貴方の描いた明日へ向かいます ◆oRFbZD5WiQ
「うわぁ……すごく綺麗なところなんですね」
「そうさね。と言っても、あたしらやあの軍人どもは、そんな事を考えてる暇はなかったがね」
「そうさね。と言っても、あたしらやあの軍人どもは、そんな事を考えてる暇はなかったがね」
ドーラの語るラピュタの姿を想像しながら、二アは嬉しそうに微笑んでいた。
それを見て、ドーラは僅かに呆れたような表情を浮かべる。
それを見て、ドーラは僅かに呆れたような表情を浮かべる。
「二ア、お前、少しは疑ったらどうだい?」
「え? ドーラおばさま、嘘をついてるんですか?」
「いや、そうじゃないけどね……」
「え? ドーラおばさま、嘘をついてるんですか?」
「いや、そうじゃないけどね……」
なら大丈夫ですよ、と言って、二アは再度微笑んだ。まだ見ぬ、ラピュタに思いを馳せながら。
――シモン、もしここから帰ったら、ダイグレン団の皆さんと一緒に行ってみましょう。
もちろん、それは地上における獣人の脅威が消えてから、になるだろうが。
それでも大丈夫だ、と二アは思う。
だって、シモンがいるから。
シモンのドリルは、天を突くドリルなんだから。きっと、空に飛ぶお城にだって行けるはず。
二アがそう言うとドーラは、
――シモン、もしここから帰ったら、ダイグレン団の皆さんと一緒に行ってみましょう。
もちろん、それは地上における獣人の脅威が消えてから、になるだろうが。
それでも大丈夫だ、と二アは思う。
だって、シモンがいるから。
シモンのドリルは、天を突くドリルなんだから。きっと、空に飛ぶお城にだって行けるはず。
二アがそう言うとドーラは、
「ドリルってのは地面に向かって掘るもんじゃなかったかねぇ」
「はい。でもシモンのドリルはそうなんです」
「はい。でもシモンのドリルはそうなんです」
そういうモンなのかねぇ、と首を傾げるドーラを見て、思った。
早くシモンと再会して、ドーラさんに会わせてあげよう、と。
そして、ヨーコさんも見つけて、お父様を止めるんだ、と。
そこまで考えて、ふと、ドーラが険しい顔をして時計を見ている事に気づいた。
なんだろう、と視線を向けると、
早くシモンと再会して、ドーラさんに会わせてあげよう、と。
そして、ヨーコさんも見つけて、お父様を止めるんだ、と。
そこまで考えて、ふと、ドーラが険しい顔をして時計を見ている事に気づいた。
なんだろう、と視線を向けると、
「……やれやれ。ニア、お喋りは少しばかりお休みだよ」
「え?」
「え?」
それってどういう事ですか? そう問おうとして、その瞬間だった。
『――久しいな、諸君』
久しく聞いていなかった父の声を聞いた。
「お父、様」
質量を伴っているような、重いロージェノムの声。それを聞きながら、ニアは両の手を胸元の辺りで組んだ。
それは祈るように、
そして願うように。
叶うなら、死者なんて出ないでほしいと。
けれど、禁止エリアを喋り終えたロージェノムは、淡々と死者の名を語りだす。
それは祈るように、
そして願うように。
叶うなら、死者なんて出ないでほしいと。
けれど、禁止エリアを喋り終えたロージェノムは、淡々と死者の名を語りだす。
「……本当に、殺し合いなんですね」
早く、シモンと一緒に止めないと――そう、思っていた。
『ザク――シモン――シュバル』
「――――え?」
「――――え?」
体中の全細胞が氷結したように、二アの体は凍えた。
指一本も動かせそうにもない程の寒気を感じながら、ドーラの横顔を見やる。
それは、間違いだと思ったから。聞き間違いだと思ったから。
けれど、ドーラの顔は険しく、そして、物悲しそうな表情が、それを否、と告げていた。
指一本も動かせそうにもない程の寒気を感じながら、ドーラの横顔を見やる。
それは、間違いだと思ったから。聞き間違いだと思ったから。
けれど、ドーラの顔は険しく、そして、物悲しそうな表情が、それを否、と告げていた。
「……間違いじゃ、ないんですね」
「ああ、残念だけどね」
「ああ、残念だけどね」
ここで偽ってもすぐにバレる。そう思ったのだろうか、思いのほかあっさりと答えてくれた。
「そう、ですか」
短く答え、立ち上がる。
けれど頭は垂れたままで、前髪は瞳を覆ってしまっている。
けれど頭は垂れたままで、前髪は瞳を覆ってしまっている。
「ドーラおばさま、早く街に行きましょう。このままでは、シータさんたちも危ないです」
「ああ、そりゃそうだが――お前さん、大丈夫なのかい」
「ああ、そりゃそうだが――お前さん、大丈夫なのかい」
沈黙の帳が、瞬きの間だけ降りる。
だが、小さい呻き声だけを残し、その幕はすぐに上がる。
頭を上げる。覆われていた顔にあったのは、微笑み。今にも崩れ落ちそうなそれは、砂上の楼閣のよう。
けれども、砂の上だとしても、それはしっかりと立っていた。
だが、小さい呻き声だけを残し、その幕はすぐに上がる。
頭を上げる。覆われていた顔にあったのは、微笑み。今にも崩れ落ちそうなそれは、砂上の楼閣のよう。
けれども、砂の上だとしても、それはしっかりと立っていた。
「――シモンはもう死にました、もう、いません」
噛み締めるように、呟く。拳は強く握られ、爪は肉を裂いて、血が流れている。
「けど、シモンは、この胸に、一つになって生き続けるんです」
ああ、と思う。
これが、これがシモンが抱いた悲しさ、シモンが抱いた苦しさなんですね、と。
今にも引き裂けそうな胸を両手で押さえつける。そうしないと、きっと駄目になってしまうと思ったから。
これが、これがシモンが抱いた悲しさ、シモンが抱いた苦しさなんですね、と。
今にも引き裂けそうな胸を両手で押さえつける。そうしないと、きっと駄目になってしまうと思ったから。
「……それは、どいつの言葉だい?」
「シモン、です。シモンが昔、アニキという人が死んで、すごく落ち込んでいて――でも、最後には、こんな言葉を言って、ちゃんと立ち直ったんです。だから、」
「シモン、です。シモンが昔、アニキという人が死んで、すごく落ち込んでいて――でも、最後には、こんな言葉を言って、ちゃんと立ち直ったんです。だから、」
だから、私も立ち直らないと。
シモンのように、ゆるぎない心を以って。
シモンのように、ゆるぎない心を以って。
「お前の言うシモンって奴は、アニキって奴が死んでも、泣かずにすぐ立ち直ったのかい?」
「……いいえ。すごく落ち込んでいましたし、最初は凄く泣いたと思います。けど、」
「……いいえ。すごく落ち込んでいましたし、最初は凄く泣いたと思います。けど、」
今の状態で、そうなる事は許されない。
あのシモンが、こんなにも早く殺されてしまうような状況で、悲しみに縛られたら、きっとドーラおばさまに負担をかけてしまう。
だから、寸前で踏みとどまろうと、二アは必死だった。全身を硬くし、歯を食いしばって立って、ただただ、耐えていた。
あのシモンが、こんなにも早く殺されてしまうような状況で、悲しみに縛られたら、きっとドーラおばさまに負担をかけてしまう。
だから、寸前で踏みとどまろうと、二アは必死だった。全身を硬くし、歯を食いしばって立って、ただただ、耐えていた。
「ぁ……」
だからだろうか。不意に体を覆ったぬくもりに、思わず声が漏らす。
視線をそっと下におろすと、皺だらけの指先が自分を抱きとめているのが見えた。
視線をそっと下におろすと、皺だらけの指先が自分を抱きとめているのが見えた。
「なら、迷う事なんてないじゃないか。思いっきり泣けばいいよ」
「でも、私は」
「そのシモンだって、悲しんで、悲しんで、それで立ち直ったんだろう? それに、」
「でも、私は」
「そのシモンだって、悲しんで、悲しんで、それで立ち直ったんだろう? それに、」
ぽん、と頭に手を乗せられる。
撫でられているのだと知覚する前に、ドーラは口を開いた。
撫でられているのだと知覚する前に、ドーラは口を開いた。
「お前はお前だ、シモンじゃぁないだろう? だから、そんなに気張る事はないよ」
――その言葉は。
私が、シモンに言った言葉じゃないのでしょうか?
私が、シモンに言った言葉じゃないのでしょうか?
「悲しかったら、思いっきり泣けばいいじゃないかい。苦しかったら、思いっきり泣けばいいじゃないかい。溜め込んだって、いい事はひとつもないよ。
年寄りの忠告さ、しっかりと覚えておくんだよ」
「私は、私は――」
年寄りの忠告さ、しっかりと覚えておくんだよ」
「私は、私は――」
氷が人肌で溶け出したように、瞳から一粒、涙がこぼれ落ちる。
「シモン――」
本来、他の姫たちのように、ゴミ捨て場で朽ちていく運命にあった自分を救ってくれた。
アニキの死で沈んでいたけれど、それでも、誰よりも最初に自分を助けようとしてくれた彼。
アニキの死で沈んでいたけれど、それでも、誰よりも最初に自分を助けようとしてくれた彼。
「シモン……シモン」
グアームに囚われた自分を、いち早く助けに来てくれた。
自分が作ったごはんを、誰よりも美味しそうに食べてくれた。
自分が作ったごはんを、誰よりも美味しそうに食べてくれた。
「シモン、シモン、シモン……ッ!」
もう、限界だった。
心を覆った氷は溶解し、濁流の如く流れ落ちる。体中の水分を流しきるかの如く、涙は流れ続けた。
心を覆った氷は溶解し、濁流の如く流れ落ちる。体中の水分を流しきるかの如く、涙は流れ続けた。
◆ ◆ ◆
「ご、ごめんなさい。私――」
ドーラの胸の中で、小さく言う二ア。
それに対し、気にすんじゃないよ、と言って微笑んだ。
それに対し、気にすんじゃないよ、と言って微笑んだ。
「謝る必要なんてないよ。それに、泣けるうちに泣いといた方がいいのさ。こんな状況だ、泣きたくても泣いていられない時は、きっとあるだろうからね」
とん、と肩を叩き、その瞳を覗きこむ。
充血し真っ赤になりつつも、凛と今を生きようとする者が浮かべる瞳だ。
充血し真っ赤になりつつも、凛と今を生きようとする者が浮かべる瞳だ。
「はい……では、早く街に行ってシータさんやパズーさん、ヨーコさんを見つけましょう!」
さっきまで泣いていたのが嘘のように、明るく叫ぶ。もっとも、まだ体は震え、悲しみから逃れきれてない事が分かった。
無理もない、と思う。
自分だって、夫が死んだあの時に数時間で立ち直れたか、と問われたら、否と答えるだろう。
けれど、それでも立ち上がろうとする姿は、健気で、そして気丈。このゲームに抗うという、不屈の決意だ。
全く。シータといい、この子といい、世界ってのはなんで辛い運命を叩きつけるのか、と。
自分が肩代わりできるものならしてやりたいが、それが出来ないのが現実だ。けれど、
無理もない、と思う。
自分だって、夫が死んだあの時に数時間で立ち直れたか、と問われたら、否と答えるだろう。
けれど、それでも立ち上がろうとする姿は、健気で、そして気丈。このゲームに抗うという、不屈の決意だ。
全く。シータといい、この子といい、世界ってのはなんで辛い運命を叩きつけるのか、と。
自分が肩代わりできるものならしてやりたいが、それが出来ないのが現実だ。けれど、
「それでも、支えてあげたいじゃないか」
「ドーラおばさま?」
「ドーラおばさま?」
不意に漏らした言葉に、二アが不思議そうな顔をする。
なんでもないよ。それだけ言って、ドーラは玄関を開けた。
なんでもないよ。それだけ言って、ドーラは玄関を開けた。
「それより、のんびりしてる暇はないよ! 四十秒で支度しな!」
殊更強めの口調で言った。
下手にしんみりしていては、せっかくの二アの決意が無駄になる。
なら、少々荒っぽく行こうじゃないか、と。
下手にしんみりしていては、せっかくの二アの決意が無駄になる。
なら、少々荒っぽく行こうじゃないか、と。
◆ ◆ ◆
「は、はい!」
ドーラの言葉に、慌ててデイバックを抱え込む。
ドアを抜けて外に出ると、悲しみを抱く自分とは裏腹に澄み渡る青い空。
ドアを抜けて外に出ると、悲しみを抱く自分とは裏腹に澄み渡る青い空。
「シモン――」
それを仰ぎ、呟いだ。
「ほら、なにしてるんだい! 置いてくよ!」
「あ、ま、待ってください!」
「あ、ま、待ってください!」
――シモン。私はまだ、そちらには行けません。
ヨーコさんを見つけて、そして、お父様を止めないといけませんから。
でも、安心してください。
ドーラさんと他の皆さんと一緒にお父様を止めて、その後、ダイグレン団の皆さんと一緒に人間が安心して住める世界を作ってみます。
全てが終わったら、空を旅しましょう。
ドーラさんの言うラピュタに行って、空に浮かぶお城を散策するんです。きっと綺麗ですから、その時は私の隣に居てくださいね。
……確かに、私に天を突くドリルはないですけど、それでも頑張ろうと思います。
だって――無理を通して道理を蹴っ飛ばす。それが、ダイグレン団なのでしょう?
だから、見ていてください。
ヨーコさんを見つけて、そして、お父様を止めないといけませんから。
でも、安心してください。
ドーラさんと他の皆さんと一緒にお父様を止めて、その後、ダイグレン団の皆さんと一緒に人間が安心して住める世界を作ってみます。
全てが終わったら、空を旅しましょう。
ドーラさんの言うラピュタに行って、空に浮かぶお城を散策するんです。きっと綺麗ですから、その時は私の隣に居てくださいね。
……確かに、私に天を突くドリルはないですけど、それでも頑張ろうと思います。
だって――無理を通して道理を蹴っ飛ばす。それが、ダイグレン団なのでしょう?
だから、見ていてください。
「私は、貴方の描いた明日へ向かいます」
駆け出しながら、そっと、呟いた。
まだシモンの死が穿った胸の隙間は癒えてはいませんけど、きっと立ち直ってみせますから――
まだシモンの死が穿った胸の隙間は癒えてはいませんけど、きっと立ち直ってみせますから――
【F-7北端/中華料理店手前/1日目/朝】
【ニア@天元突破グレンラガン】
[状態]:若干疲労、満腹
[装備]:釘バット
[道具]:支給品一式、毒入りカプセル×3@金田一少年の事件簿
[思考]:
1.ドーラと行動を共にする。
2.ヨーコ、シータ、パズーを探す
3.カミナの名前が気になる(シモンの言うアニキさんと同一人物?)
4.お父様(ロージェノム)を止める
※テッペリン攻略前から呼ばれています。髪はショート。ダイグレンの調理主任の時期です。
※ドーラの知りうるラピュタの情報を得ました。
[状態]:若干疲労、満腹
[装備]:釘バット
[道具]:支給品一式、毒入りカプセル×3@金田一少年の事件簿
[思考]:
1.ドーラと行動を共にする。
2.ヨーコ、シータ、パズーを探す
3.カミナの名前が気になる(シモンの言うアニキさんと同一人物?)
4.お父様(ロージェノム)を止める
※テッペリン攻略前から呼ばれています。髪はショート。ダイグレンの調理主任の時期です。
※ドーラの知りうるラピュタの情報を得ました。
【ドーラ@天空の城ラピュタ】
[状態]:健康、満腹
[装備]:カミナの刀@天元突破グレンラガン
[道具]:支給品一式、食料品(肉や野菜など)、棒付手榴弾×3@R.O.D(シリーズ)
[思考]:1.ニアを連れて行く。
2.シータ、パズー、ヨーコを探す
3.ムスカを警戒
4.ゲームには乗らない。ニアに付き合うが、同時に脱出手段も探したい
※ニア視点でのグレンラガンの世界観について把握しました。
[状態]:健康、満腹
[装備]:カミナの刀@天元突破グレンラガン
[道具]:支給品一式、食料品(肉や野菜など)、棒付手榴弾×3@R.O.D(シリーズ)
[思考]:1.ニアを連れて行く。
2.シータ、パズー、ヨーコを探す
3.ムスカを警戒
4.ゲームには乗らない。ニアに付き合うが、同時に脱出手段も探したい
※ニア視点でのグレンラガンの世界観について把握しました。
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