ブックドラフト ◆5VEHREaaO2



『それでは――存分に、殺し合え』


舞台中にロージェノムの宣告が響き渡る中、結城奈緒とギルガメッシュは図書室の中で机を前にして椅子に座っていた。
死者の名が淡々とつづられる中、奈緒の心中はいたって冷静だった。
別に死者が出たことに喜ぶわけでもないが、別に生きていてほしいと思う人間もおらず、知人でもない以上は
テレビで8歳児が刃物で刺殺された、などと報道された程度の関心しか持っていなかった。

「で、どうするよ金ピカ?」

奈緒は禁止エリアを書き込んだ地図から目を離し、ギルガメッシュにこれからの方針を聞く。
彼女としてはギルガメッシュの顔色を窺うのははなはだ不本意ではあったが、
こうでもしなければギルガメッシュがへそを曲げてしまうため、決して面にはださないがしぶしぶ窺うしかない。
奈緒に問いかけられたギルガメッシュはそんな彼女の心中など知らず、怒りの表情を浮かべていた。

「金ピカ?」

奈緒はギルガメッシュの怒りの表情を見て動揺する。
なぜ怒っているのか、知り合いの名前でも呼ばれたのか? それにしては違うような気がする。
疑問に思った奈緒は追求することにした。

「なんであんた怒ってるの?」

奈緒の問いかけにギルガメッシュは怒りの表情を崩さずに答える。

「ふん。螺旋王とやらが、この世の全てを自分のものだと勘違いしていることに怒りを覚えただけだ」

ギルガメッシュは、聞くだけならば義憤に駆られていると思われる発言をした。
だが奈緒はそうとは思えずさらに追求する。

「で、俺の物だから手前が手を出すなと」

奈緒は聞く者が聞けば侮蔑とも取れる発言をした。

「うむ、その通り」

だがギルガメッシュは奈緒の想像通りの答えを返す。
奈緒はやっぱりと思い、感性の違う無益な話題を打ち切ることにする。

さてどう打ち切ろうか。オーソドックスに別の話題に持っていくのが適当だろう。

「ふーん、そうなんだ」
「分かったなら、早く本を読め」

本を読むなど疲れるというのに、金ぴかはこちらの気持ちなど無視して催促してくる。
未だこなしたノルマは隣にある本の山から考えれば十分の一程度、後の事を考えれば気が重たくなってくる。
とっとと話題を切り替えて、徐々に本から意識を逸らそう。
とりあえず、支給品の話題に移してみる。

「本ねえ。本なんて支給品だけでこりごりなのに」

故に何気なく話題を振ってみる。

「……本だと?」

繭をわずかに動かしギルガメッシュが聞き返してくる。
食いついたと確信し、奈緒は話を続ける。

「そう本。っていってもタイトル不明で六角形の絵が描いてあって、開かない煮ても焼いても食えそうにない本。
 いっそのこと全員の詳細でも書いた本でもくれればいいのに」

もし読子・リードマンが学校に立ち寄っていれば、奈緒の持つ本のタイトルが全てを見通す眼の書だと判明しただろうが、
彼女は学校には寄らず東の方へと進んでいたが故にタイトルは分からずじまいである。
だが、大英図書館にとっては重要物品である本も、奈緒にとってはただのガラクタにしか過ぎない。
精々話の種にするぐらいだ。

「私の支給品は全部役に立たないものばかり。あんたの方はどうだったの」

本に手配書に眼帯と、自分の道具は全部役に立たぬものばかりである。
だが、この王様は剣以外にも何か支給されているかもしれない。
もしそれが自分に扱えるものであれば、言いくるめて手に入れてしまえばいい。
そんな魂胆で奈緒はギルガメッシュに問う。

「いや、役に立つやも知れぬものだ」

ギルガメッシュの返答に奈緒は心の中でガッツポーズを決め、どうやって手に入れようかと頭を働かせる。
だが彼女の思案はすぐに破られることとなる。

「我の支給品も本だ。調度いい、これらも検分してもらうとするか」

そう言いながらギルガメッシュは袋に手をかけた。
ギルガメッシュの発言と動作から自分から地雷を踏んだかと奈緒は後悔する。また本なのかと。
だが、彼女が踏んだのは地雷ではなく原爆だった。

「むっ!?」

ギルガメッシュの表情が余裕のあるものから、まるでラーメンに振りかけてた湖沼の瓶の蓋が外れた表情に変化する。
開いたデイパッグの口が彼の意に反し、下を向いた。
そして、悲劇が起きた。
質量保存の法則を無視して入っていた大量の何かが開放されてしまった。
奈緒の目にはそれは色とりどりの四角い何かに見えた。
いや、何かではない。それは日常生活でよく見知ったものであり、今の今まで目にしていたもの。
すなわち、本である。

「なっ!? うわ!? ワップ!?」

突然襲い掛かってきた本の津波に、奈緒の体は覆いつくされ見えなくなる。
が、本の津波は奈緒の体を飲み込んだだけでは飽き足らず、部屋中を覆いつくし、
扉を破り廊下まで本の海を作り、すぐ側にある階段までも本の山としてしまった。


  □ □ □


この本の津波には正式名称がある。俗に言うブックドラフトである。
ブックドラフト、それは全国全世界の本好き達がもっとも恐れる災害だ。
バックドラフトというという火災現場で起きる現象がある。
室内など密閉された空間で火災が生じ、不完全燃焼が生じて火の勢いが衰え一酸化炭素という可燃性のガスが溜まった状態の時に、
窓やドアを開くなどして急激に酸素が取り込まれると爆発を引き起こすという、原理的には中学校の科目、「水素爆発」と似た現象だ。
ブックドラフトとはこのバックドラフトをもじった名称である。
このブックドラフトがバックドラフトと異なる点は、単純に火が本と置き換わっていることだけである。
だがその脅威は火災現場のバックドラフトと変わることは無い。
ブックドラフトは睡眠を取る前に、寝所に本を貯め置き本の山をつくり、朝目覚めて何らかの拍子にその本を崩して怪我を追うという小さなものから。
ビルの中にある書店であまりにも本を店内に詰めすぎたために、ビルが本の重みに耐え切れず崩壊するという大きなものまで危険度は大きく変化する。
一般的なビブリオマニアの家でも、読書用、保存用、陳列用、愛玩用、入浴用、放置用、試食用、投擲用、訓練用、切抜用と
用途ごとに本を買ってしまったために整理が追いつかずにブックドラフトが起き、人が埋まってしまうこともある。


その一例としてこんな話がある。


あるところに、シェスカという眼鏡を掛けた女のビブリオマニアがいた。
彼女は大の本好きで、一度読んだ本の内容を決して忘れずに覚えておくほど集中して読み、
司書の仕事の最中でも本を読みすぎたためにクビになってしまうほどに本に意識がいってしまう、本の虫であった。
彼女は司書の仕事をクビになった後も、自宅にある大量の蔵書を読みふけっていた。
あるとき、そんな彼女に悲劇が訪れた。本の探索中に起こったブックドラフトである。
彼女の体は頭上より降りかかった本に押しつぶされ、しばらくの間は身動きができずに生死の境を彷徨うことになったのだ。
幸いにして、とある訪問者達に救助されたために一命は取り留めたが、
もし一時間も救助が遅れていれば、一人のビブリオマニアがブックドラフトで命を落とすことになったのは想像に難くなかった。

そして、その災害を引き起こした本達がギルガメッシュの最後の支給品であった。
もっともデイパッグから吐き出された量は、シェスカの蔵書の半分程度ではあったが。


  □ □ □


奈緒が目を見開くと、闇の中であった。
光すら射さない暗闇の中だ。ここがあの世なのだろうか?
いや、体の節々が悲鳴を上げ圧迫感があるので、おそらくあの世ではないのだろう。確信などないが。

「ったく」

悪態を付きながら、奈緒は暗闇から脱出するために体を動かそうとした。
だが、指がかすかに動くだけで身動き一つできなかった。
一瞬金縛りかと思ったが、即座に否定する。
記憶をたどればなぜ身動きできないかなど簡単に分かる。
自分の体は大量の本に覆われており、それゆえに身動きなどできず何も見えないのだ。

「金ピカー。生きてるー?」

奈緒はギルガメッシュに呼びかける。
死んでいるとは思ってはいない。が、とっとと助け出してほしい。
ああ、こうしている間にも頭に血が昇ってくる。
重力が反転しているか、自分の体が犬神家状態のどちらかなのだろう。

「どうした、蜘蛛女?」

ギルガメッシュの声が聞こえてきた。声の調子からしてどうやら無事らしい。

「あんたは埋まってないの?」
「たわけ。貴様のような間抜けな真似をするわけがなかろう」

一瞬、頭の血管がはちきれそうになる。
お前の所為だろうが!?
と奈緒は叫びたかったが、噴火一歩手前で踏みとどまる。
ここで怒ってギルガメッシュのへそを曲げてはいけない。
腕の稼働域が制限され、下手をすれば二次災害が起こる可能性がある以上は
なんとかこいつにひっぱりだして貰いたい。

「ねえ、掘り出してくれない?」
「なぜ我がそんなことをしなければならんのだ」



【H-2 学校二階・図書室 一日目 朝】
【結城奈緒@舞-HiME】
[状態]:健康、眼帯を外したい、逆さまに本の山に埋もれて身動きできない。
[装備]:衝撃のアルベルトのアイパッチ@ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日
[道具]:支給品一式、パニッシャー@トライガン、全てを見通す眼の書@R.O.D(シリーズ)
[思考]
基本思考:面倒なのであまり戦いたくない。ヤバくなったら真面目にやる。
1:本の山から抜け出したい。
2:とりあえず金ぴかと一緒に行動する
3:攻撃してくる人間を殺すのに躊躇いは無い
4:藤乃にはあまり会いたくない
※本の中の「金色の王様」=ギルガメッシュだとまだ気付いていません。


【ギルガメッシュ@Fate/stay night】
[状態]:健康
[装備]:巳六@舞-HiME 黄金の鎧@Fate/stay night
[道具]:支給品一式、シェスカの全蔵書(1/2)@鋼の錬金術師
[思考]
基本思考:打倒、螺旋王ロージェノム。【乖離剣エア】【天の鎖】【王の財宝】の入手。
1:蜘蛛女が自力で這い出してくるのを待つ
2:異世界の情報を集めておく。
3:散らばった本は蜘蛛女に全て片付けさせる
4:宝具、それに順ずる道具を集める
5:目障りな雑種は叩き切る
6:エレメントに興味
※学校の図書館には様々な異世界の歴史を記した本があります。
(ただしどれだけ関係ない話があるか、どこまで詳細かは不明。
 少なくとも参加者の名前や能力については述べられていない。
 また1stガンダム~ガンダム00まで全黒歴史を紹介するなど、関係ない情報も相当数紛れている)
※主催者による監視を警戒しています
※ギルガメッシュの最後の支給品は『シェスカの全蔵書@鋼の錬金術師』です。



  □ □ □



言峰綺礼は放送を聞き終わった後、学校の校門を潜っていた。
放送の内容など、彼にとってはそうたいして重要なものではなかった。
故になんの同様も驚愕もなく南下し、目に付いた学校へと入ることにしたのだ。
そして、言峰はグラウンドの中央に入った時に気づいた。
日が昇る中では判別しにくいが、二階の一室には明かりがついている。
どうやら学校のあの部屋には誰かがいるらしい。
はたして敵なのか、味方なのか。正義を信じる者なのか、悪行の限りを尽くす者なのか。
いずれにしても興味は尽きない。
とりあえず接触しようと考え、校内へと入る。

「出迎えは無しか?」

言峰は上履き入れが幾つも並ぶ玄関に立ち、そう呟く。
周りを見ても人っ子一人見当たらない。見た限りではトラップを仕掛けられている形跡もない。
となればおそらくは、上にいるのは素人か、腕に自信のある強者ということになる。

「まさかあいつというわけでもあるまい」

黄金のサーヴァントを思い浮かべながら、さらに校内へと足を踏み入れる。

無論靴を脱ぐわけでもないので廊下が土で汚れるが気にするはずもない。
目指すは二階、すぐ側の階段を昇った場所にある一室。
その部屋に誰かがいるはずだ。
言峰は階段を慎重に昇り二階へと進み、角を曲がる。
罠が仕掛けられていないかも彼は確認はするが、見当たらなかったため廊下を進む。
そして、照明の付いている一室の数歩手前で止まり、視線を泳がしある一点でとまる。
彼の視線の先には図書室のプレートがあった。図書室の中からは誰かの話し声が聞こえる。
まちがいなくこの部屋には誰かいる。

言峰綺礼がそう確信した瞬間、図書室の扉が轟音と共にはじけ色とりどりの津波が襲ってきた。

「なっ!?」

言峰は突然の廊下を埋め尽くす本の津波に対応できず、逃げ場などあるわけでもなくあっさりと飲み込まれる。
圧倒的な自然の摂理の前では、高い身体能力を持つ彼でも無力に等しい。

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」

彼の体は本の津波に流され、廊下のあちこちにぶつかりつつ廊下を駆け巡り、階段を通り一階へと押しやられる。
が、このまま黙って本の津波になすがままにされる言峰綺礼ではなかった。
一階と二階の中間地点に差し掛かった直後に本の一冊を蹴り、そのまま数m後ろに飛翔、
空中で宙返りを決めつつ体勢を整え、冷たい廊下へと鮮やかに着地する。

「いったいなんだ?」

今だ本の津波を起こす廊下を尻目に、言峰はそう呟くものの敵地に踏み込んでしまったことを理解していた。
魔術なのか魔法なのか単純な罠なのか、どういった種かは分からないが相手は自分の襲来を察知し先制攻撃を仕掛けてきたのだ。
警告もなしにこのような真似をする以上、殺し合いに乗った人物であろうことは間違いない。
しかも攻撃方法や発動のタイミングから、トラップの扱いに熟知していると考えたほうがいい。
もしかしたら校内にも見落としたトラップがあるのかもしれない。
そうなれば、これ以上後手にまわるのはまずい。まだこの状況にまだ満足していないのだ、死んでしまうつもりは毛頭ない。
ならば、戦って生き延びるしかない。
言峰綺礼は槍をデイパッグの中から取り出し、天井に向かって構えた。
狙うは頭上にあるはずの図書室。そこに敵がいる可能性がある。
ならばこの槍の力で天井を突き破り、奇襲を仕掛けるのが最善策のはずだ。
相手からすれば下方から予想外の攻撃となる。
そう考え、言峰綺礼は槍を握り締める手に力を入れた。



【H-2 学校一階・図書室の真下 一日目 朝】
【言峰綺礼@Fate/stay night】
[状態]:体のあちこちをぶつけたが特に問題なし、左手にトリモチがへばりついてます
[装備]:ストラーダ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
[道具]:荷物一式
[思考]
基本:観察者としての姿勢を崩さない。苦しみを観察し、検分し、愉悦とする。
1:攻撃をしてきた参加者を制圧する。
2:そのために天井を貫いた上での先制攻撃。
3:シータに会えばパズーの伝言を伝える。
※制限に気付いています。
※衛宮士郎にアゾット剣で胸を貫かれ、泥の中に落ちた後からの参戦。


[備考]:H-2学校の図書室でブックドラフトが発生しました。
    図書室及び図書室周辺の廊下と階段付近は大量の本に埋め尽くされています。


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092:流血へのシナリオ 結城奈緒 141:金ぴかと本と熱血格闘家とあたし
092:流血へのシナリオ ギルガメッシュ 141:金ぴかと本と熱血格闘家とあたし
092:流血へのシナリオ 言峰綺礼 141:金ぴかと本と熱血格闘家とあたし





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