今いるここからは堕ちてくだけのゲーム ◆ZJTBOvEGT.



ウルフウッドは、ぼんやりと歩きながら放送を聞いた。
九人、死んだらしい。うち一人は自分のしわざというわけか。
その事実は別に、何らの感慨も引き起こすものではなかった。
誰が何人死のうと関係ないのである。ついでに、自分が何人殺そうと。
ゲームに乗ると決まったときから、他の誰かは単なるマトだ。
マトについた名札に興味を持つ射手がいるとでも?
…違う。

(ワイもまた、単なるマトや。ここではな)

地獄の旅路、その直中にいるウルフウッドにとって、
畢竟、この殺し合いはすでにその程度のものだった。
殺して自分が最後の一人になろうが、そのへんで誰かに殺されようが、
それは砂蒸気(サンドスチーム)の食堂車で遊ぶポーカーの勝敗と、とくに大差はない。
最初から行き先の決まった運航を、早くするわけでも、遅くするわけでもないだろう。
ウルフウッドは、自らの業に乗って殺し合いに参加する。
銃の示した道もまた、これであったから。

(おんどれ…)

手元の銃を見下ろして思う。
お人好しの銃だ。
どんな現実を前にしようと、誰かに生命のあることを尊び続ける男の銃。
失われるもの、救いきれなかったものを見て涙を流す、あの男の銃。
…つまり、そういうことなのか。
引き金を引いて弾が出なかったのは、そういうことなのか。
だとしたら、どこまで人をなめくさる気だ!
耐えがたい怒りが噴出しかける。
今の彼には怒りでしか表わしえないそれは、あるいは悲鳴であったのかもしれない。

「生き方が違いすぎるんや」

吐き捨てた。
心中のもやをふり払おうとして失敗し、
そばにあったごみ箱を蹴りつけた。
中身もなく軽々と飛び転がっていくその音を聞いてから、
ばかばかしい感傷に自分で自分を笑いたくなった。
ウルフウッドはおもむろにデイパックを開き、地図を見る。
あてもなく北を目指してきたわけではない。
銃の残り弾数は、たった四発。
一人一発で片付けていっても、単純計算、六十九人残ってしまう。
徒手空拳でもやれるだけはやってみせるが、どうせやるなら銃がいい。
そして、予備弾なり新たな銃なりを手にいれるに適した場所といったら、
保安官事務所、もとい警察署がまずはその筆頭。
なければ、駄目もとでショッピングモールを回る。
やたらと水に恵まれたおかしな街とはいえ、人が住む場所ならば武器屋のない道理はないはずだ。
とはいえ、それは次善の策でしかなく、あまり当てにはしていない。
わざわざ支給品として武器を配布されている以上、
この殺し合いの会場内にそれ以上の余計なものは用意されていない公算が高いとウルフウッドはにらんでいた。
であれば、武器は他の参加者から奪い取れという話になるし、その方が格段に確実となる。

(カモがネギしょって来るんなら、苦労、あれへんねんけどな)

今、探しているのは、銃を持った参加者だ。
遭遇次第、手早く殺してそれを奪い取るべく。
弾数が多ければなお理想的。
さすがに中身を確かめてから殺すというわけにはいくまいが…

「食パンしかないんかい。ノド乾いて貼っ付くわ、アホ」

食糧の包みを開きながら、ウルフウッドは愚痴った。
誰の気配もない街は、不快な思いをあおる一方。
生活していた住民がある一瞬を境に、まとめて姿を消してしまったような風景。
どこかに石碑でもあれば、赤いペンキで『KNIVES』と書き残してやりたいところだ。
味も素っ気もないパンの二枚目を喉の奥に送り込んだ頃、彼は橋を越えて警察署の間近に迫っていた。




【B-6・北西の端・道路/一日目/朝】
【ニコラス・D・ウルフウッド@トライガン】
[状態]:かなり不機嫌
[装備]:ヴァッシュ・ザ・スタンピードの銃(残弾4/6)@トライガン
[道具]:支給品一式 (食糧:食パン六枚切り三斤+四枚、ミネラルウォーター500ml三本)
[思考]
基本思考:ゲームに乗る
1:自分の手でゲームを終わらせる。警察署を目指す。
2:銃を持った人間を確認次第、最優先で殺してそれを奪う。
3:女子供にも容赦はしない。迷いもない。
4:警察署で武器を調達する。無ければショッピングモールへ。
5:できればタバコも欲しい。
[備考]
※迷いは完全に断ち切りました。ゆえに、ヴァッシュ・ザ・スタンピードへの鬱屈した感情が強まっています。



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088:阿修羅姫(後編) ニコラス・D・ウルフウッド 133:貫けよ、その弾丸で





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