Cats on sizuma drive ◆10fcvoEbko



ある世界の話。
来たるべき近未来、人類は第三のエネルギー革命と呼ばれるシズマドライブの発明により、新たな繁栄の時代を迎えていた。
完全無公害、完全リサイクルを可能とするそのエネルギーは、瞬く間に人々の生活の隅々にまで浸透し、あらゆる動力がシズマドライブへと置き換えられた。
ついに人類は有史以前から脈脈と続けられてきた、エネルギー資源を巡る不毛な争いの輪から脱却することに成功したのである。
人々はこの奇跡に歓喜し、発明者として名を残した4人の博士達に惜しみない賛辞を浴びせかけた。
シズマドライブの発明により、人類の輝かしい未来は約束されたかに見えた。

しかし。




エドが行く。
広い広い発電所の中をエドが進み行く。

腕を大きく振り上げぴょんびょん跳ね回ってエントランスを通り過ぎる。
通路の移動は膝を抱えてでんぐり返り。
消火用設備の赤い光をしげしげと眺め続け。
立ち上がると手をぐにゃぐにゃ振って大股歩き。
階段を昇ったかと思うとうにゃ~となきながらごろごろ転がり落ちる。
そのまま大の字になってしばし活動停止。
かと思えば突然弾かれたように起き上がり行動再開。
鼻歌混じりに「所長室」と書かれた部屋に入り。
机の上、あぐらでぼけっと何もしない。
部屋を出るときは逆立ち歩き。
と、何かの匂いを嗅ぎとり四つん這い。
ふんふん匂いをたどるも見つけたのがネズミの死骸でがっくり。
空腹を意識しつつ「燃料貯蔵庫」と書かれた部屋に入り。
そこにある「燃料」の放つ青い輝きに両手を広げて大はしゃぎ。
その勢いのまま部屋から飛び出し「タービン室」へ。
荷物運搬用リフトに潜り込み階を移動。
着いたときにはもう寝てる。
寝呆けたままだらりと芋虫のように這い回り。
ぐぅ~とお腹のなる音を合図に停止する。
おっくうそうに立ち上がりふらふら歩き。

そのようにしてエドは、力の抜けた姿勢のまま「中央制御室」と書かれた部屋に入って行った。
「お腹すいた~」


中央制御室の中は薄暗かった。
部屋には一切窓はなく、外の明かりが入ってくることはない。
ただ、壁の一面がガラス張りになっており、そこから発電設備を見下ろすことができた。
そこから臨む、そびえる巨大な「管」が放つ淡い光のみが、かろうじて制御室を明かりをもたらしていた。
室内には、発電所全体の管理を行うと思われる、複数のデスクトップタイプのコンピュータが置かれていた。
しかし、いずれも電源が落とされている。
それでも問題なく発電所が稼動しているのを見る限り、かなりのレベルまで自動化された施設であるらしい。

「どさどさどさ~~」
とりあえずエドにとっての問題は、部屋の暗さより自身の空腹である。
いつから持っていたのかはよく覚えていないが、何か良いものが入っているのではないかと、エドは部屋の真ん中でデイパックをぶちまけた。
地図やコンパス、カンテラなど様々なものが床に散らばる。
その中には、エドが現在最も望む物である食料も含まれていた。

「パンだ!いっただっきま~す!」
見つけると同時に飛び付き、三口で食べきった。
かなりの大きさで、しかも乾燥もしているため決して美味しくはない。
それでもエドは、常に空腹と戦い続けるビバップ号のクルーである。
食べれるときには食べておくことが如何に大切かは、嫌というほど経験で知っていた。

「まっず~い。でも、も~いっぱ~い」
もう一つのパンも同じように食べきった。
さらに、二本あったペットボトルのうち一本を一息に飲み干す。
そこでやっと満足したのか、エドはふみゃらはぁと声をあげ床に寝そべった。
デイパックの中身は散乱したままであり、その中にはエドにのみ支給されたものも含まれている。
それぞれ小型の装置のような物、鉛色に輝くステッキ、西部劇風の衣装という見た目である。
エドは見ていないが説明書には『X装置』『東風のステッキ』『アンディの衣装』と書かれている。


「これは何ですか~?」
エドはその中の一つ『X装置』を手に取り、目の前にかざして眺めた。

「ふみゃ~、お腹いっぱい…」
しかし、特に興味を引かれなかったのか、すぐそれをぽいと放り投げた。
放物線を描いて飛んだ『X装置』は、部屋の中央にしつらえられた、メインコンピュータと思しき一台の起動スイッチに綺麗にガンと、派手な音を立ててぶつかり、そのまま床に転がった。
コンピュータがヴンと、重低音とともに起動を始める。
その音は今まさに心地よい満腹感とともに眠りにつこうとしたエドの神経にも響いた。

「んにゃ?」
頭の奥底まで届く機械音と、暗い室内に突如発生したディスプレイの光に、エドが反応を示した。
のそのそと、目をこすりながらコンピュータの前に移動する。
最初に起動したコンピュータに続くように、他のコンピュータや照明が次々に起動し、暗かった室内は明かりで満たされた。

「ん~ん~?」
エドが珍しいものを見つけた子犬のように、コンピュータを覗き込む。
ディスプレイに映されていたのは発電所の管理用のプログラムと、通信記録だった。
管理プログラムは現在の発電状況に特に問題がないことを伝えている。
逆に、通信記録には何も記されていなかった。
普段エドが扱うコンピュータの性能からすれば幼稚もいいところであるはずなのだが、何かが琴線に触れたのかエドの好奇心は大きく刺激された。

「寄り道寄り道覗いちゃお~。今日のご飯はなんですか~?」
エドはコンピュータの置かれた机の上に直接座り込むと、準備運動と言うかのように指をぐねぐねさせ、迷い無い手つきでキーボードを叩き始める。
指の動きが非常識に速い、などということはない。
それどころか、体全体を揺らしながら叩いているのでむしろ遅めと言ってもいいかもしれない。
そうであるというのに、ディスプレイには凄まじい速度でウィンドウが表示されては消えていく。
常人ならば数分で酔ってしまうか、あるいはそもそも全く付いていけなくなる程の勢いである。
だが、エドにとってはまだまだ余裕であるらしく、行け!行け!ビバップ!などという歌を口ずさみながらそれらの情報を吸収していった。

「飛べ!飛べ!ビバップ!俺達かう~ぼ~い~、でも墜落し~そ~」
だが、コンピュータの中をいくら漁ってみても出てくるのは無味乾燥な発電所の管理に関する報告ばかり。
ネットワークも所内で完全に閉じており、外部へのアクセスも不可能である。
そもそも愛用のコンピュータが手元に無い以上、いかに天才的なハッキング能力を持っているエドとはいえ、所内の端末からできることは自ずと限られてくる。

「晩ご飯はまだですか~?あ、み~っけた!」
全く面白みの無い内容にだんだん飽き始めてきたエドだったが、ある情報を見つけたとき、楽しいもの見つけたとばかりに大声をあげた。
それはコンピュータ内の情報の山に埋もれるようにひっそりとした、だが逆にそれに気付く鋭さを持つ者には異質な存在感を以って受け止められるような、そんな場所に存在していた。
ある程度慎重な者ならば、繁華街の一角に居を構える不気味な占い師のような印象を感じ取っていたかも知れない。
エドは違った。ためらいなくキーボードを操作し、それを表示させる。

「おぉほ~」
画面が切り替わると同時に感嘆の声を挙げた。
ディスプレイは先程までの無機質さとはうって変わり、見るものの快適さを考慮したデザイン性の高いレイアウトに変化している。
どうやらこの発電所の動力について説明しているらしい。
コンピュータの奥深くに置かれていた不自然さに目をつむれば、広報用のページと思えなくも無い。
先頭に「シズマドライブの仕組み」とタイトルが記されていた。

「なにドライブ?」
エドは目を輝かせて、そこに表示されている情報の隅々までを、舐めるような視線で読み取っていく。

そこに記されていた内容は、要約すると次のようなものである。
シズマドライブは完全無公害、完全リサイクル可能の夢のようなエネルギーであること。
この発電所の電力もシズマドライブに依るものであり、複数の巨大シズマ管を順次リサイクルして使用していること。
シズマドライブの開発の歴史について。
その開発過程で一人の科学者の暴走によって引き起こされた事故と、それに付随して起こったエネルギー静止現象について。
完成後のシズマドライブに仇をなすかのように存在するアンチシズマ管。
それらが使用されたとき再び起こる悪夢、エネルギー静止現象。
そして最後に、シズマドライブやエネルギー静止現象等に関する非常に詳細かつ専門的な報告が挙げられていた。
見る者が見れば、そこに記されている情報に驚愕するかもしれない。
何故ならそこに記された情報の一部、例えばアンチシズマ管の存在などは限られた世界の極僅かの者しか知り得ない情報だからである。
それが、あたかも一般的な情報であるかのように公開されている。
それがどのような意味を持つのか、あるいは何の意味も持たないのかについて判断できる者はこの場にいないが、少なくともエドがその奇妙さに気付くことはなかった。

「んにゃ~」
最初こそ、すごいすごいと未知のエネルギ-に関する情報を喜んで閲覧していたエドだったが、読み進むにつれて段々と不可解な表情になっていった。
「あれ~?」
何かが引っ掛かる。
書かれている内容は基本的にシズマドライブを褒め称え、エネルギー静止現象を忌むべきものとする論調である。
栄光を賛辞し、惨劇を忌避するのは当然の思考と言えるが、エドはそこに何らかの齟齬を感じ取っていた。
机の上にあぐらをかいたまま考え込む。
「あれがこ~なってえ……」
首を、どころか全身を傾げて考え込む。
思い出すのはたった今読んだばかりのシズマドライブの仕組みと、アンチシズマ菅の存在について。
「それがそ~なってぇ……」
逆方向に体を傾げる。
ほとんど机に接するかのような角度である。
「いらないものがたまっちゃって、最後にはぐるぐるばたんきゅ~。ぐるじい~」
そして、突然もがくような仕草をしたかと思うとばった~んと、床に倒れこんだ。
そのまま動かない。
本当に死んでしまったかのように、目を見開き天井の一点を凝視し続ける。
室内はしばし静寂に包まれた。

「そうだよ!」
その静寂を輝かしい笑顔とともに破ったのもまた、エドだった。
さっきまでの、全身の力を抜いただるだるな態度からは一変し、全身に溢れんばかりの活力がみなぎっている。
「キミは間違ってるよ。合ってるのはそのおじいさんで、間違ってるのはそれ以外の人~」
指を突き付けてコンピュータにお説教をする。
自らが看破した真実を、自分以外には理解できない言葉で朗々と語る。
あるいは、看破させられたのかも知れないが。

「そのおじいさんはとってもいい人なんだ。そっちの管がないとみんなばたんきゅ-になっちゃうんだよ?ここのそれは止めらんないし、いらないものも一杯になっちゃうから、エドが探してきてあげる!」
知る者はほぼ皆無だが、シズマドライブにはリサイクルの過程で、一定以上の濃度になると酸素と結合する性質の物質を放出するという特性があった。
アンチシズマ管と呼ばれたものの正体は、その副作用を除去するための中和剤としての役目を担うものであった。
先程得た情報から、どういう訳か外部からの操作で発電所の機能を止めることは不可能であることが分かっている。
だからこそ、それを唯一知る自分が、自らの足でアンチシズマ管を集めなくてはならないのだと、エドは考えていた。

「エドがみんなを助けて、ついでにご飯も探すの。だってエドはカウガールだから!」
エドは元気よく宣言するとデイパックの中身をまとめ、勢いよく外へと飛び出していった。
自分が皆を救うのだと言う、無邪気なエネルギーがその背中から溢れていた。



エドが行く。
カウボーイと呼ばれた男の帽子とスカーフを身に纏い、エドが走り行く。
目的はシズマドライブの副作用による酸素の結合現象の阻止。
その副作用を除去するために作られたアンチシズマ管の蒐集。
結合現象までの具体的な時間は分からない。
もはや、手遅れなのかもしれない。
もしかしたら、放っておいても問題は無いのかも知れない。
そもそもこの限られた空間内に真実それが存在するという保証すらない。
仮に管の蒐集が成ったとして、それをどこでどのように使えばいいかも分かっていない。
発電所のどこかにそのための装置があるのか、あるいはそれ以外の場所か、端から存在すらしないか。
何もかもが不明のまま、それでもそれに絶対の必要性を感じているエドが一人、発電所の外の世界へと飛びだしていった。

「いっきますよ~!1、2、5、4、こぉんにちわあ~~!!」


【C-2 発電所 一日目・早朝】
【エドワード・ウォン・ハウ・ペペル・チブルスキー4世@カウボーイビバップ】
[状態]:健康 強い使命感
[装備]: アンディの帽子とスカーフ
[道具]:支給品一式(食料残り水一本のみ) アンディの衣装@カウボーイビバップ
東風のステッキ(残弾率100%)@カウボーイビバップ
[思考] 1:アンチシズマ管を探す。
※X装置は説明書とともに中央制御室に放置されました。

【X装置】
無限エネルギー装置の核となる装置。

【東風のステッキ】
マッドピエロ東風が使用していたステッキ型の銃。
劇中では乱射していたため、弾数はかなりあると思われるが正確な数が不明であるため仮に%で表示。

【アンディの衣装】
スパイクと並び称されるカウボーイ、アンディの衣装一式。
靴、帽子、スカーフ、手袋、中着、上下白のカウボーイスタイル。
着れば誰でもたちまちカウボーイ。


【発電所】
シズマドライブによる発電所。
リサイクルの際に不純物を出しているのでいつかは酸素の結合現象が起きると思われる。
原作の描写では結合現象まで年単位の時間があるが、本ロワでそれがいつ起きるかは今のところ不明。


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054:転換 エドワード・ウォン・ハウ・ペペル・チブルスキー4世 115:ジャミング・ウィズ・エドワード





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