テメェに何が分かるんだ ◆RwRVJyFBpg



「おぉおおおおおおおおい!!戻れぇえええ!!戻るのだグラサン・ジャック!!
 早く戻らんと寂しがりやの我が体が……」

ギャアギャアとうるせえガンメンモドキを尻目に、俺はジドウシャを駆り、真っ直ぐ伸びる道を突っ走っていた。
にしてもこのジドウシャって乗りモンは中々にゴキゲンなブツだ。
はじめはちと戸惑ったが、慣れれば難なくスイスイ動かせる。
イカした音をたてて、俺の顔にビュンビュン風を送ってくるコイツの操縦は、グレンのそれとはまた違った意味で快感だった。

「ひょおう!いいねいいねえ!何か気分がよくなってきちまったぜ!」

俺は上がりっぱなしのテンションに任せるまま、さらに“あくせる”を踏み込んだ。
その途端、吹きつける風が強くなり、周りを流れる景色は一気に加速する。
俺の横をすっ飛んでいく建物、建物、また建物。
どれもこれもどデカくて仰々しくて、見たこともねえ建物ばっかりだ。
もう、随分な数を追い越したってえのに、そいつらは尽きることなく、視界いっぱいに続いている。

「ちぇっ、キリがねえな……そもそも、ここは一体どこなんだ?」

ふと、そんなことがよぎった俺の頭に、あの獣人野郎が口にした「都」という単語が浮かぶ。
獣人たちの基地にして本拠地。ヴィラルの言う「螺旋王が治める、地上唯一にして絶対の文明」……まさかここがそうなのか?
……なるほど。そう言われてみりゃあ、気持ち悪ぃほど納得がいく。
これほど馬鹿みたいに建物が並んだ場所、いくら地上と言えども、そう何箇所もあるとは思えねえ。
はじめに喋ってたあのタコおやじが螺旋王だってことを考えりゃあ、ここが「都」ってのはまず間違いねえだろう。
どうやら、地上の支配者気どりの螺旋王様は、自分のお膝元でこのイカれた殺し合いを楽しむつもりらしい。
全く、たいした余裕だぜ。

「……だが、その緩みがテメエにとっちゃあ、命取り。
 見てやがれ螺旋王。このカミナ様が今にここをおん出て、ほえ面かかせに行ってやるからよ!
 人間様をなめんじゃねえぜッ!!」

唇を吊り上げ、俺は満面に不敵な笑みを作った。
だが……


「ブルアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッ!!!!」


その決意の余韻はまたも空気を読めないアンチキショウのせいで邪魔された。
突如として空中のガンメンモドキが急降下し、そのまま俺の頭に落っこちやがったんだ!

「グハアッ!!」

真上から直撃を食らった俺は、思わず運転に向けていた集中を邪魔される。
“はんどる”をとられ、ジドウシャの運転はハイスピードのまま右へ左へ、グニャグニャと揺れた。

「ッッッってえじゃねえかテメエ!!いきなり何しやがる!?」
「うぅるせえええ!!人の話を聞けっちゅうとんじゃああああああああああ~~~~~!!!!
 私は無視されるのが一番嫌いだっつってんだろうがぁぁぁああああああああーーーーーー!!!!!
 私を無視るな!!体に戻らせろィ!!そもそもここはどこなのだ!!ついでにメロンを――」
「言いたいことだけ言ってんじゃねーーー!!!」
「ぶべら!!」

俺が左手で“はんどる”を取り戻しながら、右手でヤツを思いっきりぶん殴る。
空中で顔面を殴られたガンメンモドキは、そのままきりもみ回転しながらジドウシャの前方へと飛んで行き
そのまま地面へとキレイに突き刺さった。ちょうど、“∧”の形になるようにな。
このままだとヤツをひき潰し、“∧”を“W”にしちまうことを悟った俺は、しょうがねえから急ブレーキをかけた。
車輪が地面をこする耳障りな音を立てて、スピードがガクンと落ちる。
そしてジドウシャはヤツのボディの一歩手前でピタリと停まった。

「オォ、ア、オォウ……ヒ、ヒドイではないかグラサンジャック。
 私はただ我が体のもとに帰りたいだけなのに、何でそんなに冷たく当たるのだ?
 ハッ!まさかイジメか!?これが世に言うイジメというモノなのか!!?
 イィカン!イカンぞグラサンジャック!!私のパートナーともあろうものがそのように破廉恥な……」
「相変わらず意味の分からねぇ野郎だなテメエは……
 だから何度も言ってんだろうが!?俺様にゃあなあ、こんなとこでいつまでも油売ってる暇はねえんだよ!!
 行きたきゃ一人で行きゃあがれ!」
「だーかーらアッ!私も何度も言っとるだろうが!
 お前と私はパートナーなのだ!
 私の本はお前がいなければただの紙!私がいなければお前はただの人間!殺し合いの場でそれはお互い困るでしょおおお!?
 私とお前は二人で一つ!ワンフォーオール!オールフォーワン!
 分かったか?理解したか?グラサンジャック?
 ……分かったら、後に続いて言ってごらん。ワンフォーオー……」
「悪ぃが、俺にはさっぱり分からねえ。ついでに俺には関係ねえ。それからお前はパートナーじゃねえ!!」

逆さまのまま、みっともねえ顔で訴えるガンメンモドキに俺はハッキリと言ってやった。
俺に殴られたせいで不細工に腫れ上がったヤツの顔を見ていると、さすがに悪い気がしてくるがソレはソレ。
いつまでも人の名前を覚えやがらねえ奴が悪い。
正直な話、俺にはコイツといつまでもジャレあってる時間はない。
思えばここに来て以来、俺は状況に流されっぱなしだ。
ガンメンモドキに喧嘩を売られ、決着もそこそこに指パッチン野郎とやり合い
わけも分からずでっけえ水溜りに飛ばされたと思ったら、緑のネエちゃんにいきなり撃たれて戦って
勝ったはいいが、未だこのザマ。
俺様としたことが、この殺し合いを止めるためにまだ自分からは何もやってねえ。
このままそうやってダラダラ過ごすのは、神が許しても、この俺が許せねえんだ。

……それに、俺はお前のパートナーにはなれない。
確かに、お前は悪い奴じゃねえ。
ちょっとと言わず、大分変で、多少と言わずかなり自分勝手だが、それでも根はいいガンメンモドキだ。
それは、この何時間か一緒にいて、よぉーく分かった。
けどな。

「……俺にはな、もう最高の相棒がいるんだよ。だから、テメエにゃ悪いが、パートナーになってやることはできねえんだ」
「な、ナニィ!?……ハッ、貴様まさか、現代の魔物のパートナーだったのかっ!?」

ガンメンモドキが黒目のねえ眼をカッと開き、こっちを見つめてくる。
その青ざめた顔は、少しショックを受けているようにも見えた。

「魔物云々はよく分からねぇが……とにかく最高の相棒だ。
 テメェみたいにビームも出せねえし、空も飛べねえ。できるのは穴掘りだけ。
 ちと暗いトコもあるし、お世辞にもモテるとは言えねえ。戦いにも不慣れだ。
 そんでもって、今んとこは、あんまり自信もねえ。
 だがな、俺にとっちゃ、ソイツがかけがえのない、唯一のパートナーなんだよ。
 だから、そいつを差し置いて、テメエとコンビを組むつもりはねえ。そういうことだ」

俺が語り終えると、ガンメンモドキは毛のねえ眉を寄せる。
奴も奴なりにいろいろ考えてるんだろう。
少しの間があった後、少し真面目な顔をして、奴は俺に聞き返す。

「話が読めんな。何でそんな欠点だらけの奴が最高のパートナーなのだ?」

俺は期待通りの問いに唇を緩ませた。

「……ここまで一緒になったのも何かの縁だ。話してやるよ。相棒のことを。
 一回しか言わねえから耳かっぽじってよぉく聞きやがれ!
 アイツは、シモンはな――――


身振り手振りを交え、シモンの凄さを今、まさに語らんとしたそのとき

「――久しいな、諸君」

どこからともなく、その声は響いた。




その放送が終わったとき、F-2の幹線道路に一人の男が立っていた。
青い髪を逆立て、刺青をした上半身を晒したその姿は、一見するとスラムの荒くれ者にも見える。
だが、男が纏う雰囲気は、外見よりもはるかに静かな、さめざめとしたものだった。
眼と口は白痴のように緩み、両の腕を力なく垂れ、背中に常の覇気はなく。
その表情は、まるでフリーズしてしまったモニターのようで。
シモン。
螺旋王がその名を読み上げて以来、カミナの思考は硬直したまま。カミナの体も動かないまま。
「シモンが死んだ」というその情報を量りかね、彼の精神は今、完全に停止していた。

カミナには、シモンが死んでしまったということがどうしても信じられなかった。
確かにシモンは強靭な肉体をもっているわけではないし、生き残るための狡知に長けているわけでもない。
だが、カミナは、シモンの『最後まで諦めない意志』を他の誰よりも知っていた。
誰かが絶望しそうな時、みんながもうだめだと天を仰いだ時、
それでも一人諦めず、ただただ黙って地を掘って、やがては向こうに突き抜ける。
そんなシモンの『意志の強さ』を知っていた。
だからこそ、誰がバカにしても彼だけはシモンを貶めなかったし
また、そんなシモンがいたからこそ、カミナはいつも前へひたすら前へと進むことができたのである。
そんなシモンが自分を残して逝ってしまうなど、あまりに現実感がなさすぎる。
だが、螺旋王がここで嘘を言う意味も分からない。
シモンが死んだという通達と、シモンが死ぬわけがないという心。
そのどちらを信じてよいか分からず、矛盾挙動に陥ったカミナは、ただただその場で固まっていることしかできない。

そうやって我を失っているカミナを、ビクトリームはしばらくの間、黙って見つめていた。
しかし、やがて、彼は何かを思いついたような表情を浮かべると、逆さになっていた体を元に戻す。
そして、Vの体勢で這いずりながらカミナへとにじり寄り、その言葉を、告げた。






「グラサンジャックゥ、もしかしてパートナーが死んだのかァ?そぉうなんだなァ?
 ふむ、流石、お前があれだけ持ち上げたパートナーだ。

 こ ん な に い い タ イ ミ ン グ で 死 ん で く れ る と は な 」





固まったカミナの眼がわずかに揺れる。
ビクトリームが浮かべる笑顔は、ひどく邪悪なものに映った。




人という字は支えあってできていると古人は言った。
悲しいことがあったとき、ときに人はその気持ちを晒し合い、また、癒し合う。
共感、同情、受容、激励、叱咤―――
そのやり方は、時と場合、それから人によってもそれぞれ違うが
人間は苦しいとき、そのような手段を使ってお互いに支えあい、辛い生存競争を勝ち残ってきた。
そして、そのような行為の積み重ねは、やがて人間と人間の間に信頼を生み、それが結びついて絆となる。
そうやって絆を結んだ人間のことを私達はこう呼んでいる。
『仲間』あるいは、『相棒』と。

もし、ビクトリームにそうした『相棒』を持った経験があったなら、こんな発言は口が裂けてもしなかっただろう。
しかし、ビクトリームが今まで持ったことのある『相棒』は、この観念からはあまりに遠いものであった。

最たるものが、彼の前パートナー、モヒカン・エースだ。
モヒカン・エースは、心を操る魔物ゾフィスによって精神を支配された人間だった。
ゾフィスに都合のいいように、また、ゾフィスに反しない限りにおいてはビクトリームの都合のいいように
心と行動を操作された操り人形だった。
完全に操作されてしまった人間は、もはや人とは呼べない。
だから、支え合うことも、癒し合うこともしない。誰かと『仲間』や『相棒』になることもない。
モヒカン・エースは、ビクトリームの指示通り、ただ純粋に戦うための機能として動く。
そんな関係は実際のところ『相棒』でも何でもなくただの機械とリモコンでしかない。
しかし、ビクトリームにとっては、そういった関係こそが『相棒』であり『パートナー』なのだ。

結局のところ、彼にとっての『パートナー』とは、あくまで戦うための道具にしか過ぎなかったのである。




――放送でシモンという名前が呼ばれたとき、私は密かにほくそ笑んだ。
何とついていることだろう!流石は華麗なるビクトリーム様!
できることならそう叫んで小躍りしたかったが、自分の体が逆さまなことに気づいて諦めた。ベリーシット。
ん?なァーんでそんなに嬉しいかって?決まってるじゃねえかあ!!
グラサンジャックのパートナーとやらがおっ死んじまったからだよ!!!

この勇猛果敢にして豪華絢爛、天網恢恢疎にして漏らさない、才色兼備なおしゃまなキューピー
ビクトリーム様のパートナーに選ばれておきながらそれを断り続けるとは
どうにもおかしいと思ったんだが、奴にもパートナーの魔物がいたのだと考えれば納得がいく。
そりゃあ、確かにもともとパートナーがいるなら、そいつと一緒に戦った方が断然いいに決まってる。
術の特性を生かした戦術と、巧みな連携プレーは一朝一夕で身につくモンじゃあないからな。
私だってできることならこんなクソ意地の悪いグラサンではなくて、愛しのモヒカン・エースと戦いたい。
だが、ここでそんな我侭を言っても何も始まらん!むしろ始まる前に我が人生が終わってしまう。
まずは、戦える状態を確保すること!それこそが先決なのだ。

グラサンジャックはことここに至ってもそのことに気づいていなかったようだが
さすがに自分のパートナーが死んだとなれば、気づかざるをえないはず。
さすれば、その後奴がどうするかなんぞは、どんな子猫ちゃんが考えても分かることだ。
おそらく、グラサンジャックはパートナーを失った時に
この華麗なるビクトリーム様が傍にいたことを涙を流して喜び、神に感謝するに違いない。
そして、デイバックの中から全てのベリーメロンを取り出して私の前に並べ、こう言うのだ。

「華麗なるビクトリーム様、私が間違っておりました。
 今までの蛮愚極まる行いにもかかわらず、ビクトリーム様がこの私めを見捨てないでいてくださったことを
 心から神に感謝いたします。
 今更こんなことを言うのは全くもって恐悦至極なこととは存じますが
 もしよろしければ私のパートナーになってはいただけないでしょうか?
 もちろん、タダでとは申しません。
 もし、パートナーになっていただけるのでしたら、この至高のメロンを全て貴方様に差し出します」

その後、全てを寛大に許し、パートナーにしてやることを承諾した私の行いに
グラサンジャックは三度涙を流して感動するに違いない。
それから、私は献上されたメロンを一人で全て食べ尽くしてから喜びの舞を踊り、奴の心遣いに感謝を示す。
奴はその舞いのあまりの素晴らしさに四度むせび泣き、そうして我らは本当のパートナーになるのだ!!
フハ、フハハ、フハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!!!!!!!!
さあ来いグラサンジャック!貴様を許す用意はもう全開バリバリだ!
さあやれ!土下座で向かって来い!カモン!カモン!カモンジャアアアアァァァック!!!!!!
どぉうした?恥ずかしいのか?心配するな。お前の感じやすい心なら全てお見通しよ。
だから安心してこの胸に飛び込んでおいで?
怖くないからさあおいで?
どうしたの?何で来ないの?
無視?無視なのか?
ハハハ……まさか、そんなハズは。
……あの?もしもし?
グラさん?

私のあまりに華麗なる未来予想に反し、グラサンジャックはピクリとも動かなかった。
放送以来、全く変わらない姿勢で道路の真ん中に突っ立ち、空中に視線を漂わせている。
そこには全てを理解し、私に許しを請う哀れな子羊の姿はこれっぽっっっっちも存在しなかった。
これはどういうことだ?まさか私の予想が間違っていたとでもいうのか?
いや!そんなはずはない!
そうだ!きっと突然のことにまだ事態が整理できていないだけに違いない。
パートナーの突然死という不測の事態に、どうしてよいか分からず戸惑っているのだ。
まったくしようのない奴だ。

そう結論づけた私は、逆さまになっていた体を正位置に戻し、Vの体勢でグラサンジャックににじり寄る。
奴が置かれている状況を親切にも解説し、驚喜をもたらしてやらんがために。

「グラサンジャックゥ、もしかしてパートナーが死んだのかァ?そぉうなんだなァ?
 ふむ、流石、お前があれだけ持ち上げたパートナーだ。
 こんなにいいタイミングで死んでくれるとはな」

私が奴の目を覗き込みながら、暖かい笑みを浮かべて言うと
今まで全く凍り付いていた奴の目がわずかに揺れた。
ふふん、ようやく私という存在の偉大さに気づき始めたらしい。
そう思い、私が引き続き奴に向かってありがたいお話を述べ立てていたとき、それは突然に起こった。

「これで貴様もちったあ学習したろうが。アァ~ン?
 こんな状況じゃあ、どこにいるかも分からねーパートナーを探そうなんて、馬鹿のやることなんだよ馬鹿の。
 そんなことをするよりも、もっと近くにお前のことを見てくれている人が……フゴオオオォォ!?!?」

一瞬、何が起こったか判らなかった。
顔面に強烈な衝撃が走ったかと思うと、私の視界は一瞬にして回転し、空を飛ぶ。
続いてコンクリートに叩きつけられる鈍い痛みと、口いっぱいに広がる血の味が続く。
私の鼻が折れているのに気づくのと、私がグラサンジャックによって殴られたのだと気づくのとはほぼ同時だった。

「な、何をするのだグラサンジャ……」
「黙れ」

思わず息を呑んだ。
それほどまでに、グラサンジャックの声には凄みがあった。
私が呆気にとられていると、ゆらゆらと体を不安定に揺らしながら、奴がこっちに近づいてくる。
得体の知れない恐怖を感じ、逃げようと頭を起すが、その動きは一瞬だけ遅かった。
思い切り振りぬかれたトー・キックが私の顎を捉え、路上の石ころのように滑った私は、ガードレールへと激突する。
目を開けてみると、そこには私の歯が二本、落ちていた。

「テメエに…………んだ」

はっきりしない口調でブツブツと何かを呟きながら、またゆらゆらと歩いて来る。
奴はさっき蹴りぬいた顎辺りを思い切り握ると、そのまま私の頭を片手で吊り上げた。
逆さまな姿勢のままで持ち上げられた私は、半ば無理矢理に目を合わせられる。
先ほどは何も映していなかったそこには、今や、得体の知れない黒い炎が燃え盛っていた。

「テメエに何が分かるんだ!!」

今度は、はっきりとした口調で吼えたグラサンジャックは、私の顎を支点にそのまま頭部を地面へと投げつける。
さすがの私も度重なる暴力の連続に気が遠くなりそうになるが、気をしっかり持ち、辛うじて意識を保つ。
……だが、それは単に次の痛みを味わうことを意味していただけだった。

「テメエに……テメエなんかに……シモンの何が分かるってんだ!!
 シモンとは、ジーハ村を出たときからずっと一緒で!地上に出てからも一緒で!
 一緒に月へ行こうとも約束したんだ!それを!それをテメエは!!
 『いいタイミングで死んだ』だと!?ふざけるのもいい加減にしやがれ!
 そんなふざけたことを言っときながら、パートナーになれだあ……?
 承知できるわけねえだろうがンなことよう!!
 テメエごときにシモンの代わりができるわけねえだろうが!!!
 シモンはテメエなんかよりずっと勇敢で、強くて……そんでもってシモンは……ちきしょう……」

グラサンジャックの足が一寸の情けも容赦もなく、私の美しい頭部に振り下ろされる。
荒れ狂う暴雨のようなそれに必死に耐えながら、私は奴が涙を流しているのに気づいた。
蹴りながら、踏みながら、目からは絶え間なく水が溢れ出していた。
その涙は私の偉大さに感動して流されたものでないことだけは確かであったが
私には、何故奴が泣いているのか、それがさっぱり分からなかった。
というよりも、パートナーの死ごときで何故それほどまでに悲しめるのか、私には全く理解不能だったのだ。

「ハア……ハア……ハア……」

しばらくそれが続いた後、暴力の嵐は唐突に止んだ。
奴が疲れたからなのか、それとも、別の理由があったのかは、私には分からない。
奴は少し息を整えた後、黙ってカートに戻り、乗り込んだ。
そして、意識が朦朧としている私に対して緑色の球体をいくつか放り投げると、静かに言った。

「そいつは手切れ金だ。くれてやる。
 だから、テメエは二度と俺の前に顔を出すな」

間もなく、エンジンが始動する音がして、カートが発進した。
倒れたまま横に目を遣り、そこにあるモノを確認する。
そこには案の定、よく熟れたベリーメロンが4つ転がっていた。
いつもはメロンを見た瞬間に湧き上がるあの強烈な愛情が、何故か今は全く生まれなかった。


ジドウシャで景色をぶっとばしながら、俺は怒っていた。
ついさっきと同じように走っているはずなのに、何故か俺の心はちっとも晴れやかじゃない。
理由はなんだ?はっきりしている。
シモンだ。あの放送で呼ばれたシモンの名前が、俺をこんなにも苛立たせている。
俺の心の中では、シモンは生きていると言う天使の俺と
シモンはもう死んじまったんだと言う悪魔の俺が今もまだ、激しい戦いを繰り広げていた。
どちらが勝ったにせよ、湧いてくるのは激しい怒り。
このふざけた殺し合いをおっぱじめやがった螺旋王への怒り。
そうやって人間をゴミとも思わず虐げる獣人への怒り。
俺の時間を無駄に浪費させたヤツラ――指パッチン、ガンメンモドキ、そして、隣の女への怒り。

あれだけでけえ声で言い合いをしたにもかかわらず、隣の女はまだ目を覚ます様子がねえ。
そのキレイに整った顔だけ見てりゃあ、村一番の生娘が地上に遊びに来て昼寝しちまったって言っても余裕で通りそうだ。
……だが、俺は知っている。コイツがそんな生易しい人間じゃねえことを知ってる。
俺は、ジドウシャの椅子にとりつけられたでっけえ銃に目を遣り、あのときのことを思い出す。
こいつは、初対面の俺たちに向かって、容赦なくこいつをぶっぱなしてきやがった。
あのときは運がよかったから避けることができたが
ちょっとタイミングがずれてたら、今頃、ミンチ肉になってるとこだ。
それに、コイツは自分の奴以外にもう一つデイバックを持ってやがった。
それはつまり、コイツはもう人を一人殺してるってことだ。
……そして、それがシモンでない保証はどこにもねえ。

シモンの顔を思い出す。
泥まみれで穴を掘る一生懸命なシモン。ヨーコと話して笑う無邪気なシモン。ラガンでガンメンに立ち向かう勇敢なシモン。
そのシモンの笑顔を今隣に座っているこいつが奪ったのかと考えると、俺の胸の中がじんわりと熱くなる。
さっき、ガンメンモドキにシモンを馬鹿にされた時に感じたのと同じ、あの熱だ。
気づけば俺は片手を“はんどる”から離し、その細い首に指を巻きつけ――

「……何、やってんだ俺は」

指が女の首に触れる寸前。俺はかろうじて思い直し、手を“はんどる”へと戻した。
同時にブレーキをかけ、ジドウシャを道の脇に止める。
……さっきから、どうかしている。
この女のことにしてもそうだし、ガンメンモドキのことにしてもそうだ。
確かに、アイツの物言いには腹が立った。はらわた煮えくり返って口から出そうにもなった。
だが、あれほど痛めつけることはなかったんじゃねえのか?
あれじゃまるで。

「まるで、俺があいつを殺そうとしてるみたいだったじゃねえか……」

あのとき自分がどういう状態だったのか、はっきり言ってよく覚えてねえ。
頭に血が上っていて、何だかよく分からないままにアイツをぶん殴っちまったのは確かだ。
殺す気が本当になかったのかと言えば……正直、怪しい。

「どうにもいけねえな。思ったより疲れてるみてえだ」

俺は気を落ち着けるために飯でも食おうと思い、足元のデイバッグに手を突っ込んだ。
バッグの中からパンと水を取り出し、流し込もうとしたそのとき、俺はその光景を目にして驚いた。

俺が車を停めてる道の向こう、小さな川みてえな側溝に、一人の男が飛び込んでいくのが見えた。
随分と焦っていたらしい。こっちにはまったく気づいていないようだ。
全身を血に塗れさせ、同じように血に塗れた刃物を手に持って、側溝へと飛び込んでいく男。
そいつは、驚くべきことに俺の知っている顔だった。
それがシモンだったなら、俺の胸の炎もスッキリ消えたかもしれなかったが
残念ながら、そいつは逆に怒りをたぎらせる薪みてえな知り合いだった。
口の端からチラチラ見える鮫のような歯。片目を隠した長髪。
間違いねえ。

「ヴィラル…………」

俺はその獣人の名を、怒りに任せて呟いた。


【F-3 大きな道路沿い・1日目 朝】
【カミナ@天元突破グレンラガン】
[状態]:激しい怒り
    体力中消耗・左肩に中程度の裂傷(激しく動かすと痛みが走るが、我慢できないほどでは無い )マントを脱いでいる
[装備]:なんでも切れる剣@サイボーグクロちゃん、
    モネヴ・ザ・ゲイルのバルカン砲@トライガン(あと9秒連射可能、ロケット弾は一発)を搭載したゴーカート
[道具]:支給品一式、ベリーなメロン(3個)@金色のガッシュベル!!(?) 、ゲイボルク@Fate/stay night
[思考・状況]基本:殺し合いには意地でも乗らない。
1:ヴィラルに対処する
2:放送に対して動揺
3:ゴーカートで道なりに走ってみる。
4:ヨーコと一刻も早く合流したい
3:グレンとラガンは誰が持ってんだ?
4:もう一回白目野郎(ヒィッツカラルド)と出会ったら今度こそぶっ倒す!
※グレンとラガンも支給品として誰かに支給されているのではないかと思っています。
※ビクトリームをガンメンに似た何かだと認識しています。
※文字が読めないため、名簿や地図の確認は不可能だと思われます。
※ゴーカートの動かし方をだいたい覚えました。
※ゲイボルクの効果にまるで気づいていません。
※1/4メロンは海に出た際、落っことしました。どこかに流れ着いても、さぞかし塩辛いことでしょう。
※向岸流で流れ着いたメロンが6個、F-1の海岸線に放置されています。
※シモン死に対しては半信半疑の状態です。


【シャマル@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
[状態]:気絶中? カミナのマントによって拘束中 極度の疑心暗鬼 魔力消費 大
[装備]:なし
[道具]:支給品一式(その他、ランダム支給品が0~2、本人・カミナ・ビクトリーム確認済) 、
     ジェレミアの支給品一式(その他、ランダム支給品が0~2、シャマル・カミナ・ビクトリーム確認済)
[思考・状況]  
1:八神はやてを守る
2:六課メンバー以外、全て殺す
3:けれど、なるべく苦しめたくない
4:ゲイボルクを投げたのに…
※宝具という名称を知りません
※現在、彼女の持ち物はカミナが所持していますが、
 ランダム支給品の中の何かをどこかに隠し持っている可能性があります
※ゲイボルク@Fate/stay nightは舞台のループを認識していないようです


【F-3/下水道/1日目/朝】
【ヴィラル@天元突破グレンラガン】
[状態]:脇腹に刺し傷(応急処置済み)、極度の体力消耗、衣服が濡れている
[装備]:ワルサーWA2000(6/6)@現実
[道具]:支給品一式、バルサミコ酢の大瓶@らき☆すた、ワルサーWA2000用箱型弾倉x4、ランダムアイテム1(重いもの)
[思考]
基本:ゲームに乗る。人間は全員殺す。
1:今は休まねば…
2:蛇女(静留)に味わわされた屈辱を晴らしたい。
3:『クルクル』と『ケンモチ』との決着をつける。
4::螺旋王の目的とは? 
[備考]
螺旋王による改造を受けています。
①睡眠による細胞の蘇生システムは、場所と時間を問わない。
②身体能力はそのままだが、文字が読めるようにしてもらったので、名簿や地図の確認は可能。
…人間と同じように活動できるようになったのに、それが『人間に近づくこと』とは気づいていない。
 単純に『実験のために、獣人の欠点を克服させてくれた』としか認識してない。




「………………」

私はグラサンジャックが去った後、一人、献上品のベリーメロンを貪りつつ、地図を睨んでいた。
グラサンジャックと離れてしまった以上、私もいよいよマジで身を守る方法を考えた方がよさそうだからな。
さっきの放送、シモンという名前に気を取られて、危うく聞き逃してしまうところであったが
私にとって聞き逃してはならない名前がもう一つ含まれていた。
素晴らしきヒィッツカラルド。
はじめにグラサンジャックと出会った遺跡で会ったもう一人、クリーム色のスーツの男は確かにそう名乗っていた。
もし放送が正しければ、あの男は私達と分かれた後、3時間足らずのうちに殺害されたことになる。
あれほどの男が半日もたないとは、ここは私が考えていた以上の伏魔殿らしい。
そうと分かった以上、こんなところに長居は無用。
さっさと我が体と合体し、モヒカン・エースを探さなければならない。

……ああ、そうだとも。
もう、グラサンジャックのようなコンチクショーの力なんぞアテにするものか。
だいたい、あんな下品な刺青をして、あんな下品なサングラスをかけている暴力男が、私のパートナーであるはずがないのだ。
呪文が出たのは何かの間違いに違いあるまい。
やはり私のパートナーはモヒカン・エースただ一人。
一刻も早く合流し、このビクトリーム様が本来の力を発揮できるようにしなければな。
その暁には……生意気なグラサンジャックめ……まず貴様をはじめに血祭りにあげてくれるわ!

「覚えてやがれェ!!フハ、フハ、アーハッハッハッハッハッハッ……ジュボジュボ」

笑いながら、地上に置いたベリーメロンに齧り付く。
いつもは甘いはずのメロンが、何故だか今はおいしくなかった。

「……さーて、愛しのメロンちゃんも食い終わったことだし、そろそろ我が体のところに帰るとしようかァ!!」

私は、丸齧りしたメロンをその場に放置すると、顔を上げた。
体の位置はもう大体見当がつけてある。
やはり、もといた所に帰るには、もと来た道を帰るのが一番確実ってモンだろう。
私はそう結論づけ、これからは海の方へ向かって飛ぶことに決めていた。
途中、明らかに不自然な移動があったが、まあ、何とかなるさ。

「ビィクトリーーーーーーーーム!!!!!!!」

何だかモヤモヤしたままの気持ちを振り払うために、私はいつものように高らかに叫び、そして天へと舞い上がった。
だが……

「もう、お出かけどすか?もうちょっとゆっくりしていかはったらいいのに」

飛び上がった私に、何者かがのしかかり、地面に押し倒した。

「イっテェーーーーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!!」

顔が地面に押し付けられ、さっきグラサンの野郎にやられた鼻がジンジンと痛む。
少しでも状況を確認しようと、目を横に向けると槍の穂先みたいのものがちらついているのが見える。
……オイオイオイオイ!!

「そのまま、動かんでおくれやす。
 ウチな、今、ちょっと嫌なことがあって、機嫌が悪いんどすわ。
 だから、言うこときいてもらえへん場合は、いろいろと保証しかねますえ?」

私は体をジタバタさせ、何とか襲撃者から逃れようとあがいていたが、その言葉を聞いて動きを止める。
どうやら上に乗っているのは女のようだ。
ベリィシィィィッッッッッット!!!ええい!次から次へと襲ってきよってからに!!少しは休ませろってんだィ!
私はとりあえず、おとなしくして、様子を見ることにした。
なぁに、不意打ちできたのに、いきなり殺ろうとしなかったんだ。
いきなりは殺されんはずだ。……多分な。

「争い合うような叫び声を聞いてここまで来てみれば
 ……あんた一体何者や?ここで一体何を?それから……」

女は何か気になることがあったのか、不意に言葉を止め、少しの間黙る。
とりあえず服従するフリをして脱出のチャンスを覗うつもりだった私は「今かっ!?」と目を見開きそして
次になされた質問で、残された時間が思っているよりも少ないことを知った。

「あんたの首輪、どこへ行ったんどすか?」

我が体の美しさをこれほどまでに恨んだことはない。



【F-2/フェリー発着所付近/1日目/朝】

【ビクトリーム@金色のガッシュベル!!】
[状態]:身体部分がD-8に放置 カマイタチによる小程度のダメージ カミナの攻撃による中ダメージ
    鼻を骨折。歯が二本欠けています
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、CDラジカセ(『チチをもげ』のCD入り)、ランダム支給品(0~2個)、魔本
    ベリーなメロン(3個)@金色のガッシュベル!!
[思考・状況] 
1:上に乗っている女に対処
2:わが身体、行方不明! はやく回収しなければ…
3:もうグラサン・ジャックには頼らん!早くモヒカン・エースと合流せねば。
4:カミナに対し、無意識の罪悪感。
5:F-1海岸線のメロン6個に未練。
※参戦時期は、少なくとも石版から復活し、モヒカン・エースと出会った後です。
※会場内での魔本の仕組みに気づいておらず、半ば本気でカミナの名前が原因だと思っています。
 また、耐火加工についても気づいていません。
※モヒカン・エースがゲームに参加していない事にも気づいていません。
 また、身体の事で頭が一杯になっているため、名簿確認や支給品確認の必要性にも気づいていません。
※地図すら見ていないため、身体の位置もわかりません。
※分離中の頭と身体の扱い(禁止エリアでどうなるのか?など)は、次回以降の書き手さんにお任せします。


【藤乃静留@舞-HiME】
[状態]:健康 、衣服が濡れている
[装備]:雷泥のローラースケート@トライガン
[道具]:支給品一式、マオのヘッドホン@コードギアス 反逆のルルーシュ、 巨大ハサミを分解した片方の刃@王ドロボウJING、
     ランダムアイテム1(本人確認済み)、ジャグジーの首輪、包丁
[思考]:
基本思考:なつきを守る。襲ってくる相手には容赦はしない。
1:目の前の生き物を問い詰める
2:3~6のため、ひとまずF-5の駅に移動
3:なつきを探す事を最優先する。
4:なつきの事を知っている人間を探す。
5:豪華客船にゲームに乗っていない人間を集める。
6:首輪を詳しく調べられる技術者を探す。
7:あまり多人数で行動するつもりはない。



【備考】
※「堪忍な~」の直後辺りから参戦。
※マオのヘッドホンから流れてくる声は風花真白、もしくは姫野二三の声であると認識。
(どちらもC.C.の声優と同じ CV:ゆかな)


時系列順で読む


投下順で読む


082:極大射程 カミナ 132:たった一つの強がり抱いて(前編)
082:極大射程 ビクトリーム 147:『蛇』のアクロバットをためつすがめつ
082:極大射程 シャマル 132:たった一つの強がり抱いて(前編)
105:蛇姫は泣き虫の懇願に黙って首を縦に振る ヴィラル 132:たった一つの強がり抱いて(前編)
105:蛇姫は泣き虫の懇願に黙って首を縦に振る 藤乃静留 147:『蛇』のアクロバットをためつすがめつ





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