湖の騎士シャマル。
勿論、似たような服を着て、似たような格好をしている別人かもしれない。
何か事情があって、背格好の似た人物が服を奪ったのかもしれない。
だが機械としてのクロスミラージュは冷徹に判断を下す。
この戦場でシャマルと似た個体に遭遇する確率はきわめて低い、と。
そして彼女が同様に参加させられた主・八神はやての存命のためにゲームに乗ってしまう可能性を否定し切れなかった。
この場に唯一召喚されたヴォルケンリッター・湖の騎士シャマル。
勿論、似たような服を着て、似たような格好をしている別人かもしれない。
何か事情があって、背格好の似た人物が服を奪ったのかもしれない。
だが機械としてのクロスミラージュは冷徹に判断を下す。
この戦場でシャマルと似た個体に遭遇する確率はきわめて低い、と。
そして彼女が同様に参加させられた主・八神はやての存命のためにゲームに乗ってしまう可能性を否定し切れなかった。
『……悲しいことですが、このゲームに彼女は乗ってしまったのかもしれません。
ですが、機動六課のメンバー全体がそうというわけではありません。
どうか、それだけは信じてください』
「……悪いが俺は自分の目で見たものしか信じねえ。お前がどう言ってもそれだけは譲れねえんだ」
ですが、機動六課のメンバー全体がそうというわけではありません。
どうか、それだけは信じてください』
「……悪いが俺は自分の目で見たものしか信じねえ。お前がどう言ってもそれだけは譲れねえんだ」
カミナの言うことは正論だ。
機動六課の制服を着たものが彼を襲ったのは恐らく事実。
それと同じ服を着たものが同類ではないなどと、どうして証明できよう。
せめてマスターを見逃してもらえるように説得すべきだろう。
そう考えクロスミラージュは電子音声を紡ぎ出そうとする。だが――
機動六課の制服を着たものが彼を襲ったのは恐らく事実。
それと同じ服を着たものが同類ではないなどと、どうして証明できよう。
せめてマスターを見逃してもらえるように説得すべきだろう。
そう考えクロスミラージュは電子音声を紡ぎ出そうとする。だが――
「だがな、俺にはお前が嘘を言ってるようにも思えねえ」
『!!』
『!!』
カミナの顔には不敵な笑みが浮かんでいる。
シモンが信じ、ヨーコが惹かれた男の笑みだ。
シモンが信じ、ヨーコが惹かれた男の笑みだ。
「だからとりあえず……ティアナつったか、あの女と暫く行動して、それからお前の言葉がホントかどうか見極める!
……それでいいんだろ?」
『……! は、はい!』
……それでいいんだろ?」
『……! は、はい!』
――捨てる神あれば拾う神あり
整備課のシャーリーがいつか話していた、高町教官の世界のことわざだ。
Mr.明智が最初に出会ったロイ・マスタングや先程までのマスターのようにゲームに乗ってしまった人間も確かにいる。
だがMr.明智や目の前のこの青年のようにこんな場所でも“正義”をもって行動する人間も確かにいるのだ。
彼の力を借りればマスターもきっと――
整備課のシャーリーがいつか話していた、高町教官の世界のことわざだ。
Mr.明智が最初に出会ったロイ・マスタングや先程までのマスターのようにゲームに乗ってしまった人間も確かにいる。
だがMr.明智や目の前のこの青年のようにこんな場所でも“正義”をもって行動する人間も確かにいるのだ。
彼の力を借りればマスターもきっと――
『Mr.カミナ。マスターのことを……お願いします』
「おうよ、任せとけ! 後な、その“みすたー”はいらねえ。俺はグレン団のカミナだ!」
『了解しました、カミナ!』
「おうよ、任せとけ! 後な、その“みすたー”はいらねえ。俺はグレン団のカミナだ!」
『了解しました、カミナ!』
* * *
まだ、まどろみの中にある意識の中で思い出す。
私は“高町なのは”ではなかったのだ。
管理局のエース・オブ・エース。決して負けない、決して道を間違えない強い人。
彼女なら絶対に間違わない――そうやって弱い私はあの人にまで責任を押し付けようとしたのか。
どこまで私は――ティアナ・ランスターという人間は堕ちれば気が済むのか。
どこまで間違いを重ね、道を踏み外すせばいいのだろう。
管理局のエース・オブ・エース。決して負けない、決して道を間違えない強い人。
彼女なら絶対に間違わない――そうやって弱い私はあの人にまで責任を押し付けようとしたのか。
どこまで私は――ティアナ・ランスターという人間は堕ちれば気が済むのか。
どこまで間違いを重ね、道を踏み外すせばいいのだろう。
ああ、そういえばクロスミラージュには酷い事をしてしまった。
さっきは偽者扱いまでしてしまった。そんなはずはないのに、それは私が一番わかっているのに。
まず、クロスミラージュに謝らなきゃ……
そして視線を泳がせた私の元に飛び込んできたのは、
さっきは偽者扱いまでしてしまった。そんなはずはないのに、それは私が一番わかっているのに。
まず、クロスミラージュに謝らなきゃ……
そして視線を泳がせた私の元に飛び込んできたのは、
『Mr.カミナ――お願いします』
さっきまで戦っていた男を頼っているクロスミラージュの姿だった。
その光景を見て、ぼんやりとした頭で理解する。
ああ、そうか――私は見捨てられたのだ。あまりにも頼りなく、不甲斐ないせいで。
なんて無様なんだろう。
目の前でキャロを死なせ、六課のみんなを守るために殺すと決めたのにそれもかなわず。
更にはすべての責任を尊敬するなのはさんに押し付け、そして踏みにじった。
こんな人間……デバイスに見捨てられるのも当然だ。
私に最早クロスミラージュを手にする資格はない。
いや、それどころか6課のみんなとも顔を合わせるわけにはいかない。
一刻も早く、ここから消えてしまいたい。
その光景を見て、ぼんやりとした頭で理解する。
ああ、そうか――私は見捨てられたのだ。あまりにも頼りなく、不甲斐ないせいで。
なんて無様なんだろう。
目の前でキャロを死なせ、六課のみんなを守るために殺すと決めたのにそれもかなわず。
更にはすべての責任を尊敬するなのはさんに押し付け、そして踏みにじった。
こんな人間……デバイスに見捨てられるのも当然だ。
私に最早クロスミラージュを手にする資格はない。
いや、それどころか6課のみんなとも顔を合わせるわけにはいかない。
一刻も早く、ここから消えてしまいたい。
「おうよ、俺に任せとけ!」
『ありがとうございます、カミナ』
『ありがとうございます、カミナ』
会話の内容は途切れ途切れにしか聞こえないが、どこと無くクロスミラージュも嬉しそうではないか。
その姿を見るのが辛くて視線を逸らす。
その先に広がるのはまるで私の今の心みたいに無機質な灰色の壁。
だけど無限に続くかと思われたその壁に一つだけ、青い世界が広がっている場所があった。
その姿を見るのが辛くて視線を逸らす。
その先に広がるのはまるで私の今の心みたいに無機質な灰色の壁。
だけど無限に続くかと思われたその壁に一つだけ、青い世界が広がっている場所があった。
* * *
「よし、そうと決まれば今後の方針ってやつを話し合うか。
俺はとにかくシモンとヨーコを探したいんだが……特に目標地点があったわけじゃねえからな」
『シモン? ですがその名前は……』
「前にも言ったろ? 俺は自分の目で見たものしか信じねえってな!」
『……わかりました。私達もあなたに従いましょう。
人を探すのならば11時までに駅に向かったほうがいいでしょう。
Mr.明智ならばきっと協力してくれるはずで――』
俺はとにかくシモンとヨーコを探したいんだが……特に目標地点があったわけじゃねえからな」
『シモン? ですがその名前は……』
「前にも言ったろ? 俺は自分の目で見たものしか信じねえってな!」
『……わかりました。私達もあなたに従いましょう。
人を探すのならば11時までに駅に向かったほうがいいでしょう。
Mr.明智ならばきっと協力してくれるはずで――』
だがその時、爆発音がクロスミラージュの言葉をさえぎった。
大気を震わせる爆音にカミナは手元にあった剣を掴み、周囲を警戒する。
大気を震わせる爆音にカミナは手元にあった剣を掴み、周囲を警戒する。
『カミナ、爆発に付随すると思われる魔力を検知しました! この壁の向こう側です!
距離はそれなりにあるのでこちらを狙ったものではないと思いますが……』
距離はそれなりにあるのでこちらを狙ったものではないと思いますが……』
クロスミラージュの警告に視線を向けるとそこには高速道路脇を防護するコンクリート壁が広がっている。
継ぎ目無く視界をふさいでいる上に、それなりの高さがあるため少なくともカミナの周辺では爆発地点を視認出来そうも無い。
継ぎ目無く視界をふさいでいる上に、それなりの高さがあるため少なくともカミナの周辺では爆発地点を視認出来そうも無い。
「おい、マリョク……ってことは“キドウロッカ”となんか関係があるのか?」
『稀にですが生まれつき魔力を持ったものもいるので一概にそうとはいえませんが……可能性は有ります』
「よっしゃ! じゃあまずはそこに向か……って……」
『稀にですが生まれつき魔力を持ったものもいるので一概にそうとはいえませんが……可能性は有ります』
「よっしゃ! じゃあまずはそこに向か……って……」
だがそこで立ち上がろうとしたカミナがふらつき、膝を突く。
クロスミラージュはそこでようやく思い出した。
この青年は一見ピンピンしている様に見えるが、あれほど大量の魔力弾を喰らったのだ。
どんな頑丈な人間だろうと無傷などということはありえない。
クロスミラージュはそこでようやく思い出した。
この青年は一見ピンピンしている様に見えるが、あれほど大量の魔力弾を喰らったのだ。
どんな頑丈な人間だろうと無傷などということはありえない。
『……カミナ、どこか安全な場所での休息を推奨します。そのままでは先にカミナが参ってしまう』
「なに、心配すんな。無理を通して道理を蹴っ飛ばすのがこの俺カミナ様! そしてグレン団の心意――」
「なに、心配すんな。無理を通して道理を蹴っ飛ばすのがこの俺カミナ様! そしてグレン団の心意――」
言葉を途切れさせるカミナ。
その態度を不審に思ったクロスミラージュが視線の先へ視覚素子を追わせると
そこには――幽鬼の様に脚を進めるティアナの姿があった。
その先にあるのは、かつてヴィラルが持っていた爆弾で作り出した巨大な穴。
その態度を不審に思ったクロスミラージュが視線の先へ視覚素子を追わせると
そこには――幽鬼の様に脚を進めるティアナの姿があった。
その先にあるのは、かつてヴィラルが持っていた爆弾で作り出した巨大な穴。
『マスター!?』
クロスミラージュの目的語も、動詞すら無い呼びかけ。
だがその声にティアナは虚ろな笑みを返し――空中へと身を躍らせた。
カミナが急いで駆け寄るも、既に少女の身体は海中に没しており、水飛沫の残滓だけが見て取れた。
だがその声にティアナは虚ろな笑みを返し――空中へと身を躍らせた。
カミナが急いで駆け寄るも、既に少女の身体は海中に没しており、水飛沫の残滓だけが見て取れた。
「ちっ、あの馬鹿野郎! お前、しっかり捕まってろ!」
――下が水なら死にはしねえ!
そう判断したカミナはディパックを引っつかみ、クロスミラージュを首にかけ、壁の穴に向かって跳躍した。
そう判断したカミナはディパックを引っつかみ、クロスミラージュを首にかけ、壁の穴に向かって跳躍した。
『待ってくださいカミナ!』
クロスミラージュの制止を無視して、跳躍、海中へ飛び込んだ。
確かにこの程度の高さであれば、下が水ならば死にはしないだろう。
だがカミナには誤算があった。彼は――海を知らなかったのだ。
確かにこの程度の高さであれば、下が水ならば死にはしないだろう。
だがカミナには誤算があった。彼は――海を知らなかったのだ。
「ぬっ、がぁあああああああああああああ!!」
カミナは着水した瞬間、左肩に走る焼け付くような痛みに絶叫を上げた。
当然だ。まだ生々しい傷痕を塩水に浸ければその結果は火を見るより明らかだ。
文字通り傷口に塩を練りこむような激痛にパニックを起こす。
更に無駄に暴れたことによって口や鼻から海水が入り込み、焼け付くような感覚がカミナを襲う。
当然だ。まだ生々しい傷痕を塩水に浸ければその結果は火を見るより明らかだ。
文字通り傷口に塩を練りこむような激痛にパニックを起こす。
更に無駄に暴れたことによって口や鼻から海水が入り込み、焼け付くような感覚がカミナを襲う。
「!!??! ぐぁがばっ!? なん、だ、こりゃ! しょっぺえぇぇえええ!」
パニックと海の二重連鎖によってどんどん深みにはまっていく。
――状況は最悪であった。
――状況は最悪であった。
そんな彼の胸元にいるクロスミラージュは焦っていた。
まさか彼が海を知らないとは思わなかった。
確かに海の無い世界というのも多々ある。
まさか彼が海を知らないとは思わなかった。
確かに海の無い世界というのも多々ある。
『カミナ! 大丈夫ですか、カミナ!』
返事は無い。つまりただの問いかけではパニックの最中のカミナには届かないということだ。
こうなれば一か八かの賭けに出るしかない。どうせカミナが溺れてしまえば自分も海の藻屑なのだ。
こうなれば一か八かの賭けに出るしかない。どうせカミナが溺れてしまえば自分も海の藻屑なのだ。
『カミナ、所詮その程度なのですか。
それであなたは――顔向けが出来るのですか!』
それであなたは――顔向けが出来るのですか!』
その瞬間、カミナの脳裏に浮かんだのは自分の後ろを付いて来た気弱で大人しい――だが彼が誰より信じる男の姿。
小さな背中を思い出したその一瞬、カミナは冷静さを取り戻す。
意地と根性で痛みを抑え、目に付いた柱のようなものに向かって全力で手足を動かす。
そして何とか柱のようなもの――高速道路の橋脚に手をかけることに成功する。
肩の痛みは海の中にいる以上どうしようもないが、どうやら溺死だけは免れることが出来たらしい。
左肩の痛みに歯を食いしばりつつ、周囲を見回す。
だがそこに少女の姿は無い。
どうやら周囲は幾つもの水路が合流するゆえか流れが速いらしく、既に遠くへ流されてしまったらしい。
小さな背中を思い出したその一瞬、カミナは冷静さを取り戻す。
意地と根性で痛みを抑え、目に付いた柱のようなものに向かって全力で手足を動かす。
そして何とか柱のようなもの――高速道路の橋脚に手をかけることに成功する。
肩の痛みは海の中にいる以上どうしようもないが、どうやら溺死だけは免れることが出来たらしい。
左肩の痛みに歯を食いしばりつつ、周囲を見回す。
だがそこに少女の姿は無い。
どうやら周囲は幾つもの水路が合流するゆえか流れが速いらしく、既に遠くへ流されてしまったらしい。
「くそっ……どこへ流されちまったんだ……すぐに助けにいかねえと」
『いえ、あなたが溺れてしまっては元も子もありません。
……とりあえず陸地に上がっての休息を推奨します』
「ハ、無茶は承知よ! 今追いつかねえと……」
『その身体で追いついて、二人して溺れるつもりですか!』
『いえ、あなたが溺れてしまっては元も子もありません。
……とりあえず陸地に上がっての休息を推奨します』
「ハ、無茶は承知よ! 今追いつかねえと……」
『その身体で追いついて、二人して溺れるつもりですか!』
初めて聞く、声を荒げるようなクロスミラージュの声にカミナは言葉を引っ込める。
『流れが速いということは何処かに流れ着いている可能性も高いということです。
……そう信じて、今は陸地に上がりましょう』
……そう信じて、今は陸地に上がりましょう』
そうだ、本当に辛いのは自分よりもパートナーを見失ったクロスミラージュなのだ。
例えば自分が身動きできなくなって、目の前でシモンやヨーコと別れざるを得なくなった時に、
さっき出会ったばかりの赤の他人を心配できるだろうか? ――いや、出来ないだろう。
変わらずに無機質に光る銀色の板。だがカミナはそれに歯を食いしばって耐える“漢”の魂を感じた。
それにクロスミラージュの言うとおり、激痛は身体を苛み、疲労と相まって意識が飛びそうになっている。
いつも通り道理を蹴っ飛ばそうにも――あまりにも力が足りない。
例えば自分が身動きできなくなって、目の前でシモンやヨーコと別れざるを得なくなった時に、
さっき出会ったばかりの赤の他人を心配できるだろうか? ――いや、出来ないだろう。
変わらずに無機質に光る銀色の板。だがカミナはそれに歯を食いしばって耐える“漢”の魂を感じた。
それにクロスミラージュの言うとおり、激痛は身体を苛み、疲労と相まって意識が飛びそうになっている。
いつも通り道理を蹴っ飛ばそうにも――あまりにも力が足りない。
「……すまねえ」
自分の力不足に奥歯を噛み締める。
だがカミナはただ“くやしい”で終わらせない。
壁があるならば気合で突き抜けるのがグレン団、そしてカミナの生き様だ。
だがカミナはただ“くやしい”で終わらせない。
壁があるならば気合で突き抜けるのがグレン団、そしてカミナの生き様だ。
「……もう一度だ」
『え?』
「俺が必ずお前とあの女をもう一度会わせてやる!
これは――男と男の約束だ!」
『え?』
「俺が必ずお前とあの女をもう一度会わせてやる!
これは――男と男の約束だ!」
カミナの言葉に根拠は無い。
この広い殺戮場で同じ相手に二度再び会える確率は極めて低いといっていい。
だが、クロスミラージュはカミナの瞳に決意の色を見る。
その輝きはかつて、己のマスターが、六課の仲間達が持っていた決意と良く似ていた。
だから信じてみようと思った、この男を。不屈の勇気を持ったこの男を。
この広い殺戮場で同じ相手に二度再び会える確率は極めて低いといっていい。
だが、クロスミラージュはカミナの瞳に決意の色を見る。
その輝きはかつて、己のマスターが、六課の仲間達が持っていた決意と良く似ていた。
だから信じてみようと思った、この男を。不屈の勇気を持ったこの男を。
『……お願いします、カミナ』
「おう、俺を信じろ!」
「おう、俺を信じろ!」
そう答えてカミナは陸地に向かって泳ぎだした。
今にも気絶しそうな精神を“約束”の二文字で奮い立たせて。
今にも気絶しそうな精神を“約束”の二文字で奮い立たせて。
【E-3/海上/1日目/昼】
【カミナ@天元突破グレンラガン】
[状態]:精神力消耗(大・気絶一歩手前)
体力消耗(大)、左肩に大きな裂傷(激しく動かすと激痛が走る)
[装備]:なんでも切れる剣@サイボーグクロちゃん
[道具]:支給品一式、ベリーなメロン(3個)@金色のガッシュベル!!(?)、ゲイボルク@Fate/stay night
クロスミラージュ(待機状態)@魔法少女リリカルなのはStrikerS(カートリッジ3/4:1/4)
[思考]基本:殺し合いには意地でも乗らない。
0:とりあえず陸地へ泳ぐ(どの方向へ向かうかは次の書き手さんにお任せします)
1:ティアナを探す
2:ヨーコと一刻も早く合流したい
3:グレンとラガンは誰が持ってんだ?
4:もう一回白目野郎(ヒィッツカラルド)と出会ったら今度こそぶっ倒す!
[備考]
※グレンとラガンも支給品として誰かに支給されているのではないかと思っています。
※ビクトリームをガンメンに似た何かだと認識しています。
※文字が読めないため、名簿や地図の確認は不可能だと思われます。
※ゴーカートの動かし方をだいたい覚えました。
※ゲイボルクの効果にまるで気づいていません。
※シモンの死に対しては半信半疑の状態です。
※拡声器の声の主(八神はやて)、および機動六課メンバーに関しては
警戒しつつも自分の目で見てみるまで最終結論は出さない、というスタンスになりました。
【カミナ@天元突破グレンラガン】
[状態]:精神力消耗(大・気絶一歩手前)
体力消耗(大)、左肩に大きな裂傷(激しく動かすと激痛が走る)
[装備]:なんでも切れる剣@サイボーグクロちゃん
[道具]:支給品一式、ベリーなメロン(3個)@金色のガッシュベル!!(?)、ゲイボルク@Fate/stay night
クロスミラージュ(待機状態)@魔法少女リリカルなのはStrikerS(カートリッジ3/4:1/4)
[思考]基本:殺し合いには意地でも乗らない。
0:とりあえず陸地へ泳ぐ(どの方向へ向かうかは次の書き手さんにお任せします)
1:ティアナを探す
2:ヨーコと一刻も早く合流したい
3:グレンとラガンは誰が持ってんだ?
4:もう一回白目野郎(ヒィッツカラルド)と出会ったら今度こそぶっ倒す!
[備考]
※グレンとラガンも支給品として誰かに支給されているのではないかと思っています。
※ビクトリームをガンメンに似た何かだと認識しています。
※文字が読めないため、名簿や地図の確認は不可能だと思われます。
※ゴーカートの動かし方をだいたい覚えました。
※ゲイボルクの効果にまるで気づいていません。
※シモンの死に対しては半信半疑の状態です。
※拡声器の声の主(八神はやて)、および機動六課メンバーに関しては
警戒しつつも自分の目で見てみるまで最終結論は出さない、というスタンスになりました。
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146:せやけどそれはただの夢や | カミナ | 182:いまひとたびの生 |
146:せやけどそれはただの夢や | ティアナ・ランスター | 157:嗤う高遠 |