片道きゃっちぼーる2・伝言編 ◆F.EmGSxYug



放送を聞いて、僅かではあるがアルベルトは胸をなで下ろしていた。
死亡者の数が少ないと言う事実は彼にとっても幸運であったのだ。
死亡者が少ないと言うことはつまり、戦いがそれほど起こっていないということ。
マスターアジアのように、まだ小手調べ程度に抑えている者が多いのか――?
これは所詮、推測に過ぎない。だが、僅かではあるが焦りを落ち着かせることが出来た。
もっとも、これはあくまで副次的な効果。
アルベルトにとって真に有り難かったこととは、高速道路の下にいる少女の注意を逸らしてくれたことである。

(……あの男の遺体がまずい)

高速道路にいるアルベルトは、自然その少女を見下ろす形になる。その状態で、彼はそう思案した。
無論、アルベルトにとっては好敵手たる戴宋の情報を集めるのが第一。隠れて行動することはその方針から遠ざかることだ。
彼にとってすべきことは、呼びかけるなり何かして情報交換を求めることだろう。
だがまずいことに、道路から高速道路に接続されているインターチェンジは、
遺体がはっきり見える向きで高速道路と繋がっていた。
しかもアルベルトは負傷を遺体の衣服で手当てしている、という状態。
これでは自分が殺しましたと公言しているも同然だ。
もしあの少女に姿を見せ、インターチェンジから高速道路に上がらせれば……遺体と負傷について問い詰められるのは間違いない。
死人に口なしとあらぬ罪を着せることも出来よう。だが、そういった虚言はアルベルトには好ましいことではない。
余計な危険を避けるならば、今のうちに退くべきだろうが……

アルベルトは放送を聞きながらも、眼下で放送に耳を傾けている少女を見やる。
やはりこちらに注意を向けている様子は無い。それどころか正反対の方向を向いている。
退くなら今が好機――。

――しかし。


                    ※


放送を聞いて、とりあえず俺は溜め息を吐いた。安心して吐いたものでは決して無い。
既に死者が出てしまったこと。そして、俺はその人達を守れなかったこと。それだけが事実。
知り合いが死んでいないなんてことに安心している余裕なんてないし、何より厳密に言えばそれも間違い。
放送で呼ばれた一人、シュバルツ・ブルーダー。
突如現れて意味不明な問答を仕掛けてきた、あの男で間違いないだろう。

「玖我の奴……大丈夫なのか?」

考えれば考えるほど、焦る。
シュバルツとかいう奴は……俺じゃ例え不意打ちしたとしても、そうそう簡単に倒せる相手じゃない。
それがこうも早期に死んだ。つまり、この周辺にシュバルツを倒せるほどの人間がいる、ということだ。
幸運なのか不幸なのか。玖我を追って高速道路を歩いていた俺は放送後すぐ、
そのシュバルツ当人の遺体を発見してしまっていた。
高速道路の路上で、誰にも省みられぬことなく。遺体はただの遺体として。
……思わず、歯を噛み締めた。

「……あんたが何を言いたかったのか分からないけど、悪い人間じゃないことは分かってる」

せめてもの追悼として、水を掛けてシュバルツの遺体を洗っておく。
人一人埋める穴を作るにもそれなりの手間が掛かるというのは、切嗣の葬儀で知っている。
ましてや高速道路の上だ、ちゃんとした地面の上まで運ぶだけでかなり時間を喰ってしまうだろう。
だから最低限のことをする。それでも追悼する。救えたのかも知れない命のために。

一分ほど黙祷しただろうか。とりあえず目を開けて周囲を見渡して……気付いた。
眼下に見える町並みの警察署。そこへ入っていく人影が見える。玖我じゃないようだが。

「……一応会って、玖我を見なかったか聞いた方がいいか」

そう決意して高速道路を降りる決意をしたが……結果から言えば無駄だった。
簡略化されたインターチェンジの中ほどまで歩いたところで、玖我本人が下から歩いてきたのだ。
どうやら彼女も気付いたらしい。あっちの方から先に声を掛けた。

「お前もどうやら無事だったらしいな」
「俺も同じことを言いたいさ。それにしても、ちょうどいいタイミングだな」
「ああ……少し前に高速道路から降りて来た奴がいたからな。
 一応ここも自分で確認しようと思って上がって来た」

降りて来た奴……その様子だと、さっき警察署に入っていった人影のことか。
玖我の様子を見る限り、戦闘があった可能性は低そうだ。

「その様子だと、特に何かあったわけでもないのか?」
「ああ、放送で知り合いが呼ばれたりもしていない。それと、ドモンも見つかっていない」

玖我の声は平坦だ。とはいえ、彼女が冷たいという訳ではないと思う。
多分、彼女の知り合いも玖我と同じ位の実力があるんだろう。
だから生き残っていてもおかしくないと思っているから、それほど露骨には喜ばない。
なら、今話題にすべきなのはそっちじゃない。探し人の方だ。

「だが、アルベルトという奴に伝言を頼んである。
 南に行くとか言っていたから、その方角は探さないで済むはずだ」
「……ちょっと待て玖我。実はその子供、偽名を使ってるかもしれない」
「え?」

玖我の話を途中で切り替えて、あっちの『ドモン』から聞いた話を説明する。
まあ色々と説明したけれど、要するに一言で言えば「あの男はゲームに乗っていない本物のドモンだ」ということになる。
……聞いていくうちに、玖我の表情は加速度的に不機嫌そうになっていった。
まあこれが真実だと、玖我は騙された挙句無駄に歩き回ったことになるから当たり前かもしれない。

「……証拠はあるのか?」
「俺がここにこうしているのが証拠にならないか? あっちの『ドモン』が殺し合いに乗ってたら、俺は死んでるだろ」
「…………」

少し無茶苦茶な論理だとは思うが、俺だって殺意を持って襲い掛かる相手の判別くらいできる。
玖我もわざと射撃を外すくらいだし、殺意を持たない戦い方があるのは知ってるはずだ。
とはいえ、反論されても仕方の無い論理だろう。現に玖我は余計機嫌が悪そうな表情だ。

「まあ、文句があるなら言ってくれ。実際俺は玖我が言う『ドモン』に会ってないし、
 玖我は俺が言うドモンに会ってない。どっちがどっちかなんて詳しく話さないと……」
「……悪いが今は思いつかない」

ところが、帰ってきたのは意外な言葉だった。

「なんでさ?」
「さっき会ったアルベルトという奴にも同じことを言われた。
 情報交換が終わったらすぐにいなくなったのも同じだ」

ああ、と思わず声が漏れる。納得いった。
要するに玖我は俺があっちのドモンを信頼したのと同じ理由でアルベルトなる人を信用し、
情報交換をしたというわけだ。確かに、それだと俺に反論しようがない。

「そいつに会うために一旦戻ろう。それに東は袋小路だし、北も同じ。
 子供の方を効率よく探すにしても、西に行った方がいいだろうし……
 何より、伝言では『18:00に図書館へ来てくれ』と言ってある」
「なるほど。とりあえず早く見つけて、何で偽名使ったか確かめないとな」
「……偽名を使ったと決まったわけでもないだろう」

まだ心のどこかで納得がいかないのか、それとも騙されたことが腹立たしいのか。
玖我は微妙にふくれっ面をしてそう返してきた。……なんかこういう所も遠坂に似てる気がする。
まあこの様子なら俺に実害はないだろう。問題はむしろ、玖我を騙している可能性がある子供の方。
とはいえ、俺はそっちの方はまだなんとかなると思っている。
少なくとも、何か裏で考えていても子供なら止めることはできると。

――イリヤという、前例があるのだから。

                    ※

警察署。その中に今、くつろぎながら葉巻を吸う男が一人。衝撃のアルベルトである。
警察と言う言葉は彼に少し考えさせるものであったが、
流石に下らない理由で警察署に入るのを止める気は無い。
彼が巻きつけていた服の布地は、全て白い包帯に取り替えられている。

十数分前、警察署に入ったアルベルトがまず行ったことは医療器具の捜索だった。
幸いと言うべきか予想通りと言うべきか、消毒液や包帯と言った最低限の医療道具は警察署の中に存在した。
目的は怪我の手当てと、遺体と結びつきかねない布地の破棄の二つ。
故に服を切り裂いた急造の包帯はここで破棄し、新しい包帯に取り替えたのだ。

――アルベルトとしてはできるだけ早く出発したい所だが、今は体を休めている。いや、休まざるを得なかった。
単独行動を取りたいアルベルトとしては、怪我をしていることで余計な心配や侮りを受けるのは好ましくないのだ。
そのためなつきと話す際も、負傷を感じさせないよう気を遣う必要が生じ……
普段のアルベルトなら容易くできることも、二人のガンダムファイターから傷を受けた今の彼にはかなりの負担となっていた。
……もっとも。この程度の状況で隠れてやり過ごすことなどアルベルトはお断りだったからこそ、
敢えて自分から高速道路を降りてなつきと情報交換を図ったわけだが。

「……フン、だがこれでやっと一段落か」

出立する決意と共に包帯を締め直しながら、アルベルトは息を吐く。
とにもかくにも、結果的には成功だ。初と言ってもいい。
情報は得られなかったが一応伝言をするように要請し、
相手が高速道路にある遺体に気付く前にその場を離れることができた。
こちらも伝言をするように頼まれたが、元々アルベルトから提案した『条件』であり負担にもならない。
早い段階で適当に済ませれば問題ないだろう。
そう結論付けて、アルベルトは南を目指すべく休憩を終え立ち上がった。

ちなみに今回受け取った伝言とは、『ドモン・カッシュ』へのものである。
ただし――アルベルトにとって名前しか知らず、容姿などは全く検討の付かない相手であり。
彼と話していた時のなつきは、チェスが偽名を使っていたことなど知らないのだが。


【A-6/高速道路上/1日目/朝】
【衛宮士郎@Fate/stay night】
[状態]:疲労(中)
[装備]:デリンジャー(2/2)@トライガン
[道具]:支給品一式、暗視ゴーグル、デリンジャーの予備弾20
[思考]
1:西へ。まずはドモンがいたところへ。
2:イリヤの保護。
3:できる限り悪人でも救いたい(改心させたい)が、やむを得ない場合は――
4:18:00に図書館へ行く
※投影した剣は放っておいても30分ほどで消えます。
真名解放などをした場合は、その瞬間に消えます。
※本編終了後から参戦。
※士郎はなつきが凄まじい銃の腕を持っていると思い込んでいます。
※ドモンと名乗った少年(チェス)に軽度の不信感を持っています
※ドモンが弱者にも戦いを挑むつもりだとは気づいていません。
※ドモンが向かった先について確認できたかどうかは、後の書き手さんにお任せします。

【玖我なつき@舞-HiME】
[状態]:疲労(中)、チェスに軽度の不信感
[装備]:ライダースーツ@舞-HiME
[道具]:支給品一式、風華学園高等部制服@舞-HiME、不明支給品2(本人確認済み)
[思考]
1:今は西へ行き、ドモン(本物偽者含め)を探す。
2:18:00に図書館へ行く。
3:舞衣、静留、奈緒と合流する
4:この殺し合いから脱出する
 [備考]
※チェスの名前をドモン・カッシュだと思っています
士郎の情報を元になつきは以下の仮説を立てました。
  • 今回の殺し合いは蝕の祭や聖杯戦争をモデルにした物
  • テッカマンとHiMEとサーヴァントは似たような存在
  • 螺旋力=高次物質化能力=魔術に近い特殊な力
  • 螺旋遺伝子を持った者=特殊能力者
  • この殺し合いの参加者は皆、何かしらの特殊能力を持っている
※参戦時期は蝕の祭が終了した後です
※アルベルトから伝言を聞きました。


【A-6/警察署/1日目/朝】
【衝撃のアルベルト@ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日-】
[状態]:疲労大 全身にダメージ 右足に刺し傷(それぞれ消毒液や軟膏・包帯で応急措置済み)
    スーツがズダボロ やや精神不安定
[装備]:なし
[道具]:支給品一式 シガレットケースと葉巻(葉巻3本使用) 不明支給品0~2(本人確認済み)
    ボイスレコーダー@現実 シュバルツのブーメラン@機動武闘伝Gガンダム
    赤絵の具@王ドロボウJING 自殺用ロープ@さよなら絶望先生 
[思考]:
基本方針:戴宗を一刻も早く探して合流し、決着をつける
1:戴宗を再び失うことに対する恐れ。そうならないために戴宗の情報を集める
2:とりあえず南へ向かう
3:脱出の情報を集める
4:いずれマスターアジアと決着をつける
5:他の参加者と馴れ合うつもりはない
6:脱出不可能の場合はゲームに乗る
[備考]:
※上海電磁ネットワイヤー作戦失敗後からの参加です
※素晴らしきヒィッツカラルドの存在を確認しました
※ボイスレコーダーにはなつきによるドモン(と名乗ったチェス)への伝言が記録されていますが、
 アルベルトはドモンについて名前しか聞いていません。


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090:あの馬鹿は荒野を目指す 衛宮士郎 133:貫けよ、その弾丸で
074:片道きゃっちぼーる 玖我なつき 133:貫けよ、その弾丸で
084:セカンドチャンス 衝撃のアルベルト 133:貫けよ、その弾丸で





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