Beautiful Dreamer ~Smile Again  ◆DNdG5hiFT6



気付いたら私は草原にいた。
視界いっぱいに広がる鮮やかな緑色の絨毯とどこまでも続く透き通るような青空。
草原を走る風が爽やかな匂いを届けて、ぽかぽかした陽気が体を暖めてくれる。
そんな心地いい世界で、私は草原に背を預けごろんと寝転がっていた。
ふと隣に気配を感じて、首を横に向けるとそこには私と同じように寝転がる“お姉ちゃん”の姿があった。
といっても年の離れた実の姉のゆいお姉ちゃんじゃなくて、私にとってのもう一人の“お姉ちゃん”。
血縁的に言えば従姉で、今は一つ屋根の下で暮らすこなたお姉ちゃんだった。

「やっほー、ゆーちゃん元気ー?」

いつも通りの声で私に笑いかけるお姉ちゃん。

「うん、元気だよ、こなたお姉ちゃん」

信じられないほどに体の調子がいい。
やはり空気のいいところにいると体の調子もいいものなのかな?

「うんうん、そりゃ何よりだよ」

そう言うお姉ちゃんは言葉とは裏腹にニヤニヤと笑みを浮かべている。
こういう場合は大抵かがみおねえちゃんをからかっている時なのでちょっと不安だ。

「それにしてもゆーちゃんがいい人とめぐり合えたみたいで私は安心したよ」

そう言われて脳裏に浮かぶのは顔の左側に大きな傷を負った男の人。
徒でさえ強面で――時々ほんとうに怖い顔になるけれど、私は知っている。
自殺しようとしていた自分を落ち着かせてくれて、行動を一緒にしてくれている優しい人だ。

「うん、Dボゥイさんはいい人だよ」
「そうだね、結構カッコイイし。
 でもちょっとそこは意外かな? ゆーちゃんのタイプって純朴そうなのかと思ってたからさー。
 まさか男ツンデレを攻略するとは……ゆーちゃん、GJ!」

えええええええええええ! い、“いい人”ってそういう意味!?
そ、そうじゃない! Dボゥイさんはそういう相手じゃないよおねーちゃん!
確かに抱きしめられてドキドキしたりもしたけど!
その時にちょっと「男の人の匂いってこんな感じなんだ……」とか思ったりもしたけど!

「……まさかゆーちゃんがそこまで進んでたなんて……ショックだよ……」

だから違うよ! 『ホントにショック受けた』って顔で言わないでよ!
お、お姉ちゃんこそどうなの! 男の人の影がないって言ってたじゃない!
でも、私がそう返すとお姉ちゃんはちょっと困ったような表情で。

「んー、私もいい人たちと出会えたかな。
 ただちょっと……リアルLUCが足りなかったみたいでさ、そこで運が尽きちゃったみたい。
 もしかしてレバ剣拾ったときに使い果たしちゃったかなー?」

その人たちとケンカでもしたのだろうか?
そう訊くとお姉ちゃんは首を横に振った。

「ううん、ケンカはしなかったな。
 でも、ここで“終わり”だと思うと残念かなって」

そう言って私を見る目はどこまでも穏やかで、不安になる。
だってなんでそんな――『遠く』から私を見るのだろう?

「な、に……言ってるの?」

お姉ちゃんの言うことが理解できない。
ねえ、“終わり”ってどういうこと?

「ははは……現実は非情なのにさ、こういうところは漫画みたいなんだね。
 もしかしたらあっちには神様もいるかも……できれば綺麗な女神サマがいいんだけどね~」

そんな空っぽな笑い方、らしくないよ。
こなたお姉ちゃんはもっと明るい笑顔が似合ってるよ。

「ん……ありがとね、ゆーちゃん。
 ……さてと、そろそろ行かなきゃ。
 つかさも待ってるだろうし……もしかしたらお母さんにも会えるかもしれないしね」

体が動かない。声が出ない。何で? どうして?
言いたいことがあるのに。聞かなきゃいけないことがあるのに。

「あ、そうそう。お父さんに伝えといて。“『俺より先にいくな』って約束守れなくてごめん”って」

自分で伝えればいいよ。じゃないと叔父さんも悲しむよ。

「あはは、うん、でもね私、ここでバッドエンドみたいなんだ。
 いやーセーブ&ロードが使えないってユーザーフレンドリーじゃないよね。
 一昔前ならともかく今ならクソゲー呼ばわりだよ」

言ってることはいつも通りなのに私の中の不安は消えない。
それどころか不安がどんどん膨れ上がっていって体ごと破裂してしまいそう。

「でも大丈夫! ゆーちゃんならノーコンテニューで最後までいけるって!」

そう言いきった姿はいつも通り、自信満々なお姉ちゃんの姿。
でも、何処か寂しげで。その理由を訊こうとした瞬間、

「こなたさーん!」
「おーい、そろそろ時間だってよー」

声のした方に目を向けるとそこには中学生ぐらいの男の子とさっき会ったお姉さんと同じ服を着た眼鏡のおじさんがいた。
その時、私には何故か見覚えの無いその二人がお姉ちゃんを連れて行っちゃう存在に見えて、
失礼にも程があるのに『あの人たちについてっちゃだめ』と言いかける。
でも声が出ない。指も動かせない。動かなきゃいけないのに体の境界線が滲んでしまったみたいにあやふやで動かせない。
そんな感覚に戸惑う私の体を暖かさが包み込む。
そして――理解する。
ああ、抱きしめられてるんだ、私。

「春にゆーちゃんがうちに来てから色々会ったよね。
 夏祭りも行ったし、文化祭で踊ったの楽しかったね」

うん、楽しかった。だからもう一度――ううん、何度でもやろうよ、こなたお姉ちゃん。

「今はつらいけど、未来には楽しいことが色々待ってるから、挫けちゃダメだよ。
 みなみちゃんやひよりん、パティ達とも仲良くね」

そこにはお姉ちゃんもいなきゃダメだよ。かがみおねえちゃんやつかさおねえちゃん、高良先輩たちもいっしょじゃなきゃヤダよ。

「私、一人っ子だったから、ゆい姉さんとゆーちゃんがホントの姉妹みたいで嬉しかったよ」

私だってそうだよ。お姉ちゃんが二人もいるなんて幸せだよ。

「もっと沢山話したかったよ。もっと色々遊びたかったよ。もっとずっと一緒にいたかったよ。
 でもさ……私はここまでっぽいや」

耳元から聞こえる声は、優しくて、暖かくて。
なのに――なんで涙が溢れて止まらないんだろう。

「ゆーちゃん、泣かないで。いつもみたいに可愛い笑顔を見せてよ」

頬にやわらかい感触。お姉ちゃんの指が涙を拭き取ってるんだ。

「私が思うにゆーちゃんの笑顔はいわゆる一つの萌え要素ってやつでさ、きっと色々な人に癒しと幸せを運ぶと思うんだ。
 これから辛いことや悲しいことが沢山あると思うし、泣きたいときは泣いてもいい。
 でもさ、笑うことだけは忘れないで。私には出来なかったけど、ゆーちゃんなら出来るよ」

笑うから、きっと笑うから。だから――いかないで。

「じゃあね、ばいばいゆーちゃん。
 ホントに……ホントのホントに大好きだよ。私の……自慢の従妹で、素敵な友達で、かわいい妹だったよ」

どんどん意識がぼやけていく。
気を失うのとは違う、夢から覚めてしまうような感覚。
ああ――そうか、これは夢なんだ。
覚めないでと願っても、夢だと気付いた瞬間にどんどん指からすり抜けてしまう幻みたいな記憶。
だから願いとは裏腹に温もりが、大好きなこなたお姉ちゃんの温もりが消えていく。

「もう……いいのか?」
「……うん、言い出したらきりが無いし。それにゆーちゃんはああ見えて強い子だから大丈夫だよ」
「こなたさんが言うならそうなんだろうね。僕も応援するよ」
「ああ、俺たちにできるのはもうそのくらいしかないしな。スバルの奴もきっと大丈夫だろうよ」
「そうそう、だってスバルもゆーちゃんも“萌え要素”の塊だもん」
「“モエ要素”?」
「んー、あっちに行ったらアル君たちにも教えてあげるよ。
 “萌え”の真髄ってやつをさ――」

そう言いながら二人と一緒に歩いていくお姉ちゃんの背中を最後に、私の意識は光の中に落ちた。


 * * *


「……たか……ゆたか!」

ゆたかの瞳に映るのは自分を心配そうに見つめる二つの瞳。
顔の左側に大きな傷――ああ、そうだ私はこの人を知っている。

「D……ボゥイ……さん……?」

Dボゥイは心配そうに自分の顔を覗き込んでいる。

「大丈夫か、ゆたか」
「え……何が……」

そう言われて頬を伝う冷たい感触に気付く。
そういえば、何かとても悲しい夢を見た気がする。
でも指の間から水が零れていくみたいに、夢の記憶が無くなっていく。
大切なことだったのに――思い出せない。

「――本当に大丈夫か?」

より深くゆたかの顔を覗き込むDボゥイ。
その距離はゆたかにしてみれば密着状態といっても過言ではない距離で
男性に免疫の無いゆたかは顔に血が上ってしまい、顔を背けてしまう。
そこで気付く。周りの光景が先程までいた公園ではないと。

「あれ……ここはどこですか?」
「地図でいうD-6の端……総合病院の裏側から少し離れたところだ」

 * * *


Dボゥイも最初はゆたかが目覚めるまで自然公園に留まっているつもりだった。
だがゆたかが気絶してから1時間ぐらいたった頃だろうか。
北の方から連続した銃声と建物が倒壊する音が連続して聞こえてきたのだ。
しかも音の元はこちらに近づいてきている。

――今、戦闘に巻き込まれるわけにはいかない
そう考えたDボゥイはその視界から消えるため、ゆたかを抱えたまま移動するという分の悪い賭けに出た。
周囲を警戒しつつ、喧騒から逃げるように南下。
そして物陰に隠れながら慎重を期しつつ、E-5から回り込むようにして
直線距離で言うとたったの1キロを1時間以上かけて移動した。
そして幸運なことに誰にも会わずに病院に辿り着いたのだが――

「あの……何で病院に入らないんですか?」

目的地が目の前にある以上、それは当然の疑問と言えた。
その疑問に対してDボゥイは僅かに迷った後に、その理由を端的に答える。

「病院には……危険なやつがいる」


 * * *


その原因を説明するには、時間を約1時間ほどさかのぼることになる。

Dボゥイがゆたかを抱えて病院近くに到着したのは午前9時前のことだった。
そして見通しのいい道を避け、裏口から入ろうとしていたDボゥイを押し止めたのは、
内部から響いた何かが割れる音とその直後に病院から出てきた中年男性の姿だった。
男は身を隠したDボゥイたちに気付く余裕もないようで、全身がボロボロの状態で北に向かって行き、
その直後、またもや病院から――明らかに人間を超えた速度――二人組の男が中年が逃げた方向に走っていった。
その態度にただならぬものを感じたDボゥイが建物の影に隠れるようにその後の様子を伺っていると、
『ぎゃああああああああああああ!?!?』
そこには右腕を切り落とされ、さらに全身を何らかの電撃で焼かれ絶命する中年男の姿があった。
それは遠目に見ても圧倒的な実力差で、“嬲り殺し”という表現が一番しっくり来るように思えた。

その光景を見てDボゥイは自分の迂闊さを呪う。
病院ならば治療器具がある……そう考えるのは怪我したものだけではない。
そう考えた手負いの者を狙って動く殺戮者も存在するのだ。
恐らくはあの全身が青い男と東洋風の格好をした男もそうなのだろう。
男を殺した二人組が男の死体に何かをしている隙に病院から離れたが、これからの予定は白紙に戻ってしまった。
――せめてあいつらがいれば。
Dボゥイの脳裏に浮かぶのはアキやノアルを初めとしたスペースナイツの仲間達。
信頼できる彼らがいれば、この少女を彼らに預けてあの危険人物たちと戦えるのだが――
だが、そこまで考えてDボゥイは己の思考をあざ笑う。

(まともな“人間”なら、まずこの殺し合いの戦場にあいつらの名が無くて良かったことを喜ぶべきだろう。
 ……所詮俺もあの悪魔達と同類なのか)

その証拠に今もしもシンヤと……エビルと会ってしまえば、自分はきっとゆたかを見捨てて殺しあうだろう。
そんなネガティブな思考を止めたのは自分の手を握る小さい手の感触だった。
すでにかつての仲間を殺した、血塗られたこの手を包み込む少女の柔らかな両手。

「Dボゥイさん……怖い顔してます。
 その……辛いときこそ笑いましょう。きっと……大丈夫だって思えるはずですから……」

――これが先程まで知り合いの死を嘆いていた少女の姿だろうか。
絶望の中で笑顔を作るのは難しい。それはDボゥイが誰よりも知っている。
だからこそ、この笑顔には確かな力がある。
儚げで、今にも消えてしまいそうだがそれでも咲き続ける一輪の花のような笑み。
その笑顔を見て、感じていた暗い思考が霞のように消えていく。

「ああ……そうだな。ありがとう、ゆたか」

ゆたかの笑顔に応えるように、Dボゥイは唇の端を持ち上げる。
それは微かであまりにも不器用だったが、彼がこの戦場に連れてこられてから初めて見せる笑顔だった。


【D-6/総合病院から少し離れたところ/昼】
【Dボゥイ@宇宙の騎士テッカマンブレード】
[状態]:左肩から背中の中心まで大きな裂傷(出血は治癒、裂傷に伴う痛みは若干残っている)、吹き飛ばされたときに全身に打撲、中度の貧血
[装備]:テッカマンアックスのテックランサー(斧) @宇宙の騎士テッカマンブレード
[道具]:支給品一式、月の石のかけら(2個)@金色のガッシュベル!!   
[思考]
1:しばらく潜伏した後、何処に向かうかを決める
2:テッカマンエビル、相羽シンヤを殺す
3:2を果たすためなら、下記の思考を度外視する可能性あり
4:兎に角、ゆたかと自分が休める場所(ある程度安全でベッドや布団のある場所)を探す
5:ゆたかを知り合いか信頼できる人物にゆだねる、つもりだったが迷い中。
6:仲間を探すべきか? だがこの戦場で本当に信用できる人間がいるのか?
7:ゲームに乗っている人間を殺す

[備考]
 :殺し合いに乗っているものはラダムと同じだと結論しました
 :テッカマンアックス撃破後、身体が蝕まれる前ぐらいを意識しました
 :ヒィッツカラルドの簡単に埋葬された死体の上にフィーロの帽子@バッカーノ! が置かれています。
 :六課メンバー、クロ達、リザの仲間達の情報を入手。
 :紙の詰まったトランクケースはD-7に放置されたまま。
 :青い男(ランサー)、及び東洋風の服装の男(戴宗)を危険人物として認識しました



【小早川ゆたか@らき☆すた】
[状態]:肉体的疲労小、精神的疲労中
[装備]:COLT M16A1/M203@現実(20/20)(0/1)、コアドリル@天元突破グレンラガン
[道具]:支給品一式、鴇羽舞衣のマフラー@舞-HiME、糸色望の旅立ちセット@さよなら絶望先生[遺書用の封筒が欠損]
      M16 アサルトライフル用予備弾x20(5.56mm NATO弾)、M203 グレネードランチャー用予備弾(榴弾x6、WP発煙弾x2、照明弾x2、催涙弾x2)
[思考]
1:辛くても笑わなきゃいけない気がする
2:なんで私泣いてたんだろう……?

[備考]
 :コアドリルがただのアクセサリーではないということに気がつきました。
 :夢の内容は今のところぼんやりとしか覚えていません


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106:悲劇は目蓋を下ろした優しき鬱 Dボゥイ 148:捻 -twists and turns-
106:悲劇は目蓋を下ろした優しき鬱 小早川ゆたか 148:捻 -twists and turns-





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