Rubbish! ◆P2vcbk2T1w



この世界は、不安定で、ばらばらだ。
それでいて、意地悪なぐらいに、恣意的で。
あるときは、お日様のように優しくて暖かくて、
でも、次の瞬間には、嵐の様に残酷で激しくなっている。
まるでコインの表と裏。この世界は目まぐるしく移り変わって行く。
ゆっくりと考えている余裕なんてない。

そう、まるで今の私のよう。

色々なことが、急にたくさん押し寄せてきた。
突然巻き込まれた、異常な事件。私の、仕事のこと。
事故とは言え、犯してしまった凶事。私の、罪のこと。
突然、前触れも無くやってきた感情。私の、気持ちのこと。
そして、そのほかのいろいろな物が一緒くたになって、ぐるぐると私の頭の中を駆け回る。

分からない。
どうして良いのか、分からない。
一つの問を解こうとすると、他の問が気になってくる。
別の問を解こうとすると、また別の問が邪魔をする。
そもそも、この問に答なんてあるのだろうか。
答を出してしまっていいのだろうか。
答って、何をどうすることなんだろうか。
どうして良いのか、分からない。
嬉しいのか、悲しいのか。
嫌なのか、そうじゃないのか。
……分からない。


「おい、そこのアンタ」
「へ?」
「アンタだよ。はやて……とか言ったか? 暇なら手伝ってくれ。今は猫の手も借りたいところだ」
突然、頭上から声をかけられた。
見上げると、そこには一匹の猫が、トンカチを器用に持っている。
その姿と声に、思わず私の頬が緩んでしまう。
「ええけど……猫ちゃんが猫の手って……おもろいこと言うね」
猫ちゃんも、それを見てなんだか照れているようだ。
ばつが悪そうに鼻を掻いている。
「そ、それは言葉のアヤというもので……それに、拙者は猫ちゃんではない、ちゃんと名前がある」
「知っとるよ」
「……何?」

「アンタは、マタタビ。クロちゃんのお友達……やろ? ホンマに大工の猫なんやね」

「お主……、クロを、キッドの事を知ってるのか!?」
「うん。ここで最初に会ったのがクロちゃんでな。
 別行動で、知ってる人や、協力してくれる人を探して回ろうって話てたんや」
「それで、キッドは今どこに?」
「わからへん……けど、クロちゃんとは北西の観覧車で待ち合わせる約束になってる。ホラ、これ」
そう言いながら、はやてが見せた名簿の裏面には、
『このね-ちゃんに協力すれば愛しのゴーのとこに帰れるし、うまいもんもたらふく食えるぞ-』
と書かれた字と共に、猫の手形がスタンプされている。
「ホラ、これが証拠。信じてくれた?
 私もこれから、観覧車の方に向かうつもりやけど……マタタビも一緒に来おへん?」
「拙者は……」
マタタビは、少し悩んでいる様子だった。
でも、
「拙者は……一緒には行けない。先にこの温泉の建て直しをひと段落させないといけないからな」
返事は、ノーだった。


「そっか……残念やね」
「すまんな。だが、この調子で行けば、完成はしなくても、仮開店ぐらいにならもうすぐ漕ぎ着けるかもしれん。
 それまで待ってくれるんなら、一緒に行ってやれるかも知れん」
「ホンマに?」
「ああ。はやては急ぐのか?」
「私は……」
少し、考えてしまう。
只でさえ、最初使う予定だったモノレールの利用を断念し、大きく回り道をしてしまっている。
もしかしたら、先に行ったクロちゃんを待たせてしまうかもしれない。
だけど、私も他にやらないといけないことが出来た。
読子さんに荷物を返して、あの男の子の知り合いを捜して……
そして、それよりも先に……そう。
『返事』をしないといけない。

ああ、あかん。またなんか分からんくなってきた。

「なあ、それよりはやて」
「え、何?」
マタタビの呼びかけが、私を現実へと引き戻す。
「手伝って欲しいって言うのは本当だ。猫の手も借りたい、ってのもな。
はやてが手伝ってくれたら、少しは時間も短縮できるかもしれんどうだ、手伝ってくれるか?」
「ええと……」
一瞬、迷った。
でも、直ぐに答を返す。
「うん、ええよ。私もマタタビを手伝うよ」
やっぱり、うじうじ悩んでるのは良くない。
こういう時は、何かしている方が気が楽だ。
体を動かしていれば、このモヤモヤした気持ちも晴れるかもしれない。
そう思って、マタタビの申し出を快諾する。
「よし、じゃあ、そこの板を――」


とは言え、手伝うとは言ったものの、力仕事は正直、苦手だった。
デバイスも無いし、何より一身上の都合で、あまり大きな動きはしたくは無い。
またコケたりした日には……ああ、あかん。またヘコンできた……
「……大丈夫か?」
「え? ええ! 大丈夫ですとも!?」
いけない、いけない。後悔が顔に出ていたみたいだ。
更に言えば、動揺も隠しきれてない。
でも、マタタビは、どうも私とは少し違うことを気にしていた様だった。
「なにやら抱え込んでる様だが、あまり無理はするなよ。
話したくなければ話す必要はないが――話せば楽になることもある」
「マタタビ……?」
「どうだ、体を動かせば、少しは楽になっただろう? あんまり考えてばかりいても仕方がないぞ」
どうやらマタタビは、最初から私の様子を気遣ってくれていたようだ。
些細なことだけれど、その優しさが、その時は無性に嬉しく思えた。
「ありがと、マタタビ」
「辛いなら、人を頼れば良い。俺も力になってやる。無論、クレアもそうだろう……多分」
……と、不意にその名前が出てきて、
思わず、誤魔化す。
「そ、それよりアレやね、マタタビは凄いね、一人でこんな大層なもん作るなんて」
「いや、まあ大工だしな。それに、アイツも居たし」
マタタビがふいと目をやる先には……そう、あの人が居る。
私の苦悩の原因の一つが。
ここから少し離れたところで、何やら物凄い勢いで建設してゆく。
「今までも異常なペースだったが……さっきから更にスピードが上がっている。
『愛』がどうとか『ここを発つ前になんとか~』とか言ってたが……はやては何か知らないか?
 さっき2人で話て居たんだろう? ああ、そういえばその時の――」

やば、今はその話は、パス!
「いや、それはその、あの……あ!」
と、私のピンチを救うかの様に、見覚えのある2人――スパイクさんと読子さんが通りかかる。
先ほどマタタビが連れて来たのだけれど、何やらこちらを窺うように、うろうろとしていた様子だったが……
その2人が、こちらに向かってくるところだった。
「ああ、はやて。俺ら、ちょっとお前に話があるんだが……」
「あ、はいはい、なんやろ?」
正に、渡りに船とはこのことだ。
と、そこで2人が顔を見合わせる。
「うーん、何処から話したものか……色々有るんだがなあ……」
「とりあえず、新しいものから順に言っていきますか?」
「ああ、そうだなあ」
と、何やら2人で話あった後に、一言。

「とりあえず……さっきのアレは、プロポーズ、だったのか?」

「え、ええ!?!?」
まさか、予想外の伏兵がおった!
き、聞かれてたんか!?
「ああ、その話は拙者も聞きたい。クレアの本心が良くわからん。
はやてはアイツのことを、どう思ってるんだ?」
そしてマタタビの的確な追い討ちが決まる。
「はやてちゃんは、もう返事したの? OKするの!?」
読子さんの追撃も的確に痛いところを突いてくる。
そして、ダメ押しの止めが。
「あとな、はやて……年頃の女の子なんだから、パンツぐらいは履いた方が良いと思うぞ」

な、な、な……

な~~~~~~~~~~

「もう嫌や~~~~~ッ!!!」


そして、私は走り出す。

「あ、待てはやて! まだ聞きたい事が! テロリストのこととか!!」
「はやてちゃ~ん、それは『返事はNO』ってことなの~?」

2人の声を背中で聞きながら、走る。逃げる。


「はやてー、放送までには戻って来いよ~!」
「若いな……繁殖期って奴か?」
「それを言うなら青春でしょ……」

いつかは、というかなるべく早いうちに、
色んな事の答を出さないといけない。
自分の手で。自分の頭で。自分の意思で。
そして、とりあえずは、クレアさんにちゃんと返事をしないといけないのも――分かってる。
でも、今は、もうちょっとだけ、先送りにしてもええやろか?

ごめん。
やっぱり、でも、もうちょっとだけ……待って!


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135:せーのでコケてごあいきょう 八神はやて 135:黒の騎士団
135:せーのでコケてごあいきょう クレア・スタンフィールド 135:黒の騎士団
135:せーのでコケてごあいきょう マタタビ 135:黒の騎士団
135:せーのでコケてごあいきょう スパイク・スピーゲル 135:Felt Tip Pen
135:せーのでコケてごあいきょう 読子・リードマン 135:Felt Tip Pen





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