悪魔(デビル)が哭く夜! 復活のデビルマスタング ◆Yf4GQL3Gk6
「すまナい……」
商店街、布団屋の裏庭。そこに、4つの土饅頭の前に立つ鎧姿の異形がいた。
「おマエを助けるドころカ……こんナコとになってしまッタ……」
異形は、黒い鎧に身を包み、灰色の皮膚を持つ。右腕は全て金属の鱗に包まれており、
目じりや他の部分にも所々鱗が生え、目はまるで爬虫類の如く釣り上がり、真っ赤に染まっている。
鎧は、つい先ほどまで自らの意思で歩き回っていた大鎧を、
漆黒に染めて平均的な成人男性の体格にあわせたような物で、所々から銀色の鱗が生えている。
けして、大柄とは言えないその異形は、しかしその見た目に似合わぬ怪力で大きな木を小脇に軽々と抱え、
鋭く尖った刃と化した右腕の手甲部を用いてそれを削り続けていた。
目じりや他の部分にも所々鱗が生え、目はまるで爬虫類の如く釣り上がり、真っ赤に染まっている。
鎧は、つい先ほどまで自らの意思で歩き回っていた大鎧を、
漆黒に染めて平均的な成人男性の体格にあわせたような物で、所々から銀色の鱗が生えている。
けして、大柄とは言えないその異形は、しかしその見た目に似合わぬ怪力で大きな木を小脇に軽々と抱え、
鋭く尖った刃と化した右腕の手甲部を用いてそれを削り続けていた。
この男、ロイ・マスタング。かつて失った親友、マース・ヒューズの名前をこのゲームの名簿で見つけ、
彼を守りたい一心で再び修羅と化す事を決意し、戦いの中でその手を血に染め、
子供を焼き、サイボーグを焼き、その身を異形と化してまでも戦い抜いて、遂に友と出会い――
彼を守りたい一心で再び修羅と化す事を決意し、戦いの中でその手を血に染め、
子供を焼き、サイボーグを焼き、その身を異形と化してまでも戦い抜いて、遂に友と出会い――
そして、殺した男。
その男、ロイ・マスタングは、やがて木を削り終えると、
友とその仲間達であろう人間が眠る土饅頭へと突き刺し始めた。
友とその仲間達であろう人間が眠る土饅頭へと突き刺し始めた。
一つ目に刻まれた名は、『アルフォンス・エルリック』。彼が今着込んでいる鎧に宿っていた魂、
かつて禁忌の人体練成によってその体を失い、僅かに血印によってかりそめの肉体へと魂を縛り付けていた、少年。
かつて禁忌の人体練成によってその体を失い、僅かに血印によってかりそめの肉体へと魂を縛り付けていた、少年。
彼の墓に、骨は無い。あるのは、ただ僅かに彼の持っていた荷物と彼の現在の顔とも言える兜、
そして、彼が確かに『そこ』に居た証である……破れた血印のみ。
そして、彼が確かに『そこ』に居た証である……破れた血印のみ。
二つ目に刻まれた文字は、『無名少女の墓』。泉こなたという名のこの少女を、ロイは知らない。
しかし、マース・ヒューズの性格を考えれば、ロイにも大体察しはついた。
きっと、マース・ヒューズは彼女とこの惨劇のゲームの中で出会い、
今までアルフォンスと共に守り抜いてきた……そのような所であろうと。
しかし、マース・ヒューズの性格を考えれば、ロイにも大体察しはついた。
きっと、マース・ヒューズは彼女とこの惨劇のゲームの中で出会い、
今までアルフォンスと共に守り抜いてきた……そのような所であろうと。
だが、運命は残酷であった。親友が守ろうとした彼女は、
ロイ自身の手にかかり、今は冷たい土の中で静かに眠り続けている。
ロイ自身の手にかかり、今は冷たい土の中で静かに眠り続けている。
三つ目に刻まれた名は、『マース・ヒューズ』。彼、ロイ・マスタングの親友。
どこまでも親バカな男で、公衆の面前で愛娘の特大写真の前に立ってノロけ話をした上、
倒れてきた写真の下敷きになって笑われるような、気楽で……優しい男。
どこまでも親バカな男で、公衆の面前で愛娘の特大写真の前に立ってノロけ話をした上、
倒れてきた写真の下敷きになって笑われるような、気楽で……優しい男。
彼、ロイ・マスタングが殺し合いのゲームに乗った理由となった人物であり、命を懸けても守らんとした人物であり……
そして、彼自身が手にかけた人物でもある。
異形は、三つの木材を墓に刺し終えると、最後の一柱に向けて刃を向け、
そして一秒、呼吸を止めた後、未だ何も記されていないその木肌に、一気に文字を彫り込んだ。
そして一秒、呼吸を止めた後、未だ何も記されていないその木肌に、一気に文字を彫り込んだ。
『世にも無能で愚かな男 ロイ・マスタング ここに眠る』
「私は……死ンダ」
無機質な声で呟くロイ。彫り終えたその一柱を右手で高く掲げた後、一気に最後の土饅頭へと突き刺した。
「今ノ私は悪魔の錬金術師。悪魔軍人デビルマスタング……」
彼は、突き刺さった墓の、ロイ・マスタングの文字を見つめると、最後にそれだけ吐き捨てて歩き出した。
― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―
彼は、親友を殺した時から考えていた。考え続けていた。いっそ、この身を川に投げてしまった方が、
どれだけ楽なことか……と。
しかし、彼の野心は、それを許さなかった。彼には、やらなければならない事が多すぎたからだ。
どれだけ楽なことか……と。
しかし、彼の野心は、それを許さなかった。彼には、やらなければならない事が多すぎたからだ。
この陰惨なゲームを開催した螺旋王。彼は、どんな手段を用いたのかは知らないが、死人を蘇生させていた。
それは、ロイ自身がマース・ヒューズという例を間近で見ているから間違いない。
錬金術をも軽く上回り、魔法や、ファンタジーと呼んでも差し支えないような絶大なその力が……
禁忌と呼ばれ、一例の成功例も見ない死者の人体練成にも等しいことを、やってのけるそのその力が……
それは、ロイ自身がマース・ヒューズという例を間近で見ているから間違いない。
錬金術をも軽く上回り、魔法や、ファンタジーと呼んでも差し支えないような絶大なその力が……
禁忌と呼ばれ、一例の成功例も見ない死者の人体練成にも等しいことを、やってのけるそのその力が……
欲しい。これが今の彼の『野望』だった。優勝して力を願い、叶うものなら力をもらう。
もし、それが駄目だと言うのなら……螺旋王を殺してでも奪い取るまで。
もし、それが駄目だと言うのなら……螺旋王を殺してでも奪い取るまで。
「私に取り付いテイルこの金属片……何かハ知らんが、宿主に絶大な力をモタラすらしいな」
歩きながら、右手につけた鎧の手と、その下にはめた発火布の手袋を脱ぎ、自らの手を見回す異形。
その右手では、銀色の鱗が蠢き、犇めき合っている。しかし、痛みは感じないし、何よりある程度は意のままに操れるようであったのだ。
その力を、彼はもう体験済みである。散らばったアルフォンスの鎧をかき集め、錬金術も使わずに取り込み、
再構成して漆黒の鎧に仕立て上げたり、ボロボロであった制服にも侵食し、真紅に染まったギザギザの、
丈の長い服として仕立て直したり、あっという間に鎧の手甲の部分を錬成陣も描かずに刃へと変えてみせたり、
その力は、神か、悪魔の業としか思えないほどであった。
また、それ以外にも生命力を増幅させる効果でもあるのか、傷つき、今にも息絶えそうだったロイの体は、
見る間に回復していき、銀色の鱗こそ付いたものの、今では以前よりもずっと力強く、ずっと早く動けるようになっていたのである。
その右手では、銀色の鱗が蠢き、犇めき合っている。しかし、痛みは感じないし、何よりある程度は意のままに操れるようであったのだ。
その力を、彼はもう体験済みである。散らばったアルフォンスの鎧をかき集め、錬金術も使わずに取り込み、
再構成して漆黒の鎧に仕立て上げたり、ボロボロであった制服にも侵食し、真紅に染まったギザギザの、
丈の長い服として仕立て直したり、あっという間に鎧の手甲の部分を錬成陣も描かずに刃へと変えてみせたり、
その力は、神か、悪魔の業としか思えないほどであった。
また、それ以外にも生命力を増幅させる効果でもあるのか、傷つき、今にも息絶えそうだったロイの体は、
見る間に回復していき、銀色の鱗こそ付いたものの、今では以前よりもずっと力強く、ずっと早く動けるようになっていたのである。
「そシテ……取り込んだモノ、取り付イタ物の力を模倣シ……『進化』スル……」
ゆっくりと手袋と鎧をはめなおし……次の瞬間、鎧の指同士を激しくこすり合わせるロイ。
同時に、可燃物を着弾地点に練成、大気中の酸素濃度を調節しておく。
すると、まるで発火布の手袋で着火した時と同じように火花が走り、爆発が起こる。
……これは、DG細胞が宿主であるロイに『適応』し、発火布の組成を『模倣』して『進化』し、
まるで発火布の手袋そのものの様に、鎧の指先部分のDG細胞だけを変化させたものだ。
同時に、可燃物を着弾地点に練成、大気中の酸素濃度を調節しておく。
すると、まるで発火布の手袋で着火した時と同じように火花が走り、爆発が起こる。
……これは、DG細胞が宿主であるロイに『適応』し、発火布の組成を『模倣』して『進化』し、
まるで発火布の手袋そのものの様に、鎧の指先部分のDG細胞だけを変化させたものだ。
ロイは思う。もし、この金属片の侵食能力を利用して、螺旋王を自らの支配下に置くか、その能力を手に入れることが出来たら……と。
もし、そうなればこのゲームを破壊することはおろか、いかなる攻撃からも身を守る程の防御能力、
いかなる参加者にも気づかれずに首輪を嵌めてみせるだけの隠密行動性、
その他、死者蘇生を含めてまるで夢の様な数々の能力を駆使し……国に、いや、世界に大革変を起こすことも可能になるはずだ。
自らが大総統に就任するよりも、迅速、且つ、確実に。
もし、そうなればこのゲームを破壊することはおろか、いかなる攻撃からも身を守る程の防御能力、
いかなる参加者にも気づかれずに首輪を嵌めてみせるだけの隠密行動性、
その他、死者蘇生を含めてまるで夢の様な数々の能力を駆使し……国に、いや、世界に大革変を起こすことも可能になるはずだ。
自らが大総統に就任するよりも、迅速、且つ、確実に。
「手段ハ……選ばナイ……!」
その野望の為、手段は選ばない。確かに、ロイはロイ・マスタングであった頃よりも遥かに強靭になり、
様々な物質に対してDG細胞を通じ働きかけることが可能になった。
しかし、恐らくそれだけでは螺旋王に対抗する事は不可能だろう、とロイは考える。
この、残酷なゲームの場でロイの体に入った以上、これは誰かの支給品である、と考えていたからだ。
それならば、螺旋王はこの金属片と同化しただけの参加者が自分に歯向かって来ても問題ないと考えているのだろう。
不思議な力を手に入れた参加者が、螺旋王に歯向かう可能性はある筈であり、首輪や監視、迎撃体制の構築などなどの対策を施しているはずだから。
様々な物質に対してDG細胞を通じ働きかけることが可能になった。
しかし、恐らくそれだけでは螺旋王に対抗する事は不可能だろう、とロイは考える。
この、残酷なゲームの場でロイの体に入った以上、これは誰かの支給品である、と考えていたからだ。
それならば、螺旋王はこの金属片と同化しただけの参加者が自分に歯向かって来ても問題ないと考えているのだろう。
不思議な力を手に入れた参加者が、螺旋王に歯向かう可能性はある筈であり、首輪や監視、迎撃体制の構築などなどの対策を施しているはずだから。
だから、もっと『進化』する……具体的に言えば、この悪趣味なゲームに参加している参加者達を取り込んで『進化』するのだ……
それこそ、螺旋王ですら想像だにしえない、『化け物』へと……
それこそ、螺旋王ですら想像だにしえない、『化け物』へと……
理想の為に軍へと入り、理想の為に狗と呼ばれようとも戦い続けてきた男は、理想のゆえに……
人間を、止めた。
【F-5/商店街・布団屋から徒歩3分くらい/1日目-昼(放送直前)】
【ロイ・マスタング@鋼の錬金術師】
[状態]:デビルマスタング状態、以前よりも身体能力が向上
健康(?)、DG細胞の意識支配率…およそ5%
[装備]:アルの鎧(DG細胞寄生、黒い色)、制服(DG細胞寄生、赤い色)
ロイの発火布の手袋@鋼の錬金術師
[道具]:デイバッグ(×1)、支給品一式(×4、-ランタン×1)、ジャガイモカレー(大)、マチェット
[思考]
基本思考:優勝して願うか、螺旋王を殺して吸収し螺旋王の能力(死者蘇生や戦闘能力など)を
手に入れて現実へ帰還。その力を持って世界に大変革を齎して、新世界の神になる。
1:参加者は、発見しだい半殺しにして取り込む。そして力を吸い尽くし次第捨てていく。
2:どんどん力を吸って、自らを螺旋王に対抗しうるだけの力を持つ生物へ『自己進化』させる。
3:もう迷わない。迷いたくない。
4:リザ・ホークアイに出会った時の対応は考えたくない。
[状態]:デビルマスタング状態、以前よりも身体能力が向上
健康(?)、DG細胞の意識支配率…およそ5%
[装備]:アルの鎧(DG細胞寄生、黒い色)、制服(DG細胞寄生、赤い色)
ロイの発火布の手袋@鋼の錬金術師
[道具]:デイバッグ(×1)、支給品一式(×4、-ランタン×1)、ジャガイモカレー(大)、マチェット
[思考]
基本思考:優勝して願うか、螺旋王を殺して吸収し螺旋王の能力(死者蘇生や戦闘能力など)を
手に入れて現実へ帰還。その力を持って世界に大変革を齎して、新世界の神になる。
1:参加者は、発見しだい半殺しにして取り込む。そして力を吸い尽くし次第捨てていく。
2:どんどん力を吸って、自らを螺旋王に対抗しうるだけの力を持つ生物へ『自己進化』させる。
3:もう迷わない。迷いたくない。
4:リザ・ホークアイに出会った時の対応は考えたくない。
※DG細胞は全身に行き渡りました
※強い精神力で、DG細胞をある程度支配しています。
※精神的にダメージを受けているので、DG細胞による意識支配への抵抗力が多少低下。
精神的なダメージをさらに受けて侵食が進むと「人間を絶滅させたくなる」や、
「自我を失い暴走する」などといった症状が現れる可能性があります。
※強い精神力で、DG細胞をある程度支配しています。
※精神的にダメージを受けているので、DG細胞による意識支配への抵抗力が多少低下。
精神的なダメージをさらに受けて侵食が進むと「人間を絶滅させたくなる」や、
「自我を失い暴走する」などといった症状が現れる可能性があります。
※布団屋の裏庭に、ヒューズ、こなた、アルの血印が埋葬され、以下の支給品が共に埋もれています。
デイバッグ(×3)、S&W M38(弾数1/5)、S&W M38の予備弾数20発、エンフィールドNO.2(弾数5/6)、
短剣×12本、単眼鏡、水鉄砲、銀玉鉄砲(銀玉×60発)、チェーンソー
※S&W M38(弾数1/5)は埋まったマース・ヒューズの手に握られています
短剣×12本、単眼鏡、水鉄砲、銀玉鉄砲(銀玉×60発)、チェーンソー
※S&W M38(弾数1/5)は埋まったマース・ヒューズの手に握られています
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136:禁忌の身体 | ロイ・マスタング | 164:好奇心は猫をも殺す |