迷走Mind ◆1sC7CjNPu2
高町なのはは、ティアナ・ランスターにとって特別な人だ。
力を求めて道に迷っていた自分を、心から心配してくれた恩人だから。
流石に恥ずかしいので、面を向かって言うつもりはない。無論、誰にも話すつもりもないが。
ふと、考えてしまう。
……あの人なら、こんな異常な状況でどうするんだろう?
……きっと、絶対に諦めないだろうな。
力を求めて道に迷っていた自分を、心から心配してくれた恩人だから。
流石に恥ずかしいので、面を向かって言うつもりはない。無論、誰にも話すつもりもないが。
ふと、考えてしまう。
……あの人なら、こんな異常な状況でどうするんだろう?
……きっと、絶対に諦めないだろうな。
勝手な幻想で、決め付けかもしれないけど――私はそう信じている。
■
ティアナ・ランスターが目を覚ましたのは、明智健悟が駅を出ておおよそ一時間ほど立ってからだった。
加えて言うなら、ジェット・ブラックとチェスワフ・メイエルが駅を通り過ぎてからもおおよそ一時間でもある。
加えて言うなら、ジェット・ブラックとチェスワフ・メイエルが駅を通り過ぎてからもおおよそ一時間でもある。
『おはようございます、マスター』
「……クロスミラージュ?」
「……クロスミラージュ?」
ティアナは首筋を押さえながら、ソファから身を起こす。
荒立っていた気持ちは、強制的に眠らされたおかげで落ち着きを取り戻していた。
周囲を見渡すと、どうやら場所は駅の詰所のようだ。どういう理由か、自分を捕らえたはずの明智という男は見当たらない。
――ダメ、ぜんぜん状況が分からない。
机の上にある、双銃に目を向ける。分からなければ聞けばいい、簡単なことだ。
荒立っていた気持ちは、強制的に眠らされたおかげで落ち着きを取り戻していた。
周囲を見渡すと、どうやら場所は駅の詰所のようだ。どういう理由か、自分を捕らえたはずの明智という男は見当たらない。
――ダメ、ぜんぜん状況が分からない。
机の上にある、双銃に目を向ける。分からなければ聞けばいい、簡単なことだ。
『マスターは錯乱しているところを明智健悟警視に無力化されました。一時間ほど前のことです』
「……ああ、そう」
「……ああ、そう」
主の失態を何のフォローも無しに報告する相棒に、ティアナはちょっぴり傷ついた。
続けて話を聞くと、どうやらクロスミラージュは支給品として明智という男に支給されたらしい。
当初はおもちゃのふりをして様子を探り、男が安全だと判断しコンタクトを取った。
そして錯乱していたティアナと出会い、無力化した。
続けて話を聞くと、どうやらクロスミラージュは支給品として明智という男に支給されたらしい。
当初はおもちゃのふりをして様子を探り、男が安全だと判断しコンタクトを取った。
そして錯乱していたティアナと出会い、無力化した。
『その後マスターを説得することを約束し、彼とは別行動を取ることになりました』
「……そう」
「……そう」
ティアナは考え込む。明智という男の、真意についてだ。
見当はつく。おそらく先ほどのジェットという男と同様に、ティアナを懐柔するつもりなのだろう。
キャロの事を思い出し、苦い思いが蘇る。
――同じような手に、二度も引っかかるもんですか!
見当はつく。おそらく先ほどのジェットという男と同様に、ティアナを懐柔するつもりなのだろう。
キャロの事を思い出し、苦い思いが蘇る。
――同じような手に、二度も引っかかるもんですか!
「……殺し合いを優位に進めるために、手駒が必要ってとこかしら」
『……マスター?』
「敵を見かけたら襲い掛かる狂犬だと思っているなら、それが妥当かな」
『マスター!』
『……マスター?』
「敵を見かけたら襲い掛かる狂犬だと思っているなら、それが妥当かな」
『マスター!』
あまりにも物騒な主の言葉に、クロスミラージュは焦った。
目覚めてからの様子で落ち着きは取り戻したものと思ったが、どうやら精神の変調は続いているようだった。
必死になって、続ける。
目覚めてからの様子で落ち着きは取り戻したものと思ったが、どうやら精神の変調は続いているようだった。
必死になって、続ける。
『Mr.明智がマスターを拘束しなかったのは、私を信じた故の行動です!』
「違うわよ、クロスミラージュ」
「違うわよ、クロスミラージュ」
ティアナは、どこか底冷えする声で否定した。
その瞳には、暗い憎悪が浮かんでいる。
その瞳には、暗い憎悪が浮かんでいる。
「機動六課の人間以外は、全員この殺し合いに乗っているのよ」
さも当然のように、彼女は言った。
クロスミラージュは一瞬、目の前にいる人物が分からなくなった。
――これが本当に、自分の主なのか?
――いったい彼女に、何が起きたのか?
その答えは、まるで計ったかのように本人の口から告げられた。
クロスミラージュは一瞬、目の前にいる人物が分からなくなった。
――これが本当に、自分の主なのか?
――いったい彼女に、何が起きたのか?
その答えは、まるで計ったかのように本人の口から告げられた。
「私の目の前で、キャロが殺されたわ。わざわざ私が殺したみたいに見せかけてね。
その後は親切面して接触してきて、危うく懐柔されかけたの」
その後は親切面して接触してきて、危うく懐柔されかけたの」
クロスミラージュに、その話を確認するすべはない。だからといって、鵜呑みにするつもりもないが。
彼は悩む。どうすれば、主の正気を取り戻せるのか。
彼は悩む。どうすれば、主の正気を取り戻せるのか。
『マスター、少なくともMr.明智はこの殺し合いに乗ってはいません。私が保証します』
「……そう?」
『また、彼と同様に殺し合いに乗っていない参加者は他にもいるはずです。
まずはそういった仲間を集めることを優先すべきでは』
「……ああ、そっかなるほど。そういうことね」
「……そう?」
『また、彼と同様に殺し合いに乗っていない参加者は他にもいるはずです。
まずはそういった仲間を集めることを優先すべきでは』
「……ああ、そっかなるほど。そういうことね」
ティアナは、納得したかのように頷く。
すんなりと説得が成功したようで、クロスミラージュはホッとする。
しかし機械であり本能というものから無縁のものである彼は、それでも何か嫌なものを感じていた。
そして、世の中には嫌な予感ほど当たるという法則がある。
すんなりと説得が成功したようで、クロスミラージュはホッとする。
しかし機械であり本能というものから無縁のものである彼は、それでも何か嫌なものを感じていた。
そして、世の中には嫌な予感ほど当たるという法則がある。
「アンタ、偽者でしょ」
案の定だった。しかも予想しなかった言葉である。
ティアナの視線は本気のもので、冷ややかなものだ。
冗談であって欲しいという彼の願いは、どうやら聞き届けられそうにはない。
ティアナの視線は本気のもので、冷ややかなものだ。
冗談であって欲しいという彼の願いは、どうやら聞き届けられそうにはない。
「そもそも、目が覚めたら自分のデバイスが転がってたって状況から疑うべきだったのだのよ。
これも、懐柔の手段の一つでしょう?そうよね?うんそうなのよ。それなら、納得がいくもの」
これも、懐柔の手段の一つでしょう?そうよね?うんそうなのよ。それなら、納得がいくもの」
自分自身を無理やり納得させるように、ティアナは一人で呟く。
その間にクロスミラージュは自身の全機能をフルに稼動させ、次の手を捜す。
必ず、説得しなければならない。
クロスミラージュは、彼女のパートナーだ。故に、ここで終わるつもりはない。
自身のことも、彼女のことも、こんな所で終わらせるわけにはいかないのだ。
その間にクロスミラージュは自身の全機能をフルに稼動させ、次の手を捜す。
必ず、説得しなければならない。
クロスミラージュは、彼女のパートナーだ。故に、ここで終わるつもりはない。
自身のことも、彼女のことも、こんな所で終わらせるわけにはいかないのだ。
『高町なのはが今の貴女を見れば、どう思うでしょうか』
まずは軽いジャブから牽制して……と考えて、実は苦し紛れに放った言葉はクロスミラージュの予想外の効果を挙げた。
良い意味にも、悪い意味にもだ。
ティアナは雷に打たれたように硬直し、目を見開く。
良い意味にも、悪い意味にもだ。
ティアナは雷に打たれたように硬直し、目を見開く。
「ああ、そうだなのはさんだ。なのはさんがいれば『どうにかなる』」
どうしてこんな簡単なことに気がつかなかったのか。そう彼女の顔は語っていた。
その時のクロスミラージュの複雑な思考回路を簡単にすると、次の通りである。
――あ、やべ、地雷踏んだ。
事実、やばいものを踏んだ。
その時のクロスミラージュの複雑な思考回路を簡単にすると、次の通りである。
――あ、やべ、地雷踏んだ。
事実、やばいものを踏んだ。
ティアナは、魔法を行使する。
フェイクシルエット――彼女の主力となる、幻術魔法だ。
幾度となく敵の目を欺いたこの魔法が欺くのは、彼女自身だ。
燈色の髪は、栗色に。
まだ未熟な身体は、成熟した女のものに。
フェイクシルエット――彼女の主力となる、幻術魔法だ。
幾度となく敵の目を欺いたこの魔法が欺くのは、彼女自身だ。
燈色の髪は、栗色に。
まだ未熟な身体は、成熟した女のものに。
「『私』なら、きっと大丈夫」
ティアナ――『高町なのは』の姿を被ったティアナは、変わらぬ声で呟いた。
クロスミラージュは、彼女の行動を考察する。
元々、彼女の本質は不器用なものだ。劣等感や焦燥感をうまく処理できず溜め込み、爆発させてしまうこともあった。
そんな彼女が、錯乱して無差別に襲い掛かるほどのストレスを受けたのだ。心は無意識に、逃げ場を求めるだろう。
そして逃げ場の一つとして、『高町なのは』の存在を見つけたのではないか?
元々、彼女の本質は不器用なものだ。劣等感や焦燥感をうまく処理できず溜め込み、爆発させてしまうこともあった。
そんな彼女が、錯乱して無差別に襲い掛かるほどのストレスを受けたのだ。心は無意識に、逃げ場を求めるだろう。
そして逃げ場の一つとして、『高町なのは』の存在を見つけたのではないか?
――もちろん、そんな誤魔化しがいつまでも続くわけがない。
人に名を聞かれたら、きっと彼女は名簿に載っていない『高町なのは』と名乗るだろう。
そのことを突かれたら、彼女はどう反応するのだ?
それに機動六課のメンバーと無事再会できたとしても、平穏無事に終わるのか?
不安の種は、無尽蔵に湧き出てくる。
そのことを突かれたら、彼女はどう反応するのだ?
それに機動六課のメンバーと無事再会できたとしても、平穏無事に終わるのか?
不安の種は、無尽蔵に湧き出てくる。
デスクの上で激しく明滅するクロスミラージュに、ティアナはいつの間にか近づいていた。
震える手でクロスミラージュに手を伸ばす。
クロスミラージュはそのあまりに稚拙な手つきに、強い違和感を覚えた。
それは銃に対するトラウマを『高町なのは』になることで押さえつけているのだが、彼に分かれという方に無理があるだろう。
震える手でクロスミラージュに手を伸ばす。
クロスミラージュはそのあまりに稚拙な手つきに、強い違和感を覚えた。
それは銃に対するトラウマを『高町なのは』になることで押さえつけているのだが、彼に分かれという方に無理があるだろう。
困惑をよそに、ティアナは引き金を引いてカートリッジをロードする。
魔力の流れから、それがフェイクシルエットを保持するものだと気づいた。少し悩んでから、クロスミラージュはそのサポートを行う。
効果範囲を絞り、その錬度は高いとはいえフェイクシルエットの消耗は馬鹿にならない。
いずれ魔力が尽きた時、今のティアナなら命を振り絞ってでも魔力を捻出しかねないと判断したからだ。
魔力の流れから、それがフェイクシルエットを保持するものだと気づいた。少し悩んでから、クロスミラージュはそのサポートを行う。
効果範囲を絞り、その錬度は高いとはいえフェイクシルエットの消耗は馬鹿にならない。
いずれ魔力が尽きた時、今のティアナなら命を振り絞ってでも魔力を捻出しかねないと判断したからだ。
「お願い、クロスミラージュ。手伝って」
クロスミラージュを待機状態に戻し、ティアナは『高町なのは』の口調で語りかける。
もしクロスミラージュに泣くことができたなら、彼は自分の情けなさに号泣していただろう。
彼女を元に戻すつもりで、彼は致命的に間違えてしまったのだ。
もしクロスミラージュに泣くことができたなら、彼は自分の情けなさに号泣していただろう。
彼女を元に戻すつもりで、彼は致命的に間違えてしまったのだ。
『……何を、手伝えばいいのですか?』
「この殺し合いを、止めるの」
「この殺し合いを、止めるの」
姿を変えたことで、その思考すら変えたのだろう。
戦闘力を持たない民間人は優先的に保護。殺し合いに乗っている者は、無力化して拘束。
急激な方針の転換だが、機動六課としては正しい選択だ。
しかし、クロスミラージュの目的は成されていない。
彼の目的は、主を正気に戻すことだ。『高町なのは』のように振舞う彼女は、とても正気とは思えない。
だが彼の言葉では、彼女の心には届かない。
戦闘力を持たない民間人は優先的に保護。殺し合いに乗っている者は、無力化して拘束。
急激な方針の転換だが、機動六課としては正しい選択だ。
しかし、クロスミラージュの目的は成されていない。
彼の目的は、主を正気に戻すことだ。『高町なのは』のように振舞う彼女は、とても正気とは思えない。
だが彼の言葉では、彼女の心には届かない。
「11時くらいに明知さんが戻ってくるんだよね。それじゃあ私たちは周りを回って、他の参加者がいないか探してみようか」
『分かりました、Mr.明智が戻ってくるまで後2時間ほどあります。時間的余裕は十分にあります』
『分かりました、Mr.明智が戻ってくるまで後2時間ほどあります。時間的余裕は十分にあります』
主を助けるには、スバル・ナカジマが必要だ。
自分よりももっと深く確かな絆がある彼女の言葉と拳なら、主は正気に戻るかもしれない。
クロスミラージュはそう結論し、広域探査を行う。
駅を通り過ぎ、螺旋博物館へ向かっただろう二人の人物については報告しない。
できるだけ、他の参加者との接触を避けるためだ。わざわざ導火線に火をつける理由は無い。
――スバル・ナカジマが近くにいればいいのだが。
都合のいいこととは承知しつつも、彼はそう願わずにはいられなかった。
自分よりももっと深く確かな絆がある彼女の言葉と拳なら、主は正気に戻るかもしれない。
クロスミラージュはそう結論し、広域探査を行う。
駅を通り過ぎ、螺旋博物館へ向かっただろう二人の人物については報告しない。
できるだけ、他の参加者との接触を避けるためだ。わざわざ導火線に火をつける理由は無い。
――スバル・ナカジマが近くにいればいいのだが。
都合のいいこととは承知しつつも、彼はそう願わずにはいられなかった。
【D-4駅駅員詰所/一日目・午前】
【ティアナ・ランスター@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
[状態]:精神崩壊、『高町なのは』の外見、(血塗れ)
[装備]:クロスミラージュ(待機状態)@魔法少女リリカルなのはStrikerS(カートリッジ3/4:4/4)
[道具]:なし
[思考]
基本思考:『高町なのは』のように行動する
1:殺し合いを止める
2:周囲を探索し他の参加者を探す。
3:11:00までにはD-4駅に戻る
【ティアナ・ランスター@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
[状態]:精神崩壊、『高町なのは』の外見、(血塗れ)
[装備]:クロスミラージュ(待機状態)@魔法少女リリカルなのはStrikerS(カートリッジ3/4:4/4)
[道具]:なし
[思考]
基本思考:『高町なのは』のように行動する
1:殺し合いを止める
2:周囲を探索し他の参加者を探す。
3:11:00までにはD-4駅に戻る
[備考]
※キャロ殺害の真犯人はジェット、帽子の少年(チェス)はグル、と思い込んでいます。
これはキャロのバラバラ遺体を見たショックにより齎された突発的な発想であり、この結果に結びつけることで、辛うじて自己を保っています。
この事実が否定されたとき、さらなる精神崩壊を引き起こす恐れがあります。
※銃器に対するトラウマはまだ若干残っていますが、相手に対する殺意が強ければなんとか握れるものと思われます。
※冷静さを多少欠けていますが、戦闘を行うことは十分可能なようです。
※血塗れですが、変身魔法により隠されています。
※『高町なのは』に変身することでまともな思考に戻っています。
しかし矛盾を指摘されたり、ジェットや帽子の少年(チェス)と出会ったらどうなるか分かりません。
※フェイクシルエットを少なくとも数時間は持つはずです。
※キャロ殺害の真犯人はジェット、帽子の少年(チェス)はグル、と思い込んでいます。
これはキャロのバラバラ遺体を見たショックにより齎された突発的な発想であり、この結果に結びつけることで、辛うじて自己を保っています。
この事実が否定されたとき、さらなる精神崩壊を引き起こす恐れがあります。
※銃器に対するトラウマはまだ若干残っていますが、相手に対する殺意が強ければなんとか握れるものと思われます。
※冷静さを多少欠けていますが、戦闘を行うことは十分可能なようです。
※血塗れですが、変身魔法により隠されています。
※『高町なのは』に変身することでまともな思考に戻っています。
しかし矛盾を指摘されたり、ジェットや帽子の少年(チェス)と出会ったらどうなるか分かりません。
※フェイクシルエットを少なくとも数時間は持つはずです。
[全体備考]
※D-4駅には戦闘の痕跡が残っており、明智の上着が放置されています。
※D-4駅には戦闘の痕跡が残っており、明智の上着が放置されています。
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