野蛮召喚塔 ◆RwRVJyFBpg



白い床に煌びやかな照明。立ち並ぶ人型は色とりどりの衣装を纏い、思い思いのポージング。
ガラスの中の貴金属はどれもこれもが眩い光を反射して、キラキラと価値を主張する。
飯麓百貨店婦人服売り場。
時が時ならば、有閑な奥様方が連れ立って、ショッピングに興じるであろうこの場所は今、静寂に包まれていた。
もはや日も高いというのに、店内には商品のチェックをする売り子一人見当たらない。
本来ならば、開店間際の喧騒に包まれていなければいけないそこには今、代わりに少女がただ一人。
白い肌。キメ細やかな髪。華奢で柔らかなボディ。
どことなく高貴な感じを漂わせるその少女は、少し幼すぎることを除けば
十分にこの場に似つかわしいキャラクターを持ち合わせている。
しかし、彼女がその手で行っている所業は、とてもこの場にマッチしているとは言えなかった。

少女の両手には抱えきれないほどの布の山があった。
よく見ればその山は、この売り場の主役、買い手のない婦人服たちでできている。
彼女は一枚何万円という値段がついたそれを一枚ずつ無造作に掴み出し、床へと落とす。
一枚落とせば、もう一枚。次を落とせばさらに一枚と、少しづつ間を空けながら、服を床に広げていく。
そんな作業をしばらく続け、腕に抱えた服を全て撒きおわると、少女は次に周りのラックから
服をひっぺがし、さっき落としたものの周りに配置していく。
床のうちの少なくない部分が布に覆われたことを確認すると、少女はほっと一息。
一瞬の間を置いた後、止まっているエスカレーターに向かって走り出し、駆け下りて行ってしまった。

少女の去った後には、布の山と、鼻を衝くような刺激臭だけが残っていた。


長い影が道路に広がる朝のビル街。
スーツを着たビジネスマンも、着飾った若い女性もいないそこ、広い道路の中心に、一人の恰幅のよい老婆が立っていた。
老婆の手には黄色いペンキがたっぷりついた刷毛が握られている。
彼女は、傍らのペンキ缶の中にそれを突っ込み、一、二度まさぐった後、刷毛の先を道路へと向けた。
たちまちのうち、黒いコンクリートに黄色い線が3本刻まれ、それが矢印(←)の形を成す。
周りを見渡せば、前後の道路には、これと同じような矢印がいくつか描かれている。
老婆は自ら作り出した記号の群れを一瞥すると、満足そうに頷く。

「おばさま~こっちも全部終わりました~」

作業を終え、老婆が道具の片付けに入るのと、正面の豪奢な建物――デパートから少女の声が聞こえるのとはほぼ同時だった。

「なかなか、いいタイミングだ。こっちもちょうど終わったとこだよ」

老婆は少女に応えると、もう一度、何かを確かめるように周りを睥睨する。

「さぁて、それじゃあお待ちかねのショー・タイムといこうかね」

懸案事項がないことを確認すると、彼女は支給品のランタンから即製のたいまつに火を移し……








そのままそれを、デパートの中目掛けて放り込んだ。








「念の為だ。もう一度だけ手際を確認しとくよ!」
「はいっ!お願いします!」

ドーラが受話器に怒鳴ると、向こうからは威勢のよいニアの声が返ってくる。

彼女達は今、デパートの大通りを挟んだ向かい側、六階建てのオフィスルビルにいた。
目の前のデパート一階は、既に赤々と燃える炎の前にその体を首まで没している。
この調子で燃え広がれば、二階、三階と陥落していくのはほぼ間違いないだろう。
言うまでもなく既に自明のことではあるが、この火災は、ドーラとニアによって人為的に起されたものである。
何故、彼女達はこの殺し合いの場で、何もない、誰もいない建物にわざわざ火を放つような真似をしたのか?
それにはもちろん、理由があった。

「まずは、この作戦の狙いだ。もちろんちゃんと分かってるだろうね?」
「はいっ!今回の作戦の狙いは、できるだけ安全に、かつ、効率的に人を集めることです!」

そう、今回の放火、その目的は人集めにある。
この殺し合いが始まってから既に十数時間。
にもかかわらず、彼女達はまだ、お互い以外の人間を影も形も目撃していない。
ここが血で血を洗う蠱毒の壷中であることを考えれば
それはある意味で幸運なことかもしれなかったが、そうこうしているうちに、大切な仲間が死んだと聞かされては話が違う。
ヨーコ。シータ。そしてパズー。
人と接触し、情報を集め、一刻も早く会場にいる残りの仲間と合流しなければならない。
シモンのような悲劇が、また繰り返されるその前に。
だから彼女達は、そのための方法を考えねばならなかった。

「よし。
 ……これだけの建物が燃えりゃあ、随分、遠くからでも煙が見えるはずだ。
 あそこで何かが起こってるとなりゃ、多少、危険なことが分かっていても、見たくなるのが人情ってもんさ。
 今回みたいに知り合いとちりぢりにされてんなら、なおさらだ。
 このデパートは言ってみりゃあ、大きな狼煙みたいなもんさね」

この計画を発案したのはもちろん、ドーラの方だ。
九人もの人間の死亡を伝えた放送は、彼女の方針を変更させるに十分なできごとであった。
当初の予定では、市街地を慎重に探索しながら、信用できそうな人間を吟味して接触するつもりだったが
殺し合いが予想以上に速いスピードで遂行されつつある以上、グズグズしてはいられない。
そう考えたドーラは、穏当な従来のやり方を投げ捨て、代わりに、荒っぽい海賊のやり方を採用することに決めたのだ。
「だけど……本当に燃やしてしまってよかったのでしょうか?」
「構やしないよそんなこと!どうせこのビルもあのハゲ親父の持ちモンだろうしね。
 アイツがアタシたちにしたことを考えりゃ、この街全部、焼け野原にしてもまだ足りないくらいさ」

何やら物騒なことを言っているが、勿論これは冗談で、ドーラとてこの街を焼き尽くすつもりなどない。
むしろ、火が必要以上に広まって、探すべき人をバーベキューにしてしまわないよう、最大限の注意を払っている。
燃やす建物としてこのデパートを選んだのも、気づかいの一環だ。
このデパートは、四方を幅の広い道路で囲まれているので、延焼の心配が少ない。
煙を目立たせるため、盛大に燃やしても、ここなら被害を拡大させることもないだろう。

「でも、本当によく燃えますね。あんなに大きな建物なのに、もう全体に火が回って……」
「あったりまえさね!アタシを誰だと思ってるんだい!?
 本業は海賊だから、さすがに本職には負けるが、そんじょそこらの素人とは経験が違わぁ!」
「海賊?海賊って何ですか?」
「ア"?」

実際、ドーラの手際は見事なものだった。
まず、巨大な建物を燃やすには燃料が必要だと見るやいなや、道路に散在している自動車に目をつけた。
入念に車体を調べ、ガソリンタンクを見つけると、その中にデパートで調達した服を突っ込む。
するとたちまち布が油を吸い、あっという間に固形燃料のできあがりだ。
彼女はその手順で発火元を量産すると、今度はニアに命じてそれを建物内に敷き始めた。
建物の構造、各階にある品物、火が広がる仕組み。
燃え盛る百貨店は、それらに配慮したドーラの指示が的確だったことを雄弁に語っている。
ちなみに余談ではあるが、店内を見てまわっているときに、貴金属店を見つけた彼女は
嬉々としてショーウインドーをぶち壊し、その中身を拝借していた。
余技の放火だけではなく、本職の泥棒もきちんとこなしていたというわけだ。
職業犯罪者は逞しいのである。

「……あー、何だか話が逸れちまったね。まあいい。おさらいの続きだ。ニア、アンタの仕事を言ってみな」
「ハイッ!私の仕事は、ここ――六階の窓から、この建物に誘導されてくる人を見張ることです。
 人の姿を見つけたら、その人の特徴と動きをこの電話でおばさまにお教えします。
 その人がビルの中に入ったら、とりあえず私の仕事はおしまい。おばさまに交代です」

派手な焚き火で人を集めるにしても、ただ口を開けて待っているだけというのでは芸がない。
せっかく仕掛けをうつならば、できるだけ確実に、かつ安全に接触したいと考えるのが自然の成り行きだ。
そのためにドーラが考えたギミックが、道路に多数刻まれた黄色い矢印である。
これらの矢印は、デパートの周りを隙間なく囲むように配置されている。
そして、矢印の頭は全て同じ一方向、すなわち、ドーラとニアが潜むこのビルの入り口に向けてある。

「上出来だ。覚えのいい子は嫌いじゃないよ。
 矢印に従ってビルに入ってきた相手とは、一階にいるアタシが話をする!
 こっちは相手の動きが分かってるが、相手にはこっちの正確な位置すら分かりゃしないんだ。
 お客さんが殺る気だろうが、そうでなかろうが、交渉をする上で不利ってことはないはずだよ。
 まあ、招待の仕方がずいぶんと露骨だから、ひっかかってくれるかどうかは五分五分だが
 それでも、まあ、入り口の前までは来る奴がほとんどだろう。姿が見えりゃ、最悪、話はできるからね」

ちなみに、正面の入り口を警戒されて裏に回られるのを防ぐため、他のところは全て施錠してある。
姿を見失った上に、側面を衝かれては、この計画が台無しになるからだ。

「それから、分かってるとは思うが、殺す気マンマンの奴が来た場合、戦いになるかもしれない。
 そうなったときは、電話か、それが無理なら手榴弾を爆発させて知らせるから、すぐに裏の階段から逃げるんだよ」
「……あの、やっぱりおばさまを残していくのは……」
「自惚れるンじゃないよ。足手まといだといってるのさ。
 あんたのことに気を回しながら戦って、隙を突かれておっ死にましたじゃあ、コメディにもなりゃしない。
 逃げた後はD-8の古墳まで行って待ってな。アタシも後からそこへ行く。
 ……分かったね!?」
「……ハイ、わかりました」

そのやりとりが終わると、ドーラは受話器をはずしたたまま、床へと置いた。
いざというとき、すぐに上のニアと連絡がとれるように、回線は繋ぎっぱなしにしておく。
仲間の居場所、首輪への対処、脱出の算段。
人と会って話し、手に入れなければならない情報は無数にある。

(いけ好かない王様に、外せない首輪を嵌められて、見たこともない街で、聞いたこともない殺し合いをさせられてる。
 どう見たって大いにややこしい話なのに、アタシが持ってる情報はほぼ素寒貧……か。
 やれやれ、頭痛がしてくるね)

ドーラは自分が置かれている状況をもう一度認識し、少し嘆いた。
はやる気持ちを抑え、彼女はまだ見ぬ何かの来訪を待ちわびる。

天衝く炎が召喚するは幸運の女神か?それとも無慈悲な死神か?





【E-6/デパート向かいのオフィスビル/1日目/昼】



【ニア@天元突破グレンラガン】
[状態]:健康 
[装備]:釘バット
[道具]:支給品一式 毒入りカプセル×3@金田一少年の事件簿
[思考]:
1.ビルの六階から外を見張り、人を見つけたらドーラに報告する
2.ヨーコ、シータ、パズーを探す
3.カミナの名前が気になる(シモンの言うアニキさんと同一人物?)
4.お父様(ロージェノム)を止める
※テッペリン攻略前から呼ばれています。髪はショート。ダイグレンの調理主任の時期です。
※ドーラの知りうるラピュタの情報を得ました。
※ドーラとはぐれた場合には、D-8の古墳で落ち合う約束をしました。


【ドーラ@天空の城ラピュタ】
[状態]:健康
[装備]:カミナの刀@天元突破グレンラガン
[道具]:支給品一式 食料品(肉や野菜など) 棒付手榴弾×3@R.O.D(シリーズ)大量の貴金属アクセサリ
[思考]:1.ビルの一階で来訪者を待つ
    2. 来訪者が来たら接触して情報収集したい
    3.シータ、パズー、ヨーコを探す
    4.ムスカを警戒
    5.ゲームには乗らない。ニアに付き合うが、同時に脱出手段も探したい
※ニア視点でのグレンラガンの世界観について把握しました。
※ニアとはぐれた場合には、D-8の古墳で落ち合う約束をしました。



[補足]
※デパートが炎上しました。
※火事の煙がどのエリアから観測可能なのかは、後の書き手さんにお任せいたします。


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117:貴方の描いた明日へ向かいます ニア 165:召喚
117:貴方の描いた明日へ向かいます ドーラ 165:召喚





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